(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タービンにより発電機を駆動する第1の運転モード、前記タービンにより前記発電機を駆動しない第2の運転モードの何れかの運用モードを実行可能な発電設備の所定期間に亘る運転計画を策定する、発電設備の運転計画の策定システムであって、
予想売電価格が発電コストよりも高いか否かを判定する判定手段と、
前記所定期間の内、前記予想売電価格が前記発電コスト以下の場合、前記第1の運転モード,前記第2の運転モードのそれぞれについて、メンテナンス損失を含む損失指標を算出し、前記損失指標の小さい運用モードで前記発電設備が動作するように前記運転計画を策定する策定手段とを備え、
前記第2の運転モードは、前記タービンと前記発電機とを断切した状態で運転する無負荷運転モードと、前記タービンを停止する停止モードとを含み、
前記策定手段は、
前記第1の運転モード及び前記無負荷運転モードのそれぞれの前記メンテナンス損失を、第1重み付け係数を使用して決定し、
前記停止モードの前記メンテナンス損失を、第2重み付け係数を使用して決定し、
前記発電設備を構成する部品の起動回数についての寿命に対する前記発電設備の累積起動回数の比率が大きくなるほど、前記第1重み付け係数に対して前記第2重み付け係数を大きくし、
前記発電設備を構成する部品の運転時間についての寿命に対する前記発電設備の累積運転時間の比率が大きくなるほど、前記第2重み付け係数に対して前記第1重み付け係数を大きくする
ことを特徴とする、発電設備の運転計画策定システム。
タービンにより発電機を駆動する第1の運転モード、前記タービンにより前記発電機を駆動しない第2の運転モードの何れかの運用モードを実行可能な発電設備の所定期間に亘る運転計画を策定する、発電設備の運転計画の策定システムであって、
予想売電価格が発電コストよりも高いか否かを判定する判定手段と、
前記所定期間の内、前記予想売電価格が前記発電コスト以下の場合、前記第1の運転モード,前記第2の運転モードのそれぞれについて、損失指標を算出し、前記損失指標の小さい運用モードで前記発電設備が動作するように前記運転計画を策定する策定手段とを備え、
前記第1の運転モードに対応する前記損失指標は、前記予想売電価格と前記発電コストとの差分である売電損失を含み、
前記第2の運転モードに対応する前記損失指標は、前記発電機を駆動しないことにより生じる損失である運用損失を含み、
前記予想売電価格として、最低予想売電価格,平均予想売電価格及び最高予想売電価格の三つの価格を使用し、
前記判定手段は、前記最低予想売電価格,前記平均予想売電価格及び前記最高予想売電価格のそれぞれについて、前記発電コストとの比較を行って、前記予想売電価格が前記発電コストよりも高いか否かを判定し、
前記策定手段は、前記最低予想売電価格,前記平均予想売電価格及び前記最高予想売電価格のそれぞれについて、前記運用モードの中から、損失指標の最も少ない運用モードを選択する選択制御を行うことで、前記所定期間における仮運転計画を策定し、前記最低予想売電価格に基づく第1仮運転計画と、前記平均予想売電価格に基づく第2仮運転計画と、前記最高予想売電価格に基づく第3仮運転計画とを合成して、前記運転計画を策定する
ことを特徴とする、発電設備の運転計画策定システム。
前記策定手段は、前記第1仮運転計画,前記第2仮運転計画及び前記第3仮運転計画のそれぞれにおいて同じ時刻に対して選択されている前記運用モードの中から、最も多く選択されている前記運用モードを採用することで、前記合成を行う
ことを特徴とする、請求項3記載の発電設備の運転計画策定システム。
前記策定手段は、前記第1仮運転計画,前記第2仮運転計画及び前記第3仮運転計画のそれぞれにおいて同じ時刻に対して選択されている前記運用モードが何れも異なる場合には、前記第2仮運転計画において選択されている前記運用モードを採用することで、前記合成を行う
ことを特徴とする、請求項4記載の発電設備の運転計画策定システム。
タービンにより発電機を駆動する第1の運転モード、前記タービンにより前記発電機を駆動しない第2の運転モードの何れかの運用モードを実行可能な発電設備の所定期間に亘る運転計画を策定する、発電設備の運転計画の策定方法であって、
