(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の鋼管膨張パックのそれぞれが両端に同一形状のねじ部を有し、そのねじ部の一方が前記注入孔に、他方が前記流出孔に設けられていて、前記接続管が該ねじ部に対して着脱自在な管であることを特徴とする請求項2記載の鋼管膨張体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2のように袋体にモルタル等の硬化性注入材を注入する方法では、注入材を練って好ましい流動状態にして注入する手間を要し、硬化性注入材が硬化するまでに時間がかかることから、多くの作業労力を要すると共に、作業効率に劣り、長い作業時間が必要になるという問題がある。また、切羽近傍に硬化性注入材や、その混練・打設機械を置く必要があり、その設置作業にも労力を要すると共に、作業スペースが狭小化する不具合も生ずる。また、硬化性注入材が硬化するまでに時間がかかることから、即座に安定した支保工の状態を得ることが難しいという問題もある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、即座に安定した支保工の状態を得ることを可能にすると共に、トンネル構築作業における作業労力の省力化、作業効率の向上、広い作業スペースの確保を図ることができる鋼管膨張パック、鋼管膨張体及びトンネルの構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の鋼管膨張パックは、支保工とトンネル内周面との間に設けられる鋼管膨張パックであって、扁平状の鋼管本体と、前記鋼管本体の両端の開口を閉塞するように前記両端に外嵌されて固定される端部補強キャップと、一方の端部近傍に設けられる、常温で非硬化状態を維持する非硬化性流体の注入孔とを備え、前記鋼管本体が前記非硬化性流体の加圧注入圧で厚さ方向に膨張可能になっていることを特徴とする。
これによれば、非硬化性流体で鋼管膨張パックを膨張させることで、即座に鋼管膨張パックを膨張状態で安定化することが可能となり、例えば硬化性注入材の硬化時間の間に地山の緩みが生じて支保工に局所的な応力が生ずること等が無くなる。即ち、即座に安定した支保工の状態を得ることが可能となる。また、鋼管膨張パックでは硬化性注入材を用いないことから、硬化性注入材の混練、切羽近傍への硬化性注入材や混練・打設機械の設置、硬化時間待ちの必要が無くなり、トンネル構築作業における作業労力の省力化、作業効率の向上、広い作業スペースの確保を図ることができる。
【0008】
本発明の鋼管膨張体は、本発明の鋼管膨張パックの複数が、管の延びる方向に線状に並べて設けられ、少なくとも、前記非硬化性流体の注入側の基端の前記鋼管膨張パックと、前記基端と先端の間に位置する前記鋼管膨張パックとに、前記非硬化性流体の流出孔が他方の端部近傍に設けられ、隣りに位置する前記流出孔と前記注入孔が接続管を介して接続され、前記基端に位置する前記鋼管膨張パックの前記注入孔から加圧注入される非硬化性流体を前記先端に位置する前記鋼管膨張パックまで流通可能になっていることを特徴とする。
これによれば、例えば多様なトンネル周長に合わせ、同一規格・サイズの鋼管膨張パックを所要個数連結して鋼管膨張体を構成し、トンネル掘削面と支保工との間の隙間を埋めることができる等、汎用性を高めることができる。
【0009】
本発明の鋼管膨張体は、前記複数の鋼管膨張パックのそれぞれが両端に同一形状のねじ部を有し、そのねじ部の一方が前記注入孔に、他方が前記流出孔に設けられていて、前記接続管が該ねじ部に対して着脱自在な管であることを特徴とする。
これによれば、同一形状の鋼管膨張パックを多数用意し、その両端にねじ継手を介して接続管を取り付けて鋼管膨張体の形に組み立てることが現場で容易にできる。この組み立て時に、注入孔と流出孔のねじ部が同一であるため、鋼管膨張パックの向きを気にする必要がない。また、鋼管膨張パックを個々独立して収納、運搬することが可能となり、収納、運搬の便宜性向上、コスト低減の効果を一層高めることができる。
【0010】
本発明のトンネルの構築方法は、トンネル掘削面に近接してアーチ状に支保工を建て込むと共に、本発明の鋼管膨張体を前記支保工の背面側に設置する第1工程と、前記鋼管膨張体の基端に位置する前記鋼管膨張パックの前記注入孔から前記非硬化性流体を加圧注入し、前記トンネル掘削面と前記支保工との隙間を埋めていくように前記鋼管膨張パックの各々を厚さ方向に膨張させる第2工程と、少なくとも、前記基端に位置する前記鋼管膨張パックの前記注入孔から加圧注入した前記非硬化性流体を排水する第3工程とを備えることを特徴とする。
