【実施例】
【0070】
以下の実施例は、限定的であると考えられるべきではなく、セルロースの前処理方法とその後続の処理工程とをさらに説明するものである。
【0071】
反応時間は、セルロース酸化工程における次亜塩素酸塩の消費時間(つまり、セルロースの酸化時間)として表わされる。
【0072】
カバノキパルプを用いるアルカリ処理は、異なるアルカリ濃度と、TEMPO媒介パルプ酸化前の反応時間に行われた。パルプが0.3Mを超えるNaOH濃度で短時間(分)処理されたとき、反応速度は顕著に上昇した。反応時間は、2.5時間から0.5時間まで減少した。また、NaOCl消費の効率は、最も高い次亜塩素酸塩容量が使用されたとき、少なくとも10%、80%を超え、または85%を超える。予備試験によれば、1M NaOH(pH14)によるアルカリ処理は、さらに希釈されたNaOHによって行われるものよりもさらに効果的であった。0.1M NaOH(pH13)における処理は、TEMPO媒介パルプ酸化の選択性を向上しない。さらに、アルカリ処理後のパルプ洗浄は、セルロースIのNa−セルロース−Iへの可逆性が原因で重要であった。TEMPO媒介酸化の最も高い反応速度は、1M NaOHを用いるアルカリ処理(反応時間は重要ではなかった)と、pH9までのパルプの洗浄によってもたらされた。したがって、洗浄後、繊維において利用可能であり得るいくつかのNaOH残基が存在する。TEMPO媒介パルプ酸化の反応速度の向上は、アルカリ残基および/またはNa−セルロース−I格子が原因で十分なものであった。TEMPO媒介パルプ酸化の理想的なpH範囲は、8〜9である。NaClOは、pHが低い(<8)場合、より早く分解し、セルロースのC2およびC3における第2水酸基のケトンへの不要の酸化は、pHがより高い(>9)場合に起こる。
【0073】
様々なアルカリ濃度とアルカリ処理の反応時間とは、表1において比較されている。最も効果的なアルカリ処理は、1M NaOH(pH14)によって行われた。TEMPO媒介酸化の反応時間は、2.5時間から0.5時間まで減少した。パルプ番号2の選択性(mmol COOH/mmol NaClO)は、全ての測定されたパルプで最も高いものであった。様々なアルカリ処理時間とNaClO/TEMPO用量とは、表2において比較されている。TEMPO媒介酸化の反応速度は、アルカリ処理時間が1分から240分まで増加するとき、増加しなかった。0.05から0.028mmol /g パルプまでのTEMPO添加の減少は、27から65分間まで反応時間を増加させ、参照値よりも非常に低いものであった(パルプ番号1、155分)。選択性のわずかな減少(パルプ番号6、低いTEMPO用量)は、NaClO用量のわずかな増加によって補償することができる。0.25Mにおけるアルカリ処理はまだ反応速度に影響を与えないが、0.5M NaOHでの処理では、反応時間を減少させ、選択性を増加させる(表3)。注目すべきことに、アルカリ処理後、反応の効率性が、より高いNaClO用量が使用されたときでさえ保持された(表4)。このことは、処理されていない参照試料と全く反対である。
図1。
【0074】
実施例1 参照酸化(パルプ番号1)、アルカリ処理なし
ラジカルTEMPOの活性化
0.375gのラジカルTEMPOは、計量され、密閉されたガラス容器に移された。50mlの水は、容器に添加された。4mlのNaClO(12.9%)溶液は、TEMPO溶液に添加された。TEMPO溶液のpHは、pHメータを用いて1M H
2SO
4によって7.5に調節された。溶液は、全てのラジカルTEMPOが溶解するまで強く混合された。
【0075】
HOCl活性化TEMPO酸化
