【実施例】
【0028】
図1〜
図3において、10はこの発明の
参考例1に係るヘッドレストスティ10で、このヘッドレストスティ10は、自動車(乗り物)11の座席12のシートバック13のヘッドレスト14に使用される略逆U字形状の部材で、金属製の直管から形成された左右一対の脚部15と、各脚部15の上端部同士を連結するステンレス製のパイプからなるブリッジ部16とを備えている。
【0029】
以下、これらの構成体を具体的に説明する。まず、ヘッドレスト14を説明する。
ヘッドレスト14は、着座乗員の頭部が当たる枕部17を本体とする。この枕部17は、その外装材である袋状の表皮18と、表皮18の内部空間に配された前記ブリッジ部16と、このブリッジ部16を埋設した状態で表皮18の内部空間に一体的に充填されるクッション体19とを有している。
【0030】
表皮18は、薄肉な合成皮革を袋状に縫製したものである。表皮18の下部(底布の部分)には、ブリッジ部16の一部がそれぞれ突出する左右一対の挿通孔18aが形成されている。
ブリッジ部16は、直径(外径)12.7mm、厚さ2mmのステンレス製の直管を、所定形状に屈曲したものである。具体的には、ブリッジ部16は下向きコの字形に屈曲した中央杆20Aを有し、この中央杆20Aの両下端部に、斜め後方へ向けて外広がりした左右一対の側部杆20Bがそれぞれ一体的に連結されたものである。これらの側部杆20Bの下端部は、直下に向かってそれぞれ屈曲している。これらの直下部分の下端部には、対応する脚部15の上端部に嵌入される左右一対の縮径部(連結部分)21がそれぞれ形成されている。各縮径部21の下端部分は、対応する挿通孔18aから下方へ突出される。
【0031】
各脚部15は、座席12のシートバック13に内蔵されたフレーム22に、2本のスティ保持具23を介して、上下方向にスライド自在に支持されるものである。
各脚部15は、直径(外径)12.7mm、厚さ2mmのステンレス製の直管である。各脚部15の長さは同一である。このうち、
図1中の右側の脚部15の内側面(左側面)には、長さ方向に所定ピッチで複数のノッチ15aが形成されている。これらのノッチ15aには、スティ保持具23が有する図示しない掛止爪が掛止される。
クッション体19は、発泡ウレタンフォーム製の枕状をした緩衝ブロックである。
図3に示すように、枕部17の下部内には、各挿通孔18aと連通する一対のカシメ用空間24がそれぞれ形成されている。各カシメ用空間24には、前記各縮径部21がそれぞれ露出している。
【0032】
次に、
図4のフローシートに基づき、この発明の
参考例1に係るヘッドレストスティ10を使用したヘッドレスト14の製造方法を説明する。
まず、ヘッドレストスティ10のブリッジ部16用の長尺な1本の直管と、各脚部15用の短尺で同一長さの2本の直管とをそれぞれ準備する(直管の準備工程)。
その後、長尺な直管を所定形状に屈曲してブリッジ部16を形成し(ブリッジ部形成工程)、また各短尺な直管を加工して、一対の脚部15をそれぞれ形成する(脚部形成工程)。
次いで、数10本の脚部15をまとめて吊下可能なメッキラック(ひっかけ)に、各脚部15をそれぞれ吊下し、これらをニッケルクロム溶液が貯液された電気メッキ槽の陰極バーに掛止する。これにより、各脚部15がニッケルクロム溶液にドブ漬けされる。この状態で通電することで、表面全体にニッケルクロムが電気メッキされる(脚部のメッキ工程)。
【0033】
次に、枕部17の本体となるクッション体19を射出成型する(発泡成形工程)。以下、この工程を具体的に説明する。
クッション体19の射出成形時には、まず表皮18の内部空間にヘッドレストスティ10のブリッジ部16を収納する。この状態で、表皮18の内部空間に発泡ウレタンの射出成形材料を注入し、これを発泡させて、枕形状のクッション体19を射出成形する。このとき、各挿通孔18aの内側に各カシメ用空間24が配設されるとともに、各挿通孔18aからはブリッジ部16の対応する縮径部21の先部がそれぞれ突出するように、表皮18への射出成型材料の注入量を調整する。こうして、表面が表皮18により被われて、ブリッジ部16が埋設された枕部17が作製される。なお、これらのカシメ用空間24は、必ずしも形成する必要はない。
メッキ処理された各脚部15とメッキ処理されていないブリッジ部16とは、所定の品質検査を施した後にそれぞれ保管される。
【0034】
