特許第6534691号(P6534691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6534691
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】パルプモウルド製卵収納トレー
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/32 20060101AFI20190617BHJP
   B65D 21/032 20060101ALI20190617BHJP
   B65D 21/02 20060101ALI20190617BHJP
【FI】
   B65D85/32 130
   B65D21/032
   B65D21/02 400
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-41176(P2017-41176)
(22)【出願日】2017年3月4日
(65)【公開番号】特開2018-144845(P2018-144845A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2018年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206392
【氏名又は名称】大石産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114731
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 重男
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 雅人
【審査官】 宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−013654(JP,A)
【文献】 特開2016−074433(JP,A)
【文献】 実開平05−000618(JP,U)
【文献】 特開2001−341720(JP,A)
【文献】 特開2002−193368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/32
B65D 21/02
B65D 21/032
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の卵収納凹部が縦横に列設され、隣接する卵収納凹部間には低隔壁が形成されると共に、各低隔壁の交差部に上記低隔壁より背の高い高支柱が形成され、これにより単一の卵収納凹部の周りに4つの上記高支柱が形成されたパルプモウルド製卵収納トレーにおいて、
上記各低隔壁は、上縁の尾根部が幅広に形成され、
上記各卵収納凹部は、底面中央部に円形水平面が形成され、該円形水平面から上方に立ち上がる内周面は、上方に行くに従い拡径された截頭円錐面から構成されることにより、上記各卵収納凹部の内周面の全体が円環状に形成され、これにより上記内周面が卵の外周面に水平に途切れのない円環状の線状に接触するものであり、
上記パルプモウルド製卵収納トレーは縦方向を短辺、横方向を長辺とする長方形状に形成され、少なくとも3枚のパルプモウルド製卵収納トレー(10−1,10−2,10−3)を長辺方向に沿って上記卵収納凹部の縦1行分を交互にずらして重ねたずらし重ね状態において、
下段のパルプモウルド製卵収納トレー(10−1)の上面の四隅部に4つの支持部(6a,6b,6c,6d)が設けられると共に、
上記4つの支持部(6a,6b,6c,6d)に対応する中段のパルプモウルド製卵収納トレー(10−2)の裏側に、上記各支持部(6a,6b,6c,6d)が当接する各4つの受部(7a,7b,7c,7d)が設けられ、
上記中段のパルプモウルド製卵収納トレー(10−2)の上面の四隅部に、上記下段のパルプモウルド製卵収納トレーの上記支持部(6a,6b,6c,6d)とは異なる位置に、4つの支持部(8a,8b,8c,8d)が設けられると共に、
