(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の飲料製造設備における充填機および密封機は、大気雰囲気下にある室内に設置されている。
そのため、充填機におけるガッシングにより容器内の空気を炭酸ガスに置換しても、充填機から密封機へと容器が転送される間に、容器内の炭酸ガスの一部が大気中に漏出してしまい、その分、容器内に空気が入る。それを見越して増量した炭酸ガスを充填機および密封機におけるガッシングに用いることにより、要求される酸素ガス濃度を実現している。
上記のように充填機から密封機へと容器が転送される間に限らず、ノンシールガッシングやアンダーカバーガッシングの際にも、余剰の炭酸ガスが大気中へと漏出する。また、容器内に内容液を充填する際のスニフト工程で、ヘッドスペース圧力差分の炭酸ガスが大気中へと漏出する。
つまり、容器内の要求される残存酸素ガス濃度を一定水準以下に保つために必要な量に対して多量の炭酸ガスが消費されている。炭酸ガスに要するコストの他、作業環境の安全性や自然環境保護の観点からも、炭酸ガスの使用量を削減することが好ましい。
【0005】
そこで、本発明は、容器内の空気との置換に使用される置換流体の使用量を削減することができるガス置換システムおよびガス置換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述したように、ガッシングの際や、内容液を充填する際のスニフト時や、充填機から密封機への転送中に容器内から漏出した置換ガスが、容器の周辺に存在している。それらの置換ガスを集めて容器内に吹き込むことができれば、置換ガスの使用量を削減可能である。
【0007】
さらに言えば、置換ガスの濃度が高い空間を作り、その空間内の置換ガス濃度を維持しながら、空間内の置換ガスを用いて容器内を置換することによっても、置換ガスの使用量を削減可能である。
【0008】
上記の着想に基づいてなされた本発明のガス置換システムは、容器内への内容液の充填および容器の密封を行うとともに、容器内をガス置換するガス置換システムであって、容器内に内容液を充填する充填機と、充填機から転送された容器を密封する密封機と、充填機および密封機を覆い、置換ガスが存在しているチャンバと、液体が入っている状態でチャンバ内に搬入された容器内の液体
の全量をチャンバ内で容器外へと排出させる排液機構と、液体の排出に伴って液体からチャンバ内のガスへと置換された容器内に、供給源から供給される置換流体を
チャンバ内で導入することで容器内のガスを置換流体の気相である置換ガスに置換するガッシング系統と、を備え、液体の排出に伴って液体からチャンバ内のガスへと容器内
の全体が置換されることを特徴とする。
本発明において容器内に導入される液体は、置換ガスが存在するチャンバ内のガスと置換される媒体として用いられる。
【0009】
本発明では、置換ガスが存在するチャンバ内に液体の入った容器を搬入し、チャンバ内で容器から液体を排出させることによって容器内をチャンバ内に存在するガスで置換している。
仮に、チャンバに搬入される容器内に液体が入っていなければ、容器内は大気により満たされているので、容器の搬入に伴って容器内の大気もチャンバ内に入る。しかし、本発明では、液体が入っている状態の容器を搬入するので、容器だけをチャンバ内に搬入することができる。つまり、容器内の大気がチャンバ内に持ち込まれることによるチャンバ内の置換ガス濃度の低下を抑えることでチャンバ内の置換ガス濃度を維持しながら、チャンバ内の置換ガスを用いて容器内を効率よく置換することが可能となる。
また、チャンバ内の置換ガス濃度を高め、チャンバ内を大気に対して陽圧とすることにより、チャンバ内への外部からの異物の侵入を防ぐことができる。
【0010】
本発明のガス置換システムにおいて、液体の排出に伴って液体からチャンバ内のガスに置換された容器内に、供給源から供給される置換流体を導入することで、容器内のガスを置換流体の気相である置換ガスに置換するガッシング系統を備える
。
充填機および密封機がチャンバにより覆われているので、ガッシング系統により容器内に吹き込まれた置換ガスの余剰分や、スニフト時や充填機から密封機への転送中に容器内から容器外へと漏出した置換ガスがチャンバ内に存在している。
そのため、液体が入っている状態でチャンバ内に容器を搬入し、排液機構により容器内の液体をチャンバ内で排出させると、置換ガスが含まれているチャンバ内のガスが、容器内に導入される。それによって容器内が液体からチャンバ内のガスへと置換される。そうすると、容器内は大気よりも置換ガス濃度が高いので、大気により満たされた容器内に置換ガスを導入する場合と比べて少ない量の置換ガスを用いたガッシングによって容器内が十分な置換ガス濃度となる。
ガッシング系統による処理後に、容器内から置換ガスが漏出し、その分、容器内にチャンバ内のガスが入ったとしても、チャンバ内は大気よりも置換ガス濃度が高いので、容器内の置換ガス濃度の低下を抑えることができる。
密封されるまでに容器の周辺に漏出した置換ガスは、チャンバ内に留まり、チャンバ内に供給された容器内の液体が排液されるのに伴って容器内に導入される。
【0011】
本発明におけるガッシング系統により、内容液の充填前および充填後の任意のタイミングで、1回以上の任意の回数だけガッシングを行うことができる。例えば、最初にノンシールガッシングを行い、次にシールガッシングを行うことができる。
本発明では、容器内の液体の排出に伴って容器内にチャンバ内のガスを導入することで容器内の置換ガス濃度を高め、その後にガッシングを行うことによって、供給源から供給される置換ガスの使用量を削減する。
【0012】
本発明によれば、容器に一旦は導入され、容器外へと漏出した置換ガスの殆ど全てをチャンバ内に回収し、再度、容器に導入することができるので、供給源から供給される置換ガスの使用量を大幅に削減しながら、所定の残存酸素ガス濃度を実現することができる。
しかも、チャンバ内は、ガッシング系統によりガスが吹き出されることで、大気に対して陽圧となるので、チャンバ内への外部からの異物の侵入を防ぐことができる。
【0013】
本発明におけるガッシング系統は、容器内に気相の置換流体(置換ガス)を導入するものであってもよいし、容器内に液相の置換流体(置換液)を導入するものであってもよい。
