特許第6534667号(P6534667)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6534667
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】ブレーキ慣らし
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/00 20060101AFI20190617BHJP
   F16D 55/225 20060101ALI20190617BHJP
   G01K 7/02 20060101ALI20190617BHJP
   G01K 1/14 20060101ALI20190617BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20190617BHJP
【FI】
   F16D65/00 Z
   F16D55/225 102Z
   G01K7/02 Z
   G01K1/14 Z
   G01M17/007 E
【請求項の数】46
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-533644(P2016-533644)
(86)(22)【出願日】2014年11月27日
(65)【公表番号】特表2017-500500(P2017-500500A)
(43)【公表日】2017年1月5日
(86)【国際出願番号】GB2014053513
(87)【国際公開番号】WO2015079236
(87)【国際公開日】20150604
【審査請求日】2017年11月27日
(31)【優先権主張番号】1320960.6
(32)【優先日】2013年11月27日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】510001939
【氏名又は名称】アストン マーティン ラゴンダ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Aston Martin Lagonda Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ブッカー,アラステア
(72)【発明者】
【氏名】コーンフォース,スティーブ
(72)【発明者】
【氏名】ハプサンスリッジ,アナンダ
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−037289(JP,A)
【文献】 西独国特許出願公開第02204955(DE,A)
【文献】 英国特許出願公開第02445361(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00 − 71/04
G01K 1/14
G01K 7/02
G01M 17/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に用いられる炭素複合材料ブレーキディスクのすり合わせ方法であって、ブレーキディスクを支持装置に設置することと、前記ブレーキディスクを回転可能に駆動することと、そのすり合わせ、慣らしのために前記ブレーキディスクの温度を摩擦により上昇させるべく前記ブレーキディスクの摩擦面に摩擦係合を適用することとを含む、方法。
【請求項2】
前記支持装置が床に取り付けられるタイプの据え置き型のフレームである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ホイールハブを介して前記ブレーキディスクを前記支持装置に設置することを含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
サスペンション構成部品を介して車体に対して前記ブレーキディスクを支持するように適合されたナックルを介して前記ブレーキディスクを前記支持装置に設置することを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ブレーキディスクをブレーキキャリパ及び少なくとも1つのブレーキパッドと一緒に前記支持装置に設置することを含
請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
記ブレーキキャリパを各前記ブレーキパッドに関連する少なくとも1つの油圧ブレーキシールと共に設置することを含請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ブレーキパッドを前記ブレーキディスクと摩擦係合させるために前記ブレーキキャリパに加圧空気を供給することを含む、請求項5または請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記加圧空気を乾燥作業場空気源から提供することと、前記供給源から供給される空気の圧力を圧力増幅器の使用によって増加させることを含む、請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ブレーキディスクの慣らしを複数のヒートサイクルで行うことを含み、各ヒートサイクルが、前記ブレーキディスクの基準温度が増加する熱入れ段階と、基準温度が減少する冷却段階とを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
記基準温度が、センサによって測定される前記ブレーキディスクの表面温度であり、かつ
熱入れ段階中に前記ブレーキディスクに関連するキャリパに実質的に一定の又は変化する値のブレーキ圧をかけることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
記ブレーキ圧を、各サイクル中の時間の5%から75%までの間の時間にわたってかけることを含請求項10に記載の方法。
【請求項12】
り低いピーク温度を有する少なくとも1つのサイクルよりも、より高いピーク温度を有する少なくとも1つのサイクルの方が、より小さい時間の割合にわたって前記ブレーキ圧をかけることを含む、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ブレーキディスクに摩擦加熱を適用するためのスタート速度で前記ブレーキディスクを回転駆動するのにモータを使用することを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
記スタート速度が、前記ブレーキディスクが嵌められるべき車両が70mph以上の速度で走行しているときに前記ブレーキディスクの回転速度に等しくなるように選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
記ブレーキディスクに回転接続されるはずみ車を提供することを含み、前記はずみ車が、前記ブレーキディスクが摩擦により加熱される間に前記ブレーキディスクにトルクをかけるように適合される、請求項13または請求項14に記載の方法。
【請求項16】
記ブレーキディスクの摩擦加熱中に前記ブレーキディスク及び前記はずみ車の回転速度を減少させることを含む、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
記ブレーキディスクが、ブレーキを備える4つのロードホイールを有し、かつ、Xkgの空車重量を有するように適合される、車両に適用するためのものであり、前記はずみ車の質量慣性モーメントが、(X/10)から(X/100)kgmまでの間である、請求項13〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
記質量慣性モーメントが、前記ブレーキディスクが前記車両のフロントホイール用のときに(X/10)〜(X/30)kgmであり、前記ブレーキディスクが前記車両のリヤホイール用のときに(X/30)〜(X/50)kgmである、請求項に記載の方法。
【請求項19】
