特許第6534834号(P6534834)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6534834-熱膨張性微小球、その製造方法及び用途 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6534834
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】熱膨張性微小球、その製造方法及び用途
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20190617BHJP
   B01J 13/20 20060101ALI20190617BHJP
   B01J 13/18 20060101ALI20190617BHJP
   C08J 9/32 20060101ALI20190617BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20190617BHJP
   C08K 9/10 20060101ALI20190617BHJP
   C08K 7/22 20060101ALI20190617BHJP
【FI】
   C09K3/00 111B
   B01J13/20
   B01J13/18
   C08J9/32CEV
   C08L101/00
   C08K9/10
   C08K7/22
【請求項の数】10
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-49003(P2015-49003)
(22)【出願日】2015年3月12日
(65)【公開番号】特開2016-169274(P2016-169274A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2018年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福井 章人
(72)【発明者】
【氏名】三木 勝志
(72)【発明者】
【氏名】野村 貫通
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−059168(JP,A)
【文献】 特表平10−506935(JP,A)
【文献】 特開昭58−196242(JP,A)
【文献】 特開昭59−124841(JP,A)
【文献】 特開2006−326457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
B01J 13/02−22
C08J 9/
C08K 9/
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球であって、
前記熱可塑性樹脂が重合性成分を重合して得られる共重合体から構成され、
前記重合性成分が、単量体成分としてニトリル系単量体と、単量体(I)とを必須に含み、
前記単量体(I)が、アクロレイン及びメタクロレインから選ばれる少なくとも1種の単量体であ
前記単量体(I)の重量割合が、前記ニトリル系単量体100重量部に対して0.0001〜0.1重量部である、
熱膨張性微小球。
【請求項2】
前記ニトリル系単量体の重量割合が、前記単量体成分に対して30〜99重量%である、請求項1に記載の熱膨張性微小球。
【請求項3】
前記ニトリル系単量体が、アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルを含む、請求項1又は2に記載の熱膨張性微小球。
【請求項4】
前記熱膨張性微小球が、トルエン、アセトニトリル、プロパンニトリル及びイソブチロニトリルから選ばれる少なくとも1種である成分(A)を含む、請求項1〜のいずれかに記載の熱膨張性微小球。
【請求項5】
前記成分(A)の重量割合が、前記熱膨張性微小球に対して、0.0001〜0.1重量%である、請求項に記載の熱膨張性微小球。
【請求項6】
熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球の製造方法であって、
前記発泡剤及び重合性成分を含む油性混合物を水性分散媒中に分散させ、前記重合性成分を重合させる工程を含み、
前記重合性成分が、単量体成分としてニトリル系単量体と、単量体(I)とを必須に含み、
前記単量体(I)が、アクロレイン及びメタクロレインから選ばれる少なくとも1種の単量体であ
前記単量体(I)の重量割合が、前記ニトリル系単量体100重量部に対して0.0001〜0.1重量部である、
熱膨張性微小球の製造方法。
【請求項7】
前記油性混合物が、トルエン、アセトニトリル、プロパンニトリル及びイソブチロニトリルから選ばれる少なくとも1種である成分(A)を含む、請求項に記載の熱膨張性微小球の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜のいずれかに記載の熱膨張性微小球及び/又は請求項のいずれかに記載の製造方法により得られる熱膨張性微小球を加熱膨張させて得られる、中空粒子。
【請求項9】
請求項1〜のいずれかに記載の熱膨張性微小球、請求項のいずれかに記載の製造方法により得られる熱膨張性微小球及び請求項に記載の中空粒子から選ばれる少なくとも1種の粒状物と、基材成分とを含む、組成物。
【請求項10】
請求項に記載の組成物を成形してなる、成形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張性微小球、その製造方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
熱膨張性微小球は、加熱することによって気化する発泡剤を、熱可塑性樹脂からなる外殻でマイクロカプセル化したものであり、熱膨張性マイクロカプセルとも呼ばれている。
一般に、熱膨張性微小球の外殻(シェル)を形成する重合体には、ガスバリア性が良好で、かつ加熱により軟化する熱可塑性樹脂が用いられる。熱膨張性微小球を加熱すると、発泡剤が気化し、その膨張する力が外殻に作用すると共に、外殻を形成する重合体の弾性率が急激に減少するため、ある温度を境にして急激な膨張が起きる。この温度を「膨張開始温度」といい、加熱温度が膨張開始温度以上になると、前述した膨張現象により中空粒子(独立気泡体)が形成される。
【0003】
その後、更に温度を上げると、気化した発泡剤の圧力及び体積の増加に伴い中空粒子は更に膨張していくが、ある温度を境にして、中空粒子が収縮する現象(へたり現象)が起きる。「へたり現象」は、気化した発泡剤が外殻を透過して外部に抜け出し、発泡剤の膨張する力が外殻を収縮させる方向に働く力より劣るものとなったときに起きると考えられ、この「へたり現象」が起きる温度は、熱膨張性微小球(中空粒子)の耐熱性と深く関係している。
【0004】
熱膨張性微小球の耐熱性は、主には、外殻を構成する熱可塑性樹脂の物理的性質(軟化温度や溶融粘度等)と、発泡剤を構成する物質の蒸気圧とのバランスにより決まる。熱膨張性微小球の耐熱性を調べる典型的な例としては、熱機械分析装置による最大膨張温度の測定が挙げられる。この測定では、容器に熱膨張性微小球を入れて加熱温度を室温付近から5〜10℃/分程度の昇温速度で連続的に上昇させ、その高さの変位を連続的に測定する。ここで、容器内における熱膨張性微小球の高さの変位が始まる温度が膨張開始温度であり、高さが最大となる温度が最大膨張温度である。この場合、加熱温度が最大膨張温度を超える温度に到達したときに熱膨張性微小球(中空粒子)全体としての「へたり現象」が起きるが、この「へたり現象」がより高温領域まで起きない熱膨張性微小球が一般的に耐熱性に優れるといわれる。
【0005】
ところで、上述した「へたり現象」は、主に加熱温度と「へたり現象」との関係に焦点を当てたものであり、加熱時間の影響があまり考慮されていない。実際には、たとえ熱膨張性微小球に対する加熱の温度が最大膨張温度以下の温度であっても、数十分以上の長時間にわたって加熱され続けることにより、一旦膨張状態にあった熱膨張性微小球(中空粒子)に「へたり現象」が起きて、中空粒子が収縮することが多々ある。このような「へたり現象」は、温度的要因よりむしろ時間的要因により起きるものであり、このように加熱時間が長時間であっても「へたり現象」が起きにくい熱膨張性微小球は熱耐久性に優れるということができる。