予想売電価格が発電コストよりも高いか否かを判定する判定工程と、
前記所定期間の内、前記予想売電価格が前記発電コスト以下の場合、前記第1の運転モード,前記第2の運転モードのそれぞれについて、メンテナンス損失を含む損失指標を算出し、前記損失指標の小さい運用モードで前記発電設備が動作するように運転計画を策定する策定工程とを備え、
前記第2の運転モードは、前記タービンと前記発電機とを断切した状態で運転する無負荷運転モードと、前記タービンを停止する停止モードとを含み、
前記策定工程では、
前記第1の運転モード及び前記無負荷運転モードのそれぞれの前記メンテナンス損失を、第1重み付け係数を使用して決定し、
前記停止モードの前記メンテナンス損失を、第2重み付け係数を使用して決定し、
前記発電設備を構成する部品の起動回数についての寿命に対する前記発電設備の累積起動回数の比率が大きくなるほど、前記第1重み付け係数に対して前記第2重み付け係数を大きくし、
前記発電設備を構成する部品の運転時間についての寿命に対する前記発電設備の累積運転時間の比率が大きくなるほど、前記第2重み付け係数に対して前記第1重み付け係数を大きくする
ことを特徴とする、発電設備の運転計画策定方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
以下に示す各実施形態では、発電設備の運転計画策定システムを、一日前市場の入札に際して発電設備の24時間(所定期間)に亘る運転計画を策定するのに適用した例を説明する。
【0018】
なお、以下に示す各実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。以下の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
【0019】
[1.第1実施形態]
[1−1.構成]
本発明の第1実施形態に係る発電設備の運転計画策定システムの全体構成を、
図1〜5を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態の発電設備の運転計画策定システムの構成を示す機能ブロック図である。
図2は、縦軸を電力単価とし横軸を時間とするグラフに、予想売電価格ラインL_Pe(予想売電価格Pe)及び発電コストCpをプロットするとともに、運転計画を並べて示す図である。
図3は、売電運転モードにおいて、予想売電価格Pe,発電コストCp,発電負荷Le及びタービン回転速度ωtと、損失指標Jの計算式とを並べて示す図である。
図4は、無負荷運転モードにおいて、予想売電価格Pe,発電コストCp,発電負荷Le及びタービン回転速度ωtと、損失指標Jの計算式とを並べて示す図である。
図5は、停止モードにおいて、予想売電価格Pe,発電コストCp,発電負荷Le及びタービン回転速度ωtと、損失指標Jの計算式とを並べて示す図である。
【0020】
本実施形態の発電設備の運転計画策定システム(以下、単に策定システムともいう)1は、
図1に示すように、策定装置2と、策定装置2に各種の情報を入力する入力手段3と、策定装置2から各種情報を出力する表示手段4とを備えて構成されている。
なお、入力手段3や表示手段4は、策定装置2とインターネットなどの通信回線を介して接続するようにしても良い。
【0021】
策定装置2は、予想売電価格設定手段21と、判定手段22と、策定手段23と、記憶手段29とを備えて構成されている。記憶手段29には、予想売電価格設定手段21や、判定手段22や、策定手段23の制御に必要な各種プログラムやデータが記憶されている。本実施形態では、策定装置2は単一の装置により構成されている(すなわち、予想売電価格設定手段21,判定手段22,策定手段23及び記憶手段29は、同一装置の制御機能により構成されている)が、これに限定されない。例えば、予想売電価格設定手段21,判定手段22,策定手段23及び記憶手段29を、複数の装置にまたがって構成し、これらの複数の装置をインターネットなどの通信回線を介して接続するようにしても良い。
以下、予想売電価格設定手段21,判定手段22及び策定手段23について説明する。
【0022】
