特許第6534900号(P6534900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6534900
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20190617BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20190617BHJP
   B01D 46/00 20060101ALI20190617BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20190617BHJP
   B01J 29/76 20060101ALI20190617BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20190617BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20190617BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20190617BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20190617BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20190617BHJP
【FI】
   B01J35/04 301E
   B01D39/20 D
   B01D46/00 302
   B01J35/04 301A
   B01J35/04 301J
   B01J35/04 301F
   B01J32/00
   B01J35/04 301B
   B01J29/76 AZAB
   B01D53/94 223
   F01N3/022 C
   F01N3/08 B
   F01N3/28 301P
   F01N3/035 A
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-191548(P2015-191548)
(22)【出願日】2015年9月29日
(65)【公開番号】特開2017-64609(P2017-64609A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】三浦 和人
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−142724(JP,A)
【文献】 特開2011−183360(JP,A)
【文献】 特開平10−059784(JP,A)
【文献】 特開2011−042521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
B01D 39/20
B01D 46/00
B01D 53/86
B01D 53/94
F01N 3/00 − 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端面である流入端面から他方の端面である流出端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造部と、
前記セルのうちの所定のセルの前記流入端面側の端部に配設される流入側目封止部と、
前記セルのうちの残余のセルの前記流出端面側の端部に配設される流出側目封止部と、
を備え、
前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記セルの形状が、頂点が曲線状に面取りされた三角形であり、
前記ハニカム構造部が、前記流入端面から前記流出端面まで延びる複数のセルを区画形成する前記隔壁を有する複数個のハニカムセグメントを組み合わせてなるセグメント構造体であり、
前記複数個のハニカムセグメントが、三角柱状のものであるハニカム構造体。
【請求項2】
前記セルにおいて前記三角形の前記頂点の曲率半径が、1.1mm以下である請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記セルにおいて前記三角形の前記頂点の曲率半径が、0.1〜0.8mmである請求項1または2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記ハニカム構造部の前記隔壁に担持されたSCR触媒を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記SCR触媒の担持量が、50〜250g/Lである請求項4に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記ハニカム構造部には、前記流入側目封止部が配設された所定のセルである流出セルと、前記流出側目封止部が配設された残余のセルである流入セルとが交互に配置されている請求項1〜のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。更に詳しくは、排ガスと触媒との接触面積が大きいため高い浄化性能を有し、更に、耐熱衝撃性が良好であり、圧力損失が従来のものと同程度に維持されているハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンから排出される排ガスに含まれる有毒成分の除去と同時に、スート(煤)やアッシュ(灰)等の粒子状物質を大気に放出しないための対策としてエンジンからの排気路中にフィルタ(ハニカム構造体)を配置することが行われている。
