【実施例】
【0059】
以下に、本発明の化合物及び本発明の金属錯体並びに本発明の金属錯体を用いた触媒反応について、実施例及び比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。実施例及び比較例中において、物性の測定に用いた装置及び条件は次の通りである。
1)プロトン核磁気共鳴分光法(
1H NMR):Varian Marcury plus 300型装置(共鳴周波数:300MHz、バリアン社製)又は、400MR DD2型装置(共鳴周波数:400MHz、アジレント社製)
内部標準物質:テトラメチルシラン(0ppm(singletピーク))又は残留軽溶媒(メタノール:3.31ppm(quintetピーク)、ジクロロメタン:5.32ppm(tripletピーク)、クロロホルム:7.26ppm(singletピーク))
2)炭素13核磁気共鳴分光法(
13C NMR):Varian Marcury plus 300型装置(共鳴周波数:75MHz、バリアン社製)又は、400MR DD2型装置(共鳴周波数:100MHz、アジレント社製)
内部標準物質:クロロホルム(77ppm(tripletピーク))
3)リン31核磁気共鳴分光法(
31P NMR):Varian Marcury plus 300型装置(共鳴周波数:121MHz、バリアン社製)又は、400MR DD2型装置(共鳴周波数:161MHz、アジレント社製)
外部標準物質:重水中リン酸(0ppm(singletピーク))
4)フッ素19核磁気共鳴分光法(
19F NMR):400MR DD2型装置(共鳴周波数:376MHz、アジレント社製)
外部標準物質:α,α,α−トリフルオロ−p−キシレン(−64ppm(singletピーク))
5)ガスクロマトグラフィー(GC):GC−4000型装置(ジーエルサイエンス社製)
カラム:InertCap PureWax(ジーエルサイエンス社製)、試料導入部:200℃、試料検出部:250℃、初期温度:50℃、昇温速度1:5℃/分、到達温度1:150℃、到達温度1保持時間:0分、昇温温度2:10℃/分、到達温度2:250℃、到達温度2保持時間:5分。
6)精密質量分析(HRMS):LCMS−IT−TOF型装置(島津製作所社製)
実施例1〜10は本発明の化合物の製造、実施例11〜31は本発明の金属錯体の製造、実施例32及び実施例33並びに比較例1〜4は本発明の金属錯体を触媒として用いた有機合成反応に関する。なお、特に但し書きの無い限り、基質及び溶媒等の仕込みは窒素気流下、反応は窒素雰囲気下、反応液の後処理及び粗生成物の精製は空気中で実施した。
【0060】
(実施例1)2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン(構造式(1
D−1))の合成、経路1(Eq.7)
【化44】
第1工程:3−(2−クロロエチル)−2−オキサゾリジノン(構造式(6−1))の合成
【化45】
(仕込み・反応)本工程は空気中で行った。2L四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー及び温度計を取り付け、N,N−ビス(クロロエチル)アミン塩酸塩(200.0g、1.12mol、1.0当量)、メタノール(MeOH)(600mL)及びトリエチルアミン(Et
3N)(328.0mL、2.35mol、2.1当量)を順次仕込んだ。得られた溶液に、ドライアイスから発生させた二酸化炭素(CO
2)ガスを室温で1時間通気した。
(後処理・単離・精製)反応液を減圧下濃縮後にトルエン(1.0L)を加え、得られた白色懸濁液を吸引濾過した後に、残渣をトルエンで洗浄した。濾液をまとめて減圧下濃縮することで、表題化合物(6−1)が薄黄色液体として165.7g得られた。単離収率:98.9%。なお本化合物は蒸留精製にて脱色可能であったが(沸点:135℃(3mmHg))、NMR分析の結果ほぼ純粋だったため、これ以上の精製を行うことなく以降の工程に使用した。
1H NMR(300MHz,重クロロホルム(CDCl
3)):δ=4.38(ddd,J=0.9,6.3,7.8Hz,2H),3.79−3.67(m,4H),3.66−3.59(m,2H).
13C NMR(75MHz,CDCl
3):δ=158.38,62.01,46.19,45.70,42.03.
【0061】
第2工程:3−[2−(メチルチオ)エチル]−2−オキサゾリジノン(構造式(2
C−1))の合成
【化46】
(仕込み・反応)本工程は空気中で行った。1L四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、冷却管、滴下漏斗及び温度計を取り付け、第1工程で得られた3−(2−クロロエチル)−2−オキサゾリジノン(6−1)(48.7g、325.6mmol、1.0当量)及びMeOH(200mL)を順次仕込み、得られた溶液を55℃に加熱した。次いで、メタンチオール(5−1)のナトリウム塩(NaSMe)の21.3重量%水溶液(128.6g、390.7mmol、1.2当量)を滴下漏斗に仕込み、15分かけて溶液に滴下した後に、反応液を60℃で1時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)減圧下、反応液からMeOHを190mL回収した後に、酢酸エチル(500mL)を加えて有機層を分液した。水層を酢酸エチルで1回抽出した後、有機層をまとめて減圧下濃縮した。得られた残渣を蒸留精製(沸点:137℃(0.4mmHg))にて精製することで、表題化合物(2
C−1)が無色液体として43.9g得られた。単離収率:83.6%。
1H NMR(400MHz,CDCl
3):δ=4.38−4.32(m,2H),3.67−3.62(m,2H),3.49(t,J=6.8Hz,2H),2.70(t,J=6.8Hz,2H),2.15(s,3H).
13C NMR(100MHz,CDCl
3):δ=158.38,61.77,44.80,42.87,31.77,15.18.
【0062】
第3工程:2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン(構造式(1
D−1))の合成
【化47】
(仕込み・反応)200mL四つ口丸底フラスコに、マグネティックスターラーバー、滴下漏斗、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、ジフェニルホスフィン(4−7)(純度:98.5%、10.0g、52.9mmol、1.1当量)及び脱水テトラヒドロフラン(THF)(50mL)を順次仕込み、得られた溶液を氷水浴にて5℃に冷却した。n−ブチルリチウム(n−BuLi)のn−ヘキサン溶液(濃度:1.60mol/L、33.1mL、52.9mmol、1.1当量)を滴下漏斗に仕込み、内温が10℃以下を保つ速度で20分かけて溶液に滴下した後、氷水浴を取り去って室温で20分攪拌することで、リチウムジフェニルホスフィド(Ph
2PLi)のTHF/n−ヘキサン溶液(52.9mmol、1.1当量)を赤橙色液体として調製した。次いで、第2工程で得られた3−[2−(メチルチオ)エチル]−2−オキサゾリジノン(2
C−1)(7.8g、48.1mmol、1.0当量)及び脱水THF(10mL)を滴下漏斗に順次仕込み、内温が30℃以下を保つ速度で30分かけてPh
2PLi溶液に滴下した。
(後処理・単離・精製)反応液を減圧下濃縮し、水(100mL)及び酢酸エチル(200mL)を加え、攪拌した後に静置して水層を分液した。有機層を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン=2/1/0.03〜1/2/0.03)にて精製することで、表題化合物(1
D−1)が薄黄色粘性液体として12.5g得られた。単離収率:77.9%。
1H NMR(400MHz,CDCl
3):δ=7.46−7.39(m,4H),7.36−7.30(m,6H),2.82−2.72(m,4H),2.61(t,J=6.4Hz,2H),2.31−2.25(m,2H),2.07(s,3H),1.53
*(br s,1H).(*但し水由来のピークを含む)
31P NMR(161MHz,CDCl
3):δ=−20.7.