予想売電価格設定手段21は、過去の実績に基づいて予測対象日(ここでは入札翌日)における予想売電価格ラインL_Peを予測するものである。単位電力量当たりの予想売電価格Peは時間によって変動し、予想売電価格ラインL_Peとは予想売電価格Peの24時間の推移を表している。ここでは、予想売電価格ラインL_Peは、1時間刻みで推定した予想売電価格Peを繋いで作成されたステップグラフとなっている(
図2参照)。予想売電価格Peは、過去の実績における平均値をベースにして、これを予測対象日における予想気温や予想天気によって適宜修正されたものである。
【0023】
なお、予想売電価格設定手段21は必須ではなく、外部から予想売電価格情報を取得して、この取得した情報を記憶手段29に記憶させるようにしても良い。
【0024】
判定手段22は、時間毎に、予想売電価格Peと、単位電力量当たりの発電コストCpとの比較を行って、予想売電価格Peが発電コストCpよりも高いか否かを判定する。発電コストCpは、発電設備の種々の仕様(発電設備の形式,使用燃料及びタービン駆動源の種類など)に応じて決まるものである。ここでは、発電コストCpは、入力手段3から適宜入力されて記憶手段10に記憶される。発電コストCpが長期に亘って一定であることが予想される場合には、発電コストCpを予め記憶手段10に定数として記憶させておくようにしても良い。
【0025】
策定手段23は、単位時間毎(ここでは1時間毎)に発電設備の運用モード(以下、単にモードともいう)を選択する選択制御を行うことで24時間(所定期間)に亘る運転計画を策定するものである。
【0026】
ここで、発電設備の運用モードについて説明する。発電設備は、タービンにより発電機を駆動して発電を行うものであり、ここでは、ガスタービン,排ガスボイラ,蒸気タービン及び発電機を備えたガスタービンコンバインドサイクル発電プラント(GTCC)である。以下の説明では、ガスタービン及び蒸気タービンをまとめてタービンともいう。
【0027】
発電設備が選択し得る運用モードには、発電運転モードと、無負荷運転モードと、停止モードとの3つの運用モードがある。
発電運転モードとは、タービンを発電機とを接続した状態で運転する(すなわち発電を行う)運用モードである
。発電運転モードでは発電を行うので売電が可能である。したがって、以下、発電運転モードを売電運転モードという。
無負荷運転モードとは、タービンを発電機から断切した状態で運転する(すなわち負荷が掛らない状態でタービンを運転させる)運用モードである。無負荷運転モードでは発電機は駆動されないので(発電しないので)売電はできない。
停止モードは、ガスタービンへの燃料供給を停止してタービンひいては発電機を停止する運用モードである。停止モードでは、発電機は停止しているので(発電しないので)売電はできない。
【0028】
以下、
図2を参照して、策定手段23について具体的に説明する。
策定手段23は、判定手段22の比較結果に基づいて、予想売電価格Peが発電コストCpよりも高い時間帯(すなわち発電すれば収益が見込める収益期間te_p)については、運用モードとして売電運転モードを選択する。
図2に示す例では、7時〜17時及び18時〜20時の各収益期間te_pについて売電運転モードが選択される。
【0029】
一方、策定手段23は、判定手段22の比較結果に基づいて、予想売電価格Peが発電コストCp以下である時間帯(すなわち発電すると損失が生じる損失期間te_r)については、下式(1)より算出される損失指標Jに基づいて、売電運転モード,無負荷運転モード及び停止モードの何れかを運用モードに選択する。
【0030】
具体的には、売電運転モードを行った場合,無負荷運転モードを行った場合及び停止モードを行った場合(発電設備を停止した場合)の3つの場合について、下式(1)により、売電損失J1,メンテナンス損失J2及び売電に寄与しない運用損失(以下、単に運用損失という)J3を使用して損失指標Jをそれぞれ算出する。そして損失指標Jが最も小さい運用モードを選択する。
損失指標J=売電損失J1+メンテナンス損失J2+運用損失J3 ・・・(1)
【0031】
ここで、売電損失J1とは、売電を行った場合に、発電コストCpよりも予想売電価格Peのほうが低いために生じる損失(いわゆる逆ザヤ損失)である。メンテナンス損失J2とは、部品の消耗によるコスト増などによる損失である。運用損失とは、起動時や無負荷運転時など売電(発電)に寄与しない時に消費する燃料費等である。
