(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記端子収容部材に収容された前記端子の前記検査部に対するアクセスを可能とする検査孔を、前記端子収容部材の、前記基板収容部材と前記端子収容部材との嵌合側に設けた、請求項1乃至3のいずれかに記載の基板接続コネクタ。
前記基板収容部材と前記端子収容部材が嵌合状態にあるときに、前記基板収容部材によって支持された基板が、前記端子収容部材の一の側に設けた端子の弾性接触部と前記端子収容部材の前記一の側の対向側に設けた端子の弾性接触部との間に、前記基板の厚み方向において挟み込まれて、前記基板の板面に設けた端子部と前記端子の接触部とが接触する、請求項1乃至4のいずれかに記載の基板接続コネクタ。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、コンピュータ、その他の電子機器の分野では、古くから、検査治具を用いてコネクタに収容された端子の導通状態を検査することが行われてきた。例えば、
図19に、特許文献1に開示された電子機器に用いられるコネクタの側断面図を示す。
【0003】
特許文献1に開示されたコネクタでは、雌雄一対のコネクタが嵌合したときに、それぞれのハウジングに収容された端子金具に接続された電線同士が接続されるようになっている。被検査側のコネクタ184には、検査孔175に加えて解除孔188が形成されており、検査孔175は、各端子金具160の導通状態を検査する検査治具181を挿通可能であって収容部に通じて形成され、一方、解除孔188は、各端子金具160の短絡状態を解除する解除治具を挿通可能であって短絡領域に通じて形成されている。
【0004】
導通検査の際は、検査治具181を有するユニット185が被検査側のコネクタ184に接近し、コネクタ184の前面にユニット185が当接すると、ユニット185の検査ピン186の先端がコネクタ184の検査孔175を通して端子金具160の折り返し部168に当接すると同時に、ユニット185の解除ピン187がコネクタ184の解除孔188を通して端子金具160の弾性片166の接触部172とこれに隣接する端子金具160の本体部の底壁167との間に割って入り、各端子金具160同士の短絡状態を解除するとともに解除ピン187と本体部の底壁167とが非接触とされるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、自動車、オートバイ等の自動車産業の分野で、特許文献1や特許文献2に開示されているような基板接続コネクタの開発が急速に進んでいる。基板接続コネクタは、一般に、様々な電子部品が搭載された基板を収容する基板収容部材と、ケーブルを接続した複数の端子を収容した端子収容部材の組み合わせから成り、基板収容部材と端子収容部材が嵌合状態にあるときに、端子収容部材の一の側に設けた端子の接触部と、端子収容部材の一の側の対向側に設けた端子の接触部との間に、基板収容部材によって支持された基板がその厚み方向にて挟み込まれて、基板の板面に設けた端子部と端子の接触部とが弾性接触するようになっている。基板接続コネクタが、例えば、自動車等に使用された場合、基板やコネクタは振動や高温に晒される危険が高く、この結果、基板の板面に設けた端子部と端子の接触部との間の接触が不安定になるおそれがある。基板に搭載された電子部品は、時として、自動車のエンジン、ブレーキ等を制御する中核ともなることから、導通検査を行う際は、基板と端子の接触に如何なる影響も与えない、或いは、そのような影響を最小限にすることが望まれる。
【0007】
しかしながら、従来の電子機器で使用されてきた、例えば、上記の導通検査構成は、そもそも、基板と端子の間の接触構成に用いられるものではなく、この構成をそのまま基板接続コネクタに適用することはできない。また、仮に、適用することができたとしても、例えば、上記の導通検査構成では、検査ピンを端子に当接させる際に端子金具に大きな負荷がかかり、この結果、端子金具を変形させてしまうおそれがある。更に、解除ピンを用いることによって、端子金具の接触部に塵やゴミが付着し、接触部と基板との接触に悪影響を及ぼすおそれもある。
【0008】
