(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6534178
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】ステアリング装置および荷役車両
(51)【国際特許分類】
B62D 1/18 20060101AFI20190617BHJP
B62D 5/09 20060101ALI20190617BHJP
【FI】
B62D1/18
B62D5/09 A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-101488(P2018-101488)
(22)【出願日】2018年5月28日
【審査請求日】2018年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 雅博
(72)【発明者】
【氏名】佐野 拓也
【審査官】
小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭60−110173(JP,U)
【文献】
特開平11−334605(JP,A)
【文献】
特開2016−215888(JP,A)
【文献】
実開昭52−019831(JP,U)
【文献】
実開昭59−149564(JP,U)
【文献】
韓国公開特許第10−2011−0105549(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/18
B62D 5/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体のフロントガードに接続されるステアリング装置であって、
ステアリングハンドルと、
前記ステアリングハンドルが接続される上部シャフトと、
前記上部シャフトの下方に配置されて前記車両本体に対して固定される下部シャフトと、
前記上部シャフトと前記下部シャフトとを接続し、所定の水平軸を中心として前記上部シャフトを前記下部シャフトに対して揺動させるユニバーサルジョイントと、
前記上部シャフトの外周を覆うコラムチューブと、
前記コラムチューブを介して前記上部シャフトを支持するロック機能付きガススプリングと、
前記ガススプリングのロックを解除するためのチルトロック解除レバーとを備え、
前記ガススプリングは、前記コラムチューブの直下に配置されるとともに、前記フロントガードと前記コラムチューブとを接続し、
前記チルトロック解除レバーは、前記ガススプリングの上方、かつ、前記コラムチューブの直下に配置され、
前記コラムチューブは、前記ユニバーサルジョイントの側方に配置されて前記フロントガードに接続されるフロントガード用ブラケットを備え、
前記フロントガード用ブラケットは、前記水平軸を中心として揺動するように前記フロントガードに支持され、
前記ガススプリングの一端部である上端部には、ロック解除ピンが設けられ、当該ロック解除ピンが押されているときに前記ガススプリングが伸縮可能となり、当該ロック解除ピンが押されていないときに前記ガススプリングが伸縮不可能となり、
前記チルトロック解除レバーは、前記コラムチューブに対して揺動可能に設けられ、当該コラムチューブに対して揺動することで前記ロック解除ピンを押すピン押圧部材を備えており、
前記チルトロック解除レバーが引き下げられると、前記ピン押圧部材が前記ロック解除ピンを押して、前記ガススプリングの伸縮が可能な状態となる
ことを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
前記下部シャフトが接続されるバルブ装置をさらに備え、
前記バルブ装置は、前記ステアリングハンドルの回転に応じてステアリング用作動油を供給する
ことを特徴とする請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記バルブ装置は、前記フロントガードに固定される
ことを特徴とする請求項2に記載のステアリング装置。
【請求項4】
車両本体と、
前記車両本体に対して固定されるフロントガードと、
ステアリングハンドルと、
前記ステアリングハンドルが接続される上部シャフトと、
前記上部シャフトの下方に配置されて前記車両本体に対して固定される下部シャフトと、
前記上部シャフトと前記下部シャフトとを接続し、所定の水平軸を中心として前記上部シャフトを前記下部シャフトに対して揺動させるユニバーサルジョイントと、
前記上部シャフトの外周を覆うコラムチューブと、