上記中段のパルプモウルド製卵収納トレーの上記4つの支持部(8a,8b,8c,8d)に対応する上段のパルプモウルド製卵収納トレー(10−3)の裏側に、上記中段のパルプモウルド製卵収納トレーの上記各支持部(8a,8b,8c,8d)が当接する各4つの受部(9a,9b,9c,9d)が設けられ、
上記上面の上記各支持部及び上記裏側の上記各受部は同一の上記パルプモウルド製卵収納トレーの上記上面及び上記裏側に各々設けられており、
上記ずらし重ね状態において、上記上下段の上記各パルプモウルド製卵収納トレーの上記各支持部と上記各受部の当接により、上下に隣接するパルプモウルド製卵収納トレーの各周縁部間が略一定の間隔を以って離間した状態となるように構成されているパルプモウルド製卵収納トレー。
【請求項2】
上記各低隔壁の上記尾根部は、水平面状又は凸弧面状に形成されたものである請求項1記載のパルプモウルド製卵収納トレー。
【請求項3】
上記略一定の間隔は、5mm〜25mmの間の何れかの間隔である請求項記載のパルプモウルド製卵収納トレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鶏卵を複数収納するためのパルプモウルド製卵収納トレー関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鶏卵を収納するためのパルプモウルド製のトレーが広く用いられている。この種のトレーは、外周面に水平な縁が形成されると共に、縦横に複数の卵収納凹部が形成されたパルプモウルドによる一体成型品であり、上面の卵収納凹部に鶏卵が収納された状態で、段ボール箱等に多段に積層収納された状態で出荷されるものである(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3041572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のパルプモウルド製のトレーは、1つの卵収納凹部は周辺に4つの高い支持柱(高支柱)が形成されると共に、隣接する卵収納凹部との間には低い隔壁が形成されているが、上記隔壁の上縁(尾根部)は、線状の尾根部として形成されている。
【0005】
即ち、図17に示すように、上記隔壁50の横断面をみると、上縁50aが三角形の頂点を形成しており、上縁が線状の尾根部51を形成しているため、卵収納凹部内に卵を収納してトレー両端を持ち上げたとき、又は卵を収納したトレーを段ボール箱等に積層収納したとき、上記高支柱又は上記隔壁に上方から下方向きの加重がかかり、上記線状の尾根部51等に応力が集中して上記尾根部51からトレーが割れ易いという課題があった。
【0006】
また、上記従来のパルプモウルド製のトレーの卵収納凹部52は(図18参照)、金型にて成形する際に、卵収納凹部52の底面中央に、水平の小正方形底面を形成し、該正方形の四辺から各々上方に向けて四つの平面を形成し、この四つの平面の各1点Pにて卵の周側面を支持する構成であったが、鶏卵の曲面からなる周側面を、点で支持することになるため、振動等により鶏卵がずれ易いという課題があった。
【0007】
さらに、これらのパルプモウルド製のトレーは、トレーの長手方向に対して、複数のトレーが段違いに積層された状態(以下「ずらし重ね状態」という)から、分離装置により、1枚ずつ搬送コンベア上に分離落下されて行き、下流側にて自動卵挿入機により卵が自動的に挿入されるものであるが、上記分離装置による分離動作においては、誤動作防止の観点から、ずらし重ね状態における上下のトレーの間隔は従来トレーより若干広いこと、及び上記間隔は略一定であることが望ましい。
【0008】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、トレーの強度を増大すると共に、振動等に対して卵をずれ難く確実に保持し得るパルプモウルド製卵収納トレーを提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、さらに、ずらし重ね状態において、上下のトレー間隔を従来より拡大し、かつ一定のトレー間隔を形成し得るパルプモウルド製卵収納トレーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため本発明は、
