(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを備えたパラレルリンク機構において、
基端側および先端側のそれぞれにつき、前記端部リンク部材と前記中央リンク部材との回転対偶軸と、前記端部リンク部材と前記リンクハブとの回転対偶中心点との距離をアーム長と定義した場合、
基端側のアーム長および先端側のアーム長は前記3組以上のリンク機構ですべて互いに同じであり、かつ基端側のアーム長と先端側のアーム長とが互いに異なることを特徴とするパラレルリンク機構。
請求項1または請求項2に記載のパラレルリンク機構において、前記端部リンク部材は、任意の角度に湾曲した湾曲部材と、この湾曲部材の一端または両端に固定され、前記中央リンク部材または前記リンクハブに直接または軸受を介して回転可能に連結された回転軸を支持する回転軸支持部材とを有し、前記基端側の端部リンク部材の前記湾曲部材および前記先端側の端部リンク部材の前記湾曲部材が互いに同一仕様であるパラレルリンク機構。
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のパラレルリンク機構において、前記基端側のリンクハブ、前記先端側のリンクハブ、および前記3組以上のリンク機構で囲まれた内部空間に少なくとも一部分が位置するように作業体が前記先端部材に取り付けられ、前記作業体に接続されたケーブルが前記内部空間を通って基端側へ延びているパラレルリンク機構。
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のパラレルリンク機構を備え、このパラレルリンク機構における前記3組以上のリンク機構のうちの2組以上のリンク機構に、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更する姿勢変更用駆動源が設けられたリンク作動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のリンク作動装置に用いられるパラレルリンク機構では、部品の共通化を図ることを目的に、基端側の端部リンク部材および先端側の各端部リンク部材に、それぞれアーム長が同じものを使用している。しかし、この構成であると、パラレルリンク機構の可動範囲を広くした場合、特に最大折れ角を大きくした場合に、構成部品間の干渉が起きやすい。また、パラレルリンク機構の剛性を高めるために、回転対偶部に設けられている軸受をサイズアップした場合にも、構成部品間の干渉が起きやすい。このような構成部品間の干渉を避けるためには、パラレルリンク機構を全体的にサイズアップする必要がある。しかし、パラレルリンク機構を大きくすると、先端側の重量増加による固有振動数の低下のため高速動作ができなくなり、また限られた空間に配置できなくなるという課題が生じる。
【0005】
この発明の目的は、設計自由度が広く、可動範囲の拡大や先端側の軽量化等を行うための設計変更が容易なパラレルリンク機構を提供することである。
この発明の他の目的は、上記パラレルリンク機構の姿勢を制御することができるリンク作動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のパラレルリンク機構は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを備える。
このパラレルリンク機構において、基端側および先端側のそれぞれにつき、前記端部リンク部材と前記中央リンク部材との回転対偶軸と、前記端部リンク部材と前記リンクハブとの回転対偶中心点との距離をアーム長と定義した場合、基端側のアーム長および先端側のアーム長は前記3組以上のリンク機構ですべて互いに同じであり、かつ基端側のアーム長と先端側のアーム長とが互いに異なることを特徴とする。
なお、前記端部リンク部材と前記リンクハブとの回転対偶中心点は、端部リンク部材とリンクハブとの回転対偶における回転対偶軸に沿う端部リンク部材の幅方向の中心点を指す。
【0007】
この構成によると、基端側のアーム長および先端側のアーム長が3組以上のリンク機構ですべて互いに同じであるため、基端側のアーム長と先端側のアーム長とが互いに異なっていても、パラレルリンク機構が動作することが可能である。基端側のアーム長と先端側のアーム長とを互いに異ならせることで、パラレルリンク機構の設計自由度が広がる。それにより、パラレルリンク機構の可動範囲の拡大や先端側の軽量化等を行うための設計変更が容易になる。