次に、出荷直前において、各脚部15とブリッジ部16とのカシメ連結が行われる(直管のカシメ連結工程)。具体的には、表皮18の各挿通孔18aから突出した各縮径部21の下端部をガイドにして、メッキ処理された各脚部15の上端部を各縮径部21にそれぞれ外嵌する。
次いで、各挿通孔18aを介して、対応するカシメ用空間24にカシメ具25の先端部を挿入し、各脚部15とブリッジ部16との連結部分をそれぞれカシメる(
図3参照)。その結果、従来は枕部17の作製中、ブリッジ部16と一体化した各脚部15のメッキ面にキズが発生していたものの、それを無くすことができる。
【0035】
なお、ここでは、表皮18への射出成型材料の注入量を調整することで、各カシメ用空間24を現出させるように構成したが、各カシメ用空間24の現出方法はこれに限定されない。例えば、クッション体19の射出成形材料として、表皮18の素材に対して低接着力の材料を選択的に使用し、各挿通孔18aに各脚部15の上端部を差し込んだ際に、各挿通孔18aの形成部の裏面からその周辺のクッション体19の一部分を剥がして内方へ押し込むことにより、各カシメ用空間24を現出するようにしてもよい。
こうして製造されたヘッドレスト14は、その後、梱包されて所定の出荷先へ輸送される(出荷工程)。
【0036】
このように、ヘッドレストスティ10をブリッジ部16と左右一対の脚部15とに3分割し、このうちの各脚部15のみにメッキ処理を施したため、メッキ処理時、メッキラックに吊下可能な部材の本数が増加し、メッキ処理のコスト低下およびメッキ処理の作業性を高めることができる。よって、ヘッドレストスティ10のブリッジ部16と脚部15とにおいて、それぞれの機能や要求強度に適合した部材を任意に選択することが可能となり、ヘッドレストスティ10、ひいてはヘッドレスト14の品質やコストに優位性を付与できる。
【0037】
例えば、
図5および
図6に示すように、ヘッドレストスティ10Aのブリッジ部16Aの各両端部と各脚部15の上端部とを、突き合わせによる連結構造としてもよい。具体的には、ブリッジ部16Aの各側部杆20Bの下端部と、各脚部15の上端部とに、それぞれ連結スリーブSの一部を内嵌し、この状態を維持して、これらの連結部分を別のカシメ具により左右方向からスポット的にカシメるものである。また、カシメに代えてスポット溶接でもよい。
さらに、
図7に示すように、ヘッドレストスティ10Bの軽量化を図るため、ブリッジ部16Bを、各脚部15より薄肉なステンレスパイプ(例えば1.2mm)から設けてもよい。その際には、ブリッジ部16Bの屈曲部分に補強スリーブS1を内篏して補強した方が好ましい。
さらにまた、図示しないものの、ヘッドレストスティ10の軽量化対策として、ブリッジ部16のステンレスパイプの直径を、各脚部15のものの直径より小径にしてもよい。ただし、各脚部15の連結部分には、本来のサイズが必要である。
【0038】
このように、ヘッドレストスティ10を3分割したことで、枕部17の作製後に各脚部15をブリッジ部16の両端部に連結することが可能となり、ヘッドレスト14、特に枕部17の作製中において、各脚部15のメッキ面へのキズの発生を抑制することができる。さらには、このブリッジ部16と各脚部15との連結作業を、例えば海外を含めた出荷先(現地)の組立工場で行うことも可能となり、その際には、ヘッドレスト14をコンパクトに箱詰めでき、輸送コストの低減を図ることができる。
【0039】
また、枕部17の内部に各カシメ用空間24を形成し、これらのカシメ用空間24で各脚部15とブリッジ部16とを連結した後、カシメ具25を用いてこれらの連結部分をカシメるようにしたため、メッキ剥がれを伴うカシメ痕は、表皮18によって隠される。その結果、ヘッドレストスティ10が3分割されたものでありながら、製造されたヘッドレスト14は、デザイン的および強度的にも従来品とそん色がない。
【0040】
次に、
図8および
図9を参照して、この発明の
参考例2に係るヘッドレストスティについて説明する。
図8および
図9に示すように、
参考例2のヘッドレストスティ10Cの特徴は、各脚部15とブリッジ部16Cとの連結部分と、ブリッジ部16Cの各屈曲部分との各水平な断面がそれぞれ長円形で、各長軸が座席12の前後方向に延びるように設けられた点である(
図8の部分拡大断面図を参照)。