【0006】
前述したように、熱膨張性微小球は、加熱により膨張して軽量な中空粒子を形成する特性を持つことから、意匠性付与剤、機能性付与剤及び軽量化剤等の広範な分野で用いられている。その一方で、従来の熱膨張性微小球は、比較的加熱時間が短時間である場合は優れた膨張性を示し、所望とする意匠性、多孔性、軽量性、断熱性、吸音性、衝撃吸収性等の付与効果が十分に得られるものの、加熱時間が長時間である場合には、熱耐久性が十分でないために、前述した「へたり現象」が起きて中空粒子が収縮し、所望とする効果が十分に得られないという問題があった。
【0007】
特許文献1には、重合性二重結合を2個以上有する重合性単量体と、ガラス転移温度の高い単独重合体を形成し得る単量体とを必須とする重合性成分を重合して得られる共重合体からなる外殻と、この共重合体の軟化点以下の温度でガス状になる揮発性膨張剤を内包する、熱膨張性微小球が提案されており、この熱膨張性微小球は、熱膨張性に優れると共に熱膨張後には優れた熱耐久性を有するマイクロバルーン(中空粒子)となることが記載されている。しかしながら、これらの熱膨張性微小球でも、さらに長時間加熱されたときの熱耐久性は未だ十分なものとはいえず、さらなる熱耐久性の向上が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平05−285376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、長時間加熱されたときの収縮度合いが小さく、熱耐久性に優れる熱膨張性微小球、その製造方法及び用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、重合性成分が、ニトリル系単量体と、特定の単量体成分とを必須に含む場合に、上記課題を解決することを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明にかかる熱膨張性微小球は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球であって、前記熱可塑性樹脂が重合性成分を重合して得られる共重合体から構成され、前記重合性成分が、単量体成分としてニトリル系単量体と、単量体(I)とを必須に含み、前記単量体(I)が、アクロレイン及びメタクロレインから選ばれる少なくとも1種の単量体であり、前記単量体(I)の重量割合が、前記ニトリル系単量体100重量部に対して0.0001〜0.1重量部である
前記ニトリル系単量体の重量割合が、前記単量体成分に対して30〜99重量%であると好ましい。また、前記ニトリル系単量体が、アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルを含むと好ましい。
前記熱膨張性微小球が、トルエン、アセトニトリル、プロパンニトリル及びイソブチロニトリルから選ばれる少なくとも1種である成分(A)を含むと好ましい。また、前記成分(A)の重量割合が、前記熱膨張性微小球に対して、0.0001〜0.1重量%であると好ましい。
【0012】
本発明にかかる熱膨張性微小球の製造方法は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球の製造方法であって、前記発泡剤及び重合性成分を含む油性混合物を水性分散媒中に分散させ、前記重合性成分を重合させる工程を含み、前記重合性成分が、単量体成分としてニトリル系単量体と、単量体(I)とを必須に含み、前記単量体(I)が、アクロレイン及びメタクロレインから選ばれる少なくとも1種の単量体であり、前記単量体(I)の重量割合が、前記ニトリル系単量体100重量部に対して0.0001〜0.1重量部である
前記油性混合物が、トルエン、アセトニトリル、プロパンニトリル及びイソブチロニトリルから選ばれる少なくとも1種である成分(A)を含むと好ましい。
【0013】
本発明の中空粒子は、前記熱膨張性微小球及び/又は前記製造方法により得られる熱膨張性微小球を加熱膨張させて得られる。
本発明の組成物は、前記熱膨張性微小球、前記製造方法により得られる熱膨張性微小球及び前記中空粒子から選ばれる少なくとも1種の粒状物と、基材成分とを含む。
本発明の成形物は、前記組成物を成形してなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱膨張性微小球は、長時間加熱されたときの収縮度合いが小さく、熱耐久性に優れる。
本発明の熱膨張性微小球の製造方法は、長時間加熱されたときの収縮度合いが小さく、熱耐久性に優れる熱膨張性微小球を、効率よく製造することができる。
本発明の中空粒子は、上記熱膨張性微小球及び/又は上記製造方法により得られる熱膨張性微小球を膨張してなるため、長時間加熱されたときの収縮度合いが小さく、熱耐久性に優れる。
本発明の組成物は、上記熱膨張性微小球、上記製造方法により得られる熱膨張性微小球及び上記中空粒子から選ばれる少なくとも1種の粒状物を含むため熱耐久性に優れ、成形することによって軽量な成形物を得ることができる。
本発明の成形物は、上記組成物を成形してなるため、軽量である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】熱膨張性微小球の一例を示す概略図である。
図2】中空粒子の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔熱膨張性微小球〕
本発明の熱膨張性微小球は、図1に示すように、熱可塑性樹脂からなる外殻(シェル)11と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤(コア)12とから構成される熱膨張性微小球である。この熱膨張性微小球はコア−シェル構造をとっており、熱膨張性微小球は微小球全体として熱膨張性(微小球全体が加熱により膨らむ性質)を示す。熱可塑性樹脂は、重合性成分を重合して得られる。
【0017】
重合性成分は、重合することによって、熱膨張性微小球の外殻を形成する熱可塑性樹脂となる成分である。重合性成分は、単量体成分を必須とし架橋剤を含むことがある成分である。
単量体成分は、重合性二重結合を1個有するラジカル重合性単量体を意味し、付加重合可能な成分である。また、架橋剤は重合性二重結合を複数有するラジカル重合性単量体を意味し、橋架け構造を熱可塑性樹脂に導入する成分である。
【0018】
重合性成分は、ニトリル系単量体を必須とする。
ニトリル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等が挙げられる。これらのニトリル系単量体は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0019】
ニトリル系単量体の重量割合は、単量体成分に対して、30〜99重量%であると好ましく、より好ましくは33〜99重量%、さらに好ましくは40〜98重量%、特に好ましくは50〜98重量%である。該重量割合が30〜99重量%であると、得られる熱膨張性微小球の熱耐久性が優れたものとなる。
【0020】
ニトリル系単量体が、アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルを含むと好ましく、メタクリロニトリルを含むとより好ましく、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを含むとさらに好ましい。