前記コラムチューブを介して前記上部シャフトを支持するロック機能付きガススプリングと、
前記ガススプリングのロックを解除するためのチルトロック解除レバーとを備え、
前記ガススプリングは、前記コラムチューブの直下に配置されるとともに、前記フロントガードと前記コラムチューブとを接続し、
前記チルトロック解除レバーは、前記ガススプリングの上方、かつ、前記コラムチューブの直下に配置され、
前記コラムチューブは、前記ユニバーサルジョイントの側方に配置されて前記フロントガードに接続されるフロントガード用ブラケットを備え、
前記フロントガードは、前記水平軸を中心として前記フロントガード用ブラケットを揺動可能に支持し、
前記ガススプリングの一端部である上端部には、ロック解除ピンが設けられ、当該ロック解除ピンが押されているときに前記ガススプリングが伸縮可能となり、当該ロック解除ピンが押されていないときに前記ガススプリングが伸縮不可能となり、
前記チルトロック解除レバーは、前記コラムチューブに対して揺動可能に設けられ、当該コラムチューブに対して揺動することで前記ロック解除ピンを押すピン押圧部材を備えており、
前記チルトロック解除レバーが引き下げられると、前記ピン押圧部材が前記ロック解除ピンを押して、前記ガススプリングの伸縮が可能な状態となる
ことを特徴とする荷役車両。
【請求項5】
前記下部シャフトが接続されるバルブ装置をさらに備え、
前記バルブ装置は、前記ステアリングハンドルの回転に応じてステアリング用作動油を供給する
ことを特徴とする請求項4に記載の荷役車両。
【請求項6】
前記バルブ装置は、前記フロントガードに固定される
ことを特徴とする請求項5に記載の荷役車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングハンドルのチルト調整機能を備えたステアリング装置および荷役車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両のステアリング装置を構成する上部シャフトは、ステアリングハンドルに接続されるとともに、ユニバーサルジョイントを介して他のシャフトに接続される(例えば特許文献1〜3参照)。
【0003】
特許文献1に記載のステアリング装置は、上部シャフトの固定を解除したときに当該上部シャフトを持ち上げるスプリングと、折曲部を構成する2つのユニバーサルジョイントとを備えている。
【0004】
また、特許文献2に記載のステアリング装置は、アッパー側およびロアー側のディスタンスブラケットが設けられたコラムチューブと、上部シャフトとインナーシャフトとを接続するユニバーサルジョイントと、アウターシャフトと中間ギヤの入力軸とを接続するユニバーサルジョイントとを備えている。ディスタンスブラケットは、車体に固定されたアッパー側およびロアー側のチルトブラケットに摺接する。
【0005】
また、特許文献3に記載のステアリング装置は、上部シャフトと下部シャフトとを接続するユニバーサルジョイントと、下部シャフトとステアリングギアの入力軸とを接続するユニバーサルジョイントとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3069944号公報
【特許文献2】特開2001−213330号公報
【特許文献3】実公昭63−46296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のステアリング装置は、スプリングが上部シャフトの背面側(すなわち車両前方側)に配置されて前後方向に延びるため、小型化し難いという問題がある。また、特許文献2に記載のステアリング装置は、車両本体に接続するためのブラケットをコラムチューブの2箇所(上端部および下端部)に設ける必要があるため、小型化し難いという問題がある。
【0008】
また、特許文献1〜3に記載のステアリング装置は、それぞれ、2つのユニバーサルジョイントを備えるため、車両本体に対してステアリング装置が揺れ易く不安定であるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、乗車空間を圧迫しないようにステアリング装置の小型化を図ることができ、車両本体に対するステアリング装置の固定強度を高めることができるステアリング装置および荷役車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明は、車両本体のフロントガードに接続されるステアリング装置であって、ステアリングハンドルと、前記ステアリングハンドルが接続される上部シャフトと、前記上部シャフトの下方に配置されて前記車両本体に対して固定される下部シャフトと、前記上部シャフトと前記下部シャフトとを接続し、所定の水平軸を中心として前記上部シャフトを前記下部シャフトに対して揺動させるユニバーサルジョイントと、前記上部シャフトの外周を覆うコラムチューブと、前記コラムチューブを介して前記上部シャフトを支持するロック機能付きガススプリングと
