【文献】
Otsuki, A., et al.,Histone Deacetylase Inhibitors Augment Antitumer Efficacy of Herpes-based Oncolytic Viruses,Molecular Therapy,2008年,16(9),1546-1555
【文献】
Erlandsson, AC, et al.,Herpes simplex virus 1 infection and glucocorticoid treatment regulate viral yield, glucocorticoid receptor and NF-kB levels,Journal of Endocrinology,2002年,175,165-176
【文献】
Neyts, J., et al.,Poly(hydroxy)carboxylates as selective inhibitors of cytomegalovirus and herpes simplex virus replication,Antiviral Chemistry & Chemotherapy,1992年,3(4),215-222
【文献】
MYSKIW CHAD,JOURNAL OF VIROLOGY,2007年 3月,V81 N6,P3027-3032
【文献】
Kodukula, P., et al.,Macrophage Control of Herpes Simplex Virus Type 1 Replication in the Peripheral Nervous System,The Journal of Immunology,1999年,162,2895-2905
【文献】
Chen, C., et al.,Inhibition of cytokine-induced JAK-STAT signalling pathways by an endonuclease inhibitor aurintricarboxylic acid,British Journal of Pharmacology,2002年,137,1011-1020
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アウリントリカルボン酸と血清とを含む細胞培養物中でヘルペスウイルスに感染した細胞を培養することを含む、ヘルペスウイルスを産生するための方法であって、アウリントリカルボン酸は、5〜75μMの濃度で存在し、前記ヘルペスウイルスは、単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)である、前記方法。
細胞培養物中で産生されるヘルペスウイルスの収量を増加させるためのアウリントリカルボン酸の使用であって、前記細胞培養物は、血清をさらに含み、前記ヘルペスウイルスは、293またはVero細胞中で培養され、前記ヘルペスウイルスは、単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)である、前記使用。
【背景技術】
【0002】
ヘルペスウイルスは自然界に広く普及しており、多くの動物種に見出される。単純ヘルペスウイルス−1(HSV−1)および単純ヘルペスウイルス−2(HSV−2)、帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)ならびにHHV6およびHHV7のような他のヒトヘルペスウイルスのような、ヒトに由来するいくつかを含む、少なくとも100種のヘルペスウイルスが特性評価されている。これらのウイルスは、皮膚感染、陰部ヘルペス、ウイルス性脳炎などのような様々なヒト疾患の原因となる。
【0003】
HSV−1感染は、サイトカインおよびインターフェロン(INF)などの前炎症活性および殺菌活性を有するタンパク質の発現をもたらす細胞内シグナリング経路を誘導することにより、宿主防御および自然免疫系を活性化する(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。INFシグナリングは、ウイルスクリアランスのための最も重要な細胞防御機構の1つである(非特許文献4、非特許文献5)。
【0004】
研究者は、特に、ワクシニアウイルス、水疱性口内炎ウイルス、および日本脳炎ウイルスのようないくつかのウイルスに対する一酸化窒素(NO)の抗ウイルス活性を報告している(非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9)。NOは、フリーラジカル気体分子であり、宿主防御のメディエータである(非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13、非特許文献14)。HSV−1は、宿主の抗ウイルス応答を誘導するのみならず回避もすることが知られている(非特許文献15)。HSV感染は、大量のNOを産生するNOSの誘導性アイソフォームをコードする遺伝子である、誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)の発現を誘導することができる。
【0005】
ヘルペスウイルスおよびそれに由来する組換えタンパク質は、いくつかのワクチンの製造において用いられている。アデノウイルスの他に、ヘルペスウイルスは組換えアデノ随伴ウイルスビリオンの産生のための完全なヘルパーウイルス機能を提供することが示されている(非特許文献16、非特許文献17)。AAVの複製およびパッケージングにとって必要とされるHSV−1遺伝子の最小セットは、初期遺伝子UL5、UL8、UL52およびUL29と同定されている(非特許文献18)。これらの遺伝子は、HSV−1コア複製機構の要素−ヘリカーゼ、プライマーゼおよびプライマーゼアクセサリータンパク質(U
L5、U
L8およびU
L52)ならびに一本鎖DNA結合タンパク質(U
L29)をコードする。
【0006】
組換えAAV(rAAV)ベクターは、in vivoで長期の高レベル形質導入を達成するために上手く用いられてきた。上記進歩にも拘らず、遺伝子療法のための大量の臨床等級高力価rAAVビリオンの産生は、同時トランスフェクションプロトコールの拡張性における制限のため、困難であり続けている。このプロセスは、3つの要素の効率的な細胞送達を必要とする:(1)AAV逆位末端反復(ITR)により隣接する対象の遺伝子を含むベクター;(2)AAV repおよびcap遺伝子を含むベクター;ならびに(3)アデノウイルスもしくは単純ヘルペスウイルスのようなヘルパーウイルスを用いるか、または無ウイルスヘルパープラスミドを用いて提供される遺伝子(非特許文献19を参照されたい)。かくして、rHSVに基づくrAAV製造プロトコールにおいて、rAAVの収量は、ヘルパーrHSVベクターの最大力価により制限される。
【0007】
d27.1−rcと呼ばれる、複製欠損HSV−1ベクターは、AAV−2 repおよびcap遺伝子を発現し(非特許文献20)、それは元のd27−1ウイルスから操作されており(非特許文献21)、HSV−1複製にとって必要とされるタンパク質であるICP27を産生しない。このベクターは複製欠損であるが、rAAVの複製およびパッケージングに必要とされるHSV−1初期遺伝子を発現する(非特許文献20)。
【0008】
典型的には、rAAV鋳型を担持する一方のベクターと、AAV repおよびcap領域を発現する他方のベクターとを、rAAVビリオンを産生させるため、293細胞中に同時感染させる。両方のHSV−1ベクターは複製欠損であり、したがって、ICP27コンプリメント細胞系であるV27中でのみ増殖することができる(非特許文献21)。HSVに基づくAAV産生プロトコールにおいては、293細胞は12のより高い感染多重度(MOI)のHSV−1に感染させる必要がある。V27細胞中のd27−1由来ベクターの収量は、典型的には約1X10
7プラーク形成単位(PFU)/mlであるため、これは制限である。
【0009】
HSV−1力価をさらに増加させるために、いくつかの方法および試薬が精査されている(例えば、非特許文献22、非特許文献23、非特許文献24、非特許文献25)。デキサメタゾンおよびバルプロ酸は両方とも、いくつかのインターフェロン(IFN)応答性抗ウイルス遺伝子により示される宿主防御機構を阻害し、ウイルス遺伝子の転写レベルを増大させ、かくして、HSV−1のウイルス増殖および収量を改善した(非特許文献24、非特許文献25)。
【0010】
上記知識にも拘らず、培養物中でのウイルス産生を改善するために宿主防御を阻害するより多くの方法が必要である。上記で説明された通り、研究者は、特に、ワクシニアウイルス、水疱性口内炎ウイルス、および日本脳炎ウイルスのようないくつかのウイルスに対する一酸化窒素(NO)の抗ウイルス活性を報告している(非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9)。NOは、フリーラジカル気体分子であり、宿主防御のメディエータである(非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13、非特許文献14)。上記のように、HSV感染は、大量のNOを産生するNOSの誘導性アイソフォームをコードする遺伝子である、iNOSの発現を誘導することができる。
【0011】
iNOS阻害剤であるN−メチル−L−アルギニン(L−NMA)の存在は、これらのウイルスの3種全部についてウイルス複製の阻害を逆転させた(非特許文献11)。iNOS阻害剤の概説については、非特許文献26を参照されたい。別の化合物、アウリントリカルボン酸(ATA)は、iNOS発現の下方調節およびかくして、NO産生の減少による細菌リポ多糖により誘導される細胞死からマクロファージを保護することが示されている(非特許文献27)。ATAは、酸化ストレスにより誘導されるオリゴデンドロサイトにおける、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素(RNA依存性DNAポリメラーゼ)、アミノアシル−tRNA合成酵素、リボヌクレオチドリダクターゼ、リボヌクレアーゼヌクレアーゼなどのいくつかの酵素との相互作用、タンパク質合成阻害、アポトーシスの防止およびDNA断片化の遮断のような、多数の生物活性で認められたポリマーの異種混合物である(非特許文献28、非特許文献29、非特許文献30)。
【0012】
アウリントリカルボン酸(ATA)はまた、IFN媒介性転写活性化を防止することも報告されている(非特許文献31、非特許文献32)。ATAは、Raf/MEK/MAPK経路、IGF−1受容体およびタンパク質キナーゼCシグナリングのアクチベータとして知られる(非特許文献33、非特許文献34)。インターフェロンのようなサイトカインの抗ウイルス性抗微生物作用および抗増殖作用は、L−アルギニンのグアニジノ窒素から、大量のラジカル気体NOを産生する一酸化窒素合成酵素(NOS)のアイソフォームをコードする遺伝子であるiNOSの発現を誘導するその能力に起因し得る(非特許文献35、非特許文献36)。IFN−γによるマクロファージの処理は、エクトロメリアウイルス(EV)、ワクシニアウイルス(VV)およびHSV−1の複製を高度に制限することが示されている。
【0013】
