(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6534873
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】液冷式冷却装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20190617BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-131163(P2015-131163)
(22)【出願日】2015年6月30日
(65)【公開番号】特開2017-17133(P2017-17133A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】田村 忍
【審査官】
豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/0236883(US,A1)
【文献】
国際公開第2015/033724(WO,A1)
【文献】
特開2008−270297(JP,A)
【文献】
特開平11−121691(JP,A)
【文献】
特開2008−159946(JP,A)
【文献】
特開2008−270292(JP,A)
【文献】
特開2010−219215(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/105580(WO,A1)
【文献】
特開平10−178151(JP,A)
【文献】
特開2010−123881(JP,A)
【文献】
特開2006−245479(JP,A)
【文献】
特開2007−036094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/29
23/34 −23/36
23/373−23/427
23/44
23/467−23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に冷却液流路が設けられており、かつ頂壁および底壁のうちのいずれか一方の壁に開口が形成されているケーシングと、ケーシング内に配置された放熱器とを備えた液冷式冷却装置であって、
放熱器が、ケーシングの開口よりも大きく、かつ第1面が冷却液流路に臨ませられるとともに第2面に発熱体を取り付ける発熱体取付部が設けられている放熱基板と、放熱基板の第1面に、冷却液流路内に突出するように一体に設けられた複数の放熱フィンとよりなり、放熱器の放熱基板が、ケーシングの頂壁および底壁のうちの開口が形成された第1壁の内側に当該開口を塞ぐように配置され、放熱基板の第2面の周縁部がケーシングの前記第1壁の内面における開口の周囲の部分にろう付されるとともに、第2面の発熱体取付部が開口を通してケーシング外に露出しており、全放熱フィンのうちの少なくとも一部の放熱フィンの先端部が、ケーシングの頂壁および底壁のうち開口が形成されていない第2壁の内面にろう付されている液冷式冷却装置。
【請求項2】
放熱器が、純度99%以上のアルミニウムからなる請求項1記載の液冷式冷却装置。
【請求項3】
全放熱フィンの先端部が、前記第2壁の内面にろう付されている請求項1または2記載の液冷式冷却装置。
【請求項4】
全放熱フィンのうちの一部の放熱フィンの先端部のみが、前記第2壁の内面にろう付されている請求項1または2記載の液冷式冷却装置。
【請求項5】
放熱器がアルミニウム押出形材製であり、放熱基板の第1面に、複数の板状放熱フィンが、冷却液流路内に突出するとともに長手方向を冷却液流路での冷却液の流れ方向に向けた状態で間隔をおいて一体に設けられている請求項1または2記載の液冷式冷却装置。
【請求項6】
全放熱フィンの先端部が、前記第2壁の内面にろう付されている請求項5記載の液冷式冷却装置。
【請求項7】
全放熱フィンのうちの一部の放熱フィンの先端部のみが、前記第2壁の内面にろう付されており、先端部が前記第2壁の内面にろう付された放熱フィンと、先端部が前記第2壁から離隔した放熱フィンとが交互に並んで存在している請求項5または6記載の液冷式冷却装置。
【請求項8】
放熱器の放熱フィンの両側面が、放熱基板の第1面と直角をなしている請求項5〜7のうちのいずれかに記載の液冷式冷却装置。