【0063】
(実施例2)2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン(構造式(1
D−1))の合成、経路2(Eq.8)
【化48】
第1工程:3−[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]−2−オキサゾリジノン(構造式(3
C−1))の合成
【化49】
(仕込み・反応)500mL四つ口丸底フラスコに、マグネティックスターラーバー、滴下漏斗、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、実施例1第1工程で得られた3−(2−クロロエチル)−2−オキサゾリジノン(6−1)(16.1g、107.4mmol、1.0当量)及び脱水THF(80mL)を仕込み、得られた溶液をドライアイス/アセトン浴を用いて−30℃に冷却した。次いで、実施例1第3工程と同様にして調製した、Ph
2PLiのTHF/n−ヘキサン溶液(107.4mmol、1.0当量)を滴下漏斗に仕込み、内温が−20℃以下を保つ速度で2時間半かけて溶液に滴下した後、得られた反応液を室温まで昇温させた。
(後処理・単離・精製)反応液を減圧下濃縮後に得られた残渣にトルエン(300mL)及び水(100mL)を加え、攪拌した後に静置して水層を分液した。有機層を水(50mL)で3回洗浄した後に減圧下濃縮し、得られた残渣を2−メチル−2−ブタノール(
tAmOH)から再結晶することで、表題化合物(3
C−1)が白色粉末として18.7g得られた。単離収率:58.2%。
1H NMR(300MHz,CDCl
3):δ=7.49−7.31(m,10H),4.21−4.13(m,2H),3.54−3.37(m,4H),2.37−2.31(m,2H).
31P NMR(121MHz,CDCl
3):δ=−21.3.
【0064】
第2工程:2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン(1
D−1)の合成
(仕込み・反応)100mL四つ口丸底フラスコに、マグネティックスターラーバー、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、第1工程で得られた3−[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]−2−オキサゾリジノン(3
C−1)(6.0g、20.0mmol)、
tAmOH(40mL)及びNaSMe(純度:95.0%、1.77g、24.0mmol、1.2当量)を順次仕込み、得られた懸濁液を還流下1時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応液を減圧下濃縮し、得られた残渣を直接シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン=2/1/0.03〜1/2/0.03)にて濾過・精製することで、表題化合物(1
D−1)が薄黄色粘性液体として4.9g得られた。単離収率:80.8%。本化合物のNMR分析結果は、実施例1第3工程で得られたものと完全に一致した。
【0065】
(実施例3)2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン(構造式(1
D−2))の合成、経路1(Eq.9)
【化50】
第1工程:3−[2−(エチルチオ)エチル]−2−オキサゾリジノン(構造式(2
C−2))の合成
【化51】
(仕込み・反応)本工程は空気中で行った。200mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、冷却管及び温度計を取り付け、実施例1第1工程で得られた3−(2−クロロエチル)−2−オキサゾリジノン(6−1)(16.3g、109.1mmol、1.0当量)、MeOH(55mL)及びエタンチオール(5−2)のナトリウム塩(NaSEt)(純度:96.4%、10.0g、114.6mmol、1.05当量)を順次仕込み、得られた懸濁液を還流下で1時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応液を減圧下濃縮し、得られた残渣を直接シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/酢酸エチル=1/1〜1/4)にて濾過・精製することで、表題化合物(2
C−2)が薄黄色液体として17.9g得られた。単離収率:93.6%。
1H NMR(300MHz,CDCl
3):δ=4.38−4.30(m,2H),3.69−3.61(m,2H),3.47(t,J=6.9Hz,2H),2.73(t,J=6.9Hz,2H),2.59(q,J=7.2Hz,2H),1.27(t,J=7.2Hz,3H).
【0066】
第2工程:2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン(構造式(1
D−2))の合成
【化52】
(仕込み・反応)実施例1第3工程と同様に、200mL四つ口丸底フラスコ、マグネティックスターラーバー、滴下漏斗、温度計及び三方コックを用いて、Ph
2PLiのTHF/n−ヘキサン溶液(52.9mmol、1.1当量)を調製した。次いで、第1工程で得られた3−[2−(エチルチオ)エチル]−2−オキサゾリジノン(2
C−2)(8.4g、48.1mmol、1.0当量)及び脱水THF(10mL)を滴下漏斗に順次仕込み、内温が30℃以下を保つ速度で30分かけてPh
2PLi溶液に滴下した。
(後処理・単離・精製)反応液を減圧下濃縮し、水(100mL)及び酢酸エチル(200mL)を加え、攪拌した後に静置して分液した。有機層を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン=2/1/0.03〜1/2/0.03)にて精製することで、表題化合物(1
D−2)が薄黄色粘性液体として13.8g得られた。単離収率:90.4%。
1H NMR(300MHz,CDCl
3):δ=7.47−7.29(m,10H),2.82−2.71(m,4H),2.63(t,J=6.3Hz,2H),2.51(q,J=7.5Hz,2H),2.28(dd,J=7.5,8.1Hz,2H),1.64
*(br s,1H),1.24(t,J=7.5Hz,3H).(*但し水由来のピークを含む)
31P NMR(121MHz,CDCl
3):δ=−20.6.