一方で、ATAは、HIV、ヘルペスウイルスHHV−7、SARS−CoVおよびその他などのいくつかのウイルスに対する抗ウイルス剤としても知られる(非特許文献37、非特許文献38、非特許文献39、非特許文献40)。しかしながら、ATAは、HEK−293細胞中でアデノウイルス5型(Ad5)の複製を遮断しなかった(非特許文献41)。さらに、ATAは、293細胞中での対照アデノウイルスベクターの力価を予想外に増加させるが、同時に、ワクシニアウイルスに対する抗ウイルス効果を有することが報告されている(非特許文献42)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施は、別途指摘しない限り、当業界の技術の範囲内にある、化学、生化学、組換えDNA技術および免疫学の従来の方法を用いるものとする。そのような技術は、文献中で完全に説明されている。例えば、Fundamental Virology、第2版、vol.I & II(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe編);Handbook of Experimental Immunology、Vols.I〜IV(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell(編)、Blackwell Scientific Publications);T.E.Creighton、Proteins:Structures and Molecular Properties(W.H.Freeman and Company、1993);A.L.Lehninger、Biochemistry(Worth Publishers、Inc.、current addition); Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、1989);Methods In Enzymology(S.ColowickおよびN.Kaplan(編)、Academic Press、Inc.)を参照されたい。
【0027】
本明細書で引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、上掲にしても、下掲にしても、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0028】
1.定義
本発明を記載する際に、以下の用語が用いられ、以下に示されるように定義されることが意図される。
【0029】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる通り、単数形「a」、「an」および「the」は、本文が明確に別途指摘しない限り、複数の指示対象を含むことに留意すべきである。かくして、例えば、「ヘルペスウイルス(a herpesvirus)」に対する参照は、2つまたはそれ以上のそのようなウイルスの混合物などを含む。
【0030】
用語「組換えHSV」、「rHSV」および「rHSVベクター」とは、ウイルスゲノム中に組み入れられた異種遺伝子を含有する、単離された、遺伝的に改変された形態の単純ヘルペスウイルス(HSV)を指す。用語「rHSV/rc」または「rHSV/rcウイルス」または「rHSVヘルパー機能ベクター」とは、AAV repおよび/またはcap遺伝子がrHSVゲノム中に組み入れられたrHSVを意味する。用語「rHSV発現ウイルス」および「rHSV/AAV」は、AAVに由来する逆位末端反復(ITR)配列がrHSVゲノム中に組み入れられたrHSVを示す。
【0031】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指し、最小の長さの産物に限定されない。かくして、ペプチド、オリゴペプチド、ダイマー、マルチマーなどは、この定義内に含まれる。完全長タンパク質とその断片との両方がこの定義により包含される。この用語はまた、ポリペプチドの発現後の改変、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化なども含む。さらに、本発明の目的のために、「ポリペプチド」とは、タンパク質が所望の活性を維持する限り、天然配列に対する欠失、付加および置換(一般的には、天然で保存的である)のような改変を含むタンパク質を指す。これらの改変は、部位特異的突然変異誘発による意図的なものであってもよく、またはタンパク質を産生する宿主の突然変異もしくはPCR増幅に起因するエラーなどにより偶然のものであってもよい。用いられる発現系に応じて、ポリペプチドは、N末端メチオニンを含むか、または欠いてもよい。さらに、ポリペプチドは、一方が天然に存在する場合、天然シグナル配列を含むか、または含まなくてもよい。シグナル配列が通常は存在しない場合、タンパク質を異種配列と共に産生させることができる。
【0032】
「天然」ポリペプチドとは、天然に由来する対応する分子と同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。そのような天然配列を天然から単離するか、または組換えもしくは合成手段により産生することができる。用語「天然」配列は、天然に存在するトランケート型または分泌形態の特異的分子(例えば、細胞外ドメイン配列)、ポリペプチドの天然に存在するバリアント形態(例えば、選択的スプライシングされた形態)および天然に存在する対立遺伝子バリアントを特に包含する。
【0033】
「バリアント」とは、対応する完全長天然配列との少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する本明細書に定義される活性ポリペプチド、シグナルペプチドを欠くポリペプチド、シグナルペプチドを含むか、もしくは含まないポリペプチドの細胞外ドメイン、または本明細書に開示される完全長ポリペプチド配列の任意のその他の断片を意味する。そのようなポリペプチドバリアントは、例えば、完全長天然アミノ酸配列のNおよび/またはC末端に、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基が付加、または欠失されたポリペプチドを含む。通常、バリアントは、対応する完全長天然配列に対する少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは、少なくとも約81%のアミノ酸配列同一性、あるいは、少なくとも約82%のアミノ酸配列同一性、あるいは、少なくとも約83%のアミノ酸配列同一性、あるいは、少なくとも約84%のアミノ酸配列同一性、あるいは、少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性、あるいは、少なくとも約86%のアミノ酸配列同一性、あるいは、少なくとも約87%のアミノ酸配列同一性、あるいは、少なくとも約88%のアミノ酸配列同一性、あるいは、少なくとも約89%のアミノ酸配列同一性、あるいは、少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、あるいは、少なくとも約91%のアミノ酸配列同一性、あるいは、少なくとも約92%のアミノ酸配列同一性、あるいは、少なくとも約93%のアミノ酸配列同一性、あるいは、少なくとも約94%のアミノ酸配列同一性、あるいは、少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性、あるいは、少なくとも約96%のアミノ酸配列同一性、あるいは、少なくとも約97%のアミノ酸配列同一性、あるいは、少なくとも約98%のアミノ酸配列同一性、およびあるいは、少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有する。通常、バリアントポリペプチドは、少なくとも約10アミノ酸長、例えば、少なくとも約20アミノ酸長、例えば、少なくとも約30アミノ酸長、あるいは、少なくとも約40アミノ酸長、あるいは、少なくとも約50アミノ酸長、あるいは、少なくとも約60アミノ酸長、あるいは、少なくとも約70アミノ酸長、あるいは、少なくとも約80アミノ酸長、あるいは、少なくとも約90アミノ酸長、あるいは、少なくとも約100アミノ酸長、あるいは、少なくとも約150アミノ酸長、あるいは、少なくとも約200アミノ酸長、あるいは、少なくとも約300アミノ酸長、またはそれ以上である。
【0034】
特に好ましいバリアントは、天然で保存的である置換、すなわち、その側鎖において関連するアミノ酸のファミリー内で起こる置換を含む。特に、アミノ酸は一般に、4つのファミリー:(1)酸性−アスパラギン酸およびグルタミン酸;(2)塩基性−リシン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性−アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非荷電極性−グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシンに分割される。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、芳香族アミノ酸として分類されることもある。例えば、ロイシンのイソロイシンもしくはバリンによる、アスパラギン酸のグルタミン酸による、トレオニンのセリンによる単離された置き換え、またはあるアミノ酸の構造的に関連するアミノ酸による同様の保存的置き換えは、生物活性に対する大きな効果はないことが合理的に推定できる。例えば、対象のポリペプチドは、分子の所望の機能が無傷のまま保持される限り、約5〜10までの保存的もしくは非保存的アミノ酸置換、またはさらには約15〜25もしくは50までの保存的もしくは非保存的アミノ酸置換、または5〜50の任意の数を含んでもよい。
【0035】
「相同性」とは、2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチド部分の間の同一性パーセントを指す。2つのDNA、または2つのポリペプチド配列は、その配列が分子の定義された長さにわたって少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約80%〜85%、好ましくは少なくとも約90%、および最も好ましくは少なくとも約95%〜98%の配列同一性を示す場合、互いに「実質的に相同」である。本明細書で用いられる場合、実質的に相同であるとは、特定のDNAまたはポリペプチド配列に対する完全な同一性を示す配列も指す。
【0036】
一般に、「同一性」とは、それぞれ、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の正確なヌクレオチド間またはアミノ酸間の一致性を指す。同一性パーセントを、配列を整列させ、2つの整列された配列間の正確な一致数を計数し、短い方の配列の長さで除算し、結果に100を乗算することによる、2つの分子間の配列情報の直接的比較によって決定することができる。ペプチド合成のためのSmithおよびWaterman、Advances in Appl.Math.2:482〜489頁、1981の部分的相同性アルゴリズムを適合させる、ALIGN、Dayhoff、M.O.Atlas of Protein Sequence and Structure M.O.Dayhoff(編)、5 Suppl.3:353〜358頁、National Biomedical Research Foundation、Washington、DCのような、容易に入手可能なコンピュータプログラムを用いて、分析に役立てることができる。ヌクレオチド配列同一性を決定するためのプログラムは、Wisconsin Sequence Analysis Package、Version 8(Genetics Computer Group、Madison、WIから入手可能)、例えば、BESTFIT、FASTAおよびGAPプログラムにおいて入手可能であり、SmithおよびWatermanのアルゴリズムにも依拠する。これらのプログラムは、製造業者により推奨され、上記のWisconsin Sequence Analysis Packageに記載のデフォルトパラメータを用いて容易に利用される。例えば、参照配列に対する特定のヌクレオチド配列の同一性パーセントを、SmithおよびWatermanの相同性アルゴリズムを、デフォルトスコアリングテーブルおよび6つのヌクレオチド位置のギャップペナルティと共に用いて決定することができる。