本願発明は、基板接続コネクタの分野における導通検査に関する問題を解決するといった新たな視点に基づくものであり、端子の検査時における問題を軽減或いは解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による基板接続コネクタは、基板を収容する基板収容部材と、端子を収容する端子収容部材と、を備え、前記基板収容部材と前記端子収容部材が嵌合状態にあるときに、前記基板の板面に設けた端子部と前記端子の弾性接触部とが接触するようになっており、前記端子は、前記接触部を有する弾性変位部と、前記端子を検査するための検査治具を接触させる検査部を含み、前記弾性変位部は、筒状に折り曲げた金属板の一の筒状面に切り込みを設けて成り、前記検査部は、前記金属板の一部を利用して前記筒状面とは異なる面に設けられている基板接続コネクタを特徴とする。
この態様による基板接続コネクタによれば、端子の検査時における問題を軽減或いは解決することができる。例えば、弾性変位部を筒状部の一の筒状面に切り込みを設けたことによって弾性変位部の周辺強度を高くして、検査治具の接触時における弾性変位部の耐力を高めることができる。また、検査部を弾性変位部を設けた筒状面とは異なる面に設けたことにより、検査時におけるゴミ等の付着の問題を解決することができる。
【0010】
上記態様の基板接続コネクタにおいて、前記検査部は、前記金属板の一部を前記金属板によって形成された筒の開口を塞ぐ方向に折り返して成っていてもよい。
上記態様の基板接続コネクタにおいて、前記検査部は、前記折り返しを2つ以上設けてなっていてもよい。
この態様による基板接続コネクタによれば、折り返しを2つ以上設けることにより、検査部の強度を増して、検査治具の衝突による変形をより効果的に防ぐことができる。
【0011】
上記態様の基板接続コネクタにおいて、前記端子収容部材に収容された前記端子の前記検査部に対するアクセスを可能とする検査孔を、前記端子収容部材の、前記基板収容部材と前記端子収容部材との嵌合側に設けていてもよい。
この態様による基板接続コネクタによれば、基板収容部材と端子収容部材の嵌合側に検査孔を設けたことにより、嵌合側以外に開口を設ける必要がなくなり、防水を行うことが容易となる。
【0012】
上記態様の基板接続コネクタにおいて、前記基板収容部材と前記端子収容部材が嵌合状態にあるときに、前記基板収容部材によって支持された基板が、前記端子収容部材の一の側に設けた端子の弾性接触部と前記端子収容部材の前記一の側の対向側に設けた端子の弾性接触部との間に、前記基板の厚み方向において挟み込まれて、前記基板の板面に設けた端子部と前記端子の接触部とが接触するものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、端子の検査時における問題を軽減或いは解決することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な一つの実施形態による基板接続コネクタを説明する。
図1、
図2に、本発明の一実施形態による基板接続コネクタ1の斜視図を端子及び端子の一端に接続されたケーブル3とともに示す。基板接続コネクタ1は、端子を収容する端子収容部材20と、基板を収容する基板収容部材70の組み合わせから成る。これら端子収容部材20と基板収容部材70は、それらの前側で、前後方向(図示矢印「ア」方向)に互いに突き合わせて嵌合させることができる。
図1は、嵌合後の状態を、
図2は、嵌合前の状態を、それぞれ示す。
【0016】
端子収容部材20は、樹脂製の本体22と、この本体22の後部に取り付けられる樹脂製の後部カバー62を含む。本体22は、全体として略丸型扁平の断面を有した無底の筒状である。後部カバー62の前側は、本体22の後部形状に対応して略丸型扁平の断面を有し、ケーブル3を挿通可能な状態で本体22の後部に取り付けられて、本体22の後部を閉じている。
【0017】
本体22の前側には、基板収容部材70が挿入される挿入口24が設けられている。更に、挿入口24から前後方向「ア」において奥まった位置に、後側から前側に向かって図示矢印「ア’」方向に突出した端子配列部34が設けられている。端子配列部34には、前後方向「ア」に沿って延びる複数の端子挿入部48が上下2段に形成されており、上段の端子挿入部48と下段の端子挿入部48の間に形成された隙間によって基板挿入部38が形成されている。
【0018】
基板収容部材70は、端子収容部材20や後部カバー62と同様に樹脂で形成されている。全体として有底の筒状であり、その前側は端子収容部材20に対応して略丸型扁平の断面を有し、残りの部分は略角型扁平の断面を有する。
【0019】
略丸型扁平の断面を有した基板収容部材70の前側は、端子収容部材20に設けた端子配列部34を収容する収容空間80として使用され得る。端子収容部材20と基板収容部材70が嵌合された状態にあるとき、端子収容部材20の挿入口24を通じて基板収容部材70が挿入され、基板収容部材70の収容空間80に端子配列部34が収容される。
