(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)カルボキシル基を有しないアクリル酸エステル共重合体と、(b)架橋剤と、を含有する粘着剤組成物の架橋物を含む粘着層を備える、画像表示装置用粘着シートであって、
前記(a)カルボキシル基を有しないアクリル酸エステル共重合体は、重量平均分子量が70万以上120万以下であり、
前記(a)カルボキシル基を有しないアクリル酸エステル共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、水酸基含有モノマーとの共重合体であり、
前記(a)カルボキシル基を有しないアクリル酸エステル共重合体は、水酸基価が10mgKOH/g以上90mgKOH/g以下であり、
前記(b)架橋剤は、イソシアネート化合物及びエポキシ化合物であり、
前記粘着剤組成物中の前記(b)架橋剤の含有量は、前記(a)カルボキシル基を有しないアクリル酸エステル共重合体100質量部に対して、0.01質量部以上3.0質量部以下であり、
前記粘着層は、温度95℃及び周波数1Hzでの貯蔵弾性率が、4.0×104以上であり、
前記粘着層は、ゲル分率が70%以上90%以下であり、
前記粘着層は、25℃での損失正接tanδ(25℃)に対する、95℃での損失正接tanδ(95℃)の比(tanδ(95℃)/tanδ(25℃))が、0.7以上0.9以下である、画像表示装置用粘着シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像表示装置は、車載用、携帯電話、スマートフォン、パーソナルコンピュータ等の広範な用途に使用されている。このため、画像表示装置は、高温環境などの過酷な環境に晒される場合がある。
【0006】
例えば、軽量化や安全性などの観点から、画像表示装置のカバーフィルムとして、ポリカーボネートなどのプラスチック製のカバーフィルムが使用されることがある。しかしながら、プラスチック製のカバーフィルムは、高温環境に晒されると、未反応のモノマー成分などがアウトガスとして発生し、カバーフィルムと粘着シートとの界面に気泡を生じやすいという問題がある。
【0007】
また、粘着シートの両面に密着している被着体の材質が異なる場合(例えば、プラスチック製のカバーフィルムと、ITOなどの透明導電膜により構成されているタッチセンサや表示素子とが粘着シートで密着されている場合など)、複数の被着体と粘着シートとの積層体が高温環境に晒された際の被着体の体積変化(熱膨張、熱収縮)の違いに基づいて、被着体と粘着シートとの間で剥がれが生じやすいという問題もある。
【0008】
特に車載用などの画像表示装置では、車内が非常に高温になることがあり、被着体と粘着シートとの剥がれや、被着体からのアウトガスに起因する気泡の発生の問題が生じやすい。
【0009】
このような状況下、本発明は、粘着シートを被着体と密着した状態で高温環境に晒された場合にも、被着体からのアウトガスに起因する気泡の発生や、被着体からの剥がれが抑制される、画像表示装置用粘着シートを提供することを主な目的とする。さらに、本発明は、当該粘着シートを用いたタッチパネル及び画像表示装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の従来技術の課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、(a)カルボキシル基を有しないアクリル酸エステル共重合体と、(b)架橋剤とを含有する粘着剤組成物の架橋物を含む粘着層を備える、画像表示装置用粘着シートにおいて、粘着層の貯蔵弾性率、ゲル分率、及び25℃での損失正接tanδ(25℃)に対する、95℃での損失正接tanδ(95℃)の比を、それぞれ所定値に設定することにより、被着体と密着した状態で高温環境に晒された場合の被着体からのアウトガスに起因する気泡の発生や、被着体からの剥がれが効果的に抑制されることを見出した。本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を重ねて完成した発明である。
【0011】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (a)カルボキシル基を有しないアクリル酸エステル共重合体と、(b)架橋剤と、を含有する粘着剤組成物の架橋物を含む粘着層を備える、画像表示装置用粘着シートであって、
前記粘着層は、温度95℃及び周波数1Hzでの貯蔵弾性率が、4.0×10
4以上であり、
前記粘着層は、ゲル分率が70%以上90%以下であり、
前記粘着層は、25℃での損失正接tanδ(25℃)に対する、95℃での損失正接tanδ(95℃)の比(tanδ(95℃)/tanδ(25℃))が、0.7以上0.9以下である、画像表示装置用粘着シート。
項2. 前記(a)カルボキシル基を有しないアクリル酸エステル共重合体は、重量平均分子量が70万以上120万以下である、項1に記載の画像表示装置用粘着シート。