【0008】
この発明において、前記先端側のアーム長の方が前記基端側のアーム長より短くてもよい。この場合、パラレルリンク機構の構成部品同士が干渉しにくくなり、コンパクトな構成で可動範囲を広くとれる。また、先端側を軽量化できるため、先端側の慣性モーメントが小さくなり、高速動作が可能になる。
【0009】
この発明において、前記端部リンク部材は、任意の角度に湾曲した湾曲部材と、この湾曲部材の一端または両端に固定され、前記中央リンク部材または前記リンクハブに直接または軸受を介して回転可能に連結された回転軸を支持する回転軸支持部材とを有し、前記基端側の端部リンク部材の前記湾曲部材および前記先端側の端部リンク部材の前記湾曲部材が互いに同一仕様であってもよい。
この構成であると、基端側の端部リンク部材と先端側の端部リンク部材とで部品の共通化を実現でき、安価な構成とすることができる。
【0010】
この発明において、前記基端側のリンクハブ、前記先端側のリンクハブ、および前記3組以上のリンク機構で囲まれた内部空間に少なくとも一部分が位置するように作業体が前記先端部材に取り付けられ、前記作業体に接続されたケーブルが前記内部空間を通って基端側へ延びていてもよい。
この構成であると、内部空間の基端側部分を広くとれるため、ケーブルがパラレルリンク機構の各構成部品と干渉しにくく、ケーブルの取り回しが容易になる。また、作業体が内部空間に配置されることで、作業体が先端側のリンクハブよりも先端側に配置される場合と比べて、作業体の慣性モーメントが小さくなり、高速動作が可能になる。
【0011】
前記基端側のリンクハブが、前記ケーブルが挿通される貫通孔を有する場合、前記基端側のリンクハブの中心軸から前記貫通孔の内壁面までの最小距離Lbが、以下の関係式
【数1】
但し、
R
min:ケーブルの許容最小屈曲半径
L
E:先端側の球面リンク中心から作業体のケーブル取付位置までの距離
r
c:ケーブルの半径
D:基端側および先端側の各球面リンク中心間の距離
θ
max:パラレルリンク機構の最大折れ角
の条件を満たしているとよい。
上記のように定めると、機構上の可動範囲内において、ケーブルの屈曲半径を最小屈曲半径よりも大きく保つことができ、また作業体を内部空間に配置することができる。
【0012】
なお、前記パラレルリンク機構の最大折れ角は、次のように定義される。すなわち、基端側および先端側のそれぞれにつき、リンクハブと端部リンク部材との回転対偶軸、および、端部リンク部材と中央リン部材との回転対偶軸が交差する点を「球面リンク中心」と称し、この球面リンク中心を通り前記リンクハブと端部リンク部材との回転対偶軸と直角に交わる直線を「リンクハブの中心軸」と称する場合、基端側のリンクハブの中心軸と先端側のリンクハブの中心軸とが成す角度の最大値のことを「パラレルリンク機構の最大折れ角」と言う。
【0013】
この発明のリンク作動装置は、前記パラレルリンク機構を備え、このパラレルリンク機構における前記3組以上のリンク機構のうちの2組以上のリンク機構に、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更する姿勢変更用駆動源が設けられている。
【0014】
姿勢変更用駆動源が設けられていると、パラレルリンク機構の姿勢制御が可能になる。3組以上のリンク機構のうちの2組以上のリンク機構に姿勢変更用駆動源を設けることで、基端側のリンクハブに対する先端側のリンクハブの姿勢を確定することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明のパラレルリンク機構は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを備え、基端側および先端側のそれぞれにつき、基端側および先端側のそれぞれにつき、前記端部リンク部材と前記中央リンク部材との回転対偶軸と、前記端部リンク部材と前記リンクハブとの回転対偶中心点との距離をアーム長と定義した場合、基端側のアーム長および先端側のアーム長は前記3組以上のリンク機構ですべて互いに同じであり、かつ基端側のアーム長と先端側のアーム長とが互いに異なるため、設計自由度が広く、可動範囲の拡大や先端側の軽量化等を行うための設計変更が容易である。
【0016】
