特許第6534522号(P6534522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6534522磁極管を製造する方法、電磁石のための磁極管および電磁石
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6534522
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】磁極管を製造する方法、電磁石のための磁極管および電磁石
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/127 20060101AFI20190617BHJP
   H01F 7/16 20060101ALI20190617BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20190617BHJP
   F16H 61/00 20060101ALI20190617BHJP
【FI】
   H01F7/16 Q
   F16K31/06 305E
   F16K31/06 305D
   F16K31/06 385A
   H01F7/16 E
   F16H61/00
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-258056(P2014-258056)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2015-119185(P2015-119185A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2017年9月11日
(31)【優先権主張番号】10 2013 226 619.7
(32)【優先日】2013年12月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ オット
(72)【発明者】
【氏名】クラウス シュット
(72)【発明者】
【氏名】フリードリヒ モーザー
【審査官】 秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−250682(JP,A)
【文献】 特開2001−143924(JP,A)
【文献】 特表2002−538387(JP,A)
【文献】 特開2003−314731(JP,A)
【文献】 特開2004−150584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/127
F16H 61/00
F16K 31/06
H01F 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁石(26)のための磁極管(10)であって、2つの磁性の磁極管構成部材(12,14)と、両磁極管構成部材(12,14)の間に軸方向で配置された1つの非磁性のリング(16)とを備えた磁極管(10)を製造する方法において、該方法が、
磁極管構成部材(12,14)とリング(16)とを同心的に配置しかつ/またはセンタリングするステップ(S200)と、
磁極管構成部材(12,14)とリング(16)との外側の周壁面(20)を射出成形材料の射出および/または注型材料の注型により当該材料で取り囲むステップ(S300)と
を有しており、
前記同心的に配置しかつ/またはセンタリングするステップ(S200)では、
それぞれ等しい内径(60)を有する磁極管構成部材(12,14)とリング(16)とを使用して、磁極管構成部材(12,14)とリング(16)とをセンタリングマンドレル(18)に同心的に配置しかつ/またはセンタリングする
又は、
磁性の磁極管構成部材(12,14)よりも小さな内径(64)を有するリング(16)を使用して、磁極管構成部材(12,14)とリング(16)とをインナコレットに同心的に配置しかつ/またはセンタリングする
ことを特徴とする、磁極管を製造する方法。
【請求項2】
同心的に配置しかつ/またはセンタリングするステップ(S200)よりも前に、リング(16)の周壁面(20)には複数の溝(58)を加工しかつ/または磁極管構成部材(12,14)の周壁面(20)には複数のローレットを加工する(S100)、請求項1記載の方法。
【請求項3】
