特許第6534223号(P6534223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6534223N−(ホスフィノアルキル)−N−(チオアルキル)アミン誘導体及びその製造方法並びにその金属錯体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6534223
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】N−(ホスフィノアルキル)−N−(チオアルキル)アミン誘導体及びその製造方法並びにその金属錯体
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/50 20060101AFI20190617BHJP
   C07F 15/00 20060101ALI20190617BHJP
【FI】
   C07F9/50CSP
   C07F15/00 A
【請求項の数】14
【全頁数】74
(21)【出願番号】特願2016-545588(P2016-545588)
(86)(22)【出願日】2015年8月26日
(86)【国際出願番号】JP2015074069
(87)【国際公開番号】WO2016031874
(87)【国際公開日】20160303
【審査請求日】2018年7月30日
(31)【優先権主張番号】特願2014-172100(P2014-172100)
(32)【優先日】2014年8月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000169466
【氏名又は名称】高砂香料工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕治
(72)【発明者】
【氏名】小形 理
【審査官】 佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/110515(WO,A1)
【文献】 Joao D. G. Correia et al.,Synthesis and characterization of mixed-ligand oxorhenium(V) complexes with new [(PNO/S)(S)] donor a,J. Chem. Soc., Dalton Trans.,2001年,pp. 2245-2250
【文献】 Thomas L. James et al.,Dihydrogen Evolution by Protonation Reactions of Nickel(I),Inorg. Chem.,1996年,35(14),pp. 4148-4161
【文献】 Simon R. Bayly et al.,Ruthenium complexes with tridentate PNX(X=O,S) donor ligands,Dalton Trans.,2008年,pp. 2190-2198
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/00− 19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1A)で表されることを特徴とする化合物。
【化1】
(式中、Hは水素原子、Nは窒素原子、Pはリン原子、Sは硫黄原子を表す。Lは孤立電子対又は三水素化ホウ素を表す。R1、R2及びR3は各々独立して、アルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R1及びR2は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。Q1及びQ2は各々独立して、1,2−エタンジイル基、1,3−プロパンジイル基及び1,4−ブタンジイル基から構成される群より選択されるアルカンジイル基を表す。Q1及びQ2は、アルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基によって置換されていてもよく、これらの基は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。)
【請求項2】
1が1,2−エタンジイル基であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
2が1,2−エタンジイル基であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
1及びQ2がいずれも1,2−エタンジイル基であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
光学活性体であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物と、ハロゲン化水素酸、過塩素酸、硝酸、硫酸、スルホン酸、カルボン酸、フェノール類、リン酸、ヘキサフルオロリン酸、ホウ酸及びテトラフルオロホウ酸から構成される群より選択されるブレンステッド酸から形成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物のブレンステッド酸塩。
【請求項7】
一般式(2A
【化2】
(式中、Cは炭素原子、Nは窒素原子、Oは酸素原子、Sは硫黄原子を表す。R3、Q1及びQ2は、請求項1において定義したR3、Q1及びQ2と同様の基を表す。)
で表される化合物と、一般式(4)
【化3】
(式中、Hは水素原子、Pはリン原子を表す。Lは孤立電子対又は三水素化ホウ素を表す。R1及びR2は、請求項1において定義したR1及びR2と同様の基を表す。)
で表される化合物を反応させることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物の製造方法。
【請求項8】
一般式(3A
【化4】
(式中、Cは炭素原子、Nは窒素原子、Oは酸素原子、Pはリン原子を表す。Lは孤立電子対又は三水素化ホウ素を表す。R1、R2、Q1及びQ2は、請求項1において定義したR1、R2、Q1及びQ2と同様の基を表す。)
で表される化合物と、一般式(5)
【化5】
(式中、Hは水素原子、Sは硫黄原子を表す。R3は、請求項1において定義したR3と同様の基を表す。)
で表される化合物を反応させることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物を配位子として有する金属錯体。
【請求項10】
金属種が、第5族遷移金属、第6族遷移金属、第7族遷移金属、第8族遷移金属、第9族遷移金属、第10族遷移金属及び第11族遷移金属から構成される群より選択される金属種であることを特徴とする、請求項9に記載の金属錯体。
【請求項11】
金属種が、第8族遷移金属、第9族遷移金属及び第10族遷移金属から構成される群より選択される金属種であることを特徴とする、請求項10に記載の金属錯体。
【請求項12】
組成式(8A)で表されることを特徴とする、請求項11に記載の金属錯体。
[M812(L1k(L2l(L3m(PNS)]n (8A
(式中、M8は2価鉄イオン、2価ルテニウムイオン又は2価オスミウムイオンから構成される群より選択される、2価第8族遷移金属イオンを表す。X1及びX2は各々独立して1価アニオン性単座配位子を表し、L1、L2及びL3は各々独立して中性単座配位子を表す。k、l及びmはそれぞれL1、L2及びL3の配位数を表し、各々独立して0又は1の整数値を示す。PNSは、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物を表す。nは組成式[M812(L1k(L2l(L3m(PNS)]の多量化度を示す1又は2の整数値を表し、k、l及びmの総和が1〜3の整数値である場合は1を、この総和が0である場合は1又は2を示す。)
【請求項13】
組成式(9A)で表されることを特徴とする、請求項11に記載の金属錯体。
9123(L1k(L2l(L3m(PNS) (9A
(式中、M9は3価コバルトイオン、3価ロジウムイオン又は3価イリジウムイオンから構成される群より選択される、3価第9族遷移金属イオンを表す。X1、X2及びX3は各々独立して1価アニオン性単座配位子を表し、L1、L2及びL3は各々独立して中性単座配位子を表す。k、l及びmはそれぞれL1、L2及びL3の配位数を表し、各々独立して0又は1の整数値を示す。PNSは、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物を表す。)
【請求項14】
組成式(10A)で表されることを特徴とする、請求項11に記載の遷移金属錯体。
1012(L1k(PNS) (10A
(式中、M10は2価ニッケルイオン、2価パラジウムイオン又は2価白金イオンから構成される群より選択される、2価第10族遷移金属イオンを表す。X1及びX2は各々独立して1価アニオン性単座配位子を表し、L1は中性単座配位子を表す。kはL1の配位数を表し、0又は1の整数値を示す。PNSは、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なN−(ホスフィノアルキル)−N−(チオアルキル)アミン誘導体及びその製造方法並びに該化合物を配位子として有する金属錯体に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、金属種と配位子から構成される種々の金属錯体が、有機合成反応における触媒として用いられている。このような触媒の性能及び活性を発現させる因子として、金属錯体における金属種のみならず配位子、すなわち金属種に配位しうる孤立電子対を持つ基(配位基)を有する有機化合物が、極めて重要な役割を果たすことが知られている。これらの配位子の中でも、配位基を三つ有する有機化合物(三座配位子)は、金属種に対してfacial形式又はmeridional形式にて結合することで、2つのキレート環を有する金属錯体を形成するといった特徴を有する。更に、電子的に非等価な配位基を有する“Hemilabile”な三座配位子については、触媒反応における触媒サイクル中にて、単座配位子や二座配位子としても機能しうることが知られている。それゆえ三座配位子においては、三つの配位基の構造や組み合わせを様々に変化させることで、対応する金属錯体の構造、物性及び触媒活性等が任意に調整可能となる。従って三座配位子及びその金属錯体は、有機合成化学、錯体化学及び触媒化学等の分野において重要な位置を占め、現在でもなお盛んな研究開発が行われている。中でも、配位基の一つとしてイミノ基を分子内に持つ三座配位子の金属錯体は、例えばカルボニル化合物の水素添加反応やアルコール類の脱水素反応等において高い触媒活性を示すことや、これらの触媒的有機合成反応において、イミノ基上の水素原子が活性発現に大きく影響することが知られている。このような三座配位子の例として、対称なN,N−ビス(2−ホスフィノエチル)アミン及びN,N−ビス(2−チオエチル)アミンが知られており、それらのルテニウム錯体がエステル類の水素添加反応において優れた触媒として機能することが報告されている(特許文献1及び非特許文献1)。ところで、イミノ基を有するこれらの三座配位子は、基質であるN,N−ビス(2−クロロエチル)アミンに対して、配位基であるホスフィノ基又はチオ基を同時に導入することで容易に合成可能である。しかしながら、基質上の二つのクロロ基が化学的に等価であるため、同種の配位基は導入可能であっても、“Hemilability”の観点から重要となる、異種配位基の逐次的かつ選択的な導入は極めて困難である。従って、ホスフィノ基とチオ基の逐次的導入が成功すれば得られるであろう、N−(2−ホスフィノエチル)−N−(2−チオエチル)アミンの合成例はこれまでに報告されていない。一方、ホスフィノ基及びチオ基を有し、イミノ基の代わりにピリジル基を有する、非対称な三座配位子である2−ホスフィノメチル−6−チオメチルピリジン誘導体及びそのルテニウム錯体は既に知られているものの(非特許文献2)、窒素原子がイミノ基ではなくピリジン環に含まれているため、そのルテニウム錯体は塩基性条件にてルテニウム−炭素結合を形成しつつ容易に二量化してしまう。この二量体は触媒反応における不活性種であるため、反応の適用範囲も狭く活性にも乏しい点が問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開公報第2011/048727号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Denys Spasyuk, Samantha Smith, and Dmitry G. Gusev, Angew. Chem. Int. Ed. Ingl., 2013, 52, 2538.
【非特許文献2】Moti Gargir, Yehosyua Ben-David, Gregory Leitus, Yael Diskin-Posner, Linda J. W. Shimon, and David Milstein, Organometallics, 2012, 31, 6207.
【発明の概要】
【0005】
本発明は前記の状況に鑑み為されたものである。即ち、三座配位子及びその金属錯体、並びに該金属錯体を触媒として用いる有機合成反応の研究開発においては、配位子上の三つの配位基の構造や組み合わせ、更には“Hemilability”の有無が重要であるため、これらの多様性を高めることが、既知の有機合成反応の効率化や、新規な有用反応の発見に寄与することとなる。このような観点から、イミノ基を有する母骨格に対する異種の配位基、例えばホスフィノ基及びチオ基の逐次的導入による非対称な三座配位子の簡便な製造法や、この手法によって得られる新規な非対称三座配位子及びその金属錯体、並びに該金属錯体を用いた触媒的有機合成反応を提供することが、本発明の課題である。本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、従来の対称な三座配位子の原料である、N,N−ビス(2−クロロエチル)アミンに対して二酸化炭素を反応させることで3−(2−クロロエチル)−2−オキサゾリジノンへ誘導し、この化合物に対して逐次的にホスフィノ基及びチオ基を導入することで、これまで報告例のなかった非対称なN−(2−ホスフィノエチル)−N−(2−チオエチル)アミン誘導体を合成することに成功した(以下、Eq.1にて簡略化した概略を示すが、本発明はこの概略によって何ら限定されるものではない)。
【化1】
【0006】
この新規な化合物は非対称な三座配位子として振る舞い、種々の金属種に配位させることで優れた触媒活性を有する金属錯体が得られる。例えば本化合物のルテニウム錯体は、従来の対称な三座配位子であるN,N−ビス(2−ホスフィノエチル)アミンやN,N−ビス(2−チオエチル)アミンのルテニウム錯体と比較して、エステル類の水素添加反応においてより優れた触媒活性を有することを見出し、これらの知見を元にして本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、以下の[1]〜[13]を含むものである。
[1]下記一般式(1A
【化2】
(式中、Hは水素原子、Nは窒素原子、Pはリン原子、Sは硫黄原子を表す。Lは孤立電子対又は三水素化ホウ素を表す。R1、R2及びR3は各々独立して、アルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R1及びR2は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。Q1及びQ2は各々独立して、1,2−エタンジイル基、1,3−プロパンジイル基及び1,4−ブタンジイル基から構成される群より選択されるアルカンジイル基を表す。Q1及びQ2は、アルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基によって置換されていてもよく、これらの基は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。)
で表されることを特徴とする化合物。
[2]Q1が1,2−エタンジイル基であることを特徴とする、前記[1]に記載の化合物。
[3]Q2が1,2−エタンジイル基であることを特徴とする、前記[1]に記載の化合物。
[4]Q1及びQ2がいずれも1,2−エタンジイル基であることを特徴とする、前記[1]に記載の化合物。
[5]光学活性体であることを特徴とする、前記[1]〜[4]のいずれか1つに記載の化合物。
[6]前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の化合物と、ハロゲン化水素酸、過塩素酸、硝酸、硫酸、スルホン酸、カルボン酸、フェノール類、リン酸、ヘキサフルオロリン酸、ホウ酸及びテトラフルオロホウ酸から構成される群より選択されるブレンステッド酸から形成されることを特徴とする、前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の化合物のブレンステッド酸塩。
[7]下記一般式(2A
【化3】
(式中、Cは炭素原子、Nは窒素原子、Oは酸素原子、Sは硫黄原子を表す。R3、Q1及びQ2は、前記[1]において定義したR3、Q1及びQ2と同様の基を表す。)
で表される化合物と、下記一般式(4)
【化4】
(式中、Hは水素原子、Pはリン原子を表す。Lは孤立電子対又は三水素化ホウ素を表す。R1及びR2は、前記[1]において定義したR1及びR2と同様の基を表す。)
で表される化合物を反応させることを特徴とする、前記[1]〜[6]のいずれか1つに記載の化合物の製造方法。
[8]下記一般式(3A
【化5】
(式中、Cは炭素原子、Nは窒素原子、Oは酸素原子、Pはリン原子を表す。Lは孤立電子対又は三水素化ホウ素を表す。R1、R2、Q1及びQ2は、前記[1]において定義したR1、R2、Q1及びQ2と同様の基を表す。)
で表される化合物と、下記一般式(5)
【化6】
(式中、Hは水素原子、Sは硫黄原子を表す。R3は、前記[1]において定義したR3と同様の基を表す。)
で表される化合物を反応させることを特徴とする、前記[1]〜[6]のいずれか1つに記載の化合物の製造方法。
[9]前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の化合物を配位子として有する金属錯体。
[10]金属種が、第5族遷移金属、第6族遷移金属、第7族遷移金属、第8族遷移金属、第9族遷移金属、第10族遷移金属及び第11族遷移金属から構成される群より選択される金属種であることを特徴とする、前記[9]に記載の金属錯体。
[11]金属種が、第8族遷移金属、第9族遷移金属及び第10族遷移金属から構成される群より選択される金属種であることを特徴とする、前記[10]に記載の金属錯体。
[12]組成式(8A):[M812(L1k(L2l(L3m(PNS)]n
(式中、M8は2価鉄イオン、2価ルテニウムイオン又は2価オスミウムイオンから構成される群より選択される、2価第8族遷移金属イオンを表す。X1及びX2は各々独立して1価アニオン性単座配位子を表し、L1、L2及びL3は各々独立して中性単座配位子を表す。k、l及びmはそれぞれL1、L2及びL3の配位数を表し、各々独立して0又は1の整数値を示す。PNSは、前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の化合物を表す。nは組成式[M812(L1k(L2l(L3m(PNS)]の多量化度を示す1又は2の整数値を表し、k、l及びmの総和が1〜3の整数値である場合は1を、この総和が0である場合は1又は2を示す。)
で表されることを特徴とする、前記[11]に記載の金属錯体。
[13]組成式(9A):M9123(L1k(L2l(L3m(PNS)
(式中、M9は3価コバルトイオン、3価ロジウムイオン又は3価イリジウムイオンから構成される群より選択される、3価第9族遷移金属イオンを表す。X1、X2及びX3は各々独立して1価アニオン性単座配位子を表し、L1、L2及びL3は各々独立して中性単座配位子を表す。k、l及びmはそれぞれL1、L2及びL3の配位数を表し、各々独立して0又は1の整数値を示す。PNSは、前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の化合物を表す。)
で表されることを特徴とする、前記[11]に記載の金属錯体。
[14]組成式(10A):M1012(L1k(PNS)
(式中、M10は2価ニッケルイオン、2価パラジウムイオン又は2価白金イオンから構成される群より選択される、2価第10族遷移金属イオンを表す。X1及びX2は各々独立して1価アニオン性単座配位子を表し、L1は中性単座配位子を表す。kはL1の配位数を表し、0又は1の整数値を示す。PNSは、前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の化合物を表す。)
で表されることを特徴とする、前記[11]に記載の金属錯体。
【0007】
前記一般式(1A)で表される化合物(以下、本発明の化合物と称す。なお、組成式中における略号はPNSとする)はこれまで知られていなかったが、3−(2−クロロエチル)−2−オキサゾリジノン等の環状カルバメート誘導体に対する逐次的なホスフィノ基とチオ基の導入法を確立することで、初の合成に成功した。本発明の化合物は、電子的に非等価な三種類の配位基、すなわちホスフィノ基、イミノ基及びチオ基を有するため、“Hemilabile”な三座配位子としての挙動を示すことが期待される。実際に、本発明の化合物は種々の金属種に配位することで対応する金属錯体(以下、本発明の金属錯体と称す)を形成し、このようにして得られた本発明の金属錯体は、触媒的有機合成反応において優れた触媒活性を示すことが明らかとなった。例えば本発明の化合物のルテニウム錯体は、従来の対称な三座配位子であるN,N−ビス(2−ホスフィノエチル)アミンやN,N−ビス(2−チオエチル)アミンのルテニウム錯体と比較して、エステル類の水素添加反応においてより優れた触媒活性を示し、この反応によってアルコール類をより効率的に製造することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ジクロロ(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8S−1)(実施例11)の1H NMRチャートである。