【0067】
(実施例4)2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン(構造式(1
D−2))の合成、経路2(Eq.10)
【化53】
(仕込み・反応)100mL四つ口丸底フラスコに、マグネティックスターラーバー、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、実施例2第1工程で得られた3−[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]−2−オキサゾリジノン(3
C−1)(5.0g、16.7mmol、1.0当量)、
tAmOH(33mL)及びNaSEt(純度:96.4%、1.75g、20.0mmol、1.2当量)を順次仕込み、得られた懸濁液を還流下で1時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応液を室温にまで冷却し、水(20mL)を加えて攪拌した後に静置して水層を分液した。有機層を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン=2/1/0.03〜1/2/0.03)にて精製することで、表題化合物(1
D−2)が薄黄色粘性液体として4.4g得られた。単離収率:83.0%。本化合物のNMR分析結果は、実施例3第2工程にて得られたものと完全に一致した。
実施例1〜4からわかるように、本発明の化合物は、一般式(2)で表される化合物及び一般式(3)で表される化合物のいずれからも容易に製造可能である。
【0068】
(実施例5)2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアンモニウムクロライド(構造式(1
D−2・塩酸塩))の合成(Eq.11)
【化54】
(仕込み・反応)本工程は空気中で行った。100mL丸底フラスコにマグネティックスターラーバーを取り付け、実施例3/実施例4で得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン(1
D−2)(3.17g、10.0mmol、1.0当量)及びトルエン(40mL)を順次仕込んだ。得られた溶液に塩酸(HCl)の4規定水溶液(5.0mL、20.0mmol、2.0当量)をピペットにて滴下し、得られた白色懸濁液を室温で10分攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応後に得られた懸濁液を吸引濾過した後、濾取した結晶をトルエンで洗浄し、減圧下加熱乾燥することで、表題化合物(1
D−2・塩酸塩)が白色粉末として3.40g得られた。単離収率:96.1%。
1H NMR(400MHz,重メタノール(CD
3OD)):δ=7.50−7.43(m,4H),7.42−7.36(m,6H),4.85(s,2H),3.20(t,J=6.8Hz,2H),3.14−3.06(m,2H),2.81(t,J=7.2Hz,2H),2.58(d,J=7.2Hz,2H),2.51−2.45(m,2H),1.25(t,J=7.2Hz,3H).
31P NMR(161MHz,CD
3OD):δ=−20.9.
実施例5からわかるように、本発明の化合物はブレンステッド酸で処理することで、取り扱いが容易な結晶性の塩に誘導することも可能である。
【0069】
(実施例6)2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(tert−ブチルチオ)エチル]エチルアミン(構造式(1
D−3))の合成(Eq.12)
【化55】
第1工程:3−[2−(tert−ブチルチオ)エチル]−2−オキサゾリジノン(構造式(2
C−3))の合成
【化56】
(仕込み・反応)本反応は空気中で行った。200mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、冷却管及び温度計を取り付け、実施例1第1工程で得られた3−(2−クロロエチル)−2−オキサゾリジノン(6−1)(12.5g、83.8mmol、1.0当量)、MeOH(80mL)及び2−メチル−2−プロパンチオール(5−8)のナトリウム塩(NaS
tBu)(純度:98.7%、10.0g、88.0mmol、1.05当量)を順次仕込み、得られた懸濁液を還流下で3時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応液を減圧下濃縮し、得られた残渣を直接シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/酢酸エチル=2/1〜1/2)にて濾過・精製することで、表題化合物(2
C−3)が無色液体として15.6g得られた。単離収率:91.6%。
1H NMR(400MHz,CDCl
3):δ=4.36−4.28(m,2H),3.68−3.62(m,2H),3.44(t,J=6.8Hz,2H),2.72(t,J=6.8Hz,2H),1.31(s,9H).
13C NMR(100MHz,CDCl
3):δ=158.26,61.76,45.31,44.58,42.50,30.91,26.58.
【0070】
第2工程:2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(tert−ブチルチオ)エチル]エチルアミン(構造式(1
D−3))の合成
【化57】
(仕込み・反応)実施例1第3工程と同様にして、200mL四つ口丸底フラスコ、マグネティックスターラーバー、滴下漏斗、温度計及び三方コックを用い、Ph
2PLiのTHF/n−ヘキサン溶液(52.9mmol、1.1当量)を調製した。次いで、第1工程で得られた3−[2−(tert−ブチルチオ)エチル]−2−オキサゾリジノン(2
C−3)(9.8g、48.1mmol、1.0当量)及び脱水THF(10mL)を滴下漏斗に順次仕込み、内温が30℃以下を保つ速度で30分かけてPh
2PLi溶液に滴下した。
(後処理・単離・精製)反応液を減圧下濃縮し、水(100mL)及び酢酸エチル(200mL)を加え、攪拌した後に静置して分液した。有機層を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン=4/1/0.05〜1/1/0.02)にて精製することで、表題化合物(1
D−3)が薄黄色粘性液体として13.6g得られた。単離収率:81.8%。
1H NMR(400MHz,CDCl
3):δ=7.45−7.39(m,4H),7.36−7.30(m,6H),2.82−2.71(m,4H),2.65(t,J=6.4Hz,2H),2.30−2.24(m,2H),1.63
*(br s,1H),1.31(s,9H).(但し水由来のピークを含む)
31P NMR(161MHz,CDCl
3):δ=−20.6.
【0071】
(実施例7)2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(1−アダマンチルチオ)エチル]エチルアミン(構造式(1
D−4))の合成(Eq.13)
【化58】
(仕込み・反応)100mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、実施例2第1工程で得られた3−[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]−2−オキサゾリジノン(3
C−1)(4.2g、14.0mmol、1.0当量)、
tAmOH(28mL)、1−アダマンタンチオール(5−18)(2.5g、14.9mmol、1.05当量)及びナトリウム tert−ブトキシド(NaO
tBu)(1.5g、15.4mmol、1.1当量)を順次加え、得られた懸濁液を還流下1時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応液を室温にまで冷却した後、水(25mL)及び酢酸エチル(50mL)を順次加え、攪拌した後に静置して水層を分液した。有機層を減圧下濃縮した後に、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン=4/1/0.05〜1/1/0.02)にて精製することで、表題化合物(1
D−4)が黄色粘性液体として4.0g得られた。単離収率:67.5%。
1H NMR(400MHz,CDCl
3):δ=7.47−7.38(m,4H),7.38−7.28(m,6H),2.79−2.71(m,4H),2.63(t,J=6.0Hz,2H),2.29−2.24(m,2H),2.03(br s,3H),1.83(d,J=2.8Hz,6H),1.73−1.62(m,6H),1.52
*(br s,1H).(*但し水由来ピークを含む)
31P NMR(161MHz,CDCl
3):δ=−20.7.
【0072】
(実施例8)2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(フェニルチオ)エチル]エチルアミン(構造式(1
D−5))の合成(Eq.14)
【化59】
(仕込み・反応)100mL四つ口丸底フラスコに、マグネティックスターラーバー、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、実施例2第1工程で得られた3−[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]−2−オキサゾリジノン(3
C−1)(6.0g、20.0mmol、1.0当量)、
tAmOH(40mL)及びベンゼンチオール(5−19)のナトリウム塩(NaSPh)(純度:96.3%、3.0g、22.0mmol、1.2当量)を順次仕込み、得られた懸濁液を還流下で30分攪拌した。
(後処理・精製)反応液を室温にまで冷却し、水(20mL)を加えて攪拌した後に静置して分液した。有機層を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン=1/1/0.02)にて精製することで、表題化合物(1
D−5)が黄色粘性液体として6.5g得られた。単離収率:88.9%。
1H NMR(300MHz,CDCl
3):δ=7.51−7.14(m,15H),3.02(t,J=6.6Hz,2H),2.80(t,J=6.3Hz,2H),2.84−2.69(m,4H),2.25(dd,J=7.2,7.8Hz,2H),1.64
*(br s,1H).(*但し水由来のピークを含む)
31P NMR(121MHz,CDCl
3):δ=−20.6.