項3. 前記粘着層の厚みが、10μm以上250μm以下である、項1又は2に記載の画像表示装置用粘着シート。
項4. 剥離用基材シートをさらに備える、項1〜3のいずれか1項に記載の画像表示装置用粘着シート。
項5. 項1〜3のいずれか1項に記載の画像表示装置用粘着シートを備える、タッチパネル。
項6. 項1〜3のいずれか1項に記載の画像表示装置用粘着シートを備える、画像表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被着体と密着した状態で高温環境に晒された場合にも、被着体からのアウトガスに起因する気泡の発生や、被着体からの剥がれが抑制される、画像表示装置用粘着シートを提供することができる。また、本発明によれば、当該粘着シートを用いた、当該粘着シートを用いたタッチパネル及び画像表示装置を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の画像表示装置用粘着シートは、(a)カルボキシル基を有しないアクリル酸エステル共重合体と、(b)架橋剤と、を含有する粘着剤組成物の架橋物を含む粘着層を備える、画像表示装置用粘着シートである。粘着層は、温度95℃及び周波数1Hzでの貯蔵弾性率が4.0×10
4以上であり、ゲル分率が70%以上90%以下であり、さらに、25℃での損失正接tanδ(25℃)に対する95℃での損失正接tanδ(95℃)の比(tanδ(95℃)/tanδ(25℃))が、0.7以上0.9以下であることを特徴としている。本発明の画像表示装置用粘着シートは、このような構成を備えることにより、被着体と密着した状態で高温環境に晒された場合にも、被着体からのアウトガスに起因する気泡の発生や、被着体からの剥がれが抑制されるという優れた効果を発揮する。以下、本発明の画像表示装置用粘着シート、当該粘着シートを用いたタッチパネル及び画像表示装置について詳述する。
【0014】
なお、本明細書において、「〜」で結ばれた数値は、「〜」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。複数の下限値と複数の上限値が別個に記載されている場合、任意の下限値と上限値を選択し、「〜」で結ぶことができるものとする。
【0015】
1.画像表示装置用粘着シート
本発明の画像表示装置用粘着シート(以下、単に「粘着シート」と表記することがある)は、画像表示装置に使用される粘着シートである。本発明の粘着シートは、画像表示装置のカバーフィルムとタッチセンサとの間や、カバーフィルムと表示素子(液晶デバイスなど)との間など、画像表示装置に含まれる部材(例えば少なくとも1つが透明部材)間を密着させるために好適に使用される。本発明の粘着シートの好適な使用態様については、後述の通りである。
【0016】
本発明の粘着シートにおいて、粘着層は透明であることが好ましい。なお、本発明において、透明とは、無色透明及び有色透明を含み、画像表示を阻害しなければ半透明であってもよい。
【0017】
本発明の粘着シートは、粘着層を備えている。また、粘着層は、(a)カルボキシル基を有しないアクリル酸エステル共重合体と、(b)架橋剤とを含有する粘着剤組成物の架橋物を含んでいる。
【0018】
本発明において、(a)カルボキシル基を有しないアクリル酸エステル共重合体とは、カルボキシル基を実質的に有していないことを意味しており、カルボキシル基を全く有していないアクリル酸エステル共重合体のみならず、例えばITO(酸化インジウムスズ)などの透明導電膜と接触させた場合に、カルボキシル基の酸に起因して透明導電膜を腐食させたり抵抗値を変化させない程度のカルボキシル基を有するアクリル酸エステル共重合体をも含み得る。より具体的には、(a)カルボキシル基を有しないアクリル酸エステル共重合体において、カルボキシル基を含むモノマー単位の割合が、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下の含有量であればよい。(a)カルボキシル基を有しないアクリル酸エステル共重合体において、カルボキシル基を含むモノマー単位の割合は、0質量%であることが好ましい。
【0019】
(a)カルボキシル基を有しないアクリル酸エステル共重合体(以下、「アクリル酸エステル共重合体(a)」と表記することがある)は、粘着層を形成する粘着剤組成物の主剤を構成する。具体的には、粘着剤組成物中のアクリル酸エステル共重合体(a)の割合は、特に制限されないが、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上である。
【0020】
粘着シートを被着体と密着した状態で高温環境に晒された場合にも、被着体からのアウトガスに起因する気泡の発生や被着体からの剥がれを抑制する観点から、アクリル酸エステル共重合体(a)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、反応性官能基を有するモノマーとの共重合体であることが好ましい。なお、粘着剤組成物中のアクリル酸エステル共重合体(a)は、1種でもよいし、複数種類でもよい。また、アクリル酸エステル共重合体(a)と他のポリマーとを組み合わせて用いてもよい。