【請求項9】
放熱器の放熱フィンの放熱基板からの突出高さが3〜12mm、放熱フィンの肉厚が0.3〜1.2mm、放熱フィンどうしのピッチが0.9〜2.2mmである請求項5〜8のうちのいずれかに記載の液冷式冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば半導体素子などの電子部品からなる発熱体を冷却する液冷式冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、電気自動車、ハイブリッド自動車、電車などに搭載される電力変換装置に用いられるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのパワーデバイス(半導体素子)を冷却する液冷式冷却装置として、本出願人は、先に、内部に冷却液流路が設けられており、かつ頂壁に開口が形成されているケーシングと、ケーシングの前記開口内に配置されてケーシングに固定され放熱器とを備えており、放熱器が、第1面が冷却液流路に臨ませられるとともに第2面に発熱体取付部が設けられている放熱基板と、放熱基板の第1面に、冷却液流路内に突出するとともに長手方向を冷却液流路での冷却液の流れ方向に向けた状態で間隔をおいて一体に設けられた複数の放熱フィンとよりなり、放熱器の放熱基板の第1面およびすべての放熱フィンの表面が犠牲腐食層で覆われ、すべての放熱フィンの先端とケーシングの底壁との間に隙間が存在している液冷式冷却装置を提案した(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1記載の液冷式冷却装置によれば、冷却液流路内を流れる冷却液に水が含まれる場合であっても、全ピンフィンの表面が犠牲腐食層で覆われているので、冷却液による放熱基板およびピンフィンの腐食を防止することができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の液冷式冷却装置のすべてのピンフィンの先端とケーシングの底壁との間に隙間が存在していて、すべてのピンフィンの先端がケーシングの底壁に接合されていないので、使用状況によっては液冷式冷却装置のケーシングの耐圧性が不足するおそれがある。
【0005】
さらに、放熱器の放熱基板の発熱体取付部に発熱体を取り付ける際に、発熱体の位置決め作業が面倒である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−277768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、上記問題を解決し、ケーシングの耐圧性を向上しうるとともに、放熱基板の発熱体取付部に発熱体を取り付ける際の発熱体の位置決め作業が簡単である液冷式冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0009】
1)内部に冷却液流路が設けられており、かつ頂壁および底壁のうちのいずれか一方の壁に開口が形成されているケーシングと、ケーシング内に配置された放熱器とを備えた液冷式冷却装置であって、
放熱器が、ケーシングの開口よりも大きく、かつ第1面が冷却液流路に臨ませられるとともに第2面に発熱体を取り付ける発熱体取付部が設けられている放熱基板と、放熱基板の第1面に、冷却液流路内に突出するように一体に設けられた複数の放熱フィンとよりなり、放熱器の放熱基板が、ケーシングの頂壁および底壁のうちの開口が形成された第1壁の内側に当該開口を塞ぐように配置され、放熱基板の第2面の周縁部がケーシングの前記第1壁の内面における開口の周囲の部分にろう付されるとともに、第2面の発熱体取付部が開口を通してケーシング外に露出しており、全放熱フィンのうちの少なくとも一部の放熱フィンの先端部が、ケーシングの頂壁および底壁のうち開口が形成されていない第2壁の内面にろう付されている液冷式冷却装置。
【0010】
2)放熱器が、純度99%以上のアルミニウムからなる上記1)記載の液冷式冷却装置。
【0011】
3)全放熱フィンの先端部が、前記第2壁の内面にろう付されている上記1)または2)記載の液冷式冷却装置。
【0012】
4)全放熱フィンのうちの一部の放熱フィンの先端部のみが、前記第2壁の内面にろう付されている上記1)または2)記載の液冷式冷却装置。