電磁石(26)が、自動車における自動変速機の電磁弁に用いられる電磁石である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
電磁石(26)のための磁極管(10)であって、非磁性のリング(16)が、磁極コア(12)と磁気管(14)との間に軸方向で配置されており、磁極コア(12)と、リング(16)と、磁気管(14)とが、互いに同心的に配置されている、電磁石のための磁極管において、
磁極コア(12)と、リング(16)と、磁気管(14)との外側の周壁面(20)が、射出成形材料または注型材料の射出または注型により当該材料で取り囲まれており、
リング(16)が、軸方向で互いに反対の側に設けられた2つの円錐区分(46,48)を有しており、両円錐区分(46,48)が、それぞれ磁極コア(12)および磁気管(14)に設けられた円錐区分(54,56)と協働しており、前記リングと、前記磁極コア(12)と、前記磁気管(14)とに設けられた4つの円錐区分(46,48,54,56)は、それぞれ等しい角度を有していることを特徴とする、電磁石のための磁極管。
【請求項5】
射出成形材料または注型材料が、プラスチックである、請求項記載の磁極管。
【請求項6】
磁極コア(12)と磁気管(14)とが、外側の周壁面(20)に複数のローレットを有しており、かつ/またはリング(16)が、外側の周壁面(20)に複数の溝(58)を有している、請求項4又は5記載の磁極管。
【請求項7】
リング(16)が、軸受け合金から製造されている、請求項からまでのいずれか1項記載の磁極管。
【請求項8】
軸受け合金が、黄銅または青銅である、請求項記載の磁極管。
【請求項9】
磁極コア(12)と、リング(16)と、磁気管(14)とが、それぞれ等しい内径(60)を有している、請求項からまでのいずれか1項記載の磁極管。
【請求項10】
リング(16)が、磁極コア(12)および磁気管(14)よりも小さな内径(64)を有している、請求項からまでのいずれか1項記載の磁極管。
【請求項11】
電磁石(26)が、自動車における自動変速機の電磁弁に用いられる電磁石である、請求項から10までのいずれか1項記載の磁極管。
【請求項12】
請求項記載の磁極管(10)を有する電磁石(26)において、
磁極管(10)と、該磁極管(10)内に配置されたアーマチュア(42)の周壁面との間に、支承シート(62)が設けられていることを特徴とする、電磁石。
【請求項13】
請求項10記載の磁極管(10)を有する電磁石(26)において、
磁極コア(12)と反対の側で、磁極管(10)と、該磁極管(10)内に配置されたアーマチュア(42)の周壁面との間に、滑り支承スリーブ(68)が設けられていることを特徴とする、電磁石。
【請求項14】
磁極管(10)の外側の周壁面(20)に射出成形材料の射出により被着された被覆層(22)の周りに、コイル(30)が配置されている、請求項12または13記載の電磁石。
【請求項15】
コイル(30)が、銅巻線である、請求項14記載の電磁石。
【請求項16】
電磁石(26)が、自動車における自動変速機の電磁弁に用いられる電磁石である、請求項12から15までのいずれか1項記載の電磁石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車における自動変速機の電磁弁に用いられる電磁石のための磁極管であって、2つの磁性の磁極管構成部材と、両磁極管構成部材の間に軸方向で配置された1つの非磁性のリングとを備えた磁極管を製造する方法に関する。
【0002】
さらに、本発明は、特に自動車における自動変速機の電磁弁に用いられる電磁石のための磁極管であって、非磁性のリングが、磁極コアと磁気管との間に軸方向で配置されており、磁極コアと、リングと、磁気管とが、互いに同心的に配置されている、電磁石のための磁極管に関する。
【0003】
さらに、本発明は、本発明の好ましい態様に係る磁極管を有する、特に自動車における自動変速機の電磁弁に用いられる電磁石に関する。
【背景技術】
【0004】
乗用車に用いられる現代の自動変速機では、変速のために、ハイドロリック操作されるクラッチが使用される。このシフト動作がジャークなしに、また、運転者に気づかれることなく実行されるようにするためには、クラッチに加えられるハイドロリック圧を、設定された圧力勾配に相応して、最も高い精度で調整することが必要となる。このためには、電磁操作される圧力調整弁が使用される。この圧力調整弁は、座弁またはスプール弁として形成されていてよい。
