(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記研削工程において、前記一対のフランジ部の対向面の外縁部間の間隔よりも狭い幅で、前記ウェブ部を研削加工することを特徴とする請求項1又は2記載の磁性体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
最初に、
図1〜
図3を参照しながら本発明の実施例1を説明する。本実施例は、本発明のドラムコアの基本構造とその製造方法を示すものである。
図1は、本実施例のドラムコアの製造方法を示す図である。
図2は、前記ドラムコアの形に研削する前の成形体を示す図であり、(A)は平面図,(B)は前記(A)を矢印FA方向から見た側面図,(C)は前記(A)を矢印FB方向から見た側面図である。
図3は、本実施例と従来の製造方法によって形成されたドラムコアの軸形状を示す斜視図である。本発明によれば、磁性材料の加圧形成により、対向する一対のフランジ部と、該一対のフランジ部をつなぐウェブ部からなるH型鋼に相当する成形体を形成する。なお、前記「H型鋼に相当する」という表記は、必ずしも鋼材からなることを意味するものではなく、一般に建材等で用いられるH型鋼から、前記成形体の形状を想起しやすくするために用いている。すなわち、H型鋼に相当する成形体とは、H型の方向から見たとき、一方のフランジ部から他方のフランジ部に厚み方向の寸法を持ち、厚み方向と垂直方向の幅方向の寸法を持ち、H型の溝のある側面から見たとき、厚み方向と垂直方向の長さ方向の寸法を持つものである。その後、前記成形体を回転させながら前記ウェブ部を研削して、軸部の両端に一対の鍔部を有するドラム型の研削体を形成し、得られた研削体を熱処理してドラム型の磁性体、すなわち、ドラムコアを得るものである。
【0018】
図1(E)に示すように、本実施例のドラムコア40は、被膜付き巻線42が巻回される軸部36の両端に、対向する一対の鍔部32,34が設けられた構成となっている。前記鍔部32,34は、図示の例では、幅Wが1.6mm,長さLが2.0mmの長方形である。また、前記軸部36の軸と直交する断面は、本実施例では、
図3(A)に示すように、一対の直線部38A,38Bと、これら直線部38A,38Bの端部同士をつなぐ一対の弧状部38C,38Dからなるオーバル型となっている。オーバル型とは、2つの平行な直線の両端をそれぞれ弧によってつないだ形状であり、軸断面の外周が小判型のように連続的な線で形成されている。図示の例では、軸部36の短辺W1が0.8mm,長辺L1が1.0mmとなっており、前記鍔部32,34の幅Wと長さLの比と、前記軸部36の短辺W1と長辺L1の比率が同じである。このように、鍔部32,34の外形に合わせて軸部36の断面寸法を設計することにより、鍔部の外形形状にかかわらず、
図3(B)に示す断面形状が円形の軸部36´の従来のドラムコア30´よりも、軸断面積が従来比で約30%アップし、巻線時の導線のテンションの変化を抑制することができるため、安定した巻線が可能となる。
【0019】
上述した形状の軸部36は、前記円弧状部38C,38Dを研削加工により形成することで、前記鍔部32,34の外形寸法に合わせた寸法調整ができる。以下、具体的に、ドラムコア40の製造方法を説明する。まず、準備工程において、磁性粒子をバインダーと混合し、成形材料を得ておく。次に、
図1(A)に示すように、凸型10Aと凹型10BからなるH型の金型10を用いて、前記磁性材料を加圧成形し、
図1(B)に示すH型の成形体16を形成する。該成形体16は、一対の略長方形のフランジ部18,20と、これらフランジ部18,20をつなぐウェブ部24を備えている。前紀フランジ部18,20は、
図2(A)に示すように、それぞれのフランジ部18,20の外側の主面18A,20Aと、それぞれの前記主面18A,20Aと接するそれぞれのフランジ部18,20の外縁部18B,20Bと、それぞれの前記外縁部18B,20Bと前記ウェブ部16とに接するそれぞれのフランジ部18,20の内面18C,20Cを持つ。