【0013】
5)放熱器がアルミニウム押出形材製であり、放熱基板の第1面に、複数の板状放熱フィンが、冷却液流路内に突出するとともに長手方向を冷却液流路での冷却液の流れ方向に向けた状態で間隔をおいて一体に設けられている上記1)または2)記載の液冷式冷却装置。
【0014】
6)全放熱フィンの先端部が、前記第2壁の内面にろう付されている上記5)記載の液冷式冷却装置。
【0015】
7)全放熱フィンのうちの一部の放熱フィンの先端部のみが、前記第2壁の内面にろう付されており、先端部が前記第2壁の内面にろう付された放熱フィンと、先端部が前記第2壁から離隔した放熱フィンとが交互に並んで存在している上記5)または6)記載の液冷式冷却装置。
【0016】
8)放熱器の放熱フィンの両側面が、放熱基板の第1面と直角をなしている上記5)〜7)のうちのいずれかに記載の液冷式冷却装置。
【0017】
9)放熱器の放熱フィンの放熱基板からの突出高さが3〜12mm、放熱フィンの肉厚が0.3〜1.2mm、放熱フィンどうしのピッチが0.9〜2.2mmである上記5)〜8)のうちのいずれかに記載の液冷式冷却装置。
【発明の効果】
【0018】
上記1)〜9)の液冷式冷却装置によれば、放熱器が、ケーシングの開口よりも大きく、かつ第1面が冷却液流路に臨ませられるとともに第2面に発熱体を取り付ける発熱体取付部が設けられている放熱基板と、放熱基板の第1面に、冷却液流路内に突出するように一体に設けられた複数の放熱フィンとよりなり、放熱器の放熱基板が、ケーシングの頂壁および底壁のうちの開口が形成された第1壁の内側に当該開口を塞ぐように配置され、放熱基板の第2面の周縁部がケーシングの前記第1壁の内面における開口の周囲の部分にろう付されるとともに、第2面の発熱体取付部が開口を通してケーシング外に露出しているので、放熱基板の第2面の発熱体取付部が開口を通してケーシング外に露出している部分は、第1壁の外面よりも凹み、発熱体取付部と第1壁の外面との間には、発熱体取付部を取り囲むように段部が存在する。したがって、発熱体を発熱体取付部に取り付ける際に、前記段部を利用することが可能となり、発熱体の位置決め作業が容易になる。
【0019】
また、全放熱フィンのうちの少なくとも一部の放熱フィンの先端部が、ケーシングの頂壁および底壁のうち開口が形成されていない第2壁の内面にろう付されているので、液冷式冷却装置のケーシングの耐圧性が向上する。
【0020】
さらに、ケーシングの頂壁および底壁のうち開口が形成されている第1壁の肉厚を、熱伝導性を考慮することなく厚くすることが可能になるので、第1壁の少なくとも一部分を外方に突出させ、この外方突出部を利用して液冷式冷却装置を電気自動車、ハイブリッド自動車などに取り付けたり、あるいはカバーを取り付けたりすることが可能になる。
【0021】
上記2)の液冷式冷却装置によれば、放熱器の熱伝導率が高くなり、放熱性能が向上する。
【0022】
上記3)の液冷式冷却装置によれば、液冷式冷却装置のケーシングの耐圧性が効果的に向上する。
【0023】
上記4)の液冷式冷却装置によれば、液冷式冷却装置の強度を適正に調整することができ、ケーシングの頂壁および底壁のうちの開口が形成された第1壁の平面度を向上させることができる。
【0024】
上記5)の液冷式冷却装置によれば、放熱器がアルミニウム押出形材製であるので、放熱基板の肉厚を特許文献1記載の液冷式冷却装置の放熱器の放熱基板よりも薄肉にすることができる。したがって、放熱基板の第2面の発熱体取付部に取り付けられた発熱体から発せられる熱が、放熱基板および放熱フィンを経て冷却液流路内を流れる冷却液へ伝わる際の熱伝導性が向上する。特許文献1記載の液冷式冷却装置の放熱器は、芯材の片面が犠牲腐食槽で覆われたクラッド材に鍛造加工を施すことにより製造されているので、放熱基板の薄肉化には限度があって比較的厚肉になり、その結果放熱基板の第2面の発熱体取付部に取り付けられた発熱体から発せられる熱が、放熱基板および放熱フィンを経て冷却液流路内を流れる冷却液へ伝わる際の熱伝導性が不十分になるおそれがある。
【0025】
上記6)の液冷式冷却装置によれば、液冷式冷却装置のケーシングの耐圧性が効果的に向上する。
【0026】