、前記ガススプリングのロックを解除するためのチルトロック解除レバーとを備え、前記ガススプリングは、前記コラムチューブの直下に配置されるとともに、前記フロントガードと前記コラムチューブとを接続し、
前記チルトロック解除レバーは、前記ガススプリングの上方、かつ、前記コラムチューブの直下に配置され、前記コラムチューブは、前記ユニバーサルジョイントの側方に配置されて前記フロントガードに接続されるフロントガード用ブラケットを備え、前記フロントガード用ブラケットは、前記水平軸を中心として揺動するように前記フロントガードに支持され
、前記ガススプリングの一端部である上端部には、ロック解除ピンが設けられ、当該ロック解除ピンが押されているときに前記ガススプリングが伸縮可能となり、当該ロック解除ピンが押されていないときに前記ガススプリングが伸縮不可能となり、前記チルトロック解除レバーは、前記コラムチューブに対して揺動可能に設けられ、当該コラムチューブに対して揺動することで前記ロック解除ピンを押すピン押圧部材を備えており、前記チルトロック解除レバーが引き下げられると、前記ピン押圧部材が前記ロック解除ピンを押して、前記ガススプリングの伸縮が可能な状態となることを特徴とする。
【0012】
また、
請求項2に記載のステアリング装置は、
請求項1に記載のステアリング装置において、前記下部シャフトが接続されるバルブ装置をさらに備え、前記バルブ装置は、前記ステアリングハンドルの回転に応じてステアリング用作動油を供給することを特徴とする。
【0013】
また、
請求項3に記載のステアリング装置は、
請求項2に記載のステアリング装置において、前記バルブ装置は、前記フロントガードに固定されることを特徴とする。
【0014】
また、
請求項4に記載の本発明の荷役車両は、車両本体と、前記車両本体に対して固定されるフロントガードと、ステアリングハンドルと、前記ステアリングハンドルが接続される上部シャフトと、前記上部シャフトの下方に配置されて前記車両本体に対して固定される下部シャフトと、前記上部シャフトと前記下部シャフトとを接続し、所定の水平軸を中心として前記上部シャフトを前記下部シャフトに対して揺動させるユニバーサルジョイントと、前記上部シャフトの外周を覆うコラムチューブと、前記コラムチューブを介して前記上部シャフトを支持するロック機能付きガススプリングと
、前記ガススプリングのロックを解除するためのチルトロック解除レバーとを備え、前記ガススプリングは、前記コラムチューブの直下に配置されるとともに、前記フロントガードと前記コラムチューブとを接続し、
前記チルトロック解除レバーは、前記ガススプリングの上方、かつ、前記コラムチューブの直下に配置され、前記コラムチューブは、前記ユニバーサルジョイントの側方に配置されて前記フロントガードに接続されるフロントガード用ブラケットを備え、前記フロントガードは、前記水平軸を中心として前記フロントガード用ブラケットを揺動可能に支持
し、前記ガススプリングの一端部である上端部には、ロック解除ピンが設けられ、当該ロック解除ピンが押されているときに前記ガススプリングが伸縮可能となり、当該ロック解除ピンが押されていないときに前記ガススプリングが伸縮不可能となり、前記チルトロック解除レバーは、前記コラムチューブに対して揺動可能に設けられ、当該コラムチューブに対して揺動することで前記ロック解除ピンを押すピン押圧部材を備えており、前記チルトロック解除レバーが引き下げられると、前記ピン押圧部材が前記ロック解除ピンを押して、前記ガススプリングの伸縮が可能な状態となることを特徴とする。
【0016】
また、
請求項5に記載の荷役車両は、
請求項4に記載の荷役車両において、前記下部シャフトが接続されるバルブ装置をさらに備え、前記バルブ装置は、前記ステアリングハンドルの回転に応じてステアリング用作動油を供給することを特徴とする。
【0017】
また、
請求項6に記載の荷役車両は、