【0021】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、好ましくは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」又は「メタクリル酸」を意味する。
【0022】
また、反応性官能基を有するモノマーとしては、水酸基含有モノマー、アミノ基含有モノマーなどが挙げられる。透明導電膜などの金属を腐食しにくく、さらに、粘着シートを被着体と密着した状態で高温環境に晒された場合にも、被着体からのアウトガスに起因する気泡の発生や被着体からの剥がれを抑制する観点から、水酸基含有モノマーが好ましい。水酸基含有モノマーとしては、好ましくは、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。水酸基含有モノマーは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0023】
アクリル酸エステル共重合体(a)の水酸基価としては、特に制限されないが、粘着シートを被着体と密着した状態で高温環境に晒された場合にも、被着体からのアウトガスに起因する気泡の発生や被着体からの剥がれを抑制する観点から、下限については、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上が挙げられ、上限については、好ましくは100mgKOH/g以下、より好ましくは90mgKOH/g以下が挙げられる。
【0024】
また、アクリル酸エステル共重合体(a)の重量平均分子量としては、特に制限されないが、粘着シートを被着体と密着した状態で高温環境に晒された場合にも、被着体からのアウトガスに起因する気泡の発生や被着体からの剥がれを抑制する観点から、下限については、好ましくは30万以上、より好ましくは50万以上、さらに好ましくは70万以上、特に好ましくは75万以上が挙げられ、上限については、好ましくは120万以下、より好ましくは100万以下、さらに好ましくは90万以下、特に好ましくは85万以下が挙げられ、特に75万〜90万、75万〜85万が好ましい。なお、アクリル酸エステル共重合体(a)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。アクリル酸エステル共重合体としては、市販のものを用いてもよく、公知の方法により合成したものを用いてもよい。
【0025】
本発明において、(b)架橋剤(以下、「架橋剤(b)」と表記することがある)は、主剤であるアクリル酸エステル共重合体(a)を架橋させる機能を発揮する成分である。粘着層においては、粘着剤組成物に含まれるアクリル酸エステル共重合体(a)が架橋剤(b)によって架橋されることにより、硬化(完全硬化及び半硬化を含む)した粘着層となる。すなわち、本発明の粘着シートにおいて、粘着層は、粘着剤組成物が架橋することで硬化(完全硬化及び半硬化を含む)した架橋物である。
【0026】
架橋剤(b)は、アクリル酸エステル共重合体(a)を架橋させる機能を発揮すれば特に制限されず、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物などの公知の架橋剤のなかから、アクリル酸エステル共重合体(a)が有する架橋性官能基との反応性を考慮して適宜選択できる。例えば、アクリル酸エステル共重合体(a)が、架橋性官能基として水酸基を有する場合であれば、水酸基との架橋反応性が良好であることから、イソシアネート化合物を用いることが好ましい。架橋剤(b)は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0027】
架橋剤(b)としては、アクリル酸エステル共重合体(a)を好適に架橋できることから、イソシアネート化合物、エポキシ化合物が好ましい。イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。また、エポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラグリシジルキシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0028】
粘着剤組成物中の架橋剤(b)の含有量は、特に制限されないが、粘着シートを被着体と密着した状態で高温環境に晒された場合にも、被着体からのアウトガスに起因する気泡の発生や被着体からの剥がれを抑制する観点から、アクリル酸エステル共重合体(a)100重量部に対し、下限については、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上が挙げられ、上限については、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下が挙げられる。