【0020】
端子収容部材20と基板収容部材70の嵌合向きを決定するため、端子収容部材20と基板収容部材70に、計3組の嵌合向き決定手段が設けられている。
即ち、端子収容部材20の対角線状の内壁には、前後方向「ア」に沿って前端から端子収容部材20の挿入位置付近まで延びるガイド用の突部47が、これに対応して、基板収容部材70の上下左右の外壁には、前後方向「ア」に沿って前端から基板収容部材70の挿入位置付近まで延びるガイド用の窪み部76が設けられている。
また、端子収容部材20の左右の内壁には、前後方向「ア」に沿って前端から端子収容部材20の挿入位置付近まで延びる一対のガイド用の溝46’、46”が、これに対応して、基板収容部材70の左右の外壁には、前後方向「ア」に沿って前端から基板収容部材70の挿入位置付近まで延びる一対のガイド用のリブ73’、73”が設けられている。
更に、端子収容部材20の上部の内壁には、前後方向「ア」に沿って前端から端子収容部材20の挿入位置付近まで延びる所定の幅を有したガイド用の隙間28が、これに対応して、基板収容部材70の上部の外壁には、前後方向「ア」に沿って前端から基板収容部材70の挿入位置付近まで延びる一対のガイド用のリブ72’、72”が設けられている。尚、リブ73’と73”の間の幅は、隙間28の幅と略同じか、或いは、それより若干小さく設定してある。
端子収容部材20に基板収容部材70を挿入する際には、突部47と窪み部76、溝46とリブ73、及び、隙間28とリブ72を、それぞれ対応させる必要があり、これにより、端子収容部材20に対する基板収容部材70の嵌合向きを決定し、基板収容部材70の収容空間80に、端子配列部34を容易に収容することができる。
更に、端子収容部材20に対する基板収容部材70の上下の向きについて、溝46’と溝46”の大きさを互いに異なるものとして、また、リブ73’とリブ73”の大きさをそれらに対応する大きさとして、誤挿入を防止することもできる。例えば、図示の例では、溝46’とリブ73’の大きさを、溝46”とリブ73”の大きさに比べて大きく設定し、端子収容部材20に対する基板収容部材70の誤挿入を防止している。勿論、これに限らず、突部47と窪み部76に、同様の方法で、誤挿入防止機能を設けてもよい。尚、端子収容部材20に設けた突部47、溝46、隙間28の構造や、基板収容部材70に設けた窪み部76、リブ73、リブ72の構造は、端子収容部材20や基板収容部材70の強度を高めるためにも役立つ。
【0021】
端子収容部材20と基板収容部材70の嵌合状態をロックするため、ロック機構を設けてもよい。基板収容部材70の前側の上外壁にロック突部71を、これに対応して端子収容部材20の内部に対応ロック突部30’(後述する
図7に示されている)を、それぞれ設けている。対応ロック突部30’は、ロック操作部31によって操作可能である。ロック操作部31は、端子収容部材20の本体22の背面側に取り付けた後部カバー62の上部側面にて外部に露出した状態で設けられている。
【0022】
図3は、
図1、
図2に示した端子収容部材20の斜視図であって、特に、端子収容部材20からリテーナ60と端子90を抜き出した状態を示したものである。図示のように、端子90は端子収容部材20に対して着脱自在とされている。リテーナ60は、略C字状の把持部67と、この把持部67から延びるバー63を含む。リテーナ60は、端子収容部材20の本体側面に設けたリテーナ挿入口26を通じて、前後方向「ア」と直交する方向(図示矢印「イ」方向)に挿抜される。リテーナ60が挿入されたとき、端子収容部材20の端子挿入部48に挿入した端子90の所定部分と、リテーナ60のバー63に設けた小突起61が噛み合って、端子挿入部40からの端子90の抜けが防止される。
【0023】
図4乃至
図6を参照して、端子90の構造を説明する。
図4は、端子90の側面図、
図5は、その上側斜視図、
図6は、その底側斜視図である。
【0024】
端子90は、一枚の金属板を全体として略角筒状に折り曲げることによって形成した本体94と、検査治具を接触させる検査部93を含む。筒状の本体94は、更に、接触部91’を有する弾性変位部91と、端子配列部34に設けたランス44を係止させるランス用凹部98と、更に、リテーナ60の小突起61を引っ掛けるリテーナ用凹部99を含む。
【0025】
