(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6534578
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20190617BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20190617BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 648K
H01L21/30 572B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-153396(P2015-153396)
(22)【出願日】2015年8月3日
(65)【公開番号】特開2017-34120(P2017-34120A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100101753
【弁理士】
【氏名又は名称】大坪 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100163175
【弁理士】
【氏名又は名称】村口 佐智子
(72)【発明者】
【氏名】中井 仁司
【審査官】
土谷 慎吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−033886(JP,A)
【文献】
特開2001−267288(JP,A)
【文献】
特開2009−158597(JP,A)
【文献】
特開2015−006652(JP,A)
【文献】
特開平10−258249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して処理液を供給することにより基板を処理する基板処理装置であって、
基板に処理液を供給するためのノズルと、
処理液の供給源と前記ノズルとを連結する管路と、
前記管路中に配設された開閉バルブと、
前記ノズルの待機時に、前記ノズルの先端の下方に配設された液受け部と、
前記液受け部に滴下した処理液を排出するための、少なくともその一部が鉛直方向に対して傾斜した傾斜部を有する排液管と、
前記排液管における傾斜部において処理液を検出するセンサと、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記排液管の傾斜部は透光性の部材から構成されるとともに、
前記センサは、投光部と受光部とを有し、前記傾斜部の内壁の下面を流下する処理液を検出する基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の基板処理装置において、
前記液受け部は、基板に処理液を供給する前に前記ノズルから処理液を吐出するプリディスペンス時に、前記ノズルから吐出される処理液を受けるプリディスペンスポットである基板処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記開閉バルブを閉鎖して前記ノズルから処理液の吐出の停止から所定の時間が経過した後に、前記センサにより処理液を検出したときに、警告表示を行う制御部を備える基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板に対して処理液を供給することにより基板を処理する基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置用ガラス基板、液晶表示装置用ガラス基板、太陽電池用パネル基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板、半導体ウエハ等の基板を処理する基板処理装置においては、処理液等の液体や不活性ガス等の気体等の各種の処理液が使用される。この処理液は、バルブの開閉動作により供給を制御される。
【0003】
このような基板処理装置においては、バルブからの処理液の漏洩を検出する必要がある。特許文献1には、サックバック方式により処理液の漏洩を検出する基板処理装置が開示されている。この特許文献1に記載の基板処理装置においては、バルブを閉止した後に吸引装置により処理液配管の吸引動作を実行する。そして、液面センサにより処理液を検出するか否かにより、処理液の漏洩を検出する構成を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5030767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の基板処理装置においては、処理液の漏洩を防止するときに処理液配管の吸引動作を実行する必要があることから、吸引に要する時間が必要となるばかりではなく、処理液配管内の処理液が無駄に消費されるという問題が生ずる。
【0006】