【0029】
粘着剤組成物には、任意に、発明の効果を損なわない範囲で、アクリル酸エステル共重合体(a)及び架橋剤(b)とは異なる他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、粘着剤組成物の添加剤として公知の成分、例えば酸化防止剤、金属腐食防止剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、屈折率調整剤、シランカップリング剤等の中から必要に応じて選択できる。他の成分は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0030】
本発明の粘着シートは、例えば、少なくともアクリル酸エステル共重合体(a)及び架橋剤(b)を含む前記の粘着剤組成物と溶剤との混合液(塗工液)を、例えば剥離用基材シートなどの上に塗布し、粘着剤組成物を架橋させることによって、粘着層を形成して製造することができる。架橋手段としては、加熱、乾燥が挙げられる。粘着剤組成物を加熱することにより、架橋剤(b)が、アクリル酸エステル共重合体(a)同士を架橋し、粘着層を硬化、半硬化の状態とすることができる。なお、粘着剤組成物の塗布方法としては、ナイフコータ、マイクロバーコータ、エアナイフコータ、リバースロールコータ、リバースグラビアコータ、バリオグラビアコータ、ダイコータ、カーテンコータ等の公知の塗布方法から適宜選択することができる。
【0031】
溶剤は、粘着剤組成物の塗工適性の向上のために用いられるものであり、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類;ジクロロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酪酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のポリオール及びその誘導体を挙げることができる。なお、溶剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。粘着剤組成物中、溶剤の含有量は、塗工設備等を考慮し、任意で決定することができる。
【0032】
本発明の粘着シートにおいて、粘着層は、温度95℃及び周波数1Hzでの貯蔵弾性率が、4.0×10
4以上である。粘着シートを被着体と密着した状態で高温環境に晒された場合にも、被着体からのアウトガスに起因する気泡の発生や被着体からの剥がれを抑制する観点から、当該貯蔵弾性率の下限については、好ましくは4.2×10
4以上、より好ましくは4.5×10
4以上が挙げられ、上限については、好ましくは5.0×10
5以下、より好ましくは1.0×10
5以下が挙げられる。本発明において、粘着層の当該貯蔵弾性率の測定方法は、実施例に記載の方法を採用する。本発明の粘着シートにおいて、粘着層の貯蔵弾性率は、粘着剤組成物に使用するアクリル酸エステル共重合体(a)及び架橋剤(b)の種類、分子量、割合、硬化の程度などの選択によって調整することができる。
【0033】
本発明の粘着シートにおいて、粘着層は、ゲル分率が70〜90%である。粘着シートを被着体と密着した状態で高温環境に晒された場合にも、被着体からのアウトガスに起因する気泡の発生や被着体からの剥がれを抑制する観点から、当該ゲル分率の下限については、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上が挙げられ、上限については、好ましくは99%以下、より好ましくは95%以下が挙げられる。当該ゲル分率は、具体的には、酢酸エチルに24時間浸漬して測定される値であり、さらに具体的には実施例に記載の方法を採用して測定される値である。本発明の粘着シートにおいて、粘着層のゲル分率は、粘着剤組成物に使用するアクリル酸エステル共重合体(a)及び架橋剤(b)の種類、分子量、割合、硬化の程度などの選択によって調整することができる。
【0034】
本発明の粘着シートにおいて、粘着層は、25℃での損失正接tanδ(25℃)に対する、95℃での損失正接tanδ(95℃)の比(tanδ(95℃)/tanδ(25℃))が、0.7〜0.9の範囲にある。粘着シートを被着体と密着した状態で高温環境に晒された場合にも、被着体からのアウトガスに起因する気泡の発生や被着体からの剥がれを抑制する観点から、当該比の下限については、好ましくは0.75以上、より好ましくは0.80以上が挙げられ、上限については、好ましくは0.95以下、より好ましくは0.90以下が挙げられる。本発明において、粘着層のtanδ(25℃)及びtanδ(95℃)の測定方法は、実施例に記載の方法を採用する。本発明の粘着シートにおいて、粘着層の当該比(tanδ(95℃)/tanδ(25℃))は、粘着剤組成物に使用するアクリル酸エステル共重合体(a)及び架橋剤(b)の種類、分子量、割合、硬化の程度などの選択によって調整することができる。