前者の場合、容器内に導入された置換ガスがそのまま容器内に留まることにより、容器内のガスが置換ガスに置換されるのに対し、後者の場合は、容器内に導入された置換液が容器内で気化することにより、容器内のガスが置換ガスに置換される。後者の場合に容器内に導入される置換流体(置換液)としては、窒素(N
2)を例示することができる。置換液を容器内に噴霧あるいは滴下すると、置換液体の気化による体積膨張に伴って容器内のガスが容器外へと除去される。
【0014】
本発明のガス置換システムにおいて、チャンバ内に搬入される前までに容器内に液体を導入する給液系統を備えることができる。
【0015】
本発明のガス置換システムにおいて、排液機構は、容器の姿勢を変化させることで、容器内の液体を自重により容器の開口から排出させることが好ましい。
【0016】
本発明のガス置換システムにおいて、充填機よりも上流に、容器を液体で洗浄する洗浄機を備え、洗浄機は、排液機構、および、チャンバ内に搬入される前までに容器内に液体を導入する給液系統の少なくともいずれか一方として機能することが好ましい。
【0017】
本発明のガス置換システムにおいて、洗浄機は、排液機構として機能し、チャンバは、洗浄機において容器内から液体が排出される箇所を覆っていることが好ましい。
【0018】
本発明のガス置換システムにおいて、洗浄機は、容器を把持しながら容器の姿勢を変化させることが可能なグリッパを有し、グリッパは、排液機構として機能することが好ましい。
【0019】
本発明のガス置換システムにおいて、洗浄機において容器が搬送される搬送路は、容器をガイドしながら容器の姿勢を変化させるようにツイストされたガイド部材からなるツイスト区間を有し、ツイスト区間は、排液機構として機能することが好ましい。
【0020】
本発明のガス置換システムにおいて、チャンバ内に容器が搬入される箇所で容器と容器との間に液体を導入する給液系統を備えることが好ましい。
【0021】
また、本発明のガス置換方法は、容器内への内容液の充填および容器の密封にあたり、
容器内をガス置換する方法であって、充填および密封のために容器が搬送される搬送路をチャンバで覆い、置換ガスがチャンバに存在する状態とし、チャンバ内に搬入される前までに容器内に液体を導入する第1ステップと、容器内の液体
の全量をチャンバ内で容器の外へと排出させることで、液体からチャンバ内のガスへと容器内
の全体を置換する第2ステップと、液体の排出に伴って液体からチャンバ内のガスへと置換された容器内に、供給源から供給される置換流体をチャンバ内で導入することで容器内のガスを置換流体の気相である置換ガスに置換する第3ステップと、を行うことを特徴とする。
【0022】
本発明のガス置換方法において、液体の排出に伴って液体からチャンバ内のガスに置換された容器内に、供給源から供給される置換流体をチャンバ内で容器内に導入することで容器内のガスを置換流体の気相である置換ガスに置換する第3ステップを行う
。
【0023】
本発明のガス置換方法において、第1ステップでは、容器を液体で洗浄し、かつ容器内に液体を導入することができる。
【0024】
本発明のガス置換方法において、第1ステップでは、チャンバ内への容器の搬入時に、容器と容器との間に液体を導入することが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、容器内の空気との置換に使用される置換流体の使用量を削減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
図1および
図2に示すガス置換システム10は、容器1(
図2)を搬送しながら、容器1内への内容液の充填、および容器1の密封を行う。
ガス置換システム10は、洗浄機11(リンサー)と、充填機12(フィラー)と、密封機13(シーマー)と、充填機12および密封機13を覆うチャンバ14と、容器1内に置換ガスを導入するガッシング系統17とを備えている。
【0028】
本実施形態は、容器1内に液体を充填し、かつ充填後の容器1を密封するにあたり、容器1内に置換ガスを効率よく導入する。そのために、本実施形態のガス置換システム10は、チャンバ14により、充填機12および密封機13を覆うとともに、液体の水が入っている状態でチャンバ14内に搬入された容器1をチャンバ14内で排水させる。
【0029】
チャンバ14内に容器1が搬入される前までに、容器1内には水が導入される。容器1内に水を導入するため、本実施形態では、充填機12よりも上流に設けられた洗浄機11を用いている。
【0030】
チャンバ14は、充填機12および密封機13に加えて、洗浄機11の所定の領域をも覆っている。チャンバ14は、洗浄機11の所定領域から充填機12および密封機13に亘り連続した空間を内包している。
チャンバ14の内側の空間のことをチャンバ14内と称する。チャンバ14内を観察することができるように、チャンバ14の一部に透明な窓を設けることができる。
【0031】
チャンバ14は、充填機12および密封機13を覆う部分チャンバ141と、洗浄機11の所定の領域を覆う部分チャンバ142とを有している。これらの部分チャンバ141,142の内側は、相互に連通している。
図1に、部分チャンバ141と部分チャンバ142との便宜的な境界線Lを破線で示しているが、その境界線Lに沿って壁等が設置されている必要はない。
【0032】
まず、洗浄機11の構成について説明する。
図1および
図2に示すように、洗浄機11(ロータリーリンサー)は、回転体101と、回転体101に保持された容器1に向けて水を吐出するノズル102(
図2)とを有している。
【0033】
回転体101は、図示しない駆動装置により回転される。
回転体101は、外周部に一定のピッチで設けられたグリッパ103(
図2)を有している。それらのグリッパ103により容器1が把持される。
グリッパ103は、図示しない軸部を中心に回転することにより、容器1の姿勢を正立した姿勢と倒立した姿勢との間で変化させることが可能である。
【0034】
回転体101における容器1の搬送路において、上流側の区間A1は大気に開放されており、区間A1よりも下流側の区間A2は部分チャンバ142により覆われている。
回転体101の回転に伴って、容器1は、部分チャンバ142に形成された入口14INを通り抜けてチャンバ14内へと搬入される。
【0035】
区間A1(以下、注水区間)では、ノズル102により容器1内に水が注がれる。区間A2(以下、排水区間)では、容器1内の水が容器1外へと排出される。