【0005】
電磁操作の際には、コイル電流に比例して、ハイドロリック式のスプール弁を操作する電磁力が生じる。高い圧力精度のためには、電磁石が、力レベルの変動が少ない正確な力−電流特性線を有していると有利である。さらに、発生する磁力が、スプール弁に設けられた制御ピストンもしくはソレノイドアーマチュアの位置に主として左右されないことが望ましい。すなわち、電磁石が、可能な限り水平な力−ストローク特性線を有していることも望ましい。アーマチュア支承部における摩擦もしくは磁気回路材料の磁化時のヒステリシスに基づく、運動方向または電流方向に関する力ヒステリシスが回避されることが望ましい。さらに、電磁操作される圧力調整弁を自動変速機に使用する際には、電磁石の力レベルが高いことが所望される。
【0006】
低摩擦の支承を提供するために、独国特許出願公開第102006011078号明細書に基づき、2つの部材から成る磁極管を設けることが公知である。この磁極管は、磁極コアと、肉薄の非磁性の材料から成る支承スリーブとを有している。独国特許第102006015233号明細書に基づき、一体型の磁極管が公知である。この磁極管は、薄く旋削加工された箇所を有している。さらに、独国特許出願公開第102006015070号明細書には、3つの部材から成る磁極管が示されている。この磁極管では、磁気的な短絡を回避するために、2つの磁性の磁極部材の間に非磁性のリングが溶接される。
【0007】
電磁式の操作装置の高い力レベルを達成するためには、磁極管とソレノイドアーマチュアとの間の半径方向のエアギャップを可能な限り小さく形成することが重要となる。さらに、最も少ない偏心でも、非対称的な磁界ひいてはアーマチュア支承部に負荷をかけて摩擦を増加させる横方向力が生じてしまう。したがって、構成部材を可能な限り互いに同心的に配置することが重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102006011078号明細書
【特許文献2】独国特許第102006015233号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102006015070号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、半径方向のエアギャップが可能な限り少ない磁極管を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するために、本発明に係る方法では、該方法が、磁極管構成部材とリングとを、特にセンタリングマンドレルに同心的に配置しかつ/またはセンタリングするステップと、形状接続的に結合するステップ、特に磁極管構成部材とリングとの外側の周壁面を射出成形材料の射出および/または注型材料の注型により当該材料で取り囲むステップとを有している。
【0011】
本発明に係る方法の好ましい態様では、同心的に配置しかつ/またはセンタリングするステップよりも前に、リングの周壁面には複数の溝を加工しかつ/または磁極管構成部材の周壁面には複数のローレットを加工する。
【0012】
本発明に係る方法の好ましい態様では、それぞれ等しい内径を有する磁極管構成部材とリングとを使用する。
【0013】
本発明に係る方法の好ましい態様では、磁性の磁極管構成部材よりも小さな内径を有するリングを使用する。
【0014】
さらに、前述した課題を解決するために、本発明に係る磁極管では、磁極コアと、リングと、磁気管との外側の周壁面が、射出成形材料または注型材料、特にプラスチックの射出または注型により当該材料で取り囲まれている。
【0015】
本発明に係る磁極管の好ましい態様では、リングが、軸方向で互いに反対の側に設けられた2つの円錐区分を有しており、両円錐区分が、それぞれ磁極コアおよび磁気管に設けられた円錐区分と協働している。
【0016】
本発明に係る磁極管の好ましい態様では、磁極コアと磁気管とが、外側の周壁面に複数のローレットを有しており、かつ/またはリングが、外側の周壁面に複数の溝を有している。
【0017】
本発明に係る磁極管の好ましい態様では、リングが、軸受け合金、特に黄銅または青銅から製造されている。
【0018】