【0035】
本発明の粘着シートにおいて、粘着層のtanδ(25℃)としては、前記の比(tanδ(95℃)/tanδ(25℃))を充足すれば特に制限されないが、下限については、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.25以上が挙げられ、上限については、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.9以下が挙げられる。また、粘着層のtanδ(95℃)としては、前記の比(tanδ(95℃)/tanδ(25℃))を充足すれば特に制限されないが、下限については、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上が挙げられ、上限については、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.9以下が挙げられる。
【0036】
本発明の粘着シートにおいて、粘着層のガラス転移温度Tg(℃)としては、特に制限されないが、粘着シートを被着体と密着した状態で高温環境に晒された場合にも、被着体からのアウトガスに起因する気泡の発生や被着体からの剥がれを抑制する観点から、下限については、好ましくは−20℃以上、より好ましくは−15℃以上が挙げられ、上限については、好ましくは20℃以下、より好ましくは15℃以下が挙げられる。本発明において、粘着層のガラス転移温度Tgの測定方法は、実施例に記載の方法を採用する。
【0037】
粘着層の厚みとしては、特に制限されないが、画像表示装置用粘着シートとして好適に機能しつつ、粘着シートを被着体と密着した状態で高温環境に晒された場合にも、被着体からのアウトガスに起因する気泡の発生や被着体からの剥がれを抑制する観点から、下限については、好ましくは10μm以上、より好ましくは50μm以上、さらに好ましくは100μm以上が挙げられ、上限については、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは250μm以下が挙げられる。
【0038】
また、本発明の粘着シートは、片面粘着タイプ及び両面粘着タイプのいずれの構成であってもよい。例えば、両面粘着タイプである場合は、本発明の粘着シートの両表面を前記の粘着層により構成することができる。また、片面粘着タイプである場合には、本発明の粘着シートの片面を前記の粘着層により構成することができる。
【0039】
本発明の粘着シートを両面粘着タイプとする場合、例えば、第1の剥離用基材シート上に、前記粘着剤組成物と溶剤との混合液の塗布及び加熱を行って粘着層を形成し、当該粘着層上に第2の剥離用基材シートを積層することにより好適に製造することができる。また、本発明の粘着シートを片面粘着タイプとする場合であれば、剥離性を備えていない基材シートなどの上に前記粘着剤組成物と溶剤との混合液の塗布及び加熱を行って粘着層を形成し、当該粘着層上に第1の剥離用基材シートを積層することにより好適に製造することができる。
【0040】
第1及び第2の剥離用基材シートとしては、それぞれ、基材シートの一方面に剥離剤層を形成して構成されたものが公知である。基材シートとしては、例えば、ポリエチレンフィルム(PET)、ポリプロピレンフィルム(PP)、ポリブテンフィルム等、剥離用基材シートの基材シートとして従来公知の材料を用いて形成することができる。これらの基材シートは、剥離性を備えていない基材シートとしても使用することができる。また、剥離剤層の材料としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の従来から公知な剥離剤を挙げることができる。
【0041】
第1及び第2の剥離用基材シートや、基材シートの厚みとしては、特に制限されず、本発明の粘着シートの具体的な用途に応じて適宜設定することができ、例えば25〜150μm程度、好ましくは50〜100μm程度が挙げられる。
【0042】
また、本発明の粘着シートの総厚みとしては、特に制限されないが、例えば60〜550μm程度、好ましくは100〜450μm程度が挙げられる。
【0043】
本発明の粘着シートが使用される画像表示装置としては、特に制限されず、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、陰極線管(CRT)、電解放出ディスプレイ(FED)、有機ELディスプレイ(OELD)、電子ペーパ(EP)などが挙げられる。
【0044】
また、本発明の粘着シートは、画像表示装置に含まれる部材間を密着させるために好適に使用することができ、例えば、カバーフィルムとタッチセンサとの間、カバーフィルムと表示素子(液晶デバイスなど)との間、タッチセンサと表示素子(液晶デバイスなど)との間などに好適に配置される。特に、カバーフィルムがポリカーボネートなどのプラスチック製である場合には、高温環境において、前記のアウトガスに起因する気泡の問題が生じやすいが、本発明の粘着シートによってカバーフィルムを密着させることにより、カバーフィルムと粘着シートとの界面に気泡や剥がれなどが生じることを好適に抑制することができる。よって、本発明の粘着性シートは、プラスチック製のカバーフィルムの密着に特に好適に使用することができる。