【0037】
本発明の文脈における同一性パーセントを確立する別の方法は、John F.CollinsおよびShane S.Sturrokにより開発され、IntelliGenetics,Inc.(Mountain View、CA)により配布された、University of Edinburghに著作権があるMPSRCHパッケージのプログラムを用いることである。このパッケージスイートから、スコアリングテーブルのためのデフォルトパラメータ(例えば、12のギャップオープンペナルティ、1のギャップ伸長ペナルティ、および6のギャップ)を用いるSmith−Watermanのアルゴリズムを用いることができる。生成されたデータから、「一致」の値は「配列同一性」を反映する。配列間の同一性パーセントまたは類似性を算出するための他の好適なプログラムは、当業界で一般に公知であり、例えば、別のアラインメントプログラムは、デフォルトパラメータと共に用いられるBLASTである。例えば、BLASTNおよびBLASTPを、以下のデフォルトパラメータ:遺伝子コード=標準;フィルター=なし;鎖=両方;カットオフ=60;期待値=10;マトリックス=BLOSUM62;記述=50配列;選別=HIGH SCORE;データベース=非冗長、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+Swissタンパク質+Spupdate+PIRを用いて使用することができる。これらのプログラムの詳細は当業界で周知である。
【0038】
あるいは、相同領域間で安定な二重鎖を形成する条件下でのポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション、次いで、一本鎖特異的ヌクレアーゼを用いる消化、および消化された断片のサイズ決定により、相同性を決定することができる。実質的に相同であるDNA配列を、例えば、特定のシステムについて定義されたようなストリンジェントな条件下でのサザンハイブリダイゼーション実験において同定することができる。適切なハイブリダイゼーション条件の定義は、当業者の技術の範囲内にある。例えば、Sambrookら、上掲;DNA Cloning、上掲;Nucleic Acid Hybridization、上掲を参照されたい。
【0039】
用語「縮重バリアント」とは、縮重バリアントが誘導されるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする、その核酸配列中に変化を含有するポリヌクレオチドを意図する。
【0040】
「コード配列」または選択されたポリペプチドを「コードする」配列は、適切な調節配列の制御下に置いた場合、in vivoでポリペプチドに転写(DNAの場合)および翻訳(mRNAの場合)される核酸分子である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンと、3’(カルボキシ)末端の翻訳停止コドンとにより決定される。転写終結配列は、コード配列の3’に位置してもよい。
【0041】
「ベクター」とは、適当な制御エレメントと会合した場合に複製することができる、また遺伝子配列を細胞に導入することができる、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオンなどのような任意の遺伝子エレメントを意味する。かくして、この用語は、クローニングおよび発現ビヒクル、ならびにウイルスベクターを含む。
【0042】
「組換えベクター」とは、in vivoで発現させることができる異種核酸配列を含むベクターを意味する。
【0043】
「組換えウイルス」とは、例えば、異種核酸構築物の粒子中への付加または挿入により、遺伝的に変化したウイルスを意味する。
【0044】
用語「トランスジーン」とは、適切な条件下で細胞中に導入され、RNAに転写される、場合により、翻訳および/または発現され得るポリヌクレオチドを指す。一態様において、それは、それが導入された細胞に所望の性質を付与するか、またはさもなければ所望の治療もしくは診断結果をもたらす。
【0045】
ウイルス力価を参照して用いられる場合、用語「ゲノム粒子(gp)」および「ゲノム等価物」とは、感染性または機能性に関係なく、組換えAAV DNAゲノムを含有するビリオンの数を指す。特定のベクター製造物中のゲノム粒子の数を、例えば、Clarkら、Hum.Gene Ther.(1999)10:1031〜1039頁;およびVeldwijkら、Mol.Ther.(2002)6:272〜278頁に記載のような当業界で公知の手順により測定することができる。
【0046】
ウイルス力価を参照して用いられる場合、用語「感染単位(iu)」、「感染性粒子」または「複製単位」とは、例えば、McLaughlinら、J.Virol.(1988)62:1963〜1973頁に記載のような、複製中心アッセイとしても知られる、感染中心アッセイにより測定される感染性組換えAAVベクター粒子の数を指す。
【0047】
ウイルス力価を参照して用いられる用語「形質導入単位(tu)」とは、例えば、Xiaoら、Exp.Neurobiol.(1997)144:113〜124頁;またはFisherら、J.Virol.(1996)70:520〜532頁(LFUアッセイ)に記載のような機能的アッセイにおいて測定される機能的トランスジーン産物の産生をもたらす感染性組換えAAVベクター粒子の数を指す。
【0048】
用語「トランスフェクション」は、細胞による外来DNAの取込みを指すように用いられ、外因性DNAが細胞膜の内側に導入された場合、細胞は「トランスフェクト」されている。いくつかのトランスフェクション技術が、当業界で一般に公知である。例えば、Grahamら(1973)Virology、52:456頁、Sambrookら(1989)Molecular Cloning, a laboratory manual、Cold Spring Harbor Laboratories、New York、Davisら(1986)Basic Methods in Molecular Biology、Elsevier、およびChuら(1981)Gene13:197頁を参照されたい。そのような技術は、適切な宿主細胞に1つまたはそれ以上の外因性DNA部分を導入するのに用いることができる。
【0049】
用語「異種」は、それがコード配列および制御配列のような核酸配列に関する場合、通常は一緒に連結されない、および/または通常は特定の細胞と関連しない配列を示す。かくして、ある核酸構築物またはベクターの「異種」領域は、天然で他の分子との関連が見出されない別の核酸分子の内部またはそれに結合した核酸のセグメントである。例えば、核酸構築物の異種領域は、天然でコード配列との関連が見出されない配列に隣接するコード配列を含んでもよい。異種コード配列の別の例は、コード配列自体が天然に見出されない構築物(例えば、天然遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)である。同様に、通常は細胞中に存在しない構築物で形質転換された細胞は、本発明の目的にとって異種であると考えられる。対立遺伝子変異または天然に存在する突然変異事象は、本明細書で用いられる場合、異種DNAを生じさせない。
【0050】
「核酸」配列とは、DNAまたはRNA配列を指す。この用語は、限定されるものではないが、4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、シュードイソシトシン、5−(カルボキシヒドロキシル−メチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチル−アミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルシュード−ウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチル−グアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチル−シトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシ−アミノ−メチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルクエオシン、5’−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン、シュードウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、シュードウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、および2,6−ジアミノプリンのような、DNAおよびRNAの公知の塩基類似体のいずれかを含む配列を捕捉する。
【0051】
DNA「制御配列」の用語は、レシピエント細胞中でのコード配列の複製、転写および翻訳を集合的に提供する、プロモーター配列、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列、上流調節ドメイン、複製起点、内部リボソーム進入部位(「IRES」)、エンハンサーなどを集合的に指す。選択されたコード配列が適切な宿主細胞中で複製、転写および翻訳され得る限り、これらの制御配列の全てが常に存在する必要はない。
【0052】
用語「プロモーター」は、本明細書では、調節配列がRNAポリメラーゼに結合し、下流の(3’方向)コード配列の転写を開始させることができる遺伝子に由来する、DNA調節配列を含むヌクレオチド領域を指すように、その通常の意味で用いられる。転写プロモーターは、「誘導性プロモーター」(プロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現が分析物、コファクター、調節タンパク質などにより誘導される)、「抑制性プロモーター」(プロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現が分析物、コファクター、調節タンパク質などにより誘導される)、および「構成的プロモーター」を含んでもよい。
【0053】
「作動可能に連結された」とは、そのように記載された要素がその通常の機能を行うように配置されるエレメントの配置を指す。かくして、コード配列に作動可能に連結された制御配列は、コード配列の発現を行うことができる。制御配列は、それらがその発現を指令するように機能する限り、コード配列と連続的である必要はない。かくして、例えば、非翻訳であるが転写される配列の介入がプロモーターとコード配列との間に存在してもよく、プロモーター配列はコード配列に「作動可能に連結」されると依然として考えてもよい。
【0054】
タンパク質またはヌクレオチド配列に言及する場合、「単離された」とは、示される分子が同じ型の他の生物学的巨大分子の実質的な非存在下で存在することを意味する。かくして、例えば、「特定のポリペプチドをコードする単離された核酸分子」とは、対象となるポリペプチドをコードしない他の核酸分子を実質的に含まない核酸分子を指すが、この分子は組成物の基本特性に有害に影響しないいくつかの付加的な塩基または部分を含んでもよい。
【0055】