この発明のリンク作動装置は、前記パラレルリンク機構を備え、このパラレルリンク機構における前記3組以上のリンク機構のうちの2組以上のリンク機構に、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更する姿勢変更用駆動源が設けられているため、パラレルリンク機構の姿勢を制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施形態を図面と共に説明する。
[パラレルリンク機構の第1の実施形態]
図1はこの発明の第1の実施形態にかかるパラレルリンク機構の一状態の正面図である。このパラレルリンク機構1は、基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブ3を、複数組(例えば3組)のリンク機構4を介して姿勢変更可能に連結してなる。リンク機構4の数は、4組以上であってもよい。
【0019】
各リンク機構4は、基端側の端部リンク部材5、先端側の端部リンク部材6、および中央リンク部材7で構成され、4つの回転対偶からなる4節連鎖のリンク機構を成す。基端側および先端側の端部リンク部材5,6の各一端が基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3にそれぞれ回転自在に連結され、基端側および先端側の端部リンク部材5,6の各他端が中央リンク部材7の両端にそれぞれ回転自在に連結されている。
【0020】
パラレルリンク機構1は、2つの球面リンク機構を組み合わせた構造である。つまり、
図2(A)に示すように、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5との各回転対偶軸O1A、および基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7との各回転対偶軸O2Aが、球面リンク中心PAで交差している。同様に、
図3(A)に示すように、先端側のリンクハブ3と先端側の端部リンク部材6との各回転対偶軸O1B、および先端側の端部リンク部材6と中央リンク部材7との各回転対偶軸O2Bが、球面リンク中心PBで交差している。
【0021】
図2(A)、
図3(A)の例では、リンクハブ2(3)と端部リンク部材5(6)との各回転対偶軸O1A(O1B)、および端部リンク部材5(6)と中央リンク部材7との各回転対偶軸O2A(O2B)が互いに成す角度αA(αB)が90°とされているが、前記角度αA(αB)は90°以外であってもよい(
図5参照)。また、端部リンク部材5,6と中央リンク部材7との各回転対偶軸O2A,O2Bは、ある交差角γ(
図1)を持っていてもよいし、平行であってもよい。
【0022】
基端側および先端側において、それぞれの球面リンク中心PA,PBから端部リンク部材5,6と中央リンク部材7との各回転対偶中心点C1A,C1Bまでの距離(以下、「リンク長」とする)L1A,L1Bは互いに同じである。これに対し、それぞれの球面リンク中心PA,PBからリンクハブ2,3と端部リンク部材5,6との各回転対偶中心点C2A,C2Bまで距離(以下、「アーム長」とする)L2A,L2Bは、基端側と先端側とで異なる。この実施形態の場合、基端側のアーム長L2Aの方が、先端側のアーム長L2Bよりも長い。
ここで、回転対偶中心点C1A,C1B,C2A,C2Bは、各回転対偶における回転対偶軸O1A,O1B,O2A,O2Bに沿う端部リンク部材5,6の幅方向の中心点を指す。
【0023】
3組のリンク機構4は、パラレルリンク機構1がいかなる姿勢をとっていても、基端側と先端側とが幾何学的に同一形状を成す。幾何学的に同一形状とは、
図4に示すように、各リンク部材5,6,7を直線で表現した幾何学モデル、すなわち各回転対偶と、これら回転対偶間を結ぶ直線とで表現したモデルが、中央リンク部材7の中央部に対する基端側部分と先端側部分が対称を成す形状であることを言う。アーム長L2A,L2B(
図2、
図3)が基端側と先端側で互いに異なっていても、リンク長L1A,L1B(
図2、
図3)が基端側と先端側で互いに同じであれば、幾何学的に同一形状である。なお、
図4は一組のリンク機構4を直線で表現した図である。
【0024】
この実施形態のパラレルリンク機構1は回転対称タイプで、基端側のリンクハブ2および基端側の端部リンク部材5と、先端側のリンクハブ3および先端側の端部リンク部材6との位置関係が、中央リンク部材7の中心線Cに対して回転対称となる位置構成になっている。各中央リンク部材7の中央部は、共通の軌道円上に位置している。
【0025】