【0073】
(実施例9)2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(p−トリルチオ)エチル]エチルアミン(構造式(1
D−6))の合成(Eq.15)
【化60】
(仕込み・反応)100mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、実施例2第1工程で得られた3−[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]−2−オキサゾリジノン(3
C−1)(6.0g、20.0mmol、1.0当量)、
tAmOH(40mL)及びp−トルエンチオール(5−22)のナトリウム塩(ナトリウム p−トルエンチオラート)(純度:98.3%、3.3g、22.0mmol、1.2当量)を順次仕込み、得られた懸濁液を還流下30分攪拌した。
(後処理・精製)反応液を室温にまで冷却し、水(20mL)を加えて攪拌した後に静置して分液した。有機層を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン=1/1/0.02)にて精製することで、表題化合物(1
D−6)が黄色粘性液体として6.5g得られた。単離収率:85.6%。
1H NMR(300MHz,CDCl
3):δ=7.46−7.22(m,12H),7.08(d,J=8.4Hz,2H),2.97(t,J=6.6Hz,2H),2.77(t,J=6.6Hz,2H),2.71(t,J=8.1Hz,2H),2.31(s,3H),2.24(dd,J=7.2,8.1Hz,2H),1.64
*(br s,1H).(*但し水由来ピークを含む)
31P NMR(121MHz,CDCl
3):δ=−20.9.
【0074】
(実施例10)2−ジシクロヘキシルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン−3水素化ホウ素錯体(構造式(1
D−7))の合成(Eq.16)
【化61】
第1工程:ジシクロヘキシルホスフィン−3水素化ホウ素錯体(構造式(4−21))の合成
【化62】
(仕込み・反応)200mL四つ口丸底フラスコに、マグネティックスターラーバー、滴下漏斗、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、ジシクロヘキシルホスフィン(4−6)(20.0mL、91.2mmol、1.0当量)及びジエチルエーテル(Et
2O)(100mL)を順次仕込み、得られた溶液を氷水浴にて5℃に冷却した。次いで、三水素化ホウ素−ジメチルスルフィド錯体(BH
3−SMe
2)(濃度:10.0mol/L、13.7mL、137.0mmol、1.5当量)を滴下漏斗に仕込み、内温が10℃以下を保つ速度で10分かけて溶液に滴下した後、反応液を常温まで昇温させた。
(後処理・単離・精製)反応液を減圧下濃縮した後、得られた残渣をクロロホルムで溶解させ、水を投入して常温で攪拌後に静置して水層を分液した。有機層を減圧下濃縮し、得られた固体を粉砕した後に減圧下乾燥することで、表題化合物(4−21)を白色粉末として19.3g得た。単離収率:100%。本化合物はこれ以上の精製を行うことなく以降の工程に使用した。
31P NMR(161MHz,重塩化メチレン(CD
2Cl
2)):δ=17.3−16.4(m).
【0075】
第2工程:2−ジシクロヘキシルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン−3水素化ホウ素錯体(構造式(1
D−7))の合成
【化63】
(仕込み・反応)100mL四つ口丸底フラスコに、マグネティックスターラーバー、滴下漏斗、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、第1工程で得られたジシクロヘキシルホスフィン−3水素化ホウ素錯体(4−21)(4.7g、22.0mmol、1.1当量)及び脱水THF(22mL)を仕込み、得られた溶液を氷水浴にて5℃に冷却した。滴下漏斗にn−BuLiのn−ヘキサン溶液(濃度:1.60mol/L、13.1mmol、1.05当量)を仕込み、内温が10℃以下を保つ速度で15分かけて溶液に滴下した後、反応液を常温にまで昇温させて30分攪拌することで、リチウムジシクロヘキシルホスフィド−3水素化ホウ素錯体(Cy
2PLi−BH
3)のTHF/n−ヘキサン懸濁液を調製した。次いで滴下漏斗に、実施例1第2工程で得られた3−[2−(メチルチオ)エチル]−2−オキサゾリジノン(2
C−1)(3.2g、20.0mmol、1.0当量)及び脱水THF(3mL)を滴下漏斗に順次仕込み、内温が10℃以下を保つ速度で10分かけてCy
2PLi−BH
3懸濁液に滴下した後、反応液を室温にまで昇温させて1時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応液を減圧下濃縮した後、得られた残渣に酢酸エチル(50mL)及び水(25mL)を加えて攪拌した後に静置し、水層を分液した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液(25mL)及び水(25mL)で順次洗浄した後に濃縮し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル〜酢酸エチル/MeOH=50/1)で精製することで、表題化合物(1
D−7)が薄黄色粘性液体として5.4g得られた。単離収率:82.0%。
1H NMR(400MHz,CD
2Cl
2):δ=2.88−2.76(m,4H),2.61(t,J=6.4Hz,2H),2.08(s,3H),1.92−1.17
*(m,23H),0.90−(−0.30)(br q,3H).(*但し水由来ピークを含む)
31P NMR(161MHz,CD
2Cl
2):δ=22.4(d,J=73.9Hz,1P).
【0076】
(実施例11)ジクロロ(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8
S−1))の合成(Eq.17)
【化64】
(仕込み・反応)50mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(RuCl
2(PPh
3)
3)(2.88g、3.00mmol、1.0当量)、脱水トルエン(30mL)及び実施例1/実施例2にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン(1
D−1)(1.0g、3.30mmol、1.1当量)を順次仕込み、得られた暗紫色懸濁液を還流下で1時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応後に得られた橙色懸濁液を5℃に冷却して吸引濾過した後、濾取した結晶をトルエン及びn−ヘキサンにて順次洗浄し、減圧下加熱乾燥することで、表題化合物(8
S−1)が橙色粉末として2.17g得られた。単離収率:97.9%、純度:99.8wt%(
1H NMR分析による)。なお、主な不純物はトルエンであった。
1H NMR(400MHz,CD
2Cl
2):
図1を参照のこと。
31P NMR(161MHz,CD
2Cl
2):δ=46.7−45.5(m,1P),44.8−43.8(m,1P).
HRMS:表題化合物の分子量イオン(以下、M+と略す)として検出;質量電荷比実測値(以下、Meas.m/zと略す)=737.0526,質量電荷比予測値(以下、Pred.m/zと略す)=737.0546,表題化合物の分子量イオン組成式(以下、Mと略す)=C35H37NP2SCl2Ru.
【0077】
(実施例12)ジクロロ(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8
S−2))の合成(Eq.18)
【化65】
実施例11と同様にして、RuCl
2(PPh
3)
3(2.62g、2.73mmol、1.0当量)、脱水トルエン(27mL)及び実施例3/実施例4にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン(1
D−2)(953mg、3.00mmol、1.1当量)から、表題化合物(8
S−2)が明赤褐色粉末として2.06g得られた。単離収率:94.6%、純度:94.2wt%(
1H NMR分析による)。なお、主な不純物はトルエンであった。
1H NMR(300MHz,CD
2Cl
2):
図2を参照のこと。
31P NMR(121MHz,CD
2Cl
2):δ=47.0−43.0(m,2P).