【0032】
図2に示す例では、0時〜7時,17時〜18時及び20時〜24時の3つの時間帯については、策定手段23により、損失期間te_rであるとして、各損失期間te_r毎に損失指標Jに基づいて運用モードが選択される。この結果、0時〜7時については停止モードが選択され、17時〜18時については、売電運転モードが選択され、20時〜24時については停止モードが選択されている。その他の収益期間te_pについては、運用モードとして売電運転モードが選択されている。
【0033】
つまり、
図2に示す例では、0時〜7時については停止モード、7時〜20時については売電運転モード及び20時〜24時については停
止モードが設定された24時間の運転計画100が策定されている。
なお、
図2に示す運転計画が策定された場合には、通常、発電を行う7時〜20時について入札を行い、それ以外の時間については入札しない。
【0034】
以下、
図3〜5を参照して、売電運転モード,無負荷運転モード及び停止モードにおける損失指標Jの計算についてさらに説明する。
先ず、売電運転モードについて
図3を参照して説明する。予想売電価格Peが発電コストCpよりも安くなる損失期間te_rにおいて売電運転モードが選択される場合は、ガスタービン(GT)の運転による発電機の駆動が継続されタービン回転速度ωt及び発電負荷Leは一定値以上の値となる。このため、起動時や無負荷運転に伴うコストである運用損失J3が発生することはない。したがって、売電運転モードにおける損失指標Jは、売電損失J1とメンテナンス損失J2との和となる。
【0035】
より具体的に説明すると、損失指標Jは、下式(2)〜(4)により、単位発電量当たりの損失ΔC(=発電コストCp−予想売電価格Pe),損失期間te_rにおける発電負荷Le,CIを行うまでのインターバルINT_CI,CIに係る費用C_CI,TIを行うまでのインターバルINT_TI,TIに係る費用C_TI,MIを行うまでのインターバルINT_MI,MIに係る費用C_MI及び損失期間te_rの時間Δt(=損失期間te_rの終了時刻t2−開始時刻t1)を使用して演算される。
J=J1+J2 ・・・(2)
【数1】
【数2】
【0036】
ここで、CIとはコンバスタインスペクション(Combustor Inspection)と呼ばれる燃焼機器廻りについての点検であり、燃焼機器廻りのパーツ(CIパーツ)の補修や交換が行われる。TIとはタービンインスペクション(turbine Inspection)と呼ばれるタービン廻りについての点検であり、タービン廻りのパーツ(TIパーツ)の補修や交換が行われる。MIとはメジャーインスペクション(Major Inspection)と呼ばれる発電設備全体の点検であり、発電設備全体のパーツ(MIパーツ)の補修や交換が行われる。
【0037】
インターバルとは累積運転時間による使用制限のことであり、その累積運転時間になると点検による補修または交換を行わなければならない。インターバルはCI,TI及びMIの順に短く(INT_CI<INT_TI<INT_MI)、費用(パーツの補修費用や交換費用)はCI,TI及びMIの順に安い(C_CI<C_TI<C_MI)。
上式(3)は、時刻t1〜時刻t2までの時間Δt(すなわち損失期間te_r)と、発電コストCpと予想売電価格Peとの差額であるΔCにより規定される斜線領域において発生する売電損失を算出するものである。
上式(4)は、時刻t1〜時刻t2までの時間Δt(すなわち損失期間te_rの長さ)の各点検のインターバルに占める比と、各点検に要する費用とを乗じることで、この時間Δtにおける潜在的なメンテナンス損失を算出するものである。
【0038】
次に、無負荷運転モードについて
図4を参照して説明する。損失期間te_rにおいて、無負荷運転モードが選択された場合には、発電が行われない(発電負荷Leは0(零)になる)ので売電が行われることはない。このため、売電損失J1は発生しない。
したがって、無負荷運転モードにおける損失指標Jは、メンテナンス損失J2と運用損失J3との和となる。
【0039】
より具体的に説明すると、無負荷運転モードにおける損失指標Jは、下式(5)〜(7)により、点検インターバルINT_CI,INT_TI,INT_MI、点検に係る費用C_CI,C_TI,C_MI及び損失期間te_rの時間Δt(つまり、無負荷運転時間)、無負荷運転時の短時間当たりの燃料消費量F_waitと、燃料単価Fee_fuelを使用して演算される。