本発明に係る磁極管の好ましい態様では、磁極コアと、リングと、磁気管とが、それぞれ等しい内径を有している。
【0019】
本発明に係る磁極管の好ましい態様では、リングが、磁極コアおよび磁気管よりも小さな内径を有している。
【0020】
さらに、前述した課題を解決するために、本発明に係る電磁石では、磁極管と、該磁極管内に配置されたアーマチュアの周壁面との間に、支承シートが設けられている。
【0021】
さらに、前述した課題を解決するために、本発明に係る別の電磁石では、磁極コアと反対の側で、磁極管と、該磁極管内に配置されたアーマチュアの周壁面との間に、滑り支承スリーブが設けられている。
【0022】
本発明に係る電磁石の好ましい態様では、磁極管の、射出成形材料の射出により当該材料で取り囲まれた周壁面の周りに、コイル、特に銅巻線が配置されている。
【0023】
本発明にとって重要な特徴は、さらに、以下の記述および図面に認められる。これらの特徴は、単独でも、種々異なる形で組み合わせても、本発明にとって重要である。なお、これについて、さらに明示的に示すことはしない。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る方法は、
磁極管構成部材とリングとを、特にセンタリングマンドレルに同心的に配置しかつ/またはセンタリングするステップと、
形状接続的に結合するステップ、特に磁極管構成部材とリングとの外側の周壁面を射出成形材料の射出および/または注型材料の注型により当該材料で取り囲むステップと
を有している。
【0025】
本発明では、磁極管構成部材として、有利には、磁極コアと磁気管とを使用することができる。ソレノイドアーマチュアを収容するためには、磁気管が、好ましくは磁極コアと等しい内径を有する貫通孔を有している。磁極管構成部材とリングとの配置は、好ましくは、磁極管もしくはセンタリングマンドレルの中心長手方向軸線に対して同心的に行われる。磁極管構成部材とリングとが、射出成形材料の射出および/または注型材料の注型により当該材料で取り囲まれていると、磁極コアに設けられた止まり穴と、磁気管に設けられた貫通孔と、リングとが、磁極管内で移動可能に配置されるソレノイドアーマチュアを収容するための磁気室を形成している。同心的な配置および/またはセンタリングによって、射出成形での取囲み前に少ない接合遊びを達成することができる。その際、射出成形での取囲みによる形状接続的な結合は、結合された構成部材の以後の運動を阻止することができる。磁気回路に存在するエアギャップは、同心的な配置に基づき小さく保つことができる。特にソレノイドアーマチュアと磁極コアとの間のエアギャップ、すなわち、いわゆる「ストローク段部(Tauchstufe)」における半径方向エアギャップと、可動のソレノイドアーマチュアと磁気管との間の、いわゆる「サブエアギャップ(Nebenluftspalt)」と呼ばれる半径方向エアギャップとを最小限に抑えることができる。したがって、本発明に係る方法によって、「ストローク段部」における半径方向のエアギャップと「サブエアギャップ」とが少ない磁極管を製造することができる。この場合、1つには、高い磁力を実現することができ、もう1つには、低摩擦のアーマチュア支承を提供することができる。なぜならば、磁極管構成部材と非磁性のリングとの偏心に基づく磁気的な横方向力を回避することができるからである。磁気室を画定するアーマチュアガイド面の後加工は回避することができる。なぜならば、熱的な接合法、たとえば溶接による磁極管構成部材とリングとの結合と異なり、構成部材に歪みが生じないからである。
【0026】
本発明に係る方法の有利な改良態様は、同心的に配置しかつ/またはセンタリングするステップよりも前に、リングの周壁面には複数の溝を加工しかつ/または磁極管構成部材の周壁面には複数のローレットを加工することを提案している。これらのローレットおよび/または溝によって、射出成形材料および/または注型材料とのより良好な結合を達成することができる。この態様では、磁性の構成部材に複数のローレットを設けることが有利である。なぜならば、これらのローレットは磁気横断面にほとんど影響を与えないからである。非磁性のリングには、有利には、より簡単に製造することができる溝が設けられていてよい。
【0027】