【0020】
前記成形体16を、
図1(A)に示す加圧方向F1から見たときの平面図が
図2(A)に示されており、加圧面16A,16BはH型面となっている。また、前記
図2(A)を矢印FA方向から見た側面が
図2(B)であり、フランジ部18,20の外側の主面全体がフラットな面となっている。
図2(B)に示すフランジ部18,20の主面の外形は、対向する一対の長辺と対向する一対の短辺を有する長方形となっている。または、フランジ部18,20の主面の外形は、例えば面取りを施した形状などもあり、このような場合、フランジ部18,20の主面の長手方向が加圧方向になる。更に、
図2(A)を矢印FB方向から見た側面が
図2(C)であり、中央に溝22を有する面となっている。前記加圧面16A,16Bは、面全体がフラットであることが望ましいことから凹凸がある場合であっても、成形体18の全長に対して15%以内にとどめるものとする。例えば、上述したように、フランジ部18,20の長さLが2.0mmであれば、長さ方向の凹凸の寸法は、加圧面16A、16Bにおいて、それぞれが0.15mm、または一方が0.1mm、もう一方が0.2mmと、最大でも0.2mmの大きさにとどめることで、金型の応力集中や、成形体の均一性に影響することがない。ウェブ部16の長さとして、1.7mmまで良いことになる。
【0021】
次に、前記成形体16に熱をかけて、硬化体を形成する。ここでの熱処理は、例えば、150℃で行い、前記磁性粒子に混合したバインダーを硬化させるものとする。次に、前記硬化体を研削加工し、研削体30を形成する。研削加工は、
図1(C)に示すように、前記フランジ部18,20の主面18A,20Aの中央部を通る軸を回転軸Xとして前記硬化体を回転させ、回転方向と平行な方向から研削刃28をあてて行う。前記研削刃28は、前記フランジ部18,20の外縁部の間隔DAよりもわずかに幅DBが狭いものを使用し、前記溝22からはみ出ない位置にセットして行うものとする。なお、実際の切削加工では、寸法精度の誤差により研削加工で残った部分が段差として残ることがある。このため、以降の実施例において、この前記段差の説明、及び更に理想的に研削を行う方法についての説明を行う。なお、前記研削刃28や前記金型10のそれぞれの角には、R0.05mm程度のR付けがなされているものを用いても良く、微小のチッピングや欠けの防止になる。
【0022】
前記研削工程により、
図1(D)に示す研削体30が得られる。研削体30は、前記ウェブ部24の研削により形成される軸部36と、その両端に対向配置された一対の鍔部32,34を備えている。前記軸部36は、軸方向断面がオーバル型であり、前記成形工程により形成された平面状の成形面36A,36Bと、前記研削工程により形成された曲面状の研削面36C,36Dを有する。前記鍔部32,34は、前記フランジ部18,20に対応する。次に、前記研削体30を熱処理して磁性体を形成する。例えば、高い絶縁を求める場合は、磁性材料としてNi−Znフェライト、電流特性を求める場合は、Mn−Znフェライト、更に電流特性を高くする場合は、金属材料を用いる。それぞれの磁性材料は、磁性材料に応じた好適な温度で熱処理が行なわれ、熱処理による収縮を考慮することで、成形体の寸法が決められる。以上のようにして得られたドラムコア40に、
図1(E)に示すように、鍔部34の外側の主面から側面にかけて端子電極44A,44Bを形成し、軸部36に被膜付き導線42を巻回し、被膜付き導線42の両端を端子電極44A,44Bに接続し、巻回した上から磁性粉末などを含む樹脂により外装部46を形成して、コイル部品50が形成される。
【0023】