ここでいう“断面”とは、ステンレスパイプ製のブリッジ部16の管軸に直交する断面(水平な断面)をいう。
【0041】
このように構成することで、断面円形の丸パイプから形成された
参考例1のブリッジ部16や、この長円形の長軸方向を左右方向に向けたブリッジ部とした場合に比べて、断面係数が大きく高剛性となる。その結果、例えば急停車時、着座乗員の頭部が枕部17にぶつかって、ブリッジ部16Cの各脚部15との連結部分およびブリッジ部16Cの屈曲部分に、それぞれ大きな曲げモーメントが作用しても、このブリッジ部16Cは変形しにくい。
その他の構成、作用および効果は、
参考例1と略同じであるため、説明を省略する。
【0042】
次に、
図10を参照して、この発明の
参考例3に係るヘッドレストスティについて説明する。
図10に示すように、この発明の
参考例3のヘッドレストスティ10Dの特徴は、ブリッジ部16Dのうち、各脚部15との連結部分16aを除いた部分を、多数の長孔26付きのステンレス製の枠板から構成し、この枠板の水平配置される中間枠部(実施例1の中央杆20Aに該当)27においては、板幅方向を上下方向に向ける一方、その他の部分、すなわち斜め後方へ向けて外広がりした左右一対の側枠部(
参考例1の側部杆20Bに該当)28にあっては、その板幅方向を前後方向に向けた点である。
【0043】
このように構成することで、断面円形の丸パイプ製のブリッジ部16に比べて、ヘッドレストスティ10Dの軽量化が図れるとともに、この丸パイプ製のブリッジ部16や、この枠板の板幅方向を左右方向に向けたブリッジ部とした場合に比べて、ブリッジ部16Dの各側枠部28は、断面係数が大きく高剛性となる。
その結果、例えば急停車時、着座乗員の頭部が枕部17にぶつかって、ブリッジ部16Dの各脚部15との連結部分およびブリッジ部16Dの各側枠部28にそれぞれ大きな曲げモーメントが作用しても、このブリッジ部16は変形しにくい。
また、ブリッジ部16Dの各脚部15との連結部分16aは、各脚部15の上端部を外嵌できるように、
参考例1のブリッジ部16の該当部分により大径に形成されている。
その他の構成、作用および効果は、
参考例1から推測可能な範囲であるため、説明を省略する。
【0044】
次に、
図11を参照して、この発明の
参考例4に係るヘッドレストスティについて説明する。
図11に示すように、この発明の
参考例4のヘッドレストスティ10Eの特徴は、ブリッジ部16Eの素材として他の合成樹脂に比べて高強度なポリアミド樹脂を採用することにより、ヘッドレストスティ10Eのさらなる軽量化を図った点である。
【0045】
このブリッジ部16Eは、山形状の中央杆20Aと、これに連結された左右一対の側枠部20Bとの各裏側半分が、それぞれ全長にわたって切除された基枠29と、基枠29の内側に一体的に展張された湾曲板30とを有している。湾曲板30には、ブリッジ部16のさらなる軽量化を図るため、表裏面を貫通した大小4つの孔部30aが四つ葉状に形成されている。ブリッジ部16Eは、クッション体19に埋設されることから、ステンレスパイプほどの強度は必要とされない。また、ブリッジ部16Eの各脚部15との連結部分16bは、各脚部15の上端部の前側半分を外嵌するように構成されている。
なお、これらの連結部分は、例えば接着剤によって互いの連結強度を高めてもよい。
また、
図12に示すように、湾曲板30を省略した基枠29のみのブリッジ部16Fとしてもよい。
その他の構成、作用および効果は、
参考例1から推測可能な範囲であるため、説明を省略する。
【0046】
次に、
図13および
図14を参照して、この発明の実施例5に係るヘッドレストスティについて説明する。
図13および
図14に示すように、この発明の実施例5のヘッドレストスティ10Fの特徴は、左右一対の脚部15Aとして、対応する側部杆20Bとの連結部分(基端部)15bが拡径化されたものを採用し、各連結部分15bとブリッジ部16の連結では、各連結部分15bの管内に、対応する側部杆20Bの下端部を嵌入して、周方向に30°ピッチで前後2列の各箇所をスポット的にカシメることによって、合計12個のカシメ部15cを形成した点である。
これにより、ブリッジ部16と各脚部15Aとの連結強度(カシメ強度)が高まり、各脚部15Aが対応する側部杆20Bからさらに抜けにくくなる。
その他の構成、作用および効果は、
参考例1から推測可能な範囲であるため、説明を省略する。