前記ブレーキディスクに冷却空気流を誘導することによって前記ブレーキディスクを冷却することを含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つのブレーキパッドと係合させることによって前記ブレーキディスクの表面に摩擦係合を提供することを含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
イールハブ及びホイールナックルを介して前記ブレーキディスクを前記支持装置に取り付けることと、少なくとも1つの前記ブレーキパッドを前記ナックルに取り付けられたブレーキキャリパに設置することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の炭素複合材料ブレーキディスクのすり合わせ方法を含む、自動車を組み立てる方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法を行い、前記ナックル、前記ホイールハブ、前記ブレーキディスク、前記ブレーキキャリパ、及び少なくとも1つの前記ブレーキパッドを一緒に組立体として前記支持装置から取り外し、次いで、この組立体を一緒のまま自動車に嵌めることを含む、自動車を組み立てる方法。
【請求項24】
油圧により作動されるキャリパ/ブレーキパッド組立体を有する車両上で用いられる炭素複合材料ブレーキディスクのすり合わせ方法であって、ブレーキディスクと共に用いる及びブレーキディスクと摩擦係合するためのキャリパ及びブレーキパッド組立体を組み立てることと、前記ブレーキディスクを前記キャリパ/ブレーキパッド組立体に対して回転させることと、前記ブレーキパッドを前記ブレーキディスク上に摩擦係合するべく前記キャリパ/ブレーキパッド組立体の中に圧縮空気を適用することとを含む、方法。
【請求項25】
前記空気圧下の空気を適用しながら少なくとも1つの油圧ブレーキシールを前記キャリパ/ブレーキパッド組立体内の作動位置に維持することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
少なくともブレーキディスク及びホイールハブを支持装置にクランプすることを含み、少なくとも前記ブレーキディスクを回転させるための原動力となるトルクの供給源を提供することを含み、クランプの安全性の表示が提供されない限り、前記原動力となるトルクの供給源が作動するのを防ぐステップを含む、ブレーキ構成部品のすり合わせ方法。
【請求項27】
前記原動力となるトルクの供給源の作動を可能にする信号を提供するために、安全なクランプを表すクランプ中にトルク設定状態を確立することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法を行うための装置。
【請求項29】
車両に用いられる炭素複合材料ブレーキディスクのすり合わせを行うためのすり合わせマシンであって、支持装置と、前記ブレーキディスクを前記支持装置に設置するためのマウントと、前記ブレーキディスクを回転可能に駆動するための原動力となる回転トルクの供給源と、そのすり合わせ、慣らしのために前記ブレーキディスクの温度を摩擦により上昇させるべく前記ブレーキディスクの摩擦面に摩擦係合を適用するように適合された摩擦組立体とを備える、すり合わせマシン。
【請求項30】
前記支持装置が床に取り付けられるタイプの据え置き型のフレームであり、かつ前記摩擦組立体が少なくとも1つのブレーキパッドを含むブレーキキャリパである、
請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記マウントが、サスペンション構成部品を介して車体に対して前記ブレーキディスクを支持するように適合されたホイールハブ及びナックルを介して前記ブレーキディスクを前記支持装置に設置するように適合される、請求項29に記載の装置。
【請求項32】
レーキパッドを前記ブレーキディスクと摩擦係合させるために前記摩擦組立体のブレーキキャリパに加圧空気を供給するように適合された空気圧源を含み、
よび
前記供給源からの空気の圧力を増加させるように適合された圧力上昇装置を含む、請求項31に記載のすり合わせマシン。
【請求項33】
レーキディスクの慣らしが複数のヒートサイクルで行われるように、回転速度及びブレーキキャリパ圧を含む慣らしパラメータを制御するように適合されたコントローラを含み、各ヒートサイクルが、前記ブレーキディスクの基準温度が増加する熱入れ段階と、前記基準温度が減少する冷却段階とを含む、すり合わせマシン。
【請求項34】
前記コントローラが、各サイクル中に前記基準温度をピーク温度に上げ、次いで、前記基準温度を低下した温度に下げるように慣らしを制御するように適合され、少なくとも1つのサイクルの少なくとも1つの前記ピーク温度が、300℃以上である、請求項33に記載のすり合わせマシン。
【請求項35】
前記基準温度を前記ブレーキディスクの表面温度として測定するように適合されるセンサを含む、請求項34に記載のすり合わせマシン。
【請求項36】
記空気圧源が、各熱入れ段階中に前記ブレーキディスクに関連するキャリパに実質的に一定の又は変化する値のブレーキ圧をかけるように適合され、
記空気圧源が、前記ブレーキ圧を、各サイクル中の時間の5%から75%までの間の時間にわたってかけるように構成され、および
記空気圧源が、より低いピーク温度を有する少なくとも1つのサイクルよりも、より高いピーク温度を有する少なくとも1つのサイクルの方が、より小さい時間の割合にわたって前記ブレーキ圧をかけるように適合される、請求項34または請求項35に記載のすり合わせマシン。
【請求項37】
前記ブレーキディスクに摩擦加熱を適用するためのスタート速度で前記ブレーキディスクを回転駆動するのにモータを含む、請求項29〜36のいずれか一項に記載のすり合わせマシン。
【請求項38】
前記ブレーキディスクに回転接続されるはずみ車を含み、前記はずみ車が、前記ブレーキディスクが摩擦により加熱される間に前記ブレーキディスクにトルクをかけるように適合される、請求項29〜37のいずれか一項に記載のすり合わせマシン。
【請求項39】
記ブレーキディスクが、ブレーキを備える4つのロードホイールを有し、かつ、Xkgの空車重量を有するように適合される、車両に適用するためのものであり、前記はずみ車の質量慣性モーメントが、(X/10)から(X/100)kgmまでの間である、請求項38に記載のすり合わせマシン。
【請求項40】
前記質量慣性モーメントが、前記ブレーキディスクが前記車両のフロントホイール用のときに(X/10)〜(X/30)kgmであり、前記ブレーキディスクが前記車両のリヤホイール用のときに(X/30)〜(X/50)kgmである、請求項39に記載のすり合わせマシン。
【請求項41】
前記ブレーキディスク及び/又は前記ブレーキディスクに関連するブレーキキャリパの方に冷却空気流を誘導することによって前記ブレーキディスクを冷却するための空気流冷却器システムを含み、および
記ディスクがそれに関連するキャリパの中に及び/又は前記キャリパ内の少なくとも1つのブレーキパッドの方に回転するように適合される位置付近の前記ディスク上に空気を吹きつけるように適合される、請求項29〜39のいずれか一項に記載のすり合わせマシン。
【請求項42】
組み立てられたナックル、ホイールハブ、ブレーキディスク、ブレーキキャリパ、及び少なくとも1つのブレーキパッドを備え、前記ブレーキディスクは請求項1〜請求項27のいずれか一項の方法に従って、または請求項28の装置に従って、慣らしが行われている、ホイールキャリヤ組立体。
【請求項43】
油圧により作動されるキャリパ/ブレーキパッド組立体を有する車両上で用いられる炭素複合材料ブレーキディスクのすり合わせを行うためのすり合わせマシンであって、ブレーキパッドを前記ブレーキディスク上に摩擦係合するべくキャリパ/ブレーキパッド組立体の中に圧縮空気を適用するための空気源を有する、すり合わせマシン。
【請求項44】
ブレーキ構成部品のすり合わせを行うためのすり合わせマシンであって、少なくともブレーキディスク及びホイールハブを支持装置に取り付けるためのクランプ又はアタッチメントと、少なくとも前記ブレーキディスクを回転するための原動力となるトルクの供給源と、クランプ/取り付けの安全性の表示が提供されない限り、前記原動力となるトルクの供給源が作動するのを防ぐための安全インターロックとを有する、すり合わせマシン。