複数の卵収納凹部が縦横に列設され、隣接する卵収納凹部間には低隔壁が形成されると共に、各低隔壁の交差部に上記低隔壁より背の高い高支柱が形成され、これにより単一の卵収納凹部の周りに4つの上記高支柱が形成されたパルプモウルド製卵収納トレーにおいて、上記各低隔壁は、上縁の尾根部が幅広に形成され、上記各卵収納凹部は、底面中央部に円形水平面が形成され、該円形水平面から上方に立ち上がる内周面は、上方に行くに従い拡径された截頭円錐面から構成されることにより、上記各卵収納凹部の内周面の全体が円環状に形成され、これにより上記内周面が鶏卵の外周面に水平に途切れのない円環状の線状に接触するものであり、上記パルプモウルド製卵収納トレーは縦方向を短辺、横方向を長辺とする長方形状に形成され、少なくとも3枚のパルプモウルド製卵収納トレー(10−1,10−2,10−3)を長辺方向に沿って上記卵収納凹部の縦1行分を交互にずらして重ねたずらし重ね状態において、下段のパルプモウルド製卵収納トレー(10−1)の上面の四隅部に4つの支持部(6a,6b,6c,6d)が設けられると共に、上記4つの支持部(6a,6b,6c,6d)に対応する中段のパルプモウルド製卵収納トレー(10−2)の裏側に、上記各支持部(6a,6b,6c,6d)が当接する各4つの受部(7a,7b,7c,7d)が設けられ、上記中段のパルプモウルド製卵収納トレー(10−2)の上面の四隅部に、上記下段のパルプモウルド製卵収納トレーの上記支持部(6a,6b,6c,6d)とは異なる位置に、4つの支持部(8a,8b,8c,8d)が設けられると共に、上記中段のパルプモウルド製卵収納トレーの上記4つの支持部(8a,8b,8c,8d)に対応する上段のパルプモウルド製卵収納トレー(10−3)の裏側に、上記中段のパルプモウルド製卵収納トレーの上記各支持部(8a,8b,8c,8d)が当接する各4つの受部(9a,9b,9c,9d)が設けられ、上記上面の上記各支持部及び上記裏側の上記各受部は同一の上記パルプモウルド製卵収納トレーの上記上面及び上記裏側に各々設けられており、上記ずらし重ね状態において、上記上下段の上記各パルプモウルド製卵収納トレーの上記各支持部と上記各受部の当接により、上下に隣接するパルプモウルド製卵収納トレーの各周縁部間が略一定の間隔を以って離間した状態となるように構成されているパルプモウルド製卵収納トレーにより構成される。
【0011】
上記截頭円錐面は、縦断面が円弧状となる截頭円錐面も含む概念である。このように構成すると、例えば高支柱に上方から下方向きの加重がかかった場合等においても、低隔壁が割れることがなく、強度の大なパルプモウルド製卵収納トレーを構成することができる。また、卵を卵収納凹部に収納すると、卵の下半部の周面が、截頭円錐面により円環状(線状)に支持されるので、振動等が生じても卵収納凹部内において卵のずれを抑制することができる。このように構成すると、複数のパルプモウルド製卵収納トレーをずらし重ね状態としたとき、上下のトレーの周縁部間に略一定の間隔が確実に形成されるので、分離装置により確実に1枚ずつのパルプモウルド製卵収納トレーを搬送コンベア等に分離落下させることができる。
【0012】
第2に、上記各低隔壁の上記尾根部は、水平面状又は凸弧面状に形成されたものである上記第1記載のパルプモウルド製卵収納トレーにより構成される。
【0015】
に、上記略一定の間隔は、5mm〜25mmの間の何れかの間隔である上記第記載のパルプモウルド製卵収納トレーにより構成される。

【0016】
このように構成すると、従来より間隔が広く、しかも一定間隔であるので、分離装置によりパルプモウルド製卵収納トレーを1枚ずつ確実に分離することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、例えば高支柱に下向きの加重が作用しても低隔壁が容易に割れることがなく、強度の大なパルプモウルド製卵収納トレーを構成することができる。
【0018】
また、卵を卵収納凹部に収納すると、卵の下半部の周面が、截頭円錐面により円環状(線状)に支持されるので、振動等が生じても卵収納凹部内において卵のずれを抑制することができる。
【0019】