ニトリル系単量体がアクリロニトリル(AN)及びメタクリロニトリル(MAN)を含有する場合、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルの重量比率(AN/MAN)については特に限定はないが、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは30/70〜80/20、さらに好ましくは45/55〜75/25である。AN及びMAN重量比率が10/90未満であると、ガスバリア性が低下することがある。一方、AN及びMAN重量比率が90/10を超えると、十分な膨張倍率が得られないことがある。
【0021】
重合性成分は、さらに単量体(I)を必須とする。単量体(I)は、アクロレイン及びメタクロレインから選ばれる少なくとも1種の単量体である。単量体(I)の重量割合は、ニトリル系単量体100重量部に対して0.0001〜0.1重量部であると好ましく、より好ましくは0.0001〜0.05重量部、さらに好ましくは0.0002〜0.01重量部、特に好ましくは0.0002〜0.005重量部である。詳細な機構は不明であるが、重合性成分が単量体(I)を上記特定の範囲で含むことによって、得られる熱膨張性微小球の熱耐久性が優れたものとなる。
【0022】
また、重合性成分に必須に含まれるニトリル系単量体と単量体(I)との組み合わせとしては、特に限定されず、例えば、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルとアクロレイン及びメタクロレインとの組み合わせ、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルとアクロレインとの組み合わせ、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルとメタクロレインとの組み合わせ、アクリロニトリルとアクロレインとの組み合わせ、メタクリロニトリルとメタクロレインとの組み合わせ等が挙げられる。これらの中では、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルとメタクロレインとの組み合わせが好ましい。
【0023】
ここで、本発明における熱耐久性について説明する。本発明における熱耐久性とは、加熱時間が長時間である場合に、熱膨張性微小球(中空粒子)の「へたり現象」が起きることが抑制されることを意味する。詳細には、「へたり現象」が起きないか、または「へたり現象」が起きた場合であっても、熱膨張性微小球(中空粒子)の収縮度合いが小さく、より最大膨張時に近い膨張状態を維持することを意味する。
【0024】
本発明では、熱膨張性微小球の熱耐久性の指標をTD(%)として評価する。TD(%)の具体的な測定方法については、後述する実施例で説明する。TD(%)は熱膨張性微小球の最大膨張温度において評価し、加熱により一旦最大膨張状態に達した熱膨張性微小球が、加熱され続けた後にどれくらいその体積膨張状態を維持しているかを示す値である。なお、上記最大膨張温度とは、後述する実施例の〔最大膨張温度及び最大膨張時真比重の測定〕で説明される方法により決定される最大膨張温度を意味する。熱膨張性微小球のTD(%)については、30%以上であることが好ましく、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上である。TD(%)の上限は100%である。熱膨張性微小球のTD(%)が30%未満であると、熱耐久性が不足する。
なお、本発明における耐熱性とは、加熱時間が比較的短時間である場合に、熱膨張性微小球が高い温度で使用可能であり、かつ優れた膨張性を示すことを意味する。
【0025】
重合性成分は、単量体成分として、ニトリル系単量体及び単量体(I)以外の単量体を含有していてもよい。
ニトリル系単量体及び単量体(I)以外の単量体としては、特に限定はないが、たとえば、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等のカルボキシル基含有単量体;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の無水カルボン酸系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフィン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン等のビニルケトン系単量体;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル系単量体;ビニルナフタリン塩等を挙げることができる。カルボキシル基含有単量体は、一部または全部のカルボキシル基が重合時や重合後に中和されていてもよい。なお、(メタ)アクリルは、アクリルまたはメタクリルを意味する。これらの単量体は、1種又は2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、重合性成分が、塩化ビニリデン、カルボキシル基含有単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及び(メタ)アクリルアミド系単量体から選ばれる少なくとも1種を含むと好ましい。重合性成分が塩化ビニリデンを含むとガスバリア性が向上する。重合性成分がカルボキシル基含有単量体を含むと耐熱性及び耐溶剤性が向上する。重合性成分が(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含むと膨張挙動をコントロールし易くなる。重合性成分が(メタ)アクリルアミド系単量体を含むと耐熱性が向上する。
【0026】
重合性成分が塩化ビニリデンを含む場合、塩化ビニリデンの重量割合は、単量体成分に対して、好ましくは0.1〜69重量%、より好ましくは0.1〜65重量%である。重合性成分が塩化ビニリデンとともに(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含む場合、塩化ビニリデンの重量割合は、単量体成分に対して、好ましくは0.1〜65重量%、より好ましくは0.1〜62重量%であり、(メタ)アクリル酸エステル系単量体の重量割合は、単量体成分に対して、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.1〜6重量%である。
【0027】
重合性成分がカルボキシル基含有単量体を含む場合、カルボキシル基含有単量体の重量割合は、単量体成分に対して、好ましくは0.1〜69重量%、より好ましくは0.1〜65重量%、さらに好ましくは0.1〜59重量%、特に好ましくは0.1〜49重量%である。重合性成分がカルボキシル基含有単量体とともに、カルボキシル基含有単量体のカルボキシル基と反応する単量体を含む場合は、耐熱性がさらに向上し、高温における膨張性能が向上する。カルボキシル基含有単量体のカルボキシル基と反応する単量体としては、例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ビニルグリシジルエーテル、プロペニルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、p−ヒドロキシスチレン等を挙げることができる。カルボキシル基含有単量体のカルボキシル基と反応する単量体の重量割合は、単量体成分に対して、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜2重量%、特に好ましくは0.1〜1重量%である。
【0028】
重合性成分が、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含む場合、(メタ)アクリル酸エステル系単量体の重量割合は、単量体成分に対して、好ましくは0.1〜69重量%、より好ましくは0.1〜65重量%、さらに好ましくは0.1〜59重量%、特に好ましくは0.1〜49重量%である。
【0029】
重合性成分は、前述のとおり、前記単量体成分以外に架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤を用いて重合させることにより、得られる熱膨張性微小球では、内包された発泡剤の熱膨張時における保持率(内包保持率)の低下が抑制され、効果的に熱膨張させることができる。