請求項5に記載の荷役車両において、前記バルブ装置は、前記フロントガードに固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、乗車空間を圧迫しないようにステアリング装置の小型化を図ることができ、車両本体に対するステアリング装置の固定強度を高めることができるステアリング装置および荷役車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(A)は、本発明の一実施形態に係る荷役車両の概略構成を示す概要図であり、(B)は、当該荷役車両が備えるステアリング装置の概略構成を示す概要図である。
【
図2】(A)は、同実施形態に係るステアリング装置の正面図であり、(B)は、その側面図である。
【
図3】同実施形態に係るステアリング装置の内部構成を示す図であって、その側面図である。
【
図4】同実施形態に係るステアリング装置の内部構成を示す図であって、その斜視図である。
【
図5】同実施形態に係るステアリング装置の分解斜視図である。
【
図6】同実施形態に係るステアリング装置の車両本体に対する取付構造を示す図であって、(A)は、その側面図であり、(B)は、その正面図である。
【
図7】同実施形態に係るステアリング装置の車両本体に対する取付構造を示す図であって、(A)は、その側面図であり、(B)は、その正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1(A)は、荷役車両1であるバッテリ式のカウンターバランスフォークリフトの概要図であり、
図1(B)は、ステアリング装置2の概要図である。
【0021】
図1(A)に示すように、荷役車両1は、オペレータ(不図示)が乗車する車両本体10と、車両本体10の前方に設けられた荷役装置20とを備える。荷役車両1は、車両本体10に設けられる要素として、運転席11、フロントガード12、車輪13、および、ステアリング装置2を備える。
【0022】
運転席11は、オペレータを前方に向けて座らせるように設けられる。フロントガード12は、車両本体10の前端部に固定され、車両本体10に乗車しているオペレータを保護するために、運転席11の前方に配置される。車輪13は、オペレータによるステアリング装置2の操作に従って向きを変える。
【0023】
また、
図1(B)に示すように、ステアリング装置2は、ステアリングハンドル31(以下「ハンドル31」という)、上部シャフト32、下部シャフト33、ユニバーサルジョイント34、および、バルブ装置35を備える。ステアリング装置2は、フロントガード12に取り付けられる。フロントガード12に対するステアリング装置2の取付構造は、
図6および
図7を参照して後述する。
【0024】
ハンドル31は、運転席11の前方に配置される。上部シャフト32および下部シャフト33は、ステアリングシャフト3を構成する。上部シャフト32の上端部は、ハンドル31に接続される。下部シャフト33は、上部シャフト32の下方に配置され、下部シャフト33の下端部は、バルブ装置35に接続される。
【0025】
ユニバーサルジョイント34は、上部シャフト32の下端部と下部シャフト33の上端部とを任意の角度で接続し、上部シャフト32から下部シャフト33に回転運動を伝達する。ユニバーサルジョイント34は、所定の水平軸Aを中心として、下部シャフト33に対して上部シャフト32を揺動させる。
【0026】
バルブ装置35は、下部シャフト33とともに回転するロータリーバルブ(不図示)を備え、ステアリング作動油を送り出すオイルポンプ(不図示)と、油圧室が設けられたステアリングシリンダ(不図示)とに接続される。バルブ装置35は、下部シャフト33の回転方向および回転量に応じて、オイルポンプから送り出されたステアリング作動油を、ステアリングシリンダの油圧室に送る。こうして、ハンドル31の回転に連動するバルブ装置35は、ステアリングシリンダ内の油圧を高めるため、オペレータがステアリング装置2を用いて車輪13の向きを変えることができる。
【0027】
図2は、ステアリング装置2の外観を示す図である。
図2(A)は、ステアリング装置2の正面図、すなわち、
図1(A)中の運転席11側からステアリング装置2を見た図である。また、
図2(B)は、ステアリング装置2の側面図、すなわち、
図1(A)の図面手前側からステアリング装置2を見た図である。
【0028】
図2に示すように、ステアリング装置2は、コラムカバー41、パーキングブレーキ解除レバー42、および、チルトロック解除レバー43(以下「解除レバー43」という)を備える。
【0029】