このように、実施例1によれば、磁性材料を加圧成形し、対向する一対のフランジ部18,20と、該一対のフランジ部18,20とつなぐウェブ部24から成る断面H型の成形体16を形成する。次いで、前記フランジ部18,20の主面18A,20Aの中央部を通る軸を回転軸Xとして前記成形体16の硬化体を回転させて前記ウェブ部24を研削加工し、軸部36の両端に対向する一対の鍔部32,34を有するドラム型の研削体30を形成する。前記鍔部32,34は前記回転軸と直交する外側の主面を持ち、回転軸と直交する方向の前記軸部36の断面の外周は、対向する一対の直線部と、該一対の直線部の端部同士をつなぐ一対の弧状部から形成される。このようにして得られた研削体30は、前記一対の直線部は、前記鍔部32,34の主面の長手方向と平行となる。そして、前記研削体30を熱処理して磁性体であるドラムコア40を得ることとしたので、次のような効果がある。
【0024】
(1)単純なH型形状の金型10を用いるため、加圧による金型10への応力集中を小さくでき、高い圧力を掛けることができる。これにより、磁性材料の充填率を高くできる。このためには、前記加圧面16A,16Bは、面全体がフラットであるか、凹凸を付ける場合でも、成形体16の全長に対して15%以内にとどめることで、この効果を得ることができる。この方法によれば、例えば、鍔厚み0.2mmに相当する厚みの場合でも、金型を破損することなく成形体を得ることができる。
(2)磁性材料を高密度化できるため、鍔部32,34の強度を確保できる。
(3)加圧成形時の密度の均一性により、焼成時の変形を抑制することができるため、ドラムコア40同士の噛み込みを改善できる。
(4)軸部36の軸方向と直交する断面がオーバル型であるため、巻回時の被膜付き導線42のテンションの変化を抑えることができ、安定した巻線ができる。
(5)断面オーバル型の軸部36の円弧状部38C,38Dを、研削加工により形成することで、前記鍔部32,34の寸法調整が可能となる。
(6)前記鍔部32,34の主面の長手方向と前記軸部36の断面の外周の直線部が平行となる位置関係とすることで、前紀鍔部32,34の長手方向の長さに応じて、研削する量を調整し、必要な軸断面積を得ることができる。
(7)更に、チップタイプの部品の典型である、長さの異なる辺を持つ部品に用いられる、フランジ部18,20の幅より長さが大きいものでは、軸断面積をより有効に形成できる。これは、軸断面の外周の直線部の長さをフランジ部18,20の長さと幅との大きさの差に相当する長さとすることで、巻回するエリアの無駄を少なくできる。
【0025】
(8)本実施例の方法によれば、研削加工の回転軸Xの位置ずれの影響を受けにくい。
図13(A)及び(B)は、回転軸の位置の例を示す図であり、前記
図1(C)及び(D)の工程に相当する側面図である。なお、以下の説明中の「フランジ部」は、研削加工後の「鍔部」に相当する。
図13(A)は、フランジ部20の短辺方向に回転軸がずれた例を示す図である。フランジ部20の中心Cを回転軸として研削した場合の軸部36が破線で示されており、前記中心Cからフランジ部20の短辺方向に、該短辺の長さの10%ずれた位置CAを回転中心として研削した場合の軸部36´が実線で示されている。この場合であっても、前記軸部36´の軸断面積が減少してしまうことがなく、特性へ影響は生じない。また、被膜付き導線42を巻回するときの影響も生じない。直線部38A,38Bは、フランジ部20の長辺の40〜70%の長さで、それぞれ同じ長さであることが望ましい。しかし、上記のように該短辺方向に回転軸がずれた場合、直線部38A,38Bの長さが異なってしまっても、直線部38A,38Bが存在するようなっていれば、上記の効果である巻回するエリアを同じように確保でき、巻回する被膜付き導線が鍔部32,34の外周面より外側にはみ出してしまうことがない。更に、直線部38A,38Bの合計の長さが、フランジ部の長辺の60〜140%であれば良い。これは、この後に外装部46を形成する場合でも、外装部46のはみ出し等を考慮する必要なく、必要量の外装部46を安定的に形成できる。
【0026】
また、
図13(B)は、フランジ部20の長辺方向に回転軸がずれた例を示す図である。同図において、フランジ部20の中心Cを回転軸として研削した場合の軸部36が破線で示されており、前記中心Cからフランジ部20の長辺方向に、該長辺の長さの10%ずれた位置CBを回転中心として研削したときの軸部36´が実線で示されている。このように、フランジ部20の長辺方向に回転軸がすれた場合も、軸断面積は減少せず、特性への影響は生じない。被膜付き導線42を巻回するときの影響も生じない。