特定のヌクレオチド配列が別の配列に関して「上流」、「下流」、「3−プライム(3’)」または「5−プライム(5’)」の状況にあると記載される場合のような、本出願を通して特定の核酸分子中のヌクレオチド配列の相対的位置を記載するために、それは当業界で従来通りであると言われるDNA分子の「センス」または「コード」鎖中での配列の位置であることが理解されるべきである。
【0056】
特に所与の量を参照する用語「約」は、±5パーセントの偏差を包含することを意味する。
【0057】
2.本発明を実行する様式
本発明を詳細に記載する前に、本発明が、そのようなものとして勿論変化してもよい特定の製剤またはプロセスパラメータに限定されないことが理解されるべきである。また、本明細書で用いられる用語は、本発明の特定の実施形態のみを記載するためのものであり、限定を意図するものではない。
【0058】
本明細書に記載のものと類似するか、または同等であるいくつかの方法および材料を本発明の実施において用いることができるが、好ましい材料および方法を、本明細書に記載する。
【0059】
本発明の中心は、マイクロモル濃度のアウリントリカルボン酸(ATA)がHSV−1ベクター収量を増加させるという発見である。この知見は、大規模HSV産生、ならびにrHSVおよびrAAVベクター産生の両方にとって重要である。さらに、また驚くべきことに、実施例に示される通り、rHSV−1ストック中のATAの存在は、rAAV収量に負の影響を及ぼさなかった。ミリモル量およびより高い濃度のATAは抗ウイルス剤であることが知られているため、この結果は驚くべきものである(Cushmanら、J.Med.Chem.(1991)34:329〜337頁;Zhangら、Antiviral Res.(1999)43:23〜35頁;Yapら、Computational Biol.and Chem.(2005)29:212〜219頁;De Clercq、Advents, Advances, and Adventures Med.Res.Rev.(2011)31:118〜160頁)。
【0060】
上記で説明された通り、研究者は、特に、ワクシニアウイルス、水疱性口内炎ウイルス、および日本脳炎ウイルスのようないくつかのウイルスに対する一酸化窒素(NO)の抗ウイルス活性を報告している(Biら、J.Virol.(1995)69:6466〜6472頁;Harrisら、J.Virol.(1995)69:910〜915;Linら、1997;Pertileら、Avian Dis.(1996)40:342〜348頁)。NOは、フリーラジカル気体分子であり、宿主防御のメディエータである(Croen K.D.、J.Clin.Invest.(1993)91:2446〜2452頁;Karupiahら、Science(1993)261:1445〜1448頁;Rolphら、Virol.(1996)217:470〜477頁;Amaroら、J.Med.Virol.(1997)51:326〜331頁;Laneら、J.Virol.(1997)71:2202〜2210頁)。HSV感染は、大量のNOを産生するNOSの誘導性アイソフォームをコードする遺伝子である、誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)の発現を誘導することができる。
【0061】
本明細書に示されるように、ATAはHSVにより上方調節されるiNOSを抑制し、それによって培養物中でのHSV力価を増加させる。デキサメタゾンおよびバルプロ酸などのさらなるiNOS阻害剤も、同じ効果を有する。一実施形態において、次いで、そのようなiNOS阻害剤の使用は、培養物中の組換えヘルペスウイルス力価を増加させ、特定の阻害剤の非存在下で産生されるウイルスよりも有意に多くのウイルスの産生を可能にする。前記方法により産生されるウイルスを、予防、治療および診断目的のため、ならびに遺伝子送達および遺伝子療法のための組換えビリオンの製造において使用するのに十分な量の組換え構築物を産生するためなどの様々な文脈で用いることができる。
【0062】
アウリントリカルボン酸(ATA)、5−((3−カルボキシ−4−ヒドロキシフェニル)(3−カルボキシ−4−オキソ−2,5−シクロヘキサンジエン−1−イルイデン)メチル)−2−ヒドロキシ安息香酸は、サリチル酸をホルムアルデヒド、硫酸および硝酸ナトリウムで処理した場合に形成する非硫酸化負荷電芳香族ポリマーの異種混合物である(Cushmanら、(1991)J.Med.Chem.34:329〜337頁;Cushmanら、J.Med.Chem.34:337〜342頁を参照されたい)。アウリントリカルボン酸は、式:
【化1】
を有する。
【0063】
ATAの異種混合物は、タンパク質核酸相互作用を阻害する(Gonzalezら、Biochim.Biophys.Acta、(1979)562:534〜545頁);核取込みおよび核結合レベルでステロイド受容体と相互作用する(Mellon,W.S.、Biochem.Pharmacol.(1984)33:1047〜1057頁;Moudgiletら、J.Steroid Biochem.(1985)23:125〜132頁);DNAポリメラーゼを阻害する(Nakaneら、Eur.J.Biochem.(1988)177:91〜96頁);RNAase阻害剤として作用する(Skidmoreら、Biochem.J.(1989)263:73〜80頁)と記載された。
【0064】
培養物中のウイルスへの添加のためのATAを、酸性形態で用いるか、またはアウリントリカルボン酸三ナトリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩などのような塩として提供することができる。
【0065】
本発明に関して有用であるさらなる物質としては、デキサメタゾン(Dex)およびバルプロ酸(VA)が挙げられる。Dexは、転写レベルおよび転写後レベルでラットメサンギウム細胞中のiNOS発現を阻害することが示されている(Kunzら、Biochem.J.(1994)304:337〜340頁;Kunzら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1996)93:255〜259頁)。Dexはまた、PC12細胞中でHSV−1 oriL DNA複製を増強することが示されている。VAのナトリウム塩であるバルプロ酸ナトリウムは、HSV−1、ヒトサイトメガロウイルス、HIF−1、ヒトヘルペスウイルス−8、麻疹ウイルスおよびポリオウイルス1型の複製を刺激することが示されている(Motamedifarら、Iran.J.Med.Sci.(2006)31:28〜32頁;Kuntz−Simonら、J.Gen.Virol(1995)76:1409〜1415頁;Moogら、J.Gen.Virol(1996)77:1993〜1999頁;Ylisastiguiら、AIDS(2004)18:1101〜1108頁;Shawら、AIDS(2000)14:899〜902頁;Kabiriら、Iran J.Med.Sci.(2001)26:55〜61頁)。さらに、バルプロ酸は、iNOSを阻害することが示されている(Guoら、Surgery(2007)142:156〜162頁)。ATAに関して、VA、またはナトリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩のようなその塩などを本発明の方法において用いることができる。
【0066】
より高い力価でrHSV−1ベクターを産生するためのATA、DexおよびVAの使用が本明細書に例示されるが、これらのiNOS阻害剤を用いて、限定されるものではないが、アデノウイルス科、ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルスなど);カリシウイルス科;トガウイルス科(例えば、風疹ウイルス、デングウイルスなど);フラビウイルス科;コロナウイルス科;レオウイルス科;ビルナウイルス科;ラブドウイルス科(例えば、狂犬病ウイルスなど);ポックスウイルス科;フィロウイルス科;パラミクソウイルス科(例えば、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルスなど);オルトミクソウイルス科(例えば、A、BおよびC型インフルエンザウイルスなど);ブニヤウイルス科;アレナウイルス科;HAV、HBVおよびHCVのような様々な肝炎ウイルス;パピローマウイルスおよびロタウイルス;レトロウイルスなどのウイルスのような、培養物中の様々なウイルスの力価を増加させることができる。これらのウイルスおよびその他のウイルスの記載については、例えば、Virology、第3版(W.K.Joklik(編)、1988);Fundamental Virology、第2版(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe(編)、1991)を参照されたい。これらのウイルス、またはそれから誘導される免疫原を、ワクチンおよび診断剤の産生において用いることができる。さらに、これらのウイルスのいくつか、特に、ヘルペスウイルスを用いて、以下に記載の遺伝子送達技術における使用のための組換えビリオンの産生のための組換えベクターを産生することができる。
【0067】
かくして、ATA、DexおよびVAを用いて、ヘルペスウイルス科のメンバーである任意のヘルペスウイルスの収量を増加させることができる。これは、特に、ウマヘルペスウイルス、ウシヘルペスウイルス(BHV)およびヒト単純ヘルペスウイルス(HSV)1型および2型、例えば、BHV−1、BHV−2、HSV−1およびHSV−2、帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、HHV6およびHHV7を含む。ヘルペスウイルスは、多くの株のいずれかに由来するものであってもよい。例えば、本発明を用いて産生されるウイルスがHSVである場合、そのウイルスは、例えば、HSV−1またはHSV−2に由来するものであってよく、HSV−1株KOS、HSV−1株McIntyre、HSV−1株Patton、HSV−2株333、HSV−2株Gなどのような様々なHSV株のいずれかに由来するものであってもよい。さらに、産生されるウイルスは、野生型ウイルス、またはHSV−1およびHSV−2に由来するDNAを含有する組換えウイルスおよび型間組換え体を含む、その誘導体であってもよい。誘導体は、好ましくは、HSV−1もしくはHSV−2ゲノムまたはその一部に対する少なくとも70%の配列相同性、より好ましくは、少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%または95%の配列相同性を有する。誘導体は、ヌクレオチド置換、例えば、1、2または3から10、25、50または100個の置換により改変されたHSV−1またはHSV−2ゲノムの配列を有してもよい。HSV−1またはHSV−2ゲノムは、あるいは、またはさらに、1つもしくはそれ以上の挿入および/もしくは欠失ならびに/またはいずれかの末端もしくは両方の末端での伸長により改変されていてもよい。
【0068】
他の誘導体としては、遺伝子中の突然変異、特に、ウイルスの弱毒化をもたらす遺伝子中の突然変異を既に有する株が挙げられる。そのようなウイルスの例としては、1716株(MacLeanら、J.Gen.Virol.(1991)72:632〜639頁)、全てICP34.5中に突然変異を有する、R3616およびR4009株(ChouおよびRoizman、Proc.Natl.Acad.Sci USA(1992)89:3266〜3270頁)およびR930株(Chouら、J.Virol.(1994)68:8304〜8311頁)、ICP4中に欠失を有するd120株(DeLucaら、J.Virol.(1985)56:558〜570頁)、ICP27中に欠失を有するd27−1株(RiceおよびKnipe、J.Virol.(1990)64:1704〜1715頁)またはICP27とICP4の両方に欠失を有するd92株(Samaniegoら、J.Virol.(1995)69:5705〜5715頁)が挙げられる。様々なHSV遺伝子を記載するのに用いられる用語は、例えば、CoffinおよびLatchman(1996)、Genetic Manipulation of the Nervous System(DS Latchman Ed.)、99〜114頁:Academic Press、Londonに見出される通りである。