基端側のリンクハブ2と先端側のリンクハブ3と3組のリンク機構4とで、基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブ3が直交2軸回りに回転自在な2自由度機構が構成される。言い換えると、基端側のリンクハブ2に対して先端側のリンクハブ3を、回転が2自由度で姿勢変更自在な機構である。この2自由度機構は、コンパクトでありながら、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の可動範囲を広くとれる。
【0026】
例えば、球面リンク中心PA,PBを通り、リンクハブ2,3と端部リンク部材5,6との各回転対偶軸O1A,O1B(
図2、
図3)と直角に交わる直線をリンクハブ2,3の中心軸QA,QBとした場合、基端側のリンクハブ2の中心軸QAと先端側のリンクハブ3の中心軸QBとの折れ角θの最大値を約±90°とすることができる。また、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の旋回角φを0°〜360°の範囲に設定できる。折れ角θは、基端側のリンクハブ2の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ3の中心軸QBが傾斜した垂直角度のことであり、旋回角φは、基端側のリンクハブ2の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ3の中心軸QBが傾斜した水平角度のことである。
【0027】
基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の姿勢変更は、基端側のリンクハブ2の中心軸QAと先端側のリンクハブ3の中心軸QBとの交点Oを回転中心として行われる。
図1は、基端側のリンクハブ2の中心軸QAと先端側のリンクハブ3の中心軸QBが同一線上にある原点位置の状態を示す。先端側のリンクハブ3の姿勢が変化しても、基端側および先端側の各球面リンク中心PA,PB間の距離D(
図4)は変化しない。
【0028】
各リンク機構4が以下の各条件を満たす場合、幾何学的対称性から基端側のリンクハブ2および基端側の端部リンク部材5と、先端側のリンクハブ3および先端側の端部リンク部材6とは同じに動く。よって、パラレルリンク機構1は、基端側から先端側へ回転伝達を行う場合、基端側と先端側は同じ回転角になって等速で回転する等速自在継手として機能する。
条件1:回転対偶軸O1A,O1Bと回転対偶軸O2A,O2Bとが成す角度αA,αB、およびリンク長L1A,L1Bが、各リンク機構4で互いに等しい。
条件2:回転対偶軸O1A,O1Bおよび回転対偶軸O2A,O2Bが、基端側および先端側において球面リンク中心PA,PBで交差する。
条件3:基端側の端部リンク部材5と先端側の端部リンク部材6の幾何学的形状が等しい(L1A=L1B)。
条件4:中央リンク部材7における基端側部分と先端側部分の幾何学的形状が等しい。
条件5:中央リンク部材7の対称面に対して、中央リンク部材7と端部リンク部材5,6との角度位置関係が基端側と先端側とで同じである。
【0029】
パラレルリンク機構1の各部について詳しく説明する。
図1、
図2に示すように、基端側のリンクハブ2は、基端部材10と、この基端部材10と一体に設けられた3個の回転軸連結部材11とで構成される。各回転軸連結部材11は、基端側の球面リンク中心PAの周囲に円周方向に等間隔で配置されている。各回転軸連結部材11には、軸心が回転対偶軸O1Aと一致する回転軸12が、2個の軸受13を介して回転自在に連結されている。そして、この回転軸12に、基端側の端部リンク部材5の一端が連結される。これにより、回転軸連結部材11に対して基端側の端部リンク部材5の一端が、回転対偶軸O1Aの回りに回転自在に連結される。
【0030】
前記軸受13は、例えば深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の玉軸受である。各軸受13は、回転軸連結部材11に嵌合状態で設置され、圧入、接着、加締め等の方法で固定してある。他の回転対偶部に設けられる軸受15,43,45の種類および設置方法も同様である。
【0031】
また、中央リンク部材7の一端には、軸心が回転対偶軸O2Aと一致する回転軸14が、2個の軸受15を介して回転自在に連結されている。そして、この回転軸14に、基端側の端部リンク部材5の他端が連結される。これにより、基端側の端部リンク部材5の他端に対して中央リンク部材7の一端が、回転対偶軸O2Aの回りに回転自在に連結される。
