(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持部は、前記台座における前記スクリーンの引き込み側と引き出し側とにそれぞれ2つずつ設けられ、前記スクリーンは、各側における前記支持部の間に通されていることを特徴とする請求項5に記載の津波バリア。
前記管材の両端部には、当該管材の内面側から外面側に向けて湾曲するように形成された曲面を有する受け部材が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の津波バリア。
【背景技術】
【0002】
岸壁、護岸等に設けられ、津波や高潮の発生時に押し波による船舶や漂流物の陸への流入、引き波による地上の荷物の海への流出を防止する津波バリアが知られている(例えば、特許文献1参照)。
津波バリアは、例えば、地面に立設された複数の支柱と、これらの支柱に支持される捕捉用スクリーンとを備えており、支柱及びスクリーンで漂流物等の流入、荷物の流出を阻止するとともに、衝撃を吸収することができる。
津波バリアは、陸に載置された荷物の周囲への流出を避けるため、荷物の載置スペースの周囲を囲むように設けられることが多い。
津波バリアで荷物を囲む場合、途中の中間支柱でスクリーンを架設する方向を変える必要がある。特に、載置スペースの形状に合わせて矩形状に津波バリアを設置する場合には、その角部において、スクリーンをほぼ直角に曲げる必要があるため、スクリーンが支柱に接触し、負荷が繰り返しかかることで徐々に損傷し、やがて破断してしまう。
そこで、津波バリアの角部のように、スクリーンの架設方向を大きく変える箇所がある場合には、
図14、
図15に示すように、角部となる位置でスクリーン101の架設を一旦終わらせ、別のスクリーン101で架設を始めるという構成をとっていた。これにより、津波バリア100に角部があっても、複数の直線状の柵を組み合わせることで、スクリーン101の破断を回避していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、津波バリア100の角部でスクリーン101の架設を終了させると、1つの角部につき、2つの端部ができるため、スクリーン101の端部を支持する端部支柱102間に隙間ができてしまう。また、端部支柱102は、スクリーン101にかかる張力のすべてを受け止める必要があるため、構造上、他の中間部分の中間支柱103よりも強固にする必要があり、材料及び施工コストが嵩むという問題があった。したがって、津波バリア100の端部支柱101をできるだけ減らしたいという要望があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、端部支柱間のスクリーンの隙間をなくし、スクリーンを架設する方向を変える角部の数に限らず、端部支柱の数を最小限にすることができる津波バリアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、基礎に立設された複数の支柱と、前記支柱間に架け渡されるスクリーンとを備える津波バリアであって、少なくとも一部の支柱には、前記スクリーンを架け渡す方向を変えるガイド部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
また、前記複数の支柱は、前記スクリーンの端部を支持する少なくとも2つの端部支柱と、前記端部支柱間に配置され、前記スクリーンを支持する中間支柱と、を備え、前記ガイド部は、前記中間支柱に設けられていることが好ましい。
【0008】
また、前記ガイド部は、前記中間支柱の側面に設けられた台座と、前記台座に設けられ、前記スクリーンを摺動可能に支持する支持部と、を備えることが好ましい。
【0009】
また、前記支持部は、前記台座に立設された軸部と、前記軸部が挿通されて前記軸部に回転自在とされ、外面に前記スクリーンを摺動可能な筒部と、を備えることが好ましい。
【0010】
また、前記支持部は、前記台座における前記スクリーンの引き込み側と引き出し側の双方に設けられていることが好ましい。
【0011】
また、前記支持部は、前記台座における前記スクリーンの引き込み側と引き出し側とにそれぞれ2つずつ設けられ、前記スクリーンは、各側における前記支持部の間に通されていることが好ましい。
【0012】
また、前記スクリーンは、ワイヤロープを有しており、前記支柱内を貫通するように設けられ、直線状に形成された管材を備え、前記管材に前記ワイヤロープが通されていることが好ましい。
【0013】