一方、このような処理液の供給路には、一般的に、流量計が配設されていることが多く、この流量計を利用して処理液の漏洩を検出することも不可能ではない。しかしながら、処理液のわずかな漏洩を検知するためには、微小流量を検出しうる高価な流量計を使用する必要がある。また、処理液が一定量流れているときには、流量計により流量を正確に検出することが可能であるが、処理液の流れを停止した状態においては、処理液における発泡により、流量計が誤検知を起こす場合がある。
【0007】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、簡易な構成でありながら処理液の漏洩を正確に検出することが可能な基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、基板に対して処理液を供給することにより基板を処理する基板処理装置であって、基板に処理液を供給するためのノズルと、処理液の供給源と前記ノズルとを連結する管路と、前記管路中に配設された開閉バルブと、前記ノズルの待機時に、前記ノズルの先端の下方に配設された液受け部と、前記液受け部に滴下した処理液を排出するための、
少なくともその一部が鉛直方向に対して傾斜した傾斜部を有する排液管と、前記排液
管における傾斜部において処理液を検出するセンサと、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項
2に記載の発明は、請求項
1に記載の発明において、前記排液管の傾斜部は透光性の部材から構成されるとともに、前記センサは、投光部と受光部とを有し、前記傾斜部の内壁の下面を流下する処理液を検出する。
【0010】
請求項
3に記載の発明は、請求項1
または請求項2に記載の発明において、前記液受け部は、基板に処理液を供給する前に前記ノズルから処理液を吐出するプリディスペンス時に、前記ノズルから吐出される処理液を受けるプリディスペンスポットである。
【0011】
請求項
4に記載の発明は、請求項1から請求項
3のいずれかに記載の発明において、前記開閉バルブを閉鎖して前記ノズルから処理液の吐出の停止から所定の時間が経過した後に、前記センサにより処理液を検出したときに、警告表示を行う制御部を備える。
【発明の効果】
【0012】
請求項
1に記載の発明によれば、傾斜部を流下する処理液をセンサにより検出することにより、簡易な構成でありながら、処理液の漏洩を正確に検出することが可能となる。
【0013】
請求項
2に記載の発明によれば、傾斜部の内壁の下面に集まって流下する少量の処理液を光学的に確実に検出することが可能となる。
【0014】
請求項
3に記載の発明によれば、プリディスペンスのために使用されるポットを利用することにより、処理液の漏洩を正確に検出することが可能となる。
【0015】
請求項
4に記載の発明によれば、処理液の吐出動作が終了した後に、処理液の漏洩を正確に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明に係る基板処理装置の構成を説明するための概要図である。
【
図2】処理液の漏洩を検出に使用するプリディスペンスポット31からの排液機構を、処理液ノズル15等とともに示す概要図である。
【
図3】排液管とセンサとの配置を示す断面概要図である。
【
図5】この基板処理装置における主要な制御系を示すブロック図である。
【
図6】処理液の漏洩を検出に使用するプリディスペンスポット31からの排液機構を、処理液ノズル15、16等とともに示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明に係る基板処理装置の構成を説明するための概要図である。
【0018】
この基板処理装置は、半導体ウエハ等の円形の基板100に処理液を供給することにより、この基板100を処理するためのものである。この基板処理装置は、基板100を端縁で支持する支持ピン11を備え、基板100とともに鉛直方向を向く軸を中心に回転するスピンチャック12を備える。
【0019】
また、この基板処理装置は、基板100に対して処理液を供給するための処理液ノズル15を備える。この処理液ノズル15は、回転軸13に連結された揺動アーム14により支持されており、揺動アーム14とともに、回転軸13を中心として揺動する。また、この処理液ノズル15は、処理液供給機構20と接続されている。この処理液ノズル15の先端を、スピンチャック12に保持された基板100の回転中心および端縁を含む円弧形状の軌跡を描いて移動させることにより、基板100の表面をスキャンしながらその表面全域に対して処理液を供給することが可能となる。
【0020】
また、この基板処理装置は、基板100に対して処理液を塗布する前に、処理液ノズル15内の処理液をプリディスペンスするためのプリディスペンスポット31を備える。このプリディスペンスポット31は、第1流下部32と、傾斜部33と、第2流下部34とから成る排液管を介して、図示を省略した処理液の回収部と接続されている。
【0021】