【0032】
図2(B)に、1つの基端側の端部リンク部材5およびその両端周辺部を取り出して示す。同図に示すように、基端側の端部リンク部材5は、L字状に湾曲した1個の湾曲部材20Aと、この湾曲部材20Aの一端の外径側の側面および内径側の側面にそれぞれ固定された2個の回転軸支持部材21Aと、湾曲部材20Aの他端の外径側の側面および内径側の側面にそれぞれ固定された2個の回転軸支持部材31Aとで構成される。一端側および他端側の回転軸支持部材21A,31Aは、ボルト、溶接等によって湾曲部材20Aに固定される。
図2(B)には、湾曲部材20Aに対して回転軸支持部材21A,31Aを位置決めする手段が図示されていないが、例えば位置決めピン等を用いて湾曲部材20Aに対して回転軸支持部材21A,31Aを位置決めしてもよい。
【0033】
湾曲部材20Aは、例えば金属材料の鋳造品であり、所定の角度αA(この例では90°)に湾曲した形状をしている。回転軸支持部材21A,31Aは、金属板等の厚さが一定の板状の部材に対して板金加工等の加工をすることで所定の形状に作られる。回転軸支持部材21A,31Aには、前記回転軸12,14が挿通される貫通孔がそれぞれ設けられている。
【0034】
基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5との回転対偶部は、具体的には以下の構造である。すなわち、基端側の端部リンク部材5の2個の回転軸支持部材21Aの間に回転軸連結部材11を配置し、回転軸12を外径側の回転軸支持部材21Aの貫通孔、軸受13の内輪の孔、内径側の回転軸支持部材21Aの貫通孔の順に挿通し、貫通孔よりも内径側に突出した回転軸12のねじ部12aにナット23を螺着してある。内径側の回転軸支持部材21Aと軸受13との間、および外径側の回転軸支持部材21と軸受13との間には、それぞれスペーサ24,25を介在させてある。このように、回転軸12の頭部12bとナット23とで、外径側および内径側の回転軸支持部材21A、軸受13の内輪、およびスペーサ24,25を挟み付けることで、軸受13に予圧を付与した状態で、回転軸連結部材11と基端側の端部リンク部材5の一端とが連結される。
【0035】
また、基端側の端部リンク部材5の他端と中央リンク部材7との回転対偶部は、具体的には以下の構造である。すなわち、基端側の端部リンク部材5の2個の回転軸支持部材31Aの間に中央リンク部材7の一端を配置し、回転軸14を外径側の回転軸支持部材31Aの貫通孔、軸受15の内輪の孔、内径側の回転軸支持部材31Aの貫通孔の順に挿通し、貫通孔よりも内径側に突出した回転軸14のねじ部14aにナット33を螺着してある。内径側の回転軸支持部材31Aと軸受15との間、および外径側の回転軸支持部材31Aと軸受15との間には、それぞれスペーサ34,35を介在させてある。このように、回転軸14の頭部14bとナット33とで、外径側および内径側の回転軸支持部材31A、軸受15の内輪、およびスペーサ34,35を挟み付けることで、軸受15に予圧を付与した状態で、基端側の端部リンク部材5の他端と中央リンク部材7の一端とが連結される。
【0036】
図1、
図3に示すように、先端側のリンクハブ3は、先端部材40と、この先端部材40と一体に設けられた3個の回転軸連結部材41とで構成される。各回転軸連結部材41は、先端側の球面リンク中心PBの周囲に円周方向に等間隔で配置されている。各回転軸連結部材41には、軸心が回転対偶軸O1Bと一致する回転軸42が、2個の軸受43を介して回転自在に連結されている。そして、この回転軸42に、先端側の端部リンク部材6の一端が連結される。これにより、回転軸連結部材41に対して先端側の端部リンク部材6の一端が、回転対偶軸O1Bの回りに回転自在に連結される。
【0037】
また、中央リンク部材7の他端には、軸心が回転対偶軸O2Bと一致する回転軸44が、2個の軸受45を介して回転自在に連結されている。そして、この回転軸44に、先端側の端部リンク部材6の他端が連結される。これにより、先端側の端部リンク部材6の他端に対して中央リンク部材7の他端が、回転対偶軸O2Bの回りに回転自在に連結される。
【0038】