これによれば、水等の非硬化性流体を加圧注入することで鋼管膨張パックがすぐに塑性変形して膨張し、安定した膨張状態の鋼管膨張パックで支保工背面とトンネル掘削面との隙間を埋めることができ、掘削後の地山の緩みを素早く抑えることができる。従って、モルタル等の硬化性注入材を練って注入してこれが硬化するのを待つ手間、時間が不要であり、又、この混連や硬化に要する時間内に生ずる地山の緩みを防止できる。そして、地山が緩まない結果として、地山の内部応力の維持、漏水発生の防止、支保工の局所的な応力の発生防止の効果を得ることができる。また、硬化性注入材を袋内で硬化させる構成では、地山が局所的に押し出してきて充填材が負けたときに硬化した注入材が壊れて意味のないものとなるが、本発明の構築方法では、鋼管膨張パックがクッションのように機能して、部分的にへたれる箇所があっても地山の押し出しによる応力を分散することができ、トンネル空間周囲の地山の応力再配分に寄与する。更に、本発明の鋼管膨張体と同様の効果も奏する。
【0011】
本発明のトンネルの構築方法は、先端の前記鋼管膨張パックの他方の端部近傍に前記非硬化性流体の流出孔が設けられている前記鋼管膨張体を用い、前記第2工程において、前記鋼管膨張体の前記先端の鋼管膨張パックの流出孔に管端バルブを取り付け、前記管端バルブを開状態にして前記非硬化性流体を加圧注入し、前記管端バルブからの前記非硬化性流体の流出の確認後に前記管端バルブを閉状態にして前記鋼管膨張パックの各々を厚さ方向に膨張させることを特徴とする。
これによれば、鋼管膨張体の全体への非硬化性流体の流通、行き渡りを確認し、鋼管膨張体を構成する全ての鋼管膨張パックを確実に膨張させ、支保工とトンネル掘削面との間に局所的に大きな隙間が残ることを確実に防止することができる。
【0012】
本発明のトンネルの構築方法は、トンネル掘削面に近接してアーチ状に支保工を建て込むと共に、長尺弧状の本発明の鋼管膨張パックを前記支保工の背面側に設置する第1工程と、前記鋼管膨張パックの前記注入孔から前記非硬化性流体を加圧注入し、前記トンネル掘削面と前記支保工との隙間を埋めていくように前記鋼管膨張パックを厚さ方向に膨張させる第2工程と、少なくとも、前記鋼管膨張パックの前記注入孔から加圧注入した前記非硬化性流体を排水する第3工程とを備えることを特徴とする。
これによれば、水等の非硬化性流体を加圧注入することで鋼管膨張パックがすぐに塑性変形して膨張し、安定した膨張状態の鋼管膨張パックで支保工背面とトンネル掘削面との隙間を埋めることができ、掘削後の地山の緩みを素早く抑えることができる。従って、モルタル等の硬化性注入材を練って注入してこれが硬化するのを待つ手間、時間が不要であり、又、この混連や硬化に要する時間内に生ずる地山の緩みを防止できる。そして、地山が緩まない結果として、地山の内部応力の維持、漏水発生の防止、支保工の局所的な応力の発生防止の効果を得ることができる。また、硬化性注入材を袋内で硬化させる構成では、地山が局所的に押し出してきて充填材が負けたときに硬化した注入材が壊れて意味のないものとなるが、本発明の構築方法では、鋼管膨張パックがクッションのように機能して、部分的にへたれる箇所があっても地山の押し出しによる応力を分散することができ、トンネル空間周囲の地山の応力再配分に寄与する。
また、接続されていない長尺の鋼管膨張パックを用いることにより、支保工とトンネル掘削面との隙間を埋める部材にかかる製造コストを低減することができる。更に、本発明の鋼管膨張パックと同様の効果も奏する。
【0013】
本発明のトンネルの構築方法は、トンネル掘削面に近接してアーチ状に建て込む支保工の脚部と地盤との間に、本発明の鋼管膨張パックを設置する第1工程と、前記鋼管膨張パックの前記注入孔から前記非硬化性流体を加圧注入し、前記支保工を持ち上げるように前記鋼管膨張パックを厚さ方向に膨張させる第2工程とを備えることを特徴とする。
これによれば、鋼管膨張パックを塑性変形させて膨張させることで、即座に支保工をトンネル掘削面に近づけて所望の位置に定置させることができる。更に、本発明の鋼管膨張パックと同様の効果も奏する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、即座に安定した支保工の状態を得ることができると共に、トンネル構築作業における作業労力の省力化、作業効率の向上、広い作業スペースの確保を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(a)は本発明による第1実施形態の鋼管膨張パックによる鋼管膨張体の正面図、(b)はその平面図、(c)はその底面図、(d)は同図(a)のA部拡大図、(e)は基端に位置する鋼管膨張パックの一部を示す拡大正面図、(f)は先端に位置する鋼管膨張パックの一部を示す拡大正面図。
【
図2】(a)は
図1の鋼管膨張体の鋼管膨張パックの膨張後の状態を示す正面図、(b)はその平面図。
【
図3】(a)〜(d)は
図1の鋼管膨張体の鋼管膨張パックの製造工程を説明する斜視説明図。
【