補足的には、それぞれ等しい内径を有する磁極管構成部材とリングとを使用することが提案される。こうして、磁極管構成部材とリングとを1つのセンタリングマンドレルに上方から簡単に被せ嵌めることができる。したがって、磁極管構成部材とリングとをセンタリングするかもしくは同心的に配置するために、特別な工具は不要となる。磁極管構成部材とリングとが、それぞれ等しい内径を有していると、十分にずれのないアーマチュアガイド面を提供することができる。
【0028】
本発明に係る方法の別の有利な態様は、磁性の磁極管構成部材よりも小さな内径を有するリングを使用することを提案している。この態様では、好ましくは、リングの内径が、磁極管構成部材の内径よりもほんの僅かに小さく選択される。リングの、磁気室の方向に延びる部分は、アーマチュアを磁極管内に支承するための突出した滑り支承区分として使用することができる。この態様では、同心的な配置および/またはセンタリングのステップのために、有利には、道具としてインナコレットが使用される。なぜならば、これによって、それぞれ異なる直径を有する構成部材も互いに同心的に配置することができるからである。この態様の場合、軸受け合金、特に黄銅または青銅から成るリングが使用されると特に好適である。軸受け合金から成るリングによって、支承箇所における摩擦の影響を最小限に抑えることができる。
【0029】
本発明の根底にある問題は、請求項5の特徴を有する、特に自動車における自動変速機の電磁弁に用いられる電磁石のための磁極管によっても解決される。本発明に係る磁極管によれば、磁極コアと、リングと、磁気管との外側の周壁面が、射出成形材料または注型材料、特にプラスチックの射出または注型により当該材料で取り囲まれていることが提案されている。上述したように、同心的な配置によって、磁気回路に存在する「ストローク段部」におけるエアギャップと「サブエアギャップ」とを小さく保つことができる。したがって、本発明に係る磁極管によって、高い磁力と同時に低摩擦のアーマチュア支承を提供することができる。
【0030】
本発明に係る磁極管の有利な改良態様は、リングが、軸方向で互いに反対の側に設けられた2つの円錐区分を有しており、両円錐区分が、それぞれ磁極コアおよび磁気管に設けられた円錐区分と協働、つまり、相互作用していることを提案している。このために、好ましくは、リングと、磁極コアと、磁気管とに設けられた円錐区分が、それぞれ等しい角度を有している。構成部材をセンタリングしかつ/または同心的に配置する場合には、円錐区分が互いに内外で差し合わされるかもしくは係合することができ、射出成形材料の射出および/または注型材料の注型による形状接続的な結合後、半径方向の高い強度を保証することができる。したがって、半径方向にかけられる負荷が高い場合でも、センタリング状態からの個々の磁極管構成部材の逸脱を回避することができる。
【0031】
さらに、磁極コアと磁気管とが、外側の周壁面に複数のローレットを有しており、かつ/またはリングが、外側の周壁面に複数の溝を有していると有利である。すでに説明したように、ローレットおよび/または溝を加工することによって、注型材料、たとえばプラスチックとのより良好な結合を行うことができる。
【0032】
さらに、リングが、軸受け合金、特に黄銅または青銅から製造されていると有利である。
【0033】
好ましくは、磁極コアと、中間片と、磁気管とが、それぞれ等しい内径を有している。この場合、磁極管構成部材とリングとは、製造プロセスに対して1つのセンタリングマンドレルに簡単に被せ嵌めることができる。
【0034】
本発明に係る磁極管の別の有利な態様は、中間片が、磁極コアおよび磁気管よりも小さな内径を有していることを提案している。軸受け合金から成るリングの使用時には、リングの、磁気室内に延びる区分を、ソレノイドアーマチュアを磁極管内に支承するための滑り支承区分として使用することができる。
【0035】
本発明の根底にある問題は、請求項11の特徴を有する、電磁弁に用いられる電磁石によっても解決される。このためには、本発明に係る電磁石が、磁極管と、この磁極管内に配置されたアーマチュアの外周面との間に、支承シートを有している。それぞれ等しい内径で磁極管構成部材とリングとを同心的に配置する場合でも、アーマチュアガイド面には、射出および/または注型の前の接合遊びに関連したずれが生じてしまうので、好ましくはプラスチックもしくはプラスチック・ガラス織物から製造された支承シートの可撓性によって、アーマチュアガイド面におけるずれを補償することができる。
【0036】