HRMS:Meas.m/z=751.0694,Pred.m/z=751.0697,M=C36H39NP2SCl2Ru.
【0078】
(実施例13)ジクロロ(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(tert−ブチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8
S−3))の合成(Eq.19)
【化66】
実施例11と同様にして、RuCl
2(PPh
3)
3(2.52g、2.63mmol、1.0当量)、脱水トルエン(30mL)及び実施例6にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(tert−ブチルチオ)エチル]エチルアミン(1
D−3)(1.0g、2.89mmol、1.1当量)から、表題化合物(8
S−3)が薄赤色粉末として1.54g得られた。単離収率:70.3%、純度:93.6wt%(
1H NMR分析による)。なお、主な不純物はトルエンであった。
1H NMR(400MHz,CD
2Cl
2):
図3を参照のこと。
31P NMR(161MHz,CD
2Cl
2):δ=44.1(d,J=28.0Hz,1P),40.8(d,J=31.1Hz,1P).
HRMS:Meas.m/z=779.1002,Pred.m/z=779.1016,M=C38H43NP2SCl2Ru.
【0079】
(実施例14)ジクロロ(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(フェニルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8
S−4))の合成(Eq.20)
【化67】
実施例11と同様にして、RuCl
2(PPh
3)
3(1.0g、1.04mmol、1.0当量)、脱水トルエン(20mL)及び実施例8にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(フェニルチオ)エチル]エチルアミン(1
D−5)(332mg、1.14mmol、1.1当量)から、表題化合物(8
S−4)が明赤褐色粉末として780mg得られた。単離収率:99.3%、純度:95.8wt%(
1H NMR分析による)。なお、主な不純物はトルエンであった。
1H NMR(300MHz,CD
2Cl
2):
図4を参照のこと。
31P NMR(121MHz,CD
2Cl
2):溶解度が低く測定困難であった。
HRMS:M
+,Meas.m/z=799.0725,Pred.m/z=799.0698,M=C40H39NP2SCl2Ru.
【0080】
(実施例15)ジクロロ(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(p−トリルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8
S−5))の合成(Eq.21)
【化68】
実施例11と同様にして、RuCl
2(PPh
3)
3(2.30g、2.40mmol、1.0当量)、脱水トルエン(23mL)及び実施例9にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(p−トリルチオ)エチル]エチルアミン(1
D−6)(1.00g、2.64mmol、1.1当量)から、表題化合物(8
S−5)が明赤褐色粉末として1.88g得られた。単離収率:96.3%。
1H NMR(300MHz,CD
2Cl
2):
図5を参照のこと。
31P NMR(121MHz,CD
2Cl
2):δ=45.4(br s,1P),44.0(d,J=31.0Hz,1P).
HRMS:M
+;Meas.m/z=813.0882,Pred.m/z=813.0855,M=C41H41NP2SCl2Ru.
【0081】
(実施例16)ジクロロ(トリメチルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8
S−6))の合成(Eq.22)
【化69】
(仕込み・反応)50mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、クライゼン蒸留装置、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、ジクロロ(p−シメン)ルテニウム(II)ダイマー([RuCl
2(p−cymene)]
2)(791mg、1.29mmol、1.0当量)及び3−メトキシ−1−ブタノール(3M1B)(9mL)を順次仕込み、得られた暗赤色懸濁液を減圧下脱気した。次いで、トリメチルホスフィン(11−1)のTHF溶液(濃度:1.03mol/L、2.80mL、2.84mmol、2.2当量)を仕込み、室温で5分攪拌した。得られた橙色懸濁液に、実施例3/実施例4にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン(1
D−2)(900mg、2.84mmol、2.2当量)を加え、クライゼン蒸留装置にてTHFを常圧で留去した後に、3M1Bの還流下で1時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応液を5℃に冷却して得られた黄橙色懸濁液を吸引濾過した後、濾取した結晶をMeOHにて洗浄し、減圧下加熱乾燥することで、表題化合物(8
S−6)が黄橙色粉末として920mg得られた。単離収率:63.1%。
1H NMR(300MHz,CD
2Cl
2):
図6を参照のこと。
31P NMR(121MHz,CD
2Cl
2):δ=56.1(br s,1P),9.7(br s,1P).
HRMS:M
+;Meas.m/z=565.0221,Pred.m/z=565.0223,M=C21H33NP2SCl2Ru.
【0082】
(実施例17)ジクロロ(トリメチルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(フェニルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8
S−7))の合成(Eq.23)
【化70】
実施例16と同様にして、[RuCl
2(p−cymene)]
2(762mg、1.25mmol、1.0当量)、3M1B(10mL)、トリメチルホスフィン(11−1)のTHF溶液(濃度:1.03mol/L、2.70mL、2.74mmol、2.2当量)及び実施例8にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(フェニルチオ)エチル]エチルアミン(1
D−5)(1.00g、2.74mmol、2.2当量)から、表題化合物(8
S−7)が橙色粉末として990mg得られた。単離収率:64.5%。
1H NMR(300MHz,CD
2Cl
2):
図7を参照のこと。
31P NMR(121MHz,CD
2Cl
2):δ=57.5(d,J=32.4Hz,1P),8.6(d,J=34.0Hz,1P).
HRMS:M
+;Meas.m/z=613.0184,Pred.m/z=613.0224,M=C25H33NP2SCl2Ru.
【0083】
(実施例18)ジクロロ(トリエチルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8
S−8))の合成(Eq.24)
【化71】
実施例16と同様にして、[RuCl
2(p−cymene)]
2(877mg、1.43mmol、1.0当量)、3M1B(15mL)トリエチルホスフィン(11−2)のTHF溶液(濃度:1.03mol/L、3.06mL、3.15mmol、2.2当量)及び実施例3/実施例4にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン(1
D−2)(1.00g、3.15mmol、2.2当量)から、表題化合物(8
S−6)が黄褐色粉末として1.13g得られた。単離収率:64.4%、純度:99.1wt%(
1H NMRによる)。なお、主な不純物は3M1Bであった。
1H NMR(400MHz,CD
2Cl
2):
図8を参照のこと。
31P NMR(161MHz,CD
2Cl
2): δ=52.7(br s,1P),29.8(br s,1P).
HRMS:表題化合物から1個の塩化物イオンが解離した分子量イオン(以下、[M−Cl]
+と略す)として検出;Meas.m/z=572.1022,Pred.m/z=572.1008,表題化合物から1個の塩化物イオンが解離した分子量イオンの組成式(以下、M−Clと略す)=C24H39NP2SClRu.