図2】ジクロロ(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8S−2)(実施例12)の1H NMRチャートである。
図3】ジクロロ(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(tert−ブチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8S−3)(実施例13)の1H NMRチャートである。
図4】ジクロロ(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(フェニルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8S−4)(実施例14)の1H NMRチャートである。
図5】ジクロロ(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(p−トリルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8S−5)(実施例15)の1H NMRチャートである。
図6】ジクロロ(トリメチルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8S−6)(実施例16)の1H NMRチャートである。
図7】ジクロロ(トリメチルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(フェニルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8S−7)(実施例17)の1H NMRチャートである。
図8】ジクロロ(トリエチルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8S−8)(実施例18)の1H NMRチャートである。
図9】ジクロロ(トリシクロヘキシルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8S−9)(実施例19)の1H NMRチャートである。
図10】ジクロロ[トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン]{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8S−10)(実施例20)の1H NMRチャートである。
図11】ジクロロ[トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン]{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8S−11)(実施例21)の1H NMRチャートである。
図12】ジクロロ[トリス(4−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン]{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8S−12)(実施例22)の1H NMRチャートである。
図13】ジクロロ[トリス(2−フリル)ホスフィン]{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8S−13)(実施例23)の1H NMRチャートである。
図14】ジクロロ{4−エチル−2,6,7−トリオキサ−1−ホスファビシクロ[2,2,2]オクタン}{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8S−14)(実施例24)の1H NMRチャートである。
図15】カルボニルクロロヒドリド{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8S−15)(実施例25)の1H NMRチャートである。
図16】ヒドリド(テトラヒドロボレート)(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8S−16)(実施例26)の1H NMRチャートである。
図17】カルボニルヒドリド(テトラヒドロボレート){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8S−17)(実施例27)の1H NMRチャートである。
図18】ジクロロ{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)ダイマー(8U−1)(実施例28)の1H NMRチャートである。
図19】[クロロビス(4−メトキシフェニルイソシアニド){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)]クロライド(8R−1)(実施例31)の1H NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の化合物(1A)及びその原料化合物である、前記一般式(2A)で表される化合物、前記一般式(3A)で表される化合物、前記一般式(4)で表される化合物及び前記一般式(5)で表される化合物について詳細に説明する。
前記一般式(1A)、(2A)、(3A)、(4)及び(5)中、Cは炭素原子、Hは水素原子、Nは窒素原子、Oは酸素原子、Pはリン原子、Sは硫黄原子を表す。Lは孤立電子対又は三水素化ホウ素を表す。R1、R2及びR3は各々独立して、アルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表し、好ましくはアルキル基及び置換基を有してもよいアリール基から構成される群より選択される基を表す。Q1及びQ2は各々独立して、1,2−エタンジイル基、1,3−プロパンジイル基及び1,4−ブタンジイル基から構成される群より選択されるアルカンジイル基を表し、好ましくは1,2−エタンジイル基を表す。Q1は、アルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基(以下、Q1上の基と称す)によって置換されていてもよい。またQ2は、アルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基(以下、Q2上の基と称す)によって置換されていてもよい。
【0010】
アルキル基としては、直鎖状でも分岐状でも又は環状でもよい、例えば炭素数1〜30のアルキル基、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n―ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2−メチルブタン−3−イル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基、2−メチルペンタン−4−イル基、3−メチルペンタン−2−イル基、3−メチルペンタン−3−イル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブタン−3−イル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、1−アダマンチル基及び2−アダマンチル基等が挙げられ、好ましい具体例としてはメチル基、エチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基及び1−アダマンチル基が挙げられる。
【0011】
アルケニル基としては、直鎖状でも分岐状でも又は環状でもよい、例えば炭素数2〜20のアルケニル基、好ましくは炭素数2〜14のアルケニル基、より好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基が挙げられ、具体的にはビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、アリル基、1−シクロヘキセニル基、1−スチリル基及び2−スチリル基等が挙げられる。
アリール基としては、例えば炭素数6〜18のアリール基、好ましくは炭素数6〜14のアリール基、より好ましくは炭素数6〜10のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基等が挙げられ、好ましい具体例としてはフェニル基が挙げられる。
ヘテロアリール基としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれるヘテロ原子を1〜4個有する5〜6員環の芳香族複素環及び、該芳香族複素環が前記アリール基によって縮環されることで生じる多環芳香族複素環由来のヘテロアリール基が挙げられ、具体的には2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−ベンゾフリル基、3−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基及び3−ベンゾチエニル基等が挙げられる。
アラルキル基としては、前記アルキル基の少なくとも一つの水素原子が前記アリール基によって置換されたアラルキル基及び、前記環状アルキル基が前記アリール基によって縮環されることで生じる多環アラルキル基が挙げられ、具体的にはベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニルプロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、1−インダニル基、2−インダニル基及び9−フルオレニル基等が挙げられる。
【0012】
1及びR2は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。このような環の具体例としては、ホスホラン環、ホスホール環、ホスフィナン環及びホスフィニン環等が挙げられる。更に、一般式(1A)、(2A)及び(3A)におけるQ1上の基同士、Q1上の基とQ2上の基、及びQ2上の基同士は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。
1〜R3におけるアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基及びアラルキル基、Q1上の基及びQ2上の基におけるアルケニル基、アリール基及びアラルキル基、R1及びR2が互いに結合して形成する環、Q1上の基同士が互いに結合して形成する環、Q1上の基とQ2上の基が互いに結合して形成する環、及びQ2上の基が互いに結合して形成する環が有してもよい置換基としては、アルキル基、ハロゲノアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、アルコキシ基及びハロゲノ基等が挙げられる。これらの置換基の内、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基及びアラルキル基は、前記にて詳細を説明した基と同様である。
ハロゲノアルキル基としては、前記アルキル基の少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子によって置換された基が挙げられ、具体的にはトリフルオロメチル基及びn−ノナフルオロブチル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、1−プロポキシ基、2−プロポキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基及びtert−ブトキシ基等が挙げられる。
ハロゲノ基としては、具体的にはフルオロ基、クロロ基、ブロモ基及びヨード基が挙げられ、好ましくはフルオロ基及びクロロ基が挙げられる。
【0013】
本発明の化合物の好ましい形態としては、具体的には前記一般式(1A)におけるQ1が1,2−エタンジイル基である、下記一般式(1B
【化7】
(式中、H、N、P、S、L、R1、R2、R3及びQ2は前記一般式(1A)における定義と同様である。Cは炭素原子を表す。R4、R5、R6及びR7は各々独立して水素原子及び、アルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有しても良いアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R4〜R7は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよく、Q2上の基と互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい)
で表される化合物及び、前記一般式(1A)におけるQ2が1,2−エタンジイル基である、下記一般式(1C
【化8】
(式中、H、N、P、S、L、R1、R2、R3及びQ1は前記一般式(1A)における定義と同様である。Cは炭素原子を表す。R8、R9、R10及びR11は各々独立して水素原子及び、アルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有しても良いアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R8〜R11は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよく、Q1上の基と互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい)
で表される化合物が挙げられる。また、本発明の化合物のより好ましい形態としては、具体的には前記一般式(1A)におけるQ1及びQ2のいずれも1,2−エタンジイル基である、下記一般式(1D
【化9】
(式中、H、N、P、S、L、R1、R2及びR3は前記一般式(1A)における定義と同様である。Cは炭素原子を表す。R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は各々独立して水素原子及び、アルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有しても良いアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R4〜R11は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい)
で表される化合物が挙げられる。
【0014】
前記一般式(1B)、(1C)及び(1D)中、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は各々独立して、水素原子及び、アルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有しても良いアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表し、好ましくは水素原子を表す。R4〜R11におけるアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基は、前記Q1上の基及び、前記Q2上の基における基と同様である。
また、R4〜R11におけるアルケニル基、アリール基及びアラルキル基、R4〜R7同士が互いに結合して形成する環、R4〜R7がQ2上の基と互いに結合して形成する環、R8〜R11同士が互いに結合して形成する環、R8〜R11がQ1上の基と互いに結合して形成する環、並びにR4〜R11同士が互いに結合して形成する環が有してもよい置換基としては、アルキル基、ハロゲノアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、アルコキシ基及びハロゲノ基等が挙げられ、これらの置換基は前記にて詳細を説明した基と同様である。
【0015】
化合物(1A)〜(1D)の中には、空気に対して不安定な化合物や、高粘度液状物質となるため精製や計量が困難な化合物もあることから、取り扱いを容易にするため、ブレンステッド酸、例えばハロゲン化水素酸、過塩素酸、硝酸、硫酸、スルホン酸、カルボン酸、フェノール類、リン酸、ヘキサフルオロリン酸、ホウ酸及びテトラフルオロホウ酸等と反応させることで、対応するブレンステッド酸塩を形成させてもよい。ハロゲン化水素酸としては、具体的にはフッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸及びヨウ化水素酸等が挙げられ、好ましくは塩酸が挙げられる。スルホン酸としては、具体的にはメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及び10−カンファースルホン酸などが挙げられる。カルボン酸としては、具体的にはギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、サリチル酸、シュウ酸及び酒石酸等が挙げられる。フェノール類としては、具体的にはフェノール、p−クレゾール、p−ニトロフェノール及びペンタフルオロフェノール等が挙げられる。
本発明の化合物のブレンステッド酸塩を本発明の金属錯体の製造に用いる際には、ブレンステッド酸塩のまま反応に用いてもよく、反応系外で塩基と作用させて本発明の化合物を遊離させた後に反応に用いてもよく、反応系内で塩基と作用させて本発明の化合物を遊離させながら反応に用いてもよい。
更に、本発明の化合物においてLが三水素化ホウ素である場合、本発明の化合物を本発明の金属錯体の製造に用いる際には、そのまま反応に用いてもよく、反応系外で三水素化ホウ素を解離させた後に反応に用いてもよく、反応系内で三水素化ホウ素を解離させながら反応に用いてもよい。三水素化ホウ素の解離には解離剤を併用することが好ましく、三水素化ホウ素の解離剤としては、例えばジエチルアミン、トリエチルアミン及び1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等のアミン類が挙げられる。
【0016】
本発明の化合物の特に好ましい形態としては、具体的には例えば以下に示す化合物(1D−1)〜(1D−7)及びこれらのブレンステッド酸塩が挙げられる。
【化10】
【0017】
次に、本発明の化合物の原料化合物となる、一般式(2A)で表される化合物及び一般式(3A)で表される化合物について更に詳細に説明する。まず、一般式(2A)で表される化合物は、下記一般式(6)
【化11】
(式中、C、N、O、Q1及びQ2は、前記一般式(2)における定義と同様である。LGは脱離基を表す)
で表される化合物と、一般式(5)で表される化合物を塩基性条件で反応させることにより容易に得ることが出来る。なお、一般式(2A)で表される化合物の好ましい形態としては、具体的には前記一般式(2A)におけるQ1が1,2−エタンジイル基である、下記一般式(2B
【化12】
(式中、C、N、O、S、R3及びQ2は、前記一般式(2A)における定義と同様である。R4、R5、R6及びR7は、前記一般式(1B)における定義と同様である。)
で表される化合物が挙げられる。また、一般式(2A)で表される化合物のより好ましい形態としては、具体的には前記一般式(2A)におけるQ1及びQ2がいずれも1,2−エタンジイル基である、下記一般式(2C
【化13】
(式中、C、N、O、S、R3及びQ2は、前記一般式(2A)における定義と同様である。R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は、前記一般式(1D)における定義と同様である。)
で表される化合物が挙げられる。
【0018】
また、一般式(3A)で表される化合物は、下記一般式(7)
【化14】
(式中、C、N、O、Q1及びQ2は、前記一般式(3A)における定義と同様である。LGは脱離基を表す)
で表される化合物と、一般式(4)で表される化合物を塩基性条件で反応させることにより容易に得ることが出来る。なお、一般式(3A)で表される化合物の好ましい形態としては、具体的には前記一般式(3A)におけるQ2が1,2−エタンジイル基である、下記一般式(3B
【化15】
(式中、C、N、O、P、L、R1、R2及びQ1は、前記一般式(3A)における定義と同様である。R8、R9、R10及びR11は、前記一般式(1C)における定義と同様である。)
で表される化合物が挙げられる。また、一般式(3A)で表される化合物のより好ましい形態としては、具体的には前記一般式(3A)におけるQ1及びQ2がいずれも1,2−エタンジイル基である、下記一般式(3C
【化16】
(式中、C、N、O、P、L、R1及びR2は、前記一般式(3A)における定義と同様である。R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は、前記一般式(1D)における定義と同様である。)
で表される化合物が挙げられる。
一般式(6)及び一般式(7)中、LGは脱離基を表し、好ましくはハロゲノ基及び擬ハロゲノ基を表す。ハロゲノ基としては、具体的にはフルオロ基、クロロ基、ブロモ基及びヨード基が挙げられ、好ましい具体例としてはクロロ基が挙げられる。擬ハロゲノ基としては、具体的にはメタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基及びn−ノナフルオロブタンスルホニルオキシ基等が挙げられる。
【0019】
次に、本発明の化合物の製造方法について詳細に説明する。本発明の化合物は、一般式(2A)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物との反応又は、一般式(3A)で表される化合物と一般式(5)で表される化合物との反応によって容易に製造することが出来る。まず、一般式(2A)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物との反応について、更に詳細に説明する(Eq.2)。
【化17】