【0003】
このハニカム構造体は、通常、多孔質の隔壁によって流体の流路となる複数のセルが区画形成されたものであり、セルを交互に目封止することで、セルを構成する多孔質の隔壁がフィルタの役目を果たす構造である。
【0004】
そして、このハニカム構造体は、排ガスの流入セルにおける濾過面積や開口率を高めるという工夫として、流入セルの断面積と、流側セルの断面積とを異ならせた構造のものなどが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−029938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のフィルタは、排ガスの浄化性能を更に改善することが要求されている。このような要求に対して、浄化性能を更に改善するには、触媒の担持量を更に多くすることが考えられる。しかし、触媒の担持量を更に多くすると、圧力損失が増大するという問題がある。また、セルの頂点部分に熱応力が集中し易く、この部分にクラックが発生することがあった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明の課題とするところは、排ガスと触媒との接触面積が大きいため高い浄化性能を有し、更に、耐熱衝撃性が良好であり、圧力損失が従来のものと同程度に維持されているハニカム構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下に示す、ハニカム構造体が提供される。
【0009】
[1] 一方の端面である流入端面から他方の端面である流出端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造部と、前記セルのうちの所定のセルの前記流入端面側の端部に配設される流入側目封止部と、前記セルのうちの残余のセルの前記流出端面側の端部に配設される流出側目封止部と、を備え、前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記セルの形状が、頂点が曲線状に面取りされた三角形であり、前記ハニカム構造部が、前記流入端面から前記流出端面まで延びる複数のセルを区画形成する前記隔壁を有する複数個のハニカムセグメントを組み合わせてなるセグメント構造体であり、前記複数個のハニカムセグメントが、三角柱状のものであるハニカム構造体。
【0010】
[2] 前記セルにおいて前記三角形の前記頂点の曲率半径が、1.1mm以下である前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0011】
[3] 前記セルにおいて前記三角形の前記頂点の曲率半径が、0.1〜0.8mmである前記[1]または[2]に記載のハニカム構造体。
【0012】
[4] 前記ハニカム構造部の前記隔壁に担持されたSCR触媒を有する前記[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0013】
[5] 前記SCR触媒の担持量が、50〜250g/Lである前記[4]に記載のハニカム構造体。
【0016】
] 前記ハニカム構造部には、前記流入側目封止部が配設された所定のセルである流出セルと、前記流出側目封止部が配設された残余のセルである流入セルとが交互に配置されている前記[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0017】
本発明のハニカム構造体は、排ガスと触媒との接触面積が大きいため高い浄化性能を有し、更に、耐熱衝撃性が良好であり、圧力損失が従来のものと同程度に維持されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2】本発明のハニカム構造体の一の実施形態におけるセルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。
図3】本発明のハニカム構造体の一の実施形態における流入端面の一部を拡大して模式的に示す平面図である。
図4】本発明のハニカム構造体の一の実施形態における流入端面の一部を拡大して模式的に示す平面図である。
図5】本発明のハニカム構造体の他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図6】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0020】