【0084】
(実施例19)ジクロロ(トリシクロヘキシルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8
S−9))の合成(Eq.25)
【化72】
THF留去を行わないこと以外は実施例16と同様にして、[RuCl
2(p−cymene)]
2(877mg、1.43mmol、1.0当量)、3M1B(10mL)、トリシクロヘキシルホスフィン(11−3)のトルエン溶液(濃度:1.04mol/L、3.03mL、3.15mmol、2.2当量)及び実施例3/実施例4にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン(1
D−2)(1.00g、3.15mmol、2.2当量)を、トルエン/3M1B還流下で反応させることにより、表題化合物(8
S−9)が明褐色粉末として1.25g得られた。単離収率:50.0%、純度:88.1wt%(
1H NMRによる)。なお、主な不純物は3M1Bであった。
1H NMR(400MHz,CD
2Cl
2):
図9を参照のこと。
31P NMR(161MHz,CD
2Cl
2):δ=44.0−32.0(m,2P).
HRMS:[M−Cl]
+;Meas.m/z=734.244,Pred.m/z=734.242,M−Cl=C36H57NP2SClRu.
【0085】
(実施例20)ジクロロ[トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン]{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8
S−10))の合成(Eq.26)
【化73】
(仕込み・反応)50mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、クライゼン蒸留装置、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、[RuCl
2(p−cymene)]
2(459mg、0.75mmol、1.0当量)、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン(11−6)(581mg、1.65mmol、2.2当量)及び脱水THF(5mL)を順次仕込み、得られた暗赤色懸濁液を室温で5分攪拌した。次いで、実施例1/実施例2にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン(1
D−1)(500mg、1.65mmol、2.2当量)及び3M1B(10mL)を加え、クライゼン蒸留装置にてTHFを常圧で留去した後に、3M1Bの還流下で1時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応液を5℃に冷却して得られた黄橙色懸濁液に、MeOH(20mL)を加えて吸引濾過した後、濾取した結晶をMeOHにて洗浄し、減圧下加熱乾燥することで、表題化合物(8
S−10)が黄橙色粉末として922mg得られた。単離収率:73.5%、純度99.0wt%。なお、主な不純物は3M1Bであった。
1H NMR(400MHz,CD
2Cl
2):
図10を参照のこと。
31P NMR(161MHz,CD
2Cl
2):δ=47.0−45.6(m,1P),40.1−39.4(m,1P).
【0086】
(実施例21)ジクロロ[トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン]{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8
S−11))の合成(Eq.27)
【化74】
実施例20と同様にして、[RuCl
2(p−cymene)]
2(877mg、1.43mmol、1.0当量)、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン(11−6)(1.11g、3.15mmol、2.2当量)、脱水THF(10mL)、実施例3/実施例4にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン(1
D−2)(1.0g、3.15mmol、2.2当量)及び3M1B(20mL)から、表題化合物(8
S−11)が薄褐色粉末として1.98g得られた。単離収率:81.1%、純度98.7wt%。なお、主な不純物は3M1Bであった。
1H NMR(400MHz,CD
2Cl
2):
図11を参照のこと。
31P NMR(161MHz,CD
2Cl
2):δ=46.5−44.8(m,1P),40.4−38.8(m,1P).
HRMS:M
+;Meas.m/z=841.0994,Pred.m/z=841.1015,M=C39H45NO3P2SCl2Ru.
【0087】
(実施例22)ジクロロ[トリス(4−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン]{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8
S−12))の合成(Eq.28)
【化75】
実施例20と同様にして、[RuCl
2(p−cymene)]
2(438mg、0.72mmol、1.0当量)、トリス(4−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン(11−5)(737mg、1.58mmol、2.2当量)、脱水THF(5mL)、実施例3/実施例4にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン(1
D−2)(500mg、1.58mmol、2.2当量)及び3M1B(10mL)から、表題化合物(8
S−12)が橙色粉末として1.09g得られた。単離収率:79.6%。
1H NMR(400MHz,CD
2Cl
2):
図12を参照のこと。
31P NMR(161MHz,CD
2Cl
2):δ=48.5−45.6(m,2P).
19F NMR(376MHz,CD
2Cl
2):δ=64.82(s,9F).
HRMS:M
+;Meas.m/z=920.0698,Pred.m/z=920.0633,M=C39H36NF9P2SCl2Ru.
【0088】
(実施例23)ジクロロ[トリス(2−フリル)ホスフィン]{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8
S−13))の合成(Eq.29)
【化76】
実施例20と同様にして、[RuCl
2(p−cymene)]
2(438mg、0.72mmol、1.0当量)、トリス(2−フリル)ホスフィン(11−7)(366mg、1.58mmol、2.2当量)、脱水THF(5mL)、実施例3/実施例4にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン(1
D−2)(500mg、1.58mmol、2.2当量)及び3M1B(10mL)から、表題化合物(8
S−13)が橙色粉末として750mg得られた。単離収率:72.4%。
1H NMR(400MHz,CD
2Cl
2):
図13を参照のこと。
31P NMR(161MHz,CD
2Cl
2):δ=52.0−49.6(m,1P),10.3(d,J=34.0Hz,1P).
【0089】
(実施例24)ジクロロ{4−エチル−2,6,7−トリオキサ−1−ホスファビシクロ[2,2,2]オクタン}{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8
S−14))の合成(Eq.30)
【化77】
(仕込み・反応)50mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、クライゼン蒸留装置、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、[RuCl
2(p−cymene)]
2(438mg、0.72mmol、1.0当量)、4−エチル−2,6,7−トリオキサ−1−ホスファビシクロ[2,2,2]オクタン(256mg、1.58mmol、2.2当量)及びクロロホルム(CHCl
3)(5mL)を順次仕込み、得られた深赤色溶液を室温で5分攪拌した。次いで、実施例3/実施例4にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン(1
D−2)(500mg、1.58mmol、2.2当量)及びシクロヘキサノール(CyOH)(10mL)を加え、クライゼン蒸留装置にてCHCl
3を常圧で留去した後に、CyOHの還流下で1時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応液を5℃に冷却して得られた赤橙色懸濁液に、MeOH(20mL)を加えた後に吸引濾過し、濾取した結晶をMeOHにて洗浄し、減圧下加熱乾燥することで、表題化合物(8
S−14)が黄橙色粉末として273mg得られた。単離収率:29.3%。
1H NMR(400MHz,CD
2Cl
2):
図14を参照のこと。
31P NMR(161MHz,CD
2Cl
2):δ=135.1−131.8(m,1P),59.7−56.7(m,1P).
HRMS:M
+;Meas.m/z=651.0217,Pred.m/z=651.0228,M=C24H35NO3P2SCl2Ru.