図4】本発明による第1実施形態のトンネルの構築方法で構築中のトンネルを示す縦断説明図。
【
図5】第1実施形態のトンネルの構築方法による鋼管膨張パックの膨張前のトンネルの状態を示す横断説明図。
【
図6】第1実施形態のトンネルの構築方法による鋼管膨張パックの膨張後のトンネルの状態を示す横断説明図。
【
図7】(a)は本発明による第1実施形態の第1変形例の鋼管膨張パックによる鋼管膨張体の正面図、(b)はその平面図、(c)は同図(a)のB部拡大図、(d)は同図(b)のC−C矢視図。
【
図8】(a)は
図7の鋼管膨張体の鋼管膨張パックの膨張後の状態を示す正面図、(b)はその平面図。
【
図9】(a)は本発明による第1実施形態の第2変形例の鋼管膨張パックの正面図、(b)は同図(a)の鋼管膨張パックによる鋼管膨張体の正面図。
【
図10】(a)は
図9の鋼管膨張パックへの接続管の接続を説明する部分断面説明図、(b)は
図9の鋼管膨張パックに接続管が接続された状態を示す部分断面図。
【
図11】(a)は本発明による第2実施形態の鋼管膨張パックの正面図、(b)はその平面図、(c)は鋼管膨張パックの一部を示す拡大正面図。
【
図12】(a)は
図11の鋼管膨張パックの膨張後の状態を示す正面図、(b)はその平面図。
【
図13】第2実施形態のトンネルの構築方法による鋼管膨張パックの膨張前のトンネルの状態を示す横断説明図。
【
図14】第2実施形態のトンネルの構築方法による鋼管膨張パックの膨張後のトンネルの状態を示す横断説明図。
【
図15】(a)、(b)は本発明の鋼管膨張パックをキャンバーとして使用する例を説明する横断説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1実施形態の鋼管膨張パック、鋼管膨張体及びトンネルの構築方法〕
本発明による第1実施形態の鋼管膨張パック11は、支保工51とトンネル内周面との間に設けられるものであり、
図1及び
図2に示すように、複数の鋼管膨張パック11を非硬化性流体Fを流通可能に接続して構成される鋼管膨張体10の一部をなしている。
【0017】
鋼管膨張パック11は、非硬化性流体Fの加圧注入圧で厚さ方向に膨張可能な扁平状の鋼管本体12と、鋼管本体12の両端の開口を閉塞するように両端に外嵌されて溶接等で固定される端部補強キャップ13・13と、鋼管膨張パック11の長手方向の一方の端部近傍に設けられ、扁平状の鋼管本体12の片面に形成されている注入孔15と、他方の端部近傍に設けられ、扁平状の鋼管本体12の片面に形成されている流出孔16を備える。鋼管本体12の内部には扁平状の中空部14が設けられ、注入孔15と流出孔16が中空部14に連通するように形成されている。注入孔15は例えば水等の常温で非硬化状態を維持する非硬化性流体Fの注入孔15、流出孔16はこの非硬化性流体Fの流出孔16である。
【0018】
流出孔16が開放されている場合には、注入孔15から加圧注入された非硬化性流体Fが中空部14を通って流出孔16から流出するようになっており、又、流出孔16が閉塞されているか、流出孔16の外側から内側に向かって加圧注入圧に抗する圧力がかかっている場合には、鋼管本体12が非硬化性流体Fの加圧注入圧で厚さ方向に膨張するようになっている。
【0019】
第1実施形態における鋼管膨張体10は、複数の鋼管膨張パック11を管の延びる方向に線状に並べて設けられており、隣りに位置する一の鋼管膨張パック11の流出孔16と他の鋼管膨張パック11の注入孔15とが接続管17を介して接続されている。接続管17は屈曲可能な管とすると好適であり、例えば波形金属管を用いたフレキシブル管や耐圧ホースを、流出孔16の周縁近傍と注入孔15の周縁近傍とにフレキシブル管の両端部を溶接等で固定したり管継手を介して耐圧ホースを接続する構成とすると良好である。
【0020】
第1実施形態の鋼管膨張体10では、非硬化性流体Fの注入側の基端の鋼管膨張パック11から先端の鋼管膨張パック11まで全ての鋼管膨張パック11に、一方の端部近傍に注入孔15、他方の端部近傍に流出孔16が設けられ、基端に位置する鋼管膨張パック11の注入孔15から注入される非硬化性流体Fが先端に位置する鋼管膨張パック11まで流通可能になっており、水等の非硬化性流体Fの加圧注入時に、先端の鋼管膨張パック11の流出孔16が閉塞されるか、流出孔16の外側から内側に向かって加圧注入圧に抗する圧力がかかる場合には、基端の鋼管膨張パック11から先端の鋼管膨張パック11まで全ての鋼管膨張パック11が非硬化性流体Fの加圧注入圧で厚さ方向に膨張するようになっている。
【0021】