また、前記管材の両端部には、当該管材の内面側から外面側に向けて湾曲するように形成された曲面を有する受け部材が設けられている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、端部支柱間のスクリーンの隙間をなくすことができ、スクリーンを架設する方向を変える角部の数に限らず、端部支柱の数を最小限にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施形態は一つの例示であり、本発明の範囲において、種々の実施形態をとり得る。
【0017】
[第1の実施形態]
<津波バリアの構成>
図1から
図3は、津波バリアを説明する図であり、
図4から
図6は、津波バリアが備えるガイド部を説明する図である。
図1、
図2に示すように、津波バリア1は、港湾の岸壁近くに設けられている。津波バリア1は、船舶に積み込む荷物C又は船舶から荷下ろしされた荷物Cを仮置きする荷置きスペースSを矩形状に囲むように設けられている。
津波バリア1は、荷置きスペースSを完全に囲むものではなく、仮置きされた荷物Cを搬出したり、荷置きスペースSに荷物を搬入するために車両が通行するゲート11が設けられている。
津波バリア1は、複数の支柱2と、スクリーン3と、ガイド部4と、管材5を備えている。
【0018】
(支柱)
支柱2は、基礎となる地面に複数立設されている。支柱2は、直線上に並ぶように地面に立設されており、その途中で並び方向が変えられている。すなわち、並び方向が変わる箇所が津波バリア1の角部となる。津波バリア1は矩形状に形成されているため、4つの角部を有するように支柱2の並び方向が4箇所で変えられている。
これらの複数の支柱2には、スクリーン3の端部を支持する端部支柱21と、端部支柱21間に配置され、スクリーン3を支持する中間支柱22とがある。
端部支柱21は、ゲート11を構成する支柱として用いられており、これらの端部支柱21以外の支柱は全て中間支柱22であり、端部支柱21間に所定の間隔をあけて配置されている。
端部支柱21は、スクリーン3に作用する張力等に耐えられるよう、スクリーン3の途中を支持する中間支柱22よりも強固に構成されている。具体的には、端部支柱21は、中間支柱22よりも大径かつ肉厚であり、アンカー等をとって地面に深く埋設されている。
ここで、端部支柱21は、当該端部支柱21に衝突した漂流物等の衝突エネルギーを変形で吸収するように設計されている。中間支柱22は、当該中間支柱22に衝突した漂流物等の衝突エネルギーを変形で吸収するように設計されているが、スクリーン3の伸びによる衝突エネルギーの吸収によって軽減される。中間支柱22の許容変形量は、軸線の傾斜角が15°である。
【0019】
(スクリーン)
スクリーン3は、津波や高潮の発生時に、海から陸に押し寄せる押し波による船舶や漂流物の陸への流入、引き波による荷置きスペースSの荷物の海への流出を防止するため、波によって流される物の捕捉体となるものである。
スクリーン3は、例えば、並べられた各支柱2に通される複数のワイヤロープ31を備えている。各ワイヤロープ31は、各支柱2の軸方向に直交する水平方向に沿うように各支柱2内に設けられた管材5に挿通されている。各ワイヤロープ31は、その延在方向が互いに平行となるように架設されており、津波バリア1の角部となる中間支柱22においてその架設方向が変えられる。
図1、
図2に示すように、津波バリア1が矩形状に設けられる場合には、ワイヤロープ31が角部においてほぼ90°屈曲されることになる。
図4に示すように、ワイヤロープ31の両端部は、端部支柱21に取り付けられている。
図5に示すように、ワイヤロープ31の端部には、ねじ山が形成されたボルト32がワイヤロープ31と同軸上に設けられており、端部支柱21の内部を通したワイヤロープ31のボルト32をワッシャ33とナット34で締結することにより、ワイヤロープ31を端部支柱21に取り付けることができる。
ここで、スクリーン3は、支柱2間に架設された複数のワイヤロープ31によって構成することもできるが、隣接する支柱2間の距離が長い場合には、ワイヤロープ31の弛みを防止するために、ワイヤロープ31同士を所定の間隔を保ちながら連結してもよい。
【0020】
(ガイド部)
図3、
図6から
図9に示すように、ガイド部4は、津波バリア1の角部において、ワイヤロープ31が中間支柱22に接触して損傷しないようにワイヤロープ31を案内するものである。
ガイド部4は、津波バリア1の角部の中間支柱22に設けられている。ガイド部4は、各ワイヤロープ31が架設されている高さに合わせて中間支柱22に設けられている。