架橋剤としては、特に限定はないが、たとえば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物や、メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#400ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステル、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、フェニルグリシジルエーテルアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー等を挙げることができる。これらの架橋剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0030】
架橋剤の量については、特に限定はないが、単量体成分100重量部に対して、好ましくは0〜5重量部、より好ましくは0.1〜2重量部、さらに好ましくは0.3〜1.5重量部、特に好ましくは0.5〜1.0重量部である。
【0031】
発泡剤は、加熱することで気化する成分であり、熱膨張性微小球の熱可塑性樹脂からなる外殻に内包されることによって、熱膨張性微小球は微小球全体として熱膨張性(微小球全体が加熱により膨らむ性質)を示すようになる。
【0032】
発泡剤は、加熱することによって気化する物質であれば特に限定はないが、たとえば、プロパン、(イソ)ブタン、(イソ)ペンタン、(イソ)ヘキサン、(イソ)ヘプタン、(イソ)オクタン、(イソ)ノナン、(イソ)デカン、(イソ)ウンデカン、(イソ)ドデカン、(イソ)トリデカン等の炭素数3〜13の炭化水素;(イソ)ヘキサデカン、(イソ)エイコサン等の炭素数13超で20以下の炭化水素;プソイドクメン、石油エーテル、初留点150〜260℃および/または蒸留範囲70〜360℃であるノルマルパラフィンやイソパラフィン等の石油分留物等の炭化水素;塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の炭素数1〜12の炭化水素のハロゲン化物;ハイドロフルオロエーテル等の含弗素化合物;テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシラン、トリメチル−n−プロピルシラン等の炭素数1〜5のアルキル基を有するシラン類;アゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等の加熱により熱分解してガスを生成する化合物等が挙げられる。これらの発泡剤は、1種または2種以上を併用してもよい。上記発泡剤は、直鎖状、分岐状、脂環状のいずれでもよく、脂肪族であるものが好ましい。
【0033】
発泡剤は、加熱することによって気化する物質であるが、発泡剤として熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する物質を内包すると、熱膨張性微小球の膨張温度において膨張に十分な蒸気圧を発生させることが可能で、高い膨張倍率を付与することが可能であるために好ましい。この場合、発泡剤として、熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する物質と共に、熱可塑性樹脂の軟化点超の沸点を有する物質を内包していてもよい。
【0034】
熱膨張性微小球は、トルエン、アセトニトリル、プロパンニトリル及びイソブチロニトリルから選ばれる少なくとも1種(以下、これらを成分(A)ということがある)を含むと好ましい。詳細な機構は不明であるが、成分(A)は熱膨張性微小球の外殻を構成する熱可塑性樹脂に対して何らかの作用を働き、熱膨張性微小球の熱耐久性を向上させる効果を持つ成分である。成分(A)は、加熱により気化する物質であるので、本発明における発泡剤の概念に含まれる成分である。ただし、本発明における成分(A)を除く発泡剤には、熱膨張性微小球の熱耐久性を向上させる効果がない。成分(A)は、熱膨張性微小球全体の中に含まれていればよく、その全部が外殻の内部に内包されている状態であってもよく、その全部が外殻中に含有されている状態であってもよく、その一部が外殻の内部に内包されその一部が外殻中に含有されている状態であってもよい。熱膨張性微小球は、成分(A)の中でも、トルエン及びプロパンニトリルから選ばれる少なくとも1種を含むと好ましく、トルエンを含むとより好ましい。熱膨張性微小球が成分(A)を特定量含むことによって、得られる熱膨張性微小球の熱耐久性がさらに優れるものとなる。
成分(A)の重量割合は、熱膨張性微小球に対して、好ましくは0.0001〜0.1重量%、より好ましくは0.0001〜0.05重量%、さらに好ましくは0.0002〜0.01重量%、特に好ましくは0.0002〜0.005重量%である。該重量割合が0.0001重量%未満であると、熱耐久性を向上させる効果が十分得られないことがあり、0.1重量%を超えると熱膨張性微小球の膨張性能が低下することがある。
【0035】
発泡剤の内包率は、熱膨張性微小球の重量に対する熱膨張性微小球に内包された発泡剤の重量の百分率で定義される。発泡剤の内包率については、特に限定されないが、熱膨張性微小球の重量に対して、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは2〜45重量%、さらに好ましくは5〜40重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。なお、熱膨張性微小球が成分(A)を含む場合の発泡剤の内包率とは、熱膨張性微小球の重量に対する、熱膨張性微小球の中に含まれる成分(A)と成分(A)を除く発泡剤との合計重量の百分率を意味する。
【0036】
熱膨張性微小球の平均粒子径については特に限定されないが、好ましくは1〜100μm、より好ましくは2〜80μm、さらに好ましくは3〜60μm、特に好ましくは5〜50μmである。平均粒子径が1μmより小さい場合、熱膨張性微小球の膨張性能が低くなることがある。一方、平均粒子径が100μmより大きい場合、熱膨張性微小球を製造する工程において凝集体が発生し効率よく熱膨張性微小球が得られないことがある。
【0037】
熱膨張性微小球の粒度分布の変動係数CVは、特に限定されないが、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下である。変動係数CVは、以下に示す計算式(1)及び(2)で算出される。
【0038】
【数1】
(式中、sは粒子径の標準偏差、<x>は平均粒子径、xはi番目の粒子径、nは粒子の数である。)
【0039】
熱膨張性微小球の膨張開始温度(T)は、特に限定されないが、好ましくは60〜200℃、より好ましくは65〜190℃、さらに好ましくは70〜180℃、特に好ましくは80〜170℃である。
熱膨張性微小球の最大膨張温度(Tmax)については、特に限定はないが、好ましくは80〜350℃、より好ましくは100〜300℃、さらに好ましくは120〜280℃、特に好ましくは140〜250℃である。熱膨張性微小球の最大膨張温度が80℃未満であると十分な耐熱性が得られないことがある。
【0040】
本発明で得られる熱膨張性微小球は、長時間加熱されたときの収縮度合いが小さく、熱耐久性に優れるので、射出成形、押出成形、混練成形、カレンダー成形、ブロー成形、圧縮成形、真空成型、熱成形等の成形加工に利用可能である。また、本発明の熱膨張性微小球は、塩ビペースト等のペースト状物や、EVAエマルション、アクリルエマルション、溶剤型バインダー等の液状組成物に混合して使用することも可能であり、特に本発明の熱膨張性微小球を、最終製品形態とするまでに長時間の加熱を必要とする車輌用塗料組成物に混合して用いることが有効である。
【0041】
熱膨張性微小球の最大膨張倍率は、特に限定されないが、好ましくは3倍以上、より好ましくは10倍以上、さらにより好ましくは20倍以上、特に好ましくは30倍以上、さらに好ましくは50倍以上、最も好ましくは70倍以上である。一方、最大膨張倍率の上限値は、好ましくは200倍である。
