特許第6534248号(P6534248)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6534248サーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物及びサーミスタセンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6534248
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】サーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物及びサーミスタセンサ
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/02 20060101AFI20190617BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20190617BHJP
   C08G 59/42 20060101ALI20190617BHJP
   H01C 7/04 20060101ALI20190617BHJP
   G01K 7/22 20060101ALI20190617BHJP
【FI】
   H01C7/02
   C08G59/20
   C08G59/42
   H01C7/04
   G01K7/22 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-137564(P2014-137564)
(22)【出願日】2014年7月3日
(65)【公開番号】特開2016-15437(P2016-15437A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年6月27日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108454
【氏名又は名称】ソマール株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊東 美雪
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 哲志
【審査官】 田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−059731(JP,A)
【文献】 特開昭54−163351(JP,A)
【文献】 特開2002−348351(JP,A)
【文献】 特開平11−335445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/02
C08G 59/20
C08G 59/42
G01K 7/22
H01C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護ケースと、サーミスタ素子と絶縁被覆材で被覆された電線からなるサーミスタセンサ本体と、の間に注型して用いるサーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物であって、前記サーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ当量が350以上であるエポキシ樹脂及び硬化剤を含有し、
前記硬化剤は(B)酸無水物硬化剤のみを含有し
前記(B)酸無水物硬化剤が、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、水素化無水メチルナジック酸からなる群から選択される1種以上であるサーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が、ポリオキシアルキレンビスフェノールAジグリシジルエーテルであ
る請求項1に記載のサーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
更に、(C)無機充填剤を含有する請求項1又は2に記載のサーミスタセンサ注型用エ
ポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3何れか一項に記載のサーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物を用いた
サーミスタセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
サーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物及びサーミスタセンサに関し、特に耐変色性、可とう性、脱落防止性に優れるサーミスタセンサ注型用のエポキシ樹脂組成物及びサーミスタセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
サーミスタとは熱に敏感な抵抗体を意味し、温度の変化につれてその抵抗値がきわめて大きく変化する半導体をいう。この性質を利用してセンサとして幅広く利用されており、サーミスタセンサと呼ばれている。
【0003】
このサーミスタセンサの一例として樹脂注型型サーミスタセンサが知られている。樹脂注型型サーミスタセンサとして、例えば、サーミスタ素子と絶縁被覆材で被覆された電線からなるサーミスタセンサ本体を保護ケース内に挿入した後に、エポキシ樹脂組成物を注入し、そのエポキシ樹脂組成物を加熱硬化させたものを挙げることができる。
【0004】
このエポキシ樹脂組成物に求められる基本的特性としては、センサを設置する際に被覆電線と注型樹脂の間に発生する応力を緩和するための可とう性と、サーミスタセンサ本体の保護ケースからの脱落防止性を挙げることができる。
【0005】
サーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物として、エポキシ樹脂とアミン系硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、このものでは、可とう性に優れるものの、電線被覆材として塩化ビニル樹脂を使用した場合には、アミン系硬化剤が塩化ビニル樹脂表面に移行し、脱塩酸反応を引き起こす結果、塩化ビニル樹脂の変色および劣化を引き起こしてしまうという欠点を有する。
このため、電線被覆材料として架橋化ポリエチレン樹脂を使用せざるを得ず、高コスト化につながっている。
【0006】