[1]ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体の一実施形態は、図1図2に示すハニカム構造体100である。ハニカム構造体100は、一方の端面である流入端面11から他方の端面である流出端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を有するハニカム構造部10を備えている。また、ハニカム構造体100は、セル2のうちの所定のセルの流入端面11側の端部に配設される流入側目封止部8と、セル2のうちの残余のセルの流出端面12側の端部に配設される流出側目封止部9と、を備えている。更に、ハニカム構造体100は、セル2の延びる方向に直交する断面において、セル2の形状が、その頂点が曲線状に面取りされた三角形である。
【0021】
このようなハニカム構造体100は、排ガスと触媒との接触面積が大きいため高い浄化性能を有し、更に、耐熱衝撃性が良好であり、圧力損失が従来のものと同程度に維持されている。
【0022】
具体的には、ハニカム構造体100のように、セルの断面形状が三角形であるハニカム構造体は、セルの断面形状が四角形で且つ開口面積が同じハニカム構造体に比べて、排ガスとSCR触媒の幾何学的表面積(GSA)が大きくなる。つまり、開口面積が同じ場合、三角形の方が四角形よりも各辺が長くなる。そのため、断面形状が三角形のセル方が四角形のセルに比べて、排ガスとSCR触媒の幾何学的表面積(GSA)が大きくなる。このようなことから、ハニカム構造体100を触媒の担体として用いると、排ガスとSCR触媒との接触面積が大きくなるため、排ガスの浄化性能が高くなる。
【0023】
より具体的には、図3に示すように、流入セル2aに流入した排ガスは、この流入セル2aと隣り合う位置にある流出セル2bに隔壁1を通過して流れ込む。この際、隔壁を通過する排ガスは、隔壁に担持されたSCR触媒などの触媒と接触することにより浄化される。このとき、セルの断面形状が三角形である場合、四角形などのセルの場合と比べて排ガスと触媒との接触面積を大きくすることができる。その結果、排ガスの浄化性能が向上することになる。なお、図3においては、流入側目封止部8を省略している。
【0024】
また、ハニカム構造体100は、圧力損失の増大を防止しつつ(つまり、圧力損失を従来のものと同程度に維持しつつ)、多くの触媒を担持することができる。具体的には、圧力損失の大小は、セルの水力直径の大きさと関係がある。即ち、セルの水力直径が小さくなると、圧力損失が大きくなる。ここで、面取りされていない多角形のセルを想定した場合、セルの角部の空間の大小は、セルの水力直径の大きさには寄与しない。そのため、角部の空間に触媒や交差部が存在したとしても圧力損失が大きくなり難い。面取りされていない三角形の頂点部分に交差部を配しても(つまり、交差部を肉厚にしても)、ハニカム構造体の圧力損失は大きくなり難い。「水力直径」は、4×(1つのセルの断面積)/(1つのセルの断面における周長の和)によって計算される値である。なお、上記断面は、セルの延びる方向に直交する断面のことである。
【0025】
このような観点から、ハニカム構造体100は、隔壁1が交差する部分である交差部25が、断面形状が三角形のセル40が形成されたハニカム構造体に比べて肉厚になっている(図4参照)。即ち、ハニカム構造体100は、図4に示す斜線の領域の分だけ肉厚になっている。そのため、上記交差部に熱応力がかかった場合にもクラックが生じ難い。更に、三角形のセルの頂点が曲線状であるため、上記交差部25に熱応力がかかった際にもその力が良好に分散される。その結果、ハニカム構造体100は、耐熱衝撃性が良好となる。
【0026】
図1は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態におけるセルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。図3は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態における流入端面の一部を拡大して模式的に示す平面図である。図4は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態における流入端面の一部を拡大して模式的に示す平面図である。なお、図3図4においては、流入側目封止部8を省略している。
【0027】
なお、「頂点が曲線状に面取りされた三角形」とは、図4に示すように、3つの各辺を延ばして互いに交差させたときに三角形が得られる図形であり、頂点部分が外側に凸となるように湾曲している図形のことを意味する。
【0028】
[1−1]ハニカム構造部:
ハニカム構造体100は、セル2において三角形の頂点の曲率半径が、1.1mm以下であることが好ましく、0.1〜0.8mmであることが更に好ましく、0.1〜0.2mmであることが特に好ましい。このような条件を満たすことにより、圧力損失の増大を防止することができる。つまり、上述の通り、圧力損失の大小は、セルの水力直径の大きさと関係がある。即ち、セルの水力直径が小さくなると、圧力損失が大きくなる。そのため、セルの水力直径は小さくしないことが良い。このような観点から、上記曲率半径は、1.1mm以下とすることが好ましい。一方、1.1mm超にすると、圧力損失が増大してしまうおそれがある。更に、触媒を担持させる際には、触媒は、セルの頂点(角部分)に溜まり易い。このとき、上記曲率半径が1.1mm超であると、触媒を溜めることが可能な領域が小さくなり、担持させた触媒(100〜150g/L程度)によりセルの水力直径が小さくなる。そのため、圧力損失が増大してしまうことがある。