熱膨張性微小球を加熱膨張して得られる中空粒子の耐圧性が要求される場合には、中空粒子の外殻の厚みを保持するために、熱膨張性微小球の最大膨張倍率は、好ましくは3倍以上、好ましい上限値は100倍である。最大膨張倍率が3倍未満であると、十分な軽量化効果が得られないことがある。最大膨張倍率が100倍を超えると、耐圧性が不十分となる場合がある。
熱膨張性微小球を樹脂組成物に混合し、該樹脂組成物を加熱により膨張させ、軽量化物を得る場合には、最大膨張倍率は20倍以上が好ましく、上限値は、好ましくは200倍である。最大膨張倍率が20倍未満であると、十分な軽量化効果が得られないことがある。最大膨張倍率が200倍を超えると、成形物等で面荒れの原因になることがある。
本発明の熱膨張性微小球は、以下に詳しく説明する懸濁重合による製造方法によって製造することができるが、この製造方法に限定されず、たとえば、界面重合法、逆相乳化法、乳化重合法等で製造することも可能であると考えられる。
【0042】
〔熱膨張性微小球の製造方法及び用途〕
本発明の熱膨張性微小球の製造方法は、上記で詳しく説明した特定の単量体成分を含む重合性成分及び発泡剤を含有する油性混合物を水性分散媒中に分散させ、前記重合性成分を重合させる工程(以下では、重合工程ということがある。)を含む方法である。
重合工程では、重合開始剤を含有する油性混合物を用いて、重合性成分を重合開始剤の存在下で重合させることが好ましい。
【0043】
重合開始剤としては、特に限定はないが、ごく一般に用いられる過酸化物やアゾ化合物等を挙げることができる。
過酸化物としては、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジベンジルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール;クメンハイドロパーキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド;t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等のパーオキシエステルを挙げることができる。
【0044】
アゾ化合物としては、例えば、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1‘−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等を挙げることができる。
これらの重合開始剤は、1種又は2種以上を併用してもよい。重合開始剤としては、単量体成分に対して可溶な油溶性の重合開始剤が好ましい。重合開始剤は、油性混合物を水性分散媒に分散させる前にあらかじめ油性混合物に添加して用いてもよく、油性混合物を水性分散媒中に分散させた後の水系懸濁液に添加して用いてもよい。
【0045】
重合開始剤の配合量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.05〜10重量部であり、より好ましくは0.1〜8重量部、さらに好ましくは0.2〜5重量部である。
【0046】
重合工程では、油性混合物は連鎖移動剤等をさらに含有していてもよい。
本発明の製造方法では、油性混合物を水性分散媒中に分散させた水系懸濁液を調製し、重合性成分を重合させる。
水性分散媒は、油性混合物を分散させるイオン交換水等の水を主成分とする媒体であり、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールや、アセトン等の親水性有機性の溶媒をさらに含有してもよい。本発明における親水性とは、水に任意に混和できる状態であることを意味する。水性分散媒の使用量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、100〜1000重量部の水性分散媒を使用するのが好ましい。
【0047】
水性分散媒は、電解質をさらに含有してもよい。電解質としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等を挙げることができる。これらの電解質は、1種又は2種以上を併用してもよい。電解質の含有量については、特に限定はないが、水性分散媒100重量部に対して0.1〜50重量部含有するのが好ましい。
【0048】
水性分散媒は、カルボン酸(塩)基及びホスホン酸(塩)基から選ばれた親水性官能基が置換したアルキル基が窒素原子と結合した構造を少なくとも1つ有する分子量1000以上のポリアルキレンイミン類、水酸基、カルボン酸(塩)基及びホスホン酸(塩)基から選ばれる親水性官能基とヘテロ原子とが同一の炭素原子に結合した構造を有する水溶性1,1−置換化合物類、重クロム酸カリウム、亜硝酸アルカリ金属塩、金属(III)ハロゲン化物、ホウ酸、水溶性アスコルビン酸類、水溶性ポリフェノール類、水溶性ビタミンB類及び水溶性ホスホン酸(塩)類から選ばれる少なくとも1種の水溶性化合物を含有してもよい。なお、本発明における水溶性とは、水100gあたり1g以上溶解する状態であることを意味する。
【0049】
水性分散媒中に含まれる水溶性化合物の量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.0001〜1.0重量部、より好ましくは0.0003〜0.1重量部、さらに好ましくは0.001〜0.05重量部である。水溶性化合物の量が少なすぎると、水溶性化合物による効果が十分に得られないことがある。また、水溶性化合物の量が多すぎると、重合速度が低下したり、原料である重合性成分の残存量が増加したりすることがある。
【0050】
水性分散媒は、電解質や水溶性化合物以外に、分散安定剤や分散安定補助剤を含有していてもよい。
分散安定剤としては、特に限定はないが、たとえば、コロイダルシリカ、コロイダル炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、蓚酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等のリン酸塩、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸アルミニウム、ピロリン酸亜鉛等のピロリン酸塩、アルミナゾル等の難水溶性無機化合物の分散安定剤を挙げることができる。これらの分散安定剤は、1種または2種以上を併用してもよく、得られる熱膨張性微小球の粒子径と重合時の分散安定性等を考慮してその種類が適宜選択される。なかでも、第三リン酸カルシウム、複分解生成法により得られるピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウムや、コロイダルシリカが好ましい。
【0051】
分散安定剤の配合量は、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは0.5〜20重量部である。
分散安定補助剤としては、特に限定はないが、たとえば、高分子タイプの分散安定補助剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤を挙げることができる。これらの分散安定補助剤は、1種または2種以上を併用してもよく、得られる熱膨張性微小球の粒子径と重合時の分散安定性等を考慮して、適宜選択される。
【0052】
高分子タイプの分散安定補助剤としては、たとえば、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸の縮合生成物、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。
分散安定補助剤の配合量は、特に限定されないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.0001〜5重量部、より好ましくは0.0003〜2重量部である。
【0053】