図3(B)に、1つの先端側の端部リンク部材6およびその両端周辺部を取り出して示す。同図に示すように、先端側の端部リンク部材6は、L字状に湾曲した1個の湾曲部材20Bと、この湾曲部材20Bの一端の外径側の側面および内径側の側面にそれぞれ固定された2個の回転軸支持部材21Bと、湾曲部材20Bの他端の外径側の側面および内径側の側面にそれぞれ固定された2個の回転軸支持部材31Bとで構成される。一端側および他端側の回転軸支持部材21B,31Bは、ボルト、溶接等によって湾曲部材20Bに固定される。
図3(B)には、湾曲部材20Bに対して回転軸支持部材21B,31Bを位置決めする手段が図示されていないが、例えば位置決めピン等を用いて湾曲部材20Bに対して回転軸支持部材21B,31Bを位置決めしてもよい。
【0039】
湾曲部材20Bも、湾曲部材20Aと同様に、例えば金属材料の鋳造品であり、所定の角度αB(この例では90°)に湾曲した形状をしている。基端側および先端側の各アーム長L2A,L2Bの違いに合わせて、湾曲部材20Bの湾曲部から他端までの長さM2Bが、湾曲部材20Aの同長さM2Aよりも短く形成されている。湾曲部から一端までの長さM1A,M1Bは、湾曲部材20Bも湾曲部材20Aも同じである。
回転軸支持部材21B,31Bは、回転軸支持部材21A,31Aと同様に、金属板等の厚さが一定の板状の部材に対して板金加工等の加工をすることで所定の形状に作られる。回転軸支持部材21B,31Bには、前記回転軸42,44が挿通される貫通孔22,32がそれぞれ設けられている。
【0040】
先端側のリンクハブ3と先端側の端部リンク部材6との回転対偶部は、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5との回転対偶部と同じ構造である。また、先端側の端部リンク部材6と中央リンク部材7との回転対偶部は、基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7との回転対偶部と同じ構造である。よって、先端側の各回転対偶部については説明を省略し、基端側と構造が同じ箇所については、図面に基端側の各回転対偶部と同一符号を付して示す。なお、回転軸42はねじ部42aおよび大径部42bを有し、回転軸44はねじ部44aおよび大径部44bを有する。
【0041】
以上に説明したように、このパラレルリンク機構1は、基端側のアーム長L2Aと先端側のアーム長L2Bとを互いに異ならせてある。それにより、設計自由度が広がり、可動範囲の拡大や先端側の軽量化等を行うための設計変更が容易である。基端側のアーム長L2Aと先端側のアーム長L2Bとが互いに異なっていても、基端側と先端側とが幾何学的に同一形状であれば、基端側のリンクハブ2に対して先端側のリンクハブ3が回転2自由度で姿勢変更可能な2自由度機構が構成される。
【0042】
この実施形態のように、先端側のアーム長L2Bの方が基端側のアーム長L2Aよりも短い場合、パラレルリンク機構1の構成部品同士が干渉しにくくなり、コンパクトな構成で可動範囲を広くとれる。また、先端側を軽量化できるため、先端側の慣性モーメントが小さくなり、高速動作が可能になる。
【0043】
また、この実施形態は、基端側および先端側の端部リンク部材5,6が、湾曲部材20A,20Bと、回転軸支持部材21A,21B,31A,31Bとで構成されている。このように、端部リンク部材5,6を複数の部材に分割すると、各部材を単純な形状とすることができるため、加工費を抑制でき、量産性が向上する。また、組立時に、端部リンク部材5,6と中央リンク部材7との回転対偶部、あるいは端部リンク部材5,6とリンクハブ2,3との回転対偶部を構成する部品、例えば軸受やスペーサ等を一方向から回転軸に挿入することができるようになり、組立性が向上する。
【0044】
さらに、各回転対偶部において、2つの回転軸支持部材21A,21B,31A,31Bにより回転軸12,14,42,44の両端を支持することで、回転対偶部のモーメント荷重に対する剛性が高くなり、パラレルリンク機構1の全体の剛性が向上する。各回転軸支持部材21A,21B,31A,31Bを同一形状とすれば、部品の共通化を図れ、安価で量産性が良くなる。
【0045】
[パラレルリンク機構の第2の実施形態]