【0029】
また、一般にSCR触媒の嵩密度は、2g/cm程度なので、例えば2Lのハニカム構造体には100cm(1mm)程度の触媒が担持される。このような点からすると、上記曲率半径を1.1mm以下(好ましくは0.1〜0.8mm)の範囲とすることにより、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を良好に向上させつつ、触媒を担持した後の圧力損失の増大を良好に抑制することができる。
【0030】
隔壁1の厚さは、0.05〜0.38μmであることが好ましく、0.15〜0.33μmであることが更に好ましい。隔壁の厚さが下限値未満であると、キャニング時にハニカム構造体が破損するおそれがある。上限値超であると、触媒を担持する時にセルの開口部が閉塞するおそれがある。
【0031】
隔壁1の材料としては、セラミックを主成分とすることが好ましい。具体的には、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、及び炭化珪素−コージェライト系複合材料からなる群から選択される少なくとも1種が更に好ましい。
【0032】
ハニカム構造体100は、セルピッチが1.0〜5.0mmであることが好ましく、1.3〜2.5mmであることが特に好ましい。セルピッチが下限値未満であると、キャニング時にハニカム構造体が破損するおそれがある。上限値超であると、触媒を担持する時にセルの開口部が閉塞するおそれがある。
【0033】
本明細書において、「セルピッチ」とは、セルの延びる方向に直交する断面において、三角形である各セルを区画形成する隔壁の交点である3つの交差部25のうち2つを結んだときの直線の長さをいう。
【0034】
ハニカム構造体100は、セルの開口率(OFA)が、10〜40%であることが好ましく、20〜35%であることが特に好ましい。セルの開口率が下限値未満であると、触媒を担持する時にセルの開口部が閉塞するおそれがある。上限値超であると、キャニング時にハニカム構造体が破損するおそれがある。
【0035】
ハニカム構造体100は、隔壁1の気孔率が、25〜70%であることが好ましく、50〜70%であることが特に好ましい。気孔率が下限値未満であると、触媒を担持する時の圧力損失が上昇するおそれがある。上限値超であると、ハニカム構造体のキャニング時にハニカム構造体が破損するおそれがある。なお、隔壁の気孔率は、水銀ポロシメーターによって測定した値である。
【0036】
ハニカム構造体100の形状は、例えば、円柱状、楕円状、端面が「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形等」の多角柱状、等を挙げることができる。
【0037】
ハニカム構造体100のセル2の延びる方向の長さは、20〜350mmとすることができる。
【0038】
本発明のハニカム構造体は、図1に示すハニカム構造体100のように側面に外周壁20を更に備えていてもよい。
【0039】
[1−2]目封止部:
ハニカム構造体100は、図1図2に示すように、流入端面11における所定のセル2である流入セル2aの開口部に配設された流入側目封止部8が配設されている。そして、流出端面12における残余のセル2である流出セル2bの開口部に流出側目封止部9が配設されている。
【0040】
流入セル2aと流出セル2bとは、交互に並んで配置されていることが好ましい。そして、それによって、ハニカム構造体100の両端面に、目封止部と「セルの開口部」とにより、市松模様が形成されていることが好ましい。このようにすると、排ガスが透過する面積が広くなるため、圧力損失が低くなり、捕集効率を向上させることができる。なお、「流入セルと流出セルとが、交互に並んで配置されている」とは、流入セルと流出セルとが、隔壁を挟んで交互に並んで配置されていることを意味し、流入セルの3つの辺(隔壁)を挟んで隣合うセルが流出セルとなることを意味する。
【0041】
目封止部(流入側目封止部及び流出側目封止部)の材質は、隔壁の材質として好ましいとされた材質であることが好ましい。目封止部の材質と隔壁の材質とは、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
【0042】
[1−3]触媒:
ハニカム構造体100は、その隔壁1にSCR触媒(選択触媒還元触媒)が担持されていることが好ましい。即ち、ハニカム構造体100は、SCR触媒用の担体として好適に採用することができる。具体的には、ゼオライト触媒などのSCR触媒は、様々な触媒の中でも、排ガスとの接触機会が増えることで良好に排ガスを浄化することができるものである。そのため、ハニカム構造体100では、排ガスの浄化性能が高くなる。
【0043】
SCR触媒としては、例えば、金属置換されたゼオライトを挙げることができる。ゼオライトを金属置換する金属としては、鉄(Fe)、銅(Cu)を挙げることができる。ゼオライトとしては、ベータゼオライトを好適例として挙げることができる。また、SCR触媒としては、バナジウム及びチタニアからなる群より選択される少なくとも1種を含有する触媒であってもよい。