一般式(4)で表される化合物について、具体例を挙げて更に詳細に説明する。一般式(4)で表される化合物としては、具体的には2級ホスフィン及び2級ホスフィンの3水素化ホウ素錯体が挙げられる。2級ホスフィンの具体例としては、ジメチルホスフィン(4−1)、ジエチルホスフィン(4−2)、ジイソプロピルホスフィン(4−3)、ジ−tert−ブチルホスフィン(4−4)、ジシクロペンチルホスフィン(4−5)、ジシクロヘキシルホスフィン(4−6)、ジフェニルホスフィン(4−7)、ビス(2−メチルフェニル)ホスフィン(4−8)、ビス(4−メチルフェニル)ホスフィン(4−9)、ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン(4−10)、ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)ホスフィン(4−11)、ビス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(4−12)、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン(4−13)、ビス(4−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン(4−14)、ビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィン(4−15)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィン(4−16)、tert−ブチルフェニルホスフィン(4−17)、ジ−1−アダマンチルホスフィン(4−18)、(11bS)−4,5−ジヒドロ−3H−ジナフト[2,1−c:1’,2’−e]ホスフェピン(4−19)及びジ−2−フリルホスフィン(4−20)等が挙げられ、好ましい具体例としてはジフェニルホスフィン(4−7)が挙げられる。2級ホスフィン−3水素化ホウ素錯体の具体例としては、前記具体例として挙げた2級ホスフィンの3水素化ホウ素錯体が挙げられ、好ましい具体例としてはジシクロヘキシルホスフィン−3水素化ホウ素錯体(4−21)等が挙げられる。
【化18】
【0020】
これらの2級ホスフィンの中には空気に不安定な化合物もあることから、取り扱いを容易にするため、ブレンステッド酸、具体的には例えばテトラフルオロホウ酸と塩を形成させてもよい。これらの2級ホスフィンのブレンステッド酸塩は、反応系外で塩基と作用させて2級ホスフィンを遊離させた後に反応に用いてもよく、反応系内で塩基と作用させて2級ホスフィンを遊離させながら反応に用いてもよい。また本反応においては、一般式(4)で表される化合物の代わりに、2級ホスフィド又は2級ホスフィドの3水素化ホウ素錯体を用いてもよい。これらの2級ホスフィド及び2級ホスフィドの3水素化ホウ素錯体は、一般式(4)で表される化合物と塩基を反応させることによって容易に調製可能である。2級ホスフィドはこれ以外の反応によっても容易に調製可能であり、具体的には2級ホスフィンハロゲン化物とアルカリ金属との反応、2級ホスフィン2量体とアルカリ金属との反応及び3級ホスフィンとアルカリ金属との反応等が挙げられる。
一般式(4)で表される化合物、2級ホスフィド及び2級ホスフィドの3水素化ホウ素錯体の使用量は特に限定されるものではないが、通常一般式(2A)で表される化合物に対して通常0.4〜2当量、好ましくは0.6当量〜1.5当量、より好ましくは0.8〜1.2当量の範囲から適宜選択される。
【0021】
本反応は酸性条件又は塩基性条件にて実施可能であるが、塩基性条件で実施することがより好ましい。一般式(4)で表される化合物の代わりに、2級ホスフィド又は2級ホスフィドの3水素化ホウ素錯体を用いる場合には、本反応は中性条件又は塩基性条件で実施することが好ましい。
本反応を酸性条件で実施する場合、好ましい酸としては、具体的にはトリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。
本反応を塩基性条件にて実施する場合、好ましい塩基としては、具体的には水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム及び水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム、水素化ホウ素ナトリウム及び水素化アルミニウムリチウム等の金属水素化物、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド及びカリウム−tert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム及びフェニルリチウム等の有機リチウム化合物、リチウムアミド、ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド及びリチウムヘキサメチルジシラジド等のアルカリ金属アミド類、及び塩化メチルマグネシウム、塩化tert−ブチルマグネシウム、塩化フェニルマグネシウム、臭化フェニルマグネシウム及びヨウ化メチルマグネシウム等のグリニャール試薬等が挙げられ、特に好ましい具体例としてはn−ブチルリチウムが挙げられる。これらの塩基は、各々単独で用いても2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
塩基の使用量は特に限定されるものではないが、一般式(4)で表される化合物に対して、通常0.3〜10当量、好ましくは0.5〜5当量、より好ましくは0.8〜3当量の範囲から適宜選択される。なお、本反応において塩基の添加方法は特に限定されるものではないが、一般式(4)で表される化合物と塩基を各々単独に添加してもよく、一般式(4)で表される化合物と塩基(及び溶媒)の混合物として添加してもよく、一般式(4)で表される化合物と塩基を(溶媒中にて)反応させることによって得られる前記2級ホスフィド又は前記2級ホスフィドの3水素化ホウ素錯体として添加してもよい。
【0022】
本反応は溶媒の存在下で実施することが望ましい。溶媒は、具体的にはn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、シクロヘキサン及びデカリン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、p−シメン及び1,4−ジイソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール及び2−エトキシエタノール等の1価アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール及びグリセリン等の多価アルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及び1,4−ジオキサン等のエーテル類、及びトリエチルアミン、アニリン及び2−フェネチルアミン等のアミン類等が挙げられ、好ましい具体例としてはn−ヘキサン及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。これらの溶媒は、各々単独で用いても2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
溶媒の使用量は特に限定されるものではないが、一般式(2A)で表される化合物に対して通常1〜200倍容量、好ましくは2〜100倍容量、より好ましくは5〜50倍容量の範囲から適宜選択される。
【0023】
本反応は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、具体的にはアルゴンガス及び窒素ガス等が挙げられる。反応温度は、通常−78〜150℃、好ましくは−40〜100℃、より好ましくは0〜75℃の範囲から適宜選択される。反応時間は、塩基、溶媒及び反応温度その他の条件によって自ずから異なるが、通常1分〜48時間、好ましくは5分〜24時間、より好ましくは10分〜8時間の範囲から適宜選択される。
この製造方法を用いて、前記一般式(2B)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物を反応させることにより、前記一般式(1B)で表される化合物を同様に製造することが出来る。また、前記一般式(2C)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物を反応させることにより、前記一般式(1D)で表される化合物を同様に製造することが出来る。(Eq.3)。
【化19】
【0024】
次に、一般式(3A)で表される化合物と一般式(5)で表される化合物との反応について詳細に説明する(Eq.4)。
【化20】
一般式(5)で表される化合物について、具体例を挙げて更に詳細に説明する。一般式(5)で表される化合物としては、具体的にはチオールが挙げられる。チオールの具体例としては、メタンチオール(5−1)、エタンチオール(5−2)、1−プロパンチオール(5−3)、2−プロパンチオール(5−4)、1−ブタンチオール(5−5)、2−ブタンチオール(5−6)、2−メチル−1−プロパンチオール(5−7)、2−メチル−2−プロパンチオール(5−8)、1−ペンタンチオール(5−9)、3−メチル−1−ブタンチオール(5−10)、シクロペンタンチオール(5−11)、1−ヘキサンチオール(5−12)、シクロヘキサンチオール(5−13)、1−ヘプタンチオール(5−14)、1−オクタンチオール(5−15)、1−ノナンチオール(5−16)、1−デカンチオール(5−17)、1−アダマンタンチオール(5−18)、ベンゼンチオール(5−19)、o−トルエンチオール(5−20)、m−トルエンチオール(5−21)、p−トルエンチオール(5−22)、2,4−ジメチルベンゼンチオール(5−23)、2,5−ジメチルベンゼンチオール(5−24)、3,4−ジメチルベンゼンチオール(5−25)、3,5−ジメチルベンゼンチオール(5−26)、4−イソプロピルベンゼンチオール(5−27)、4−tert−ブチルベンゼンチオール(5−28)、2−メトキシベンゼンチオール(5−29)、4−メトキシベンゼンチオール(5−30)、2,5−ジメトキシベンゼンチオール(5−31)、3,4−ジメトキシベンゼンチオール(5−32)、2−フルオロベンゼンチオール(5−33)、3−フルオロベンゼンチオール(5−34)、4−フルオロベンゼンチオール(5−35)、2−クロロベンゼンチオール(5−36)、4−クロロベンゼンチオール(5−37)、ビフェニル−4−チオール(5−38)、1−ナフタレンチオール(5−39)、ベンジルメルカプタン(5−40)、(2,4,6−トリメチルフェニル)メタンチオール(5−41)、(4−メトキシフェニル)メタンチオール(5−42)、(4−フルオロフェニル)メタンチオール(5−43)、(2−クロロフェニル)メタンチオール(5−44)、(4−クロロフェニル)メタンチオール(5−45)、トリフェニルメタンチオール(5−46)及び9−メルカプトフルオレン(5−47)等が挙げられ、好ましい具体例としては1−アダマンタンチオール(5−18)等が挙げられる。
【化21】
【0025】
本反応においては、一般式(5)で表される化合物の代わりに、一般式(5)で表される化合物を塩基と反応させることで容易に得られるチオールの塩(チオラート)を用いてもよい。チオラートの具体例としては、前記具体例として挙げたチオールのアルカリ金属塩等が挙げられ、好ましい具体例としてはメタンチオール(5−1)のナトリウム塩(ナトリウム メタンチオラート)、エタンチオール(5−2)のナトリウム塩(ナトリウム エタンチオラート)、2−メチル−2−プロパンチオール(5−8)のナトリウム塩(ナトリウム 2−メチル−2−プロパンチオラート)、ベンゼンチオール(5−19)のナトリウム塩(ナトリウム ベンゼンチオラート)及びp−トルエンチオール(5−22)のナトリウム塩(ナトリウム p−トルエンチオラート)等が挙げられる。
【0026】
本反応は酸性条件又は塩基性条件で実施可能であるが、塩基性条件で実施するのがより好ましい。また、一般式(5)で表される化合物の代わりにチオラートを用いる場合には、本反応は中性条件又は塩基性条件で実施することが好ましい。本反応を塩基性条件にて実施する場合、好ましい塩基としては、具体的には水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、リン酸ナトリウム及びリン酸カリウム等のアルカリ金属リン酸塩、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、酢酸ナトリウム及び酢酸カリウム等のアルカリ金属カルボン酸塩、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム及び水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム、水素化ホウ素ナトリウム及び水素化アルミニウムリチウム等の金属水素化物、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド及びカリウム−tert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム及びフェニルリチウム等の有機リチウム化合物、リチウムアミド、ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド及びリチウムヘキサメチルジシラジド等のアルカリ金属アミド類、塩化メチルマグネシウム、塩化tert−ブチルマグネシウム、塩化フェニルマグネシウム、臭化フェニルマグネシウム及びヨウ化メチルマグネシウム等のグリニャール試薬、及びトリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、4−ジメチルアミノピリジン、ピロリジン、ピペリジン、N−メチルモルホリン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン等のアミン類等が挙げられ、好ましい具体例としてはナトリウム−tert−ブトキシドが挙げられる。これらの塩基は、各々単独で用いても2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
塩基の使用量は特に限定されるものではないが、一般式(5)で表される化合物に対して、通常0.3〜10当量、好ましくは0.5〜5当量、より好ましくは0.8〜3当量の範囲から適宜選択される。なお、本反応において塩基の添加方法は特に限定されるものではないが、一般式(5)で表される化合物と塩基を各々単独に添加してもよく、一般式(5)で表される化合物と塩基(及び溶媒)の混合物として添加してもよく、一般式(5)で表される化合物と塩基を(溶媒中にて)反応させることによって得られる前記チオラートとして添加してもよい。
【0027】
本反応は溶媒の存在下で実施することが望ましい。溶媒は、具体的にはn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、シクロヘキサン及びデカリン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、p−シメン及び1,4−ジイソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素類、クロロベンゼン及びo−ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール及び2−エトキシエタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール及びグリセリン等の多価アルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及び1,4−ジオキサン等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル及びプロピオン酸メチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類、トリエチルアミン、アニリン及びフェネチルアミン等のアミン類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル、マロノニトリル及びベンゾニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、及び水等が挙げられ、好ましい具体例としては2−メチル−2−ブタノールが挙げられる。これらの溶媒は、各々単独で用いても2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
溶媒の使用量は特に限定されるものではないが、一般式(3A)で表される化合物に対して通常0.5〜100倍容量、好ましくは1〜40倍容量、より好ましくは2〜20倍容量の範囲から適宜選択される。
【0028】
本反応は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、具体的にはアルゴンガス及び窒素ガス等が挙げられる。反応温度は、通常25〜200℃、好ましくは50〜175℃、より好ましくは75〜150℃の範囲から適宜選択される。反応時間は、塩基、溶媒及び反応温度その他の条件によって自ずから異なるが、通常1分〜24時間、好ましくは2分〜12時間、より好ましくは5分〜8時間の範囲から適宜選択される。
この製造方法を用いて、前記一般式(3B)で表される化合物と一般式(5)で表される化合物を反応させることにより、前記一般式(1C)で表される化合物を同様に製造することが出来る。また、前記一般式(3C)で表される化合物と一般式(5)で表される化合物を反応させることにより、前記一般式(1D)で表される化合物を同様に製造することが出来る。(Eq.5)。
【化22】
このようにして得られた本発明の化合物は、必要に応じて後処理、単離及び精製を行うことができる。後処理の方法としては例えば、濃縮、溶媒置換、洗浄、抽出、逆抽出、濾過、貧溶媒の添加による晶析及びブレンステッド酸の添加による塩の形成等が挙げられ、これらを単独で或いは併用して行うことができる。単離及び精製の方法としては例えば、吸着剤による脱色、カラムクロマトグラフィー、蒸留、再結晶、貧溶媒による結晶洗浄及びブレンステッド酸の添加によって得られる塩の晶析等が挙げられ、これらを単独で或いは併用して行うことができる。
【0029】
次に、本発明の金属錯体について更に詳細に説明する。本発明の金属錯体における金属種としては、本発明の化合物が配位可能であれば特に制限はないが、有機合成反応における触媒活性の観点から、好ましくは第5族遷移金属、第6族遷移金属、第7族遷移金属、第8族遷移金属、第9族遷移金属、第10族遷移金属及び第11族遷移金属から構成される群より選択される金属種が挙げられる。より好ましい金属種としては、第8族遷移金属、第9族遷移金属及び第10族遷移金属、すなわち鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム及び白金から構成される群から選択される金属種が挙げられ、特に好ましい金属種としてはルテニウムが挙げられる。これらの金属種の価数もまた、本発明の化合物が配位可能であれば特に制限はないが、例えば第8族遷移金属の好ましい価数としては+2、第9族遷移金属の好ましい価数としては+3、第10族遷移金属の好ましい価数としては+2が挙げられる。
【0030】
本発明の化合物を配位子として有する第8族遷移金属錯体としては、好ましくは前記組成式(8A)で表される金属錯体が挙げられる。また、本発明の化合物を配位子として有する第9族遷移金属錯体としては、好ましくは前記組成式(9A)で表される金属錯体が挙げられる。更に、本発明の化合物を配位子として有する第10族遷移金属錯体としては、好ましくは前記組成式(10A)で表される金属錯体が挙げられる。
前記組成式(8A)、(9A)及び(10A)中、M8は2価鉄イオン、2価ルテニウムイオン又は2価オスミウムイオンから構成される群より選択される2価第8族遷移金属イオンを表し、好ましくは2価ルテニウムイオンを表す。M9は3価コバルトイオン、3価ロジウムイオン又は3価イリジウムイオンから構成される群より選択される3価第9族遷移金属イオンを表し、M10は2価ニッケルイオン、2価パラジウムイオン又は2価白金イオンから構成される群より選択される2価第10族遷移金属イオンを表す。X1、X2及びX3は各々独立して1価アニオン性単座配位子を表し、L1、L2及びL3は各々独立して中性単座配位子を表す。k、l及びmはそれぞれL1、L2及びL3の配位数を表し、各々独立して0又は1の整数値を示す。PNSは本発明の化合物を表す。前記組成式(8A)におけるnは、前記組成式(8A)におけるk、l及びmの総和が1〜3の整数値である場合は1を示し、この総和が0である場合は1又は2を示す。
【0031】
次に、前記組成式(8A)、(9A)及び(10A)におけるX1、X2及びX3、すなわち1価アニオン性単座配位子について詳細に説明する。1価アニオン性単座配位子とは、1価の負電荷を有し、金属錯体中の金属に対して単結合しうる官能基及び金属錯体に対する対イオンとして機能しうる陰イオン並びに双方の性質を同時に有する基を表し、具体的には(官能基としての名称/陰イオンとしての名称に続いて、括弧内にそれぞれの一般式を示す)、ヒドリド基/水素化物イオン(−H/H-)、水酸基/水酸化物イオン(−OH/HO-)、アルコキシ基/アルコキシドイオン(−OR/RO-)、アリールオキシ基/アリールオキシドイオン(−OAr/ArO-)、アシルオキシ基/カルボン酸イオン(−OC(=O)R/RCO2-)、炭酸水素イオン(HCO3-)、メルカプト基/硫化水素イオン(−SH/HS-)、アルキルチオ基/アルキルチオラートイオン(−SR/RS-)、アリールチオ基/アリールチオラートイオン(−SAr/ArS-)、スルホニルオキシ基/スルホン酸イオン(−OSO2R/RSO3-)、チオシアン酸イオン(NCS-)、ハロゲノ基/ハロゲン化物イオン(−X/X-)、次亜塩素酸イオン(ClO-)、亜塩素酸イオン(ClO2-)、塩素酸イオン(ClO3-)、過塩素酸イオン(ClO4-)、テトラヒドロホウ酸イオン(BH4-)、テトラフルオロホウ酸イオン(BF4-)、テトラアリールホウ酸イオン(BAr4-)、リン酸二水素イオン(H2PO4-)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF6-)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF6-)、アジ基/アジ化物イオン(−N3/N3-)、シアノ基/シアン化物イオン(−CN/CN-)、ニトロ基/ニトリト基/亜硝酸イオン(−NO2/−ONO/NO2-)、硝酸イオン(NO3-)、硫酸水素イオン(HSO4-)、テトラヒドロキソアルミン酸イオン([Al(OH)4-)、テトラヒドロキソクロム酸イオン([Cr(OH)4-)、ジシアノ銀酸イオン([Ag(CN)2-)及び塩化金酸イオン([AuCl4-)等が挙げられる。