【請求項45】
前記安全インターロックが、前記原動力となるトルクの供給源の作動を可能にする信号を提供するために、安全なクランプを表すクランプ/取り付け中にトルク設定状態を処理するように適合される、請求項44に記載のすり合わせマシン。
【請求項46】
請求項42のホイールキャリヤ組立体を含む自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素複合材料ブレーキディスクのすり合わせ方法などのブレーキ慣らし方法と、こうしたすり合わせを行うための装置に関する。本発明はまた、すり合わせが行われたブレーキディスクと、こうしたディスクを組み込んでいるホイールキャリヤ組立体及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素複合材料ブレーキディスクは、ディスク温度の上昇を含む手順において包括的なすり合わせを必要とする。これを行うために、実質的に完成した車両に乗り、ブレーキを使用してこれを繰返し減速することが知られており、ブレーキに生じた温度がブレーキディスクの炭素構造に化学変化をもたらし、それらは実質的により硬く、かつ、水を透過しなくなる。しかしながら、これは、販売の準備がほぼできている完成した生産車両の屋外使用を含む、費用のかかる手順であり、常に望ましいというわけではない。また、すり合わせプロセスを完了するのに車両を高速走行させる必要があって、試験路又はレーストラックを使用する必要がある場合があり、その使用も費用がかかることがあり、又はこうしたトラックが車両生産設備からかなりの距離にあって、使用が不便で、より一層費用がかかる場合がある。これにより、ブレーキのすり合わせを行うのにかなりの量のエネルギーを消費することになる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来技術の問題を少なくとも或る程度まで軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様は、車両に用いられる炭素複合材料ブレーキディスクのすり合わせ方法であって、ブレーキディスクを据え置き型の支持装置(好ましくは床に取り付けられるタイプの据え置き型のフレームなど)に設置し、ブレーキディスクを回転可能に駆動し、そのすり合わせ、慣らしのためにブレーキディスクの温度を摩擦により上昇させるべくブレーキディスクの摩擦面に摩擦係合を適用することを含む方法を提供する。
【0005】
有利なことに、ブレーキディスクは、車両又は試験路を使用せずに迅速にすり合わせを行うことができる。ブレーキディスクは、すり合わせが行われる前に水がブレーキディスクの材料を損傷する場合がある屋外に持ち出される必要がない。ブレーキのすり合わせを行うのにより少ないエネルギーが消費される。
【0006】
方法は、ホイールハブを介してブレーキディスクを支持装置に設置することを含む場合がある。
【0007】
方法は、サスペンション構成部品を介して車体に対してブレーキディスクを支持するように適合されたナックルを介してブレーキディスクを据え置き型の支持装置に設置することを含む場合がある。
【0008】
方法は、ブレーキディスクをブレーキキャリパ及び少なくとも1つのブレーキパッドと共に据え置き型の支持装置に設置することを含む場合がある。
【0009】
方法は、ブレーキキャリパを各ブレーキパッドに関連する少なくとも1つの油圧ブレーキシールと共に設置することを含む場合がある。
【0010】
方法は、各ブレーキパッドをブレーキディスクと摩擦係合させるためにブレーキキャリパに加圧空気を供給することを含む場合がある。
【0011】
方法は、加圧空気を約(a)10〜300バール、(b)20〜100バール、(c)25〜60バール、(d)30〜50バール、(e)35〜45バール、(f)100バール未満、(g)75バール未満又は60バール未満、(h)20バール以上、又は(i)約35、40、又は50バールの圧力で供給することを含む場合がある。
【0012】
方法は、乾燥作業場空気源などの供給源から例えば約8バールの加圧空気を提供することと、供給源から供給される空気の圧力を例えば圧力増幅器の使用によって増加させることを含む場合がある。
【0013】
方法は、ブレーキディスクの慣らしを複数のヒートサイクルで行うことを含んでもよく、各ヒートサイクルは、ブレーキディスクの基準温度が増加する熱入れ段階と、基準温度が減少する冷却段階とを含む。
【0014】
方法は、各サイクル中に基準温度をピーク温度に上げ、次いで、基準温度を低下した温度に下げることを含む場合があり、少なくとも1つのサイクルの少なくとも1つのピーク温度は、300℃以上、好ましくは400℃以上又は500℃以上、より好ましくは600℃以上である。好ましくは、ディスクは、550℃以上又は600℃以上のピーク温度に複数回加熱される。温度は、すり合わせ中にディスク内に最適な化学/構造的変化を提供するために注意深く制御されてもよい。
【0015】
基準温度は、IR温度センサなどのセンサ又はデータロギング熱電対によって測定されるブレーキディスクの表面温度であってもよい。
【0016】
方法は、各熱入れ段階中にブレーキディスクに関連するキャリパに実質的に一定の(又は変化する)値のブレーキ圧をかけることを含む場合がある。各熱入れ段階で同じブレーキ圧が用いられてもよい。他の実施形態では異なるサイクルで異なるブレーキ圧が用いられる場合がある。
【0017】
方法は、ブレーキ圧を、各サイクル中の時間の約5%から75%までの間、例えば、各サイクル中の時間の約20%から50%までの間又は約15%から40%までの間の時間にわたってかけることを含む場合がある。
【0018】
方法は、より低いピーク温度を有する少なくとも1つのサイクルよりも、より高いピーク温度を有する少なくとも1つのサイクルの方が、より小さい時間の割合にわたってブレーキ圧をかけることを含む場合がある。
【0019】
方法は、ブレーキディスクに摩擦加熱を適用するためのスタート速度でブレーキディスクを回転駆動するのにモータを使用することを含む場合がある。
【0020】
スタート速度は、いくつかの例を挙げると、約250〜2500RPM、好ましくは約400〜2000RPM、より好ましくは約600〜1750RPM、約700〜1600RPM、約800〜1100RPM、又は約1200〜1500RPMの範囲内であってもよい。
【0021】
スタート速度は、ブレーキディスクが嵌められるべき車両が70mph以上、より好ましくは100mph以上、例えば、約100〜150mph、一例では130mphの速度で走行することになるときに、ブレーキディスクの回転速度に等しくなるように選択されてもよい。
【0022】
方法は、ブレーキディスクに回転接続されるはずみ車を提供することを含む場合があり、はずみ車は、ブレーキディスクが摩擦により加熱される間にブレーキディスクにトルクをかけるように適合される。
【0023】
方法は、ブレーキディスクの摩擦加熱中にブレーキディスク及びはずみ車の回転速度を減少させることを含む場合がある。
【0024】
方法は、10から200kgmまでの間、好ましくは25から100kgmまでの間、より好ましくは40〜80kgm、例えば50又は75kgmの質量慣性モーメントを有するはずみ車を提供することを含む場合がある。
【0025】
ブレーキディスクは、ブレーキを備える4つのロードホイールを有し、かつ、Xkgの空車重量又は装備重量を備える、車両に適用するためのものであってもよく、はずみ車の質量慣性モーメントは、約(X/10)から(X/100)kgmまでの間、例えば、約(X/20)〜(X/50)kgmであってもよく、質量慣性モーメントは、随意的に、ブレーキディスクが車両のフロントホイール用のときに約(X/10)〜(X/30)kgmであり、ブレーキディスクが車両のリヤホイール用のときに約(X/30)〜(X/50)kgmである。