さらに、本発明の根底にある問題は、請求項12の特徴を有する、電磁弁に用いられる電磁石によっても解決される。このような本発明に係る電磁石は、磁極コアと反対の側で、磁極管と、この磁極管内に配置されたアーマチュアの周壁面との間に、滑り支承スリーブを有している。リングが磁極管構成部材よりも小さな内径を有する磁極管の使用時には、リングの、磁気室内に延びる部分を、ソレノイドアーマチュアの第1の支承点として使用することができる。この場合、滑り支承スリーブは第2の支承点として使用することができる。したがって、簡単にかつ廉価に形成することができる二点支承を達成することができる。
【0037】
さらに、磁極管の、射出成形材料の射出により当該材料で取り囲まれた周壁面の周りに、コイル、特に銅巻線が配置されていると有利である。磁極管の、射出成形材料の射出により当該材料で取り囲まれた周壁面は、コイル枠体として使用することができる。肉厚のコイル枠体の省略に基づき、銅巻線に対して多くのスペースを提供することができる。これによって、より高い磁力を同じく達成することができる。
【0038】
本発明の更なる詳細および有利な態様は、図面に示した方法および図面に示した実施の形態を詳細に記載しかつ説明した以下の記述から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明に係る方法のフローチャートである。
図2】本発明に係る磁極管を製造するための本発明に係る方法の個々の方法ステップを示す図である。
図3】電磁弁に用いられる本発明に係る電磁石の第1の実施の形態を示す図である。
図4】電磁弁に用いられる本発明に係る電磁石の第2の実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0041】
図1には、図2に示した方法ステップに対するフローチャートが示してある。第1のステップS100では、図2aに示した構成部材の周壁面に、図2には示していないものの、図3および図4に示した複数の溝および/またはローレットが加工される。
【0042】
図2によれば、磁極管10が、磁極コア12と磁気管14とを有している。この磁極コア12と磁気管14との間には、非磁性のリング16が配置されている。
【0043】
第2のステップS200では、磁気管14と、リング16と、磁極コア12とが、図2bに示したセンタリングマンドレル18に差し被せられ、その際、互いに同心的に配置される。その後、ステップS300において、磁極コア12と、磁気管14と、リング16との外側の周壁面20が、射出成形材料または注型材料、たとえばプラスチックの射出および/または注型によって当該材料で取り囲まれる。このステップは、図2cにも示してある。図2dには、外側の周壁面20に被着された被覆層または注型層22を備えた、ステップS300後の磁極管10が示してある。この図2dに示した磁極管10は、好ましくは、この磁極管10の内側に形成されたアーマチュアガイド面24に、すなわち、磁極コア12の内径と、磁気管14の内径と、リング16の内径との間に、ずれを有していない。磁極コア12と、磁気管14と、リング16との高い同心度に基づき、アーマチュアガイド面24は、このアーマチュアガイド面24と、磁極管10内に移動可能に配置することができるソレノイドアーマチュア(図2には示していない)との間に、半径方向の小さなエアギャップを達成することができるように形成することができる。これによって、1つには、高い磁力レベルを達成することができ、もう1つには、低摩擦のアーマチュア支承を達成することができる。
【0044】
図3には、本発明の第1の実施の形態に係る磁極管10を備えた、電磁弁に用いられる本発明の第1の実施の形態に係る電磁石26の断面図の一部が示してある。この電磁石26内には、その中心長手方向軸線28に対して同心的に磁極管10が配置されている。この磁極管10は、磁極コア12と磁気管14とを有している。この磁極コア12と磁気管14とは共に磁性の材料から製造されている。さらに、磁極管10は非磁性のリング16を有している。磁極コア12と、磁気管14と、リング16との外側の周壁面20には、被覆層または注型層22が被着されている。この被覆層または注型層22は、銅巻線の形態のコイル30が巻き付けられて配置された巻枠として働く。コイル30は外側で円筒状のハウジング32によって画定される。