また、複数のパルプモウルド製卵収納トレーをずらし重ね状態としたとき、上下のトレーの周縁部間に略一定の間隔が形成されるので、分離装置により確実に1枚ずつのパルプモウルド製卵収納トレーを搬送コンベア等に分離落下させることができる。
【0020】
また、従来に比較して、上記間隔が広く、しかも一定間隔であるので、分離装置によりパルプモウルド製卵収納トレーを1枚ずつ確実に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るパルプモウルド製卵収納トレーの正面図である。
図2図1のX−X線断面図である。
図3図1のY−Y線断面図である。
図4図1のZ−Z線断面図である。
図5】同上トレーの斜視図である。
図6】同上トレーの一部拡斜視図である。
図7】同上トレーの一部拡大正面図である。
図8】同上トレーの裏面の一部拡大斜視図である。
図9】同上トレーの裏面の一部平面図である。
図10】同上トレーのずらし重ね状態を示す図であり、図1のA部の矢視a方向の側面図である。
図11】同上トレーのずらし重ね状態を示す図であり、図1のB部の矢視b方向の側面図である。
図12】同上トレーのずらし重ね状態を示す図であり、図1のC部の矢視c方向の側面図である。
図13】同上トレーのずらし重ね状態を示す図であり、図1のD部の矢視d方向の側面図である。
図14】(a)(b)は同上トレーの低隔壁の一部斜視図である。
図15】同上トレーの卵収納凹部の形状を説明するための概略斜視図である。
図16図12のS−S線断面図である(下段のトレーと中段のトレーのみ示す)。
図17】従来のパルプモウルド製卵収納トレーの低隔壁の一部斜視図である。
図18】従来のパルプモウルド製卵収納トレーの卵収納凹部の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に基づいて本発明に係るパルプモウルド製卵収納トレーについて詳細に説明する。
【0023】
図1図5に示すように、パルプモウルド製卵収納トレー10は縦方向を短辺、横方向を長辺とする長方形状に形成され、周囲に短い平面状の周縁部11が形成され、上記周縁部11内に、複数の卵収納凹部1を縦横に列設し、隣接する卵収納凹部1間には低隔壁2が形成されると共に、各低隔壁2の交差部に上記低隔壁2より背の高い高支柱3が形成され、これにより単一の卵収納凹部1の周りに4つの上記高支柱3が形成されている(図7参照)。尚、図1において、図面を見て左側を「左」、右側を「右」と定義する。上記トレーにおいて、左側の短辺中央に1個の指入れ用切欠部16が形成され、右側の短辺中央部に2個の指入れ用切欠部17が形成されている。このパルプモウルド製卵収納トレー10は、いわゆる公知のパルプモウルド成型の方法により一体成型されたものである。
【0024】
上記各低隔壁2は、上縁の尾根部2aが水平状面2a’(図14(a)参照)又は凸弧状面2a”(図14(b)参照)となる幅広に形成されている。即ち、図6図7に示すように、1つの卵収納凹部1の上方開口部は4つの低隔壁2により略方形状に囲まれているが、各低隔壁2の尾根部2aは幅t1(例えばt1=5mm〜8mm)を有する幅広の尾根部として形成されている(図14(a)(b)参照)。勿論、全ての卵収納凹部1の周囲の低隔壁2について、上述のように、幅広の水平状面2a’又は凸弧状面2a”として形成される。
【0025】
尚、パルプモウルド製卵収納トレー10の金型の関係上、上記低隔壁2の尾根部2aの水平状面2a’又は凸弧状面2a”に、尾根の方向に沿う中央線2bが、上向きリブ状に若干突出した状態で形成されることがあるが(図6図7参照)、上記水平状面2a’又は凸弧状面2a”にこのような中央線2bが存在しても差し支えない。
【0026】
このようにパルプモウルド製卵収納トレー10の上記各低隔壁2の尾根部2aを幅広の水平状面2a’又は凸弧状面2a”とすることにより、高支柱3に対して下向きの力(矢印E方向の力、図4参照)が加わったときの低隔壁2の強度を大とすることができる。即ち、1つの高支柱3に下向きの力(矢印E方向)が加わったとき、当該加重は当該高支柱3に連なる四つの低隔壁2に分散されることになるが(図6参照)、上記四つの低隔壁2が加重方向(矢印E方向)に直交する方向の幅広に形成されているので、従来のように尾根部の頂部に応力が集中することなく、水平状面2a’又は凸弧状面2a”にて分散されるため、低隔壁2の割れを防止することができる。