本実施形態では、回転体101の搬送路が注水区間A1と排水区間A2とに二等分されているが、これらの区間A1,A2の比率は任意である。
【0036】
注水区間A1および排水区間A2は、容器1の注水および排水に関して区分されており、その区分に関係なく容器1の洗浄を行うことができる。例えば、区間A1,A2の両方にノズル102を配置し、それらのノズル102から吐出される水により容器1を洗浄することができる。
【0037】
洗浄機11の搬送装置は、図示しない容器のパレットから供給される容器1を洗浄機11に供給する供給コンベヤ104と、供給コンベヤ104から容器1を受け取る入口スターホイール105と、入口スターホイール105から容器1を受け取る上述の回転体101と、回転体101から容器1を受け取って充填機12の回転体18へと転送するスターホイール106とにより構成されている。
かかる搬送装置の構成は、一例に過ぎず、スターホイールの数や配置等は適宜に定めることができる。
洗浄機11の搬送装置は、建屋の床に設置されたベース107に支持されている。
【0038】
本実施形態では、回転体101の直径方向に沿って部分チャンバ142の壁142Aが設置されており、回転体101の平面視半円状の領域が部分チャンバ142により覆われているので、回転体101における搬送路の途中で、注水区間A1と排水区間A2とが切り替わる。
但し、洗浄機11の搬送装置の構成によっては、連なった2つのスターホイールのうちの下流側のスターホイールの全体が部分チャンバ142により覆われており、上流側のスターホイールから下流側のスターホイールへと容器1が受け渡されるところで、注水区間A1と排水区間A2とが切り替わっていてもよい。
【0039】
ノズル102(
図2)は、グリッパ103に把持された容器1に向けて、図示しない水供給源から供給される水を噴出する。
ノズル102から噴出される水により、容器1の内部および外部が洗浄される。容器1をより十分に洗浄するため、容器1の上下方向両側にノズル102を配置することもできる。
洗浄に用いられる水は、純水である必要はなく、殺菌剤を低濃度で含むものであってもよい。本実施形態では、一般の水道水を用いている。
ノズル102から噴出されて容器1を洗浄した水は、回転体101の下方に設置された樋などを通じて回収することができる。容器1内から排出される水についても同様である。
【0040】
ノズル102は、注水区間A1および排水区間A2のうちの少なくとも注水区間A1に配置されており、容器1内に水を導入する給水系統(給液系統)としても機能する。
ノズル102は、回転体101の回転に伴って部分チャンバ142内(排水区間A2)に容器1が搬入される前までに、容器1内に水を導入する。
注水区間A1において、ノズル102から下方へと噴出された水は、自重によりそのまま容器1の開口1Aより容器1内に供給される。ノズル102から噴出された水を容器1内に効率よく溜めることができるように、ノズル102から噴出される水の流量を適切に定めることが好ましい。
【0041】
本実施形態では、正立した状態(P1)の容器1内に水を導入し、水が入っている状態のままチャンバ14内に搬入された容器1の姿勢を倒立した状態(P2)に変化させることにより、容器1内の水を排出させる。
本実施形態の容器1は、缶体である。姿勢の変化により、容器1の開口1A(
図4)の向きが変化する。
図2に示すように、注水区間A1では、グリッパ103により容器1が開口1Aを上方に向けた正立状態P1に把持されており、ノズル102により容器1内に水が導入される。
その容器1は、開口1Aを上方に向けた状態でチャンバ14内(排水区間A2)に搬入されると、グリッパ103が回転することで倒立状態(P2)に変化する。そうすると、容器1内の水が自重により開口1Aから排出される。つまり、グリッパ103は、容器1内の水を排出させる排水機構(排液機構)としても機能する。
排水後、典型的には、グリッパ103により容器1を倒立姿勢(P2´)に保持した状態で、容器1よりも下方からノズル102により水を上方へと噴射することによって容器1を洗浄する。この洗浄を省略することも可能である。
【0042】
ここで、「正立状態」は、開口1Aが真っ直ぐ上方に向いている状態だけでなく、開口1Aが概ね上方に向いている状態をも包含する。
また、「倒立状態」は、開口1Aが真っ直ぐ下方に向いている状態だけでなく、開口1Aが概ね下方に向いている状態をも包含する。
【0043】
次に、充填機12および密封機13の構成について説明する。
充填機12は、回転体18と、回転体18に保持された容器1内に内容液を充填する充填ノズル(図示しない)とを備えている。充填ノズルは、フィラボウル19内において内容液が貯留された液相部19Aに接続されている。
【0044】
容器1は、回転体18の外周部に一定ピッチで設けられたポケット20(
図2)内に、開口1Aを上に向けた正立の姿勢で保持される。回転体18は、図示しない駆動装置により回転される。
【0045】
密封機13は、リフター21を含む回転式の搬送装置であり、リフター21に保持された容器1に蓋2(
図2)を巻き締めることで容器1を密封する。
【0046】
ガス置換システム10の搬送装置は、上述の回転体18およびリフター21と、充填機12から容器1を受け取って密封機13へと転送する転送スターホイール23と、密封機13から容器1を排出する排出スターホイール24とにより構成されている。
かかる搬送装置の構成は、一例に過ぎず、スターホイールの数や配置等は適宜に定めることができる。
搬送装置を構成する各スターホイールは、充填および密封の所定の処理能力に足り、かつ、遠心力により容器1の開口から内容液がこぼれないように、適切な径に定められている。
【0047】
ガス置換システム10の搬送装置は、共通のベース15(
図2)に支持されており、ガス置換システム10の全体が一体に構成されている。そのベース15は建屋の床に設置される。
充填機12および密封機13を覆う部分チャンバ141は、ベース15上にまとまり良く配置された、ガス置換システム10の搬送装置(回転体18、スターホイール23,24、リフター21)の全体を覆うように箱状に形成され、ベース15に設けられている。
【0048】
上述したように、洗浄機11の注水区間A1で導入された水が溜まった状態で容器1が部分チャンバ142内へと搬入される。