【0069】
容易に明らかである通り、意図される目的にとって好適な任意のrHSVを、本発明において用いることができる。ある特定の実施形態において、本発明において用いられるrHSVは複製欠損である。アデノウイルスの使用を含む方法とは対照的に、rHSVはrAAV産物の有意な汚染物質とならないため、rAAVビリオンの産生のためには、複製することができないrHSVによる産生細胞の感染が好ましい。これは、アデノウイルスの除去と関連する精製工程を排除することによりrAAVビリオンの最終的な収量を増加させるのに役立ち得る。本発明の特定の実施形態において、rHSVは、複製不能性がICP27遺伝子中の欠失に起因するHSV−1の突然変異体から構築される。複製欠損表現型を示すHSVの任意の他の好適な突然変異体を、rHSVを構築するために用いることもできる。
【0070】
対象となる方法を用いるrAAV産生のための1つの特に好ましい組換え突然変異体HSV−1株は、HSV−1株d27−1である。この株は、例えば、全体が参照によって本明細書に組み入れられる、Conwayら、Gene Ther.(1999)6:973〜985頁および米国特許第7,091,029号に記載のように製造することができる。上記で説明された通り、この突然変異ベクターは、ICP27を産生せず、メッセンジャーRNAの宿主細胞スプライシングはICP27により阻害されることが知られているため、rAAVビリオンを産生するために有利に用いられる。ICP27はまた、AAV−2のrepおよびcapメッセージの適切なスプライシングを行うこともできる。このベクターは、複製欠損であり、野生型(wt)HSV−1と比較して低い細胞傷害性を示す。d27−1ウイルスは、rAAVビリオン産生のためのヘルパーウイルスとしての使用にとって有利であるいくつかの他の特徴を示す。第1に、それはrAAV産生にとって必要とされることが知られる初期遺伝子を発現する(Weindlerら、J.Virol.(1991)65:2476〜2483頁)。さらに、d27.1は、AAVの複製およびパッケージングにとって必須であるHSV−1遺伝子の1つであるUL29の産物である一本鎖DNA結合タンパク質であるICP8を過剰発現する(Weindlerら、J.Virol.(1991)65:2476〜2483頁)。
【0071】
AAVゲノムは、約4681個のヌクレオチドを含有する線状の一本鎖DNA分子である。AAVゲノムは一般に、それぞれの末端上で逆位末端反復(ITR)に隣接する内部非反復ゲノムを含む。ITRはおよそ145塩基対(bp)の長さである。ITRは、DNA複製起点、およびウイルスゲノムのためのパッケージングシグナルの提供を含む複数の機能を有する。ゲノムの内部非反復部分は、AAV複製(rep)およびキャプシド(cap)遺伝子として知られる、2つの大きなオープンリーディングフレームを含む。repおよびcap遺伝子は、ウイルスを複製させ、ビリオン中にパッケージングさせるウイルスタンパク質をコードする。特に、少なくとも4つのウイルスタンパク質のファミリーが、その見かけの分子量に従って命名された、AAV rep領域、Rep78、Rep68、Rep52、およびRep40から発現される。AAV cap領域は、少なくとも3つのタンパク質、VPI、VP2、およびVP3をコードする。
【0072】
「AAV repコード領域」とは、複製タンパク質Rep78、Rep68、Rep52およびRep40をコードするAAVゲノムの当業界で認識された領域を意味する。これらのRep発現産物は、DNA複製のAAV起点の認識、結合およびニッキング、DNAヘリカーゼ活性ならびにAAV(または他の異種)プロモーターからの転写のモジュレーションなどの、多くの機能を有することが示された。Rep発現産物は、AAVゲノムの複製にとって集合的に必要である。AAV repコード領域の記載については、例えば、Muzyczka,N.(1992)Current Topics in Microbiol.and Immunol.158:97〜129頁;Kotin,R.M.(1994)Human Gene Therapy5:793〜801頁を参照されたい。AAV repコード領域の好適な相同体は、AAV−2 DNA複製を媒介することも知られるヒトヘルペスウイルス6(HHV−6)rep遺伝子を含む(Thomsonら(1994)Virology204:304〜311頁)。
【0073】
「AAV capコード領域」とは、キャプシドタンパク質VP1、VP2およびVP3をコードするAAVゲノムの当業界で認識された領域、またはその機能的相同体を意味する。これらのCap発現産物は、ウイルスゲノムをパッケージングするのに集合的に必要とされるパッケージング機能を供給する。AAV capコード領域の記載については、例えば、Muzyczka,N.およびKotin,R.M.(上掲)を参照されたい。
【0074】
典型的には、2つのrHSVベクターを用いて、rAAVビリオンを産生することができる。一方は、AAV repおよび/またはcap遺伝子がrHSVゲノム中に組み入れられたrHSVヘルパー機能ベクターである。他方は、AAV由来ITR配列がrHSV中に組み入れられ、対象の遺伝子に隣接するrHSV発現ベクターである。
【0075】
かくして、一実施形態において、iNOS阻害剤を用いて、AAV repおよび/またはcap遺伝子を含有する第1のrHSVベクターの収量を増加させることができる。この方法の第1のrHSVベクターの実施形態としては、限定されるものではないが、AAV−1、AAV−2、AAV−3、AAV−4、AAV−5およびAAV−6、AAV−7およびAAV−8、ヤギおよびウシAAV(例えば、全体が参照によって本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第20080292595号を参照されたい)、ならびにそのバリアントなどのAAVの様々な血清型に見出されるcap遺伝子に基づく遺伝子構築物が挙げられる。また、新規AAV血清型に由来するrepおよびcap遺伝子、ならびに存在する血清型の組換えまたは突然変異により改変されたものも本発明の範囲内にある。上記で説明した通り、AAVヘルパー機能ベクターのrepおよびcap遺伝子を、公知のAAV血清型のいずれかから誘導することができる。例えば、rHSVヘルパー機能ベクターは、AAV−2から誘導されるrep遺伝子およびAAV−6から誘導されるcap遺伝子を有してもよい;当業者であれば、他のrepおよびcap遺伝子の組合せも可能であり、その明確な特徴はrAAVビリオン産生をサポートする能力であることを認識できる。
【0076】
ある特定の実施形態において、rHSVヘルパー機能ベクター中のAAV repおよびcap遺伝子は、その天然プロモーターによって誘発されてもよい。AAV−2のp5およびp19プロモーターは、それぞれ、Rep78および68ならびにRep52および40の発現を制御する。p40プロモーターは、VP1、VP2およびVP3の発現を制御する。さらに、異種プロモーターを用いて、AAV遺伝子の発現を誘発することができる。開示される方法において用いることができる他のプロモーターの例としては、限定されるものではないが、SV40初期プロモーター、CMVプロモーター、HSV−1チミジンキナーゼ(HSV−1tk)プロモーター、メタロチオニン誘導性プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルスプロモーターおよびニワトリβ−アクチンプロモーターが挙げられる。
【0077】
遺伝子構築物を、repおよびcap遺伝子の組込みにとって好適なHSVゲノム中の任意の部位または複数の部位に挿入することができる。ある特定の実施形態において、ベクターは、全体が参照によって本明細書に組み入れられるConwayら、Gene Ther.(1999)6:986〜993頁;および米国特許第7,091,029号に記載のように、rHSV−1ウイルスのチミジンキナーゼ(tk)遺伝子座へのAAV repおよびcap遺伝子の相同組換えにより構築される。
【0078】
本明細書で説明される通り、rHSVヘルパー機能ベクターは、産生性AAV複製およびカプシド封入のためにin transで機能する、「AAVヘルパー機能」配列(すなわち、repおよびcap)をコードする。好ましくは、rHSVヘルパー機能ベクターは、検出可能なwt AAVビリオン(すなわち、機能的repおよびcap遺伝子を含有するAAVビリオン)を生成することなく効率的なrAAVビリオン産生をサポートする。そのようなベクターの例は、rHSV−1 d27.1rcである。それを産生するためのベクターおよび方法は、本明細書の実施例、ならびに全体が参照によって本明細書に組み入れられるConwayら、Gene Ther.(1999)6:986〜993頁;および米国特許第7,091,029号に記載されている。
【0079】
第2のrHSVベクターは、rHSV発現ベクターと呼ばれ、1つまたはそれ以上のプロモーターにより誘発される1つまたはそれ以上の対象の遺伝子と共に、AAVに由来するITRを含有する。いくつかの実施形態において、対象の遺伝子は、一対のITRの間に挿入される。異種遺伝子は、典型的には、適切な条件下で患者の標的細胞中での遺伝子発現を誘発することができる異種プロモーター(構成的、細胞特異的、または誘導性)に機能的に連結される。また、ポリアデニル化部位のような終結シグナルを含んでもよい。
【0080】
AAV ITR領域のヌクレオチド配列は公知である。AAV−2配列については、例えば、Kotin,R.M.(1994)Human Gene Therapy 5:793〜801頁;Berns,K.I.「Parvoviridae and their Replication」、Fundamental Virology、第2版(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe(編))を参照されたい。本発明のベクターにおいて用いられるAAV ITRは、野生型ヌクレオチド配列を有する必要はなく、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失または置換によって変化させてもよい。さらに、AAV ITRは、限定されるものではないが、AAV−1、AAV−2、AAV−3、AAV−4、AAV−5、AAV−6、AAV−7およびAAV−8、ヤギおよびウシAAV(例えば、全体が参照によって本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第20080292595号を参照されたい)、ならびにそのバリアントなどのいくつかのAAV血清型のいずれかから誘導することができる。さらに、発現ベクター中の選択されたヌクレオチド配列に隣接する5’および3’ITRは、それらが意図される通りに機能する、すなわち、宿主細胞ゲノムもしくはベクターからの対象の配列の切出しおよびレスキューを可能にする、ならびにAAV rep遺伝子産物が細胞中に存在する場合のレシピエント細胞ゲノム中へのDNA分子の組込みを可能にする限り、同一であるか、または同じAAV血清型もしくは単離物から誘導する必要はない。