【0027】
これにより、上記高支柱3に上記矢印E方向の力が加わったときにおいて、従来のように低隔壁2が割れることを防止することができ、パルプモウルド製卵収納トレー全体の強度を増大することができる。
【0028】
当該パルプモウルド製卵収納トレー10は全部の卵収納凹部1に鶏卵Gを収納した状態で、段ボール箱等に複数段重合収納されるが、そのとき、当該パルプモウルド製卵収納トレー10は、上下段間で、必ず、交互に180℃回転して収納される。即ち、上下段のパルプモウルド製卵収納トレー10は、指入れ用切欠部16,17が交互に逆向きとなるように、段ボール箱等に収納される。このとき、当該パルプモウルド製卵収納トレー10は、その構造上、下段のパルプモウルド製卵収納トレー10の全部の上記高支柱3の上に、上段トレー10の全部の卵収納凹部1の円形水平面4の裏面4’(図8参照)が当接した状態で(図4の状態)、上下のパルプモウルド製卵収納トレー10,10の周縁部11が上下方向に揃った状態となる。
【0029】
この状態において、上記各高支柱3に矢印E方向の力が加わることになる。本発明のパルプモウルド製卵収納トレー10は、低隔壁2の尾根部2aを幅広とすることにより、このような積層状態において、各高支柱3に矢印E方向の加重がかかっても、低隔壁2に割れを生ずることなく、強度の高いトレー10を実現したものである。
【0030】
また、箱詰時に、パルプモウルド製トレー10の卵収納凹部1に卵を収納した状態で短辺側の両縁を把持し、当該トレー10を持ち上げる動作が行われ、このときトレー10はその全体が卵の重量によりトレー中央部において下方に撓みを生ずるが、この場合においても、上記低隔壁2の幅広の尾根部2aにより、トレー全体の強度が向上しているので、低隔壁2が容易に割れることはない。
【0031】
さらに、上記各卵収納凹部1は、底面中央部に円形水平面4が形成され、該円形水平面4から上方に立ち上がる内周面は、上方に行くに従い拡径された截頭円錐面(截頭円錐内面)5から構成されている(図15参照)。また、上記截頭円錐面5は、図4に縦断面図として示すように、卵収納凹部1の断面において、上方にいくに従い拡径される内周の断面が直線ではなく円弧面4”を形成し、卵収納凹部1を鶏卵Gの下半部のように卵型に形成しても良く(図8の卵収納凹部1の裏面側の卵型形状5’参照)、このような卵型の形状も含めて内周面を截頭円錐面(截頭円錐内面)5としている。このように、鶏卵の下半部は三次元曲面を形成しているので、鶏卵の曲面に合うように卵収納凹部1の上記内周面を形成しても良い。
【0032】
このようにパルプモウルド製卵収納トレー10の全ての卵収納凹部1をこのように構成すると、卵収納凹部1の内周面は円環状(図15図7の円環状線q参照)に形成されているので、鶏卵を卵収納凹部1内に収納したとき、上記内周面が鶏卵の外周面に円環状(線状又は水平に途切れのない円環状の線状)に接触するため、従来のように点で支持する場合に比較して、卵収納凹部1内において鶏卵を安定して保持することができる。尚、図1中、上側(奥側)の長辺に沿う横1列の小さい凹部には卵は収納されない。
【0033】
また、上述のように形成されたパルプモウルド製卵収納トレー10には、自動卵挿入装置にて、上記卵収納凹部1内に自動的に卵が挿入される。この自動卵挿入装置にトレー10をセットするには、複数のパルプモウルド製卵収納トレー10を、同一の向きのまま(180度反転することなく)、長手方向に沿って卵収納凹部1の縦1行分を交互にずらして重ねて行き、このようにずらして重合されたパルプモウルド製卵収納トレー10を、搬送コンベア上のトレーセット部にセットする(尚、このような重合状態を「ずらし重ね状態」という)。
【0034】
すると、上記装置の分離装置(上下方向移動アーム)が最下部のパルプモウルド製収納トレー10とその上段のパルプモウルド製卵収納トレー10の間(上下のトレー10,10の周縁部11,11間)に挿入され、上記移動アームが下方に移動することにより、上記最下段の上記トレー10の周縁部11を下方に移動させ、これにより1枚のパルプモウルド製卵収納トレー10を上記搬送コンベア上に落下させる。