図5は、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5との各回転対偶軸O1A、および基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7との各回転対偶軸O2Aが互いに成す角度αAが90°以外である場合を示す。先端側については図示を省略しているが、先端側のリンクハブと先端側の端部リンク部材との各回転対偶軸、および先端側の端部リンク部材と中央リンク部材7との各回転対偶軸が互いに成す角度αB(図示せず)も、基端側の角度αAと同じ大きさである。このように角度αA,αBが90°以外であっても、基端側と先端側とが幾何学的に同一形状であれば、基端側のリンクハブ2に対して先端側のリンクハブが回転2自由度で姿勢変更可能な2自由度機構が構成される。
【0046】
[パラレルリンク機構の第3の実施形態]
図6、
図7は、基端側および先端側の端部リンク部材5,6の構成が前記第1の実施形態と異なるパラレルリンク機構を示す。このパラレルリンク機構の全体構成は第1の実施形態と同じであるので、全体構成の図面および説明を省略する。
【0047】
このパラレルリンク機構は、基端側の端部リンク部材5に使用される湾曲部材20A、および先端側の端部リンク部材6に使用される湾曲部材20Bが同一仕様である。湾曲部材20A,20Bに対する回転軸支持部材21A,21B,31A,31Bの固定位置を変更することで、端部リンク部材5,6の各アーム長L2A,L2Bがそれぞれ所定の長さとなるようにしている。このように同一仕様の湾曲部材20A,20Bを使用することで、部品の共通化を図り、パラレルリンク機構を安価に製作することができる。
【0048】
[パラレルリンク機構の第4の実施形態]
図8はこの発明の第4の実施形態にかかるパラレルリンク機構の一状態の正面図である。このパラレルリンク機構1は、第1の実施形態とは逆で、基端側のアーム長L2Aよりも先端側のアーム長L2Bの方が長くなっている。
図9、
図10に示すように、基端側と先端側とでアーム長L2A,L2Bが互いに異なっていても、基端側と先端側のリンク長L1A,L1Bは互いに同じである。
【0049】
このように基端側のアーム長L2Aよりも先端側のアーム長L2Bを長くすると、先端部材40に大きな貫通孔40aを設けることができる。これにより、大きな作業体(図示せず)を、貫通孔40aから挿入してパラレルリンク機構1の内部空間8に配置することができる。なお、内部空間8は、基端側および先端側のリンクハブ2,3と各リンク機構4に囲まれた空間のことである。
【0050】
[リンク作動装置]
図11〜
図13は、第1の実施形態のパラレルリンク機構を備えたリンク作動装置を示す。このリンク作動装置50は、パラレルリンク機構1の各リンク機構4に、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の姿勢を任意に変更する姿勢変更用駆動源51が設けられている。図の例では3組すべてのリンク機構4に姿勢変更用駆動源51が設けられているが、3組のリンク機構4のうち少なくとも2組に姿勢制御用駆動源51を設ければ、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の姿勢を確定することができる。
【0051】
各姿勢制御用駆動源51は、減速機構52を備えたロータリアクチュエータであり、基端側のリンクハブ2の基端部材10の上面に、前記回転軸12と同軸上に設置されている。姿勢制御用駆動源51と減速機構52は一体に設けられ、駆動源固定部材53により減速機構52が基端部材10に固定されている。
【0052】
図12(B)において、減速機構52により減速された回転出力は、大径の基部54aと小径の先端部54bとからなる出力軸54に出力される。出力軸54の先端部54bは、パラレルリンク機構1における前記回転軸12に相当する。出力軸54の基部54aの先端面を、基端側の端部リンク部材5の外径側の回転軸支持部材21Aに当接させ、ボルト55により基部54aが回転軸支持部材21Aに結合される。
【0053】
リンク作動装置50は、各姿勢制御用駆動源51を回転駆動することで、パラレルリンク機構1が動作する。詳しくは、姿勢制御用駆動源51を回転駆動すると、その回転が減速機構52を介して減速して回転軸12に伝達される。それにより、基端側のリンクハブ2に対する基端側の端部リンク部材5の角度が変わり、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の姿勢が変更される。先端側のリンクハブ3に作業体(エンドエフェクタ)を取り付けることで、作業体の姿勢を任意に変更しながら作業を行うことができる。
【0054】