【0081】
AAV ITRを、ウイルスゲノムから、またはそれを含有するAAVベクターから切り出して、Sambrookら、上掲に記載のもののような、標準的なライゲーション技術を用いて、選択された核酸構築物の5’および3’に融合することができる。例えば、ライゲーションを、20mM Tric−Cl pH7.5、10mM MgCl2、10mM DTT、33μg/ml BSA、10mM〜50mM NaCl、および40μM ATP、0.01〜0.02(Weiss)ユニットのT4 DNAリガーゼ中、0℃で(「付着末端」ライゲーションのため)または1mM ATP、0.3〜0.6(Weiss)ユニットのT4 DNAリガーゼ中、14℃で(「平滑末端」ライゲーションのため)成し遂げることができる。分子間「付着末端」ライゲーションは、通常、30〜100μg/mlの全DNA濃度(5〜100nM全最終濃度)で行われる。ITRを含有するAAVベクターは、例えば、米国特許第5,139,941号に記載されている。特に、いくつかのAAVベクターがその中に記載されており、受託番号53222、53223、53224、53225および53226の下でAmerican Type Culture Collection(「ATCC」)から入手可能である。
【0082】
選択されたポリヌクレオチド配列は、対象の細胞中でのその転写または発現を指令する制御エレメントに作動可能に連結される。そのような制御エレメントは、通常は選択された遺伝子と関連する制御配列を含んでもよい。あるいは、異種制御配列を用いることができる。有用な異種制御配列は一般に、哺乳動物またはウイルス遺伝子をコードする配列から誘導されるものを含む。例としては、限定されるものではないが、ニューロン特異的エノラーゼプロモーター、GFAPプロモーター、SV40初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルスLTRプロモーター;アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP);単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、CMV極初期プロモーター領域(CMVIE)のようなサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、合成プロモーター、ハイブリッドプロモーターなどが挙げられる。さらに、マウスメタロチオネイン遺伝子のような非ウイルス遺伝子から誘導される配列も、本明細書では有用である。そのようなプロモーター配列は、例えば、Stratagene(San Diego、CA)、Invivogen(San Diego、CA)などから商業的に入手可能である。
【0083】
対象の遺伝子は、治療的価値のある可能性がある遺伝子であってもよい。治療的遺伝子の例としては、限定されるものではないが、α−1抗トリプシン、第VIII因子、第IX因子、GAA、エリスロポエチンおよびPEDFが挙げられる。トランスジーン発現の成功を選択するか、または同定することが望ましい場合、対象の遺伝子はリポーター遺伝子であってもよい。リポーターとして、または選択のために用いられる遺伝子の多くの例が公知であり、本発明において用いることができる。これらのものとしては、限定されるものではないが、β−ガラクトシダーゼ、ネオマイシン、ホスホロ−トランスフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、チミジンキナーゼ、ルシフェラーゼ、ベータ−グルクロニダーゼ、アミノグリコシド、ホスホトランスフェラーゼ、ヒグロマイシンB、キサンチン−グアニンホスホリボシル、ルシフェラーゼ、DHFR/メトトレキサート、および緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子が挙げられる。
【0084】
rHSV−1発現ウイルスを、上記とほぼ同じ方式で、すなわち、例えば、全体が参照によって本明細書に組み入れられるConwayら、Gene Ther.(1999)6:986〜993頁;および米国特許第7,091,029号に記載のような、HSV−1 tk遺伝子中での相同組換えにより産生させることができる。
【0085】
一度産生されたら、rHSVベクター、または任意の他の対象のウイルスを、適切な細胞系中、培養物中で増殖させる。ヘルペスウイルスについては、そのような細胞系として、限定されるものではないが、American Type Culture Collection、Rockville、Mdから入手可能なVero細胞、293細胞、HeLa細胞などが挙げられる。HSV−1 d27.1ベクターを用いる場合、このウイルスは典型的には、ICP27コンプリメント細胞系V27中で培養される(Riceら、J.Virol.(1990)64:1704〜1715頁)。限定されるものではないが、RPMI1640培地、Dulbecco’s Modified Eagles Medium(DMEM)、F12培地または後者の混合物(DF培地)のような、ウシ胎仔血清のような血清を含むか、または含まない、問題のウイルスのための任意の好適な培地を用いることができる。血清が存在する場合、培養物は、例えば、2%〜20%の血清、より典型的には、5%〜15%の血清、7%〜12%の血清、またはこれらの範囲内の任意の数、例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%などを含んでもよい。さらに、血清を用いる場合、それは初期培養物中に、および/または培養物に添加されたその後の新鮮な培地中に存在してもよい。
【0086】
本発明による方法において添加されるiNOS阻害剤の量は変化してもよく、用いられる特定の阻害剤、用いられる培地および培養されるウイルスにある程度依存する。例えば、ヘルペスウイルスをVero細胞中で培養する場合、存在する場合、初期培養物中のATAの濃度は、典型的には、5μM〜500μM、好ましくは、10μM〜250μM、例えば、20μM〜100μM、すなわち、30μM〜75μM、例えば、30...35...40...45...50...55...60...65...70...75など、またはこれらの記述された範囲内の任意の整数である。同様に、存在する場合、初期培養物中のデキサメタゾンの濃度は、典型的には、0.1μM〜500μM、好ましくは、0.5μM〜250μM、例えば、1μM〜100μM、すなわち、5μM〜75μM、例えば、1...5...10...15...20...25...30...35...40...45...50...55...60...65...70...75など、またはこれらの記述された範囲内の任意の整数である。バルプロ酸を用いる場合、初期濃度は、0.1mM〜500mM、好ましくは、0.5mM〜250mM、例えば、1mM〜100mM、すなわち、5mM〜75mM、例えば、1...5...10...15...20...25...30...35...40...45...50...55...60...65...70...75など、またはこれらの記述された範囲内の任意の整数である。
【0087】
ある特定の実施形態において、ウイルスに感染した細胞は、0.5時間〜24時間、例えば、0.75時間〜12時間、1時間〜5時間、1時間〜2時間、またはこれらの範囲内の任意の数の時間もしくはその画分にわたって、上記のように培地中で初期培養する。iNOS阻害剤および/または血清は、初期培養物中に存在しても、またはしなくてもよい。続いて、新鮮な培地を添加し、培養物を24〜120時間、例えば、48〜96時間、50〜80時間、60〜75時間、70〜74時間、またはこれらの範囲内の任意の数の時間もしくはその画分にわたってインキュベートする。iNOS阻害剤および/または血清は、その後の培養物中に存在しても、または存在しなくてもよいが、但し、iNOS阻害剤は初期培養物およびその後の培養物の一方または両方に存在する。
【0088】
いくつかの実施形態において、初期培養物中のiNOS阻害剤は、その後の培養物中よりも高濃度で存在する。かくして、例えば、iNOS阻害剤がATAである場合、それは初期培養物中に30〜75μMの量で、次いで、その後の培養物中に5〜25μMの量で存在してもよい。あるいは、阻害剤は、初期培養物またはその後の培養物中にのみ存在してもよい。
【0089】
以下の実施例に示されるように、ATAを用いる1つの特に好ましい方法は、初期培養物中に50μMのATAの存在を含み、その後の培養物中、20μMまでATAの量を減少させる。さらに、ATAの場合、ATAが存在すると同時に血清を含むことが好ましい。かくして、ATAを初期培養物に添加する場合、ウシ胎仔血清(FBS)を培地に添加することが有利である。同様に、ATAをその後の培養物に添加する場合、より高いウイルス収量を得るためには、FBSの添加が必要である。
【0090】
次いで、ウイルスを培養して、望ましいウイルス力価を得る。例えば、本明細書に記載のHSV−1 d27−1ベクターの場合、ATAはV27細胞上清中でd27−1収量を3〜5倍増加させ、その力価は少なくとも1x10
8PFU/mlまたは4x10
8DRP/mlであってもよい。同様に、ATAはまた、野生型(wt)HSV−1ウイルス株McIntyreおよびKOSの収量を1log増加させ、293またはVero力価は最大で1x10
9DRP/mlであってもよい。次いで、ウイルスをさらなる使用のために収穫する。
【0091】
本発明の目的のために、rAAVビリオンを産生するための好適な宿主細胞としては、異種DNA分子のレシピエントとして用いることができるか、または用いられた、例えば、懸濁培養物、フラスコ、プレート、バイオリアクタなどの中で成長することができる、微生物、酵母細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞が挙げられる。この用語は、トランスフェクトされた元の細胞の子孫を含む。かくして、本明細書で用いられる「宿主細胞」は一般に、外因性DNA配列を形質導入された細胞を指す。rAAVビリオンを作製するのに用いるために1つの型の細胞中で組換えヘルペスウイルスを産生させる場合、次いで収穫されるベクターを別の好適な宿主細胞中にトランスフェクトする。安定なヒト細胞系を起源とする293細胞(例えば、受託番号ATCC CRL1573の下でAmerican Type Culture Collectionを介して容易に入手可能)が、rAAVビリオンを産生するのに好ましい宿主細胞である。特に、ヒト細胞系293は、アデノウイルス5型DNA断片で形質転換されたヒト胚性腎細胞系(Grahamら(1977)J.Gen.Virol.36:59頁)であり、アデノウイルスのE1aおよびE1b遺伝子を発現する(Aielloら(1979)Virology94:460頁)。293細胞系は容易にトランスフェクトされ、rAAVビリオンを産生するための特に便利なプラットフォームを提供する。
【0092】
AAVヘルパー機能は、rHSV発現ベクターを用いる前に、またはそれと同時に、rHSVヘルパー機能構築物を宿主細胞に形質導入することにより宿主細胞中に導入される。かくして、rHSVヘルパー構築物は、産生的AAV感染にとって必要であるAAV機能の喪失を補完するためのAAV repおよび/またはcap遺伝子の少なくとも一過的発現を提供するために用いられる。AAVヘルパー構築物はAAV ITRを欠き、それ自身では複製もパッケージングも行うことができない。
【0093】