コラムカバー41は、上カバー41Aと下カバー41Bとにより構成され、上部シャフト32を覆う。すなわち、コラムカバー41の内部(上カバー41Aと下カバー41Bとにより形成される空間)には、上部シャフト32が収納される。下カバー41Bは、パーキングブレーキ解除レバー42および解除レバー43を操作するための開口部41aを有する。
【0030】
解除レバー43は、当該解除レバー43の一部がコラムカバー41の内部から外部に突出するように設けられ、ハンドル31に対面するオペレータが、右手および左手のいずれの手でも操作できるようにハンドル31の下方に配置される。解除レバー43の詳細な構成については、
図3および
図4を参照して後述する。
【0031】
図3および
図4は、ステアリング装置2の内部構成を示す図である。
図3および
図4では、コラムカバー41、および、ハンドル31等の図示が省略されている。
【0032】
図3および
図4に示すように、ステアリング装置2は、コラムカバー41の内部に設けられる要素として、コラムチューブ44、ケーブル45、リンク機構46、および、ロック機能付きガススプリング47を備える。
図3中の軸B1〜B3は、上部シャフト32の軸方向に対して直交する水平軸である。
【0033】
パーキングブレーキ解除レバー42は、リンク機構46を介して、パーキングブレーキ装置(不図示)を動作させるケーブル45に接続される。パーキングブレーキ解除レバー42を操作することで、パーキングブレーキ装置(不図示)による車両本体10の走行の制動を解除することが可能となる。
【0034】
解除レバー43は、コラムチューブ44の直下に配置され、軸B1を中心にしてコラムチューブ44に対して揺動可能に設けられる。解除レバー43は、コラムカバー41の外部に突出するバー部材43Aと、軸B1を中心に揺動することでロック機能付きガススプリング47を押すピン押圧部材43Bとにより構成される。解除レバー43を操作することで、ガススプリング47の伸縮によるハンドル31のチルト調整が可能となる。
【0035】
コラムチューブ44は、上部シャフト32を覆い(上部シャフト32の上端部および下端部を除く)、軸受(不図示)を介して上部シャフト32を回転可能に支持する。コラムチューブ44は、ガススプリング用ブラケット51、フロントガード用ブラケット52、および、揺動部材53(
図4参照)を備える。ガススプリング用ブラケット51は、揺動部材53を介して、軸B1を中心に解除レバー43を揺動可能に支持するとともに、軸B2を中心にガススプリング47を揺動可能に支持する。フロントガード用ブラケット52は、フロントガード12に取り付けられる。
【0036】
ガススプリング47は、ロック解除ピン47a(
図5参照)を備え、ロック解除ピン47aが押されているときに伸縮可能となり、ロック解除ピン47aが押されていないときに伸縮不可能となる伸縮機構である。すなわち、ガススプリング47は、任意の長さで固定することが可能なエアシリンダである。ガススプリング47は、コラムチューブ44とフロントガード12とを接続する。具体的には、ガススプリング47の一端部は、軸B2を中心にしてコラムチューブ44に対して揺動可能に設けられ、ガススプリング47の他端部は、軸B3を中心にしてフロントガード12(すなわち車両本体10)に対して揺動可能に設けられる。
【0037】
図5は、コラムチューブ44から解除レバー43が取り外された状態を示す図であって、解除レバー43および解除レバー43に接続される構成を分解した状態を示す分解斜視図である。
【0038】
図5に示すように、ガススプリング47の上端部には、ロック解除ピン47aが設けられる。ガススプリング47の上端部は、揺動部材53に挿し込まれ、ロック解除ピン47aは、解除レバー43のピン押圧部材43Bと対向するように設けられる。オペレータが解除レバー43のバー部材43Aを引き下げると、ピン押圧部材43Bがロック解除ピン47aを押して、ガススプリング47の伸縮が可能な状態となる。ガススプリング47は、ロック解除ピン47aが押されているときに伸長するように構成されており、オペレータが解除レバー43を引き下げると、コラムチューブ44が上部シャフト32とともに上方に持ち上がり、オペレータの乗降が容易になるようにオペレータとハンドル31との間の空間が大きくなる。また、オペレータが解除レバー43を引き下げながらハンドル31を下方に押さえることで、ガススプリング47が収縮し、ハンドル31が所望の高さに配置される。
【0039】