尚、鋼管膨張体10における非硬化性流体Fの流出孔16は、少なくとも、基端の鋼管膨張パック11の他方の端部近傍と、基端と先端の間に位置する各々の鋼管膨張パック11の他方の端部近傍とに設ければよい。例えば先端の鋼管膨張パック11の他方の端部近傍には流出孔16を設けない構成とすることも可能であり、この場合にも、基端に位置する鋼管膨張パック11の注入孔15から加圧注入される非硬化性流体Fが先端に位置する鋼管膨張パック11まで流通し、基端の鋼管膨張パック11から先端の鋼管膨張パック11まで全ての鋼管膨張パック11が非硬化性流体Fの加圧注入圧で厚さ方向に膨張する。但し、製造コスト低減の観点からは、鋼管膨張体10を構成する全ての鋼管膨張パック11は流出孔16を有する同一構成のものとすることが好ましく、これは後述する第1変形例、第2変形例についても同様である。
【0022】
この鋼管膨張パック11及び鋼管膨張体10を製造する際には、例えば
図3に示すように、円筒状の鋼管本体12pをプレス加工等で押し潰して扁平状の鋼管本体12を成形した後、鋼管本体12の両端の開口を閉塞するようにして、凹形の端部補強キャップ13・13を鋼管本体12の両端に外嵌し、端部補強キャップ13の周縁と鋼管本体12の外周面を溶接する等により端部補強キャップ13を鋼管本体12に固定して鋼管本体12の両端の開口を封止する。
【0023】
その後、鋼管本体12の片面の一方の端部近傍に注入孔15を形成すると共に、同じ側の面である鋼管本体12の片面において他方の端部近傍に流出孔16を形成し、鋼管膨張パック11を得る。この鋼管膨張パック11を複数個形成した後、例えばフレキシブル管や耐圧ホースで構成される接続管17の一端を一の鋼管膨張パック11の流出孔16に接続して封止するように固定すると共に、接続管17の他端を一の鋼管膨張パック11の隣りに位置する他の鋼管膨張パック11の注入孔15に接続して液密に封止するように固定する。そして、線状に並べた複数の鋼管膨張パック11について、隣りに位置する鋼管膨張パック11・11の全てについて接続管17による固定、接続を行うことにより、鋼管膨張体10を得る。
【0024】
次に、鋼管膨張パック11で構成される鋼管膨張体10を用いて行うトンネルの構築方法について説明する。
図4〜
図6において、101は地山、102は切羽、103はトンネル内部空間、104はトンネル掘削面であり、又、51はトンネル掘削面104に近接してアーチ状に建て込まれた支保工、52は支保工51の沈下を防止するように支持するキャンバー、53は吹付コンクリート、54は二次覆工ラインである。
【0025】
鋼管膨張体10を用いてトンネルを構築する際には、
図4及び
図5に示すように、例えば切羽102に近い位置でトンネル掘削面104に近接してアーチ状に支保工51を建て込むと共に、鋼管膨張体10をこのアーチ状に建て込んだ支保工51の背面側に設置する。図示例では、鋼管膨張体10の略中央をトンネルの天端付近に配置し、基端の鋼管膨張パック11が左端、先端の鋼管膨張パック11が右端になるようにして、鋼管膨張体10を左右対称の弧状になるように配置している。更に、鋼管膨張体10における基端の鋼管膨張パック11の注入孔15に、加圧注入装置62に接続されている加圧注入用ホース61の一端を取り付けると共に、先端に位置する鋼管膨張パック11の流出孔16にホースを介して管端バルブ63を取り付けている。
【0026】
その後、管端バルブ63を開状態にして加圧注入装置62を駆動し、基端の鋼管膨張パック11の注入孔15から水等の非硬化性流体Fを加圧注入する。非硬化性流体Fを加圧注入された鋼管膨張体10では、接続管17を介して各鋼管膨張パック11に非硬化性流体Fが流通し、開状態の管端バルブ63からの非硬化性流体Fの流出により、鋼管膨張体10を構成する全ての鋼管膨張パック11に非硬化性流体Fが流通したことを確認する。開状態の管端バルブ63からの非硬化性流体Fの流出後に管端バルブ63を閉状態にして非硬化性流体Fを加圧注入すると、管端バルブ63の閉鎖で先端の鋼管膨張パック11の流出孔16に外側から内側に向かって加圧注入圧に抗する圧力がかかり、接続された各鋼管膨張パック11の全体が閉じられた状態となって、トンネル掘削面104と支保工51との隙間を埋めていくように各鋼管膨張パック11が厚さ方向に膨張する(
図2参照)。これにより、支保工51背面と地山101が応力的に接続される。
【0027】
その後、基端に位置する鋼管膨張パック11の注入孔15から加圧注入用ホース61を取り外して開放させ、基端の鋼管膨張パック11の注入孔15から非硬化性流体Fを排水すると共に、先端に位置する鋼管膨張パック11の流出孔16にホースを介して接続されている管端バルブ63を開放させ、先端の鋼管膨張パック11の流出孔16から管端バルブ63を介して非硬化性流体Fを排水する。この際、天端より左側に位置する各鋼管膨張パック11では、流出孔16から注入孔15に逆流するように注入された非硬化性流体Fが流れ、天端より右側に位置する各鋼管膨張パック11では、注入孔15から流出孔16に向かって注入された非硬化性流体Fが流れ、それぞれ排水されていく。
【0028】