J=J2+J3 ・・・(5)
【数3】
J3=F_wait×Δt×Fee_fuel ・・・(7)
燃料消費量F_waitはタービン回転速度ωtと比例関係にあり、上式(7)より算出される運用損失J3は
図4の斜線の領域の大きさと相関する。
なお、上式(6)は上式(4)と同一の式であるので説明を省略する。
【0040】
次に、停止モードについて
図5を参照して説明する。損失期間te_rにおいて、停止モードが選択された場合には、発電が行われない(発電負荷Leは0(零)になる)ので売電が行われることはない。このため、売電損失J1は発生しない。
したがって、停止モードにおける損失指標Jは、メンテナンス損失J2と運用損失J3との和となる。
ここで、発電設備を停止することは、その後のガスタービンの起動が前提となり、停止モードにおけるメンテナンス損失J2と運用損失J3とは何れも起動に着目した損失である。
【0041】
以下、停止モードにおけるメンテナンス損失J2と運用損失J3について説明する。
先ず、メンテナンス損失J2について説明する。メンテナンス損失J2は発電設備を構成する部品の寿命の消費の速さに相関するものである。部品の寿命の消費に関する制限には、累積運転時間による制限と、累積起動回数による制限とがある。売電運転モードと無負荷運転モードとにおけるメンテナンス損失J2は、運転時間の制限に関するものであったのに対し、停止モードにおけるメンテナンス損失J2は、起動回数の制限に関するものである。
【0042】
次に、運用損失J3について説明する。
図5からも明らかなように、ガスタービンを起動してから、タービン回転速度ωtが安定するまでには時間が掛かり、発電負荷Leが安定するまでにはさらに時間が掛かる。したがって、起動から発電負荷Leが安定するまでに必要とされる燃料量(以下、起動時燃料量という)が、停止モードにおける運用損失J3となる。
【0043】
より具体的に説明すると、停
止モードにおける損失指標Jは、下式(8)〜(10)により、CIを行うまでの制限起動回数Strt_CI,CIに係る費用C_CI,TIを行うまでの制限起動回数Strt_TI,TIに係る費用C_TI,MIを行うまでの制限起動回数Strt_MI,MIに係る費用C_MI,起動時燃料量F_strt及び燃料単価Fee_fuelを使用して演算される。
J=J2+J3 ・・・(8)
【数4】
J3=F_strt×Fee_Fuel ・・・(10)
【0044】
[1−2.フローチャート]
本実施形態の発電設備の運転計画の策定方法(以下、単に策定方法ともいう)について、
図6を参照して説明する。
図6は、本実施形態の発電設備の運転計画の策定方法を説明するための模式的なフローチャートである。
【0045】
ステップS1(判定工程)では、予想売電価格Peと発電コストCpとの比較により、24時間の内、予想売電価格Peが発電コストCpよりも高い収益期間についてはステップS6に進んで売電運転モードが選択される。一方、予想売電価格Peが発電コストCp以下の損失期間については、ステップS2に進む。ステップS2では、売電運転モード,無負荷運転モード及び停止モードのそれぞれのモードを運用モードとして選択した場合の損失指標Jを計算し、損失指標Jが最小であった運用モードがこの損失期間の運用モードとして選択される。すなわち、この損失期間の運用モードとして、損失指標Jが最小の運用モードが売電運転モードであった場合はステップS3に進んで売電運転モードが選択され、損失指標Jが最小であった運用モードが停止モードであった場合はステップS4に進んで停止モードが選択され、損失指標Jが最小であった運用モードが無負荷運転モードであった場合はステップS5に進んで無負荷運転モードが選択される。すなわち、ステップS2〜S6により、本実施形態の策定工程が構成される。
【0046】
[1−3.効果]
第1実施形態の策定システム(策定方法)によれば、予想売電価格Peが発電コストCpよりも高い収益期間については売電運転モードが選択され、予想売電価格Peが発電コストCp以下の損失期間については、売電運転モード,無負荷運転モード及び停止モードの中から最も損失指標の少ない運用モードが選択される。