ガイド部4は、台座41と、支持部42とを備えている。
台座41は、角部となる中間支柱22の側面に溶接等によって固定されている。台座41は、角部となる中間支柱22におけるワイヤロープ31の引き込み側と引き出し側の双方に設けられている。言い換えると、台座41は、中間支柱22の中心に対して対向する位置に設けられている。
台座41は、中間支柱22の軸線方向に所定の間隔をあけて互いに平行に配置された2枚の板材41a,41bを有している。板材41a,41bは、例えば、鋼板から形成されている。この2枚の板材41a,41bの間に支持部42が設けられている。
支持部42は、ワイヤロープ31を摺動可能に支持してワイヤロープ31の架設方向を変えるものである。支持部42は、各台座41において、ワイヤロープ31の引き込み経路又は引き出し経路を挟み込むようにそれぞれ2つ並んで設けられている。
支持部42は、一端が台座41の一方の板材41aに固定され、他端が台座41の他方の板材41bに固定された軸部42aと、この軸部42aが挿通されて軸部42aと同軸上に配置されて軸部42aに対して回転自在とされ、その外周面にワイヤロープ31を摺動可能な筒部42bとを備えている。
軸部42aは、例えば、鋼材から形成された円柱体であり、溶接によって板材41a,41bに固定されている。
筒部42bは、例えば、樹脂等の比較的柔らかな材料から形成されおり、軸部42a回りに回転自在な円筒体であるため、ワイヤロープ31に作用する張力によって軸部42aの回りを容易に回転し、ワイヤロープ31を移動させることにより、支持部42に力が集中しないように構成されている。
【0021】
(管材)
図6から
図9に示すように、管材5は、端部支柱21及び中間支柱22の双方に当該支柱2内を貫通するように設けられる。管材5は、その軸線が一直線に延びる円筒状に形成されている。管材5の両端部には、管材5の内面から外面に向けて湾曲するような滑らかな曲面を有する受け部材51が設けられている。受け部材51を設けるのは、挿通されるワイヤロープ31が管材5の両端部の角に接触することによる損傷を防止するためである。なお、受け部材51を管材5と一体に形成し、管材5の両端部を内面から外面に向けて曲面状に形成してもよい。
管材5を支柱2に設けた際、管材5の軸線方向に沿ってワイヤロープ31が引き込まれ、引き出されるようになっており、各台座41に設けられた2つの支持部42の間を管材5の軸線が通過するようにガイド部4及び管材5が配置されている。
【0022】
<津波バリアの施工方法>
次に、津波バリア1の施工方法について説明する。
図1、
図2に示すように、矩形状に仕切られた荷置きスペースSを津波バリア1で囲む際には、津波バリア1を矩形状に形成することが好ましい。
荷置きスペースSの境界に沿って支柱2を所定の間隔で設置していく。このとき、ワイヤロープ31の端部となるゲート11の支柱として端部支柱21を設置し、それ以外の支柱として中間支柱22を設置する。
端部支柱21及び中間支柱22には、管材5を挿通しておき、管材5の両端部に受け部材51を取り付けておく。また、津波バリア1の角部となる位置に配置された中間支柱22にはガイド部4を取り付けておく。
次に、ワイヤロープ31の一方の端部を一方の端部支柱21に取り付け、他方の端部を中間支柱22に順に通していく。ここで、津波バリア1の角部にワイヤロープ31を通す際には、引き込み側の2つの支持部42の間にワイヤロープ31を通した後、そのワイヤロープ31を管材5に通し、管材5から引き出したワイヤロープ31を引き出し側の2つの支持部42の間に通す。全ての中間支柱22にワイヤロープ31を通した後、ワイヤロープ31の他方の端部を他方の端部支柱21に取り付ける。
上記の作業を全てのワイヤロープ31について行うことで、漂流物や荷物を捕捉するスクリーン3が完成する。
【0023】
<作用、効果>
以上のような構成を有する津波バリア1によれば、角部となる中間支柱22にガイド部4を設けることにより、ワイヤロープ31が中間支柱22に直接接触することがなくなるため、張力が作用した際にワイヤロープ31の損傷を防止することができる。また、ガイド部4の支持部42の筒部42bが回転することで、張力が作用したときのワイヤロープ31の動きによる支持部42との摩擦を筒部42bの回転によって解消できるので、ワイヤロープ31の損傷を防止することができる。したがって、津波バリア1の角部において、ワイヤロープ31を屈曲させて支持部42に支持することができるので、従来のように、ワイヤロープ31の架設方向を変えるたびに、角部に端部支柱21を設けてワイヤロープ31を端部支柱21に固定する必要がなくなる。これにより、