【0044】
SCR触媒の担持量は、特に制限はない。触媒の担持量は、50〜250g/Lであることが好ましく、80〜200g/Lであることが更に好ましく、100〜150g/Lであることが特に好ましい。このような担持量とすることにより、触媒を担持した後のフィルタの圧力損失と触媒の浄化性能とのバランスが良好になる。触媒の担持量が50g/L未満であると、SCR触媒の浄化性能が不足するおそれがある。また、触媒の担持量が250g/Lを超えると、セルの開口部が閉塞するため、圧力損失が高くなるおそれがある。なお、本明細書中、担持量(g/L)とは、ハニカム構造部の単位体積(1L)あたりに担持される触媒の量(g)のことである。
【0045】
[1−4]セグメント構造体:
本発明のハニカム構造体は、図5図6に示すハニカム構造体101,102のように、セグメント構造体であることが好ましい。このセグメント構造体は、図5図6に示すように、流入端面11から流出端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する隔壁1を有する複数個のハニカムセグメント50を組み合わせてなるものである。
【0046】
このような構成とすることにより、高温時に熱膨張することに起因して発生する破損の程度が軽減される。
【0047】
図5は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態を模式的に示す斜視図である。図6は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0048】
ハニカムセグメント50の形状は、例えば、円柱状、楕円状、端面が「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形等」の多角柱状、等を挙げることができる。これらの中でも、図6に示すハニカム構造体102のように、三角柱状とすることが好ましい。ハニカムセグメント50を三角柱状とすることにより、ハニカムセグメント50の隅に形成された不完全な形状のセルがなくなる。そのため、フィルタとして機能する面積が増加する。「不完全な形状のセル」とは、ハニカムセグメントの最外周部に存在するセルのことであり、ハニカムセグメントの中央部に位置するセルとは異なる形状のセルである。
【0049】
ハニカムセグメント50の数は、特に制限はなく、ハニカム構造体の用途などに合わせて適宜決定することができる。
【0050】
各ハニカムセグメント50は、その側面同士を接合層17によって互いに接合される。つまり、この接合層17は、複数個のハニカムセグメント50の側面に接合材を塗布して複数個のハニカムセグメント50を互いに接合する際における接合材からなるものである。
【0051】
なお、接合層17の厚さは、例えば、0.1〜5mmとすることができる。
【0052】
[2]ハニカム構造体の製造方法:
本発明のハニカム構造体のうちのセグメント構造を有するもの(図5図6参照)の製造方法について説明する。
【0053】
まず、セラミック原料を含有するセラミック成形原料を成形して、排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する隔壁を備えるハニカムセグメント成形体を作製する。このとき、セルの延びる方向に直交する断面において、セルの形状(セルの断面形状)が三角形となるようにする。例えば、口金を用いて押出成形してハニカムセグメント成形体を作製する場合、セルの断面形状が、その頂点が曲線状に面取りされた三角形となる口金を用いる。
【0054】
セラミック成形原料に含有されるセラミック原料としては、コージェライト化原料、コージェライト、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、チタン酸アルミニウム、からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。なお、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料である。そして、コージェライト化原料は、焼成されてコージェライトになるものである。
【0055】
また、セラミック成形原料は、上記セラミック原料に、分散媒、有機バインダ、無機バインダ、造孔材、界面活性剤等を混合して調製することができる。各原料の組成比は、特に限定されず、作製しようとするハニカム構造体の構造、材質等に合わせた組成比とすることが好ましい。
【0056】
セラミック成形原料を成形する際には、まず、セラミック成形原料を混練して坏土とし、得られた坏土をハニカム形状に成形する。セラミック成形原料を混練して坏土を形成する方法としては、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。坏土を成形してハニカムセグメント成形体を形成する方法としては、例えば、押出成形、射出成形等の公知の成形方法を用いることができる。
【0057】