また、アミン系硬化剤ではなく、酸無水物を硬化剤として使用したエポキシ樹脂組成物も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、このものは、電力ケーブルの接続方法の一種であるプレハブジョイント(PJ)法において利用されるエポキシユニットなどに関するものである。エポキシユニットは、金型を用いた成型加工品であるため、金型との離型性に優れている必要がある。このため、このものをそのままサーミスタセンサ用に適用した場合には、サーミスタセンサ本体自体が保護ケースから脱落するという欠点を有している。
【0007】
このため、電線被覆材として安価な塩化ビニル樹脂を使用した場合であっても、変色することがなく、さらに、可とう性、脱落防止性に優れるサーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物及びこのエポキシ樹脂組成物を使用したサーミスタセンサが産業界から強く求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−059731号公報
【特許文献2】特開平09−324111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
耐変色性、可とう性、脱落防止性に優れるサーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物及びサーミスタセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解消するために鋭意検討した結果、特定のエポキシ当量を有するエポキシ樹脂と酸無水物を含有するエポキシ樹脂組成物を用いた場合に、前記課題を解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、
[1]保護ケースと、サーミスタ素子と絶縁被覆材で被覆された電線からなるサーミスタセンサ本体と、の間に注型して用いるサーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物であって、前記サーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ当量が350以上であるエポキシ樹脂及び硬化剤を含有し、
前記硬化剤は(B)酸無水物硬化剤のみを用いるものであり
前記(B)酸無水物硬化剤が、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、水素化無水メチルナジック酸からなる群から選択される1種以上であるサーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物。
【0012】
[2]前記(A)成分がポリオキシアルキレンビスフェノールAジグリシジルエーテルである[1]に記載のサーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物。
【0013】
[3]更に、(C)無機充填剤を含有する[1]又は[2]に記載のサーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物。
【0014】
[4][1]〜[3]何れかに記載のサーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物を用いたサーミスタセンサ。
からなるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、耐変色性、可とう性、脱落防止性に優れるサーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物及びサーミスタセンサを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明は、特定のエポキシ当量を有するエポキシ樹脂、酸無水物を含有するサーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物とサーミスタセンサである。
以下、サーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物とサーミスタセンサについて説明する。
【0017】
(サーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物)
本発明のサーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ当量が350以上であるエポキシ樹脂及び(B)酸無水物硬化剤を含有するものである。
【0018】
本発明において使用される前記(A)成分は、エポキシ当量が350以上である必要がある。この範囲とすることにより、得られるエポキシ樹脂組成物に可とう性と脱落防止性を付与させることができる。エポキシ当量は、450以上であることが更に好ましい。
また、反応性や流動性の観点から、エポキシ当量は700以下であることが好ましく、600以下であることが更に好ましい。
【0019】
(A)成分に該当するエポキシ樹脂としては、例えば、ポリオキシアルキレンビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノール−ノボラック型又は、臭素化ノボラック型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型もしくはAD型エポキシ樹脂、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルなどの脂肪族系エポキシ樹脂、脂肪族若しくは芳香族アミンとエピクロルヒドリンから得られるエポキシ樹脂、脂肪族若しくは芳香族カルボン酸エピクロルヒドリンから得られるエポキシ樹脂、複素環エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ダイマー酸型エポキシ樹脂などを使用することができる。これらの(A)成分は1種類だけ使用してもよいし、2種類以上使用してもよい。このなかでも、耐湿性を向上させることができるためポリオキシアルキレンビスフェノールAジグリシジルエーテルを含有することが好ましい。
また、本発明の目的が損なわれない限り、所望により、(A)成分に該当しないエポキシ樹脂を使用してもよい。その配合量は全エポキシ樹脂の35質量%以下の範囲であることが好ましい。
【0020】