尚、例えば先端の鋼管膨張パック11の流出孔16が形成されていない鋼管膨張体10を2個用いて、それぞれ基端の鋼管膨張パック11を下側、先端の鋼管膨張パック11を天端付近に配置するようにして支保工51の背面側に設置し、それぞれの鋼管膨張体10について、基端の鋼管膨張パック11の注入孔15に加圧注入装置62に接続されている加圧注入用ホース61の一端を取り付け、基端の鋼管膨張パック11の注入孔15から水等の非硬化性流体Fを加圧注入し、各鋼管膨張パック11の膨張後に注入孔15から加圧注入用ホース61を取り外して開放させ、基端の鋼管膨張パック11の注入孔15だけから非硬化性流体Fを排水する構成等とすることも可能である。
【0029】
〔第1実施形態の第1変形例の鋼管膨張パック及び鋼管膨張体〕
ここで、第1実施形態の第1変形例の鋼管膨張パック21及び鋼管膨張体20について説明する。
図7及び
図8に示すように、第1変形例の鋼管膨張パック21も、複数の鋼管膨張パック21を非硬化性流体Fを流通可能に接続して構成される鋼管膨張体20の一部をなしている。
【0030】
鋼管膨張パック21は、非硬化性流体Fの加圧注入圧で厚さ方向に膨張可能な扁平状の鋼管本体22と、鋼管本体22の両端の開口を閉塞するように両端に外嵌されて溶接等で固定される端部補強キャップ23・23を備える。端部補強キャップ23は、鋼管本体22の両端の開口を閉塞するように配置される側板231と、鋼管本体22の両端の周囲を被覆するカラー232とから構成されている。側板231、カラー232の固定は、例えば側板231を鋼管本体22の開口端縁と溶接し、カラー232を側板231や鋼管本体22の外周面に溶接して固定すると好適である。
【0031】
鋼管膨張パック21には、一方の端部の側板231に形成されて長手方向の一方の端部近傍に注入孔25が設けられ、他方の端部の側板231に形成されて他方の端部近傍に流出孔26が設けられている。注入孔25と流出孔16は側板231の略対応する位置に形成されている。鋼管本体22の内部には扁平状の中空部24が設けられ、注入孔25と流出孔26が中空部24に連通するように形成されている。注入孔25は例えば水等の常温で非硬化状態を維持する非硬化性流体Fの注入孔25、流出孔26はこの非硬化性流体の流出孔26である。
【0032】
第1変形例においても、流出孔26が開放されている場合には、注入孔25から加圧注入された非硬化性流体Fが中空部14を通って流出孔16から流出し、又、流出孔26が閉塞されているか、流出孔26の外側から内側に向かって加圧注入圧に抗する圧力がかかっている場合には、鋼管本体22が非硬化性流体Fの加圧注入圧で厚さ方向に膨張する。
【0033】
第1変形例の鋼管膨張体20は、複数の鋼管膨張パック21を管の延びる方向に線状に並べて設けられており、隣りに位置する一の鋼管膨張パック21の流出孔26と他の鋼管膨張パック21の注入孔25とが接続管27を介して接続されている。接続管27も屈曲可能なフレキシブル管とすると好適であり、例えばフレキシブル管や耐圧ホースを用い、流出孔26の周縁近傍と注入孔25の周縁近傍とに波形金属管の両端部を溶接等で固定したり管継手を用いて耐圧ホースを接続する構成とすると良好である。
【0034】
第1変形例の鋼管膨張体20も、非硬化性流体Fの注入側の基端の鋼管膨張パック21から先端の鋼管膨張パック21まで全ての鋼管膨張パック21に、一方の端部近傍に注入孔25、他方の端部近傍に流出孔26が設けられ、基端に位置する鋼管膨張パック21の注入孔25から注入される非硬化性流体Fが先端に位置する鋼管膨張パック21まで流通可能になっている。
【0035】
そして、水等の非硬化性流体Fの加圧注入時に、先端の鋼管膨張パック21の流出孔26が閉塞されるか、流出孔26の外側から内側に向かって加圧注入圧に抗する圧力がかかる場合には、基端の鋼管膨張パック21から先端の鋼管膨張パック21まで全ての鋼管膨張パック21が非硬化性流体Fの加圧注入圧で厚さ方向に膨張する。尚、第1変形例の鋼管膨張体20に対しても、上記鋼管膨張体10と同様に先端の鋼管膨張パック21に流出孔26を設けない変形をすることも可能であり、又、第1変形例の鋼管膨張パック21、鋼管膨張体20も、上記鋼管膨張パック11、鋼管膨張体10を用いるトンネル構築方法と同様の施工手順を有するトンネル構築方法に適用することが可能である。
【0036】
〔第1実施形態の第2変形例の鋼管膨張パック及び鋼管膨張体〕
次に、第1実施形態の第2変形例の鋼管膨張パック31及び鋼管膨張体30について説明する。
図9及び
図10に示すように、第2変形例の鋼管膨張パック31も、複数の鋼管膨張パック31を非硬化性流体Fを流通可能に接続して構成される鋼管膨張体30の一部をなすものであるが、後述する接続管36が着脱自在であり、例えば工場では鋼管膨張パック31を接続されていない個々の状態で出荷し、施工現場にて鋼管膨張パック31を接続管36を介して相互に接続することが可能になっている。