【0032】
本発明の金属錯体における触媒活性の観点から、好ましい1価アニオン性単座配位子としては、具体的にはヒドリド基/水素化物イオン、水酸基/水酸化物イオン、アルコキシ基/アルコキシドイオン、アリールオキシ基/アリールオキシドイオン、アシルオキシ基/カルボン酸イオン、スルホニルオキシ基/スルホン酸イオン、ハロゲノ基/ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、テトラヒドロホウ酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラアリールホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン及びヘキサフルオロアンチモン酸イオン等が挙げられ、より好ましくはヒドリド基/水素化物イオン、ハロゲノ基/ハロゲン化物イオン及びテトラヒドロホウ酸イオン等が挙げられる。
好ましい1価アニオン性単座配位子について更に詳細に説明する。アルコキシ基/アルコキシドイオンとしては、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基/アルコキシドイオン、好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基/アルコキシドイオンが挙げられ、具体的にはメトキシ基/メトキシドイオン、エトキシ基/エトキシドイオン、1−プロポキシ基/1−プロポキシドイオン、2−プロポキシ基/2−プロポキシドイオン、1−ブトキシ基/1−ブトキシドイオン、2−ブトキシ基/2−ブトキシドイオン及びtert−ブトキシ基/tert−ブトキシドイオン等が挙げられる。
アリールオキシ基/アリールオキシドイオンとしては、例えば炭素数6〜14のアリールオキシ基/アリールオキシドイオン、好ましくは炭素数6〜10のアリールオキシ基/アリールオキシドイオンが挙げられ、具体的にはフェノキシ基/フェノキシドイオン、p−メチルフェノキシ基/p−メチルフェノキシドイオン、2,4,6−トリメチルフェノキシ基/2,4,6−トリメチルフェノキシドイオン、p−ニトロフェノキシ基/p−ニトロフェノキシドイオン、ペンタフルオロフェノキシ基/ペンタフルオロフェノキシドイオン、1−ナフチルオキシ基/1−ナフチルオキシドイオン及び2−ナフチルオキシ基/2−ナフチルオキシドイオン等が挙げられる。
【0033】
アシルオキシ基/カルボン酸イオンとしては、例えば炭素数1〜18のアシルオキシ基/カルボン酸イオン、好ましくは炭素数1〜6のアシルオキシ基/カルボン酸イオンが挙げられ、具体的にはホルミルオキシ基/ギ酸イオン、アセトキシ基/酢酸イオン、トリフルオロアセトキシ基/トリフルオロ酢酸イオン、プロパノイルオキシ基/プロピオン酸イオン、アクリロイルオキシ基/アクリル酸イオン、ブタノイルオキシ基/酪酸イオン、ピバロイルオキシ基/ピバリン酸イオン、ペンタノイルオキシ基/吉草酸イオン、ヘキサノイルオキシ基/カプロン酸イオン、ベンゾイルオキシ基/安息香酸イオン及びペンタフルオロベンゾイルオキシ基/ペンタフルオロ安息香酸イオン等が挙げられる。
スルホニルオキシ基/スルホン酸イオンとしては、例えば炭素数1〜18のスルホニルオキシ基/スルホン酸イオン、好ましくは炭素数1〜10のスルホニルオキシ基/スルホン酸イオンが挙げられ、具体的にはメタンスルホニルオキシ基/メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基/トリフルオロメタンスルホン酸イオン、n−ノナフルオロブタンスルホニルオキシ基/n−ノナフルオロブタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホニルオキシ基/p−トルエンスルホン酸イオン及び10−カンファースルホニルオキシ基/10−カンファースルホン酸イオン等が挙げられる。
ハロゲノ基/ハロゲン化物イオンとしては、具体的にはフルオロ基/フッ化物イオン、クロロ基/塩化物イオン、ブロモ基/臭化物イオン及びヨード基/ヨウ化物イオンが挙げられ、好ましい具体例としてはクロロ基/塩化物イオンが挙げられる。
テトラアリールホウ酸イオンとしては、具体的にはテトラフェニルホウ酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン及びテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸イオン等が挙げられる。
また、これらの1価アニオン性単座配位子は単体としては存在しないため、本発明の金属錯体を製造する際には、対応する1価アニオン性単座配位子源、すなわち1価アニオン性単座配位子由来の共役酸又は一価アニオン性単座配位子由来の塩として用いることが好ましい。
【0034】
次に、前記組成式(8A)、(9A)及び(10A)におけるL1、L2及びL3、すなわち中性単座配位子について詳細に説明する。中性単座配位子とは、金属に配位しうる非イオン性の官能基を少なくとも一つ有する有機化合物を表し、具体的には(一般名称に続いて、括弧内に一般式を示す)、水(H2O)、アルコール(ROH)、エーテル(ROR’)、ケトン(RC(=O)R’)、エステル(RC(=O)OR’)、チオール(RSH)、スルフィド(RSR’)、スルホキシド(RS(=O)R’)、アミン(RR’R”N)、アミド(RR’NC(=O)R”)、ニトリル(RCN)、イソニトリル(RNC)、ヘテロアレーン(HetArH)、2級ホスフィン(RR’PH)、2級ホスフィンオキシド(RR’P(=O)H)、3級ホスフィン(RR’R”P)、ホスファイト((RO)(R’O)(R”O)P)、ホスホロアミダイト((RO)(R’O)PNR”R’’’)、3級アルシン(RR’R”As)、カルベン(RR’C:)、ナイトレン(RN::)、シリレン(RR’Si:)、水素分子(H2)、窒素分子(N2)、一酸化炭素(CO)及び一酸化窒素(NO)等が挙げられる。
有機合成反応における、本発明の金属錯体の触媒活性の観点から、好ましい中性単座配位子としては、アルコール、エーテル、スルフィド、スルホキシド、アミン、アミド、ニトリル、イソニトリル、ヘテロアレーン、2級ホスフィン、2級ホスフィンオキシド、3級ホスフィン、ホスファイト、ホスホロアミダイト、3級アルシン、カルベン、水素分子及び一酸化炭素が挙げられ、より好ましくは3級ホスフィン、ホスファイト及び一酸化炭素等が挙げられる。
【0035】
好ましい中性単座配位子について更に詳細に説明する。アルコールとしては、具体的にはメタノール、エタノール、2−プロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール及び1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール等が挙げられる。
エーテルとしては、具体的にはジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及び1,4−ジオキサン等が挙げられる。
スルフィドとしては、具体的にはジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジフェニルスルフィド及びテトラヒドロチオフェン等が挙げられる。
スルホキシドとしては、具体的にはジメチルスルホキシド及びテトラヒドロチオフェン−1−オキシド等が挙げられる。なお、これらのスルホキシドは、金属種に対して硫黄原子上の酸素原子又は硫黄原子のいずれで配位してもよい。
アミンとしては、具体的にはアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、アニリン、ベンジルアミン、α−フェネチルアミン、β−フェネチルアミン、ピペラジン、ピペリジン及びモルホリン等が挙げられる。
アミドとしては、具体的にはN,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
ニトリルとしては、具体的にはアセトニトリル及びベンゾニトリル等が挙げられる。
イソニトリルとしては、具体的には(トリメチルシリル)メチルイソシアニド、イソプロピルイソシアニド、1−ブチルイソシアニド、tert−ブチルイソシアニド、1−ペンチルイソシアニド、2−ペンチルイソシアニド、シクロヘキシルイソシアニド、1,1,3,3−テトラメチルブチルイソシアニド、1−アダマンチルイソシアニド、2,6−ジメチルフェニルイソシアニド、4−メトキシフェニルイソシアニド、2−ナフチルイソシアニド、ベンジルイソシアニド及びα−メチルベンジルイソシアニド等が挙げられ、好ましい具体例としては4−メトキシフェニルイソシアニド等が挙げられる。
【0036】
ヘテロアレーンとしては、具体的にはフラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、チオフェン、チアナフテン、イソチアナフテン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、3H−ピロール、3H−インドール、2H−ピロール、1H−イソインゾール、オキサゾール、オキサゾリン、ベンゾオキサゾール、イソオキサゾール、イソオキサゾリン、ベンゾイソオキサゾール、チアゾール、チアゾリン、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、イソチアゾリン、ベンゾイソチアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、ベンズイミダゾール、ピラゾール、2−ピラゾリン及びインダゾール等が挙げられる。
2級ホスフィンとしては、具体的には一般式(4)で表される化合物の具体例として例示した2級ホスフィンと同様の化合物が挙げられる。
2級ホスフィンオキシドとしては、具体的にはジメチルホスフィンオキシド、ジエチルホスフィンオキシド、ジイソプロピルホスフィンオキシド、ジ−tert−ブチルホスフィンオキシド、ジシクロペンチルホスフィンオキシド、ジシクロヘキシルホスフィンオキシド、ジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2−メチルフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(4−メチルフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(2−メトキシフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(4−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィンオキシド、ビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィンオキシド、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィンオキシド、tert−ブチルフェニルホスフィンオキシド、ジ−1−アダマンチルホスフィンオキシド、(11bS)−4,5−ジヒドロ−3H−ジナフト[2,1−c:1’,2’−e]ホスフェピン―4−オキシド及びジ−2−フリルホスフィンオキシド等が挙げられる。なお、これらの2級ホスフィンオキシドは、金属種に対してリン原子上の酸素原子又はリン原子のいずれで配位してもよい。
【0037】
3級ホスフィンとしては、下記一般式(11)
【化23】
(式中、Pはリン原子を表す。R12、R13及びR14は各々独立して、アルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基又は置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R12〜R14は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。)
で表される化合物が挙げられる。
前記一般式(11)中、Pはリン原子を表す。R12、R13及びR14は各々独立して、アルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基又は置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表し、好ましくはアルキル基、置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよいヘテロアリール基から構成される群より選択される基を表す。
【0038】
アルキル基としては、直鎖状でも分岐状でも又は環状でもよい、例えば炭素数1〜30のアルキル基、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n―ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2−メチルブタン−3−イル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基、2−メチルペンタン−4−イル基、3−メチルペンタン−2−イル基、3−メチルペンタン−3−イル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブタン−3−イル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、1−アダマンチル基及び2−アダマンチル基等が挙げられ、好ましい具体例としてはメチル基、エチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。
アルケニル基としては、直鎖状でも分岐状でも又は環状でもよい、例えば炭素数2〜20のアルケニル基、好ましくは炭素数2〜14のアルケニル基、より好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基が挙げられ、具体的にはビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、アリル基、1−シクロヘキセニル基、1−スチリル基及び2−スチリル基等が挙げられる。
アリール基としては、例えば炭素数6〜18のアリール基、好ましくは炭素数6〜14のアリール基、より好ましくは炭素数6〜10のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基等が挙げられ、好ましい具体例としてはフェニル基が挙げられる。
【0039】
ヘテロアリール基としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれるヘテロ原子を1〜4個有する5〜6員環の芳香族複素環及び、該芳香族複素環が前記アリール基によって縮環されることで生じる多環芳香族複素環由来のヘテロアリール基が挙げられ、具体的には2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−ベンゾフリル基、3−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基及び3−ベンゾチエニル基等が挙げられ、好ましい具体例としては2−フリル基が挙げられる。
アラルキル基としては、前記アルキル基の少なくとも一つの水素原子が前記アリール基によって置換されたアラルキル基及び、前記環状アルキル基が前記アリール基によって縮環されることで生じる多環アラルキル基が挙げられ、具体的にはベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニルプロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、1−インダニル基、2−インダニル基及び9−フルオレニル基等が挙げられる。
12〜R14は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。このような環の具体例としては、ホスホラン環、ホスホール環、ホスフィナン環及びホスフィニン環等が挙げられる。
【0040】
12〜R14におけるアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基及びアラルキル基及び、R12〜R14が互いに結合して形成する環が有してもよい置換基としては、アルキル基、ハロゲノアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、水酸基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、スルホ基及びハロゲノ基等が挙げられる。これらの置換基の内、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基及びアラルキル基は、R12〜R14の詳細な説明における基と同様である。
ハロゲノアルキル基としては、前記アルキル基の少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子によって置換された基が挙げられ、具体的にはトリフルオロメチル基及びn−ノナフルオロブチル基等が挙げられ、好ましい具体例としてはトリフルオロメチル基が挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、1−プロポキシ基、2−プロポキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基及びtert−ブトキシ基等が挙げられ、好ましい具体例としてはメトキシ基が挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、具体的にはメトキシカルボニル基等が挙げられる。
アミノ基としては、具体的にはジメチルアミノ基及び4−モルホリニル基等が挙げられる。
ハロゲノ基としては、具体的にはフルオロ基、クロロ基、ブロモ基及びヨード基が挙げられ、好ましくはフルオロ基及びクロロ基が挙げられる。
【0041】
一般式(11)で表される3級ホスフィンの好ましい具体例としては、トリメチルホスフィン(11−1)、トリエチルホスフィン(11−2)、トリシクロヘキシルホスフィン(11−3)、トリフェニルホスフィン(11−4)、トリス(4−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン(11−5)、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン(11−6)及びトリス(2−フリル)ホスフィン(11−7)等が挙げられる。
【化24】
ホスファイトとしては、具体的には亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)、亜リン酸トリイソプロピル、亜リン酸トリフェニル及び4−エチル−2,6,7−トリオキサ−1−ホスファビシクロ[2,2,2]オクタン等が挙げられ、好ましい具体例としては4−エチル−2,6,7−トリオキサ−1−ホスファビシクロ[2,2,2]オクタン等が挙げられる。
ホスホロアミダイトとしては、具体的にはジメチル−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト、ジ−tert−ブチル−N,N−ジエチルホスホロアミダイト及びジベンジル−N,N−ジメチルホスホロアミダイト等が挙げられる。
3級アルシンとしては、具体的にはトリフェニルアルシン等が挙げられる。
【0042】
カルベンとしては、カルベン炭素、すなわち6個の価電子を有する非イオン性の2価炭素原子を分子内に有する、直鎖状でも分岐状でも又は環状でもよい、一重項状態又は三重項状態の有機化合物が挙げられる。有機合成反応における、本発明の金属錯体の触媒活性の観点から、好ましいカルベンとしては一重項状態のカルベンが挙げられる。更に、該カルベンの化学的安定性の観点から、より好ましいカルベンとしては、一重項状態かつカルベン炭素が含窒素複素環式化合物に含まれる、いわゆるN−ヘテロ環状カルベンが挙げられる。
N−ヘテロ環状カルベンとしては、具体的にはイミダゾール−2−イリデン、イミダゾール−4−イリデン、ジヒドロイミダゾール−2−イリデン、テトラヒドロピリミジン−2−イリデン、ヘキサヒドロ−1,3−ジアゼピン−2−イリデン、オキサゾール−2−イリデン、ジヒドロオキサゾール−2−イリデン、チアゾール−2−イリデン、ジヒドロチアゾール−2−イリデン、ピラゾールイリデン、トリアゾールイリデン及びピリドイリデン等が挙げられる。
【0043】
合成上の観点から好ましいN−ヘテロ環状カルベンとしては、下記一般式(12)
【化25】
(式中、二点リーダは孤立電子対を表す。Cは炭素原子を表し、Nは窒素原子を表す。R15及びR16は各々独立して、アルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R17及びR18は各々独立して、水素原子及び、アルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R15〜R19は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。)
で表されるイミダゾール−2−イリデン及び、下記一般式(13)
【化26】