243g(乾燥物として48g)の非乾燥カバノキパルプは、密閉容器中で計量された。活性化TEMPO溶液は、パルプと混合された。パルプは、ビュッヒ反応容器に移され、819mlの水がパルプと混合された。パルプの温度は、18℃に設定された。63mlのNaClO(12.9%)は、パルプが強く混合されている間にポンプによって反応容器に添加された。NaClO添加は、13分後に終了した。pHは、NaClOの添加の間、ポンプ速度を制御することによって9未満に保たれた。パルプの温度は、NaClO添加後に25℃に上げられ、pHは、全てのNaClOが消費されるまで(152分後)滴定装置によって調節された(pH9、1M NaOH)。活性塩素滴定は、酸化処理の間にNaClO消費をチェックするために使用された。強い混合は、全てのNaClOが消費されるまで継続された。パルプは、酸化後にイオン交換水を用いて洗浄された。パルプのCED粘度およびカルボキシレート含有量(伝導度滴定)は、パルプ濃度測定後に測定された。
【0076】
酸性相酸化による残余のアルデヒドのカルボキシレートへの変換
10g(乾燥物として計算される)のTEMPO酸化されたパルプは、計量され、ビュッヒ反応容器に移された。パルプは、1000mlの水によって希釈された。0.6gのNaClO
2と2mlのDMSOとがパルプ溶液に混合された。溶液のpHは、pHメータを用いて1M H
2SO
4によって3に調節された。パルプ溶液の温度は50℃に調節され、溶液は、酸化が準備されるまで2時間混合された。パルプは、酸化後、イオン交換水で洗浄された。パルプのCED粘度およびカルボキシレート含有量(伝導度滴定)は、パルプ濃度測定後に測定された。
【0077】
実施例2 1M NaOH中におけるカバノキパルプのアルカリ処理とその後の洗浄
アルカリ処理
155mlの8M NaOH溶液と、635mlの追加の水と共に700gの非乾燥パルプ(乾燥物として65.66g)とは、ラージビーカに添加され、5%濃度と1M NaOH濃度とを得た。混合は、NaOHの添加直後に混合機器を用いて開始した。スラリーの温度は、混合の初期段階の間に測定された。
【0078】
pH9まで洗浄
処理時間(15分間)後、パルプスラリーは、ワイヤバッグに移され、脱イオン水を用いて直ちに洗浄された。パルプスラリーのpHは、約5%濃度において測定された。洗浄は、パルプスラリーのpHが約9になるまで継続された。次に、過剰の水が手動で除去され、より高い濃度のパルプを得た。パルプは、以下の酸化段階に先立って機械的に分解された。
【0079】
実施例3 アルカリ処理および洗浄後の酸化/中程度のカルボキシレート含有量(パルプ番号2)
ラジカルTEMPOの活性化
0.375gのラジカルTEMPOは計量され、密閉されたガラス容器に移された。50mlの水は、容器に添加された。4mlのNaClO(13.1%)溶液は、TEMPO溶液に添加された。TEMPO溶液のpHは、pHメータを用いて1M H
2SO
4によって7.5に調節された。溶液は、全てのラジカルTEMPOが溶解するまで強く混合された。
【0080】
HOCl活性化TEMPO酸化
226g(乾燥物として46g)のアルカリ処理された非乾燥カバノキパルプは、密閉容器で計量された。活性化TEMPO溶液は、パルプと混合された。パルプは、ビュッヒ反応容器に移され、839mlの水がパルプと混合された。パルプの温度は、18℃に設定された。60mlのNaClO(13.1%)は、パルプが強く混合されている間にポンプによって反応容器に添加された。NaClO添加は、14分後に終了した。pHは、ポンプ速度を制御することによってNaClOの添加の間に9以下に保持された。パルプの温度はNaClO添加後25℃に上げられ、pHは、全てのNaClOが消費される(31分後)まで滴定装置によって制御された(pH9、1M NaOH)。活性塩素滴定は、酸化処理の間にNaClO消費をチェックするために使用された。強い混合は、全てのNaClOが消費されるまで継続された。パルプは、酸化後にイオン交換水を用いて洗浄された。パルプのCED粘度およびカルボキシレート含有量(伝導度滴定)は、パルプ濃度測定後に測定された。
【0081】
実施例1に記載されるような、酸性相酸化による残余のアルデヒドのカルボキシレートへの変換
【0082】
実施例4 アルカリ処理および洗浄後の酸化/高いカルボキシレート含有量(パルプ番号14)
ラジカルTEMPOの活性化