【0037】
鋼管膨張パック31は、非硬化性流体Fの加圧注入圧で厚さ方向に膨張可能な扁平状の鋼管本体32と、鋼管本体32の両端の開口を閉塞するように両端に外嵌されて溶接等で固定される端部補強キャップ33・33を備える。端部補強キャップ33は、鋼管本体32の両端の開口を閉塞するように配置される側板331と、鋼管本体32の両端の周囲を被覆するカラー332とから構成され、側板331には雌ねじ孔333が鋼管本体32内の扁平状の中空部34と貫通するように形成されている。換言すると、鋼管膨張パック31は、両端に同一形状のねじ部である雌ねじ孔333、333をそれぞれ有し、その一方の雌ねじ孔333が注入孔として機能し、他方の雌ねじ孔333が流出孔として機能する。側板331、カラー332の鋼管本体32への固定は第1変形例と同様に行うと好適である。
【0038】
更に、鋼管膨張パック31の両端には、異径管継手である管継手35が設けられている。管継手35は、内部を貫通する貫通孔351と、少なくとも側板331への取付側である内端寄りの外周面に形成されている雄ねじ部352を有し、雄ねじ部352を雌ねじ孔333に螺合することで、管継手35が側板331に固定されている。側板331に固定された管継手35は中空部34と連通し、一方の端部に設けられた管継手35の貫通孔351が例えば水等の常温で非硬化状態を維持する非硬化性流体Fの注入孔、他方の端部に設けられた管継手35の貫通孔351がこの非硬化性流体の流出孔となる。
【0039】
第2変形例においても、流出孔に相当する貫通孔351が開放されている場合には、注入孔に相当する貫通孔351から加圧注入された非硬化性流体Fが中空部34を通って流出孔側から流出し、又、流出孔に相当する貫通孔351の外側から内側に向かって加圧注入圧に抗する圧力がかかっている場合には、鋼管本体32が非硬化性流体Fの加圧注入圧で厚さ方向に膨張する。
【0040】
そして、第2変形例の鋼管膨張体20は、複数の鋼管膨張パック31を管の延びる方向に線状に並べて設けられており、一の鋼管膨張パック31の管継手35の外端寄りの外周面に接続管36の一端を外嵌し、その隣りに位置する他の鋼管膨張パック21の管継手35の外端寄りの外周面に接続管36の他端を外嵌し、接続管36を介して接続することで構成される。本例では、管継手35の外端寄りの外周面が側板331より外側に突出し、この突出している部分に接続管36を外嵌することから、接続作業が非常に容易である。
【0041】
接続管36は屈曲可能な管とすると好適であり、例えば樹脂製の耐圧ホースとすると良好である。また、管継手35の外端寄りの外周面にはシール材を設け、接続管36との水密な連通性を保つことが好ましい。
【0042】
第2変形例の鋼管膨張体30は、非硬化性流体Fの注入側の基端の鋼管膨張パック31から先端の鋼管膨張パック31まで全ての鋼管膨張パック31に、一方の端部近傍に注入孔に相当する貫通孔351、他方の端部近傍に流出孔に相当する貫通孔351が設けられ、基端に位置する鋼管膨張パック31の注入孔に相当する貫通孔351から注入される非硬化性流体Fが先端に位置する鋼管膨張パック31まで流通可能になっている。
【0043】
そして、水等の非硬化性流体Fの加圧注入時に、先端の鋼管膨張パック31の流出孔に相当する貫通孔351の外側から内側に向かって加圧注入圧に抗する圧力がかかっている場合には、基端の鋼管膨張パック31から先端の鋼管膨張パック31まで全ての鋼管膨張パック31が非硬化性流体Fの加圧注入圧で厚さ方向に膨張する。
【0044】
尚、第2変形例の鋼管膨張体30に対しても、上記鋼管膨張体10と同様に先端の鋼管膨張パック31に流出孔に相当する貫通孔351を設けない変形をすることも可能である。また、第2変形例の鋼管膨張パック31、鋼管膨張体30も、例えば鋼管膨張体30における基端の鋼管膨張パック31の注入孔に相当する貫通孔351に、加圧注入装置62に接続されている加圧注入用ホース61の一端を取り付けると共に、先端に位置する鋼管膨張パック11の流出孔に相当する貫通孔351にホースを介して管端バルブ63を取り付ける等により、上記鋼管膨張パック11、鋼管膨張体10を用いるトンネル構築方法と同様の施工手順を有するトンネル構築方法に適用することが可能である。更に、第2変形例によるトンネル構築方法では、工場では鋼管膨張パック31を接続されていない個々の状態で出荷し、施工現場にて鋼管膨張パック31を接続管36を介して相互接続して鋼管膨張体30とし、この鋼管膨張体30をアーチ状に建て込む支保工51の背面側に設置する工程とすると好適である。
【0045】
〔第1実施形態の効果〕