【0045】
2.タッチパネル及び画像表示装置
本発明のタッチパネルは、本発明の画像表示装置用粘着シートを備えることを特徴としている。また、本発明の画像表示装置についても、本発明の画像表示装置用粘着シートを備えることを特徴としている。本発明のタッチパネル及び画像表示装置(例えばタッチパネルを内蔵した画像表示装置なども含む)においては、それぞれ、例えばカバーフィルム、タッチセンサ、表示素子(液晶デバイス)など、画像表示装置に含まれる各種部材(特に透明部材)の少なくとも一部が、本発明の画像表示装置用粘着シートによって密着されているため、高温環境に晒された場合にも、部材からのアウトガスに起因する気泡が、部材と粘着シートとの界面に発生することや、部材と粘着シートとの剥がれが効果的に抑制されている。
【0046】
前記の通り、本発明の粘着シートは、画像表示装置に含まれる部材間を密着させるために好適に使用することができる。よって、本発明のタッチパネルにおいては、例えば、カバーフィルムとタッチセンサとの間に本発明の粘着シートが配置されていることが好ましい。また、本発明の画像表示装置においては、カバーフィルムと表示素子(液晶デバイスなど)との間に本発明の粘着シートが配置されていることが好ましい。また、本発明の画像表示装置がタッチセンサを有する場合であれば、カバーフィルムとタッチセンサとの間や、タッチセンサと表示素子(液晶デバイスなど)との間に、本発明の粘着シートが配置されていることが好ましい。特に、カバーフィルムがポリカーボネートなどのプラスチック製である場合にも、カバーフィルムと粘着シートとの界面に気泡や剥がれなどが生じることを好適に抑制する機能が発揮される。よって、本発明のタッチパネル及び画像表示装置においては、それぞれ、プラスチック製のカバーフィルムを備える場合に、特に好適に前記機能が発揮される。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0048】
<実施例1>
(塗工液の作製)
(a)カルボキシル基を有しないアクリル酸エステル共重合体として、重量平均分子量70万、水酸基価20〜30であるアクリル酸エステル共重合体100質量部を、溶剤にて固形分35質量%に希釈し、(b)架橋剤として、イソシアネート系架橋剤(日本カーバイド社製 型番「CK−121」)を0.13質量部添加し、撹拌して塗工液1を作製した。
【0049】
(粘着シートの作製)
A4サイズの第1の剥離用基材シート(ニッパ社製、型番:PET 38×1−V0、38μm)上に、アプリケーターを用いて乾燥後の膜厚が50μm(すなわち、粘着層の厚みが50μm)になるように、上記塗工液1(粘着剤組成物)を塗工した。次に、乾燥炉内(アドバンテック社製 型番:DRD620DA)で90℃、5分間の条件で加熱・乾燥し、塗工液の層を硬化させて粘着層を形成した。次に、第2の剥離用基材シート(東洋紡績社製 型番:E7006−38μm)を、粘着層に貼り合わせて、粘着シートを作製した。
【0050】
<実施例2>
(塗工液の作製)
(a)カルボキシル基を有しないアクリル酸エステル共重合体として、重量平均分子量100万、水酸基価40〜50であるアクリル酸エステル共重合体100質量部を、溶剤にて固形分20質量%に希釈し、(b)架橋剤として、イソシアネート系架橋剤(日本カーバイド社製 型番「CK−121」)を0.03質量部添加し、撹拌して塗工液2を作製した。
【0051】
(粘着シートの作製)
塗工液1の代わりに塗工液2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0052】
<実施例3>
(塗工液の作製)
(a)カルボキシル基を有しないアクリル酸エステル共重合体として、重量平均分子量70万、水酸基価20〜30であるアクリル酸エステル共重合体100質量部を、溶剤にて固形分35質量%に希釈し、(b)架橋剤として、イソシアネート系架橋剤(日本カーバイド社製 型番「CK−121」)を0.23質量部添加し、撹拌して塗工液3を作製した。
【0053】
(粘着シートの作製)
塗工液1の代わりに塗工液3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0054】
<実施例4>
(塗工液の作製)
(a)カルボキシル基を有しないアクリル酸エステル共重合体として、重量平均分子量80万、水酸基価20〜30であるアクリル酸エステル共重合体100質量部を、溶剤にて固形分32質量%に希釈し、(b)架橋剤として、イソシアネート系架橋剤(東洋インキ社製 型番「BXX6460」)を0.2質量部、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製 型番「TETRAD−C」)を0.5質量部添加し、撹拌して塗工液4を作製した。