0.375gのラジカルTEMPOは、計量され、密閉されたガラス容器に移された。50mlの水が容器に添加された。4mlのNaClO(13.3%)溶液は、TEMPO溶液に添加された。TEMPO溶液のpHは、pHメータを用いて1M H
2SO
4によって7.5に調節された。溶液は、全てのTEMPOが溶解するまで強く混合された。
【0083】
HOCl活性化TEMPO酸化
269g(乾燥物として48g)のアルカリ処理された非乾燥カバノキパルプは、密閉容器内で計量された。活性化TEMPO溶液は、パルプと混合された。パルプは、ビュッヒ反応容器に移され、839mlの水がパルプに混合された。パルプの温度は、18℃に設定された。100mlのNaClO(13.3%)は、パルプが強く混合されている間にポンプによって反応容器に添加された。NaClOの添加は、19分後に終了した。pHは、ポンプ速度を制御することによってNaClOの添加の間、9以下に保持された。パルプの温度は、NaClO添加後に25℃に上げられ、pHは、全てのNaClOが消費される(124分後)まで滴定装置によって制御された(pH9、1M NaOH)。活性塩素滴定は、酸化処理の間にNaClOの消費をチェックするために使用された。強い混合は、全てのNaClOが消費されるまで継続された。パルプは、酸化後にイオン交換水で洗浄された。パルプのCED粘度およびカルボキシレート含有量(伝導度滴定)は、パルプ濃度測定後に測定された。
【0084】
実施例1に記載されたような、酸性相酸化による残余のアルデヒドのカルボキシレートへの変換
【0085】
実施例5 様々な酸化パルプの流動化
マイクロフルイディクス M110P
パルプ試料のパルプ濃度は、水によって約1.5%に調節された。試料は、Turrexによって10分間混合された。pHは、NaOHおよびpHメータによって9に調節された。パルプ溶液は、2000bar圧力によって200μmチャンバと100μmチャンバとを通された(=1回通過)。パルプ分散液は、流動化においてゲルを形成した。
【0086】
キッチンブレンダ フィリップス HR2084 (650W)
1〜3gの酸化パルプは、キッチンブレンダに添加された。パルプは、最大速度によって混合され、水は、混合パルス間のわずかな間に混合チャンバに添加された。pHが8未満である場合、1M NaOHの数滴がパルプ混合物に添加された。いくつかの混合パルス後、パルプは、ゲル化した(高いカルボキシレートパルプ)。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0087】
アルカリ処理は、TEMPO媒介パルプ酸化の反応時間を顕著に減少させる。さらに、パルプ酸化の選択性は、わずかに増加する。2段階酸化の間にカルボキシレートに変換された残余のアルデヒドのより多い量は、アルカリ処理されたパルプが高いカルボキシレート含有量に容易に酸化することができることを示す。アルカリ処理は、触媒消費量を低下させるために使用することができ、パルプ酸化の間における非常に高額な出費である。なぜなら、短い反応時間は、NaClO分解を減少させるからである。
【0088】
記載されたアルカリ処理は、非常に穏やかな処理であり、セルロース構造を不可逆的に変換しない。この処理は、マーセライズ加工、または他の強いアルカリ処理と混同されるべきではない。したがって、処理は、たとえば重合度を減少させるなど、酸化されたセルロースパルプの実質的な特性に影響を与えるものではない。
【0089】
実施例6 アルカリ処理および洗浄後の酸化/1M NaOHを用いてアルカリ処理され、中性pHに洗浄されたパルプ
アルカリ処理
700g(乾燥物として65.66g)の非乾燥パルプと共に155mlの8M NaOH溶液と635mlの追加の水とは、5%濃度および1M NaOH濃度を得るためにラージビーカに添加された。混合は、機械的ミキサを用いてNaOHの添加直後に開始された。スラリーの温度は、混合の初期状態の間に測定された。
【0090】
pH7まで洗浄