【実施例2】
【0027】
次に、
図4〜
図7を参照しながら本発明の実施例2を説明する。なお、上述した実施例1と同一ないし対応する構成要素には同一の符号を用いることとする(以下の実施例についても同様)。本実施例は、上述した実施例1の製造方法と同様に、磁性材料を金型を用いて加圧することでH型鋼に相当する成形体を形成し、該成形体のウェブ部を研削加工することで、ドラムコアの軸部を形成するものであるが、より寸法精度を考慮した方法となっている。
【0028】
図5には、フランジ部間の間隔DAよりも、刃の幅DBが広いものを用いて研削加工した場合の研削体60Bが示されている。
図5(A)は研削体60Bの側面図,
図5(B)は外観斜視図である。この場合、
図5(A)及び(B)に示すように、軸部36の周囲に円形の段部66が残ってしまう。このため、ここでは、鍔部32,34から厚み方向に見た段部66の大きさは、この後に用いられる被膜付き導線の太さの半分以下とした。これにより、巻回時に該段部66に導線が乗り上げてしまうことを防止できる。
【0029】
更に、上記とは逆の例として、
図4は、一対のフランジ部の外縁部の間隔DAよりも、研削刃の幅DBが狭いものを用いて研削加工した場合の研削体60Aが示されている。
図4(A)は成形体の加圧方向から見た平面図,
図4(B)は前記(A)を矢印FA方向から見た側面図,
図4(C)は前記(A)を矢印FB方向から見た側面図,
図4(D)は斜視図である。これら
図4(A)〜(D)に示すように、研削刃28の幅DBがフランジ部間の間隔DAよりも狭い場合には、研削加工時に、研削刃28がフランジ部18,20にあたることはないが、軸部36の上下に段部62が残る。このため、ここでは、鍔部32,34から厚み方向に見た段部62の大きさは、この後に用いられる被膜付き導線の太さの半分以下とした。これにより、巻回時に該段部62に導線が乗り上げてしまうことを防止できる。
【0030】
また、一対のフランジ部の外縁部の間隔DAよりも、研削刃の幅DBが狭いものを用いて研削加工した場合には、上述した実施例1の効果に加え、次のような効果がある。すなわち、フランジ部18,20に研削刃28が触れないことで、
(1)研削時の負荷がフランジ部18,20にかかわらず、薄い鍔部32,34を有する磁性体であるドラムコア40を得ることができる。
(2)ほぼフランジ部18,20の寸法精度のまま、鍔部32,34の厚みの寸法精度とすることができる。
(3)鍔部32,34の内面は平滑であり、チッピング,欠け等が少なく、被膜付き導線42のダメージを抑制できる。また、被膜付き導線42を鍔部32,34の側面と接合する場合は、端子電極44A,44Bとの接続安定性を得られる。従って、被膜付き導線42の太さは制限されることなく、細い導線でも断線せず、太い導線でも接合可能となる。
【0031】
上記を踏まえ、更に寸法精度から前記段差62,66をなくすことは容易ではないため、多少の寸法誤差があっても、被膜付き導線42の断線や巻き乱れが生じない方法を以下に示す。具体的には、本実施例2以下では、加圧成形により形成される成形体の一対のフランジ部の内側にテーパ面を設け、該テーパ面に研削刃28の両端があたるように研削加工することで、段部の角が面取りされた状態を作り出し、上述した断線や巻き乱れを防止することとした。
【0032】
図6は、実施例2のドラムコア形成用の成形体を示す図であり、(A)は平面図,(B)は前記(A)を矢印FA方向から見た側面図,(C)は前記(A)を矢印FB方向から見た側面図である。
図7は、研削体を示す図であり、(A)は平面図,(B)は前記(A)を矢印FA方向から見た側面図,(C)は前記(A)を矢印FB方向から見た側面図,(D)は外観斜視図である。本実施例では、
図6(A)〜(C)に示すように、加圧成形後の成形体70の一対のフランジ部72,74の対向面とウェブ部76が交差する部分に、テーパ面78を設けた形状となっている。