処理液供給機構20は、処理液を貯留した処理液タンク21から処理液ノズル15に対して処理液を送液するための処理液配管27を備える。この処理液配管27には、処理液タンク21内の処理液を圧送するためのポンプ22と、処理液の供給および停止を行うための開閉バルブ23と、処理液ノズル15に供給される処理液の流量を調整するための流量調整バルブ24および流量計25とが配設されている。
【0022】
図2は、処理液の漏洩を検出に使用するプリディスペンスポット31からの排液機構を、処理液ノズル15等とともに示す概要図である。また、
図3は、排液管とセンサとの配置を示す断面概要図である。さらに、
図4は、
図3の矢印部分での断面図である。なお、
図2においては、
図1に示す流量調整バルブ24および流量計25の図示を省略している。
【0023】
このプリディスペンスポット31は、スピンチャック12に保持されて回転する基板100に対して処理液を塗布する前に、処理液ノズル15内に残存する古い処理液を排出するプリディスペンスを実行するときに処理液の回収のために使用されるとともに、基板100に処理液を塗布しないときに、処理液ノズル15の先端部を収納して処理液ノズル15の汚染や処理液の固化を防止するために使用される。この発明に係る基板処理装置においては、このプリディスペンスポット31への処理液の滴下を監視することにより処理液の漏洩を検出する構成となっている。
【0024】
このプリディスペンスポット31の下端部には、プリディスペンスポット31に滴下した処理液を回収するための、鉛直方向を向く第1流下部32と、鉛直方向に対して傾斜した傾斜部33と、鉛直方向を向く第2流下部34とから成る排液管が接続されている。この排液管は、少なくとも傾斜部33を含む一部が透光性を有する樹脂等から構成されており、図示を省略した処理液の回収部と接続されている。
【0025】
排液管における傾斜部33の両側には、投光部51と受光部52とから成るセンサ53(後述する
図5参照)が配設されている。このセンサ53のうち、投光部51は、排液管における傾斜部33の直下の位置に、傾斜部33の中心に向けて検出光を出射するような状態で配設されている。また、受光部52は、傾斜部33に対して、投光部51と対向する位置に配設されている。
【0026】
図5は、この基板処理装置における主要な制御系を示すブロック図である。なお、この図においては、主として、漏洩検出に係る制御系のみを示している。
【0027】
この基板処理装置は、論理演算を実行するCPU、装置の制御に必要な動作プログラムが格納されたROM、制御時にデータ等が一時的にストアされるRAM等を備え、装置全体を制御する制御部50を備える。この制御部50は、処理液ノズル15を移動させるためのモータ等を具備するノズル駆動部19と接続されている。また、この制御部50は、上述した開閉バルブ23と、投光部51および受光部52より成るセンサ53とに接続されている。さらに、この制御部50は、警告表示や警告音を発生させる警告表示部59とも接続されている。
【0028】
以上のような構成を有する基板処理装置により基板100に処理液を供給するときには、最初にプリディスペンスを実行する。このときには、制御部50の制御により開閉バルブ23を開放し、処理液ノズル15より所定量の処理液を吐出した後、開閉バルブ23を閉止して処理液の吐出を停止する。処理液ノズル15より吐出された処理液は、プリディスペンスポット31により回収され、第1流下部32と傾斜部33と第2流下部34とから成る排液管を介して、図示を省略した処理液の回収部に回収される。このときには、後述する処理液の漏洩時と同様、投光部51と受光部52より成るセンサ53が傾斜部33を流下する処理液を検出するが、制御部50は、これを通常動作であると判断する。
【0029】
続いて、制御部50の制御によりノズル駆動部19を制御し、処理液ノズル15をスピンチャック12に支持されて回転する基板100の表面と対向する位置に移動させる。そして、開閉バルブ23を開放して基板100の表面に処理液を供給する。基板100に対する処理が終了すれば、制御部50の制御で開閉バルブ23を閉鎖することにより処理液の吐出を終了するとともに、処理液ノズル15を、その先端がプリディスペンスポット31と対向する待機位置に移動させる。
【0030】
この状態で、センサ53は、開閉バルブ23による処理液の漏洩を監視する。このときには、センサ53における投光部51から照射された光が、受光部52により受光されている。開閉バルブ23において処理液の漏洩が生じた場合においては、この処理液は、処理液配管27、処理液ノズル15を介してプリディスペンスポット31に滴下する。そして、この処理液は、プリディスペンスポット31から排液管における第1流下部32内を滴下する。このときには、漏洩による処理液はごく少量であることから、
図3において符合D1で示すように、処理液は第1流下部32のどこかの壁面に付着して流下するか、第1流下部32内を落下する。
【0031】
そして、この処理液は、排液管における傾斜部33に到達する。この傾斜部33は、鉛直方向に対して傾斜していることから、傾斜部33に滴下した処理液は、傾斜部33の内周面における下側の領域に移動する。そして、この処理液は、