【0090】
(実施例25)カルボニルクロロヒドリド{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8
S−15))の合成(Eq.31)
【化78】
(仕込み・反応)50mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、実施例1/実施例2にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン(1
D−1)(1.0g、3.30mmol、2.2当量)、キシレン(異性体混合物、15mL)及びカルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(RuHCl(CO)(PPh
3)
3)(2.86g、3.00mmol、1.0当量)を順次仕込み、得られた褐色懸濁液をキシレン還流下で30分攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応後に得られた橙色懸濁液を5℃に冷却して吸引濾過した後、濾取した結晶をトルエンにて洗浄し、減圧下加熱乾燥することで、表題化合物(8
S−15)が黄橙色粉末として1.32g得られた。単離収率:93.8%。
1H NMR(400MHz,CD
2Cl
2):
図15を参照のこと。
31P NMR(161MHz,CD
2Cl
2):δ=66.3−64.0(m,1P).
【0091】
(実施例26)ヒドリド(テトラヒドロボレート)(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8
S−16))の合成(Eq.32)
【化79】
(仕込み・反応)50mL四つ口丸底フラスコに、マグネティックスターラーバー、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、実施例12で得られたジクロロ(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8
S−2)(99.4mg、0.132mmol、1.0当量)、トルエン(3mL)、エタノール(EtOH)(3mL)及びテトラヒドロホウ酸ナトリウム(NaBH
4)(50.0mg、1.32mmol、10.0当量)を順次加え、得られた橙色懸濁液を65℃で1時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応後に得られた薄黄色懸濁液を室温に冷却し、吸引濾過後に得られた結晶をトルエン及びn−ヘプタンで順次洗浄した後、減圧下乾燥することで、表題化合物(8
S−16)が薄黄色粉末として108.0mg得られた。単離収率:98.5%、純度:83.9wt%(
1H NMRによる)。なお、主な不純物はn−ヘプタンであった。
1H NMR(400MHz,CD
2Cl
2):
図16を参照のこと。
31P NMR(161MHz,CD
2Cl
2):δ=68.4−65.0(m,2P).
【0092】
(実施例27)カルボニルヒドリド(テトラヒドロボレート){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(構造組成式(8
S−17))の合成(Eq.33)
【化80】
(仕込み・反応)50mL四つ口丸底フラスコに、マグネティックスターラーバー、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、実施例25で得られたカルボニルクロロヒドリド{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(メチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8
S−15)(61.9mg、0.132mmol、1.0当量)、トルエン(3mL)、EtOH(3mL)及びNaBH
4(50.0mg、1.32mmol、10.0当量)を順次加え、得られた白色懸濁液を65℃で3時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応後に得られた白色懸濁液を減圧下濃縮し、水及び酢酸エチルを加えて水層を分液した後、有機層を濃縮した。得られた残渣をトルエン/酢酸エチルから再結晶することで、表題化合物(8
S−17)が灰色粉末として30.1mg得られた。単離収率:50.9%。
1H NMR(400MHz,CD
2Cl
2):
図17を参照のこと。
31P NMR(161MHz,CD
2Cl
2):δ=67.6(s,1P).
【0093】
(実施例28)ジクロロ{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)ダイマー(構造組成式(8
U−1))の合成(Eq.34)
【化81】
(仕込み・反応)50mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、実施例3/実施例4にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン(1
D−2)(1.0g、3.15mmol、2.1当量)、3M1B(10mL)及び[RuCl
2(p−cymene)]
2(918mg、1.50mmol、1.0当量)を順次仕込み、得られた暗赤色懸濁液を3M1Bの還流下で3時間攪拌した。
(後処理・精製)反応後に得られた橙色懸濁液を室温にまで冷却して吸引濾過した後、濾取した結晶をMeOHにて洗浄し、減圧下加熱乾燥することで、表題化合物(8
U−1)が橙色粉末として1.24g得られた。単離収率:84.5%。
1H NMR(300MHz,CD
2Cl
2):
図18を参照のこと。
31P NMR(121MHz,CD
2Cl
2):δ=73.7(s,2P).
HRMS:[M−Cl]
+;Meas.m/z=942.9864,Pred.m/z=942.9884,M−Cl=C36H48N2P2S2Cl3Ru2.
【0094】
(実施例29)ジクロロ{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(フェニルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)ダイマー(構造組成式(8
U−2))の合成(Eq.35)
【化82】
実施例28と同様にして、実施例8にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(フェニルチオ)エチル]エチルアミン(1
D−5)(1.0g、2.74mmol、2.1当量)、3M1B(10mL)及び[RuCl
2(p−cymene)]
2(798mg、1.30mmol、1.0当量)から、表題化合物(8
U−2)が橙色粉末として1.29g得られた。単離収率:92.3%。
1H NMR(300MHz,CD
2Cl
2):溶解度が低く測定困難であった。
31P NMR(121MHz,CD
2Cl
2):溶解度が低く測定困難であった。
HRMS:[M−Cl]
+;Meas.m/z=1038.986,Pred.m/z=1038.989,M−Cl=C44H48N2P2S2Cl3Ru2.
【0095】
(実施例30)ジクロロ{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(p−トリルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)ダイマー(構造組成式(8
U−3))の合成(Eq.36)
【化83】
実施例28と同様にして、実施例9にて得られた2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(p−トリルチオ)エチル]エチルアミン(1
D−6)(2.0g、5.27mmol、2.1当量)、3M1B(15mL)及び[RuCl
2(p−cymene)]
2(1.54g、2.51mmol、1.0当量)から、表題化合物(8
U−3)が橙色粉末として2.46g得られた。単離収率:88.9%。
1H NMR(300MHz,CD
2Cl
2):溶解度が低く測定困難であった。
31P NMR(121MHz,CD
2Cl
2):溶解度が低く測定困難であった。
HRMS:[M−Cl]
+;Meas.m/z=1067.021,Pred.m/z=1067.020,M−Cl=C46H52N2P2S2Cl3Ru2.
【0096】
(実施例31)[クロロビス(4−メトキシフェニルイソシアニド){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)]クロライド(構造組成式(8
R−1))の合成(Eq.37)
【化84】
(仕込み・反応)50mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、実施例28にて得られたジクロロ{2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)ダイマー(8
U−1)(160.1mg、0.163mmol、1.0当量)、4−メトキシフェニルイソシアニド(87.1mg、0.650mmol、4.0当量)、CHCl
3(20mL)及びMeOH(2mL)を順次仕込み、得られた緑色懸濁液を60℃で4時間攪拌した。
(後処理・精製)反応液を減圧下濃縮して得られた緑色の残渣を、MeOH、トルエン及びn−ヘプタンで順次洗浄し、減圧下加熱乾燥することで、表題化合物(8
R−1)が薄黄色粉末として63.2mg得られた。単離収率:25.7%。
1H NMR(300MHz,CD
2Cl
2):
図19を参照のこと。
31P NMR(121MHz,CD
2Cl
2):δ=34.0(s,1P).
HRMS:[M−Cl]
+;Meas.m/z=720.1146,Pred.m/z=720.1154,M−Cl=C34H38N3O2PSClRu.