損失指標は、売電損失に加えて、メンテナンス損失及び売電に寄与しない運用損失を考慮したものであるから、メンテナンス損失により寿命消耗による潜在的な損失が考慮され、運用損失により、売電には寄与しない再起動時や無負荷運転時の運用による損失が考慮されて、損失期間における運用モードが選択される。したがって、利益性の高い運転計画を策定できる。
【0047】
[2.第2実施形態]
[2−1.構成]
本発明の第2実施形態に係る発電設備の運転計画策定システム(策定方法)を、
図7を参照して説明する。
図7(a),(b)は本発明の第2実施形態に係る重み係数を決定するためのマップである。
【0048】
本発明の第2実施形態の発電設備の運転計画策定システム(策定方法)は、第1実施形態に係る発電設備の運転計画策定システム(策定方法)に対して、策定手段(策定方法)の機能が追加されている。以下、この点について説明する。
第1実施形態で前述したように、部品の寿命の消耗に関する制限には、累積運転時間による制限と累積起動回数による制限とがある。この制限の内、どちらか一方が制限値に達した場合には、点検を行って補修又は交換を行わなければならない。
このため、累積運転時間が制限時間に達した場合には、累積起動回数が制限回数に対して余裕がある場合でも補修又は交換を行わなければならない。同様に、累積起動回数が制限回数に達した場合には、累積運転時間が制限時間に対して余裕がある場合でも補修又は交換を行わなければならない。
したがって、累積運転時間と累積起動回数とが同時に各制限に達するのが理想的な運用である。このため、本実施形態では、累積運転時間と累積起動回数とを共に制限値近くまで使いきることができるような制御を行っている。
以下、累積運転時間や累積起動回数が制限に近づくことを、寿命を消費すると表現する。
【0049】
ここで、寿命の消費は、損失指標Jの要素の内、メンテナンス損失J2に関連する。売電運転モード及び無負荷運転モードでは、それぞれ、発電設備の起動を伴わないのでそのメンテナンス損失J2は、累積運転時間に関する寿命消費による損失(運転時間損失)が主体となる。逆に停止モードのメンテナンス損失J2では、再起動を伴うので、累積起動回数に関する寿命消費による損失(起動回数損失)が主体となる。
そこで、本実施形態では、売電運転モード及び無負荷運転モードについては下式(11)によりメンテナンス損失J2を、算出する。すなわち、第1実施形態のJ2の計算式に対して重み付け係数(第1重み付け係数)k1を乗じている。
【数5】
また、停止モードについては下式(12)によりメンテナンス損失J2を算出する。すなわち、第1実施形態のメンテナンス損失J2の計算式に対して重み付け係数(第2重み付け係数)k2を乗じている。
【数6】
【0050】
そして、この重み付け係数k1,k2は、運転時間寿命に対する累積運転時間の比率(累積起動時間/運転時間寿命、以下、運転時間寿命消費率という)C1と、起動回数寿命に対する累積起動回数の比率(累積起動回数/起動回数寿命、以下、起動回数寿命消費率という)C2とによって、予め記憶手段29に記憶された
図7(a),(b)に示すマップによって決定される。
つまり、
図7(a)に示すように、起動回数寿命消費率C2が大きいほど、運転時間寿命消費率C1が小さいほど、重み付け係数k1が小さく設定され、
図7(b)に示すように、運転時間寿命消費率C1が大きいほど、起動回数寿命消費率C2が小さいほど、重み付け係数k2が小さく設定される。
【0051】
なお、マップに替えて、寿命消費率C1,C2の関数により重み付け係数k1,k2を計算するようにしても良い。
さらには、運転時間寿命消費率C1と起動回数寿命消費率C2との比に応じて、マップ又は関数により重み付け係数k1,k2を決定するようにしても良い。
【0052】
[2−2.効果]
第2実施形態の策定システム(策定方法)によれば、第1実施形態の効果に加え、以下の効果がある。
起動回数寿命消費率C2が大きいほど、また、運転時間寿命消費率C1が小さいほど、重み付け係数k1が小さく設定されることにより、重み付け係数k1を使用して算出される売電運転モード及び無負荷運転モードのメンテナンス損失J2ひいては損失指標Jが少なめに設定される。この結果、重み付け係数を使用しない場合に較べると相対的に、運転時間寿命を消費する売電運転モード又は無負荷運転モードが選択されやすくなる。