【0026】
方法は、ブレーキディスクに冷却空気流を誘導することによってブレーキディスクを冷却することを含む場合がある。
【0027】
方法は、少なくとも1つのブレーキパッドと係合させることによってブレーキディスクの表面に摩擦係合を提供することを含む場合がある。
【0028】
方法は、ホイールハブ及びホイールナックルを介してブレーキディスクを据え置き型の支持装置に取り付けることと、少なくとも1つのブレーキパッドをナックルに取り付けられたブレーキキャリパに設置することを含む場合がある。
【0029】
本発明のさらなる態様は、上記態様のように炭素複合材料ブレーキディスクのすり合わせ方法を含む、モーターカーなどの自動車を組み立てる方法を提供する。
【0030】
本発明のさらなる態様は、2つ上の段落に記載の方法を行い、ナックル、ホイールハブ、ブレーキディスク、ブレーキキャリパ、及び少なくとも1つのブレーキパッドを一緒に組立体として据え置き型の支持装置から取り外し、次いで、この組立体を一緒のまま自動車に嵌めることを含む、モーターカーなどの自動車を組み立てる方法を提供する。これは、有利なことに、十分に組み立てられた「コーナーユニット」又はホイールキャリヤ組立体(こうしたパーツからなる)上ですり合わせが行われてもよいことを意味し、部品追跡及び車両生産効率の改善を可能にする。完成したコーナーユニットは、保管され、整備場に発送されてもよく、そこでブレーキのすり合わせをローカルに行う必要なしにそれらは容易に嵌められる場合がある。
【0031】
本発明のさらなる態様は、油圧により作動されるキャリパ/ブレーキパッド組立体を有する車両上で用いられる炭素複合材料ブレーキディスクのすり合わせ方法であって、ブレーキディスクと共に用いる及びブレーキディスクと摩擦係合するためのキャリパ及びブレーキパッド組立体を組み立てることと、ブレーキディスクをキャリパ/ブレーキパッド組立体に対して回転させることと、ブレーキパッドをブレーキディスク上に摩擦係合するべくキャリパ/ブレーキパッド組立体の中に空気圧下の空気を適用することを含む方法を提供する。
【0032】
ブレーキディスク、実際随意的には、ブレーキキャリパを含む十分に組み立てられたホイールキャリヤユニットに、作動液を使用せずにすり合わせを行うことができるので、これは非常に有利である。したがって、車両の組み立て中にキャリパ内の流体が車両のブレーキシステムの真空充填に干渉するのを避けるためにすり合わせ後にキャリパを掃除するのにかなりの時間を費やす必要がない。
【0033】
方法は、空気圧下の空気を適用しながら少なくとも1つの油圧ブレーキシールをキャリパ/ブレーキパッド組立体内の作動位置に維持することを含む場合がある。したがって、発明的に、油圧作動用に設計されたシールがすり合わせプロセス中に空気シールとして用いられる場合がある。油圧ブレーキ液ではなく空気を使用することに起因して、上記のように、シールはすり合わせ後に定位置にとどまることができ、キャリパは掃除する必要がない。
【0034】
本発明のさらなる態様は、車両に用いられるブレーキ構成部品のすり合わせ方法であって、ブレーキディスクを据え置き型の支持装置に設置することと、ブレーキディスクを駆動するための回転シャフトを提供することを含み、シャフトが、その上に存在するCVジョイントなどの少なくとも1つの、随意的には2つの関節式ジョイントを含む、方法を提供する。
【0035】
これは、非常に有利なことに、したがって、すり合わせ中に用いられる場合があるどのはずみ車又は他の回転構成部品に対する回転軸中心線及びブレーキディスクの角度も厳密に設定される必要がないので、ホイールナックル及び他のキャリア組立体構成部品の構築における公差を許容する。
【0036】
方法は、ブレーキディスクをスプラインホイールハブ上に設置することと、ホイールハブとシャフトとの間にスプライン接続部を提供することを含む場合がある。
【0037】
方法は、少なくとも一部のブレーキディスクを駆動するためのはずみ車を提供することと、ベアリングを介してはずみ車を据え置き型の支持装置に固定することと、シャフトの一端をはずみ車に取り付けることを含む場合がある。
【0038】
方法は、ブレーキ構成部品をブレーキディスクとして提供することを含む場合がある。
【0039】
本発明のさらなる態様は、少なくともブレーキディスク及びホイールハブを支持装置にクランプする/取り付けることを含み、少なくともブレーキディスクを回転させるための原動力となるトルクの供給源を提供することを含み、クランプ/取り付けの安全性の表示が提供されない限り、原動力となるトルクの供給源が作動するのを防ぐステップを含む、ブレーキ構成部品のすり合わせ方法を提供する。
【0040】
これは、有利な安全対策を可能にする。方法が行われる間に回転部品に蓄えられるエネルギーは極めて大きい場合があり、これは、どの回転部品の損失及びそれらが緩くなってきた場合に生じうる損傷も防ぐ一助となる。
【0041】
方法は、原動力となるトルクの供給源の作動を可能にする信号を提供するために、安全なクランプを表すクランプ中にトルク設定状態を確立することを含む場合がある。
【0042】
本発明のさらなる態様は、本発明の前の態様のいずれかに記載の方法を行うための装置を提供する。
【0043】
本発明のさらなる態様は、車両に用いられる炭素複合材料ブレーキディスクのすり合わせを行うためのすり合わせマシンであって、据え置き型の支持装置(好ましくは床に取り付けられるタイプの据え置き型のフレームなど)と、ブレーキディスクを据え置き型の支持装置に設置するためのマウントと、ブレーキディスクを回転可能に駆動するための原動力となる回転トルクの供給源と、そのすり合わせ、慣らしのためにブレーキディスクの温度を摩擦により上昇させるべくブレーキディスクの摩擦面に摩擦係合を適用するように適合された摩擦組立体(少なくとも1つのブレーキパッドを含むブレーキキャリパなど)とを備えるマシンを提供する。
【0044】
有利なことに、ブレーキディスクは、車両又は試験路を使用せずに迅速にすり合わせを行うことができる。ブレーキディスクは、すり合わせが行われる前に水がブレーキディスクの材料を損傷する場合がある屋外に持ち出される必要がない。
【0045】
マウントは、サスペンション構成部品を介してブレーキディスクを車体に対して支持するように適合されたホイールハブ及びナックルを介してブレーキディスクを支持装置に設置するように適合されてもよい。
【0046】
すり合わせマシンは、ブレーキパッドをブレーキディスクと摩擦係合させるために摩擦組立体のブレーキキャリパに加圧空気を供給するように適合された空気圧源を含む場合がある。
【0047】
空気圧源は、加圧空気を約(a)10〜300バール、(b)20〜100バール、(c)25〜60バール、(d)30〜50バール、(e)35〜45バール、(f)100バール未満、(g)75バール未満又は60バール未満、(h)20バール以上、又は(i)約35、40、又は50バールの圧力で供給するように適合されてもよい。
【0048】
すり合わせマシンは、約8〜10バールの乾燥作業場空気供給などの供給源からの空気の圧力を増加させるように適合された圧力上昇装置を含んでもよい。
【0049】
本発明のさらなる態様は、ブレーキディスクの慣らしが複数のヒートサイクルで行われるように、回転速度及びブレーキキャリパ圧を含む慣らしパラメータを制御するように適合されたコントローラを含み、各ヒートサイクルが、ブレーキディスクの基準温度が増加する熱入れ段階と、基準温度が減少する冷却段階とを含む、すり合わせマシンを提供する。したがって、すり合わせ中にディスク内の非常に正確かつ繰り返し可能な化学/構造的変化を達成することができる。
【0050】
これは、非常に繰り返し可能かつ有用なすり合わせを提供することができる
【0051】
コントローラは、各サイクル中に基準温度をピーク温度に上げ、次いで、基準温度を低下した温度に下げるように慣らしを制御するように適合されてもよく、少なくとも1つのサイクルの少なくとも1つのピーク温度は、300℃以上、好ましくは400℃以上又は500℃以上、より好ましくは600℃以上である。