【0035】
その後は、搬送コンベアの進行により、上記パルプモウルド製卵収納トレー10はコンベア搬送方向に移送され、搬送コンベアは卵挿入位置にて一旦停止する。この卵収納位置において、搬送コンベア上に位置する当該パルプモウルド製卵収納トレー10の全ての卵収納凹部1内に、上方の卵落下装置から上記卵収納凹部1の総数(本実施形態の場合は45個(5×9))に相当する卵が落下挿入され、その後、搬送コンベアが再び駆動開始して、卵が収納されたパルプモウルド製卵収納トレー10が梱包位置まで搬送される。
【0036】
ここで、上述のように、本発明のパルプモウルド製卵収納トレー10において、上下複数枚のパルプモウルド製卵収納トレー10を長辺方向に沿って縦1行分、交互にずらして重ねた、ずらし重ね状態を検討する(図10図13参照)。
【0037】
一例として3枚のパルプモウルド製卵収納トレー10を考えて、下段のトレーを符号10−1、中段のトレーを符号10−2、上段のトレーを符号10−3で示す。尚、説明の便宜上、下段、中段、上段の表現を用いて説明するが、実際は、4枚以上の複数枚が交互にずらし方向を変えながら積層される。
【0038】
まず、下段のトレー10−1と中断のトレー10−2との関係について説明する。図1に示すように、下段のパルプモウルド製卵収納トレー10−1の四隅部A,B,C,Dに支持部6a,6b,6c,6dを設けると共に、上記4つの支持部6a,6b,6c,6d(図1参照)に対応する中段のパルプモウルド製卵収納トレー10−2の裏側に、上記各支持部に当接する4つの受部7a,7b,7c,7d(図1参照)が設けられている。尚、トレーとしては、ずらし重ね状態のパルプモウルド製トレー10は全て同一なので、上記支持部6a,6b,6c,6dと受部7a,7b,7c,7dは図1のトレー10の図面上に表示している。
【0039】
そして、上記ずらし重ね状態において、図10図13に示すように、上記各支持部6a,6b,6c,6dと上記各受部7a,7b,7c,7dの当接により、下中段のパルプモウルド製卵収納トレー10−1,10−2の周縁部11,11間が略一定の間隔t2を以って離間した状態となるように構成されている。
【0040】
また、中段のトレー10−2と上段のトレー10−3との関係については、図1に示すように、中段のパルプモウルド製卵収納トレー10−2の四隅部A,B,C,Dに支持部8a,8b,8c,8dを設けると共に、上記4つの支持部8a,8b,8c,8d(図1参照)に対応する上段のパルプモウルド製卵収納トレー10−3の裏側に、上記各支持部に当接する4つの受部9a,9b,9c,9d(図1参照)が設けられている。尚、トレーとしては、ずらし重ね状態のパルプモウルド製トレー10は全て同一なので、上記下段トレーと中段トレーとの関係と同様に、上記支持部8a,8b,8c,8dと受部9a,9b,9c,9dは図1のトレー10の図面上に表示している。
【0041】
そして、上記ずらし重ね状態において、図10図13に示すように、上記各支持部8a,8b,8c,8dと上記各受部9a,9b,9c,9dの当接により、中上段のパルプモウルド製卵収納トレー10−2,10−3の周縁部11,11間が略一定の間隔t3を以って離間した状態となるように構成されている。
【0042】
尚、上記説明において、支持部と受部は4つずつ設けているとしたが、支持部と受部は4つずつに限定されず、より多くの支持部と受部が存在しても良い。即ち、上記4つずつの当接点以外にも、下段のトレー10の上面と、上段のトレー10の裏面が当接する点があっても良い。また、以下の説明において、高支柱3、低隔壁2について、特定の部位を示すときは、符号3−1,2−1等の枝番を付けて示す。また、図1において、図面上、長辺の下側を「手前」、長辺の上側を「奥側」、図面に向かって左右方向を「左右」と定義して説明する。
【0043】