(式中、二点リーダは孤立電子対を表す。Cは炭素原子を表し、Nは窒素原子を表す。R19及びR20は各々独立して、アルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R21、R22、R23及びR24は各々独立して、水素原子及び、アルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R19〜R24は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。)
で表されるジヒドロイミダゾール−2−イリデンが挙げられる。
【0044】
前記一般式(12)及び(13)中、二点リーダは孤立電子対を表す。Cは炭素原子を表し、Nは窒素原子を表す。R15、R16、R19及びR20は各々独立して、アルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R17、R18、R21、R22、R23及びR24は各々独立して、水素原子及び、アルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R15〜R18、R19〜R24は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。
15〜R24におけるアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基は、前記一般式(11)におけるR12〜R14の詳細な説明における基と同様である。R15〜R24におけるアルケニル基、アリール基及びアラルキル基、R15〜R18が互いに結合して形成する環及び、R19〜R24が互いに結合して形成する環が有していてもよい置換基としては、アルキル基、ハロゲノアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基及びハロゲノ基等が挙げられる。これらの置換基は、前記一般式(11)のR12〜R14におけるアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基及びアラルキル基並びに、R12〜R14が互いに結合して形成する環が有してもよい置換基の詳細な説明における基と同様である。
【0045】
一般式(12)で表されるイミダゾール−2−イリデンの具体例としては、例えば1,3−ジメチル−2H−イミダゾール−2−イリデン(12−1)、1−エチル−3−メチル−2H−イミダゾール−2−イリデン(12−2)、1,3−ジイソプロピルー2H−イミダゾール−2−イリデン(12−3)、1,3−ジ−tert−ブチル−2H−イミダゾール−2−イリデン(12−4)、1,3−ジシクロヘキシル−2H−イミダゾール−2−イリデン(12−5)、1,3−ビス(1−アダマンチル)−2H−イミダゾール−2−イリデン(12−6)、1,3−ジメチル−2H−ベンズイミダゾール−2−イリデン(12−7)、1,3−ジ−tert−ブチル−2H−ベンズイミダゾール−2−イリデン(12−8)、1,3−ジシクロヘキシル−2H−ベンズイミダゾール−2−イリデン(12−9)、1,3−ビス(1−アダマンチル)−2H−ベンズイミダゾール−2−イリデン(12−10)、1−メチル−3−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2H−ベンズイミダゾール−2−イリデン(12−11)1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2H−イミダゾール−2−イリデン(12−12)、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2H−イミダゾール−2−イリデン(12−13)、1,3−ビス[(1S)−2,2−ジメチル−1−(1−ナフチル)プロピル]−2H−イミダゾール−2−イリデン(12−14)、2−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−5−メチルイミダゾ[1,5−a]ピリジン−1(2H)−イリデン(12−15)、2−(2,4,6−トリメチルフェニル)−5−メチルイミダゾ[1,5−a]ピリジン−1(2H)−イリデン(12−16)及び2−ベンジルイミダゾ[1,5−a]キノリン−1(2H)−イリデン(12−17)等が挙げられる。
【化27】
【0046】
一般式(13)で表されるジヒドロイミダゾール−2−イリデンの具体例としては、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジンイリデン(13−1)、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジンイリデン(13−2)、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2−イミダゾリジンイリデン(13−3)、1−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−3−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジンイリデン(13−4)、1−(1−アダマンチル)−3−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジンイリデン(13−5)、1,3−ビス(2,7−ジイソプロピルナフタレン−1−イル)−2−イミダゾリジンイリデン(13−6)、1,3−ビス[(1S)−2,2−ジメチル−1−(1−ナフチル)プロピル]−2−イミダゾリジンイリデン(13−7)及び1,3−ビス[(1S)−2,2−ジメチル−1−(2−トリル)プロピル]−2−イミダゾリジンイリデン(13−8)等が挙げられる。
【化28】
【0047】
前記N−ヘテロ環状カルベンの中には空気に不安定な化合物もあることから、取り扱いを容易にするため、ブレンステッド酸、具体的には例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸及びテトラフルオロホウ酸等と反応させることで対応するブレンステッド酸塩としてもよい。これらのブレンステッド酸塩を本発明の金属錯体の製造に用いる際には、ブレンステッド酸塩のまま反応に用いてもよく、反応系外で塩基を作用させてN−ヘテロ環状カルベンを遊離させた後に用いてもよく、反応系内で塩基を作用させてN−ヘテロ環状カルベンを遊離させながら用いてもよい。
【0048】
次に、前記組成式(8A)で表される金属錯体における、k、l、m及びnが示す数値と金属錯体の構造との相関について、下記構造組成式(構造組成式とは、三座配位子を有する金属錯体に特有のfacial/meridional異性、複数の単座配位子を有する金属錯体に特有の配位異性、及び三座配位子の“Hemilability”を考慮しない構造式と定義する)(8B)、(8C)、(8D)、(8E)及び(8F)によって詳細に説明する。なお、下記構造組成式(8B)〜(8F)中、H、N、P、S、R1、R2、R3、Q1及びQ2は前記一般式(1A)における定義と同様であり、M8、X1、X2、L1、L2及びL3は前記組成式(8A)における定義と同様であり、各記号間の破線は配位結合を表す。
【化29】
【0049】
k、l、m及びnが示す数値の組み合わせについて、(k,l,m,n)=((kの数値),(lの数値),(mの数値),(nの数値))という形式で記載する。前記構造組成式(8B)〜(8F)からわかるように、(k,l,m,n)=(1,1,1,1)の場合、前記組成式(8A)はジカチオン性錯体を表し、(k,l,m,n)=(1,1,1,0)の場合はカチオン性錯体を表し、(k,l,m,n)=(1,0,0,1)の場合、前記組成式(8A)は中性錯体を表す。更に、(k,l,m,n)=(0,0,0,1)の場合、前記組成式(8A)は中性5配位錯体を表し、(k,l,m,n)=(0,0,0,2)の場合は中性二核錯体を表す。
【0050】
前記組成式(8A)で表される金属錯体の好ましい形態としては、前記構造組成式(8B)〜(8F)においてQ1が1,2−エタンジイル基である、下記構造組成式(8G)、(8H)、(8I)、(8J)及び(8K
【化30】
(式中、C、H、N、P、S、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びQ2は前記一般式(1B)における定義と同様である。M8、X1、X2、L1、L2及びL3は前記組成式(8A)における定義と同様であり、各記号間の破線は配位結合を表す。)
で表される金属錯体及び、前記構造組成式(8B)〜(8F)においてQ2が1,2−エタンジイル基である、下記構造組成式(8L)、(8M)、(8N)、(8O)及び(8P
【化31】
(式中、C、H、N、P、S、R1、R2、R3、R8、R9、R10、R11及びQ1は前記一般式(1C)における定義と同様である。M8、X1、X2、L1、L2及びL3は前記組成式(8A)における定義と同様であり、各記号間の破線は配位結合を表す。)
で表される金属錯体が挙げられる。前記組成式(8A)で表される金属錯体のより好ましい形態としては、前記構造組成式(8B)〜(8F)においてQ1及びQ2がいずれも1,2−エタンジイル基である、下記構造組成式(8Q)、(8R)、(8S)、(8T)及び(8U
【化32】
(式中、C、H、N、P、S、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は前記一般式(1D)における定義と同様である。M8、X1、X2、L1、L2及びL3は前記組成式(8A)における定義と同様であり、各記号間の破線は配位結合を表す。)
で表される金属錯体が挙げられ、特に好ましい形態としては前記構造組成式(8R)、(8S)及び(8U)で表される金属錯体が挙げられる。前記組成式(8A)で表される金属錯体の特に好ましい具体例としては、下記構造組成式(8S−1)〜(8S−17)、(8U−1)〜(8U−3)及び(8R−1)が挙げられる。
【0051】
【化33】
【0052】
【化34】
【0053】
次に、前記組成式(9A)で表される金属錯体における、k、l及びmの数値と金属錯体の構造との相関について、下記構造組成式(9B)、(9C)、(9D)及び(9E)によって説明する。なお、下記構造組成式(9B)〜(9E)中、H、N、P、S、R1、R2、R3、Q1及びQ2は前記一般式(1A)における定義と同様であり、M9、X1、X2、X3、L1、L2及びL3は前記組成式(9A)における定義と同様であり、各記号間の破線は配位結合を表す。
【化35】
【0054】
k、l及びmが示す数値の組み合わせについて、(k,l,m)=((kの数値),(lの数値),(mの数値))という形式で記載する。前記構造組成式(9B)〜(9E)からわかるように、(k,l,m)=(1,1,1)の場合、前記組成式(9A)はトリカチオン性錯体を表し、(k,l,m)=(1,1,0)の場合はジカチオン性錯体を表す。また、(k,l,m)=(1,0,0)の場合、前記組成式(9A)はカチオン性錯体を表し、(k,l,m)=(0,0,0)の場合は中性錯体を表す。
前記組成式(9A)で表される金属錯体の好ましい形態としては、前記構造組成式(9B)〜(9E)においてQ1が1,2−エタンジイル基である、下記構造組成式(9F)、(9G)、(9H)及び(9I
【化36】
(式中、C、H、N、P、S、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びQ2は前記一般式(1B)における定義と同様である。M9、X1、X2、X3、L1、L2及びL3は前記組成式(9A)における定義と同様であり、各記号間の破線は配位結合を表す。)
で表される金属錯体及び、前記構造組成式(9B)〜(9E)においてQ2が1,2−エタンジイル基である、下記構造組成式(9J)、(9K)、(9L)及び(9M
【化37】
(式中、C、H、N、P、S、R1、R2、R3、R8、R9、R10、R11及びQ1は前記一般式(1C)における定義と同様である。M9、X1、X2、X3、L1、L2及びL3は前記組成式(9A)における定義と同様であり、各記号間の破線は配位結合を表す。)
で表される金属錯体が挙げられる。前記組成式(9A)で表される金属錯体のより好ましい形態としては、前記構造組成式(9B)〜(9E)においてQ1及びQ2がいずれも1,2−エタンジイル基である、下記構造組成式(9N)、(9O)、(9P)及び(9Q
【化38】
(式中、各記号間の実線、C、H、N、P、S、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は前記一般式(1D)における定義と同様である。M9、X1、X2、X3、L1、L2及びL3は前記組成式(9A)における定義と同様であり、各記号間の破線は配位結合を表す。)で表される金属錯体が挙げられる。
【0055】
更に、前記組成式(10A)で表される金属錯体における、kの数値と金属錯体の構造との相関について、下記構造組成式(10B)及び(10C)によって説明する。なお、下記構造組成式(10B)及び(10C)中、H、N、P、S、R1、R2、R3、Q1及びQ2は前記一般式(1A)における定義と同様であり、M10、X1、X2及びL1は前記組成式(10A)における定義と同様であり、各記号間の破線は配位結合を表す。
【化39】
kが示す数値について、k=(kの数値)という形式で記載する。前記構造組成式(10B)及び(10C)からわかるように、k=1の場合、前記組成式(10A)はジカチオン性錯体を表し、k=0の場合はカチオン性錯体を表す。
【0056】
前記組成式(10A)で表される金属錯体の好ましい形態としては、前記構造組成式(10B)及び(10C)においてQ1が1,2−エタンジイル基である、下記構造組成式(10D)及び(10E
【化40】
(式中、C、H、N、P、S、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びQ2は前記一般式(1B)における定義と同様である。M10、X1、X2及びL1は前記組成式(10A)における定義と同様であり、各記号間の破線は配位結合を表す。)
で表される金属錯体及び、前記構造組成式(10B)及び(10C)においてQ2が1,2−エタンジイル基である、下記構造組成式(10F)及び(10G
【化41】
(式中、C、H、N、P、S、R1、R2、R3、R8、R9、R10、R11及びQ1は前記一般式(1C)における定義と同様である。M10、X1、X2及びL1は前記組成式(10A)における定義と同様であり、各記号間の破線は配位結合を表す。)
で表される金属錯体が挙げられる。前記組成式(10A)で表される金属錯体のより好ましい形態としては、前記構造組成式(10B)及び(10C)においてQ1及びQ2がいずれも1,2−エタンジイル基である、下記構造組成式(10H)及び(10I
【化42】
(式中、C、H、N、P、S、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は前記一般式(1D)における定義と同様である。M10、X1、X2及びL1は前記組成式(10A)における定義と同様であり、各記号間の破線は配位結合を表す。)
で表される金属錯体が挙げられる。
【0057】
なお、金属種の配位効果により、本発明の金属錯体におけるイミノ基上の水素原子は、本発明の化合物におけるイミノ基上の水素原子よりも酸性度が増大していることから、本発明の金属錯体を塩基にて処理することで脱プロトン化され、金属原子−窒素原子間の配位結合が共有結合となる場合がある。具体的に、本発明の金属錯体(8D)の脱プロトン化による下記構造組成式(8D’)(式中、各記号間の破線、N、P、S、R1、R2、R3、Q1、Q2、M8、X1及びL1は前記構造組成式(8D)における定義と同様である。)で表される金属錯体の形成を例にとって説明する(Eq.6)。このような脱プロトン化された本発明の金属錯体は、触媒的有機合成反応における活性中間体としても重要である。
【化43】
【0058】
本発明の化合物は、種々の触媒的有機合成反応における三座配位子として有用であり、また本発明の金属錯体は、種々の有機合成反応における触媒として有用である。これらの有機合成反応は特に限定されるものではないが、具体的には酸化反応、還元反応、水素添加反応、脱水素反応、水素移動反応、付加反応、共役付加反応、環化反応、官能基変換反応、異性化反応、転位反応、重合反応、結合形成反応及び結合切断反応等が挙げられ、好ましくは水素添加反応、より好ましくはエステル類の水素添加反応等が挙げられる。
触媒的有機合成反応における配位子として本発明の化合物を用いる場合、該反応系への本発明の化合物の添加方法は特に限定されるものではないが、本発明の化合物と金属化合物を反応系内に各々単独に添加してもよく、本発明の化合物と金属化合物(及び溶媒)の混合物として反応系内に添加してもよく、本発明の化合物及び金属化合物(並びに、必要に応じて前記1価アニオン性単座配位子源、前記中性単座配位子、及びN−ヘテロ環状カルベンのブレンステッド酸塩等の中性単座配位子等価体)を溶媒中で反応させることによって得られる、本発明の金属錯体の溶液として反応系内に添加してもよい。これらの添加方法においては、触媒活性及び反応選択性を調整するために、前記1価アニオン性単座配位子源、前記中性単座配位子及び前記中性単座配位子等価体を別途添加してもよい。また、本発明の化合物は、各々単独で用いても2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
有機合成反応における触媒として本発明の金属錯体を用いる場合、該反応系への本発明の金属錯体の添加反応は特に限定されるものではないが、本発明の金属錯体を反応系内に単独で添加してもよく、本発明の金属錯体を溶媒に溶解又は懸濁させた後に反応系内に添加してもよい。これらの添加方法においては、触媒活性及び反応選択性を調整するために、本発明の化合物、前記1価アニオン性単座配位子源、前記中性単座配位子及び前記中性単座配位子等価体を別途添加してもよい。また、本発明の金属錯体は、各々単独で用いても2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
【実施例】
【0059】
以下に、本発明の化合物及び本発明の金属錯体並びに本発明の金属錯体を用いた触媒反応について、実施例及び比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。実施例及び比較例中において、物性の測定に用いた装置及び条件は次の通りである。
1)プロトン核磁気共鳴分光法(1H NMR):Varian Marcury plus 300型装置(共鳴周波数:300MHz、バリアン社製)又は、400MR DD2型装置(共鳴周波数:400MHz、アジレント社製)
内部標準物質:テトラメチルシラン(0ppm(singletピーク))又は残留軽溶媒(メタノール:3.31ppm(quintetピーク)、ジクロロメタン:5.32ppm(tripletピーク)、クロロホルム:7.26ppm(singletピーク))
2)炭素13核磁気共鳴分光法(13C NMR):Varian Marcury plus 300型装置(共鳴周波数:75MHz、バリアン社製)又は、400MR DD2型装置(共鳴周波数:100MHz、アジレント社製)
内部標準物質:クロロホルム(77ppm(tripletピーク))
3)リン31核磁気共鳴分光法(31P NMR):Varian Marcury plus 300型装置(共鳴周波数:121MHz、バリアン社製)又は、400MR DD2型装置(共鳴周波数:161MHz、アジレント社製)
外部標準物質:重水中リン酸(0ppm(singletピーク))
4)フッ素19核磁気共鳴分光法(19F NMR):400MR DD2型装置(共鳴周波数:376MHz、アジレント社製)
外部標準物質:α,α,α−トリフルオロ−p−キシレン(−64ppm(singletピーク))
5)ガスクロマトグラフィー(GC):GC−4000型装置(ジーエルサイエンス社製)
カラム:InertCap PureWax(ジーエルサイエンス社製)、試料導入部:200℃、試料検出部:250℃、初期温度:50℃、昇温速度1:5℃/分、到達温度1:150℃、到達温度1保持時間:0分、昇温温度2:10℃/分、到達温度2:250℃、到達温度2保持時間:5分。
6)精密質量分析(HRMS):LCMS−IT−TOF型装置(島津製作所社製)
実施例1〜10は本発明の化合物の製造、実施例11〜31は本発明の金属錯体の製造、実施例32及び実施例33並びに比較例1〜4は本発明の金属錯体を触媒として用いた有機合成反応に関する。なお、特に但し書きの無い限り、基質及び溶媒等の仕込みは窒素気流下、反応は窒素雰囲気下、反応液の後処理及び粗生成物の精製は空気中で実施した。
【0060】
(実施例1)2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン(構造式(1D−1))の合成、経路1(Eq.7)
【化44】
第1工程:3−(2−クロロエチル)−2−オキサゾリジノン(構造式(6−1))の合成
【化45】
(仕込み・反応)本工程は空気中で行った。2L四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー及び温度計を取り付け、N,N−ビス(クロロエチル)アミン塩酸塩(200.0g、1.12mol、1.0当量)、メタノール(MeOH)(600mL)及びトリエチルアミン(Et3N)(328.0mL、2.35mol、2.1当量)を順次仕込んだ。得られた溶液に、ドライアイスから発生させた二酸化炭素(CO2)ガスを室温で1時間通気した。
(後処理・単離・精製)反応液を減圧下濃縮後にトルエン(1.0L)を加え、得られた白色懸濁液を吸引濾過した後に、残渣をトルエンで洗浄した。濾液をまとめて減圧下濃縮することで、表題化合物(6−1)が薄黄色液体として165.7g得られた。単離収率:98.9%。なお本化合物は蒸留精製にて脱色可能であったが(沸点:135℃(3mmHg))、NMR分析の結果ほぼ純粋だったため、これ以上の精製を行うことなく以降の工程に使用した。
1H NMR(300MHz,重クロロホルム(CDCl3)):δ=4.38(ddd,J=0.9,6.3,7.8Hz,2H),3.79−3.67(m,4H),3.66−3.59(m,2H).