【0052】
すり合わせマシンは、基準温度をブレーキディスクの表面温度として測定するように適合されるIR温度センサなどのセンサ又はデータロギング熱電対を含んでもよい。
【0053】
空気圧源は、各熱入れ段階中にブレーキディスクに関連するキャリパに実質的に一定の(又は変化する)値のブレーキ圧をかけるように適合されてもよい。
【0054】
空気圧源は、ブレーキ圧を、各サイクル中の時間の約5%から75%までの間、例えば、各サイクル中の時間の約20%から50%までの間又は約15%から40%までの間の時間にわたってかけるように構成されてもよい。
【0055】
空気圧源は、より低いピーク温度を有する少なくとも1つのサイクルよりも、より高いピーク温度を有する少なくとも1つのサイクルの方が、より小さい時間の割合にわたってブレーキ圧をかけるように適合されてもよい。
【0056】
すり合わせマシンは、ブレーキディスクに摩擦加熱を適用するためのスタート速度でブレーキディスクを回転駆動するのにモータを含んでもよい。
【0057】
モータは、約30から200KWまでの間、好ましくは50から100KWまでの間の電力で動作する、及び/又は約250〜1000Nmまで、好ましくは約300〜600Nm又は約350〜550Nmまでのトルクをかけるように適合されてもよい。
【0058】
モータは、いくつかの例を挙げると、約250〜2500RPM、好ましくは約400〜2000RPM、より好ましくは約600〜1750RPM、約700〜1600RPM、約800〜1100RPM、又は約1200〜1500RPMの範囲内のスタート速度で動作するように適合されてもよい。
【0059】
モータは、ブレーキディスクが嵌められるべき車両が70mph以上、より好ましくは100mph以上、例えば、約100〜150mph、一例では130mphの速度で走行しているときにブレーキディスクの回転速度に等しくなるように選択されたスタート速度で動作するように適合されてもよい。
【0060】
すり合わせマシンは、ブレーキディスクに回転接続されるはずみ車を含んでもよく、はずみ車は、ブレーキディスクが摩擦により加熱される間にブレーキディスクにトルクをかけるように適合される。
【0061】
はずみ車は、10から200kgmまでの間、好ましくは25から100kgmまでの間、より好ましくは40〜80kgm、例えば50又は75kgmの質量慣性モーメントを有してもよい。
【0062】
ブレーキディスクは、ブレーキを備える4つのロードホイールを有し、かつ、Xkgの空車重量を有するように適合される、車両に適用するためのものであってもよく、はずみ車の質量慣性モーメントは、約(X/10)から(X/100)kgmまでの間、例えば、約(X/20)〜(X/50)kgmであってもよく、質量慣性モーメントは、随意的に、ブレーキディスクが車両のフロントホイール用のときに約(X/10)〜(X/30)kgmであり、ブレーキディスクが車両のリヤホイール用のときに約(X/30)〜(X/50)kgmである。
【0063】
すり合わせマシンは、ブレーキディスク及び/又はブレーキディスクに関連するブレーキキャリパの方に冷却空気流を誘導することによってブレーキディスクを冷却するための空気流冷却器システムを含んでもよい。
【0064】
空気流冷却器システムは、ディスクがそれに関連するキャリパの中に及び/又はキャリパ内の少なくとも1つのブレーキパッドの方に回転するように適合される位置付近のディスク上に空気を吹きつけるように適合されてもよい。
【0065】
本発明のさらなる態様は、組み立てられたナックル、ホイールハブ、ブレーキディスク、ブレーキキャリパ、及び少なくとも1つのブレーキパッドを備えるホイールキャリヤ組立体を提供し、ブレーキディスクは、上記の本発明の態様のいずれかに従って慣らしが行われている。
【0066】
本発明のさらなる態様は、油圧により作動されるキャリパ/ブレーキパッド組立体を有する車両上で用いられる炭素複合材料ブレーキディスクのすり合わせを行うためのすり合わせマシンであって、ブレーキパッドをブレーキディスク上に摩擦係合するべくキャリパ/ブレーキパッド組立体の中に空気圧下の空気を適用するための空気源を有するマシンを提供する。
【0067】
ブレーキキャリパを含む十分に組み立てられたホイールキャリヤユニットに、作動液を使用せずにすり合わせを行うことができるので、これは非常に有利である。したがって、車両の組み立て中にキャリパ内の流体が車両のブレーキシステムの真空充填に干渉するのを避けるためにすり合わせ後にキャリパを掃除するのにかなりの時間を費やす必要がない。
【0068】
本発明のさらなる態様は、車両に用いられるブレーキ構成部品のすり合わせを行うためのすり合わせマシンであって、据え置き型の支持装置と、ブレーキ構成部品を駆動するための回転シャフトを含み、シャフトが、その上に存在するCVジョイントなどの少なくとも1つの、随意的には2つの関節式ジョイントを含むマシンを提供する。
【0069】
これは、非常に有利なことに、したがって、用いられる場合があるどのはずみ車又は他の回転構成部品に対する回転軸中心線及びブレーキディスクの角度も厳密に設定される必要がないので、ホイールナックル及び他のキャリア組立体構成部品の構築における公差を許容する。
【0070】
シャフトは、ホイールハブと回転によりロックされる係合をするためのスプライン接続部を含んでもよい。
【0071】
本発明のさらなる態様は、ブレーキ構成部品のすり合わせを行うためのすり合わせマシンであって、少なくともブレーキディスク及びホイールハブを支持装置に取り付けるためのクランプ又はアタッチメントと、少なくともブレーキディスクを回転するための原動力となるトルクの供給源と、クランプ/取り付けの安全性の表示が提供されない限り、原動力となるトルクの供給源が作動するのを防ぐための安全インターロックとを有するマシンを提供する。
【0072】
これは、有利な安全対策を可能にする。方法が行われる間に回転部品に蓄えられるエネルギーは極めて大きい場合があり、これは、どの回転部品の損失及びそれらが緩くなってきた場合に生じうる損傷も防ぐ一助となる。
【0073】
安全インターロックは、原動力となるトルクの供給源の作動を可能にする信号を提供するために、安全なクランプを表すクランプ/取り付け中にトルク設定状態を処理するように適合されてもよい。
【0074】
本発明は種々の方法で実施されてもよく、車両に用いられるブレーキディスクのすり合わせ方法及びそのための装置の好ましい実施形態を、ここで添付図を参照しながら単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】本発明の好ましい実施形態に係る車両に用いられる炭素複合材料ブレーキディスクのすり合わせを行うための好ましい装置の概略図である。
図2図1の装置に用いられる空冷器具を概略的に示す図である。
図3図2に示された装置の一部の側面図である。
図4図1の装置を用いてすり合わせが行われる4つのブレーキディスクを組み込んだ自動車の例を示す図である。
図5図4のブレーキディスク及び車両を生産するために図1の装置を用いるときに実施される、時間に対するブレーキディスク表面温度、圧力、ブレーキディスク回転速度、及びブレーキキャリパの空気圧を示す、すり合わせプロセスのチャートである。
図6】ブレーキディスクを図1の装置内の定位置に保持するために、ブレーキディスクを保持するためのナックルをどのようにクランプすることができるかを概略的に示す図である。
図7図6のナックル用のクランプと、クランプ力を制御するためのトルクレンチを示す概略図である。
図8】関連するキャリパ、並びに、関連するホイールハブ及びダストカバーの一部、及びナックルの一部と共にブレーキディスクを示す図である。
図9】キャリパピストン及び作動液シールを概略的に示す、キャリパの一部及びブレーキディスクの一部の概略図である。
図10図1のすり合わせ装置が或る修正版において3つの他の同様のすり合わせ装置と共に1つの部屋に収容され、そのうちの2つがフロントホイールのブレーキディスクのすり合わせ用であり、そのうちの2つがリヤホイールのブレーキディスクのすり合わせ用である場合の修正版を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