逆に、運転時間寿命消費率C1が大きいほど、また、起動回数寿命消費率C2が小さいほど、重み付け係数k2が小さく設定されることにより、重み付け係数k2を使用して算出される停止モードのメンテナンス損失J2ひいては損失指標Jが少なめに設定される。この結果、重み付け係数を使用しない場合に較べると相対的に、起動時間寿命を消費する停止モードが選択されやすくなる。
【0053】
このように、運転時間寿命消費率C1が小さいほど、運転時間寿命を消費する売電運転モード又は無負荷運転モードが運用モードとして選択されやすくなり、起動回数寿命消費率C2が小さいほど、起動回数寿命を消費する停止モードが運用モードとして選択されやすくなるので、起動回数寿命と起動時間寿命とのどちらか一方に消費が偏ることが抑制され、部品の消耗に伴う補修費用や交換費用を抑制することができる。
【0054】
[2−3.その他]
上記実施形態では、起動回数寿命消費率C2が大きいほど、重み付け係数k1を小さくするとともに重み付け係数k2を大きくしているが、起動回数寿命消費率C2が大きいほど、重み付け係数k1だけ小さくしてもよいし、重み付け係数k2だけ大きくしても良い。
同様に、上記実施形態では、運転時間数寿命消費率C1が大きいほど、重み付け係数k2を小さくするとともに重み付け係数k1を大きくしているが、運転時間数寿命消費率C1が大きいほど、重み付け係数k2だけ小さくしてもよいし、重み付け係数k1だけ大きくしても良い。
【0055】
[3.第3実施形態]
[3−1.構成]
本発明の第3実施形態に係る発電設備の運転計画策定システム(策定方法)を、
図8を参照して説明する。
図8は、本発明の第3実施形態に係る策定システム(策定方法)の追加機能を説明するための模式図であって、縦軸を電力単価とし横軸を時間とするグラフに、予想売電価格Pe1,Pe2,Pe3及び発電コストCpの一例をプロットするとともに、運転計画(各時間毎に選択された運転モード)を重ねて示す図である。
【0056】
本発明の第3実施形態の発電設備の運転計画策定システム(策定方法)は、第1実施形態に対して、予想売電価格設定手段の機能及び策定手段の機能が追加されている。以下、この点について説明する。
【0057】
予想売電価格設定手段策定手段は、過去の実績に基づいて予測対象日(ここでは入札翌日)における3つの予想売電価格ラインL_Pe1, L_Pe2, L_Pe3を予測するものである。これらの予想売電価格ラインL_Pe1, L_Pe2, L_Pe3は予想売電価格Pe1,Pe2,Pe3の24時間の推移を表している。
予想売電価格Pe2は、過去の実績における平均値をベースに天気や気温などで修正した価格である。予想売電価格Pe1,Pe3は、過去の実績における平均値に対するばらつきを見込んだ価格であり、予想売電価格Pe1は、平均値に高値側の最大ばらつきを加算して求めた、最高予想売電価格であり、予想売電価格Pe3は、平均値に安値側の最大ばらつきを減算した最低予想売電価格である。そこで、予想売電価格Pe1を最高予想売電価格Pe1、予想売電価格Pe2を平均売電価格Pe2、予想売電価格Pe3を最低予想売電価格Pe3ともいう。
なお、第1実施形態と同様に、予想売電価格設定手段は必須ではなく、外部から予想売電価格情報を取得して、この取得した情報を記憶手段に記憶させるようにしても良い。
【0058】
策定手段は、予想売電価格Pe1,Pe2,Pe3のそれぞれを使用して3通りの運転計画を策定する。つまり、判定手段
22による価格コストCpと最高予想売電価格ラインL_Pe1(最高予想売電価格Pe1)との比較に基づいて仮運転計画100Aを策定し、判定手段
22による価格コストCpと平均予想売電価格ラインL_Pe2(平均予想売電価格Pe2)との比較に基づいて仮運転計画100Bを策定し、判定手段
22による価格コストCpと最低予想売電価格ラインL_Pe3(最低予想売電価格Pe3)との比較に基づいて仮運転計画100Cを策定する。
各仮運転計画100A, 100B, 100Cは、第1実施形態で、価格コストCpと予想売電価格ラインL_Pe(予想売電価格Pe)との比較に基づいて1日の運転計画を作成した方法と同じ方法を使用して策定される。