そして、洗浄機11から充填機12へと容器1を転送するスターホイール106により、部分チャンバ142内から部分チャンバ141内へと容器1が搬入される。
部分チャンバ141内で回転体18およびリフター21等により搬送されながら充填および密封を終えた容器1は、排出コンベヤ26により部分チャンバ141外へと排出される。
排出コンベヤ26は、部分チャンバ141に形成された出口14OUTを介して部分チャンバ141の内外を貫通している。排出コンベヤ26上に保持された容器1は、出口14OUTを通り抜け、検査やラベル付け、梱包等の後工程へと移送される。
【0049】
チャンバ14には、容器1を受け入れる入口14INと、容器1が出ていく出口14OUTと、部分チャンバ141内に蓋2を供給するための蓋供給口との3つの開口が設けられている。チャンバ14は、これらの開口以外では密閉されている。
チャンバ14内の密閉度を高めるため、チャンバ14の開口を液体(例えば水)や気体(例えば、空気、炭酸ガス等の置換ガス、チャンバ14内ガス)の流れにより塞ぐこともできる。
例えば、
図3に示すチャンバ14の出口14OUTは、カーテン状の水Wの流れにより塞がれている。容器1よりも上方に位置する吐出口から下方に向けて連続的に吐出される水Wにより、出口14OUTの領域全体に亘って、容器1の搬送方向と直交する面に沿った水Wの流れが形成されている。水Wは、搬送方向と直交する方向に並んだ複数の吐出口、あるいは搬送方向と直交する方向に沿って延びたスリットから下方へと吐出される。
出口14OUTでは容器1の開口が密封されているので、水が容器1内に流入しない。
図3に示すのと同様に、カーテン状に形成された空気流によって出口14OUTを塞ぐこともできる。
部分チャンバ142の壁142Aに設けられた入口14INは、カーテン状の空気流によって塞ぐこともできるし、カーテン状の水Wの流れにより塞ぐこともできる。
【0050】
本実施形態では、壁142Aと同様に部分チャンバ142を区画する壁142Bにも、容器1が通り抜ける図示しない開口部14Sが設けられている。その開口部14Sも、入口14INと同様に空気流や水流により塞がれることが好ましい。
【0051】
さて、容器1内に空気が存在している状態で容器1内に内容液を充填すると、容器1内の空気に含まれる酸素ガスが内容液に溶け込んでしまい、酸素ガスとの接触により内容液の品質が損なわれるおそれがある。また、液面よりも上のスペースであるヘッドスペース1H(
図4)に空気が残存したまま容器1が密封された場合も、内容液に酸素ガスが接触するので同様である。
【0052】
そのため、充填、密封を行うに際して、ガッシング系統17により容器1内の空気を不活性ガス等の置換ガスに置換し、容器1内の酸素ガスを所定の濃度以下にまで除去することが有効である。特に、内容液がビールや発泡酒等のビール飲料である場合は、酸素ガスにより品質が損なわれ易いため、容器1内の酸素ガス濃度を抑えることの要請が強い。
置換ガスとして、典型的には炭酸ガス(CO
2)が用いられており、窒素ガス(N
2)や水蒸気(H
2O)も用いることができる。
具体例としては、ノンガス飲料の酸化防止のためにヘッドスペースを窒素ガスで置換する例や、ノンガス飲料を缶容器に充填する場合に水蒸気、もしくは窒素ガスおよび水蒸気の混合気で置換する例が挙げられる。
本実施形態では、炭酸ガスを用いる。
【0053】
ガス置換システム10には、
図2に示すように、炭酸ガスの供給源として、液体二酸化炭素が充填されたタンク27が備えられており、このタンク27からフィラボウル19を介して供給される炭酸ガスがガッシング系統17により容器1内に吹き込まれる。タンク27は、フィラボウル19内の気相部19Bに接続されている。
【0054】
ガッシング系統17(
図2)は、タンク27から供給される炭酸ガスを吹くノズルと、そのノズルの流路を開閉するバルブとを備えている。これらのノズルおよびバルブの図示は省略する。これらのノズルおよびバルブを充填機12の充填ノズルに一体に設けることができる。
ビールのように炭酸ガスを含む内容液の場合は、充填に際して容器1内を加圧するカウンタ処理や、充填ノズルを液から抜く際に容器1内の圧力を下げるために排気するスニフト処理が行われる。これらの処理に必要な経路やバルブも充填ノズルに一体に設けることができる。
【0055】
本実施形態では、充填機12において、ガッシング系統17によりノンシールガッシングおよびシールガッシングが順に行われる。ノンシールガッシングは、容器1の開口を塞がない状態で行われ、シールガッシングは、充填機12の充填ノズルにより容器1の開口を塞いだ状態で行われる。
ノンシールガッシングにより容器1内の酸素ガス濃度を急速に下げた後、シールガッシングにより容器1内の酸素ガス濃度をより十分に低下させることで、容器1内を炭酸ガスで効率的に置換することができる。
【0056】
さらに、密封機13において、蓋2と容器1との間に炭酸ガスを吹き込み、容器1内のヘッドスペース1Hを炭酸ガスで置換するアンダーカバーガッシングが行われる。
ノンシールガッシング、シールガッシング、およびアンダーカバーガッシングは、ガッシング系統17により、液種に応じて選択的に行うことができる。
ガッシング系統17の配管の構成は、適宜に定めることができる。
【0057】
ガッシング系統17により容器1内に導入された炭酸ガスは、例えば、充填機12から密封機13へと容器1が転送される間に容器1内から漏出する。漏出した炭酸ガスはチャンバ14内に留まるため、チャンバ14内は大気に対して炭酸ガス濃度が高い。
本実施形態のガス置換システム10は、水が入っている容器1をチャンバ14内に搬入し、チャンバ14内で容器1内の水を排出させることにより、大気よりも炭酸ガス濃度が高められているチャンバ14内のガスにより容器1内を置換することを主要な特徴としている。
【0058】
さらに、本実施形態では、容器1内の水を排出させた後に、チャンバ14内でガッシング系統17によるガッシング処理を行う。
ここで、容器1内に水が入っている状態で、容器1内の残余のスペースに対してノンシールガッシングを行ったとしても、そのとき吹き込まれた炭酸ガスは排水時に水で容器1外へと押し出され、容器1内がチャンバ14内のガスで置換されてしまい、容器1内の炭酸ガス濃度が低下してしまうので、ガッシングを行う意味がない。