処理時間(15分)後、パルプスラリーは、ワイヤバッグに移され、脱イオン水を用いて直ちに洗浄された。パルプスラリーのpHは、約5%濃度において測定された。洗浄は、パルプスラリーのpHが約8になるまで継続された。8〜7の最終pH調節は、希釈された硫酸によって行われた。続いて、過剰の水が手作業で除かれ、より高い濃度のパルプを得た。パルプは、以下の酸化段階に先立って機械的に分解された。
【0091】
HOCl活性化されたTEMPO酸化
222g(乾燥物質として48g)のアルカリ処理された非乾燥カバノキパルプは、密閉容器で計量された。活性化されたTEMPO溶液(実施例3と同様)は、パルプと混合された。パルプはビュッヒ反応容器に移され、839mlの水はパルプと混合された。水槽の温度(反応容器を制御する)は、18℃に設定された。64mlのNaClO(13.1%)は、パルプが強く混合されている間に反応容器に添加された。NaClOの添加は、13分後に終了した。pHは、ポンプ速度を制御することによってNaClO添加の間において9以下に保持された。水槽の温度は、NaClO添加後25℃に設定され、pHは、全てのNaClOが消費されるまで(33分後)滴定装置によって制御された(pH9、1M NaOH)。活性塩素滴定は、酸化処理の間にNaClO消費をチェックするために使用された。強い混合は、全てのNaClOが消費されるまで継続された。パルプは、酸化後に脱イオン水によって洗浄された。CED粘度およびカルボキシレート含有量(伝導滴定)は、パルプ濃度の測定後に測定された。酸化後のパルプのカルボキシレート含有量は、0.92mmol COOH/g パルプであった。
【0092】
実施例1に記載されたような酸性相酸化による残余のアルデヒドのカルボキシレートへの変換。2段階酸化後におけるパルプのカルボキシレート含有量は、1.17mmol COOH/g パルプであった。
【0093】
実施例7 アルカリ洗浄処理後の酸化/1M NaOHを用いてアルカリ処理され、pH8に洗浄されたパルプ
155mlの8M NaOH溶液および635mlの追加の水と共に700gの非乾燥パルプ(乾燥物として65.66g)をラージビーカに添加し、5%濃度および1M NaOH濃度を得た。混合は、混合機器を用いてNaOHを添加した直後に開始した。スラリーの温度は、混合の初期状態の間に測定された。
【0094】
pH8まで洗浄
処理時間(15分)後、パルプスラリーは、ワイヤバッグに移され、脱イオン水で直ちに洗浄された。パルプスラリーのpHは、約5%濃度で測定された。洗浄は、脱イオン水によって25回洗浄することによって中性になるまで継続された。次に、過剰の水は、手作業で除去され、高濃度のパルプを得た。パルプは、以下の酸化段階に先立って機械的に分解された。
【0095】
HOCl活性化TEMPO酸化
210g(乾燥物として48g)のアルカリ処理された非乾燥カバノキパルプは、密閉容器内で計量された。活性化TEMPO溶液(実施例3と同様)は、パルプに混合された。パルプは、ビュッヒ反応容器に移され、852mlの水がパルプと混合された。水槽の温度(反応容器を制御する)は、18℃に設定された。63ml(13.1%)のNaClOは、パルプが強く混合されている間にポンプによって反応容器に添加された。NaClO添加は、9分後に終了した。pHは、ポンプ速度を制御することによってNaClO添加の間に9以下に保持された。水槽の温度は、NaClO添加後に25℃に設定され、pHは、滴定装置によって全てのNaClOが消費される(27分後)まで制御された(pH9、1M NaOH)。活性塩素滴定は、酸化処理の間にNaClO消費をチェックするために使用された。強い混合は、全てのNaClOが消費されるまで継続された。パルプは、酸化後脱イオン水を用いて洗浄された。パルプのCED粘度およびカルボキシレート含有量(伝導滴定)は、パルプ濃度の測定後に測定された。酸化後におけるパルプのカルボキシレート含有量は、0.91mmol COOH/g パルプであった。
【0096】
実施例1に記載されたような酸性相酸化による残余のアルデヒドのカルボキシレートへの変換。2段階酸化後のカルボキシレート含有量は、1.16mmol COOH/g パルプであった。