13C NMR(75MHz,CDCl3):δ=158.38,62.01,46.19,45.70,42.03.
【0061】
第2工程:3−[2−(メチルチオ)エチル]−2−オキサゾリジノン(構造式(2C−1))の合成
【化46】
(仕込み・反応)本工程は空気中で行った。1L四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、冷却管、滴下漏斗及び温度計を取り付け、第1工程で得られた3−(2−クロロエチル)−2−オキサゾリジノン(6−1)(48.7g、325.6mmol、1.0当量)及びMeOH(200mL)を順次仕込み、得られた溶液を55℃に加熱した。次いで、メタンチオール(5−1)のナトリウム塩(NaSMe)の21.3重量%水溶液(128.6g、390.7mmol、1.2当量)を滴下漏斗に仕込み、15分かけて溶液に滴下した後に、反応液を60℃で1時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)減圧下、反応液からMeOHを190mL回収した後に、酢酸エチル(500mL)を加えて有機層を分液した。水層を酢酸エチルで1回抽出した後、有機層をまとめて減圧下濃縮した。得られた残渣を蒸留精製(沸点:137℃(0.4mmHg))にて精製することで、表題化合物(2C−1)が無色液体として43.9g得られた。単離収率:83.6%。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=4.38−4.32(m,2H),3.67−3.62(m,2H),3.49(t,J=6.8Hz,2H),2.70(t,J=6.8Hz,2H),2.15(s,3H).
13C NMR(100MHz,CDCl3):δ=158.38,61.77,44.80,42.87,31.77,15.18.
【0062】
第3工程:2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン(構造式(1D−1))の合成
【化47】
(仕込み・反応)200mL四つ口丸底フラスコに、マグネティックスターラーバー、滴下漏斗、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、ジフェニルホスフィン(4−7)(純度:98.5%、10.0g、52.9mmol、1.1当量)及び脱水テトラヒドロフラン(THF)(50mL)を順次仕込み、得られた溶液を氷水浴にて5℃に冷却した。n−ブチルリチウム(n−BuLi)のn−ヘキサン溶液(濃度:1.60mol/L、33.1mL、52.9mmol、1.1当量)を滴下漏斗に仕込み、内温が10℃以下を保つ速度で20分かけて溶液に滴下した後、氷水浴を取り去って室温で20分攪拌することで、リチウムジフェニルホスフィド(Ph2PLi)のTHF/n−ヘキサン溶液(52.9mmol、1.1当量)を赤橙色液体として調製した。次いで、第2工程で得られた3−[2−(メチルチオ)エチル]−2−オキサゾリジノン(2C−1)(7.8g、48.1mmol、1.0当量)及び脱水THF(10mL)を滴下漏斗に順次仕込み、内温が30℃以下を保つ速度で30分かけてPh2PLi溶液に滴下した。
(後処理・単離・精製)反応液を減圧下濃縮し、水(100mL)及び酢酸エチル(200mL)を加え、攪拌した後に静置して水層を分液した。有機層を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン=2/1/0.03〜1/2/0.03)にて精製することで、表題化合物(1D−1)が薄黄色粘性液体として12.5g得られた。単離収率:77.9%。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.46−7.39(m,4H),7.36−7.30(m,6H),2.82−2.72(m,4H),2.61(t,J=6.4Hz,2H),2.31−2.25(m,2H),2.07(s,3H),1.53*(br s,1H).(*但し水由来のピークを含む)
31P NMR(161MHz,CDCl3):δ=−20.7.
【0063】
(実施例2)2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン(構造式(1D−1))の合成、経路2(Eq.8)
【化48】
第1工程:3−[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]−2−オキサゾリジノン(構造式(3C−1))の合成
【化49】
(仕込み・反応)500mL四つ口丸底フラスコに、マグネティックスターラーバー、滴下漏斗、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、実施例1第1工程で得られた3−(2−クロロエチル)−2−オキサゾリジノン(6−1)(16.1g、107.4mmol、1.0当量)及び脱水THF(80mL)を仕込み、得られた溶液をドライアイス/アセトン浴を用いて−30℃に冷却した。次いで、実施例1第3工程と同様にして調製した、Ph2PLiのTHF/n−ヘキサン溶液(107.4mmol、1.0当量)を滴下漏斗に仕込み、内温が−20℃以下を保つ速度で2時間半かけて溶液に滴下した後、得られた反応液を室温まで昇温させた。
(後処理・単離・精製)反応液を減圧下濃縮後に得られた残渣にトルエン(300mL)及び水(100mL)を加え、攪拌した後に静置して水層を分液した。有機層を水(50mL)で3回洗浄した後に減圧下濃縮し、得られた残渣を2−メチル−2−ブタノール(tAmOH)から再結晶することで、表題化合物(3C−1)が白色粉末として18.7g得られた。単離収率:58.2%。
1H NMR(300MHz,CDCl3):δ=7.49−7.31(m,10H),4.21−4.13(m,2H),3.54−3.37(m,4H),2.37−2.31(m,2H).
31P NMR(121MHz,CDCl3):δ=−21.3.
【0064】
第2工程:2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン(1D−1)の合成
(仕込み・反応)100mL四つ口丸底フラスコに、マグネティックスターラーバー、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、第1工程で得られた3−[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]−2−オキサゾリジノン(3C−1)(6.0g、20.0mmol)、tAmOH(40mL)及びNaSMe(純度:95.0%、1.77g、24.0mmol、1.2当量)を順次仕込み、得られた懸濁液を還流下1時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応液を減圧下濃縮し、得られた残渣を直接シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン=2/1/0.03〜1/2/0.03)にて濾過・精製することで、表題化合物(1D−1)が薄黄色粘性液体として4.9g得られた。単離収率:80.8%。本化合物のNMR分析結果は、実施例1第3工程で得られたものと完全に一致した。
【0065】
(実施例3)2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン(構造式(1D−2))の合成、経路1(Eq.9)
【化50】
第1工程:3−[2−(エチルチオ)エチル]−2−オキサゾリジノン(構造式(2C−2))の合成
【化51】
(仕込み・反応)本工程は空気中で行った。200mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、冷却管及び温度計を取り付け、実施例1第1工程で得られた3−(2−クロロエチル)−2−オキサゾリジノン(6−1)(16.3g、109.1mmol、1.0当量)、MeOH(55mL)及びエタンチオール(5−2)のナトリウム塩(NaSEt)(純度:96.4%、10.0g、114.6mmol、1.05当量)を順次仕込み、得られた懸濁液を還流下で1時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応液を減圧下濃縮し、得られた残渣を直接シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/酢酸エチル=1/1〜1/4)にて濾過・精製することで、表題化合物(2C−2)が薄黄色液体として17.9g得られた。単離収率:93.6%。
1H NMR(300MHz,CDCl3):δ=4.38−4.30(m,2H),3.69−3.61(m,2H),3.47(t,J=6.9Hz,2H),2.73(t,J=6.9Hz,2H),2.59(q,J=7.2Hz,2H),1.27(t,J=7.2Hz,3H).
【0066】
第2工程:2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン(構造式(1D−2))の合成
【化52】
(仕込み・反応)実施例1第3工程と同様に、200mL四つ口丸底フラスコ、マグネティックスターラーバー、滴下漏斗、温度計及び三方コックを用いて、Ph2PLiのTHF/n−ヘキサン溶液(52.9mmol、1.1当量)を調製した。次いで、第1工程で得られた3−[2−(エチルチオ)エチル]−2−オキサゾリジノン(2C−2)(8.4g、48.1mmol、1.0当量)及び脱水THF(10mL)を滴下漏斗に順次仕込み、内温が30℃以下を保つ速度で30分かけてPh2PLi溶液に滴下した。
(後処理・単離・精製)反応液を減圧下濃縮し、水(100mL)及び酢酸エチル(200mL)を加え、攪拌した後に静置して分液した。有機層を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン=2/1/0.03〜1/2/0.03)にて精製することで、表題化合物(1D−2)が薄黄色粘性液体として13.8g得られた。単離収率:90.4%。
1H NMR(300MHz,CDCl3):δ=7.47−7.29(m,10H),2.82−2.71(m,4H),2.63(t,J=6.3Hz,2H),2.51(q,J=7.5Hz,2H),2.28(dd,J=7.5,8.1Hz,2H),1.64*(br s,1H),1.24(t,J=7.5Hz,3H).(*但し水由来のピークを含む)
31P NMR(121MHz,CDCl3):δ=−20.6.
【0067】
(実施例4)2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン(構造式(1D−2))の合成、経路2(Eq.10)
【化53】
(仕込み・反応)100mL四つ口丸底フラスコに、マグネティックスターラーバー、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、実施例2第1工程で得られた3−[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]−2−オキサゾリジノン(3C−1)(5.0g、16.7mmol、1.0当量)、tAmOH(33mL)及びNaSEt(純度:96.4%、1.75g、20.0mmol、1.2当量)を順次仕込み、得られた懸濁液を還流下で1時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応液を室温にまで冷却し、水(20mL)を加えて攪拌した後に静置して水層を分液した。有機層を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン=2/1/0.03〜1/2/0.03)にて精製することで、表題化合物(1D−2)が薄黄色粘性液体として4.4g得られた。単離収率:83.0%。本化合物のNMR分析結果は、実施例3第2工程にて得られたものと完全に一致した。
実施例1〜4からわかるように、本発明の化合物は、一般式(2)で表される化合物及び一般式(3)で表される化合物のいずれからも容易に製造可能である。
【0068】
(実施例5)2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアンモニウムクロライド(構造式(1D−2・塩酸塩))の合成(Eq.11)
【化54】
(仕込み・反応)本工程は空気中で行った。100mL丸底フラスコにマグネティックスターラーバーを取り付け、実施例3/実施例4で得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン(1D−2)(3.17g、10.0mmol、1.0当量)及びトルエン(40mL)を順次仕込んだ。得られた溶液に塩酸(HCl)の4規定水溶液(5.0mL、20.0mmol、2.0当量)をピペットにて滴下し、得られた白色懸濁液を室温で10分攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応後に得られた懸濁液を吸引濾過した後、濾取した結晶をトルエンで洗浄し、減圧下加熱乾燥することで、表題化合物(1D−2・塩酸塩)が白色粉末として3.40g得られた。単離収率:96.1%。
1H NMR(400MHz,重メタノール(CD3OD)):δ=7.50−7.43(m,4H),7.42−7.36(m,6H),4.85(s,2H),3.20(t,J=6.8Hz,2H),3.14−3.06(m,2H),2.81(t,J=7.2Hz,2H),2.58(d,J=7.2Hz,2H),2.51−2.45(m,2H),1.25(t,J=7.2Hz,3H).
31P NMR(161MHz,CD3OD):δ=−20.9.
実施例5からわかるように、本発明の化合物はブレンステッド酸で処理することで、取り扱いが容易な結晶性の塩に誘導することも可能である。
【0069】
(実施例6)2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(tert−ブチルチオ)エチル]エチルアミン(構造式(1D−3))の合成(Eq.12)
【化55】
第1工程:3−[2−(tert−ブチルチオ)エチル]−2−オキサゾリジノン(構造式(2C−3))の合成
【化56】
(仕込み・反応)本反応は空気中で行った。200mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、冷却管及び温度計を取り付け、実施例1第1工程で得られた3−(2−クロロエチル)−2−オキサゾリジノン(6−1)(12.5g、83.8mmol、1.0当量)、MeOH(80mL)及び2−メチル−2−プロパンチオール(5−8)のナトリウム塩(NaStBu)(純度:98.7%、10.0g、88.0mmol、1.05当量)を順次仕込み、得られた懸濁液を還流下で3時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応液を減圧下濃縮し、得られた残渣を直接シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/酢酸エチル=2/1〜1/2)にて濾過・精製することで、表題化合物(2C−3)が無色液体として15.6g得られた。単離収率:91.6%。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=4.36−4.28(m,2H),3.68−3.62(m,2H),3.44(t,J=6.8Hz,2H),2.72(t,J=6.8Hz,2H),1.31(s,9H).
13C NMR(100MHz,CDCl3):δ=158.26,61.76,45.31,44.58,42.50,30.91,26.58.
【0070】
第2工程:2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(tert−ブチルチオ)エチル]エチルアミン(構造式(1D−3))の合成
【化57】
(仕込み・反応)実施例1第3工程と同様にして、200mL四つ口丸底フラスコ、マグネティックスターラーバー、滴下漏斗、温度計及び三方コックを用い、Ph2PLiのTHF/n−ヘキサン溶液(52.9mmol、1.1当量)を調製した。次いで、第1工程で得られた3−[2−(tert−ブチルチオ)エチル]−2−オキサゾリジノン(2C−3)(9.8g、48.1mmol、1.0当量)及び脱水THF(10mL)を滴下漏斗に順次仕込み、内温が30℃以下を保つ速度で30分かけてPh2PLi溶液に滴下した。
(後処理・単離・精製)反応液を減圧下濃縮し、水(100mL)及び酢酸エチル(200mL)を加え、攪拌した後に静置して分液した。有機層を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン=4/1/0.05〜1/1/0.02)にて精製することで、表題化合物(1D−3)が薄黄色粘性液体として13.6g得られた。単離収率:81.8%。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.45−7.39(m,4H),7.36−7.30(m,6H),2.82−2.71(m,4H),2.65(t,J=6.4Hz,2H),2.30−2.24(m,2H),1.63*(br s,1H),1.31(s,9H).(但し水由来のピークを含む)
31P NMR(161MHz,CDCl3):δ=−20.6.
【0071】
(実施例7)2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(1−アダマンチルチオ)エチル]エチルアミン(構造式(1D−4))の合成(Eq.13)
【化58】
(仕込み・反応)100mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、実施例2第1工程で得られた3−[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]−2−オキサゾリジノン(3C−1)(4.2g、14.0mmol、1.0当量)、tAmOH(28mL)、1−アダマンタンチオール(5−18)(2.5g、14.9mmol、1.05当量)及びナトリウム tert−ブトキシド(NaOtBu)(1.5g、15.4mmol、1.1当量)を順次加え、得られた懸濁液を還流下1時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応液を室温にまで冷却した後、水(25mL)及び酢酸エチル(50mL)を順次加え、攪拌した後に静置して水層を分液した。有機層を減圧下濃縮した後に、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン=4/1/0.05〜1/1/0.02)にて精製することで、表題化合物(1D−4)が黄色粘性液体として4.0g得られた。単離収率:67.5%。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.47−7.38(m,4H),7.38−7.28(m,6H),2.79−2.71(m,4H),2.63(t,J=6.0Hz,2H),2.29−2.24(m,2H),2.03(br s,3H),1.83(d,J=2.8Hz,6H),1.73−1.62(m,6H),1.52*(br s,1H).(*但し水由来ピークを含む)
31P NMR(161MHz,CDCl3):δ=−20.7.
【0072】
(実施例8)2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(フェニルチオ)エチル]エチルアミン(構造式(1D−5))の合成(Eq.14)
【化59】
(仕込み・反応)100mL四つ口丸底フラスコに、マグネティックスターラーバー、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、実施例2第1工程で得られた3−[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]−2−オキサゾリジノン(3C−1)(6.0g、20.0mmol、1.0当量)、tAmOH(40mL)及びベンゼンチオール(5−19)のナトリウム塩(NaSPh)(純度:96.3%、3.0g、22.0mmol、1.2当量)を順次仕込み、得られた懸濁液を還流下で30分攪拌した。
(後処理・精製)反応液を室温にまで冷却し、水(20mL)を加えて攪拌した後に静置して分液した。有機層を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン=1/1/0.02)にて精製することで、表題化合物(1D−5)が黄色粘性液体として6.5g得られた。単離収率:88.9%。
1H NMR(300MHz,CDCl3):δ=7.51−7.14(m,15H),3.02(t,J=6.6Hz,2H),2.80(t,J=6.3Hz,2H),2.84−2.69(m,4H),2.25(dd,J=7.2,7.8Hz,2H),1.64*(br s,1H).(*但し水由来のピークを含む)
31P NMR(121MHz,CDCl3):δ=−20.6.