【0059】
そして、策定手段は、これらの仮運転計画100A, 100B, 100Cを合成して最終的な運転計画(以下、本運転計画ともいう)100Dを決定する。この合成は、1時間毎に、各仮運転計画100A, 100B, 100Cを構成する運用モードの中から最も多い運用モードをその時間の運用モードとして採用し、仮運転計画100A, 100B, 100Cの運用モードがすべて異なる場合は、平均予想売電価格Pe2に基づく仮運転計画100Bの運用モードをその時間の運用モードとして採用する。
【0060】
図8に示す例では、0時〜6時の間は、仮運転計画100A, 100B, 100Cの何れも停止モードであるので、本運転計画100Dでも停止モードが選択される。6時〜7時の間は、仮運転計画100Aでは売電運転モード、仮運転計画100B, 100Cでは停
止モードであるので、本運転計画100Dでは最も採用の多い停
止モードが選択される。7時〜10時の間は、仮運転計画100A,100Bでは売電運転モード、仮運転計画100Cでは停止モードであるので、本運転計画100Dでは最も採用の多い売電運転モードが選択される。同様に、10時〜17時の間、18時〜24時の各1時間については、仮運転計画100A,100B,100Cで最も採用の多い運用モードが、本運転計画100Dで選択されている。
【0061】
17時〜18時の間は、仮運転計画100Aでは売電運転モード、仮運転計画100Bでは無負荷運転モード、仮運転計画100Cでは停
止モードが選択されており、仮運転計画100A,100B,100Cで採用する運用モードが異なるため、本運転計画100Dでは、仮運転計画100Bで採用している無負荷運転モードが選択される。
【0062】
[3−2.効果]
第3実施形態の策定システム(策定方法)によれば、最大予想売電価格Pe1,平均予想売電価格Pe2及び最低予想売電価格Pe3の3つに基づいて仮運転計画を策定し、この仮運転計画を合成して最終的な運転計画としているので、実際の売電価格が平均的な予想値から大きく外れるような場合でも、それに対応できる運転計画を採用することができる。
【0063】
[3−3.その他]
(1)上記実施形態では、仮運転計画100A,100B,100Cの運用モードがすべて異なる場合は、平均予想売電価格Pe2に基づく仮運転計画100Bの運用モードをその時間の運用モードとして採用するようにしたが、仮運転計画100A, 100B, 100Cの運用モードがすべて異なる場合には、入力手段(選択運用モード取得手段)3からどの運用モードを選択するかユーザにより選択させるようにしても良い。この場合、表示手段(推奨運用モード表示手段)4に、仮運転計画100Bが採用しているモードを推奨する表示させても良い。
これにより、仮運転計画100A, 100B, 100Cのモードがすべて異なる場合は、ユーザの知見に基づいてモードを選択することができる。
(2)仮運転計画100A, 100B, 100Cを策定する際に、第2実施形態のように重み付け係数k1,k2を用いてメンテナンス損失J2を算出するようにしても良い。
【0064】
[4.その他]
(1)上記各実施形態では、発電設備をガスタービンコンバインドサイクル発電プラント(GTCC)としたが、本発明の発電設備の運転計画の策定システム(策定方法)は、GTCCへの適用に限定されない。例えば、蒸気ボイラと蒸気タービンからなる従来火力発電設備にも適用できるものである。
【0065】
(2)策定システム(策定方法)により策定した運転計画に基づき、売電運転モードを採用した時間帯について入札を行った場合でも、落札できない場合がある。この場合は、この落札できなかった時間帯について、無負荷運転モードを選択した場合と停止モードを選択した場合とで損失指標Jをそれぞれ算出して、損失指標Jの小さな運用モードを、売電モードから変更して採用するようにしても良い。
【0066】
(3)損失指標Jの比較により運用モードを選択する際に、最も小さい損失指標と、二番目に小さい損失指標との差ΔJが基準値ΔJ0以内の場合には、最も損失指標の小さい運転モードと、二番目に小さい損失指標の運転モードのどちらかを、ユーザにより選択させるようにしても良い。上記基準値ΔJ0は、例えば予想売電価格Peの予想精度に基づいて設定すればよい。