そして、充填ノズルにより容器1の開口1Aをシールした後は、容器1の排水を行えない。しかし、内容液に水が混ざらないように内容液の充填前に容器1内の水を排出させる必要がある。
以上より、チャンバ14内に搬入された容器1内の水の排出は、ガッシング系統17による最初の処理(本実施形態ではノンシールガッシング)に先立って行われる。
【0059】
チャンバ14内で容器1内の水を排出させると、容器1内から漏出してチャンバ14内に留まっている炭酸ガスが、ガッシング系統17により炭酸ガスが導入される前までに容器1内へと導入される。
【0060】
次に、
図2および
図4を参照し、洗浄機11、充填機12、および密封機13による一連の処理について説明する。
図4に示す凡例のように、四角形で囲まれた矢印は、各処理によって容器1内の炭酸ガス濃度が変化する様子を概念的に示している。
洗浄機11に供給された容器1は、グリッパ103により正立状態P1に把持されながら、ノズル102から噴出される水により洗浄され、それと同時に、ノズル102から容器1内へと満水状態に給水される(ステップS1:給水)。その容器1は、満水状態のままチャンバ14内に搬入され、チャンバ14内でグリッパ103の回転に伴って倒立状態P2へと姿勢が変化することで排水される(ステップS2:排水)。
すると、容器1内の水がチャンバ14内のガスに置換される。容器1内には、チャンバ14内のガスに含まれる炭酸ガス(CO
2)が導入される(
図4に破線で示す矢印参照)。
この後に行われる充填に備えて、グリッパ103により容器1の姿勢を正立状態P3に戻しておく。
【0061】
上記のように、本実施形態では、炭酸ガス濃度が大気に対して高められているチャンバ14内に満水状態の容器1を搬入し、チャンバ14内で排水させることによって容器1内をチャンバ14内に存在するガスで置換している。
もし、水が入っておらず大気により満たされている容器1がチャンバ14内に搬入されるとすれば、容器1と共に容器1内の大気もチャンバ14内に入るが、水が入っている状態の容器1を搬入する本実施形態によれば、容器1だけをチャンバ14内に搬入することができる。つまり、容器1内の大気がチャンバ14内に持ち込まれることによるチャンバ14内の炭酸ガス濃度の低下を抑えることができる。
したがって、本実施形態によれば、チャンバ14内の炭酸ガス濃度を維持しながら、チャンバ14内の炭酸ガスを用いて容器1内を効率よく置換することができる。
【0062】
続いて、充填機12では、以下の処理を行う。
なお、内容液が炭酸ガスを含む場合は、カウンタ処理およびスニフト処理を行うが、それについての説明は省略する。
充填機12に保持された容器1内へと、ガッシング系統17により、タンク27から供給された炭酸ガスを容器1の開口を塞がない状態で吹き込む(ステップS3:ノンシールガッシング)。吹き込まれた炭酸ガスの流れにより容器1内のガスが容器1の開口から流出するとともに、吹き込まれた炭酸ガスの一部も容器1の開口から流出する。
このノンシールガッシングにより容器1内は炭酸ガスで急速に置換され、容器1内の炭酸ガス濃度が上昇する。
【0063】
続いて、容器1の開口を充填ノズルにより塞ぎ、充填ノズルにガス抜き経路を確保しつつ、ガッシング系統17により、容器1内に炭酸ガスを吹き出す(ステップS4:シールガッシング)。ガス抜き路はチャンバ14内へと開放されている。
このシールガッシングにより炭酸ガスによる容器1内の置換がさらに進行し、容器1内の酸素ガスがより十分に除去される。
【0064】
以上により酸素ガスが除去された容器1内に、充填ノズルより内容液を充填する(ステップS5:内容液の充填)。
このとき、容器1内に内容液が充填されると、内容液の容積相当の炭酸ガスはフィラボウル19内の気相部19Bに戻るが、ヘッドスペース1Hの炭酸ガスのスニフト分は充填ノズルのガス抜き路を通じてチャンバ14内へと漏出する。こうして容器1内の炭酸ガスが内容液に置換される。
【0065】
内容液が充填された容器1は、充填機12の回転体18から転送スターホイール23を介して密封機13のリフター21へと渡される(ステップS6:密封機へ転送)。
充填機12から密封機13へと転送される間、容器1内のヘッドスペース1Hに存在する炭酸ガスが容器1の開口から漏出すると、漏出した分だけ、ヘッドスペース1H内の炭酸ガスがチャンバ14内のガスに置換される。
図4の例では、転送時の漏出により、容器1内の炭酸ガス濃度がやや減少する様子を示している。
ここで、チャンバ14内は、容器1から漏出した炭酸ガスによって、大気よりも炭酸ガス濃度が高いので、容器1内からの漏出によるヘッドスペース1H内の炭酸ガス濃度低下が抑えられる。そのため、容器1内に炭酸ガス濃度が残存する状態で密封機13へと容器1が供給される。
【0066】
密封機13では、以下に示す処理を行う。
チャンバ14内に供給された蓋2を容器1の開口に対向するように配置し、ガッシング系統17により蓋2と容器1との間の隙間に炭酸ガスを吹き込む(ステップS7:アンダーカバーガッシング)。すると、炭酸ガスの流れによりヘッドスペース1H内のガスが吹き飛ばされて炭酸ガスに置換される。
アンダーカバーガッシングの直後、あるいは、アンダーカバーガッシングを行いながら、リフター21により持ち上げられた容器1に対して蓋2で二重巻き締めすることにより容器1を密封する(ステップS8:巻き締め)。
【0067】
以上で説明した充填および密封の過程においては、タンク27から供給されガッシング系統17により容器1内に一旦は導入された炭酸ガスが、容器1外、すなわちチャンバ14内へと漏出する。
チャンバ14内へと漏出する炭酸ガスとしては、例えば、ノンシールガッシング(ステップS3)の際に容器1内に吹き込まれて容器1外へと流出する炭酸ガスの余剰分や、シールガッシング(ステップS4)の際のガス抜き路からの排気がある。
ノンシールガッシングおよびシールガッシングにより容器1内に導入された炭酸ガスは、充填(ステップS5)におけるスニフト処理の際や、転送(ステップS6)の際にチャンバ14内へと漏出する。そして、アンダーカバーガッシング(ステップS7)の際には、吹き出された炭酸ガスの多くがチャンバ14内へと漏出する。
つまり、ガス置換システム10における随所で、容器1の周辺に炭酸ガスが存在しており、その炭酸ガスはチャンバ14内に留まる。
【0068】