第1実施形態によれば、非硬化性流体Fで鋼管膨張パック11、21、31を塑性変形させて膨張させることで、即座に鋼管膨張パック11、21、31を膨張状態にして、地山101と支保工51を即座に応力的に接続することができる。これによって、掘削断面の不陸によって支保工51と地山101坑壁との間に隙間がある場合にも、吹付コンクリートの施工までの間にその隙間分だけ地山101が変形してしまうことが防止される。また、地山101の緩みが生じて支保工51に局所的な応力が生ずることが無くなる。即ち、即座に安定した地山101の変形のない状態を得ることが可能となる。また、鋼管膨張パック11、21、31では硬化性注入材を用いないことから、硬化性注入材の混練、切羽近傍への硬化性注入材や混練・打設機械の設置、硬化時間待ちの必要が無くなり、トンネル構築作業における作業労力の省力化、作業効率の向上、広い作業スペースの確保を図ることができる。
【0046】
また、鋼管膨張体10、20、30を用いることにより、例えば多様なトンネル周長に合わせ、同一規格・サイズの鋼管膨張パック11、21、31を所要個数連結して鋼管膨張体を構成し、トンネル掘削面104と支保工51との間の隙間を埋めることができる等、汎用性を高めることができる。
【0047】
また、鋼管膨張体10、20、30を、複数の鋼管膨張パック11、21、31のそれぞれが両端に同一形状のねじ部を有し、そのねじ部の一方が注入孔で、他方が流出孔であり、接続管17、26、37が該ねじ部に対して着脱自在な管である場合には、同一形状の鋼管膨張パック11、21、31を多数用意し、その両端にねじ継手を介して接続管17、26、37を取り付けて鋼管膨張体10、20、30の形に組み立てることが現場で容易にできる。この組み立て時に、注入孔と流出孔のねじ部が同一であるため、鋼管膨張パックの向きを気にする必要がない。また、鋼管膨張パックを個々独立して収納、運搬することが可能となり、収納、運搬の便宜性向上、コスト低減の効果を一層高めることができる。
【0048】
また、鋼管膨張体10、20、30によるトンネルの構築方法によれば、水等の非硬化性流体Fを加圧注入することで鋼管膨張パック11、21がすぐに膨張し、安定した膨張状態の鋼管膨張パック11、21で支保工背面とトンネル掘削面104との隙間を埋めることができ、掘削後の地山101の緩みを素早く抑えることができる。従って、モルタル等の硬化性注入材を練って注入してこれが硬化するのを待つ手間、時間が不要であり、又、この混連や硬化に要する時間内に生ずる地山101の緩みを防止できる。そして、地山101が緩まない結果として、地山101の内部応力の維持、漏水発生の防止、支保工51の局所的な応力の発生防止の効果を得ることができる。また、硬化性注入材を袋内で硬化させる構成では、地山101が局所的に押し出してきて充填材が負けたときに硬化した注入材が壊れて意味のないものとなるが、この構築方法では、鋼管膨張パック11、21、31がクッションのように機能して、部分的にへたれる箇所があっても地山101の押し出しによる応力を分散することができ、トンネル空間周囲の地山の応力再配分に寄与する。
【0049】
また、管端バルブ63を一旦開状態にして非硬化性流体Fの流出を確認し、その後に管端バルブ63を閉状態にして非硬化性流体Fを加圧注入することにより、鋼管膨張体10、20、30を構成する鋼管膨張パック11、21、31を膨張させることで、鋼管膨張体10、20、30の全体への非硬化性流体Fの流通、行き渡りを確認することができるため、全ての鋼管膨張パック11、21、31を確実に膨張させ、支保工51とトンネル掘削面104との間に局所的に大きな隙間が残ることを確実に防止することができる。
【0050】
〔第2実施形態の鋼管膨張パック及びトンネルの構築方法〕
本発明による第2実施形態の鋼管膨張パック41は、支保工51とトンネル内周面との間に設けられるものであるが、第1実施形態と異なり複数接続されて鋼管膨張体を構成せずに、単独の鋼管膨張パック41として用いられる。鋼管膨張パック41は、
図11及び
図12に示すように、長尺弧状の形状を有する。
【0051】
鋼管膨張パック41は、非硬化性流体Fの加圧注入圧で厚さ方向に膨張可能な扁平状の鋼管本体42を有し、鋼管本体42は扁平している方向に湾曲した形状になっている。鋼管本体42には、その両端の開口を閉塞するように両端に端部補強キャップ43・43が外嵌され、溶接等で固定されている。
【0052】
鋼管膨張パック41の長手方向の一方の端部近傍には注入孔45が補強キャップ43と鋼管本体42を貫通するように設けられており、注入孔45は扁平状の扁平状の鋼管本体42の片面に形成されている。注入孔45は例えば水等の常温で非硬化状態を維持する非硬化性流体Fの注入孔45である。尚、第2実施形態の鋼管膨張パック41には流出孔は設けられていない。鋼管本体42の内部には扁平状の中空部44が設けられ、注入孔45が中空部44に連通するように形成されている。他方の端部近傍に流出孔がなく閉塞されている鋼管膨張パック41は、注入孔45から非硬化性流体Fが加圧注入された場合には、鋼管本体42が非硬化性流体Fの加圧注入圧で厚さ方向に膨張するようになっている。