組換えAAV複製の後、カラムクロマトグラフィー、CsCl勾配などのような様々な従来の精製方法を用いて宿主細胞からrAAVビリオンを精製することができる。例えば、陰イオン交換カラム、親和性カラムおよび/または陽イオン交換カラム上での精製のような、複数のカラム精製工程を用いることができる。例えば、国際公開WO02/12455を参照されたい。
【0094】
次いで、対象のヌクレオチド配列を含有する得られるrAAVビリオンを、当業界で周知であり、例えば、米国特許第5,173,414号および第5,139,941号;国際公開WO92/01070(1992年1月23日公開)およびWO93/03769(1993年3月4日公開);Lebkowskiら、Molec.Cell.Biol.(1988)8:3988〜3996頁;Vincentら、Vaccines 90(1990)(Cold Spring Harbor Laboratory Press);Carter,B.J.、Current Opinion in Biotechnology(1992)3:533〜539頁;Muzyczka,N.、Current Topics in Microbiol.and Immunol.(1992)158:97〜129頁;Kotin,R.M.Human Gene Therapy(1994)5:793〜801頁;ShellingおよびSmith、Gene Therapy(1994)1:165〜169頁;ならびにZhouら、J.Exp.Med.(1994)179:1867〜1875頁に記載の技術を用いる遺伝子送達のために用いることができる。
【0095】
2.実験
以下は、本発明を実行するための特定の実施形態の例である。実施例は、例示目的のみで提供されるものであり、いかなる意味でも本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0096】
用いられる数(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力が為されたが、いくらかの実験誤差および偏差は勿論許容されるべきである。
【0097】
材料および方法
細胞
Vero由来V27細胞(Riceら、J.Virol.(1989)63:3399〜3407頁)およびヒト胚性腎細胞(HEK)由来293細胞(Grahamら、J.Gen.Virol.(1977)36:59〜74頁)を、Applied Genetic Technologies Corporation(AGTC、Alachua、FL)から得て、Vero細胞およびHeLa細胞を、American Type Culture Collection(ATCC、Manassas、VA)から購入した。全ての細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS;HyClone)およびV27細胞についてはゲネチシン(50mg/ml;Invitrogen)または他の細胞については1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Cellgro Mediatech、Manassas、VA)のいずれかを含有するDulbecco改変Eagle培地(DMEM;HyClone、South Logan、UT)中で維持した。
【0098】
HSV−1産生
wtHSV−1 KOS株およびwtHSV−1 KOS株のICP27欠損誘導体:ベクターd27−1(RiceおよびKnipe、J.Virol.(1990)64:1704〜1715頁)、rHSV−rep2/cap2およびrHSV−EGFP(Kangら、Gene Ther.(2009)16:229〜239頁)ならびにその産生株ICP27コンプリメントV27細胞系を、AGTC(Alachua、FL)から得た。Advanced Biotechnologies Inc.(ABI、Columbia MD)から購入したwtHSV−1 MacIntyre株およびwtHSV−1 KOS株を、Vero、293またはHeLa細胞系中で増殖させた。感染性ベクター粒子を、培養上清を回収することにより感染の72h後に収穫した。DNase耐性粒子/ml(DRP/ml)中のHSV−1ストックの力価を、Taqmanアッセイにより決定した。粗培養培地内のウイルスゲノムを、37℃で60minのDNaseI(最終50U/ml;Promega)の存在下での処理、次に50℃で60minのプロテイナーゼK(Invitrogen)消化(1U/ml)、次いで、95℃で30minの変性により定量した。線状化されたプラスミドpZero195UL36(AGTC,Inc.、Alachua、FLから得た)を用いて、標準曲線を作製した。プライマー−プローブセットは、ベクターゲノムUL36配列(HSV−UL36 F:5’−GTTGGTTATGGGGGAGTGTGG(配列番号1);HSV−UL36 R:5’−TCCTTGTCTGGGGTGTCTTCG(配列番号2);HSV−UL36プローブ:5’−6FAM−CGACGAAGACTCCGACGCCACCTC−TAMRA(配列番号3))に特異的であった。PCR産物の増幅を、以下のサイクリングパラメータ:50℃で2minの1サイクル、95℃で10minの1サイクル;95℃で15sec、および60℃で60secの40サイクルを用いて達成した。
【0099】
ATA実験
ATA(Sigma−A1895アウリントリカルボン酸実用等級、85%以上(滴定)、粉末)ストック溶液を、100mM重炭酸ナトリウム水溶液中500μM濃度として作製した。ATAストック溶液を、DMEM±10%ウシ胎仔血清(FBS、Hyclone、Waltham、MA)中でさらに希釈し、12〜60μM ATAの範囲の濃度(8.5〜21μg ATA/ml)にした。0.15の感染多重度(MOI=0.15)でのHSV−1感染(典型的には、6ウェルプレート中で6x10
5細胞)を、1〜2h、総最終培地容量の40%(2/5vol)中で行い、残りの培地(総最終容量の60%または3/5)を希釈工程中に添加した。次いで、細胞を72時間インキュベートし、上清を収穫して、1ミリリットルあたりの形成単位(PFU/ml)およびDRP/ml力価アッセイを行った。
【0100】
デキサメタゾン(Dex)実験
デキサメタゾン(Sigma−D4902)を、無水アルコール中で2mg/mlに溶解した。これをDMEMで希釈して、1M濃度を達成し、−20℃で保存した。
【0101】
6x10
5細胞/ウェルでの感染の前日に、V27細胞を6ウェルプレート中に播種した。デキサメタゾンを添加して、播種培地中で1μMの濃度を達成した。これをよく混合し、ウェルに添加した。
【0102】
培地を吸引し、感染性HSV−1 d27−1ストックを、DMEM(添加物なし)1mlあたりのMOI0.15(=細胞播種密度x0.15/pfu力価のHSVストック)で添加した。ウェルあたり感染性接種物1mlを添加した。これを37℃、5%CO
2インキュベータで1〜2時間インキュベートした後、DMEM−10%FBS 1.5mlを添加した。培養物を70〜74時間、インキュベータに戻した。
【0103】
遊離培地を収穫し、ボルテックスし、1,100xgで10分間、4℃で遠心分離した。上清を新しい分注チューブに移し、ボルテックスし、アリコートし、ストックを−80℃で凍結した。
【0104】
バルプロ酸(VA)実験
バルプロ酸(Sigma−P4543)を、水中で1M濃度となるように溶解した。V27細胞を、6x10
5細胞/ウェルでの感染の前日に6ウェルプレート中に播種した。1Mバルプロ酸をDMEM−10%FBS 1mlに加え、5μMの濃度を達成した。これをよくボルテックスし、ウェルに添加した。プレートを6時間インキュベートし、吸引し、感染性HSV−1 d27−1ストックを、DMEM(添加物なし)1mlあたりMOI0.15(=細胞播種密度x0.15/pfu力価のHSVストック)で添加した。
【0105】
ウェルあたり感染性接種物1mlを添加し、37℃、5%CO
2インキュベータで1〜2時間インキュベートした後、DMEM−10%FBS 1.5mlを添加した。プレートを70〜74時間、インキュベータに戻した。遊離培地を収穫し、ボルテックスし、1,100xgで10分間、4℃で遠心分離した。上清を新しい分注チューブに移し、ボルテックスし、アリコートした。ストックを−80℃で凍結した。
【0106】
rAAV産生
293細胞(2.5x10
6個)に、Kangら、Gene Ther(2009)16:229〜239頁により記載されたようにrHSV−rep2/cap2とrHSV−EGFPベクターの両方を同時に感染させた。感染後2〜4hで、感染性培地をDMEM+10%FBS等価物と交換し、感染前培養容量を倍化した。収穫時に、細胞ペレットを−80℃で凍結した。DRP力価を、96ウェルブロックサーモサイクラー(Applied Biosystems;7500 Real Time PCR system)中でのリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)により定量した。粗試料を3サイクルの凍結および解凍にかけた後、ベンゾナーゼ(250U/ml)、2mM MgCl
2、1%最終濃度タンパク質等級Tween80(Calbiochem)の存在下でインキュベートし、37℃で60minインキュベートした後、50℃で60min、0.25%トリプシン(Gibco)で消化した。最後に、37℃で30min、DNaseI(50U/ml;Promega)で処理した後、次いで95℃で20min変性させた。線状化されたプラスミドpDC67/+SV40を用いて、標準曲線を作製した。プライマー−プローブセットは、サルウイルス40(SV40)ポリ(A)配列:rAAV−F:5’−AGCAATAGCATCACAAATTTCACAA−3’(配列番号4);rAAV−R:5’−GCAGACATGATAAGATACATTGATGAGTT−3’(配列番号5);rAAV−プローブ:5’6−FAM−AGCATTTTTTTCACTGCATTCTAGTTGTGGTTTGTC−TAMRA−3’(配列番号6)に特異的であった。PCR産物の増幅を、以下のサイクリングパラメータ:50℃で2minの1サイクル、95℃で10minの1サイクル;95℃で15secおよび60℃で60secの40サイクルを用いて達成した。
【0107】
ヒトゲノムアレイ
集密な293細胞(75cm
2フラスコ中の2.4x10
6個の細胞)を、およそ20hにわたってDMEM+10%FCS中で培養した後、1プラーク形成単位/細胞(PFU/細胞)のHSV−1 MacIntyre株を90min感染させた。20μM(最終)濃度のATAを感染の90min後に添加した。感染細胞を感染の24h後に収穫した。十分な品質および量の全RNAを、製造業者の説明書に従ってRNeasy Plus Mini Kit(QIAGEN、Valencia、CA)を用いて懸濁液から単離した。全ゲノム発現プロファイリングを、Asuragen,Inc.によるAffimetrix Human U133 Plus 2.0Array上で行った。3μgの全RNAを入力材料として提供した。
【0108】
全体として、バイオアナライザ上で評価されたRNAの品質は、9を超えるRIN値を有していた。アレイハイブリダイゼーションおよびスケーリング係数は、通過品質制御範囲内にあった。走査の後、生の発現CELファイルを、Affymetrix Expression Console vs.1.1.2(affymetrix.com)でプロセッシングした。各CELファイルを、Robust Multichip Analysis(RMA)でプロセッシングし、まとめた表をテキストファイルとしてエクスポートした。下流ゲノミクスおよび統計分析を、JMPゲノミクス(バージョン5)(jmp.com/software/genomics)を用いて行った。第1に、フィルタリング工程を適用して、低い発現、具体的には、8つの試料のうちの少なくとも2つにおいてlog
