特許第6534837号(P6534837)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6534837-コンクリート構造物の解体方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6534837
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】コンクリート構造物の解体方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20190617BHJP
【FI】
   E04G23/08 Z
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-54807(P2015-54807)
(22)【出願日】2015年3月18日
(65)【公開番号】特開2016-176183(P2016-176183A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2018年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】平野 勝識
(72)【発明者】
【氏名】笹谷 輝勝
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 晃
(72)【発明者】
【氏名】野末 晃
(72)【発明者】
【氏名】永易 修
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 仁
(72)【発明者】
【氏名】北山 圭造
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕己
【審査官】 前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−015296(JP,A)
【文献】 特開昭51−148940(JP,A)
【文献】 特開2014−005617(JP,A)
【文献】 実開昭61−045545(JP,U)
【文献】 特開平01−304275(JP,A)
【文献】 特公昭53−016215(JP,B1)
【文献】 特開2008−139232(JP,A)
【文献】 米国特許第04449754(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物の表面から内部に向かって延在する注入孔を複数掘削する第1の工程と、
前記コンクリート構造物に浸透可能な液体を前記各注入孔に加圧注入することにより前記コンクリート構造物の内部に前記液体を浸透させる第2の工程と、
前記コンクリート構造物の内部に前記液体が浸透した状態で前記コンクリート構造物を解体する第3の工程とを含み、
前記液体は、糖分を含む液体、あるいは、糖分とリン酸塩を含む液体である、
ことを特徴とするコンクリート構造物の解体方法。
【請求項2】
前記第2の工程による前記液体の加圧注入は、前記コンクリート構造物に浸透した前記液体が飽和状態となるまでなされる、
ことを特徴とする請求項1記載のコンクリート構造物の解体方法。
【請求項3】
前記液体を収容するタンクを前記コンクリート構造物よりも高所に設置し、
前記第2の工程による前記液体の加圧注入は、前記タンクに収容された前記液体と前記各注入孔に注入される前記液体との水頭差によりなされる、
ことを特徴とする請求項1または2記載のコンクリート構造物の解体方法。
【請求項4】
前記第1の工程において、掘削された前記注入孔の前記コンクリート構造物の表面寄りの箇所にアタッチメントが取り付けられ、
前記第2の工程は、前記液体の加圧注入用のホースの先部が前記アタッチメントに着脱可能に結合されることで行なわれる、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載のコンクリート構造物の解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート構造物の解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からコンクリート構造物の解体作業は、バックホウなどの汎用掘削機械の先端に取り付けられたカッターやニブラー、あるいは、ブレーカと呼ばれるアタッチメントを用いてコンクリートを切断破砕することにより行なわれている(特許文献1、2参照)。
あるいは、コンクリートカッターやコンクリート用ワイヤーソーなどを用いてコンクリートを切断することにより行なわれている(特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−113377号公報
【特許文献2】特開平6−240889号公報
【特許文献3】特開2006−264099号公報
【特許文献4】特開平6−42198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したアタッチメントを用いる場合は、切断破砕時に発生する粉塵を抑制するためにコンクリート構造物の破砕箇所およびその周辺にわたって広範囲に大量の散水を行なう必要があるためコストがかかり、また、粉塵の抑制効果も限定されている。
また、コンクリートカッターやコンクリート用ワイヤーソーを用いる場合は、コンクリートの切断箇所に水を供給することから、粉塵を抑制できるものの、切断可能なコンクリートの大きさが限られているため、解体作業の効率が低くコストを要する不利がある。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、コスト低減を図りつつ粉塵を抑制すると共に解体作業の効率化を図る上で有利なコンクリート構造物の解体方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明のコンクリート構造物の解体方法は、コンクリート構造物の表面から内部に向かって延在する注入孔を複数掘削する第1の工程と、前記コンクリート構造物に浸透可能な液体を前記各注入孔に加圧注入することにより前記コンクリート構造物の内部に前記液体を浸透させる第2の工程と、前記コンクリート構造物の内部に前記液体が浸透した状態で前記コンクリート構造物を解体する第3の工程とを含み、前記液体は、糖分を含む液体、あるいは、糖分とリン酸塩を含む液体である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