本実施形態では、容器1内から漏出してチャンバ14内に留まっている炭酸ガスが、チャンバ14内における容器1の排水に伴って容器1内に導入されることとなる(ステップS2)。それによって容器1内は大気よりも炭酸ガス濃度が高められているので、その分だけ、次のガッシングのステップS3およびステップS4で、タンク27から供給される炭酸ガスの使用量を抑えることができる。つまり、ステップS3およびステップS4では、所定の容器1内炭酸ガス濃度に不足する分だけの炭酸ガスを容器1内に導入すればよい。
【0069】
そして、充填機12から密封機13への転送時に容器1のヘッドスペース1H内の炭酸ガスの一部がチャンバ14内のガスと置換されても、チャンバ14内の炭酸ガス濃度が大気よりも高いため、ヘッドスペース1H内に炭酸ガス濃度が残存する。その残存する分だけ、アンダーカバーガッシングのステップS7で、ガッシング系統17による炭酸ガスの使用量を抑えることができる。
【0070】
本実施形態によれば、容器1外へと漏出した炭酸ガスの殆ど全てをチャンバ14内に留め、水が入っている状態でチャンバ14内に搬入された容器1を排水させた後、ガッシング系統17による処理を行うことにより、炭酸ガスの使用量を大幅に削減しながら、容器1内を効率よく置換して容器1内のスペースおよび内容液中の酸素ガス濃度を十分に低減することができる。炭酸ガスの使用量の削減により、製造コストを低減することができるとともに、作業環境の安全性や自然環境保護に寄与できる。
【0071】
しかも、ほぼ密閉されたチャンバ14内でガッシング系統17によりガスが吹き出されることで、チャンバ14内は、大気圧であるチャンバ14外に対して陽圧となるので、外部からチャンバ14内に塵埃や虫等の異物が侵入することを避けられる。
したがって、ガス置換システム10を設置するために、衛生管理が特に徹底された部屋を用意する必要がないので、設備投資を抑えることができるとともに、製造ラインの装置構成を変更する際の自由度が高い。
【0072】
チャンバ14は、容器1内の水の排出から、ガッシング系統17による処理を経て、容器1が密封されるまでの過程に亘り、容器1の搬送路およびその周辺を覆うものであれば足りる。
本実施形態では、洗浄機11においてグリッパ103により容器1内の水が排出される箇所を、チャンバ14により覆われる領域に含めている。
【0073】
排水機構としてのグリッパ103を充填機12の回転体に備えることもできる。その場合は、チャンバ14により充填機12および密封機13が覆われていれば足りる。
【0074】
チャンバ14内に炭酸ガス濃度の勾配がある場合は、例えば、
図5に示すように、ブロワ28により、チャンバ14内で相対的に炭酸ガス濃度が高いガスを流路29へと吸い出し、容器1内の水が排出される位置の近辺に供給するとよい。そうすることで容器1内の炭酸ガスへの置換効率を高めることができる。
【0075】
あるいは、ブロワ28を用いることなく、チャンバ14内を壁で仕切り、壁の両側の圧力差により、炭酸ガス濃度が高いガスを容器1内の水が排出される位置の近辺に供給することもできる。その壁は、例えば、
図1に示す境界線Lの位置に設置することができる。その壁よりも下流側では、容器1内から炭酸ガスの漏出により圧力が相対的に高く、その壁よりも上流側の圧力は相対的に低いので、壁の両側を連通する適宜な経路を通じて、炭酸ガス濃度が高いガスをガッシング前の容器1内へと効率よく送り込むことができる。
【0076】
〔第2実施形態〕
次に、
図6および
図7を参照しながら、本発明の第2実施形態について説明する。
以下、第1実施形態と相違する事項を中心に説明する。第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付している。
第2実施形態では、水の入った容器1を洗浄機40(ロールスルーリンサー)に供給することによって排水させる。
第2実施形態のガス置換システム30は、給水系統50(
図7)と、洗浄機40と、充填機12と、密封機13と、チャンバ14と、ガッシング系統17とを備えている。
給水系統50は、水供給源51と、水供給源51から供給される水を容器1内に注ぐ給水ノズル52を有している。
充填機12から密封機13への容器1の転送は、転送コンベヤ33により行われる。
【0077】
洗浄機40は、複数の金属製のガイド棒(丸棒)からなる枠401(容器の搬送路)と、水を噴出するノズル402(
図7)とを備えており、枠401の中で容器1を自重により転がしながらノズル402から水をシャワーする。
枠401を構成するガイド棒は、上方から下方へと漸次下るように延出している。
この枠401は、ガイド棒がツイストしたツイスト区間TWを有している。容器1は、ツイスト区間TWを自走することにより、姿勢が反転される。
【0078】
ツイスト区間TWは、枠401の上流側と下流側とにそれぞれ配置されている。
上流側のツイスト区間TWから、下流側のツイスト区間TWまでは、洗浄チャンバ403により覆われている。
この洗浄チャンバ403の内側は、充填機12および密封機13を覆う部分チャンバ141の内側と連通している。本実施形態では、洗浄チャンバ403と、部分チャンバ141とから、連続した空間を内包するチャンバ14が構成されている。本実施形態では、チャンバ14内に容器1を受け入れる入口14INは洗浄チャンバ403に設けられている。
【0079】
なお、チャンバ14は、適宜な部分に分割して構成することができる。例えば、洗浄チャンバ403と、充填機12の回転体18およびスターホイール106を覆う部分チャンバと、転送コンベヤ33を覆う部分チャンバと、密封機13のリフター21および排出スターホイール24を覆う部分チャンバとからチャンバ14を構成することもできる。
【0080】
容器1は、供給コンベヤ104により正立状態P1で搬送されながら、給水系統50の給水ノズル52により満水状態に給水される(ステップS1:給水)。
その後、容器1はチャンバ14内に(洗浄チャンバ403内に)搬入されるとともに、上流側のツイスト区間TWで倒立状態P2となる。倒立状態P2となった容器1内からは水が排出される(ステップS2:排水)。
つまり、上流側のツイスト区間TWは、排水機構として機能する。なお、ボトル等と比べて開口1Aが広い容器1内の水を排出させるためには、容器1を倒立させなくても、横倒しの姿勢にすれば足りる。
容器1からの水の排出に伴って、容器1内は、炭酸ガスを含んだチャンバ14内のガスに置換される。
【0081】