【0097】
実施例8 アルカリ洗浄処理後の酸化/3M NaOHを用いてアルカリ処理されたパルプ
アルカリ処理
465mlの8M NaOH溶液および325mlの追加の水と共に700g(乾燥物として65.66g)の非乾燥パルプは、ラージビーカに添加され、5%濃度および1M NaOH濃度を得た。混合は、混合機器を用いたNaOH添加の直後に開始した。スラリーの温度は、混合の初期段階の間に測定された。
【0098】
pH9まで洗浄
処理時間(15分)後、パルプスラリーは、ワイヤバッグに移され、脱イオン水を用いて直ちに洗浄された。パルプスラリーのpHは、約5%濃度において測定された。洗浄は、パルプスラリーのpHが約9になるまで継続された。次に、過剰の水は、手作業で除去され、高濃度のパルプを得た。パルプは、以下の酸化段階に先立って機械的に分解された。
【0099】
HOCl活性化TEMPO酸化
244g(乾燥物として48g)のアルカリ処理された非乾燥カバノキパルプは、密閉容器で計量された。活性されたTEMPO溶液(実施例3と同様)は、パルプと混合された。パルプは、ビュッヒ反応容器に移され、821mlの水はパルプと混合された。水槽の温度(反応容器を制御する)は、18℃に設定された。61ml(13.1%)のNaClOは、パルプが強く混合されている間にポンプによって反応容器に添加された。NaClOの添加は、7分後に終了した。pHは、ポンプ速度を制御することによってNaClO添加の間に9以下に保持された。水槽の温度は、NaClO添加後に25℃に設定され、pHは、全てのNaClOが消費される(18分後)まで滴定装置によって制御された(pH9、1M NaOH)。活性塩素滴定は、酸化処理の間にNaClO消費をチェックするために使用された。強い混合は、全てのNaClOが消費されるまで継続された。パルプは、酸化後に脱イオン水を用いて洗浄された。パルプのCED粘度およびカルボキシレート含有量(伝導滴定)は、パルプ濃度測定後に測定された。酸化後におけるパルプのカルボキシレート含有量は、0.86mmol COOH/g パルプであった。
【0100】
実施例1に記載されたような酸性相酸化によるアルデヒドのカルボキシレートへの変換。2段階酸化後におけるパルプのカルボキシレート含有量は、1.20mmol COOH/g パルプであった。
【0101】
アルカリ前処理における水酸化物濃度の効果は、
図2に示される。様々な前処理パルプの結晶化度は、X線回折を用いて測定された。参照パルプの結晶化度(最も高いピークを有する曲線、実施例1)、1.0M NaOHを用いて処理されたパルプ(2番目に高いピークを有する曲線、実施例2)、および3.0M NaOHを用いて処理されたパルプ(低い2重のピークを有する曲線、実施例8)が比較された。参照パルプと1.0M NaOHを用いて処理されたパルプとの曲線は、ほとんど一致するが、3.0M NaOHを用いて処理されたパルプの曲線は、それらから外れ、セルロースIIの存在を示すことがX線回析曲線から分かる。NFCゲルを特徴付けるために、濁度およびブルックフィールド粘度が測定された。
【0102】
濁度は、光学濁度測定装置を用いて定量的に測定されてもよい。濁度を定量的に測定するために利用可能ないくつかの市販の濁度計が存在する。本発明において、濁度計に基づく方法が使用される。目盛付き比濁計からの濁度の単位は、比濁計濁度単位(NTU)と称される。測定装置(濁度計)は、調整され、標準調整試料を用いて制御され、希釈されたNFC試料の粘度の測定に続く。
【0103】
本発明の方法において、ナノフィブリル化セルロース試料は、前記ナノフィブリル化セルロースのゲル化点以下の濃度まで水に希釈され、希釈された試料の濁度が測定される。ナノフィブリル化セルロース試料の濁度が測定される前記濃度は、0.1%である。50mlの測定容器を備えるHACH P2100濁度計が濁度測定に使用される。ナノフィブリル化セルロース試料の乾燥物質が測定され、乾燥物質として計算される0.5gの試料が測定容器に入れられ、水道水で500gまで満たされ、約30秒間にわたって振とうによって強く混合される。遅滞なく、水性混合物は、5つの測定容器に分けられ、濁度計にはめ込まれる。各容器について3回の測定が実施される。平均値および標準偏差は、得られた結果から計算され、最終結果はNTU単位としてもたらされる。