水性分散媒は、たとえば、イオン交換水等の水に、必要に応じて、電解質、水溶性化合物、分散安定剤、分散安定補助剤等を配合して調製される。重合時の水性分散媒のpHは、水溶性化合物、分散安定剤、分散安定補助剤の種類によって適宜決められる。分散安定剤としてコロイダルシリカを用いる場合、重合時の水性分散媒のpHは、2〜7が好ましく、より好ましくは2〜6.5、さらに好ましくは2〜6、特に好ましくは2〜4である。
【0054】
本発明の製造方法では、水酸化ナトリウムや、水酸化ナトリウム及び塩化亜鉛の存在下で重合を行ってもよい。
本発明の製造方法では、所定粒子径の球状油滴が調製されるように油性混合物を水性分散媒中に懸濁分散させる。
【0055】
油性混合物を懸濁分散させる方法としては、例えば、ホモミキサー(例えば、プライミクス社製)等により攪拌する方法や、スタティックミキサー(例えば、株式会社ノリタケエンジニアリング社製)等の静止型分散装置を用いる方法、膜懸濁法、超音波分散法等の一般的な分散方法を挙げることができる。
次いで、油性混合物が球状油滴として水性分散媒に分散された分散液を加熱することにより、懸濁重合を開始する。重合反応中は、分散液を攪拌するのが好ましく、その攪拌は、例えば、単量体の浮上や重合後の熱膨張性微小球の沈降を防止できる程度に緩く行えばよい。
【0056】
重合温度は、重合開始剤の種類によって自由に設定されるが、好ましくは30〜100℃、より好ましくは40〜90℃の範囲で制御される。重合反応中、反応温度は段階的に変化させてもよく、一段階であってもよい。反応温度を保持する時間は、1〜20時間程度が好ましい。重合初期圧力については特に限定はないが、ゲージ圧で0〜5MPa、より好ましくは0.1〜3MPaの範囲である。
【0057】
重合反応終了後、所望により、分散安定剤を塩酸等により分解し、得られた生成物(熱膨張性微小球)を吸引濾過、遠心分離、遠心濾過等の操作により、分散液から単離する。さらに、得られた熱膨張性微小球の含水ケーキを水洗し、乾燥して熱膨張性微小球を得ることができる。
【0058】
本発明の中空粒子は、本発明の熱膨張性微小球及び/又は本発明の製造方法で得られる熱膨張性微小球を加熱膨張させることによって製造できる。
中空粒子は、熱可塑性樹脂からなる外殻およびそれに囲まれた中空部から構成される。中空粒子は、(ほぼ)球状で、内部に大きな空洞に相当する中空部を有している。中空粒子の形状を身近な物品で例示するならば、軟式テニスボールを挙げることができる。
【0059】
中空部は、(ほぼ)球状であり、外殻の内表面と接している。中空部は、基本的には発泡剤が気化した気体で満たされており、発泡剤の一部は液化した状態であってもよい。また、発泡剤の全部または一部は空気等の他の気体で置換されていてもよい。中空部は、通常は、大きな中空部1つであることが好ましいが、中空粒子中に複数あってもよい。
【0060】
中空粒子の平均粒子径については特に限定はないが、好ましくは1〜1000μm、より好ましくは5〜800μm、さらに好ましくは10〜500μmである。また、中空粒子の粒度分布の変動係数CVについても、特に限定はないが、45%以下が好ましく、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下である。
【0061】
中空粒子の真比重については、特に限定はないが、好ましくは0.005〜0.3、より好ましくは0.010〜0.25、さらに好ましくは0.015〜0.20である。中空粒子の真比重が0.005より小さい場合は、耐圧性が低くなることがある。一方、中空粒子の真比重が0.3より大きい場合は、低比重化効果が低くなるため、中空粒子を用いて組成物を調製する際、その添加量が大きくなり、非経済的であることがある。
中空粒子は、図2に示すように、その外殻の外表面に付着した微粒子充填剤からさらに構成されていてもよい。以下では、微粒子充填剤が付着した中空粒子を「微粒子付着中空粒子」ということがある。ここでいう付着とは、単に中空粒子(1)の外殻(2)の外表面に微粒子充填剤(4および5)が、吸着された状態(4)であってもよく、外表面近傍の外殻を構成する熱可塑性樹脂が加熱によって融解し、中空粒子の外殻の外表面に微粒子充填剤がめり込み、固定された状態(5)であってもよいという意味である。微粒子充填剤の粒子形状は不定形であっても球状であってもよい。
【0062】
微粒子充填剤と中空粒子との重量比率(微粒子充填剤/中空粒子)については、特に限定はないが、好ましくは90/10〜60/40、より好ましくは85/15〜65/35、さらに好ましくは80/20〜70/30である。微粒子充填剤/中空粒子(重量比率)が90/10より大きい場合は、微粒子付着中空粒子の真比重が大きくなり、低比重化効果が小さくなることがある。一方、微粒子充填剤/中空粒子(重量比率)が60/40より小さい場合は、微粒子付着中空粒子の真比重が低くなり、粉立ち等のハンドリングが悪化することがある。
【0063】
微粒子付着中空粒子の真比重については、特に限定はないが、好ましくは0.01〜0.5であり、より好ましくは0.03〜0.4、さらに好ましくは0.05〜0.35、特に好ましくは0.07〜0.30である。微粒子付着中空粒子の真比重が0.01より小さい場合は、耐圧性が低くなることがある。一方、微粒子付着中空粒子の真比重が0.5より大きい場合は、低比重化効果が低くなるため、微粒子付着中空粒子を用いて組成物を調製する際、その添加量が大きくなり、非経済的であることがある。
微粒子充填剤の平均粒子径については、適宜選択され、特に限定はないが、好ましくは0.001〜30μm、より好ましくは0.005〜25μm、さらに好ましくは0.01〜20μmである。
【0064】
微粒子充填剤の平均粒子径と微粒子付着中空粒子の平均粒子径との比率(微粒子充填剤の平均粒子径/微粒子付着中空粒子の平均粒子径)は、微粒子充填剤の付着性の観点から好ましくは1以下、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.6以下である。
微粒子充填剤としては、種々のものを使用することができ、無機物、有機物のいずれの素材であってもよい。微粒子本体の形状としては、球状、針状や板状等が挙げられる。
【0065】
微粒子充填剤を構成する無機物としては、たとえば、石灰石(重質炭酸カルシウム)、石英、珪石(シリカ)、ウオラスナイト、石膏、アパタイト、マグネタイト、ゼオライト、クレイ(モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト、バーミキュライト、ハロイサイト、タルク、雲母、マイカ等)等の鉱物;元素の周期表において、1族〜16族の金属酸化物(酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化スズ、酸化鉄(磁性酸化鉄を含む)、酸化インジウム等)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化金、水酸化マグネシウム等)、炭酸金属塩(炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸鉄等)、硫酸金属塩(硫酸アルミニウム、硫酸コバルト、硫酸水素ナトリウム、硫酸銅、硫酸ニッケル、硫酸バリウム等)、その他の金属塩(チタン酸塩(チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カリウム等)、ホウ酸塩(ホウ酸アルミニウム、ホウ酸亜鉛等)、燐酸塩(リン酸カルシウム、燐酸ナトリウム、燐酸マグネシウム等)、硝酸塩(硝酸ナトリウム、硝酸鉄、硝酸鉛等))等の金属化合物等が挙げられる。
微粒子充填剤を構成する無機物は、また、合成炭酸カルシウム、フェライト、ゼオライト、銀イオン担持ゼオライト、ジルコニア、ミョウバン、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミナ繊維、セメント、ゾノトライト、酸化珪素(シリカ、シリケート、ガラス、ガラス繊維を含む)、窒化珪素、炭化珪素、硫化珪素、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、活性炭、竹炭、木炭、フラーレン等であってもよい。