弾性変位部91は、本体94の上側の一の筒状面97に切り込みを設けて成る。弾性変位部91には、本体94から離れる方向に向かって山型に折り曲げることによって接触部91’が形成されている。強度を高めるため、接触部91’の端部91”は、本体94の内方に向かって下方に折り曲げられている。接触部91’は、弾性変位部91の働きにより、本体94の内方に向かって弾性変位可能である。このように本体94は筒状とすることによって単なる板面に比べて強度が強化されている面97に形成されているため、弾性変位部91の周辺強度は非常に高く、弾性変位部91の弾性変位動作にも十分に耐え得るものとなっている。
【0026】
検査部93は、検査治具と接触する垂設部分93’を含む。検査治具に対する強度を高めるため、垂設部分93’の端部を弾性変位部91に向かって折り曲げた折り曲げ部93”を更に含んでいてもよい。検査部93は、筒状の本体94を形成する金属板の一部を、例えば、本体94の一方の開口を塞ぐ方向に略垂直に折り返して成り、この結果、検査部93と、本体94を形成する筒状面とは、異なる面に形成される。このように検査部93と本体94を形成する筒状面とを異なる面に設けたことにより、以下に説明するように、端子90の検査時における、弾性変位部91の接触部91’と基板との間の接触の問題を軽減或いは解決することができる。端子90の検査時には、検査部93に検査治具が押し当てられるが、この結果、検査部93と検査治具との接触を通じて端子90に負荷がかかり、弾性変位部91の接触部91’と基板との間の接触に悪影響を及ぼすおそれがある。また、端子90の検査時には、検査治具との接触を通じて接触部に塵等が付着し、これにより接触不良を起こすといった危険が生じる。本発明が対象とする基板接続コネクタは、例えば、自動車等に使用されること前提としており、基板10の端子部13と端子90の接触部91’との間の接触は非常に繊細であり、自動車のエンジン、ブレーキ等の制御に大きな影響を及ぼすことがあるため、端子部と接触部との間の接触の安定性及び確実性を保つことが非常に重要である。検査部93と本体94を形成する筒状面とを異なる面に設けて、弾性変位部91の接触部91’と基板との間の接触部分を検査治具との接触部分とは切り離すことにより、これらの問題を効果的に解決できる。
【0027】
ランス用凹部98は、端子90の厚み方向「ウ」(基板10の厚み方向にも対応)において弾性変位部91とは反対側、即ち、本体94の下側の、一の筒状面に切り込みを設けて成る。リテーナ用凹部99は、ランス用凹部98よりも長手方向において後側に位置し、弾性変位部91と同様に、本体94の上側の一の筒状面に切り込みを設けて成る。凹部98、99は、共に、本体94側壁92にまで食い込ませた形で設けられている。更に、リテーナ用凹部99よりも長手方向において後側に、ケーブル3の芯線(図示されていない)を保持する芯線保持部95が、また、ケーブル3の外覆(図示されていない)を保持する外覆保持部96が設けられている。特に、芯線保持部95については、その強度を高めるため、厚み方向「ウ」において弾性変位部91と同じ側に2つの半円状断面部分を形成するように折り曲げられている。
【0028】
図7に、端子収容部材20の正面図を、
図8に、
図7のA−A線断面図を、それぞれ示す。端子配列部34の前面に、端子挿入部48に挿入された端子90の検査部93を露出させる複数の窓40が設けられている。これらの窓40は、各端子90の検査部93に対するアクセスを可能とする検査孔として使用される。これらの窓40は、端子配列部34の前面、換言すれば、基板収容部材70と端子収容部材20との嵌合側に設けられているため、嵌合側以外に開口を設ける必要がなく、この結果、端子収容部20の防水を行うことが容易となる。
【0029】
図9、
図10に、検査孔40を通じて検査部93に検査治具6を接触させた状態を示す。
図9は、この状態を示す端子収容部材20の部分斜視図、
図10は、同状態を示す端子収容部材20の側断面図であって、便宜上、端子収容部材20については本体22と端子90だけを示している。これらの図から明らかなように、端子90の検査時には、検査治具6は、検査孔40を通じて、検査治具6の導通部6’を各端子90の検査部93に当接させることができる。尚、
図9には、検査治具6を1つしか示していないが、複数の検査治具6を複数の端子に一度に接触させるような態様としてもよい。
【0030】
端子配列部34には、端子挿入部48と並行して前後方向「ア」に沿って延びる空間42が設けられている。空間42は、端子90が端子挿入部48に挿入されたときに端子の抜けを防止するランス44の移動空間として使用され得る。端子90は、図示矢印「ア’」方向に沿って端子挿入部48に挿入されるが、このとき、ランス44は、端子90の前側との接触を通じて空間42側に変位し、その後、ランス用凹部98に係止される。この結果、端子挿入部48かあらの端子90の抜けが防止される。更に、上段に設けた端子90については、リテーナ60のバー63に設けた小突起61が、端子90のリテーナ用凹部99に引っ掛かり、これによって端子挿入部48に挿入された端子90の抜けが防止される。