【0055】
(粘着シートの作製)
塗工液1の代わりに塗工液4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0056】
<比較例1>
(塗工液の作製)
(a)カルボキシル基を有しないアクリル酸エステル共重合体として、重量平均分子量80万、水酸基価1〜10であるアクリル酸エステル共重合体100質量部を、溶剤にて固形分32質量%に希釈し、(b)架橋剤として、イソシアネート系架橋剤(東洋インキ社製 型番「BHS8515」)を2質量部、金属キレート系架橋剤(東洋インキ社製 型番「BXX4805」)を2質量部添加し、撹拌して塗工液5を作製した。
【0057】
(粘着シートの作製)
塗工液1の代わりに塗工液5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0058】
<比較例2>
(塗工液の作製)
(a)カルボキシル基を有しないアクリル酸エステル共重合体として、重量平均分子量80万、水酸基価1〜10であるアクリル酸エステル共重合体100質量部を、溶剤にて固形分32質量%に希釈し、(b)架橋剤として、イソシアネート系架橋剤(東洋インキ社製 型番「BHS8515」)を2質量部、金属キレート系架橋剤(東洋インキ社製 型番「BXX4805」)を0.5質量部添加し、撹拌して塗工液6を作製した。
【0059】
(粘着シートの作製)
塗工液1の代わりに塗工液6を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0060】
<比較例3>
(塗工液の作製)
(a)カルボキシル基を有しないアクリル酸エステル共重合体として、重量平均分子量40万、水酸基価80〜90であるアクリル酸エステル共重合体100質量部を、溶剤にて固形分40質量%に希釈し、(b)架橋剤として、イソシアネート系架橋剤(日本カーバイド社製 型番「CK−121」)を0.13質量部添加し、撹拌して塗工液7を作製した。
【0061】
(粘着シートの作製)
塗工液1の代わりに塗工液7を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0062】
<比較例4>
(塗工液の作製)
(a)カルボキシル基を有しないアクリル酸エステル共重合体として、重量平均分子量60万、水酸基価20〜30であるアクリル酸エステル共重合体100質量部を、溶剤にて固形分37質量%に希釈し、(b)架橋剤として、イソシアネート系架橋剤(日本カーバイド社製 型番「CK−121」)を0.13質量部添加し、撹拌して塗工液8を作製した。
【0063】
(粘着シートの作製)
塗工液1の代わりに塗工液8を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0064】
<比較例5>
(塗工液の作製)
(a)カルボキシル基を有しないアクリル酸エステル共重合体として、重量平均分子量70万、水酸基価20〜30であるアクリル酸エステル共重合体100質量部を、溶剤にて固形分35質量%に希釈し、(b)架橋剤として、イソシアネート系架橋剤(日本カーバイド社製 型番「CK−121」)を0.33質量部添加し、撹拌して塗工液9を作製した。
【0065】
(粘着シートの作製)
塗工液1の代わりに塗工液9を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0066】
<比較例6>
(塗工液の作製)
(a)カルボキシル基を有しないアクリル酸エステル共重合体として、重量平均分子量70万、水酸基価20〜30であるアクリル酸エステル共重合体100質量部を、溶剤にて固形分35質量%に希釈し、(b)架橋剤として、イソシアネート系架橋剤(日本カーバイド社製 型番「CK−121」)を0.05質量部添加し、撹拌して塗工液10を作製した。
【0067】
(粘着シートの作製)
塗工液1の代わりに塗工液10を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0068】
<比較例7>
(塗工液の作製)
(a)カルボキシル基を有しないアクリル酸エステル共重合体として、重量平均分子量100万、水酸基価40〜50であるアクリル酸エステル共重合体100質量部を、溶剤にて固形分20質量%に希釈し、多官能水酸基を有するオリゴマーとして、KING INDUSTRIES社製 型番「Flexorez188」を2質量部、(b)架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(日本カーバイド社製 型番「CK−121」)を0.1質量部添加し、撹拌して塗工液11を作製した。
【0069】
(粘着シートの作製)
塗工液1の代わりに塗工液11を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0070】