容器1は倒立状態のままで枠401内を転がり落ちながら、ノズル402から噴出された水により洗浄される。このとき洗浄水が容器1内に入ってもすぐに自重により排出される。ノズル402は、容器1の開口1A側と底部側との両方に配置されていてもよい。
そして、容器1は、下流側のツイスト区間TWで正立状態P3に戻されてから、充填機12に向けて容器1を搬送するコンベヤ25に渡される。
以降は、第1実施形態(
図4)の処理(S3〜S8)と同様の処理が行われる。
【0082】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、容器1外へと漏出した炭酸ガスの殆ど全てをチャンバ14内に留め、水が入っている状態でチャンバ14内に搬入された容器1を排水させた後、ガッシング系統17による処理を行うことにより、炭酸ガスの使用量を大幅に削減しながら、容器1内を効率よく置換して容器1内のスペースおよび内容液中の酸素ガス濃度を十分に低減することができる。
【0083】
容器1内に給水し、容器1内の水を排出することでチャンバ14内のガスを容器1内に導入することは、チャンバ14内の炭酸ガス濃度が大気に対して高いことを前提として行われる。
したがって、充填機12および密封機13の操業を開始した当初に、チャンバ14内が大気により満たされている場合は、チャンバ14内が所定の炭酸ガス濃度に達するのを待って、給水系統50による容器1内への給水を開始するとよい。
また、操業開始にあたり、予め、チャンバ14内に炭酸ガスを導入してチャンバ14内を大気よりも炭酸ガス濃度が高い状態としておき、操業当初より容器1内への給水を行ってもよい。
【0084】
第2実施形態において、容器1内への給水および容器1内からの排水をもって容器1の洗浄を行うこととし、枠401内を転がる容器1にノズル402からシャワーする洗浄工程を省略することもできる。
この場合、洗浄機40の枠401だけを搬送路として使用し、ノズル402を使用しないようにすることができる。
また、枠401の上流側のツイスト区間TWと下流側のツイスト区間TWとの間の中間区間を廃止し、上流側および下流側のツイスト区間TWを直結することもできる。
【0085】
あるいは、第2実施形態のようなロールスルータイプの洗浄機を第1実施形態の洗浄機11と同様に、容器1の洗浄だけでなく容器1内への給水にも使用し、容器1内に水を注ぐ給水系統50を廃止することもできる。
その場合は、ツイスト区間TWおよびノズル402を適宜な位置に配置することにより、正立状態の容器1内にノズル402から給水が行えるようにする。そして、容器1内に給水される箇所をチャンバ14により覆わないで大気に開放し、水が入っている状態の容器1がチャンバ14内に搬入された後、チャンバ14内のツイスト区間TWで排水されるようにする。
チャンバ14内への搬入時に容器1内が満水状態でなくても、容器1内から排水された分だけ、洗浄チャンバ403内の炭酸ガスを含んだガスに置換されるので、炭酸ガスの使用量低減に寄与することができる。
【0086】
〔第3実施形態〕
次に、
図8を参照し、本発明の第3実施形態を説明する。
第3実施形態では、チャンバ14内に容器1が搬入される箇所で、容器1,1間に水を導入する。
チャンバ14の入口14INが、チャンバ14内に容器1が搬入される箇所に該当する。
本実施形態では、供給コンベヤ104が貫通する入口14INの位置で、給水系統50に備えられた給水ノズル53から水をカーテン状に吐出する。
【0087】
給水ノズル53の好ましい構成について説明する。
給水ノズル53は、複数存在する。それらの給水ノズル53には、容器1内に向けて上方から水を吐出する上方ノズルと、供給コンベヤ104上に並んだ容器1と容器1との間の隙間に向けて、搬送方向と直交する方向から水を吐出する側方ノズルとがあり、これらのノズルにより水流53Fがカーテン状に形成される。
【0088】
容器1が水流53Fをくぐり抜けると、開口1Aから容器1内に水が導入されるとともに、容器1,1間にも水が導入される(ステップS1:給水)。それによって、容器1内の空気が水に置換されるとともに、容器1,1間の空気も水に置換される。容器1内に水が導入されるだけでも、水が入っていない空の容器1がチャンバ14内に搬入される場合と比べてチャンバ14内に入る空気の量を抑えることができているが、容器1,1間にも水が導入されることにより、チャンバ14内に入る空気の量をより抑えることができる。
【0089】
容器1内に導入された水は、容器1と共にチャンバ14内に搬入され、その後、ツイスト区間TWで容器1の姿勢が倒立状態P2に変化することによって容器1外へと排出される(ステップS2:排水)。容器1,1間に導入された水は、そこに水を留める土手等が存在しない限りは、容器1がチャンバ14内に搬入された直後に容器1,1間から流出する。
以降は、第1実施形態(
図4)の処理(S3〜S8)と同様の処理が行われる。
【0090】
第3実施形態では、チャンバ14の入口14INの水流53Fにより、チャンバ14内への容器1の搬入時に、容器1内のみならず、容器1,1間の隙間も水に置換される。しかも、チャンバ14の入口14INが水流53Fによって塞がれる。
そのため、チャンバ14内への容器1の搬入に伴ってチャンバ14内に空気が入ることと、チャンバ14内のガスが入口14INからチャンバ14外へと漏出することを防ぐことができる。
つまり、チャンバ14内の密閉度が高められることとなり、チャンバ14内のガスを無駄なく使用できるとともに、チャンバ14内を確実に陽圧に維持して異物等の侵入を避けることができる。
【0091】
給水ノズル53として、第2実施形態(
図7)の給水ノズル52と同様に、容器1よりも上方から容器1に向けて水を吐出する上方ノズルだけを設けることもできるが、上方ノズルと、搬送方向と直交する方向から吹き出す側方ノズルとを組み合わせることで、容器1,1間に水をより確実に導入することができる。
【0092】
水をカーテン状に吐出するノズルの一式をチャンバ14の入口14INの位置と、それよりも上流の位置とに配置することもできる。
なお、容器1内に導入された水とは異なり、容器1,1間に導入された水はそこに保持されないので、あくまで、入口14INの位置のノズルによって容器1,1間に水を導入する必要がある。
入口14INの位置では容器1,1間だけに水を導入し、それよりも上流の位置では容器1内にだけ水を導入することもできる。
【0093】