【0066】
微粒子充填剤を構成する有機物は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ナイロン樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
微粒子充填剤を構成する無機物や有機物は、脂肪酸、樹脂酸、ウレタン化合物、脂肪酸エステル等の表面処理剤で処理されていてもよく、未処理のものでもよい。
【0067】
中空粒子の製造方法は、熱膨張性微小球を加熱膨張する方法であれば、特に限定はないが、乾式加熱膨張法、湿式加熱膨張法のいずれでもよい。
乾式加熱膨張法としては、日本国特開2006−213930号公報に記載されている内部噴射方法を挙げることができる。この内部噴射方法は、熱膨張性微小球を含む気体流体を、出口に分散ノズルを備え且つ熱風流の内側に設置された気体導入管に流し、前記分散ノズルから噴射させる工程(噴射工程)と、前記気体流体を前記分散ノズルの下流部に設置された衝突板に衝突させ、熱膨張性微小球を前記熱風流中に分散させる工程(分散工程)と、分散した熱膨張性微小球を前記熱風流中で膨張開始温度以上に加熱して膨張させる工程(膨張工程)とを含む乾式加熱膨張法である。内部噴射方法では、原料となる熱膨張性微小球の外殻を構成する熱可塑性樹脂の種類にかかわらず均一物性の中空粒子を得ることができるので好ましい。また、別の乾式加熱膨張法としては、日本国特開2006−96963号公報に記載の方法等がある。
湿式加熱膨張法としては、日本国特開昭62−201231号公報に記載の方法等がある。
【0068】
微粒子付着中空粒子の製造方法としては、たとえば、熱膨張性微小球と微粒子充填剤とを混合する工程(混合工程)と、前記混合工程で得られた混合物を前記熱膨張性微小球の膨張開始温度以上の温度に加熱して、前記熱膨張性微小球を膨張させるとともに、前記微粒子充填剤を外殻の外表面に付着させる工程(付着工程)とを含む製造方法を挙げることができる。
【0069】
本発明の中空粒子は、長時間加熱されたときの収縮度合いが小さく、熱耐久性に優れるので、射出成形、押出成形、混練成形、カレンダー成形、ブロー成形、圧縮成形、真空成型、熱成形等の成形加工に利用可能である。また、本発明の中空粒子は、塩ビペースト等のペースト状物や、EVAエマルション、アクリルエマルション、溶剤型バインダー等の液状組成物に混合して使用することも可能であり、特に本発明の中空粒子を、最終製品形態とするまでに長時間の加熱を必要とする車輌用塗料組成物に混合して用いることが有効である。
【0070】
〔組成物、成形物及びその用途〕
本発明の組成物は、本発明の熱膨張性微小球、本発明の製造方法で得られる熱膨張性微小球及び本発明の中空粒子から選ばれる少なくとも1種の粒状物と、基材成分とを含む。基材成分としては特に限定はなく、無機成分及び/又は有機成分であればよい。以下では、本発明の熱膨張性微小球、本発明の製造方法で得られる熱膨張性微小球及び本発明の中空粒子から選ばれる少なくとも1種の粒状物を単に粒状物ということがある。
無機成分としては、特に限定はないが、例えば、普通ポルトランドセメント、早強セメント、アルミナセメント、高炉スラグセメント、フライアッシュセメント等のセメント類;高炉スラグ、電気炉酸化スラグ、電気炉還元スラグ等のスラグ;生石灰、消石灰等の石灰類;チタニア、アルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア、ジルコン、ジルコン酸バリウム、コージェライト、チタン酸鉛、チタン酸バリウム、ムライト、酸化亜鉛、酸化錫、炭化珪素、窒化珪素、フェライト等のセラミック類等を挙げることができ、これらの無機成分は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0071】
有機成分としては、特に限定はないが、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンーブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等のゴム類;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン等の熱硬化性樹脂;ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等のワックス類;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66等)、変性ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル等の熱可塑性樹脂;エチレン系アイオノマー、ウレタン系アイオノマー、スチレン系アイオノマー、フッ素系アイオノマー等のアイオノマー樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;ポリ乳酸(PLA)、酢酸セルロース、PBS、PHA、澱粉樹脂等のバイオプラスチック;変性シリコン系、ウレタン系、ポリサルファイド系、アクリル系、シリコン系、ポリイソブチレン系、ブチルゴム系等のシーリング材料;ウレタン系、エチレン−酢酸ビニル共重合物系、塩化ビニル系、アクリル系の塗料成分等を挙げることができ、これらの有機成分は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0072】
本発明の組成物は、これらの基材成分と粒状物とを混合することによって調製することができる。また、基材成分と粒状物とを混合して得られた組成物を更に別の基材成分と混合して本発明の組成物とすることもできる。
粒状物の重量割合は、基材成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜70重量部、より好ましくは0.5〜65重量部、さらに好ましくは1〜60重量部である。
混合方法は、特に限定はないが、ニーダー、ロール、ミキシングロール、ミキサー、単軸混練機、二軸混練機、多軸混練機等により混合することが好ましい。
本発明の組成物は、基材成分や粒状物以外に、必要に応じて、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート等のバインダーや;エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等の分散剤等を含有していても良い。
本発明の組成物の用途としては、例えば、成形用組成物、塗料組成物、粘土組成物、繊維組成物、接着剤組成物、粉体組成物等を挙げることができる。
【0073】
本発明の成形物は、上記で説明した組成物を成形して得られる。本発明の成形物としては、例えば、成形品や塗膜等の成形物等を挙げることができる。本発明の成形物では、軽量性、多孔性、吸音性、断熱性、低熱伝導性、低誘電率化、意匠性、衝撃吸収性、強度等の諸物性が向上している。
基材成分として無機物を含む成形物は、さらに焼成することによって、セラミックフィルタ等が得られる。
【実施例】
【0074】
以下に、本発明の実施例について、具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例および比較例において、断りのない限り、「%」とは「重量%」、「部」とは「重量部」をそれぞれ意味するものとする。
以下の実施例及び比較例で挙げた熱膨張性微小球、中空粒子、組成物及び成形物等について、次に示す要領で物性を測定し、さらに性能を評価した。以下では、熱膨張性微小球を簡単のために「微小球」ということがある。
【0075】
〔粒子径及び粒度分布の測定〕
微小球の粒子径及び粒度分布の測定には、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(Microtrac ASVR 日機装社製)を使用した。体積基準の累積50%粒子径(D50)の値を平均粒子径とした。なお、体積基準の累積粒子径とは、全粒子を体積順に小さい側から積算して累積した分布の所定の比率に対する粒子の直径を意味する。