具体的に説明すると、図10図13は、図1のパルプモウルド製卵収納トレー10の3枚を、交互にずらし重ね状態とし、かかる状態において、図10図1のA部の矢印a方向の側面図、図11図1のB部の矢印b方向の側面図、図12図1のC部の矢印c方向の側面図、図13図1のD部の矢印d方向の側面図を示す。
【0044】
図10(隅部A)において、下段のトレー10−1の手前側の最も左端の低隔壁2−1は他の低隔壁2より高く形成されており、この低隔壁2−1の上面(平面)を支持部6aとする。また、手前側の周縁部11の左側に水平部12が1箇所形成されており、当該水平部12の裏面側も水平に形成されており、当該裏面側の水平部を受部7aとする。
【0045】
そして、図10に示すように、上記下段トレー10−1と中段トレー10−2のずらし重ね状態においては、下段トレー10−1の支持部6a上に中段トレー10−2の上記受部7aが当接し、これにより上段トレー10−1の周縁部11と中段トレー10−2の周縁部11の間に略一定の間隔t2が形成される。
【0046】
図11(隅部B)において、下段のトレー10−1の手前側の最も右端の低隔壁2−2は他の低隔壁2より高く形成されており、この低隔壁2−2の上面(平面)を支持部6bとする。また、手前側の周縁部11の右端の裏面側の平面を受部7bとする。
【0047】
そして、図11に示すように、上記下段トレー10−1と中段トレー10−2のずらし重ね状態においては、下段トレー10−1の支持部6b上に中段トレー10−2の上記受部7bが当接し、これにより下段トレー10−1の周縁部11と中段トレー10−2の周縁部11の間に略一定の間隔t2が形成される。
【0048】
図12(隅部C)において、下段のトレー10−1の奥側の最も右端の低隔壁2−3は他の低隔壁2より若干高く形成されており、この低隔壁2−3の上面(平面)を支持部6cとする。また、奥側の右端の高支柱3−1の下側(裏面)から右側短辺側の周縁部11に至る部分における上記周縁部11の裏面側の平面を受部7cとする(図16のS−S線断面図参照)。
【0049】
そして、図12に示すように、上記下段トレー10−1と中段トレー10−2のずらし重ね状態においては、下段トレー10−1の支持部6c上に中段トレー10−2の上記受部7cが当接し、これにより上段トレー10−1の周縁部11と中段トレー10−2の周縁部11の間に略一定の間隔t2が形成される。
【0050】
図13(隅部D)において、下段のトレー10−1の奥側の最も左端の小支柱(高支柱3より高さが低く、面積の小さい支柱)13に連なるリブ14が形成され、当該リブ14の先端部を支持部6dとする。また、奥側の左側の2つの凹部底面18,18間の裏面側には、裏面肉厚部15が設けられており、この裏面肉厚部15の下側面(平面)を受部7dとする。
【0051】
そして、図13に示すように、上記下段トレー10−1と中段トレー10−2のずらし重ね状態においては、下段トレー10−1の支持部6d上に中段トレー10−2の上記受部7dが当接し、これにより下段トレー10−1の周縁部11と中段トレー10−2の周縁部11の間に略一定の間隔t2が形成される。
【0052】
次に、上記図10図13にて説明した中段のパルプモウルド製トレー10−2の上に、上段のパルプモウルド製卵収納トレー10−3を、さらに長辺方向に沿って縦1行分、逆方向にずらして重ねたずらし重ね状態を検討する(図10図13参照)。
【0053】
図10(隅部A)において、中段のトレー10−2の手前側の最も左端の高支柱3−2の上面(平面)を支持部8aとする。また、手前側の周縁部11の左端の裏面(平面)を受部9aとする。
【0054】
そして、図10に示すように、上記中段トレー10−2と上段トレー10−3のずらし重ね状態においては、中段トレー10−2の支持部8a上に上段トレー10−3の上記受部9aが当接し、これにより中段トレー10−2の周縁部11と上段トレー10−3の周縁部11の間に略一定の間隔t3(>t2)が形成される。
【0055】
図11(隅部B)において、中段のトレー10−2の手前側の最も右端の周縁部11の上面(平面)を支持部8bとする。また、手前側の最も右側の卵収納凹部1−1の裏面側の底面(平面)を受部9bとする。
【0056】