本発明において使用される前記(B)成分としては、酸無水物硬化剤を用いる。酸無水物硬化剤を用いることにより、電線被覆材として塩化ビニル樹脂を用いた場合でも塩化ビニル樹脂の変色を防止することができるとともに、電気特性に優れた硬化物を得ることができる。酸無水物硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、水素化無水メチルナジック酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。これらの(B)成分は1種類だけ使用してもよいし、2種類以上使用してもよい。これらの酸無水物硬化剤は酸無水物全体として液状になるのであれば常温で固形のものを用いることができる。この中でメチルテトラヒドロ無水フタル酸が低粘度で入手が容易である点で好ましい。
【0021】
本発明において使用される前記(B)成分の配合割合は、前記(A)成分または前記(A)成分と所望により添加される前記(A)成分に該当しないエポキシ樹脂全体に含まれる官能基1当量に対して、その硬化剤中の官能基の当量比の下限が0.6以上であることが好ましく、0.8以上であることが更に好ましい。その硬化剤中の官能基の当量比の上限が1.1当量以下であることが好ましく、1.0当量以下であることが更に好ましい。この範囲とすることにより、硬化不足を防止することができるともに、脱落防止性を向上させることができる。
【0022】
本発明において、更に(C)成分として無機充填剤を含有してもよい。(C)成分を含有させることにより、熱伝導性を向上させることができる。
(C)成分としては、従来から知られている無機充填剤を適宜使用することができる。例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、チタンホワイト、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素などを使用することができる。
これらの(C)成分のうちアルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素が熱伝導率が高いため好ましい。
これらの(C)成分は1種類だけ使用してもよいし、2種類以上使用してもよい。
【0023】
(C)成分の平均粒子径の下限は1μm以上であることが好ましく、2μmであることが更に好ましい。(C)成分の平均粒子径の上限は10μm以下であることが好ましく、8μmであることが更に好ましい。この範囲とすることにより(C)成分が沈降することを防ぐことができる。形状については、制限はなく、球状、針状、不定形、鱗片状など何れの形状のものであっても使用できる。なお、平均粒子径とは、レーザー回析式粒子径分布測定装置を用いて得られた(C)成分の粒子径の累積分布において、累積体積が50%となるときの粒子径をいう。
【0024】
(C)成分の配合量の下限は、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、100質量部であることが好ましく、200質量部であることが更に好ましい。(C)成分の配合量の上限は、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、400質量部であることが好ましく、300質量部であることが更に好ましい。(C)成分の配合量をこの範囲とすることにより得られるエポキシ樹脂組成物の流動性を維持することができる。
【0025】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、前記成分の他、硬化促進剤、流展剤、難燃剤、顔料、カップリング剤、消泡剤などの慣用の補助成分を適宜配合することができる。
硬化促進剤としては、三級アミン、イミダゾール類、ジシアンジアミドなどを挙げることができる。
【0026】
本発明のエポキシ樹脂組成物の粘度は回転粘度計を用い、25℃、速度50rpmの条件で測定した際に100〜10,000mPa・sの範囲とすることが好ましい。粘度をこの範囲とすることによりエポキシ樹脂組成物を保護ケースに容易に注型することができる。
【0027】
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物の硬度がショアー硬度計(A型)で90以下であることが好ましい。この範囲とすることにより、エポキシ樹脂組成物は可とう性を有することとなる。なお、測定方法については後述する。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物の熱伝導率は、0.5W/(m・K)以上であることが好ましい。この範囲とすることにより、サーミスタセンサとしての感度を向上させることができる。なお、測定方法については後述する。
【0029】
本発明のエポキシ樹脂組成物の粘度とエポキシ樹脂組成物の硬化物の硬度と熱伝導率は、(A)成分の種類とその配合量、(B)成分の種類とその配合量及び所望により添加される(A)成分に該当しないエポキシ樹脂の種類とその配合量、(C)成分の種類とその配合量などによって調節することができる。
【0030】
(製造方法)
本発明のエポキシ樹脂組成物は使用時にこれらの各成分を任意の順序で添加し、均一に混合することによって調製される。また所望により、(B)酸無水物硬化剤と所望により添加される硬化促進剤成分を混合したものを第二液とし、第二液以外の成分を混合したものを第一液としてあらかじめ調製しておき、使用の際に第一液と第二液を混合して用いると、作業効率などの面で有利である。
【0031】
(サーミスタセンサ)
本発明のサーミスタセンサは、樹脂注型型サーミスタセンサをいい、サーミスタ素子と絶縁被覆材で被覆された電線からなるサーミスタセンサ本体を樹脂で注型したものをいう。
なお、本発明においては、絶縁被覆材として塩化ビニル樹脂、架橋化ポリエチレン樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂などを挙げることができる。
【0032】
(サーミスタセンサの製造方法)
本発明のサーミスタセンサを製造するにあたっては、予め本発明のサーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物を注入した保護ケース内に、サーミスタ素子本体を挿入し、その後、サーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物を硬化させるようにしてもよく、あるいは、サーミスタ素子本体を保護ケース内に挿入した後に、エポキシ樹脂組成物を注入し、硬化させるようにしてもよい。硬化条件は絶縁被覆材の材質に応じて適宜設定すればよく、塩化ビニル樹脂である場合には100〜105℃の温度範囲で5〜10時間程度であることが好ましい。