【0053】
次に、鋼管膨張パック41を用いて行うトンネルの構築方法について説明する。
図13及び
図14において、101は地山、104はトンネル掘削面、51はトンネル掘削面104に近接してアーチ状に建て込まれた支保工、54は二次覆工ラインである。
【0054】
鋼管膨張パック41を用いてトンネルを構築する際には、
図13及び
図14に示すように、トンネル掘削面104に近接してアーチ状に支保工51を建て込むと共に、長尺弧状の鋼管膨張パック41をこのアーチ状に建て込んだ支保工51の背面側に設置する。図示例では、鋼管膨張パック41の非硬化性流体Fの注入側である基端を下側に配置し、先端を上側でトンネル天端付近に位置するように配置して、2個の鋼管膨張パック41を左右一対で配置している。
【0055】
その後、一方の鋼管膨張パック41の基端の注入孔45に、加圧注入装置62に接続されている加圧注入用ホース61の一端を取り付け、加圧注入装置62を駆動し、基端の鋼管膨張パック41の注入孔45から水等の非硬化性流体Fを加圧注入する。非硬化性流体Fを加圧注入された鋼管膨張パック41は、流出孔がなく閉じられた状態であることから、トンネル掘削面104と支保工51との隙間を埋めていくように一方の鋼管膨張パック41が厚さ方向に膨張する。そして、下側に位置する鋼管膨張パック41の注入孔45から加圧注入用ホース61を取り外して注入孔45を開放させ、基端の鋼管膨張パック41の注入孔45から一方の鋼管膨張パック41内に注入した非硬化性流体Fを排水する。
【0056】
また、他方の鋼管膨張パック41についても同様に、他方の鋼管膨張パック41の基端の注入孔45に、加圧注入装置62に接続されている加圧注入用ホース61の一端を取り付ける。更に、加圧注入装置62を駆動し、基端の鋼管膨張パック41の注入孔45から水等の非硬化性流体Fを加圧注入し、トンネル掘削面104と支保工51との隙間を埋めていくように他方の鋼管膨張パック41を厚さ方向に膨張させる。そして、下側に位置する鋼管膨張パック41の注入孔45から加圧注入用ホース61を取り外して注入孔45を開放させ、基端の鋼管膨張パック41の注入孔45から他方の鋼管膨張パック41内に注入した非硬化性流体Fを排水する。
【0057】
第2実施形態によれば、第1実施形態と対応する構成から対応する効果を得ることができる。また、接続されていない長尺の鋼管膨張パック41を用いることにより、支保工51とトンネル掘削面104との隙間を埋める部材にかかる製造コストを低減することができる。
【0058】
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明は、各発明、各実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含むものであり、例えば、常温で非硬化状態を維持する非硬化性流体として、圧縮空気(エア)を用いても良い。
【0059】
図15は本発明に加えて、鋼管膨張パックをキャンバーとしても追加的に使用する例を示すものであり、101は地山、104はトンネル掘削面、105は支保工建込時の地盤、51は支保工、54は二次覆工ラインである。この使用例では、トンネル掘削面104に近接してアーチ状に建て込む支保工51の脚部と地盤105との間に、第1実施形態の第2変形例の鋼管膨張パック31を設置する。
図15(a)の状態で設置した鋼管膨張パック31には、一方の端部近傍の注入孔に相当する貫通孔351に、加圧注入装置62に接続されている加圧注入用ホース61の一端を取り付け、他方の端部近傍の流出孔に相当する貫通孔351に、ホースを介して管端バルブ63を取り付ける(図示省略)。
【0060】
その後、加圧注入装置62を駆動し、鋼管膨張パック31の注入孔に相当する貫通孔351から水等の非硬化性流体Fを加圧注入する。管端バルブ63を閉状態にして非硬化性流体Fを加圧注入すると、支保工51を持ち上げるように鋼管膨張パック31が厚さ方向に膨張する。この加圧注入の際には、一旦管端バルブ63を開状態にして加圧注入装置62を駆動し、流出孔に相当する貫通孔351から注入した非硬化性流体Fの流出後に、管端バルブ63を閉状態にして非硬化性流体Fを加圧注入するようにしてもよい。この使用例によれば、鋼管膨張パック31を膨張させることで、即座に支保工51をトンネル掘削面104に近づけて所望の位置に定置させることができる。
【0061】
また、本発明において、支保工51とトンネル掘削面104との間の隙間を埋めることには、応力分散で地山101の緩みを早期に抑えられるように、支保工51とトンネル掘削面104とを線的又は面的に繋ぐように鋼管膨張パック11、21、31、41を膨張させて隙間を減らす適宜の場合が含まれる。