図1に示すように、本発明の好ましい実施形態では、人員がアクセスするためのドア12を有する部屋10は、取付具16によって部屋の床15に取り付けられてもよいフレーム14又は据え置き型の支持構造体を含むブレーキのすり合わせマシン17を収容している。
【0077】
モータ18が、マウント20によってフレーム14に取り付けられ、ドライブシャフト22によってはずみ車28に接続され、はずみ車はベアリング32によって設置されており、ベアリング32はマウント31、33によってフレーム14に取り付けられる。ドライブシャフト34が、はずみ車28を、CVジョイント36、38を介してブレーキディスク41を有するスプライン接続部40に接続する。
【0078】
ブレーキディスク41は、ホイールハブ100及びナックル102を介してフレーム14に接続され、ホイールハブ及びナックルは明快にするために図1には示されていない。ナックル102は、図6図7、及び図8に示されており、クランプ構成42を介してフレーム14に設置される。
【0079】
図8で見られるように、ナックル102、ホイールハブ100、及びブレーキディスク41は、「コーナーユニット」又はホイールキャリヤ組立体104の一部であり、これは、ナックル104に取り付けられるダストシールド106と、ナックル102に取り付けられるキャリパ44も含む。ナックル102の一部だけが図8に示されていることに留意されたい。図8に部分的に示され、図9に概略的に示されるように、キャリパ44は、その内部に、ブレーキパッド46、48、キャリパピストン106、及び作動液シール108を含む。車両110(図4)上のホイールキャリヤ組立体104の通常の使用中に、伝統的なブレーキパイプ118、ブレーキペダル120、関連する従来のブレーキ構成部品122を用いてキャリパ44の油圧入口116を介して油圧をかけられてもよい。
【0080】
図4に示すように、ホイールキャリヤ組立体104は、サスペンション構成部品126を介してナックル102をボディ124に接続することによって車両110のシャーシ又はボディ124に取り付けられてもよい。
【0081】
入口116で作動液の圧力をかけられるときに、内部キャリパ供給路128(図9)が加圧されて、作動液シール108が押され、これが次に、キャリパピストン106をブレーキパッド46、48に押しつける(実際には、パッドは、ディスク41との係合のために摩擦材料が上に設置された金属バッキングプレートからなってもよい)。
【0082】
図7に示すように、ブレーキディスク41は、ホイールハブ100に取り付けられ、ホイールハブ100は、ベアリング107によってナックル102に設置される。この構成は、種々の従来の実践の形態に従って変えられてもよい。
【0083】
図7及び図6に示されるコーナーユニットのマウント又はクランプ構成42は、接続部141、143を用いてフレーム14にしっかりと嵌められてもよい、上側クランプ140及び下側クランプ142を含んでいてもよい。上側クランプ140及び下側クランプ142は、可動クランプ部材144、146及び反作用要素145、147を含んでいてもよく、クランプ部材144、146は、ナックル102の上側クランプ位置148及び下側クランプ位置150のそれぞれでナックル102の表面のそれぞれとクランプ係合するべくトルクをかけられるように適合されている(図6及び図7)。
【0084】
したがって、上側ねじ152及び下側ねじ154は、それぞれ、それぞれの所定のトルクに達するまで、したがって、ナックル102とフレーム14との間に所定の安全なクランプ作用が確実にもたらされるまで、トルクをかけられてもよい。ねじ152、154は、トルクレンチ/リーダ84によってトルクをかけられてもよく、これは信号をトルクデータフローパス85に沿ってシステムコントローラ54に提供してもよく、これは、ホイールキャリヤ組立体104が定位置にあり、かつ、所定の量に設定されたねじ152、154に対するトルクでしっかりとクランプされたことを示す信号を受信せずにモータ18が作動するのを防ぐ。
【0085】
図6に示すように、上側クランプ140及び下側クランプ142は、第3のクランプ位置158でナックル102の上/周りにクランプすることができる第3のクランプ組立体(図示せず)によって補助されてもよい。同様の方法で、第3のクランプ位置152でのクランプは、ねじ152、154に類似したトルクねじなどの使用によって予め設定されたレベルにクランプされてもよい。
【0086】
図1に示すように、電力供給部52がシステムコントローラ54に接続される。さらに、システムコントローラ54は、モータ18を制御するためのモータ制御/電力経路58によってモータ18に接続される。同じく図1に示すように、冷却ファン/ブロワダクト60が、冷却ファンモータ電力/制御経路62を介してシステムコントローラ54に接続される。図2及び図3に示すように、吹出しダクト61は、冷却する目的でブレーキディスク41及び/又はキャリパ44に向けられる吹出しノズル63を有してもよい。装置の使用中に、一実施形態では、ノズル63の出口直径は約9センチメートル、例えば5〜20センチメートルであり、すり合わせ中とすり合わせ熱処理が完了した後のクールダウンサイクルとの両方においてディスク41とキャリパ44との両方を冷却するために、40mph付近の出口速度でおよそ10〜20又は25℃で冷却空気を吹き出す。
【0087】
同じく図1に示すように、光学IRディスク表面温度センサ63が、ブレーキのすり合わせ中のブレーキディスク41の表面温度を記録するために用いられ、温度がデータ通信経路65を介してシステムコントローラ54に送られ、そこでログを取られ、将来の参照のためにホイールキャリヤ組立体104又はその構成部品を参照するデータにデジタル方式で付加されてもよい。
【0088】
図1はまた、圧縮空気を約6〜8バールで空気圧増幅器68に供給するように適合される作業場圧縮空気源64を示し、空気圧増幅器68は、空気圧増幅器の電力/制御経路74を介してシステムコントローラ54に接続されている。空気圧増幅器68(例えば、高圧空気の貯蔵のためのアキュムレータ、プレナム、又はシリンダを一体的に含んでいてもよい)はまた、約30〜50バールまで上昇した導管70内の圧力を提供する、作動液ではなく空気でキャリパ44を作動することができるように、空気導管70を介してキャリパ流体入口116に接続される。
【0089】
図1はまた、集塵機の電力/制御経路78を介してシステムコントローラ54に接続される集塵機ノズル76を示し、集塵機ノズル76は、集塵ライン80を介してダストサイクロンフィルタ/排気出口82に接続されており、これにより、すり合わせプロセス中に発生したブレーキダスト又は他の廃棄物を安全に収集することができる。
【0090】
図5に示された例では、ブレーキディスク41は、以下のように、そのすり合わせプロセスを完了するのに8サイクルを受ける。
【0091】
最初に、ホイールキャリヤ組立体104が、前述のようにフレーム14上の定位置にクランプされる。次に、すべての人が部屋10を離れ、ドア12が閉められ、ロックされる。ドアロック/センサ86が、ドアロックデータフローパス88に沿ってシステムコントローラ54に信号を送信する。部屋の外に存在するマスタコントローラ200を用いて、オペレータ(図示せず)が、マスタコントローラ200を用いてシステムコントローラ54にブレーキのすり合わせを開始する信号を送信する。システムコントローラ54が、最初に、クランプねじ152、154がトルク/レンチ/リーダ84によって十分にトルクをかけられることをトルクデータフローパス85を介してチェックする。ドアがロックされ、ホイールキャリヤ組立体104がしっかりとクランプされた状態で、集塵機ノズル76/サイクロンフィルタ/排気出口82がオンに切り換えられ、空気圧増幅器68が、導管70に沿って高圧空気供給をオンに切り換える準備ができているその内部ソレノイド204と共に作用する準備ができた状態となる。同様に、光学赤外ディスク表面温度センサ63が、冷却ファン/ブロワ60と同じようにオンに切り換えられる。