第1実施形態における洗浄機11の所定領域を覆う部分チャンバ142の入口14INの位置にも、給水ノズル53により水流53Fを形成することができる。それによって第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0094】
以上で説明した第1〜第3実施形態に係るガス置換システムはいずれも、チャンバ14内でガッシング系統17により炭酸ガスを容器1内に導入するが、本発明において、ガッシング系統17による処理を行うことは必須ではない。
つまり、水が入っている状態の容器1をチャンバ14内に搬入してチャンバ14内で容器1から水を排出させること、それだけによって、チャンバ14内の炭酸ガス濃度を維持しながら効率よくチャンバ14内の炭酸ガスを用いて容器1内を置換することを実現できる。
したがって、第1〜第3実施形態に係るガス置換システムから、ガッシング系統17を除いた構成をも、本発明に含まれる。
より具体的には、容器1内に内容液を充填する充填機12と、充填機12から転送された容器1を密封する密封機13と、充填機12および密封機13を覆い、置換ガスが存在しているチャンバ14と、水が入っている状態でチャンバ14内に搬入された容器1内の水をチャンバ14内で容器1外へと排出させる排液機構とを備えたガス置換システムも、本発明に含まれる。
このガス置換システムにおいて、例えば、チャンバ14内をN
2ガス濃度が高められた雰囲気とし、そのチャンバ14内に、水が入った容器1を搬入してチャンバ14内で排水させることをもって、N
2ガスを含むチャンバ14内のガスで容器1内を置換し、その後は、ガッシング処理をしないで内容液を容器1内に充填することができる。
【0095】
〔本発明の変形例〕
本発明における容器は、缶体に限らず、PETボトルやガラス壜であってもよい。それらの容器は、各々に適合する方法で密封される。
容器を密封するための蓋、つまり、容器1を密封するための包装材料としては、缶体の蓋の他、ボトルのキャップや、容器本体の開口部をシールするフィルム状のものを例示できる。
【0096】
本発明においてチャンバ14内で容器1内から排出されるのに伴って容器1内をチャンバ14内のガスに置換するための媒体である液体は、水に代表されるが、それ以外の液体を用いることもできる。例えば、規定濃度に満たない内容液を容器1内に導入しておき、チャンバ14内で排出させることも許容される。
【0097】
充填される内容液の品質保持のために容器1内に置換ガスを導入する本発明のガス置換システムおよびその方法は、液体が入っている状態でチャンバ14内に搬入された容器1が、チャンバ14内において排液された後、ガッシングされる限りにおいて、適宜に構成することができる。
かかるシステムは、容器1を洗浄する洗浄装置を必ずしも備えていなくてもよく、かかる方法としても、容器1の洗浄工程を必ずしも必要としない。
但し、充填機12の上流工程として設けられている洗浄機11,40等の構成を利用することで、本発明に係る排液機構や給液系統を容易に実現でき、付加する要素が少ないためにガス置換システムのコストを抑えることができる。
【0098】
洗浄機の例として、ロータリーリンサー(第1実施形態)およびロールスルーリンサー(第2実施形態)を挙げたが、その他にも、グリップリンサーや洗びん機等を利用することができる。
グリップリンサーは、容器1を両側からゴムベルトで挟み込んで容器を搬送する搬送路を備えている。その搬送路には、水平な軸を中心に回転する回転体に巻かれたゴムベルトに容器が挟み込まれた状態で容器の姿勢が反転される第1および第2の区間が存在する。このグリップリンサーにおいて正立状態で搬送される容器内にノズルから洗浄水を注ぎ、第1の区間における容器の反転に伴って容器内の水を排出させることができる。その後、容器は、第2の区間において再び反転されることで正立状態に戻され、充填工程に向けて排出される。
ビールびん等に用いられる洗びん機は、複数列に並べたボトルゲージにびんを入れ、ボトルゲージごと洗浄液中に浸漬させることで容器を洗浄する。洗浄後、ボトルゲージの回転によりびんを倒立させることでびん内の洗浄液が排出される。その後、びんは正立状態に戻され、充填工程に向けて排出される。
その他にも、容器の種類に応じて適宜な洗浄機を利用することができる。
【0099】
上述したように、容器1内への給水(注水)および排水によって容器1の洗浄を済ませることもできるため、容器1の洗浄は、その必要に応じて適宜なタイミングで行えばよい。
例えば、第2実施形態のように、給水系統50により容器1内に給水した後に、洗浄機40により容器1を洗浄しながら排水させることができるし、容器1の洗浄後に容器1内に給水し、その後に排水させることもできる。後者の場合で、容器1内に洗浄水が残留するのなら、容器1内の残余のスペースに給水すればよい。つまり、洗浄工程から給水工程に亘り、容器1内に水が溜められることとなる。
あるいは、容器1内への給水後に排水させ、その後に容器1を洗浄することもできる。
容器1の洗浄は、チャンバ14内で行われる必要はない。本発明においては、チャンバ14内に搬入される前までに容器1内に給水された水をチャンバ14内で排水させることが重要である。
「搬入される前までに容器内に給水すること」には、第3実施形態のように、チャンバ14内に容器1を搬入すると同時に給水することも含まれる。
【0100】
本発明において、給水および排水を行うために容器1の姿勢を変化させることは必須ではない。例えば、コンベヤにより正立状態で搬送される容器1内の水をノズルにより吸い出すことによって容器1外へと排出させることができる。
また、本発明において、給水時に容器1の姿勢が正立状態であることは必須ではない。例えば、倒立状態で水が導入された容器1の開口1Aを適宜な部材で塞いだままチャンバ14内に容器1を搬入し、チャンバ14内で開口1Aを開放することで容器1内の水を排出させることも許容される。
【0101】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
容器1に充填される内容液としては、ビール・ビール系飲料に限らず、日本酒・洋酒・コーヒー飲料・果汁飲料・茶飲料といったすべての酒類・飲料を例示することができる。酸化を嫌うそういった酒類・飲料に対して、本発明を適用可能である。
また、容器に充填される液体は、飲料には限らず、置換ガスの使用による品質保持が必要な任意の液体であってよい。