【0033】
具体的には、フランジ部72の内面72Aとウェブ部76の側面76Aが交わる部分と、前記フランジ部72の内面72Bと前記ウェブ部76の側面76Bが交わる部分と、フランジ部74の内面74Aとウェブ部76の側面76Aが交わる部分と、フランジ部74の内面74Bとウェブ部76の側面76Bが交わる部分の4箇所に、
図6(B)に矢印で示す加圧方向に沿ってテーパ面78を設ける。前記フランジ部72,74の寸法を前記実施例1と同じとした場合、前記テーパ面78を形成する範囲は、
図6(A)及び(C)に示すように、前記フランジ部72,74の厚み方向の幅T1が0.05〜0.1mm程度となるようにする。そして、
図6(C)に示すように、研削刃80の両端がいずれも前記テーパ面78に当るようにして位置決めして研削加工を行う。つまり、前記テーパ面78の一部を残すように研削加工を行う。なお、ここでは、テーパ面78の幅を具体的な数値で示したが、巻線スペースを確保するために軸部の長さの1/6以下で、被膜付き導線42の断線等を考慮して被膜付き導線42の太さの1/4以上とするとよい。また、被膜付き導線42として平角線を用いた場合は、被膜付き導線42の角の曲率以上とするなど、必要に応じて適宜設定する。
【0034】
以上のように位置決めして研削加工すると、軸部96の両側に一対の鍔部92,94を有する研削体90が得られる。前記軸部96の上下には段部98が残るが、該段部98と鍔部92,94の内面の間には前記テーパ面78が残っており、この部分が面取りとして機能するため、被膜付き導線42を巻回するときに乗り上げることがなく、巻き乱れや断線を防止することができる。また、前記テーパ78にある程度の幅をもたせており、この幅の範囲内に研削刃80の両端があたればよいため、多少の位置決めのずれや寸法精度の誤差があっても同様の効果が得られる。他の基本的な作用・効果は、上述した実施例1と同様である。
【実施例3】
【0035】
次に、
図8及び
図9を参照しながら本発明の実施例3を説明する。本実施例3は、上述した実施例2と同様に、加圧成形により形成される成形体にテーパ面を設け、該テーパ面に研削刃の両端があたるように研削加工することで、段部の角が面取りされた状態を作り出し、上述した断線や巻き乱れを防止するものである。
【0036】
図8は、実施例3のドラムコア形成用の成形体を示す図であり、(A)は平面図,(B)は前記(A)を矢印FA方向から見た側面図,(C)は前記(A)を矢印FB方向から見た側面図である。
図9は、研削体を示す図であり、(A)は平面図,(B)は前記(A)を矢印FA方向から見た側面図,(C)は前記(A)を矢印FB方向から見た側面図,(D)は外観斜視図である。本実施例では、
図8(A)〜(C)に示すように、加圧成形後の成形体150の一対のフランジ部152,154の対向面に、ウェブ部156側から前記フランジ部152,154の外縁部に向けて、該フランジ部152,154の厚みが薄くなるテーパ面が設けられている。
【0037】
具体的には、フランジ部152の内面152Aが、ウェブ部156の側面156Aからフランジ部152の外縁部に向けて該フランジ部152の厚みが薄くなるように傾斜したテーパ面となっている。同様に、フランジ部内面152Bが、ウェブ部側面156Bからフランジ部152の外縁部に向けて該フランジ部152の厚みが薄くなるように傾斜したテーパ面となっている。他方のフランジ部154側についても同様であり、フランジ部154の内面154Aが、ウェブ部側面156Aからフランジ部154の外縁部に向けて該フランジ部154の厚みが薄くなるように傾斜したテーパ面となっており、フランジ部内面154Bが、ウェブ部側面156Bからフランジ部154の外縁部に向けて該フランジ部154の厚みが薄くなるように傾斜したテーパ面となっている。
【0038】
これらテーパ面(すなわち、フランジ部内面152A,152B,154A,154B)は、前記フランジ部152,154の寸法を前記実施例1と同じとした場合、