図12(A)に示すように、基端側のリンクハブ2の基端部材10の中央部に、先端側のリンクハブ3に取り付けられた作業体に繋がる電気配線等のケーブルを通す貫通孔10aが設けられている。また、
図13に示すように、先端側のリンクハブ3の先端部材40の中央部に、作業体を嵌め込んで取り付けるための貫通孔40aが設けられている。
図12、
図13の例では、貫通孔10a,40aは、それぞれリンクハブ2,3の中心軸QA,QBを中心とする略正方形である。例えば
図14に示すように、貫通孔10a,40aは他の形状であってもよい。
【0055】
図15は、上記リンク作動装置50の先端側のリンクハブ3に作業体60を取り付けた状態を示す。作業体60は先端部材40の前記貫通孔40a(
図12(A)参照)に嵌め込んで取り付けられており、その大半部分がパラレルリンク機構1の内部空間8に配置されている。作業体60に接続されたケーブル61が、前記内部空間8と基端部材10の貫通孔10aを通ってリンク作動装置50の外部へ延びている。
【0056】
このように有線の作業体60を先端側のリンクハブ3に取り付ける場合、パラレルリンク機構1の動作範囲内でケーブル61の屈曲半径が許容値を超えないように設計する必要がある。具体的には、基端部材10の貫通孔10aの内壁面にケーブル61が接触しないように、基端側のリンクハブ2の中心軸QAから貫通孔10aの内壁面までの最小距離Lbを適正に定める。
図12(A)のように貫通孔10aが正方形である場合も、
図14のように貫通孔10aが正方形以外の形状である場合も、最小距離Lbは貫通孔10aの内接円の半径となる。
【0057】
各部の寸法を
図16に示すように定めた場合、基端側のリンクハブ2の中心軸QAから貫通孔10aの内壁面までの最小距離Lbが、以下の関係式
【数2】
但し、
R
min:ケーブル61の許容最小屈曲半径
L
E:先端側の球面リンク中心PBから作業体60のケーブル取付位置までの距離
r
c:ケーブル61の半径
D:基端側および先端側の各球面リンク中心PA,PB間の距離
θ
max:パラレルリンク機構1の最大折れ角
の条件を満たすように、貫通孔10aの形状を設計するとよい。その理由を以下に記す。
【0058】
図16の水平方向で考えた場合、先端側の球面リンク中心PBから基端部材10の貫通孔10aの内壁面までの水平距離が、先端側の球面リンク中心PBから作業体60のケーブル61の端面までの水平距離よりも大きければ、ケーブル61の屈曲半径を許容値内に収めながらケーブル61をパラレルリンク機構1の内部空間8(
図15)を通して貫通孔10aから外部に出すことができる。
【0059】
先端側の球面リンク中心PBから基端部材10の貫通孔10aの内壁面までの水平距離は、L
b+L
psinθ
max、すなわち、
【数3】
で表すことができる。
また、先端側の球面リンク中心PBから作業体60のケーブル61の端面までの水平距離は、L
Esinθ
max+R
min(1・cosθ
max)+r
cで表すことができる。
【0060】
これらから、式1を満たす貫通孔10aの形状であると、パラレルリンク機構1の動作範囲内において、基端部材10の貫通孔10aの内壁面にケーブル61が接触しない。言い換えると、式1を満たす範囲内で、先端側の球面リンク中心PBから作業体60のケーブル取付位置までの距離L
Eを大きくすることができる。つまり、作業体60の多くの部分が内部空間8に位置するように、先端側のリンクハブ3に作業体60を取り付けることができる。これにより、作業体60が先端側のリンクハブ3よりも先端側に配置される場合と比べて、作業体60の慣性モーメントを小さくして、パラレルリンク機構1の可動範囲を大きくとることができる。
【0061】
以上、実施例に基づいて本発明を実施するための形態を説明したが、ここで開示した実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【解決手段】パラレルリンク機構1は、基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブ3が、3組以上のリンク機構4を介して姿勢を変更可能に連結される。リンク機構4は、基端側の端部リンク部材5と、先端側の端部リンク部材6と、中央リンク部材7とを備える。基端側のアーム長L2Aおよび先端側のアーム長L2Bは、3組以上のリンク機構4ですべて互いに同じである。基端側のアーム長L2Aと先端側のアーム長L2Bとが互いに異なる。