【0031】
端子配列部34の前面に設けた基板挿入部38では、上側の端子挿入部48に設けた端子90の接触部91’−1と、これに対向して下側に設けた端子90の接触部91’−2が、互いに接近する方向に突出しており、それらの間にギャップ39が形成される。端子収容部材20と基板収容部材70が嵌合状態にあるとき、基板収容部材70によって支持された基板10は、このギャップ39に基板10の厚み方向「ウ」において挟み込まれ、この結果、基板10の板面に設けた端子部と端子90の接触部91’とが弾性接触されることになる。
図11に、このときの状態を、
図1から基板収容部材70を取り除いた状態で便宜的に示している。尚、「対向」とは、図示実施形態のように、上側の端子の接触部と下側の端子の接触部が上下方向、即ち、端子90や基板10の厚み方向「ウ」において完全に重なった状態だけでなく、端子ピッチ方向において互いにずれている状態も勿論含む。上側の端子と下側の端子とがそれぞれ、いずれかの端子の接触部を利用して、基板10が挟み込まれるギャップ39を形成するように配列されていれば十分である。
【0032】
防水性を高めるため、端子配列部34の外周には環状の防水パッキン66を設けるのが好ましい。基板収容部材70の収容空間80に端子収容部34が収容されたとき、これと同時に、防水パッキン66は収容空間80の内部に取り込まれ、防水パッキン66によって、端子配列部34の外周と基板収容部材80の内周との間の隙間が埋まり、この結果、基板収容部材70、及び、端子配列部34の前側を完全に防水することができる。
【0033】
また、本体22の後部に形成されたカバー取付部52に、後部カバー62を取り付ける際、ケーブル3の周囲に防水パッキン68を設けるのが好ましい。防水パッキン68を設けることにより、ケーブル3の外周とカバー取付部52の内壁53との間の隙間を塞ぎ、これによって、後部カバー62に設けたケーブル3の挿通孔64を通じて端子挿入部48に水が浸入することを防ぐことができる。この結果、端子配列部34の後側を完全に防水することができる。
【0034】
図12に、
図1、
図2に示した基板収容部材70の斜視図であって、基板収容部材70から基板10を抜き出した状態を示す図を、
図13のa)に、基板10が収容された基板収容部材70の正面図を、b)に、基板収容部材70から基板10を抜き出した基板収容部材70の正面図を、
図14のa)に、
図13のb)のA−A線断面図を、b)に、そのB−B線断図を、それぞれ示す。
【0035】
基板収容部材70は、その左右内壁に圧入固定部86と基板支持部82を含む。これら圧入固定部86と基板支持部82によって固定、支持された基板10は、基板収容部材70にその後に注入される樹脂(図示されていない)によって、基板収容部材70の内部に完全に固定される。
圧入固定部86は、基板10を圧入によって固定するためのものであり、基板10の端子部13と端子90の接触部91’との接触側に設けられている。単なる支持、固定ではなく、圧入固定することとしたのは、基板10をより確実に位置決めするためである。本発明が対象とする基板接続コネクタは、例えば、自動車等に使用されること前提としており、基板やコネクタが振動や高温に晒される危険が高く、この結果、基板の板面に設けた端子部と端子の接触部との間の接触が不安定になるおそれがある。また、基板収容部材70に樹脂を注入する際に、基板収容部材70の基板10に位置ズレが生じてしまうおそれもある。基板10の端子部13と端子90の接触部91’との間の接触は非常に繊細であり、自動車のエンジン、ブレーキ等の制御に大きな影響を及ぼすこともあることから、端子部と接触部との間の接触の安定性及び確実性を保つことが非常に重要である。基板10を接触側で圧入固定して、基板収容部材70において所定位置に確実に位置決めすることにより、接触の安定性及び確実性を担保することができる。