ハニカムセグメント成形体の形状としては、円柱状、楕円状、端面が「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形等」の多角柱状、等を挙げることができる。これらの中でも、三角柱状とすることが好ましい。
【0058】
成形後に、得られたハニカムセグメント成形体を乾燥してもよい。乾燥方法は、特に限定されるものではない。例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができる。これらのなかでも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥または熱風乾燥を単独でまたは組合せて行うことが好ましい。
【0059】
次に、ハニカムセグメント成形体に目封止部(流入側目封止部、及び流出側目封止部)を配設して目封止ハニカムセグメント成形体を作製する。
【0060】
具体的には、まず、ハニカムセグメント成形体の流入端面のセルの開口部に目封止材を充填する。流入端面のセルの開口部に目封止材を充填する方法としては、マスキング工程と圧入工程とを有する方法が好ましい。マスキング工程は、ハニカムセグメント成形体の流入端面にシートを貼り付け、シートにおける、「目封止部を形成しようとするセル」と重なる位置に孔を開ける工程である。圧入工程は、「ハニカムセグメント成形体の、シートが貼り付けられた側の端部」を目封止材が貯留された容器内に圧入して、目封止材をハニカムセグメント成形体のセル内に圧入する工程である。目封止材をハニカムセグメント成形体のセル内に圧入する際には、目封止材は、シートに形成された孔を通過し、シートに形成された孔と連通するセルのみに充填される。
【0061】
次に、ハニカムセグメント成形体の流出端面における「残余のセル(流出セル)」の開口部に、流入端面の場合と同様にして、目封止部(流出側目封止部)を配設する。
【0062】
目封止材は、上記セラミック成形原料の構成要素として挙げた原料を適宜混合して作製することができる。目封止材に含有されるセラミック原料としては、隔壁の原料として用いるセラミック原料と同じであることが好ましい。
【0063】
次に、目封止ハニカムセグメント成形体を焼成してハニカムセグメントを作製する。焼成条件(温度、時間、雰囲気等)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。
【0064】
次に、作製した複数個のハニカムセグメントの側面に接合材を塗布し、ハニカムセグメント同士を上記接合材によって接合する。このようにして、ハニカムセグメントの接合体を得る。ハニカムセグメントを接合する接合材が、ハニカム構造体における接合層となる。
【0065】
なお、得られた接合体の外周部を研削等によって加工して所望の形状にしてもよい。更に、外周壁を配設する場合、研削等によって加工した後、研削等がされた面(接合体の側面)にセラミック原料を塗工する。このようにして外周壁を配設することができる。
【0066】
外周コート材としては、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子等の無機原料に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤等の添加材を加えたものに水を加えて混練したものなどを挙げることができる。外周コート材を塗布する方法は、「切削されたハニカム焼成体」をろくろ上で回転させながらゴムへらなどでコーティングする方法等を挙げることができる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0068】
参考例1)
炭化珪素粉末を80質量部と、Si粉末20質量部とを混合して、混合粉末を得た。この混合粉末に、バインダ、造孔材、及び水を添加して、成形原料とした。次に、成形原料を混練して四角柱状の坏土を作製した。そして、得られた四角柱状の坏土を、押出成形機を用いてハニカム形状に成形して、端面が正方形のハニカムセグメント成形体を、50個作製した。このハニカムセグメント成形体は、セルの延びる方向に直交する断面において、全てのセルの形状が、頂点が曲線状に面取りされた三角形(正三角形)であった。
【0069】
次に、得られたハニカムセグメント成形体を乾燥し、乾燥したハニカムセグメント成形体の流入端面における所定のセルの開口部に流入側目封止部を配設した。また、流出端面における残余のセルの開口部に流出側目封止部を配設した。このようにして目封止ハニカムセグメント成形体を作製した。得られた目封止ハニカムセグメント成形体を焼成して、ハニカムセグメントを作製した。得られたハニカムセグメントは、端面の一辺の長さが36mmのものであった。
【0070】
次に、得られたハニカムセグメントが、互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で接合し、四角柱状のハニカム構造体を作製した。ハニカム構造体は、端面の縦方向及び横方向に、それぞれ4個ずつハニカムセグメントを接合材で接合して作製した。接合層の厚さは、1mmであった。
【0071】
作製したハニカム構造体は、セルの延びる方向の長さ(全長)が101.6mmであった。また、隔壁の厚さは249μmであった。また、セルピッチは、2.23mmであった。そして、「交点Rサイズ」は、0.01mmであった。