【0097】
(実施例32)ジクロロ(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8
S−2)を触媒とした、安息香酸メチルの水素添加反応によるベンジルアルコールの合成(Eq.38)
【化85】
(仕込み・反応)ステンレス製100mLオートクレーブ装置に、実施例12で得られたジクロロ(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8
S−2)(純度:94.2wt%、2.0mg、0.1mol%)を仕込んで内部を窒素置換した後、トルエン(2.0mL)、カリウムtert−ブトキシド(KO
tBu)のTHF溶液(濃度:1.0mol/L、250μL、0.25mmol、0.1当量)及び安息香酸メチル(312μL、2.50mmol、1.0当量)を順次仕込んだ後に内部を水素(H
2)置換し、更にH
2ガスによって1MPaにまで加圧した後に、80℃にて6時間攪拌することで、目的とするベンジルアルコールが得られた。転化率:100%、選択率:100%(GC分析による)。
GC保持時間;安息香酸メチル:16.77分、ベンジルアルコール:22.30分。
【0098】
(比較例1)ジクロロ(トリフェニルホスフィン){N,N−ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン}ルテニウム(II)(14−1)を触媒とした、安息香酸メチルの水素添加反応による、ベンジルアルコールの合成(Eq.39)
【化86】
第1工程:ジクロロ(トリフェニルホスフィン){N,N−ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン}ルテニウム(II)の合成
(反応・仕込み)50mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、RuCl
2(PPh
3)
3(2.00g、2.09mmol、1.0当量)、脱水トルエン(20mL)及び既知のN,N−ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン(1.03g、2.34mmol、1.1当量)を順次仕込み、得られた暗紫色懸濁液をトルエンの還流下で1時間攪拌した。
(後処理・単離・精製)反応後に得られた黄土色懸濁液を5℃に冷却した後に吸引濾過し、濾取した結晶をトルエン及びn−ヘキサンにて順次洗浄し、減圧下加熱乾燥することで、表題化合物(14−1)が黄橙色粉末として2.06g得られた。単離収率:91.9%、純度:98.9wt%(
1H NMR分析による)。なお、主な不純物はトルエンであった。
1H NMR(300MHz,CD
2Cl
2):δ=7.36−7.29(m,18H),7.16−7.00(m,11H),6.84−6.75(m,6H),4.76−4.60(m,1H),3.50−3.06(m,4H),2.82−2.48(M,4H).
31P NMR(121MHz,CD
2Cl
2):δ=41.4(d,J=29.5Hz,1P),29.6(d,J=28.1Hz,2P).
【0099】
第2工程:ベンジルアルコールの合成
触媒として、第1工程で得られたジクロロ(トリフェニルホスフィン){N,N−ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン}ルテニウム(II)(14−1)(純度98.9wt%、2.2mg、0.1mol%)を用いた以外は、実施例32と同様にして、安息香酸メチルの水素添加反応によるベンジルアルコールの合成を行った。転化率:7.9%、選択率:79.8%(GC分析による)。
【0100】
(比較例2)ジクロロ(トリフェニルホスフィン){N,N−ビス[2−(エチルチオ)エチル]アミン}ルテニウム(II)(14−2)を触媒とした、安息香酸メチルの水素添加反応による、ベンジルアルコールの合成(Eq.40)
【化87】
触媒として、市販のジクロロ(トリフェニルホスフィン){N,N−ビス[2−(エチルチオ)エチル]アミン}ルテニウム(II)(14−2)(1.6mg、0.1mol%)を用いた以外は、実施例32と全く同様にして、安息香酸メチルの水素添加反応によるベンジルアルコールの合成を行った。転化率:100%、選択率:93.4%(GC分析による)。
【0101】
(実施例33)ジクロロ(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8
S−2)を触媒とした、乳酸メチルの水素添加反応による1,2−プロパンジオールの合成(Eq.41)
【化88】
(仕込み・反応)ステンレス製100mLオートクレーブ装置に、実施例12で得られたジクロロ(トリフェニルホスフィン){2−ジフェニルホスフィノ−N−[2−(エチルチオ)エチル]エチルアミン}ルテニウム(II)(8
S−2)(純度:94.2wt%、2.0mg、0.1mol%)を仕込んで内部を窒素置換し、トルエン(2.0mL)、KO
tBuのTHF溶液(濃度:1.0mol/L、250μL、0.25mmol、0.1当量)及び乳酸メチル(238μL、2.50mmol、1.0当量)を順次仕込んだ後に内部をH
2置換し、更にH
2ガスによって1MPaにまで加圧した後に、80℃にて6時間攪拌することで、目的とする1,2−プロパンジオールが得られた。転化率:100%、選択率:100%(GC分析による)。
GC保持時間;乳酸メチル:9.08分、1,2−プロパンジオール:15.84分。
【0102】
(比較例3)ジクロロ(トリフェニルホスフィン){N,N−ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン}ルテニウム(II)(14−1)を触媒とした、乳酸メチルの水素添加反応による1,2−プロパンジオールの合成(Eq.42)
【化89】
触媒として、比較例1第1工程で得られたジクロロ(トリフェニルホスフィン){N,N−ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン}ルテニウム(II)(14−1)(純度:98.9wt%、2.2mg、0.1mol%)を用いた以外は、実施例33と同様にして、乳酸メチルの水素添加反応による1,2−プロパンジオールの合成を行った。転化率:18.6%、選択率:64.3%(GC分析による)。
【0103】
(比較例4)ジクロロ(トリフェニルホスフィン){N,N−ビス[2−(エチルチオ)エチル]アミン}ルテニウム(II)(14−2)を触媒とした、乳酸メチルの水素添加反応による1,2−プロパンジオールの合成(Eq.43)
【化90】
触媒として、市販のジクロロ(トリフェニルホスフィン){N,N−ビス[2−(エチルチオ)エチル]アミン}ルテニウム(II)(14−2)(1.6mg、0.1mol%)を用いた以外は、実施例33と全く同様にして、乳酸メチルの水素添加反応による1,2−プロパンジオールの合成を行った。転化率:17.9%、選択率:59.4%(GC分析による)。
【0104】
実施例32及び実施例33、並びに比較例1〜4の結果を以下の表1にまとめる。
【表1】
この結果からわかるように、本発明の化合物を三座配位子として有するルテニウム錯体は、従来のN,N−ビス(2−ホスフィノエチル)アミンやN,N−ビス(2−チオエチル)アミンを三座配位子として有するルテニウム錯体と比較して、エステル類の水素添加反応における触媒活性、反応選択性及び基質一般性が明らかに優れており、安息香酸メチル及び乳酸メチルのいずれからも、完全な転化率及び選択率にて生成物を与えることが明らかとなった。
本発明の錯体の実施例11〜28及び実施例31における
1H NMRチャートは、
図1〜19を参照のこと。