このハウジング32は、図3の右側でカバー34によって閉鎖されている。このカバー34と反対の側では、ハウジング32内に磁束ディスク36が少なくとも部分的に押し込まれている。この磁束ディスク36は中心の開口(符号なし)を有している。この開口内には、弁エレメントに対する操作ピン38が摺動可能にガイドされている。この操作ピン38は、磁極管10内にもしくはアーマチュアガイド面24における開口40内に支承されたソレノイドアーマチュア42もしくはソレノイドアーマチュア42に結合されたアーマチュアピン44によって操作可能である。リング16は、磁極コア12と磁気管14とに面した側に、それぞれ1つの円錐区分46,48を有している。円錐区分46は、中心長手方向軸線28に対して約30°の角度50を成して延びている。円錐区分48は、中心長手方向軸線28に対して同じく約30°の角度52を成して延びている。磁極コア12は、リング16に面した側に同じく円錐区分54を有している。この円錐区分54の角度は、円錐区分46の角度50にほぼ対応している。さらに、磁気管14は、リング16に面した側に同じく円錐区分56を有している。この円錐区分56の角度は、円錐区分48の角度52にほぼ対応している。磁極コア12と磁気管14との外側の周壁面には、複数のローレット(図示せず)が加工されている。さらに、リング16の外側の周壁面には、複数の溝58が加工されている。これらのローレットおよび/または溝58は、磁極コア12、磁気管14およびリング16を被覆層または注型層22とより良好に結合するために役立つ。円錐区分54,56と協働、つまり、相互作用する円錐区分46,48に基づき、被覆層または注型層22の被着時に磁極管10の半径方向の高い強度を達成することができる。図3に示した磁極管10は、磁気室内にほぼ一定の直径60を有している。磁極管10の製造時の接合遊びに基づく磁極コア12と、磁気管14と、リング16との間の万が一の構成部材ずれを補償するためには、磁気室内で磁極管10とソレノイドアーマチュア42との間に配置された支承シート62が設けられている。この支承シート62は、特にプラスチックもしくはプラスチック・ガラス織物から製造されている。図3に示した電磁石26の運転中には、コイル30の通電に際して、ソレノイドアーマチュア42が、高い磁力と少ない摩擦とを伴って磁気室内で往復運動することができ、その際、アーマチュアピン44を介して操作ピン38に作用することができる。
【0045】
図4には、本発明の第2の実施の形態に係る磁極管10を備えた、電磁弁に用いられる本発明の第2の実施の形態に係る電磁石26が示してある。図3に示した実施の形態に相応の構成部材には、相応の符号が付してある。磁極管10のリング16は、図3に示した磁極管10のリング16と異なり、直径60、すなわち、磁極コア12および磁気管14の直径よりも僅かに小さく寸法設定された内径64を有している。図4に示した磁極管10のリング16は、軸受け合金、特に青銅または黄銅から製造されている。より小さな内径64に基づき、磁気室内に、ソレノイドアーマチュア42に対する全周にわたって延びる支承箇所66を提供することができる。さらに、磁極コア12と反対の側では、磁気管14内に滑り支承スリーブ68が押し込まれている。この滑り支承スリーブ68は、ソレノイドアーマチュア42に対する第2の支承箇所70を提供している。したがって、磁極管10の構成部材同士の間にずれが生じることなしに、2点支承を簡単に提供することができる。図4に示した磁極管10によって、アーマチュアガイド面24とソレノイドアーマチュア42との間の半径方向エアギャップをさらに一層減少させることができる。なぜならば、図4に示した実施の形態では、支承シート62の配置を省略することができるからである。
【符号の説明】
【0046】
10 磁極管
12 磁極コア
14 磁気管
16 リング
18 センタリングマンドレル
20 周壁面
22 被覆層または注型層
24 アーマチュアガイド面
26 電磁石
28 中心長手方向軸線
30 コイル
32 ハウジング
34 カバー
36 磁束ディスク
38 操作ピン
40 開口
42 ソレノイドアーマチュア
44 アーマチュアピン
46 円錐区分
48 円錐区分
50 角度
52 角度
54 円錐区分
56 円錐区分
58 溝
60 直径
62 支承シート
64 内径
66 支承箇所
68 滑り支承スリーブ
70 支承箇所
図1
図2
図3
図4