【0092】
コントローラ54は、次いで、モータ18に、シャフト22、34と、はずみ車28と、ブレーキディスク41を、図5のポイント300でおよそ550rpmのアイドル速度まで駆動させる。この期間中に、ブレーキディスク温度は、図5の302で示されるようにおよそ200℃に上昇する場合がある。次いで、第1のすり合わせサイクル「C1」の開始時に、モータ18が回転構成部品を、1400rpmを少し超えるまで加速する。
【0093】
次に、空気圧増幅器68のソレノイド204が開かれ、ライン70上の圧力がほぼ直ちにおよそ37バールに上げられ、これにより、ブレーキパッド46、48がブレーキディスク41に摩擦接触する。モータ18上のトルクが、ほぼ同時に、およそ20秒の期間にわたってオフに切り換えられ、スピン構成部品の回転速度が、ブレーキディスク41に対するブレーキパッド46、48の作用によってほぼ直線的に約600rpmに減速される。この期間中に、ブレーキディスク温度が、およそ350℃で図5のポイント304でピークとなる。
【0094】
次いで、ソレノイド204が閉じられ、ライン70がベントされ、短い速度過渡304の後で、回転速度がおよそ600rpmに設定される。
【0095】
次いで、ブレーキディスク温度が約225℃に低下する。サイクルC1の終了時に、図示される8サイクルのうちの次のサイクルが始まる。各サイクル中に、回転速度が、1400rpmを少し超えるまで上げられ、次いで、ブレーキがかけられる期間中におよそ600rpmに下げられる。サイクルの進行に伴い、サイクル2でのディスク表面のピーク温度はおよそ375℃であり、次のサイクルは約425℃のピーク温度を有し、その次のサイクルはおよそ600℃のピーク温度を有し、その後のサイクルはすべて約600から750℃までの間のピーク温度を有する。各サイクル中に、温度はピーク温度から約150〜225℃下がる。サイクルが進行していくのに伴い、ディスク温度は、平均に関してもピーク温度及び最低サイクル温度に関しても、概してより高くなる。さらに、サイクルのなかでライン70に沿っておよそ37バールの圧力をかけることでブレーキが「かけられる」時間の割合がより少なくなり、これは、温度がさらに上昇するのを回避し、かつ、温度を後のサイクルで約400〜650℃の範囲内に概して制御するためである。
【0096】
第8のサイクルの後で、回転速度が冷却モードで100RPMに設定される。ディスク温度が50℃に下がると、回転が止められ、部屋10にアクセスできるようにするためにドアロック/センサ86がロック解除される。これは、オペレータ又は他の誰かが熱い部品に触れてやけどする可能性を防ぐ。
【0097】
すべてのサイクルの終わりまでに、炭素複合材料ブレーキディスク41の材料が化学的に変化し、実質的により硬く、かつ、水を透過しなくなる。
【0098】
図8に示すように、ブレーキディスク41が従来の通気スロット43で通気されることにも注目される。
【0099】
装置の修正版では、図1に示される4つのフレーム14とすべての他の装置が、ドア12を有するより大きい部屋10内に配置されてもよく、4つのブレーキディスクに同様の方法で同時にすり合わせが行われてもよい。これらは、したがって、4つのホイールを有する車両の2つのフロントホイールキャリヤ組立体と2つのリアキャリア組立体を含んでもよく、例えばモーターカーのすべてのブレーキディスク41に同時にすり合わせが行われてもよい。フロントブレーキディスクに関するはずみ車の慣性モーメントは、リアブレーキディスクに関するものよりも高くしてもよい。
【0100】
静的装置(フレーム14及び他の構成部品)と共に、前述のすり合わせ装置及び方法は、安定した環境で行われる、より繰り返し可能かつ客観的なすり合わせ手順の使用により、従来技術で利用可能であるよりも高品質のすり合わせが行われたディスクを提供する。プロセスはまた、安全で、費用効果が高く、従来の方法よりも環境への害が少ない。クランプシステムは、コーナーユニット/ホイールキャリヤ組立体104をしっかりと損傷せずに有利に保持する。ナックル102は、例えばナイロン(商標)インサートを含む車両のサスペンション構成部品上に組み立てる準備ができた構成で提供することができ、これらはクランプによって損傷を受けない。クランプ構成は、ホイールキャリヤ組立体104がスライドしてスプラインシャフト34と係合できるようにするためにスライディングベッド(図示せず)を含んでもよく、シャフト34は、ホイールキャリヤ組立体104が固定される位置に関係なく、ホイールキャリヤ組立体104の位置決めに起因してはずみ車から外れることなくトルクを伝達できるようにするために各端又は端付近にCVジョイント36、38を含む。これは、コーナーユニットをはずみ車28の中心線に関してすり合わせマシン17内に正確に配置する必要をなくし、ホイールキャリヤ組立体104の構成部品の製造における変動する公差に適応できるので、ホイールキャリヤ組立体の設置を大いに簡易化する。したがって、ホイールコーナーユニット104のバランス/位置のずれに起因する振動をなくす又は最小にすることができる。
【0101】
ドライブシャフト34は、かなりの数の複数回の動作の後で摩耗する場合があり、マシン17の定期予防的メンテナンスの一部として有利に容易に取り替えることができる。
【0102】
プロセス中にかなりの量の回転運動エネルギーが生じ、前述の構成部品は、コーナーユニット/ホイールキャリヤ組立体104がすり合わせマシン17に頑丈に取り付けられるようにし、かつ、確実にコーナーユニット104が定位置に十分にクランプされなければマシン17を始動することができないようにし、安全特徴も、確実に使用前に部屋が排気され、ドア12がロックされなければならないようにする。締めることができるねじ又はボルト152、154の使用は、コーナーユニット/ホイールキャリヤ組立体104を定位置に取り付けるために確実に適正なクランプ負荷がかかるようにする。これらのねじのトルクと角度との両方は、すべてのねじが適正に締められない限り動作するのを防ぐようにマシン17をインターロックするためにAtlas Copco DC(登録商標)ツール84を用いて制御されてもよい。
【0103】
システムは、6又は8バールの標準乾燥作業場圧縮空気が、空気を30から50バールまでの間のどこかである場合がある、図5の例では約37バールであるライン70に必要とされる圧力に加圧する空気圧増幅器68に入ることを可能にする。空気圧増幅器は、空気をより高圧で貯蔵するためのシリンダを含んでもよく、又はこれと連通してもよい。有利には、キャリパピストン106を加圧するのに、ホイールキャリヤ組立体104が車両上に配置されると自動車に用いられることになる従来の作動液ではなく圧縮空気の空気圧が用いられる。キャリパを加圧するのに空気を使用することにより、後の段階で車両に組み立てるためにキャリパ組立体が乾燥した状態のままとなる。或る自動車生産では、作動液を充填されるブレーキシステムは、システムから空気抜きをする必要なしに車両のブレーキライン118を真空にし、ブレーキ液を真空中に放出することによって達成されるので、これは非常に有利である。キャリパ44が油圧ブレーキ液で「濡れた」場合、制動システムを完全に満たすのに必要とされる真空を達成することはできず、ブレーキのすり合わせプロセス中にキャリパ44を加圧するのに空気を使用することは非常に有利であると考えられる。
【0104】
すり合わせプロセスはまた、ドアが閉じられ/ロックされ、部屋10の中に誰も居なくならない限り作動するのを防ぐ、ドアロック/センサ86からのインターロックによって安全にされる。PCベースのシステムであり得るシステムコントローラ54及びマスタコントローラ200は、モータ及び空気圧を操作してもよい。システムコントローラ54は、プログラム可能論理コントローラ(PLC)を含んでもよい。
【0105】