図2と
図10の比較からも明確なように、津波バリア1の角部の支柱2の数を減らすことができるとともに、中間支柱22よりも施工の手間やコストがかかる端部支柱21の数を減らすことができるので、施工工程の短縮、コストの低減を図ることができる。また、角部における端部支柱21間において、ワイヤロープ31が架設されていない箇所をなくすことができるので、津波バリア1に対する荷物の流入、流出を防止することができる。
また、支持部42は、台座41に挟まれているので、ワイヤロープ31が支持部42から外れることもない。
また、各台座41に設けられた2つの支持部42の間を管材5の軸線が通過するようにガイド部4及び管材5が配置されているので、ワイヤロープ31を中間支柱22に直線状に挿通することができ、ワイヤロープ31の架設作業が容易となる。
また、管材5の両端部に受け部材51を設けることで、管材5とワイヤロープ31との点接触により生じる損傷を防止することができる。
【0024】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、ガイド部の構造であるため、以下ではガイド部について説明し、第1の実施形態と同じ構成には同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態においては、ワイヤロープ31を津波バリア1の角部に配置された中間支柱22に管材5を介して挿通するのではなく、中間支柱22の内側においてワイヤロープ31をガイド部4Aに支持させる構成を採用している。
【0025】
(ガイド部)
図10から
図13に示すように、ガイド部4Aは、津波バリア1の角部において、ワイヤロープ31が中間支柱22に接触して損傷しないようにワイヤロープ31を案内するものである。
ガイド部4Aは、津波バリア1の角部の中間支柱22に設けられている。ガイド部4Aは、各ワイヤロープ31が架設されている高さに合わせて中間支柱22に設けられている。
ガイド部4Aは、台座41と、支持部42とを備えている。
台座41は、角部となる中間支柱22の側面に溶接等によって固定されている。台座41は、角部となる中間支柱22から津波バリア1の内側に向けて延びるように中間支柱22に設けられている。
台座41は、中間支柱22の軸線方向に所定の間隔をあけて互いに平行に配置された2枚の板材41a,41bを有している。板材41a,41bは、例えば、鋼板から形成されている。この2枚の板材41a,41bの間に支持部42が設けられている。
支持部42は、ワイヤロープ31を摺動可能に支持してワイヤロープ31の架設方向を変えるものである。支持部42は、台座41において、ワイヤロープ31を挟み込むように2つ並んで設けられている。2つの支持部42は、それぞれの軸心が中間支柱22の軸心と一直線上に並ぶように配置されている。すなわち、2つの支持部42は、その並び方向が台座41の延在方向に沿うように配置されており、2つの支持部42の間をワイヤロープ31が通されるようになっている。
支持部42は、一端が台座41の一方の板材41aに固定され、他端が台座41の他方の板材41bに固定された軸部42aと、この軸部42aが挿通されて軸部42aと同軸上に配置されて軸部42aに対して回転自在とされ、その外周面にワイヤロープ31を摺動可能な筒部42bとを備えている。
軸部42aは、例えば、鋼材から形成された円柱体であり、溶接によって板材41a,41bに固定されている。
筒部42bは、例えば、樹脂等の比較的柔らかな材料から形成されおり、軸部42a回りに回転自在な円筒体であるため、ワイヤロープ31に作用する張力によって軸部42aの回りを容易に回転し、ワイヤロープ31を移動させることにより、支持部42に力が集中しないように構成されている。
このような構成を有するガイド部4Aにおいても、ワイヤロープ31が中間支柱22に直接接触することがなくなるため、張力が作用した際にワイヤロープ31の損傷を防止することができる。
【0026】
<その他>
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、本発明の範囲を超えない範囲で適宜変更が可能である。例えば、スクリーン3は、複数のワイヤロープ31に限らず、網材の外縁にワイヤロープを取り付けたものであってもよい。支柱2の形状、管材5の形状も任意であって、本発明の効果を奏することができれば適宜設計変更が可能である。