この圧入固定部86に対し、基板支持部82は、基板10を支持することができれば十分である。後に注入される樹脂によって基板10は基板収容部材70に確実に固定されることになるし、また、基板支持部82と圧入固定部86との間で多少の捻じれが生じても、圧入固定部86によって基板10が確実に位置決めされていれば、基板10の端子部13と端子90の接触部91’との間の接触に大きな影響を及ぼすことはないからである。従って、基板支持部82は、接触側以外のいずれかの部分に設けられていれば十分である。但し、基板10の挿入を容易にするため、基板支持部82は、図示実施形態のように、少なくとも接触側とは基板の長さ方向「ア」において反対側に、また、基板の長さ方向に亘って設けられているのが好ましい。
【0036】
圧入固定部86は、基板10の厚み方向「ウ」において、基板10の端子部13と端子90の接触部91’との接触側から接触側とは基板の長さ方向「ア」において反対側に向かって、即ち、図示矢印「ア’」方向に、寸法が小さくなる隙間として形成されている。圧入固定部86である隙間には、基板10の幅方向「イ」において外方に突出する基板突出部12が圧入される。圧入固定をスムースにするため、隙間86は、図示実施形態のように、滑らかなテーパーによって形成されているのが好ましい。但し、隙間86は、基板10を圧入固定できるもの、例えば、基板10を基板の所定部分に圧接させる構造を有していれば十分である。従って、例えば、滑らかなテーパーではなく階段状のものであってもよいし、あるいは、基板10の厚み方向における一方の側からのみ基板10圧接させるような構造であってもよい。また、必ずしも基板10の厚み方向「ウ」に設ける必要はなく、幅方向「イ」に設けることもできる。
【0037】
隙間86に基板突出部12をスムースに案内するため、隙間であるテーパー86に隣接する位置に他のテーパー84を設けてもよい。テーパー84は、例えば、基板10の幅方向「イ」においてテーパー86よりも基板10の中心側に位置し、基板10の厚み方向「ウ」においてテーパー86よりも大きな間隔を維持した状態で、且つ、テーパー86と同様に図示矢印「ア’」方向に寸法が小さくなるように設定されている。
【0038】
本実施形態では、テーパー86は、図示矢印「ア’」方向に寸法が小さくなるように形成されていることから、基板10もこれと同じ方向に挿入することができる。従って、本構成によれば、接触側とは基板の長さ方向「ア」において反対側で、基板収容部材70を閉じた状態とすることができる。結果として、防水を行うことが容易となり、また、構造を簡易化することができる。
【0039】
基板支持部82は、少なくとも、基板の幅方向「イ」に形成された隙間82’を含み、更に、基板の長さ方向「ア」に亘って形成されたスリット82を含むのが好ましい。隙間82’は、圧入固定部86と同様に、テーパーとして形成されている。テーパー82’は、基板10の幅方向「イ」における寸法が、図示矢印「ア’」方向に向かうにつれて小さくなるように形成されており、基板10を「ア’」方向に挿入する際に、基板10の幅方向「イ」における部分12を隙間86に圧入することによって、基板10を支持することができるようになっている。
【0040】
本発明は、上述した実施形態に限定されるわけではなく、その他種々の変形が可能である。
例えば、
図15乃至
図18の変形例に示すように、端子の先端部の形状を変更して折り返しを2つ以上設けてもよい。
図15の変形例では、検査部が、
図4乃至
図6に示したものと同様の垂設部分93Aと、一方の側壁92Aを垂設部分93Aの裏側に配置するように折り返した部分92A’とで形成されている。また、
図16の変形例では、左右の側壁92Bのうちの一方をその側方から前側に折り返すことにより形成した側方部分92B’と、左右の側壁92Bのうちの他方を端子の上面を形成するように折り返してその厚み部分94B’を側方部分92B’の裏面に突き合わせて設置した上面部94Bとで形成されている。更に、
図17の変形例では、左右の側壁92Cのうちの一方をその側方から前側に折り返すことにより形成した側方部分93Cと、左右の側壁92Bのうちの他方をその側方から前側に折り返すことにより形成した側方部分92C’とで形成されている。このように、折り返しを2つ以上重ねて設けることにより、検査部の強度を増して、検査治具の衝突による変形をより効果的に防ぐことができる。更に、
図18の変形例では、検査部が、左右の側壁92Dのそれぞれをそれらの側方から前側に折り返し、それらの厚み部分92D’において互いに突き合わせることによって形成されている。この場合、折り返しを重ねたものとはなっていないが、折り返し部分の大きさをより小さくすることができるため、変形をより効果的に防止することができる。
また、本実施形態では端子を複数設けているが、端子は1つであっても勿論よい。その他、本発明の技術的範囲の範囲内で様々な変形を行うことができ、これらの変形例は全て本発明の範囲に含まれる。