上記7)の液冷式冷却装置によれば、液冷式冷却装置の強度を適正に調整することができ、ケーシングの頂壁および底壁のうちの開口が形成された第1壁の平面度を向上させることができる。
【0027】
上記8)の液冷式冷却装置によれば、放熱器の隣り合う放熱フィン間の間隔を小さくすることが可能になって、単位面積あたりの放熱フィンの数が増加する。したがって、放熱性能が向上する。
【0028】
上記9)の製造装置によれば、製造される放熱器の放熱性能の低下を抑制した上で小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】この発明の液冷式冷却装置を示す分解斜視図である。
【
図5】この発明の液冷式冷却装置に用いられる放熱器の変形例を示す
図4相当の図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0031】
この明細書において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0032】
図1〜
図4はこの発明の液冷式冷却装置を示す。
【0033】
なお、以下の液冷式冷却装置に関する説明において、冷却液の流れ方向下流側(
図2および
図3の右側)を前、これと反対側を後といい、前から後を見た際の左右(
図4の左右)を左右というものとする。また、
図2および
図4の上下を上下というものとする。
【0034】
図1〜
図4において、液冷式冷却装置(1)は、頂壁(2a)、底壁(2b)および周壁(2c)を有するアルミニウム製ケーシング(2)と、ケーシング(2)に固定されたアルミニウム押出形材製放熱器(3)とを備えている。
【0035】
ケーシング(2)は、底壁(2b)および周壁(2c)を構成する上方に開口した箱状のアルミニウム製下構成部材(4)と、頂壁(2a)を構成する板状のアルミニウム製上構成部材(5)とよりなり、上構成部材(5)の周縁寄りの一定幅部分が、下構成部材(4)の周壁(2c)を構成する部分の上端に一体に設けられた外向きフランジ(4a)の上面にろう付されている。ケーシング(2)内には、冷却液がケーシング(2)の長手方向の片側(後側)から他側(前側)に流れる冷却液流路(6)と、冷却液流路(6)よりも上流側(後側)に位置しかつ冷却液が流入する入口ヘッダ部(7)と、冷却液流路(6)よりも下流側(前側)に位置しかつ冷却液が流出する出口ヘッダ部(8)とが設けられている。ケーシング(2)の底壁(2b)の後側部分の左右方向中央部に、入口ヘッダ部(7)に通じる冷却液入口(9)が設けられ、ケーシング(2)の底壁(2b)の前側部分の左右方向中央部に、出口ヘッダ部(8)に通じる冷却液出口(11)が設けられている。ケーシング(2)の冷却液入口(9)に、入口ヘッダ部(7)内に冷却液を送り込むアルミニウム製入口パイプ(12)の端部が挿入されて底壁(2b)にろう付され、冷却液出口(11)に、出口ヘッダ部(8)内から冷却液を送り出すアルミニウム製出口パイプ(13)の端部が挿入されて底壁(2b)にろう付されている。
【0036】
ケーシング(2)の頂壁(2a)および底壁(2b)のうちのいずれか一方の壁、ここでは頂壁(2a)に、放熱器(3)をケーシング(2)に固定するのに利用される方形の開口(14)が、冷却液流路(6)に臨むように形成されている。
【0037】
放熱器(3)は、ケーシング(2)の開口(14)よりも大きい方形板状であり、かつ第1面(15a)(下面)が冷却液流路(6)に臨ませられるとともに第2面(15b)(上面)に発熱体(P)を取り付ける発熱体取付部(F)が設けられた放熱基板(15)と、放熱基板(15)の第1面(15a)に放熱基板(15)に対して立ち上がり状、ここでは垂下状となり、かつ左右方向に間隔をおいて並列状となるように一体に設けられた前後方向にのびる複数の垂直板状放熱フィン(16)とよりなる。
【0038】
放熱器(3)はケーシング(2)内に、放熱基板(15)が開口(14)を塞ぐように頂壁の内側に位置するように配置されており、放熱基板(15)の第2面(15b)の周縁寄りの一定幅部分が、ケーシング(2)の頂壁(2a)下面における開口(14)の周りの部分にろう付され、放熱基板(15)の発熱体取付部(F)が開口(14)を通してケーシング(2)外に露出している。したがって、放熱基板(15)の第2面(15b)の発熱体取付部(F)が開口(14)を通してケーシング(2)外に露出している部分は、頂壁(2a)の外面よりも凹み、発熱体取付部(F)と頂壁(2a)の外面との間には、発熱体取付部(F)を取り囲むように段部(17)が存在する。また、放熱器(3)の放熱フィン(16)が冷却液流路(6)内に突出し、全放熱フィン(16)の先端はケーシング(2)の底壁(2b)内面にろう付されている。