<貯蔵弾性率の測定>
測定装置として、ティー・エイ・インスツルメント社製 「Discovery HR−3」を用いて測定した。測定条件については以下の通りである。なお、貯蔵弾性率の測定において、ガラス転移温度Tg、粘着層の25℃での損失正接tanδ(25℃)と、95℃での損失正接tanδ(95℃)が測定され、これらの比(tanδ(95℃)/tanδ(25℃))を算出した。
(測定条件)
測定モード:せん断モード
歪み:0.1%
測定周波数:1Hz
測定温度:25℃、95℃
測定サンプル:各粘着シートの粘着層を20枚重ねあわせ、総厚約1mmにして測定した。
【0071】
<ゲル分率の測定>
各粘着シートを50mm×50mmのサイズに裁断した。両面の剥離シートを剥離して、粘着層をステンレス製メッシュ(メッシュサイズ200)で包み込んだ。その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着層の質量を算出した。このときの粘着層の質量をM1とする。次に、上記ステンレス製メッシュに包まれた粘着層を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。次に、粘着層を取り出し、80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着層のみの質量を算出した。このときの粘着層の質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で算出した。
【0072】
<密着力の評価>
各粘着シート(粘着層の厚さは50μm)から第1の剥離用基材シートを剥離し、露出した粘着層を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:25μm)に貼合し、第2の剥離用基材シート/粘着層/PETフィルムの積層体を得た。得られた積層体を25mm幅、120mm長に裁断し、これをサンプルとした。次に、温度23℃、相対湿度50%RHの環境にて、上記サンプルから第2の剥離用基材シートを剥離し、露出した粘着層をポリカーボネート板(三菱ガス化学社製 NF−2000)に2Kgのローラで一往復して貼り付けたのち、温度23℃、相対湿度50%RHの条件下で30分放置した。次に、引張試験機を用い、ポリカーボネート板と粘着層との界面を、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で剥離させ、粘着力(N/25mm)を測定することで、粘着シートの密着力を評価した。なお、その他の条件は、JIS Z 0237:2009に準拠して、測定を行った。
【0073】
<高温環境におけるアウトガスに起因する気泡及び剥がれの評価>
各粘着シートから第1の剥離用基材シートを剥離して粘着層を露出させた。次に、事前に温度95℃の環境で3時間に静置したポリカーボネート板(三菱ガス化学社製 NF−2000 サイズ 50mm×150mm、厚み1.5mm)を用意し、ハンドローラーを用いて粘着シートの粘着層とポリカーボネート板とを貼り合わせて積層体を得た。得られた積層体から第2の剥離用基材シートを剥離して粘着層を露出させ、ハンドローラーを用いて粘着層と素ガラス(サイズ50mm×150mm、厚み0.7mm)とを貼り合わせてサンプルを作製した。得られたサンプルをオートクレーブ処理(温度50℃、圧力0.5MPaの条件下で20分間)した後、温度95℃の環境で240時間静置した。その後、粘着シートとポリカーボネート板との界面を目視で確認し、以下の基準で気泡や剥がれの発生を評価した。
◎:気泡及び浮き・剥がれが全くない。
○:サイズφ<0.2mmの気泡のみが確認され、実用上問題ない。
×:サイズφ≧0.2mmの気泡、または浮き・剥がれが確認された、実用上問題がある。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
なお、表1において、例えば実施例1の貯蔵弾性率(95℃)「4.20E+04」は「4.20×10
4」を意味しており、表1,2の他の類する表記についても同様である。
【0077】
表2において、比較例1〜7における<高温環境におけるアウトガスに起因する気泡及び剥がれの評価>の詳細は、比較例1,2,5については浮き・剥がれが確認され、比較例3,4,6,7についてはサイズφ≧0.2mmの気泡が確認された。
【課題】被着体と密着した状態で高温環境に晒された場合にも、被着体からのアウトガスに起因する気泡の発生や、被着体からの剥がれが抑制される、画像表示装置用粘着シートを提供する。
【解決手段】(a)カルボキシル基を有しないアクリル酸エステル共重合体と、(b)架橋剤と、を含有する粘着剤組成物の架橋物を含む粘着層を備える、画像表示装置用粘着シートであって、
前記粘着層は、25℃での損失正接tanδ(25℃)に対する、95℃での損失正接tanδ(95℃)の比(tanδ(95℃)/tanδ(25℃))が、0.7以上0.9以下である、画像表示装置用粘着シート。