【0076】
〔微小球の含水率の測定〕
測定装置として、カールフィッシャー水分計(MKA−510N型、京都電子工業株式会社製)を用いて測定した。
【0077】
〔微小球及び中空粒子の真比重の測定〕
微小球及び中空粒子の真比重は、以下の測定方法で測定した。
真比重は環境温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下においてイソプロピルアルコールを用いた液浸法(アルキメデス法)により測定した。
具体的には、容量100ccのメスフラスコを空にし、乾燥後、メスフラスコ重量(WB)を秤量した。秤量したメスフラスコにイソプロピルアルコールをメニスカスまで正確に満たした後、イソプロピルアルコール100ccの充満されたメスフラスコの重量(WB)を秤量した。
【0078】
また、容量100ccのメスフラスコを空にし、乾燥後、メスフラスコ重量(WS)を秤量した。秤量したメスフラスコに約50ccの粒子を充填し、粒子の充填されたメスフラスコの重量(WS)を秤量した。そして、粒子の充填されたメスフラスコに、イソプロピルアルコールを気泡が入らないようにメニスカスまで正確に満たした後の重量(WS)を秤量した。そして、得られたWB、WB、WS、WS及びWSを下式に導入して、粒子の真比重(d)を計算した。
d={(WS−WS)×(WB−WB)/100}/{(WB−WB)−(WS−WS)}
上記で、粒子として微小球及び中空粒子を用いて、真比重を計算した。
【0079】
〔最大膨張温度及び最大膨張時真比重の測定〕
アルミ箔で縦12cm、横13cm、高さ9cmの底面の平らな箱を作製し、その中に乾燥した微小球1.0gを均一になるように入れ、この箱を所定温度に設定されたギア式オーブン中に所定時間入れて微小球を加熱膨張させた。具体的には、ギア式オーブンの温度は50〜300℃の範囲で5℃間隔として設定し、加熱時間は1〜10分の範囲で1分間隔として設定した。それぞれの温度及び時間で加熱膨張させた微小球(中空粒子)の真比重を上記測定方法にしたがって測定し、それらの中で最も小さい真比重の値を示した温度を最大膨張温度(Tmax)とし、その真比重の値を最大膨張時真比重dmaxとした。
【0080】
〔熱耐久性TDの評価〕
熱耐久性TDの評価は、上記で求めた最大膨張温度において実施した。具体的には、上記と同様の方法により、微小球を最大膨張温度で60分加熱膨張させて得られる中空粒子の真比重dを測定し、熱耐久性TD(%)を下式により算出した。
熱耐久性TD(%)=(dmax/d)×100
【0081】
[実施例A1]
イオン交換水600gに、シリカ有効成分量が20重量%であるコロイダルシリカ80g、ポリビニルピロリドン1.0gおよびカルボキシメチル化されたポリエチレンイミン類(CMPEI;置換アルキル基:−CHCOONa、置換率:80%、重量平均分子量:5万)を0.10g加えた後、得られた混合物のpHを2.8〜3.2に調整し、水性分散媒を調製した。
これとは別に、アクリロニトリル160g、メタクリロニトリル120g、メチルメタクリレート20g、メタクロレイン0.0045g、エチレングリコールジメタクリレート1.0g、発泡剤としてのイソブタン35g、イソペンタン25g、成分(A)としてのトルエン0.0030g、プロパンニトリル0.0030g及び開始剤としての2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3.0gを混合して油性混合物を調製した。水性分散媒と油性混合物を混合し、得られた混合液をホモミキサー(プライミクス社製、TKホモミキサー)により、回転数11000rpmで2分間分散して、懸濁液を調製した。この懸濁液を容量1.5リットルの加圧反応器に移して窒素置換をしてから反応初期圧0.50MPaにし、80rpmで攪拌しつつ重合温度55℃で20時間重合反応した。重合後、重合生成物を濾過、乾燥して、微小球を得た。得られた微小球の物性を評価し、結果を表1に示した。
【0082】
[実施例A2〜A9及び比較例A1〜A9]
実施例A2〜A9及び比較例A1〜A9では、油性混合物を表1〜4に示すものに変更すること以外は実施例1と同様にして微小球をそれぞれ得た。さらに、その物性を評価し、結果を表1〜4に示した。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
表1〜4では以下の略号が使用されている。
PVP:ポリビニルピロリドン
CMPEI:カルボキシメチル化ポリエチレンイミン・Na塩(置換アルキル基:−CHCOONa、置換率:80%、重量平均分子量:5万)
EDTA:エチレンジアミン4酢酸・4Na塩
AN:アクリロニトリル
MAN:メタクリロニトリル
MA:アクリル酸メチル
MMA:メタクリル酸メチル
IBX:イソボルニルメタクリレート
VCl:塩化ビニリデン
MAA:メタクリル酸
MAM:メタクリルアミド
EDMA:エチレングリコールジメタクリレート
TMP:トリメチロールプロパントリメタクリレート
V−65:2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)
OPP:ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(純度70重量%)
【0088】
表1〜4に示すとおり、本発明の熱膨張性微小球は、最大膨張時の真比重が小さく膨張倍率に優れるとともに、最大膨張温度で60分加熱した後であっても収縮度合いが小さく、熱耐久性に優れることが明らかである。
【0089】
[実施例B1]
(未膨張PVC塗膜の作製)
実施例A1で得られた熱膨張性微小球1重量部に対してポリ塩化ビニル(PVC)(新第一塩化ビニル社製)25重量部とDINP(新日本理化社製)50重量部と炭酸カルシウム(備北粉化工業社製)24重量部を加えてコンパウンドを調製した。調製したコンパウンドをテフロン(登録商標)のシート上に1.5mm厚みで塗工して、ギア式オーブンにて100℃で10分間加熱してゲル化させて、未膨張PVC塗膜を得た。
【0090】
(膨張PVC塗膜の作製)
上記未膨張PVC塗膜を、実施例A1の微小球の最大膨張温度に設定したギア式オーブン中で60分加熱して、膨張PVC塗膜を得た。
未膨張PVC塗膜の比重(d)と膨張PVC塗膜の比重(d)をそれぞれ測定して、発泡前後の比重低下率(=(d−d)×100/d)を計算し、軽量性を評価した。その結果を表5に示した。比重低下率が大きいほど、軽量化、クッション性、弾力性、衝撃強度等の物性に優れていることになる。なお、PVC塗膜の比重は、島津製作所社製、精密比重計AX200を用いた液浸法にて測定した。
【0091】
[実施例B2、比較例B1及び比較例B2]
実施例B2、比較例B1及び比較例B2では、使用する微小球を表5に示すものにそれぞれ変更し、未膨張PVC塗膜を加熱する温度をそれぞれ使用する微小球の最大膨張温度に変更する以外は、実施例B1と同様にして膨張PVC塗膜をそれぞれ得た。得られた膨張PVC塗膜について、実施例B1と同様にして比重低下率を求め、その結果を表5に示した。
【0092】
【表5】
【0093】
表5の結果より、本発明の熱膨張性微小球から得られた膨張PVC塗膜は、軽量化、クッション性、弾力性、衝撃強度等の物性に非常に優れた性能を有することが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の熱膨張性微小球は、長時間加熱されたときの収縮度合いが小さく、熱耐久性に優れる。したがって、意匠性の向上、多孔化、軽量化、断熱性、吸音性、衝撃吸収性等を意図する用途において有用である。本発明の熱膨張性微小球の製造方法は、上記熱膨張性微小球を効率よく製造できる。
【符号の説明】
【0095】
11 熱可塑性樹脂からなる外殻
12 発泡剤
1 中空粒子(微粒子付着中空粒子)
2 外殻
3 中空部
4 微粒子充填剤(吸着された状態)
5 微粒子充填剤(めり込み、固定された状態)
図1
図2