【0073】
(実施例9)2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(p−トリルチオ)エチル]エチルアミン(構造式(1D−6))の合成(Eq.15)
【化60】
(仕込み・反応)100mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、実施例2第1工程で得られた3−[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]−2−オキサゾリジノン(3C−1)(6.0g、20.0mmol、1.0当量)、tAmOH(40mL)及びp−トルエンチオール(5−22)のナトリウム塩(ナトリウム p−トルエンチオラート)(純度:98.3%、3.3g、22.0mmol、1.2当量)を順次仕込み、得られた懸濁液を還流下30分攪拌した。
(後処理・精製)反応液を室温にまで冷却し、水(20mL)を加えて攪拌した後に静置して分液した。有機層を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン=1/1/0.02)にて精製することで、表題化合物(1D−6)が黄色粘性液体として6.5g得られた。単離収率:85.6%。
1H NMR(300MHz,CDCl3):δ=7.46−7.22(m,12H),7.08(d,J=8.4Hz,2H),2.97(t,J=6.6Hz,2H),2.77(t,J=6.6Hz,2H),2.71(t,J=8.1Hz,2H),2.31(s,3H),2.24(dd,J=7.2,8.1Hz,2H),1.64*(br s,1H).(*但し水由来ピークを含む)
31P NMR(121MHz,CDCl3):δ=−20.9.
【0074】
(実施例10)2−ジシクロヘキシルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン−3水素化ホウ素錯体(構造式(1D−7))の合成(Eq.16)
【化61】
第1工程:ジシクロヘキシルホスフィン−3水素化ホウ素錯体(構造式(4−21))の合成
【化62】
(仕込み・反応)200mL四つ口丸底フラスコに、マグネティックスターラーバー、滴下漏斗、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、ジシクロヘキシルホスフィン(4−6)(20.0mL、91.2mmol、1.0当量)及びジエチルエーテル(Et2O)(100mL)を順次仕込み、得られた溶液を氷水浴にて5℃に冷却した。次いで、三水素化ホウ素−ジメチルスルフィド錯体(BH3−SMe2)(濃度:10.0mol/L、13.7mL、137.0mmol、1.5当量)を滴下漏斗に仕込み、内温が10℃以下を保つ速度で10分かけて溶液に滴下した後、反応液を常温まで昇温させた。
(後処理・単離・精製)反応液を減圧下濃縮した後、得られた残渣をクロロホルムで溶解させ、水を投入して常温で攪拌後に静置して水層を分液した。有機層を減圧下濃縮し、得られた固体を粉砕した後に減圧下乾燥することで、表題化合物(4−21)を白色粉末として19.3g得た。単離収率:100%。本化合物はこれ以上の精製を行うことなく以降の工程に使用した。
31P NMR(161MHz,重塩化メチレン(CD2Cl2)):δ=17.3−16.4(m).
【0075】
第2工程:2−ジシクロヘキシルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン−3水素化ホウ素錯体(構造式(1D−7))の合成
【化63】
(仕込み・反応)100mL四つ口丸底フラスコに、マグネティックスターラーバー、滴下漏斗、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、第1工程で得られたジシクロヘキシルホスフィン−3水素化ホウ素錯体(4−21)(4.7g、22.0mmol、1.1当量)及び脱水THF(22mL)を仕込み、得られた溶液を氷水浴にて5℃に冷却した。滴下漏斗にn−BuLiのn−ヘキサン溶液(濃度:1.60mol/L、13.1mmol、1.05当量)を仕込み、内温が10℃以下を保つ速度で15分かけて溶液に滴下した後、反応液を常温にまで昇温させて30分攪拌することで、リチウムジシクロヘキシルホスフィド−3水素化ホウ素錯体(Cy2PLi−BH3)のTHF/n−ヘキサン懸濁液を調製した。次いで滴下漏斗に、実施例1第2工程で得られた3−[2−(メチルチオ)エチル]−2−オキサゾリジノン(2C−1)(3.2g、20.0mmol、1.0当量)及び脱水THF(3mL)を滴下漏斗に順次仕込み、内温が10℃以下を保つ速度で10分かけてCy2PLi−BH3懸濁液に滴下した後、反応液を室温にまで昇温させて1時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応液を減圧下濃縮した後、得られた残渣に酢酸エチル(50mL)及び水(25mL)を加えて攪拌した後に静置し、水層を分液した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液(25mL)及び水(25mL)で順次洗浄した後に濃縮し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル〜酢酸エチル/MeOH=50/1)で精製することで、表題化合物(1D−7)が薄黄色粘性液体として5.4g得られた。単離収率:82.0%。
1H NMR(400MHz,CD2Cl2):δ=2.88−2.76(m,4H),2.61(t,J=6.4Hz,2H),2.08(s,3H),1.92−1.17*(m,23H),0.90−(−0.30)(br q,3H).(*但し水由来ピークを含む)
31P NMR(161MHz,CD2Cl2):δ=22.4(d,J=73.9Hz,1P).
【0076】
(実施例11)ジクロロ(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8S−1))の合成(Eq.17)
【化64】
(仕込み・反応)50mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(RuCl2(PPh33)(2.88g、3.00mmol、1.0当量)、脱水トルエン(30mL)及び実施例1/実施例2にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン(1D−1)(1.0g、3.30mmol、1.1当量)を順次仕込み、得られた暗紫色懸濁液を還流下で1時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応後に得られた橙色懸濁液を5℃に冷却して吸引濾過した後、濾取した結晶をトルエン及びn−ヘキサンにて順次洗浄し、減圧下加熱乾燥することで、表題化合物(8S−1)が橙色粉末として2.17g得られた。単離収率:97.9%、純度:99.8wt%(1H NMR分析による)。なお、主な不純物はトルエンであった。
1H NMR(400MHz,CD2Cl2):図1を参照のこと。
31P NMR(161MHz,CD2Cl2):δ=46.7−45.5(m,1P),44.8−43.8(m,1P).
HRMS:表題化合物の分子量イオン(以下、M+と略す)として検出;質量電荷比実測値(以下、Meas.m/zと略す)=737.0526,質量電荷比予測値(以下、Pred.m/zと略す)=737.0546,表題化合物の分子量イオン組成式(以下、Mと略す)=C35H37NP2SCl2Ru.
【0077】
(実施例12)ジクロロ(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8S−2))の合成(Eq.18)
【化65】
実施例11と同様にして、RuCl2(PPh33(2.62g、2.73mmol、1.0当量)、脱水トルエン(27mL)及び実施例3/実施例4にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン(1D−2)(953mg、3.00mmol、1.1当量)から、表題化合物(8S−2)が明赤褐色粉末として2.06g得られた。単離収率:94.6%、純度:94.2wt%(1H NMR分析による)。なお、主な不純物はトルエンであった。
1H NMR(300MHz,CD2Cl2):図2を参照のこと。
31P NMR(121MHz,CD2Cl2):δ=47.0−43.0(m,2P).
HRMS:Meas.m/z=751.0694,Pred.m/z=751.0697,M=C36H39NP2SCl2Ru.
【0078】
(実施例13)ジクロロ(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(tert−ブチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8S−3))の合成(Eq.19)
【化66】
実施例11と同様にして、RuCl2(PPh33(2.52g、2.63mmol、1.0当量)、脱水トルエン(30mL)及び実施例6にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(tert−ブチルチオ)エチル]エチルアミン(1D−3)(1.0g、2.89mmol、1.1当量)から、表題化合物(8S−3)が薄赤色粉末として1.54g得られた。単離収率:70.3%、純度:93.6wt%(1H NMR分析による)。なお、主な不純物はトルエンであった。
1H NMR(400MHz,CD2Cl2):図3を参照のこと。
31P NMR(161MHz,CD2Cl2):δ=44.1(d,J=28.0Hz,1P),40.8(d,J=31.1Hz,1P).
HRMS:Meas.m/z=779.1002,Pred.m/z=779.1016,M=C38H43NP2SCl2Ru.
【0079】
(実施例14)ジクロロ(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(フェニルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8S−4))の合成(Eq.20)
【化67】
実施例11と同様にして、RuCl2(PPh33(1.0g、1.04mmol、1.0当量)、脱水トルエン(20mL)及び実施例8にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(フェニルチオ)エチル]エチルアミン(1D−5)(332mg、1.14mmol、1.1当量)から、表題化合物(8S−4)が明赤褐色粉末として780mg得られた。単離収率:99.3%、純度:95.8wt%(1H NMR分析による)。なお、主な不純物はトルエンであった。
1H NMR(300MHz,CD2Cl2):図4を参照のこと。
31P NMR(121MHz,CD2Cl2):溶解度が低く測定困難であった。
HRMS:M+,Meas.m/z=799.0725,Pred.m/z=799.0698,M=C40H39NP2SCl2Ru.
【0080】
(実施例15)ジクロロ(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(p−トリルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8S−5))の合成(Eq.21)
【化68】
実施例11と同様にして、RuCl2(PPh33(2.30g、2.40mmol、1.0当量)、脱水トルエン(23mL)及び実施例9にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(p−トリルチオ)エチル]エチルアミン(1D−6)(1.00g、2.64mmol、1.1当量)から、表題化合物(8S−5)が明赤褐色粉末として1.88g得られた。単離収率:96.3%。
1H NMR(300MHz,CD2Cl2):図5を参照のこと。
31P NMR(121MHz,CD2Cl2):δ=45.4(br s,1P),44.0(d,J=31.0Hz,1P).
HRMS:M+;Meas.m/z=813.0882,Pred.m/z=813.0855,M=C41H41NP2SCl2Ru.
【0081】
(実施例16)ジクロロ(トリメチルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8S−6))の合成(Eq.22)
【化69】
(仕込み・反応)50mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、クライゼン蒸留装置、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、ジクロロ(p−シメン)ルテニウム(II)ダイマー([RuCl2(p−cymene)]2)(791mg、1.29mmol、1.0当量)及び3−メトキシ−1−ブタノール(3M1B)(9mL)を順次仕込み、得られた暗赤色懸濁液を減圧下脱気した。次いで、トリメチルホスフィン(11−1)のTHF溶液(濃度:1.03mol/L、2.80mL、2.84mmol、2.2当量)を仕込み、室温で5分攪拌した。得られた橙色懸濁液に、実施例3/実施例4にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン(1D−2)(900mg、2.84mmol、2.2当量)を加え、クライゼン蒸留装置にてTHFを常圧で留去した後に、3M1Bの還流下で1時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応液を5℃に冷却して得られた黄橙色懸濁液を吸引濾過した後、濾取した結晶をMeOHにて洗浄し、減圧下加熱乾燥することで、表題化合物(8S−6)が黄橙色粉末として920mg得られた。単離収率:63.1%。
1H NMR(300MHz,CD2Cl2):図6を参照のこと。
31P NMR(121MHz,CD2Cl2):δ=56.1(br s,1P),9.7(br s,1P).
HRMS:M+;Meas.m/z=565.0221,Pred.m/z=565.0223,M=C21H33NP2SCl2Ru.
【0082】
(実施例17)ジクロロ(トリメチルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(フェニルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8S−7))の合成(Eq.23)
【化70】
実施例16と同様にして、[RuCl2(p−cymene)]2(762mg、1.25mmol、1.0当量)、3M1B(10mL)、トリメチルホスフィン(11−1)のTHF溶液(濃度:1.03mol/L、2.70mL、2.74mmol、2.2当量)及び実施例8にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(フェニルチオ)エチル]エチルアミン(1D−5)(1.00g、2.74mmol、2.2当量)から、表題化合物(8S−7)が橙色粉末として990mg得られた。単離収率:64.5%。
1H NMR(300MHz,CD2Cl2):図7を参照のこと。
31P NMR(121MHz,CD2Cl2):δ=57.5(d,J=32.4Hz,1P),8.6(d,J=34.0Hz,1P).
HRMS:M+;Meas.m/z=613.0184,Pred.m/z=613.0224,M=C25H33NP2SCl2Ru.
【0083】
(実施例18)ジクロロ(トリエチルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8S−8))の合成(Eq.24)
【化71】
実施例16と同様にして、[RuCl2(p−cymene)]2(877mg、1.43mmol、1.0当量)、3M1B(15mL)トリエチルホスフィン(11−2)のTHF溶液(濃度:1.03mol/L、3.06mL、3.15mmol、2.2当量)及び実施例3/実施例4にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン(1D−2)(1.00g、3.15mmol、2.2当量)から、表題化合物(8S−6)が黄褐色粉末として1.13g得られた。単離収率:64.4%、純度:99.1wt%(1H NMRによる)。なお、主な不純物は3M1Bであった。
1H NMR(400MHz,CD2Cl2):図8を参照のこと。
31P NMR(161MHz,CD2Cl2): δ=52.7(br s,1P),29.8(br s,1P).
HRMS:表題化合物から1個の塩化物イオンが解離した分子量イオン(以下、[M−Cl]+と略す)として検出;Meas.m/z=572.1022,Pred.m/z=572.1008,表題化合物から1個の塩化物イオンが解離した分子量イオンの組成式(以下、M−Clと略す)=C24H39NP2SClRu.
【0084】
(実施例19)ジクロロ(トリシクロヘキシルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8S−9))の合成(Eq.25)
【化72】
THF留去を行わないこと以外は実施例16と同様にして、[RuCl2(p−cymene)]2(877mg、1.43mmol、1.0当量)、3M1B(10mL)、トリシクロヘキシルホスフィン(11−3)のトルエン溶液(濃度:1.04mol/L、3.03mL、3.15mmol、2.2当量)及び実施例3/実施例4にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン(1D−2)(1.00g、3.15mmol、2.2当量)を、トルエン/3M1B還流下で反応させることにより、表題化合物(8S−9)が明褐色粉末として1.25g得られた。単離収率:50.0%、純度:88.1wt%(1H NMRによる)。なお、主な不純物は3M1Bであった。
1H NMR(400MHz,CD2Cl2):図9を参照のこと。
31P NMR(161MHz,CD2Cl2):δ=44.0−32.0(m,2P).
HRMS:[M−Cl]+;Meas.m/z=734.244,Pred.m/z=734.242,M−Cl=C36H57NP2SClRu.
【0085】
(実施例20)ジクロロ[トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン]{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8S−10))の合成(Eq.26)
【化73】
(仕込み・反応)50mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、クライゼン蒸留装置、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、[RuCl2(p−cymene)]2(459mg、0.75mmol、1.0当量)、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン(11−6)(581mg、1.65mmol、2.2当量)及び脱水THF(5mL)を順次仕込み、得られた暗赤色懸濁液を室温で5分攪拌した。次いで、実施例1/実施例2にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン(1D−1)(500mg、1.65mmol、2.2当量)及び3M1B(10mL)を加え、クライゼン蒸留装置にてTHFを常圧で留去した後に、3M1Bの還流下で1時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応液を5℃に冷却して得られた黄橙色懸濁液に、MeOH(20mL)を加えて吸引濾過した後、濾取した結晶をMeOHにて洗浄し、減圧下加熱乾燥することで、表題化合物(8S−10)が黄橙色粉末として922mg得られた。単離収率:73.5%、純度99.0wt%。なお、主な不純物は3M1Bであった。
1H NMR(400MHz,CD2Cl2):図10を参照のこと。
31P NMR(161MHz,CD2Cl2):δ=47.0−45.6(m,1P),40.1−39.4(m,1P).
【0086】
(実施例21)ジクロロ[トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン]{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8S−11))の合成(Eq.27)
【化74】
実施例20と同様にして、[RuCl2(p−cymene)]2(877mg、1.43mmol、1.0当量)、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン(11−6)(1.11g、3.15mmol、2.2当量)、脱水THF(10mL)、実施例3/実施例4にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン(1D−2)(1.0g、3.15mmol、2.2当量)及び3M1B(20mL)から、表題化合物(8S−11)が薄褐色粉末として1.98g得られた。単離収率:81.1%、純度98.7wt%。なお、主な不純物は3M1Bであった。
1H NMR(400MHz,CD2Cl2):図11を参照のこと。
31P NMR(161MHz,CD2Cl2):δ=46.5−44.8(m,1P),40.4−38.8(m,1P).
HRMS:M+;Meas.m/z=841.0994,Pred.m/z=841.1015,M=C39H45NO3P2SCl2Ru.
【0087】
(実施例22)ジクロロ[トリス(4−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン]{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8S−12))の合成(Eq.28)
【化75】
実施例20と同様にして、[RuCl2(p−cymene)]2(438mg、0.72mmol、1.0当量)、トリス(4−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン(11−5)(737mg、1.58mmol、2.2当量)、脱水THF(5mL)、実施例3/実施例4にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン(1D−2)(500mg、1.58mmol、2.2当量)及び3M1B(10mL)から、表題化合物(8S−12)が橙色粉末として1.09g得られた。単離収率:79.6%。
1H NMR(400MHz,CD2Cl2):図12を参照のこと。
31P NMR(161MHz,CD2Cl2):δ=48.5−45.6(m,2P).