そして、図11に示すように、上記中段トレー10−2と上段トレー10−3のずらし重ね状態においては、中段トレー10−2の支持部8b上に上段トレー10−3の上記受部9bが当接し、これにより中段トレー10−2の周縁部11と上段トレー10−3の周縁部11の間に略一定の間隔t3(>t2)が形成される。
【0057】
図12(隅部C)において、中段のトレー10−2の奥側の最も右端の周縁部11の上面(平面)を支持部8cとする。また、奥側の最も右側の凹部19の裏面側の底面(平面)を受部9cとする。
【0058】
そして、図12に示すように、上記中段トレー10−2と上段トレー10−3のずらし重ね状態においては、中段トレー10−2の支持部8c上に上段トレー10−3の上記受部9cが当接し、これにより中段トレー10−2の周縁部11と上段トレー10−3の周縁部11の間に略一定の間隔t3(>t2)が形成される。
【0059】
図13(隅部D)において、中段のトレー10−2の奥側の最も左端の高支柱3−3の上面(平面)を支持部8dとする。また、奥側の最も左端の上記小支柱13の裏面側(平面)を受部9dとする。
【0060】
そして、図13に示すように、上記中段トレー10−2と上段トレー10−3のずらし重ね状態においては、中段トレー10−2の支持部8d上に上段トレー10−3の上記受部9dが当接し、これにより中段トレー10−2の周縁部11と上段トレー10−3の周縁部11の間に略一定の間隔t3(>t2)が形成される。
【0061】
上述のように、複数のパルプモウルド製卵収納トレー10をずらし重ね状態で積層すると、各上下に隣接するトレー10,10の周縁部11,11間は、略一定の間隔t2,t3が交互に形成され、各間隔t2,t3は従来の間隔よりも大きく(例えば、t2=5mm〜15mm,t2=15mm〜25mm、従って、t2,t3=5mm〜25mm)、しかもパルプモウルド製トレー10の周縁部11の全周に亘り略一定であるため、分離装置によって1枚ずつ安定して分離することができる。
【0062】
また、上記支持部は、何れも低隔壁、高支柱の上部、周縁部の上面、リブの端部等の安定した平面部分であり、受部も周縁部の裏面、卵収納凹部の裏面、小支柱の裏面等の平面部分としているため、トレー10をずらし重ね状態としたとき、安定してトレー10を重ねることができ、重ねたトレーが左右の何れかに傾くこともない。
【0063】
以上のように、本発明によれば、低隔壁2が容易に割れることがなく、強度の大なパルプモウルド製卵収納トレー10を構成することができる。
【0064】
また、卵を卵収納凹部1に収納すると、卵の下半部の周面が、截頭円錐面(截頭円錐内面)により円環状(線状)に支持されるので、振動等が起きても卵収納凹部1内において卵のずれ等を抑制することができる。
【0065】
また、複数のパルプモウルド製卵収納トレー10をずらし重ね状態としたとき、上下のトレーの周縁部11間に略一定の間隔t2,t3が形成されるので、分離装置により確実に1枚ずつのパルプモウルド製卵収納トレーを搬送コンベア等に分離落下させることができる。
【0066】
また、従来に比較して、上記間隔t2,t3が広く、しかも一定間隔であるので、分離装置によりパルプモウルド製卵収納トレーを1枚ずつ確実に分離することができる。
【0067】
上記実施形態においては、卵収納凹部1の数(卵の収納個数)は5×9(縦×横)で45個であったが、卵収納凹部の数はこれに限らず、40個(5×8)、54個(6×9)等、各種の数とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係るパルプモウルド製卵収納トレーによれば、自動卵挿入装置において、各トレーの分離が容易であり、かつトレーとしての強度も大で、しかも卵を安定して収納保持し得るので、広く利用が期待されるものである。
【符号の説明】
【0069】
1 卵収納凹部
2 低隔壁
2a 尾根部
2a’ 水平状面
2a” 凸弧状面
3 高支柱
4 円形水平面
5 截頭円錐面
6a〜6d 支持部
7a〜7d 受部
8a〜8d 支持部
9a〜9d 受部
11 周縁部
A〜D 四隅部
t2,t3 間隔
図1
図2
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