また、ロック解除ピン47aには、ピン押圧部材43Bに当接するコイルばね61が嵌められる。オペレータが解除レバー43から手を離すと、コイルばね61がピン押圧部材43Bをロック解除ピン47aから離間させて、ガススプリング47の伸縮が不可能な状態となる。ガススプリング47の下端部は、軸部材62を介して後述するフロントガード12のガススプリング用ブラケット12C(
図6参照)に支持される。
【0040】
ガススプリング用ブラケット51は、左右方向に間隔をあけて左右一対に設けられる。ガススプリング用ブラケット51は、コラムチューブ44から運転席側の下方に向けて突出しており、コラムチューブ44と一体化されている。ガススプリング用ブラケット51には、揺動部材53に固定される軸部材63A,63Bが揺動可能に設けられる。本実施形態に係る軸部材63A,63Bは、揺動部材53の側面に予め形成されためねじに嵌め込まれるボルトにより構成される。この構成により、揺動部材53は、ガススプリング用ブラケット51に対して揺動可能に設けられ、ガススプリング47の上端部は、軸B2(
図3参照)を中心として揺動可能に支持される。
【0041】
フロントガード用ブラケット52は、コラムチューブ44の両側面に左右一対で設けられ、コラムチューブ44と一体化されている。フロントガード用ブラケット52は、ユニバーサルジョイント34(
図4参照)の側方に配置される。すなわち、フロントガード用ブラケット52は、水平方向においてユニバーサルジョイント34を挟む位置に設けられる。
【0042】
揺動部材53は、ガススプリング47の上端部とともにガススプリング用ブラケット51に対して揺動する。また、揺動部材53には、解除レバー43のピン押圧部材43Bを貫通する軸部材64が嵌められ、揺動部材53は、軸部材64を介して解除レバー43を支持する。この構成により、解除レバー43は、軸B1(
図3参照)を中心として揺動可能に支持される。
【0043】
図6は、フロントガード12に対するフロントガード用ブラケット52の取付構造を示し、
図7は、フロントガード12に対するバルブ装置35の取付構造を示す。すなわち、
図6および
図7は、車両本体10に対するステアリング装置2の取付構造を示す。なお、
図6(B)において、ガススプリング47は二点鎖線で示されている。
【0044】
図6に示すように、フロントガード12は、フロントガード用ブラケット52に接続される上部ブラケット12Aと、横架部12Bと、横架部12Bに設けられたガススプリング用ブラケット12Cとを備える。上部ブラケット12Aは、左右方向に間隔をあけて左右一対に設けられ、フロントガード12から運転席側に向けて突出する。横架部12Bは、左右一対の上部ブラケット12Aを接続し、ガススプリング用ブラケット12Cは、左右方向に間隔をあけて左右一対に設けられ、横架部12Bから運転席側に向けて突出する。上部ブラケット12A、横架部12B、および、ガススプリング用ブラケット12Cは、フロントガード12と一体化されている。
【0045】
ステアリング装置2は、軸部材71A,71Bを用いて、車両本体10のフロントガード12に対して取り付けられる。本実施形態に係る軸部材71A,71Bは、フロントガード用ブラケット52および上部ブラケット12Aを貫通するボルトにより構成される。軸部材71A,71Bは、水平方向においてユニバーサルジョイント34を挟む位置に設けられることで水平軸Aと同軸上に配置され、上部ブラケット12Aは、軸部材71A,71Bを介して、フロントガード用ブラケット52を揺動可能に支持する。この構成により、フロントガード用ブラケット52は、水平軸Aを中心として揺動するようにフロントガード12に支持される。また、ガススプリング用ブラケット12Cは、軸部材62を介して、ガススプリング47の下端部を支持する。この構成により、ガススプリング47の下端部は、軸B3(
図3参照)を中心として揺動可能に支持される。
【0046】
また、下部シャフト33に対する上部シャフト32の揺動範囲は、フロントガード用ブラケット52に設けられた揺動規制部72A,72Bにより制限される。本実施形態に係る揺動規制部72A,72Bは、フロントガード用ブラケット52に固定されたボルトにより構成される。揺動規制部72A,72Bは、上部ブラケット12Aに当接することで、水平軸Aを中心とする上部シャフト32の揺動を規制する。
【0047】
図7に示すように、フロントガード12は、バルブ装置35に接続される下部ブラケット12Dを備える。下部ブラケット12Dは、フロントガード12から運転席側に向けて突出するとともに下部シャフト33を通すことができるように形成されており、フロントガード12と一体化されている。