図3において符合D2に示すように、液流となって傾斜部33の内周面における下側の領域を流下する。このときの処理液の流速は、傾斜部33が鉛直方向に対して傾斜していることから、遅い速度となっている。
【0032】
センサ53における投光部51から照射された光は、この傾斜部33の内周面を流下する処理液D2による遮断や反射、屈折などにより、その光量が変化する。その光量の変化が受光部52によって検知される。このときには、上述したように、排液管における傾斜部33が鉛直方向に対して傾斜していることから、処理液D2の流下速度は低速となっている。そして、この処理液D2は傾斜部33の内周面における下側の領域に集まり(
図4参照)、かつ、上述したように、投光部51は、傾斜部33の直下の位置に、傾斜部33の中心に向けて検出光を出射するような状態で配設されている。このため、投光部51および受光部52より成るセンサ53により、処理液D2が少量であったとしても、この処理液を確実に検出することが可能となる。
【0033】
制御部50は、開閉バルブ23を閉鎖して処理液ノズル15から処理液の吐出の停止から所定の時間が経過した後に、センサ53により処理液を検出したときには、警告表示部59に対して、警告表示を行うための信号を送信する。警告表示部59は、ディスプレイ等への警告表示や、警告音を発生する。
【0034】
なお、排液管における傾斜部33を通過した処理液D2は、
図3において符合D3に示すように、第2流下部34の内周面に沿って速度を上げて流下し、図示しない処理液の回収部に排出される。
【0035】
次に、この発明の他の実施形態について説明する。
図6は、処理液の漏洩を検出に使用するプリディスペンスポット31からの排液機構を、処理液ノズル15、16等とともに示す概要図である。なお、
図2に示す第1実施形態と同様の部材については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0036】
上述した第1実施形態においては、開閉バルブ23により処理液の供給を制御される単一の処理液ノズル15からの処理液の漏洩を、プリディスペンスポット31を介して検出する構成を採用している。これに対して、この第2実施形態に係る基板処理装置においては、処理液ノズル15だけではなく、開閉バルブ28により処理液の供給を制御される処理液ノズル16からの処理液の漏洩をも、プリディスペンスポット31を介して検出する構成となっている。
【0037】
この実施形態においては、制御部50は、開閉バルブ23を閉鎖して処理液ノズル15から処理液の吐出の停止から所定の時間が経過した後で、かつ、開閉バルブ28を閉鎖して処理液ノズル16から処理液の吐出の停止から所定の時間が経過した後に、センサ53により処理液を検出したときに、警告表示部59に対して、警告表示を行うための信号を送信する。警告表示部59は、ディスプレイ等への警告表示や、警告音を発生する。
【0038】
なお、上述した実施形態においては、いずれも、プリディスペンスポット31において回収した処理液をセンサ53により検出することで、処理液の漏洩を検出しているが、プリディスペンスポット31とは別の待機部において処理液ノズル15、16を待機させ、これらの待機部を介して処理液を検出することにより、処理液の漏洩を検出するようにしてもよい。
【0039】
また、上述した実施形態においては、
図4に示すように、センサ53のうち、投光部51を排液管における傾斜部33の直下の位置に配設し、受光部52を投光部51と対向する位置に配設しているが、受光部52を傾斜部33の直下の位置に配設し、投光部51を受光部52と対向する位置に配設してもよい。また、このような配置に限らず、
図4に示す処理液D2を検出するためのセンサ53の光路が、傾斜部33を流下する処理液D2と交差してこれを検出する方向(例えば、直交する方向)に形成されるように、投光部51と受光部52とを配置すればよい。
【0040】
また、上述した実施形態においては、いずれも、光学式のセンサ53を使用しているが、処理液の静電容量を検出する静電容量センサや、処理液の熱を検出する熱センサなど、その他のセンサを使用するようにしてもよい。
【0041】
さらに、上述した実施形態においては、排液管における傾斜部33を流下する処理液をセンサ53により検出しているが、管状以外の形状を有する傾斜部を流下する処理液を検出する構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0042】
12 スピンチャック
15 処理液ノズル
16 処理液ノズル
19 ノズル駆動部
20 処理液供給機構
21 処理液タンク
22 ポンプ
23 開閉バルブ
27 処理液配管
31 プリディスペンスポット
32 第1流下部
33 傾斜部
34 第2流下部
50 制御部
51 投光部
52 受光部
53 センサ
59 警告表示部
100 基板