19F NMR(376MHz,CD2Cl2):δ=64.82(s,9F).
HRMS:M+;Meas.m/z=920.0698,Pred.m/z=920.0633,M=C39H36NF9P2SCl2Ru.
【0088】
(実施例23)ジクロロ[トリス(2−フリル)ホスフィン]{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8S−13))の合成(Eq.29)
【化76】
実施例20と同様にして、[RuCl2(p−cymene)]2(438mg、0.72mmol、1.0当量)、トリス(2−フリル)ホスフィン(11−7)(366mg、1.58mmol、2.2当量)、脱水THF(5mL)、実施例3/実施例4にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン(1D−2)(500mg、1.58mmol、2.2当量)及び3M1B(10mL)から、表題化合物(8S−13)が橙色粉末として750mg得られた。単離収率:72.4%。
1H NMR(400MHz,CD2Cl2):図13を参照のこと。
31P NMR(161MHz,CD2Cl2):δ=52.0−49.6(m,1P),10.3(d,J=34.0Hz,1P).
【0089】
(実施例24)ジクロロ{4−エチル−2,6,7−トリオキサ−1−ホスファビシクロ[2,2,2]オクタン}{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8S−14))の合成(Eq.30)
【化77】
(仕込み・反応)50mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、クライゼン蒸留装置、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、[RuCl2(p−cymene)]2(438mg、0.72mmol、1.0当量)、4−エチル−2,6,7−トリオキサ−1−ホスファビシクロ[2,2,2]オクタン(256mg、1.58mmol、2.2当量)及びクロロホルム(CHCl3)(5mL)を順次仕込み、得られた深赤色溶液を室温で5分攪拌した。次いで、実施例3/実施例4にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン(1D−2)(500mg、1.58mmol、2.2当量)及びシクロヘキサノール(CyOH)(10mL)を加え、クライゼン蒸留装置にてCHCl3を常圧で留去した後に、CyOHの還流下で1時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応液を5℃に冷却して得られた赤橙色懸濁液に、MeOH(20mL)を加えた後に吸引濾過し、濾取した結晶をMeOHにて洗浄し、減圧下加熱乾燥することで、表題化合物(8S−14)が黄橙色粉末として273mg得られた。単離収率:29.3%。
1H NMR(400MHz,CD2Cl2):図14を参照のこと。
31P NMR(161MHz,CD2Cl2):δ=135.1−131.8(m,1P),59.7−56.7(m,1P).
HRMS:M+;Meas.m/z=651.0217,Pred.m/z=651.0228,M=C24H35NO3P2SCl2Ru.
【0090】
(実施例25)カルボニルクロロヒドリド{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8S−15))の合成(Eq.31)
【化78】
(仕込み・反応)50mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、実施例1/実施例2にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン(1D−1)(1.0g、3.30mmol、2.2当量)、キシレン(異性体混合物、15mL)及びカルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(RuHCl(CO)(PPh33)(2.86g、3.00mmol、1.0当量)を順次仕込み、得られた褐色懸濁液をキシレン還流下で30分攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応後に得られた橙色懸濁液を5℃に冷却して吸引濾過した後、濾取した結晶をトルエンにて洗浄し、減圧下加熱乾燥することで、表題化合物(8S−15)が黄橙色粉末として1.32g得られた。単離収率:93.8%。
1H NMR(400MHz,CD2Cl2):図15を参照のこと。
31P NMR(161MHz,CD2Cl2):δ=66.3−64.0(m,1P).
【0091】
(実施例26)ヒドリド(テトラヒドロボレート)(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8S−16))の合成(Eq.32)
【化79】
(仕込み・反応)50mL四つ口丸底フラスコに、マグネティックスターラーバー、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、実施例12で得られたジクロロ(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8S−2)(99.4mg、0.132mmol、1.0当量)、トルエン(3mL)、エタノール(EtOH)(3mL)及びテトラヒドロホウ酸ナトリウム(NaBH4)(50.0mg、1.32mmol、10.0当量)を順次加え、得られた橙色懸濁液を65℃で1時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応後に得られた薄黄色懸濁液を室温に冷却し、吸引濾過後に得られた結晶をトルエン及びn−ヘプタンで順次洗浄した後、減圧下乾燥することで、表題化合物(8S−16)が薄黄色粉末として108.0mg得られた。単離収率:98.5%、純度:83.9wt%(1H NMRによる)。なお、主な不純物はn−ヘプタンであった。
1H NMR(400MHz,CD2Cl2):図16を参照のこと。
31P NMR(161MHz,CD2Cl2):δ=68.4−65.0(m,2P).
【0092】
(実施例27)カルボニルヒドリド(テトラヒドロボレート){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8S−17))の合成(Eq.33)
【化80】
(仕込み・反応)50mL四つ口丸底フラスコに、マグネティックスターラーバー、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、実施例25で得られたカルボニルクロロヒドリド{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8S−15)(61.9mg、0.132mmol、1.0当量)、トルエン(3mL)、EtOH(3mL)及びNaBH4(50.0mg、1.32mmol、10.0当量)を順次加え、得られた白色懸濁液を65℃で3時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応後に得られた白色懸濁液を減圧下濃縮し、水及び酢酸エチルを加えて水層を分液した後、有機層を濃縮した。得られた残渣をトルエン/酢酸エチルから再結晶することで、表題化合物(8S−17)が灰色粉末として30.1mg得られた。単離収率:50.9%。
1H NMR(400MHz,CD2Cl2):図17を参照のこと。
31P NMR(161MHz,CD2Cl2):δ=67.6(s,1P).
【0093】
(実施例28)ジクロロ{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)ダイマー(構造組成式(8U−1))の合成(Eq.34)
【化81】
(仕込み・反応)50mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、実施例3/実施例4にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン(1D−2)(1.0g、3.15mmol、2.1当量)、3M1B(10mL)及び[RuCl2(p−cymene)]2(918mg、1.50mmol、1.0当量)を順次仕込み、得られた暗赤色懸濁液を3M1Bの還流下で3時間攪拌した。
(後処理・精製)反応後に得られた橙色懸濁液を室温にまで冷却して吸引濾過した後、濾取した結晶をMeOHにて洗浄し、減圧下加熱乾燥することで、表題化合物(8U−1)が橙色粉末として1.24g得られた。単離収率:84.5%。
1H NMR(300MHz,CD2Cl2):図18を参照のこと。
31P NMR(121MHz,CD2Cl2):δ=73.7(s,2P).
HRMS:[M−Cl]+;Meas.m/z=942.9864,Pred.m/z=942.9884,M−Cl=C36H48N2P2S2Cl3Ru2.
【0094】
(実施例29)ジクロロ{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(フェニルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)ダイマー(構造組成式(8U−2))の合成(Eq.35)
【化82】
実施例28と同様にして、実施例8にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(フェニルチオ)エチル]エチルアミン(1D−5)(1.0g、2.74mmol、2.1当量)、3M1B(10mL)及び[RuCl2(p−cymene)]2(798mg、1.30mmol、1.0当量)から、表題化合物(8U−2)が橙色粉末として1.29g得られた。単離収率:92.3%。
1H NMR(300MHz,CD2Cl2):溶解度が低く測定困難であった。
31P NMR(121MHz,CD2Cl2):溶解度が低く測定困難であった。
HRMS:[M−Cl]+;Meas.m/z=1038.986,Pred.m/z=1038.989,M−Cl=C44H48N2P2S2Cl3Ru2.
【0095】
(実施例30)ジクロロ{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(p−トリルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)ダイマー(構造組成式(8U−3))の合成(Eq.36)
【化83】
実施例28と同様にして、実施例9にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(p−トリルチオ)エチル]エチルアミン(1D−6)(2.0g、5.27mmol、2.1当量)、3M1B(15mL)及び[RuCl2(p−cymene)]2(1.54g、2.51mmol、1.0当量)から、表題化合物(8U−3)が橙色粉末として2.46g得られた。単離収率:88.9%。
1H NMR(300MHz,CD2Cl2):溶解度が低く測定困難であった。
31P NMR(121MHz,CD2Cl2):溶解度が低く測定困難であった。
HRMS:[M−Cl]+;Meas.m/z=1067.021,Pred.m/z=1067.020,M−Cl=C46H52N2P2S2Cl3Ru2.
【0096】
(実施例31)[クロロビス(4−メトキシフェニルイソシアニド){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)]クロライド(構造組成式(8R−1))の合成(Eq.37)
【化84】
(仕込み・反応)50mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、実施例28にて得られたジクロロ{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)ダイマー(8U−1)(160.1mg、0.163mmol、1.0当量)、4−メトキシフェニルイソシアニド(87.1mg、0.650mmol、4.0当量)、CHCl3(20mL)及びMeOH(2mL)を順次仕込み、得られた緑色懸濁液を60℃で4時間攪拌した。
(後処理・精製)反応液を減圧下濃縮して得られた緑色の残渣を、MeOH、トルエン及びn−ヘプタンで順次洗浄し、減圧下加熱乾燥することで、表題化合物(8R−1)が薄黄色粉末として63.2mg得られた。単離収率:25.7%。
1H NMR(300MHz,CD2Cl2):図19を参照のこと。
31P NMR(121MHz,CD2Cl2):δ=34.0(s,1P).
HRMS:[M−Cl]+;Meas.m/z=720.1146,Pred.m/z=720.1154,M−Cl=C34H38N3O2PSClRu.
【0097】
(実施例32)ジクロロ(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8S−2)を触媒とした、安息香酸メチルの水素添加反応によるベンジルアルコールの合成(Eq.38)
【化85】
(仕込み・反応)ステンレス製100mLオートクレーブ装置に、実施例12で得られたジクロロ(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8S−2)(純度:94.2wt%、2.0mg、0.1mol%)を仕込んで内部を窒素置換した後、トルエン(2.0mL)、カリウムtert−ブトキシド(KOtBu)のTHF溶液(濃度:1.0mol/L、250μL、0.25mmol、0.1当量)及び安息香酸メチル(312μL、2.50mmol、1.0当量)を順次仕込んだ後に内部を水素(H2)置換し、更にH2ガスによって1MPaにまで加圧した後に、80℃にて6時間攪拌することで、目的とするベンジルアルコールが得られた。転化率:100%、選択率:100%(GC分析による)。
GC保持時間;安息香酸メチル:16.77分、ベンジルアルコール:22.30分。
【0098】
(比較例1)ジクロロ(トリフェニルホスフィン){N,N−ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン}ルテニウム(II)(14−1)を触媒とした、安息香酸メチルの水素添加反応による、ベンジルアルコールの合成(Eq.39)
【化86】
第1工程:ジクロロ(トリフェニルホスフィン){N,N−ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン}ルテニウム(II)の合成
(反応・仕込み)50mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、RuCl2(PPh33(2.00g、2.09mmol、1.0当量)、脱水トルエン(20mL)及び既知のN,N−ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン(1.03g、2.34mmol、1.1当量)を順次仕込み、得られた暗紫色懸濁液をトルエンの還流下で1時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応後に得られた黄土色懸濁液を5℃に冷却した後に吸引濾過し、濾取した結晶をトルエン及びn−ヘキサンにて順次洗浄し、減圧下加熱乾燥することで、表題化合物(14−1)が黄橙色粉末として2.06g得られた。単離収率:91.9%、純度:98.9wt%(1H NMR分析による)。なお、主な不純物はトルエンであった。
1H NMR(300MHz,CD2Cl2):δ=7.36−7.29(m,18H),7.16−7.00(m,11H),6.84−6.75(m,6H),4.76−4.60(m,1H),3.50−3.06(m,4H),2.82−2.48(M,4H).
31P NMR(121MHz,CD2Cl2):δ=41.4(d,J=29.5Hz,1P),29.6(d,J=28.1Hz,2P).
【0099】
第2工程:ベンジルアルコールの合成
触媒として、第1工程で得られたジクロロ(トリフェニルホスフィン){N,N−ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン}ルテニウム(II)(14−1)(純度98.9wt%、2.2mg、0.1mol%)を用いた以外は、実施例32と同様にして、安息香酸メチルの水素添加反応によるベンジルアルコールの合成を行った。転化率:7.9%、選択率:79.8%(GC分析による)。
【0100】
(比較例2)ジクロロ(トリフェニルホスフィン){N,N−ビス[2−(エチルチオ)エチル]アミン}ルテニウム(II)(14−2)を触媒とした、安息香酸メチルの水素添加反応による、ベンジルアルコールの合成(Eq.40)
【化87】
触媒として、市販のジクロロ(トリフェニルホスフィン){N,N−ビス[2−(エチルチオ)エチル]アミン}ルテニウム(II)(14−2)(1.6mg、0.1mol%)を用いた以外は、実施例32と全く同様にして、安息香酸メチルの水素添加反応によるベンジルアルコールの合成を行った。転化率:100%、選択率:93.4%(GC分析による)。
【0101】
(実施例33)ジクロロ(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8S−2)を触媒とした、乳酸メチルの水素添加反応による1,2−プロパンジオールの合成(Eq.41)
【化88】
(仕込み・反応)ステンレス製100mLオートクレーブ装置に、実施例12で得られたジクロロ(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8S−2)(純度:94.2wt%、2.0mg、0.1mol%)を仕込んで内部を窒素置換し、トルエン(2.0mL)、KOtBuのTHF溶液(濃度:1.0mol/L、250μL、0.25mmol、0.1当量)及び乳酸メチル(238μL、2.50mmol、1.0当量)を順次仕込んだ後に内部をH2置換し、更にH2ガスによって1MPaにまで加圧した後に、80℃にて6時間攪拌することで、目的とする1,2−プロパンジオールが得られた。転化率:100%、選択率:100%(GC分析による)。
GC保持時間;乳酸メチル:9.08分、1,2−プロパンジオール:15.84分。
【0102】
(比較例3)ジクロロ(トリフェニルホスフィン){N,N−ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン}ルテニウム(II)(14−1)を触媒とした、乳酸メチルの水素添加反応による1,2−プロパンジオールの合成(Eq.42)
【化89】
触媒として、比較例1第1工程で得られたジクロロ(トリフェニルホスフィン){N,N−ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン}ルテニウム(II)(14−1)(純度:98.9wt%、2.2mg、0.1mol%)を用いた以外は、実施例33と同様にして、乳酸メチルの水素添加反応による1,2−プロパンジオールの合成を行った。転化率:18.6%、選択率:64.3%(GC分析による)。
【0103】
(比較例4)ジクロロ(トリフェニルホスフィン){N,N−ビス[2−(エチルチオ)エチル]アミン}ルテニウム(II)(14−2)を触媒とした、乳酸メチルの水素添加反応による1,2−プロパンジオールの合成(Eq.43)
【化90】
触媒として、市販のジクロロ(トリフェニルホスフィン){N,N−ビス[2−(エチルチオ)エチル]アミン}ルテニウム(II)(14−2)(1.6mg、0.1mol%)を用いた以外は、実施例33と全く同様にして、乳酸メチルの水素添加反応による1,2−プロパンジオールの合成を行った。転化率:17.9%、選択率:59.4%(GC分析による)。
【0104】
実施例32及び実施例33、並びに比較例1〜4の結果を以下の表1にまとめる。
【表1】
この結果からわかるように、本発明の化合物を三座配位子として有するルテニウム錯体は、従来のN,N−ビス(2−ホスフィノエチル)アミンやN,N−ビス(2−チオエチル)アミンを三座配位子として有するルテニウム錯体と比較して、エステル類の水素添加反応における触媒活性、反応選択性及び基質一般性が明らかに優れており、安息香酸メチル及び乳酸メチルのいずれからも、完全な転化率及び選択率にて生成物を与えることが明らかとなった。
本発明の錯体の実施例11〜28及び実施例31における1H NMRチャートは、図1〜19を参照のこと。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の化合物は、一般式(2A)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物との反応、又は一般式(3A)で表される化合物と一般式(5)で表される化合物との反応によって容易に製造可能である。更に、本発明の化合物は非対称三座配位子として振舞い、種々の金属種に配位させることで本発明の金属錯体が容易に製造可能である。この金属錯体は触媒的有機合成反応において優れた触媒活性を示し、例えば本発明の化合物を配位子として有するルテニウム錯体は、従来の対称三座配位子であるN,N−ビス(2−ホスフィノエチル)アミンやN,N−ビス(2−チオエチル)アミンのルテニウム錯体と比較して、エステル類の水素添加反応においてより優れた触媒活性を示し、この触媒反応によってアルコール類を一層効率的に製造することが可能となった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19