図8(A)及び(C)に示すように、前記フランジ部152,154の厚み方向の幅T2が0.05〜0.1mm程度となるようにする。そして、
図8(C)に示すように、研削刃80の両端がいずれも前記テーパ面に当るように位置決めして研削加工を行う。なお、ここでは、テーパ面の幅を具体的な数値で示したが、鍔部の強度を確保するために鍔の厚みの1/3以下とし、被膜付き導線42の断線等を考慮して被膜付き導線42の太さの1/4以上とするとよい。また、被膜付き導線42として平角線を用いる場合は、被膜付き導線42の角の曲率以上とするなど、必要に応じて適宜設定する。
【0039】
以上のように位置決めして研削加工すると、軸部166の両側に一対の鍔部162,164を有する研削体160が得られるとともに、前記軸部166の周囲に円形の段部168が残るが、該段部168と鍔部162,164の内面はテーパ面170でつながっているため、軸部166に被膜付き導線42を巻回するときも、前記段部168に被膜付き導線42が乗り上げることがなく、巻き乱れや断線を防止することができる。また、鍔部162,164の内面にテーパ面152A,152B,154A,154Bが残っているため、被膜付き導線42が鍔部162,164の外縁部にひっかかりにくくなる。更に、成形体150のフランジ部152,154の内面152A,152B,154A,154B全体をテーパ面としているため、一方のフランジ部側にずれて研削加工や研削加工の幅の寸法精度の誤差があっても同様の効果が得られる。他の基本的な作用・効果は、上述した実施例1と同様である。
【実施例4】
【0040】
次に、
図10及び
図11を参照しながら本発明の実施例4を説明する。本実施例4は、上述した実施例2と同様に、加圧成形により形成される成形体にテーパ面を設け、該テーパ面に研削刃の両端があたるように研削加工することで、段部の角が面取りされた状態を作り出し、上述した断線や巻き乱れを防止するものである。
【0041】
図10は、実施例4のドラムコア形成用の成形体を示す図であり、(A)は平面図,(B)は前記(A)を矢印FA方向から見た側面図,(C)は前記(A)を矢印FB方向から見た側面図である。
図11は、研削体を示す図であり、(A)は平面図,(B)は前記(A)を矢印FA方向から見た側面図,(C)は前記(A)を矢印FB方向から見た側面図,(D)は外観斜視図である。本実施例では、
図10(A)〜(C)に示すように、加圧成形後の成形体200の一対のフランジ部202,204の外縁部203,205と、ウェブ部206の端面206A,206Bが交差する4つの部分に、前記ウェブ部206側が凹むテーパ面208が設けられている。
【0042】
具体的には、ウェブ部206の一方の端面206Aに、該端面206Aの中央側が凹むように、フランジ部202,204の外縁部203,205と交差する部分それぞれにテーパ面208を設ける。同様に、ウェブ部206の他方の端面206Bに、該端面206Bの中央側が凹むように、フランジ部202,204の外縁部203,205と交差する部分それぞれにテーパ面208を設ける。合計で4箇所にテーパ面208を設ける。
【0043】
これらテーパ面208は、前記フランジ部202,204の寸法を前記実施例1と同じとした場合、
図10(A)及び(C)に示すように、前記フランジ部202,204の厚み方向の幅T3が0.05〜0.1mm程度となるようにする。そして、
図10(C)に示すように、研削刃80の両端がいずれも前記テーパ面208に当たるようにして研削加工を行う。なお、ここでは、テーパ面208の幅を具体的な数値で示したが、鍔部の強度を確保するため該鍔部の厚みの1/3以下で、被膜付き導線42の断線等を考慮して被膜付き導線42の太さの1/4以上とするとよい。また、被膜付き導線42として平角線を用いた場合は、被膜付き導線の角の曲率以上とするなど、必要に応じて適宜設定する。
【0044】