異なるタイプ及びサイズのディスクのすり合わせがマシンによって行われる場合があるので、オペレータは、当該ディスクにとって確実に適正なパラメータが用いられるようにするために、バーコードスキャナを用いて車両の詳細をマスタコントローラ200に入力することによってマシン17をスタートしてもよい。次いで、はずみ車が、強力な電気モータ18を用いて、例えば図5に示された1400rpmを少し超える速度に、若しくは1200rpm又はより低い速度などの異なる速度に加速されてもよい。
【0106】
はずみ車は、およそ100〜150mphで走行している状態のホイールキャリヤ組立体が嵌められるべき車両によって発生することになるのと同様の量の回転慣性を呈してもよい。電気モータは比較的強力であり、はずみ車を動作速度(約20秒で、例えば1200又は1400rpmを少し超える)に加速することができる。キャリパはシリコンで作製される作動液シール108への損傷を防ぐために約110度以下を保たなければならないので、この短い期間は、熱がディスク41から失われ、キャリパ44に侵入してキャリパを不都合に過熱する可能性を防ぐので、有利である。プロセスは、使用される車両ディスク41に適切な所望のすり合わせが行われたブレーキ表面が達成されるまで一連の加速、減速、及びクールダウン実行を定義するべくPC又はマスタコントローラ200によって制御される。プロセスによって発生するブレーキダストは、前述のように都合よく除去及びフィルタされる。
【0107】
有利には、すり合わせプロセスの最後は、冷却を助けるのに送風機61、60が用いられている間、ディスクが約100RPMで回転させられる、クールダウンプロセスを含んでもよい。これは、したがって、ディスク温度を図5のサイクルの最後に示されるおよそ500度から下げるために、図5に示された最終サイクルの後で行われることになる。ドアロック/センサ86は、感知した温度が50℃以下になるまで部屋10への人間/オペレータのアクセスが許されないように、ドア12が開かないように制御される。次いで、シャフト22、34が停止され、ドア12が開けられてもよい。これは、有利に確実に、ブレーキ構成部品が熱いときにそれらによってオペレータがやけどしないようにする。
【0108】
光学赤外センサ63は、品質及びトレーサビリティの目的でPC200によって車両に対して記録されるディスク表面温度を監視する。特定の実施形態では、IRセンサ63は、すり合わせ手順中に閉ループ温度制御に用いられないが、こうした制御は他の実施形態では用いることもできる。
【0109】
プロセスは、ブレーキのすり合わせを行うために試験路上で車を用いるときよりもはるかにより短い時間サイクルに圧縮される場合があり、プロセスでのすり合わせのエネルギー要件も減らされる。プロセスは、安定した環境において気象条件から切り離して行うことができ、繰り返し性を改善し、かつ、試験路上に存在する場合がある水分によってすり合わせの前にディスクに生じうるどのような損傷も防ぐ。プロセスはまた、近隣への騒音などによる近所迷惑を生じないので、一日のうちのいつでも行うことができる。すり合わせプロセスは、これを完了するのに車両を必要とせず、ゆえにすり合わせプロセス中に車両の損傷が生じない。使用されるエネルギーを減らすために、すり合わせプロセスによって発生した熱を取り込んで、装置17を収容している建物を暖房するのに用いることができる。さらに、新しい又は交換サービス部品は、それらがディーラーに発送される前にすり合わせが行われてもよく、結果的に販売後の作業時間及びコストの大きな節約となる。
【0110】
ここで、好ましい実施形態に関係するいくつかの特徴の説明に移る。
【0111】
(A)いくつかの好ましい実施形態では、
− はずみ車のサイズ/質量(例えば慣性モーメント)は、約1700〜1900kgの同等の車両質量をシミュレートすることができ、有利には、ヘビーブレーキングの下でこうした車両の回転慣性のシミュレーションが可能である。
− こうした車両のフロントディスクのすり合わせを行うのに用いられるはずみ車は、随意的に、75kgmと見積もることができる。
− こうした車両のリヤディスクのすり合わせを行うのに用いられるはずみ車は、随意的に、50kgmと見積もることができる。
− 必要とされるモータトルクは、システム内の熱の不都合に大きい損失及びキャリパへの伝熱を防ぐために、できる限り適度に速くそれぞれのはずみ車を有利に加速することができるように選択される。
− 定格モータトルクは、いくつかの実施形態では、75kgm及び50kgmのはずみ車を20秒以内に1600RPMに加速できるようにするのに十分なだけ高く選択される。
− 定格モータパワーは、いくつかの実施形態では、それぞれ約537Nm及び358Nmのトルク、7.16ms/2の加速、及び0から1600RPMまで23.4秒で、フロントディスクに関しては90KW駆動、リヤディスクに関しては60KW駆動であってもよい。
【0112】
(B)いくつかの実施形態では、以下のようにいくつかの特徴が変えられ又は調整されてもよい。
− 或る速度で駆動する車両をシミュレートするのに有用な最大回転駆動速度は、いくつかの実施形態では、以下の通りとなる場合がある。
− 各シャフト上で1600rpmまで(例えば、それぞれのシャフト/モータ/はずみ車/フレームと平行に1つの部屋の中に4つのマシンセットアップが存在するとき)、セットアップは、おそらく普通はこの速度の約50〜70%の速度だけを必要とし、これはそれを余裕で上回る
− ディスクのクランプを可能にするために圧力増幅器、アキュムレータ(プレナム)、及びソレノイド弁に基づくシステムによって提供されるべき圧力
− 随意的に試験モードで2つの別個の圧力が用いられることを可能にするためにレギュレータと共に2つの回路を有するソレノイド弁の作動により利用可能となる50バールまで
− 試験/すり合わせ中に、しかし実行後にも、ディスクとキャリパとの両方を冷却するのに必要とされる冷却空気流の速度
− およそ40mphまで
− すり合わせプロファイル
− すり合わせマシンは、随意的に、望ましくは、予め定義された手順に従って加速、減速などの一組のプログラムを実行する能力を有する。
【0113】
(C)図面を参照して前述した実施形態に係る具体例で用いられるいくつかのパラメータの説明
− 駆動速度
− 例えば800から1100RPMまでの間、又は約1500RPMまでの種々の駆動速度が用いられてもよい
− クランプ圧
− 45バールの空気圧
− 冷却空気流の速度
− ファンモータが45Hz(最大能力の90%)に設定される
− 冷却空気流の方向
− フロントホイールのブレーキコーナーユニットに関して、空気は、キャリパに入る際にディスクの表面上に直接向けられる(図2参照、これは、熱処理を達成するためにキャリパの外部でディスクがかなり熱いままであるが、キャリパの過熱を避けるためにキャリパに入る前に再び若干さらに冷却されることを可能にする)、90mmの配管。また、いくらかの空気がキャリパの中央のパッドの正面に向けられる
− リヤホイールのブレーキコーナーユニットに関して、ディスク表面上に冷却空気はなく、いくらかの空気がキャリパの中央のパッドの正面に向けられる
− すり合わせプロファイル
− 前述の図示される8サイクルの代わりに、それぞれクールダウン期間を間に有する、或るRPMへの/からの複数回の(例えば5回の)加速及び減速の、複数回の(例えば3回の)すり合わせ実行が用いられてもよい。
【0114】
炭素複合材料ブレーキディスクのすり合わせの代わりに、本発明の実施形態で説明される方法及び装置は、代替的に、他の摩擦構成部品又は他の炭素複合材料又は他の材料から作製されたブレーキディスク又はパッドなどの構成部品の慣らしのために使用されてもよい。
【0115】
付属の請求項によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく前述の実施形態に種々の修正がなされてもよい。
図1
図2
図3
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図5
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