【0048】
ステアリング装置2は、締結部材73を用いて、車両本体10のフロントガード12に対して取り付けられる。本実施形態に係る締結部材73は、下部ブラケット12Dを貫通するとともにバルブ装置35の固定されるボルトにより構成される。締結部材73は、バルブ装置35の上端面に予め形成されためねじに嵌め込まれ、下部ブラケット12Dとバルブ装置35とを締結する。
【0049】
本実施形態では以下の効果が得られる。
(1)ガススプリング47は、コラムチューブ44の直下に配置されるとともに、フロントガード12とコラムチューブ44とを接続し、コラムチューブ44は、ユニバーサルジョイント34の側方に配置されてフロントガード12に接続されるフロントガード用ブラケット52を備え、フロントガード12は、水平軸A(下部シャフト33に対する上部シャフト32の揺動の中心となる軸)を中心としてフロントガード用ブラケット52を揺動可能に支持する。上記構成によれば、ハンドル31を持ち上げるガススプリング47が、コラムチューブ44の背面側ではなく直下に配置されるため、スペース効率が良く、乗車空間を圧迫しないようにステアリング装置2の小型化を図ることができる。また、フロントガード12とコラムチューブ44のフロントガード用ブラケット52が接続される点を、下部シャフト33に対して上部シャフト32が揺動する水平軸A上に設けることができるため、ユニバーサルジョイント34を複数設ける必要が無く、車両本体10(フロントガード12)に対するステアリング装置2の固定強度を向上させることができる。
【0050】
(2)解除レバー43は、ガススプリング47の上方、かつ、コラムチューブ44の直下に配置されるため、見映えを損なわないようにすることができる。
【0051】
(3)バルブ装置35は、ハンドル31の回転に応じてステアリング用作動油を供給するため、バルブ装置35からステアリングシリンダにステアリング用作動油を送り出すことで、下部シャフト33とステアリングシリンダとを機械的に接続することなく、ハンドル31による操舵が可能となる。
【0052】
(4)バルブ装置35は、フロントガード12に固定されるため、バルブ装置35およびコラムチューブ44のフロントガード用ブラケット52がそれぞれ異なる構成に取り付けられる場合に比べて、ステアリング装置2の安定性を向上させることができる。
【0053】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記構成を適宜変更することもできる。例えば、上記実施形態を、以下のように変更して実施してもよく、以下の変更を適宜組み合わせてもよい。
【0054】
・解除レバー43が操作されることでガススプリング47のロックが解除されるのであれば、解除レバー43の操作によりガススプリング47のロック解除ピン47aを押すための機械的構成を適宜変更してもよい。
【0055】
・バッテリ式のカウンターバランスフォークリフト以外の荷役車両に本発明を適用してもよい。すなわち、例えば、内燃機関式のフォークリフトやリーチフォークリフトに本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0056】
1 荷役車両
10 車両本体
12 フロントガード
31 ステアリングハンドル
32 上部シャフト
33 下部シャフト
34 ユニバーサルジョイント
35 バルブ装置
43 チルトロック解除レバー
44 コラムチューブ
47 ガススプリング
52 フロントガード用ブラケット
A 水平軸
【要約】
【課題】乗車空間を圧迫しないようにステアリング装置の小型化を図ることができ、車両本体に対するステアリング装置の固定強度を高めることができるステアリング装置および荷役車両を提供する。
【解決手段】荷役車両1は、所定の水平軸Aを中心として上部シャフト32を下部シャフト33に対して揺動させるユニバーサルジョイント34と、上部シャフト32の外周を覆うコラムチューブ44と、コラムチューブ44を介して上部シャフト32を支持するロック機能付きガススプリング47とを備える。ガススプリング47は、コラムチューブ44の直下に配置され、フロントガードとコラムチューブ44とを接続する。コラムチューブ44は、ユニバーサルジョイント34の側方に配置されてフロントガードに接続されるフロントガード用ブラケット52を備え、フロントガードは、水平軸Aを中心としてフロントガード用ブラケット52を揺動可能に支持する。
【選択図】
図3