【0072】
また、ハニカム構造体の隔壁の気孔率は62%であった。気孔率は、水銀ポロシメーターによって測定した値である。
【0073】
次に、得られたハニカム構造体について、以下に示す方法で、「浄化性能」、[圧力損失]、及び[耐熱衝撃性]の評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
[浄化性能]
作製したハニカム構造体の浄化性能は、以下のようにして評価を行った。まず、作製したハニカム構造体に、NOを含む試験用ガス(NOとNOの比率が1:1)を流す。その後、このハニカム構造体から排出された排ガスのNO量をガス分析計で分析した。ここで、ハニカム構造体に流入させる試験用ガスの温度200℃とする。なお、ハニカム構造体及び試験用ガスは、ヒーターにより温度調整することができる。ヒーターは、赤外線イメージ炉を用いた。試験用ガスは、窒素に、二酸化炭素5体積%、酸素14体積%、一酸化窒素175ppm(体積基準)、二酸化窒素175ppm(体積基準)、アンモニア350ppm(体積基準)及び水10体積%が混合されたガスを用いた。この試験用ガスは、水と、その他のガスを混合した混合ガスとを別々に準備しておいた。そして、試験を行う際に、配管中においてこれらを混合させて試験用ガスを得た。ガス分析計は、「HORIBA社製、MEXA9100EGR」を用いた。また、試験用ガスがハニカム触媒体に流入するときの空間速度は、50000(時間−1)とした。
【0075】
その後、以下の基準にて評価を行った。測定値が、NOx浄化性能が同じ開口率の四角セル品と比べて10%以上向上しているときを「A」とする。なお、「四角セル品」とは、セルの延びる方向に直交する断面におけるセルの形状が正方形であるハニカム構造体のことである。
【0076】
[圧力損失]
室温(25℃、1気圧)条件下において1N・m/分の流量で、空気をハニカム構造体に流通させた。この状態で、流入端面側の圧力と流出端面側の圧力との差を測定した。この圧力の差を圧力損失(kPa)として算出した。算出した圧力損失に基づいて圧力損失比を算出し、この圧力損失比について評価を行った。圧力損失の評価基準は、圧力損失比が1.00以下である場合は「A」とする。圧力損失比が1.50以下である場合は「B」とする。なお、「圧力損失比」は、比較例1のハニカム構造体の圧力損失を「1.00」とした場合におけるハニカム構造体の圧力損失の比の値である。「B」評価以上であれば、排ガスを浄化するフィルタとして使用し得る。
【0077】
[耐熱衝撃性]
(電気炉スポーリング性(ESP)の評価)
室温より所定温度高い温度(400℃)に保った電気炉に室温のハニカム構造体を入れて20分間保持した。その後、電気炉から、耐火レンガ上へハニカム構造体を取り出した。そして、15分間以上自然放置して室温になるまでハニカム構造体を冷却した。その後、ハニカム構造体の外観を観察しつつ、金属棒でハニカム構造体の外周部を軽く叩くことにより耐熱衝撃性を評価した。
【0078】
ハニカム構造体にクラックが観察されず、かつ打音が鈍い音でなく、金属音であれば合格とし、電気炉内の温度を50℃ずつ順次上げていく毎に同様の検査を600℃になるまで繰り返した。
【0079】
このうち、500℃になっても外観及び打音に異常が確認されなかったものを合格(合格品)「B」とする。更に、合格品のうち、600℃になっても外観及び打音に異常が確認されなかったものを、より優れたもの「A」とする。
【0080】
【表1】
【0081】
表1中、「交点Rサイズ」は、頂点が曲線状に面取りされた三角形のセルの頂点の曲率半径を示す。なお、各頂点において曲率半径が異なる場合、最も大きな曲率半径を採用する。
【0082】
参考例2〜8、比較例1)
表1に示すように変更したこと以外は、参考例1と同様にして、参考例2〜8、比較例1の各ハニカム構造体を作製した。そして、作製した各ハニカム構造体について、参考例1と同様にして「浄化性能」、[圧力損失]、及び[耐熱衝撃性]の評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
表1から、参考例1〜8のハニカム構造体は、比較例1のハニカム構造体(セルの断面形状が四角のもの)に比べて、高い浄化性能を有し、圧力損失が従来のものと同程度であることが分かる。また、参考例1〜8のハニカム構造体は、耐熱衝撃性が良好であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のハニカム構造体は、自動車等から排出される排ガスを浄化するフィルタとして採用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1:隔壁、2,40:セル、2a:流入セル、2b:流出セル、8:流入側目封止部、9:流出側目封止部、10:ハニカム構造部、11:流入端面、12:流出端面、17:接合層、20:外周壁、25:交差部、50:ハニカムセグメント、100,101,102:ハニカム構造体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6