【0104】
ブルックフィールド粘度
NFCの見掛け粘度は、ブルックフィールド粘度計または他の同様の装置を用いて測定される(ブルックフィールド粘度)。好ましくはベーンスピンドル(番号73)が使用される。見掛け粘度を測定するために利用可能ないくつかの市販のブルックフィールド粘度計が存在し、全て同じ原理に基づくものである。好ましくはRVDVスプリング(ブルックフィールドRVDV−III)が前記装置において使用される。ナノフィブリル化セルロースの試料は、水中で0.8重量%の濃度に希釈され、10分間混合される。希釈された試料は、250mlビーカに添加され、温度は、20℃±1℃に調節され、必要に応じて加熱され、混合される。低い回転速度10rpmが使用される。
【0105】
レオメータ粘度
NFCは、脱イオン水で0.5w%の濃度に希釈され、200gの混合物は、ビュッヒミキサ(B−400、最大2100W、ビュッヒラボテクニック社、スイス)を用いて3×10秒間ホモジナイズされた。
【0106】
NFC分散液の粘度は、30mmの直径を有する円筒状試料カップ中にナローギャップベーン(直径28m、長さ42mm)を備える応力制御回転レオメータ(AR−G2、ティー・エイ・インスツルメント社、イギリス)を用いて22℃で測定される。試料をレオメータに入れた後、それらは測定が開始される前に5分間保持された。安定状態の粘度は、せん断応力(加えられる回転力に比例する)を徐々に増加させて測定され、せん断速度(角速度に比例する)が測定される。特定のせん断応力における報告された粘度(=せん断応力/せん断速度)は、一定のせん断速度に到達後、または最大2分後に記録される。測定は、1000s−1のせん断速度を超えると停止される。本発明の方法は、ゼロせん断粘度を測定するために使用される。
【0107】
実施例3に係る酸化されたセルロース(パルプ番号2)は、実施例5に従ってフルイダイザを用いてナノフィブリル化セルロースに分解された。レオメータを用いて測定された、試料の濁度は32NTUであり、ブルックフィールド粘度は19600mPasであり、試料のゼロせん断粘度は15000Pasであり、降伏応力は11Paであった。
【0108】
表2の酸化されたセルロース(パルプ番号6)は、実施例5に従ってフルイダイザを用いてナノフィブリル化セルロースに分解された。試料の濁度は27NTUであり、ブルックフィールド粘度は9370mPasであった。
【0109】
酸化パルプから作製されたNFCの目標特性
典型的には、本発明の方法において、最終製品として、0.8%の濃度と10rpmの回転速度とで測定されたブルックフィールド粘度が少なくとも5,000mPa・s、有利には少なくとも15,000であるナノフィブリル化セルロースを得ることが目的である。粘度は、有利には5,000〜40,000mPa・sの範囲内にある。得られた水性ナノフィブリル化セルロース分散液は、いわゆるずり流動化挙動によって特徴付けられる。つまり、粘度が減少すると、せん断速度が上昇する。
【0110】
さらに、目的は、ナノフィブリル化セルロースであって、その濁度が、0.1wt%の濃度(水性媒体)で測定され、濁度計によって測定され、典型的には90NTU未満、たとえば3〜90NTU、好ましくは5〜60、より好ましくは8〜40であるナノフィブリル化セルロースを得ることである。
【0111】
さらに、目的は、ナノフィブリル化セルロースであって、0.5wt%の濃度(水性媒体)において回転レオメータによって測定された、1,000〜100,000Pa・s、好ましくは5,000〜50,000の範囲内のゼロせん断粘度(小さなせん断応力における一定粘度の「プラトー」)と、1〜50Pa、有利には3〜15Paの範囲内の降伏応力(ずり流動化が始まるせん断応力)とを有するナノフィブリル化セルロースを得ることである。