コンクリート構造物の内部に液体が浸透した状態でコンクリート構造物を解体するようにしたので、コスト低減を図りつつ粉塵を抑制すると共に解体作業の効率化を図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態のコンクリート構造物の解体方法においてコンクリート構造物に注入孔を掘削する工程を示す説明図である。
図2】実施の形態のコンクリート構造物の解体方法においてコンクリート構造物の注入孔にアタッチメントを取り付ける工程を示す断面図である。
図3】実施の形態のコンクリート構造物の解体方法においてコンクリート構造物の注入孔に液体を加圧注入する工程を示す断面図である。
図4】実施の形態のコンクリート構造物の解体方法において液体が浸透したコンクリート構造物を破砕する工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、解体の対象となるコンクリート構造物10の表面から内部に向かって延在する注入孔12をハンマードリル2などの従来公知の様々な工具を用いて複数掘削する(第1の工程)。注入孔12の深さ(削孔長)は、後述する液体の注入範囲を考慮して適宜設定する。また、図2に示すように、掘削された注入孔12のコンクリート構造物10の表面寄りの開口にアタッチメント14を取り付ける。
アタッチメント14は、後述する液体注入用のホース16の先部が着脱可能に結合されるものであり、アタッチメント14が注入孔12の開口に取り付けられることにより、注入孔12の開口はアタッチメント14により閉塞される。
本実施の形態では、アタッチメント14には手動操作により開閉するバルブ1402が設けられている。
したがって、アタッチメント14にホース16の先部が結合された状態でバルブを開閉することにより、ホース16から注入孔12への液体の加圧注入の実行と停止とを切り替えることができるようになっている。
【0009】
次に、図3に示すように、液体注入用のホース16の先部をアタッチメント14に結合し、液体注入装置18からホース16を介してコンクリート構造物10に浸透可能な液体を各注入孔12に加圧注入することによりコンクリート構造物10の内部に液体Lを浸透させる(第2の工程)。図中、コンクリート構造物10に浸透した液体Lを濃いハッチングで示す。
【0010】
本実施の形態では、液体注入装置18は、ホース16と、該ホース16が接続されコンクリート構造物10よりも高所に設置された液体Lを収容するタンク20とを含んで構成されている。
液体Lの加圧注入は、タンク20に収容された液体Lと各注入孔12に注入される液体Lとの水頭差によりなされる。
なお、液体注入装置18は、液体Lを収容するタンク20と、タンク20に接続された不図示のポンプと、このポンプに接続された液体注入用のホース16とを含んで構成されていてもよい。
しかしながら、本実施の形態のようにすると、前記のポンプを省くことができ、構成を簡素できコストの低減を図る上で有利となる。
【0011】
液体Lとしては、水、あるいは、コンクリート構造物10に浸透可能な糖分を含む液体、あるいは、糖分とリン酸塩を含む液体を用いることができる。
水を用いると、コストの低減を図る上で有利となる。
糖分を含む液体、あるいは、糖分とリン酸塩を含む液体を用いると、水を用いた場合に比較してコンクリート構造物10における液体保持性(水分保持性)が向上し、一回注水することでコンクリート構造物10の解体時の粉塵の抑制効果を長期間持続する上で有利となる。また、糖分を含む液体、あるいは、糖分とリン酸塩を含む液体は、食品添加物などの材料であるため、安全性を確保する上でも有利となる。
【0012】
なお、第2の工程による液体Lの加圧注入は、コンクリート構造物10に浸透した液体Lが飽和状態となるまでなされることが、コンクリート構造物10の解体時に発生する粉塵を抑制する上で有利である。コンクリート構造物10に浸透した液体Lが飽和状態未満であっても良いが、本実施の形態のようにすると、単位体積当たりのコンクリート構造物10に含浸される液体Lの量が最大となるため、粉塵の発生を効果的に抑制することができる。
【0013】
図4に示すように、コンクリート構造物10の内部に液体Lが浸透したならば、その状態でコンクリート構造物10を解体する(第3の工程)。
コンクリート構造物10の解体方法は特に限定されない。
例えば、従来公知のコンクリートハンマ4などの工具を用いてもよいし、あるいは、バックホウなどの汎用掘削機械の先端に取り付けられたカッターやニブラー、あるいは、ブレーカと呼ばれる切断破砕用のアタッチメントを用いてもよい。
あるいは、コンクリート構造物10に割岩孔を掘削し、割岩孔に膨張破砕式の細長形状の割岩機を挿入し、割岩機の内部に加圧流体を供給し割岩機の断面形状を膨張させてコンクリートに亀裂を発生させてコンクリート構造物10を破砕してもよい。
あるいは、爆薬を用いた発破によりコンクリート構造物10を破砕してもよい。
【0014】
以上説明したように、本実施の形態によれば、コンクリート構造物10の表面から内部に向かって延在する注入孔12を複数掘削し、コンクリート構造物10に浸透可能な液体Lを各注入孔12に加圧注入することによりコンクリート構造物10の内部に液体Lを浸透させ、コンクリート構造物10の内部に液体Lが浸透した状態でコンクリート構造物10を解体するようにした。
したがって、解体時に粉塵の発生を抑制する上で有利となる。また、従来のようにコンクリート構造物10の切断破砕時に発生する粉塵を抑制するためにコンクリート構造物10の破砕箇所およびその周辺にわたって広範囲に散水を行なう必要がなく、必要最小限の水で足るため、コストを低減する上で有利となる。
また、コンクリート構造物10の破砕箇所に散水を行なう必要がないため、広範囲での解体が可能となり、例えば、汎用掘削機械でコンクリート構造物10を解体することで、解体作業の効率化を図れ、コストを低減する上で有利となる。
【符号の説明】
【0015】
L……液体、10……コンクリート構造物、12……注入孔、14……アタッチメント、16……ホース、20……タンク。
図1
図2
図3
図4