【0033】
本発明のサーミスタセンサの用途としては、カーエアコンの冷媒用温度センサ、冷却水温の検知センサ、食品加工機・調理機器用の温度検知センサ、家電用エアコンの温度センサなどを挙げることができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明のサーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物及びサーミスタセンサについて実施例を用いて具体的に説明するが、本発明のサーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物及びサーミスタセンサについてはこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例のサーミスタセンサ注型用エポキシ樹脂組成物(以下、試料という)の評価として可とう性、耐湿性、熱伝導性の評価を行い、サーミスタセンサについては、耐変色性、脱落防止性の評価を行った。
【0035】
(可とう性)
試料を直径50mmで高さ3mmの円柱状の離型処理が施された容器に入れ、100℃で5時間加熱硬化させたものを取り出し、試験片とした。この試験片の硬度をショアー硬度計(A型)を用いて、JIS K−7215により測定した。結果を表1、2に示す。
【0036】
(耐湿性)
試料を直径50mmで高さ3mmの円柱状の離型処理が施された容器に入れ、100℃で5時間加熱硬化させたものを取り出し、試験片とした。この試験片を150℃、湿度98%、5気圧の環境下で96時間経過後の表面状態を目視・触診で以下の基準により評価した。
○:試験片表面に溶出物がなく、べたつきがない。
△:試験片表面に溶出物がないが、縁部分にべたつきがある。
×:試験片表面に溶出物があるか、べたつきがある。
【0037】
(熱伝導性)
試料を離型処理が施された容器に入れ、100℃で5時間加熱硬化させたものを取り出したのち、100×50×6mmに切り出したものを試験片とした。迅速熱伝導率計(京都電子工業社製)を用いてプローブ法により熱伝導率を測定した。結果を表1、2に示す。
【0038】
(耐変色性)
試料及び塩化ビニル樹脂で被覆された電線を直径15mmで高さ30mmの銅製の円柱状の容器に入れ、100℃で5時間加熱硬化させたものを、試験片とした。この試験片を105℃環境下で100時間加熱し、この電線の変色有無を目視により以下の基準により評価した。
○:変色なし
×:変色あり
【0039】
(脱落防止性)
試料及び塩化ビニル樹脂で被覆された電線を直径15mmで高さ30mmの銅製の円柱状の保護ケースに入れ、100℃で5時間加熱硬化させたものを、試験片とした。この試験片を−196℃に1分間保持したのち、130℃で1分間保持するという処理を1サイクルとしたヒートサイクル試験を行った。1サイクルごとにこの電線を引張り、保護ケースからこの電線が脱落したサイクル数を試験結果とした。
【0040】
(実施例1)
本発明組成物を構成する各成分を表1に示す割合(質量部)で配合して均一に混合し、試料を得て、この試料の粘度を測定しその結果を表1に示す。また、この試料を100℃×5時間加熱し硬化させた。この硬化物の可とう性、耐湿性、熱伝導性、耐変色性、脱落防止性について測定した。これらの結果を表1に示す。
【0041】
(実施例2〜4)
表1に示す成分を表1で示した割合(質量部)で均一に混合し、試料を得て粘度を測定した。その結果を表1に示す。また、これらの試料を実施例1と同様の条件で硬化させ、硬化物を得た。これらの硬化物の可とう性、耐湿性、熱伝導性、耐変色性、脱落防止性について測定した。これらの結果を表1に示す。
【0042】
(比較例l及び2)
表2に示す成分を表2で示した割合(質量部)で均一に混合し、試料を得て粘度を測定した。その結果を表2に示す。また、これらの試料を実施例1と同様の条件で硬化させ、硬化物を得た。これらの硬化物の可とう性、熱伝導性、耐変色性、脱落防止性について測定した。これらの結果を表2に示す。
【0043】
なお、表1及び表2に記載の実施例及び比較例において以下の化合物を用いた。
A1:ポリオキシアルキレンビスフェノールAジグリシジルエーテル(エポキシ当量510g/eq、商品名アデカレジンEP−4005、ADEKA社製)
A2:ダイマー酸型エポキシ樹脂(エポキシ当量430g/eq、商品名jER871、三菱化学社製)
828:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量190g/eq、商品名jER828、三菱化学社製)
B1:酸無水物系硬化剤(メチルテトラヒドロ無水フタル酸、商品名HN−2000、日立化成社製)
B2:酸無水物系硬化剤(メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、商品名HN−5500、日立化成社製)
C:無機充填剤(アルミナ、平均粒径:2.6μm)
硬化促進剤:2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール
アミン系硬化剤:ポリアルキレンオキシポリアミン、商品名ジェファーミンD−400、三井化学ファイン社製)
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
(評価)
表1において実施例1〜4において、エポキシ当量が350以上のエポキシ樹脂と酸無水物系硬化剤を使用しているため、耐変色性を有するとともに硬度が90以下であるため可とう性にも優れたものであることが理解できる。また、実施例2においては(C)成分を含有しているため熱伝導性が向上していることも理解できる。なお、実施例4においてはポリオキシアルキレンビスフェノールAジグリシジルエーテルを用いずにダイマー酸型エポキシ樹脂を使用しているため耐湿性がやや劣ることが理解できる。
一方、表2において比較例1では、アミン系硬化剤を使用しているため、耐変色性が満足しないことが理解できる。比較例2では、エポキシ当量が低いエポキシ樹脂であるため、無機充填剤を含有している実施例2の場合と比較しても硬度が高く可とう性に劣り、脱落防止性にも極めて劣るものであることが理解できる。