以上のように位置決めして研削加工すると、軸部216の両側に一対の鍔部212,214を有する研削体210が得られる。前記軸部216の上下には段部218が残るが、該段部218と鍔部212,214の間には、前記テーパ面208が残っており、この部分が面取りとして機能するため、被膜付き導線42を巻回するときに乗り上げることがなく、巻き乱れや断線を防止することができる。また、前記テーパ面208にある程度の幅をもたせており、この幅の範囲内に研削刃80の両端があたればよいため、多少位置決めがずれても、寸法精度に誤差が生じても同様の効果が得られる。他の基本的な作用・効果は、上述した実施例1と同様である。
【実施例5】
【0045】
次に、
図12を参照しながら、本発明の実施例5を説明する。本実施例は、本発明のドラムコアを形成する材料と寸法の具体例を示すものである。
図12(A-1)は本実施例の成形体を加圧方向から見た平面図,
図12(A-2)は前記(A-1)を矢印FA方向から見た側面図である。
図12(B-1)及び(B-2)は、前記成形体を切削加工した切削体の平面図及び側面図である。これらの図に示すように、本実施例の成形体250は、前記実施例4とほぼ同様の構成となっており、対向する一対のフランジ部252,254をウェブ部256がつなぐH型形状となっている。また、研削体260は、一対の鍔部262,264を断面オーバル型の軸部266がつないだ形状となっている。以上の各部に対応する磁性体の寸法例を、以下の表1に示す。
【表1】
【0046】
なお、上記表1の寸法例は、合金粒子を用いた場合の磁性体の寸法である。合金粒子の場合は、成形体250と磁性体がほぼ同じ寸法となる。これは、熱処理しても収縮をほとんど生じないためである。これに対し、フェライト材料の場合は、それぞれ成形体250から16%程度収縮することを考慮して成形体250の寸法を設定することになる。
【0047】
磁性材料としては、例えば、Ni−Znフェライト、Mn−Znフェライトは、それぞれ酸化雰囲気1100℃、窒素雰囲気1150℃(範囲は1000〜1200℃)で焼成することで磁性体になる。また、成形時及び研削時の寸法は、上記表1の各数字に16%を上乗せしたものになる。収縮するため、成形時の充填率が重要であり、充填率のバラツキによっては、変形や微小クラックを生じるが、本発明では、H型の金型を用いて加圧成形した均一な成形体であるため、上記変形や微小クラックなどが生じない。また、合金磁性粒子としては、FeSiAlやFeSiCrなどがあり、酸化雰囲気750℃(範囲は600〜900℃)で焼成を行う。この熱処理により酸化膜が形成され、磁性体を得ることができる。収縮が生じないため、変形はなく、寸法の安定性はよいものとなる。なお、ここで示した材料,寸法は一例であり、他の公知の各種の材料を用いてもよいし、コイル部品の用途に応じて適宜寸法を変更してよい。
【0048】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した形状,寸法は一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。また、ドラムコアの軸部の断面形状も一例であり、前記実施例1ではオーバル型としたが、弧の部分は円弧である必要はなく、必要に応じて適宜曲率の異なる弧を組み合わせるなど変更してもよい。また、ドラムコアの鍔部34の外側の主面も、前記実施例1では長方形としたが、溝を付けたり面取りを施したりするなど、必要に応じて適宜変更してよい。
(2)前記実施例1や実施例5で示した寸法,材料も一例であり、コイル部品の用途等に応じて、同様の効果を奏する範囲内で適宜変更可能である。
(3)前記実施例2〜実施例4を組み合わせて、テーパ面を設ける場所を複数にしてもよい。
(4)前記実施例2〜実施例4で示したテーパ面の形成範囲も一例であり、同様の効果を奏する範囲内で適宜可能である。
(5)前記実施例で示した端子電極も一例であり、同様の効果を奏するように適宜設計変更可能である。
(6)本発明の製造方法で形成されるドラムコアは、例えば、巻線インダクタなどの巻線部品が好適な利用であるが、それに限定されるものではなく、トランス,コモンモードチョークコイルなどに広く適用可能である。