【0039】
放熱器(3)は、純度99%以上のアルミニウムで形成されていることが好ましい。また、放熱フィン(16)の左右両側面が、放熱ベース(15)の放熱フィン(16)が設けられた第1面(15a)と直角をなしていることが好ましい。さらに、放熱フィン(16)における放熱ベース(15)の第1面(15a)からの突出高さが3〜12mm、放熱フィン(16)の肉厚が0.3〜1.2mm、隣り合う2つの放熱フィン(16)どうしの厚み方向中心間の間隔であるピッチが0.9〜2.2mmであることが好ましい。いずれの場合も、放熱器(3)の放熱性能が向上し、放熱器(3)の小型軽量化を図ることが可能になる。
【0040】
発熱体(P)は、IGBTなどのパワーデバイスや、IGBTが制御回路と一体化されて同一パッケージに収納されたIGBTモジュールや、IGBTモジュールにさらに保護回路が一体化されて同一パッケージに収納されたインテリジェントパワーモジュールなどからなり、図示しない電気絶縁部材を介して放熱器(3)の放熱基板(15)の第2面(15b)に取り付けられている。
【0041】
上記構成の液冷式冷却装置(1)において、入口パイプ(12)から冷却液入口(9)を通って入口ヘッダ部(7)内に流入した冷却液は、冷却液流路(6)に配置された放熱器(3)の隣り合う放熱フィン(16)間、および前後両端の放熱フィン(16)と周壁(2c)との間を通って前方に流れる。冷却液流路(6)を前方に流れた冷却液は、出口ヘッダ部(8)内に入り、冷却液出口(11)を通って出口パイプ(13)に送り出される。発熱体(P)から発せられる熱は、放熱器(3)の放熱基板(15)および放熱フィン(16)を経て冷却液流路(6)内を流れる冷却液に放熱され、発熱体(P)が冷却される。
【0042】
上述した実施形態においては、ケーシング(2)の頂壁(2a)に開口(14)が形成されているが、これとは逆に、ケーシング(2)の底壁(2b)に開口(14)が形成され、
ていてもよい。この場合、放熱器(3)は、上述した実施形態とは上下逆向きとなるようにケーシング(2)内に配置され、放熱基板(15)の第2面(15b)の周縁寄りの一定幅部分が、ケーシング(2)の底壁(2b)上面における開口(14)の周りの部分にろう付され、放熱フィン(16)が冷却液流路(6)内に突出し、少なくとも一部の放熱フィン(16)の先端がケーシング(2)の頂壁(2a)内面にろう付される。
【0043】
図5はこの発明の液冷式冷却装置(1)に用いられる放熱器の変形例を示す。
【0044】
図5に示す放熱器(20)の場合、放熱基板(15)の第1面(15a)には、放熱基板(15)に対して立ち上がり状、ここでは垂下状となり、かつ高さの異なる2種類の垂直板状放熱フィン(21)(22)が、左右方向に交互に間隔をおきかつ並列状となるように一体に設けられている。高い放熱フィン(21)の先端はケーシング(2)の底壁(2b)内面にろう付され、低い放熱フィン(22)の先端はケーシング(2)の底壁(2b)内面から離隔している。
【0045】
上述した実施形態の放熱器(3)および変形例の放熱器(20)において、放熱フィン(16)(21)(22)は垂直板状であるが、これに限定されるものではなく、ピン状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
この発明による液冷式冷却装置は、電気自動車、ハイブリッド自動車、電車などに搭載される電力変換装置に用いられるIGBTなどのパワーデバイスを冷却するのに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0047】
(1):液冷式冷却装置
(2):ケーシング
(2a):頂壁
(2b):底壁
(3)(20):放熱器
(6):冷却液流路
(14):開口
(15):放熱基板
(15a):第1面
(15b):第2面
(16)(21)(22):放熱フィン