2モードで6未満の値を濾過除去した。54,675の全Affy U133 Plus2プローブのうち、41,569(76%)のプローブがカットオフの後に残った。2つの陽性対照試料、良好にハイブリダイズした、それぞれ、ヒト脳およびプールされたヒトユニバーサル参照RNAも見られた。将来の分析のために、これらの2つの試料を除外した。
【0109】
主成分分析により、HSVを用いて、および用いずに処理された試料である2つの異なる集団が示された。したがって、第1の主成分分離(91.7%)は、HSVとビヒクルの効果によって説明される。データを各プローブにわたって中央正規化して、0の中央シグナルを得た。ANOVAを行い、HSVとビヒクルの間、ATAとビヒクルの間、HSV+AVAとビヒクルの間、およびHSV+ATAとHSVのみの間の有意な転写差を見出した。複数の試験補正を含まず、0.01未満のp値を有するものを有意な遺伝子と考えた。
【0110】
自立性マップを用いて、ビヒクル、HSV1、およびHSV1+ATAの間での発現パターンを検査した。ATA処理により上方調節または下方調節される特異的転写物を見出すことが望ましかった。HSVの存在下でいくらかの刺激を示した異なる遺伝子クラスターが見出され、ATA補正はこれらの遺伝子をビヒクルのベースラインまで戻した。同様に、ビヒクルと比較してHSVにより示された遺伝子クラスターも見出され、続いて、ATAを用いる処理により活性化された。これらのものを、それぞれ、クラスターAおよびBと呼んだ(表1および表2を参照されたい)。分析を追跡して、GeneGoソフトウェア(genego.com)を用いてこれらのクラスターの生物学的機能を問い合わせた。
【0111】
RT
2Profiler(商標)PCRアレイ(SABiosciences−QIAGEN)
6x10
5個の293細胞(AGTCから)を、50μMのATAを含むか、または含まないDMEMおよび10%FBSの存在下で1〜2時間、MOI 1でwtHSV−1 McIntyre株に感染させ、DMEMおよび10%FBSで40%に希釈した(最終ATA濃度20μM)。Qiagen RNeasyミニキットを用いて24h後に3回、全RNA試料を収穫し、カラム上でDNase処理し、溶出させた。溶出液RNAの3回試料を合わせ、分光光度計O.D.の読取りを260および280nmで溶出液に対して行い、濃度を決定した。試料RNAを、SABiosciences RT2第一鎖キットを用いて鋳型cDNAに変換した。次いで、cDNAを、ヒトJAK/STATシグナリング経路PCRアレイ(PAHS−039A)中で用いた。
【実施例1】
【0112】
ATAを用いるV27細胞中でのHSV誘導iNOSレベルの阻害
Dulbecco’s Modified Eagles Medium(DMEM)(Hyclone、Waltham、MA)中のV27細胞を、1のMOIでHSV−1 d27.1ベクターに感染させ、10%ウシ胎仔血清(FBS)を用いて、または用いずに30μMのATA(Sigma、St.Louis、MO)で処理した。ATAを用いない対照実験も行った。V27細胞溶解物を感染の24時間後(h.p.i.)に得て、溶解物に対してウェスタンブロットを実行し、iNOSタンパク質を精製ウサギ抗iNOS/NOS TypeIIpAb(BD Biosciences、カタログ番号610332)を用いることにより検出した。結果を
図1に示す。
【0113】
示されるように、HSV感染は、ATAを含まない培養物中でのiNOS発現を誘導した(レーン4および5)。iNOS発現は、30μMのATAの存在下で阻害された(レーン2および3)。10%FBSの存在または非存在は、iNOS発現に対する効果を有さなかった。
【実施例2】
【0114】
ATA−HSVプロトコールの最適化
ATAがV27細胞中でのrHSV−1 d27−1(d27−1)ベクター収量を増加させることができるかどうかを試験するために、ATAを感染(工程1)または希釈工程(工程2)の間に培地に印加した(
図2A)。MOI=0.15でのd27−1感染を、最終培地容量の2/5で行い、残りの3/5の培地を希釈工程の間に添加した。
【0115】
ATA処理は、V27細胞単層中でのHSV−1プラーク形成または細胞溶解を遅延させた。収穫時、感染の72時間後(hpi)の細胞変性効果(CPE)は、ATAの非存在下での100%CPEと比較して20〜60%であった。HSV−1感染工程中のATAによる処理(工程1でのATA)により、72hpiで収穫されたV27細胞上清におけるd27−1力価の増加が示された(
図4B)。感染工程(ATA I)中に添加された場合の最適ATA濃度は50μMであり、残りの3/5volの培地を添加することにより、希釈工程中に20μM ATAの最終濃度(f.c.)にこれをさらに希釈した。この場合、ATAは収穫時(72h.p.i.)の上清中のd27−1力価を約10倍増加させた:4.0±0.3x10
7DRP/mlまたは1.4±0.2x10
7PFU/mlから3.7±0.2x10
8DRP/mlまたは1.2±0.3x10
8PFU/ml(
図4B)。
【0116】
ATA添加のための濃度および条件がHSV収量に対して影響するかを決定するために、以下の実験を行った。変化する濃度のATAを、以下のように2工程で6ウェルプレート(
図2B)またはT150フラスコ(
図2C)中でHSV−1 d27−1ベクターに感染させたV27培養物に添加した。プロトコールの工程1において、V27細胞を、10%FBSおよび0〜60μMのATA濃度を含むDMEMの最終容量の2/5中で0.15MOIのrHSVベクターに感染させた。細胞を37℃で1〜2時間培養し、工程1を完了させた。工程2において、3/5の最終培地容量の添加により、ATAの濃度を12〜24μMの範囲に低下させた。細胞を37℃で70〜74時間培養し、上清を収穫した。ウイルス力価を、1mlあたりのDnase耐性粒子(DRP/ml)またはプラーク形成単位(pfu/ml)として表し、上記のように決定した。
【0117】
結果を
図2Bおよび2Cの両方に示し、最適なATA濃度を太字で示す。見られるように、6ウェルプレート(
図2B)とT150フラスコ(
図2C)の両方において、工程1または工程2のいずれかでATAを添加した培養物は、ATAを用いないものよりも有意に高いHSV力価を有していた。さらに、最も高い力価は工程1における50μMのATA濃度で見られ、工程2で20μMまで低下したが(
図2B)、全濃度のATAはATAを欠く培養物よりも高いウイルス力価をもたらした。
【0118】
さらなる実験を行って、最適な条件およびHSV力価に対するFBSの存在または非存在の効果を決定した。ATA含有培地中の血清、特に、10%ウシ胎仔血清(FBS)の存在が、ATAにより誘導されるHSV−1力価収量のための最も重要なパラメータであった。希釈工程中の無血清培地中へのATAの追加(工程2でのATA)は、ウイルス力価の低下をもたらし、「DRP」力価は対照レベルより下まで低下し、PFU/ml力価は検出以下であった(
図3)。無血清培地中のさらにより劇的な効果は、3μM濃度で出発するATAを感染工程1の間に追加した場合に認められ、DRP/mlおよびPFU/ml力価の両方が検出限界以下であった。
【0119】
この実験において、V27細胞を、6x10
5細胞/ウェルでの感染の前日に6ウェルプレート中に播種した。HSV2x感染溶液を以下のように製造した:HSV−1 d27.1ストックを2x力価でDMEM(FBSなし)に添加し、細胞を最終MOI0.15で感染させた。DMEM中の100μMまたは40μMのATAを含有し、FBSを含まないか、または20%FBSを含む、いくつかの2xATA溶液の組合せを製造した。
【0120】
HSV2x感染溶液を、等量のDMEM−/+20%FBSまたは所望の2xATA溶液−/+20%FBSのいずれかと混合し、ボルテックスし、ウェルあたり感染性接種物1mlを工程1において添加した。ウェルが工程1においてATAを含有していた場合、その濃度は50μMであり、全ウェルを1〜2hインキュベートした。工程2においては、さらに1.5mlのDMEM組合せ−/+40μM ATAおよび−/+20%FBSを添加した。ウェルが工程1であっても工程2であってもATAを含有していた場合、最終ATA濃度は20μMであった。プレートを70〜74時間にわたってインキュベータに戻した後、遊離培地を収穫し、ボルテックスし、1,100xgで10分間、4℃で遠心分離した。上清を新しい分注チューブに移し、ボルテックスし、アリコートし、ストックを−80℃で凍結した。
【実施例3】
【0121】
ATA−HSVプロトコールにおける血清の存在の重要性
さらなる実験を行って、最適な条件およびHSV力価に対するFBSの存在または非存在の効果を決定した。ATA含有培地中の血清、特に、10%ウシ胎仔血清(FBS)の存在が、ATAにより誘導されるHSV−1力価収量のための最も重要なパラメータであった。希釈工程中の無血清培地中へのATAの追加(工程2でのATA)は、ウイルス力価の低下をもたらし、「DRP」力価は対照レベルより下まで低下し、PFU/ml力価は検出以下であった(
図3)。無血清培地中のさらにより劇的な効果は、3μM濃度で出発するATAを感染工程1の間に追加した場合に認められ(データは示さない)、DRP/mlおよびPFU/ml力価の両方が検出限界以下であった。
【0122】
この実験において、V27細胞を、6x10
5細胞/ウェルでの感染の前日に6ウェルプレート中に播種した。HSV2x感染溶液を以下のように製造した:HSV−1 d27.1ストックを2x力価でDMEM(FBSなし)に添加し、細胞を最終MOI0.15で感染させた。DMEM中の100μMまたは40μMのATAを含有し、FBSを含まないか、または20%FBSを含む、いくつかの2xATA溶液の組合せを製造した。HSV2x感染溶液を、等量のDMEM−/+20%FBSまたは所望の2xATA溶液−/+20%FBSのいずれかと混合し、ボルテックスし、ウェルあたり感染性接種物1mlを工程1において添加した。ウェルが工程1においてATAを含有していた場合、その濃度は50μMであり、全ウェルを1〜2hインキュベートした。工程2においては、さらに1.5mlのDMEM組合せ−/+40μM ATAおよび−/+20%FBSを添加した。ウェルが工程1であっても工程2であってもATAを含有していた場合、最終ATA濃度は20μMであった。プレートを70〜74時間にわたってインキュベータに戻した後、遊離培地を収穫し、ボルテックスし、1,100xgで10分間、4℃で遠心分離した。上清を新しい分注チューブに移し、ボルテックスし、アリコートし、ストックを−80℃で凍結した。
【実施例4】
【0123】
培養物中の野生型HSV力価に対するATAの効果
図4Aは、wtHSV−1増殖を許容する細胞系:293細胞、HeLa細胞およびVero細胞におけるwtHSV−1株、KOSおよびMcIntyreの両方の上清力価を示す。wtHSV−1株KOSおよびMcIntyreを、50μMのATAを工程1で添加し、工程2の後に最終濃度を20μMのATAに希釈するATA−HSVプロトコールを用いて、293細胞、HeLa細胞およびVero細胞中で増殖させた。ウイルスを含有する上清を、上記のように3日後に収穫した。ATAは、Vero細胞においては両方のウイルス型の収量を増加させた。wtHSV−1 McIntyre株は293細胞中ではATA誘導後に最も高い力価に達したが、ATAは293細胞中ではHSV−1 KOS成長を阻害すると考えられた。最後に、ATAはまた、HeLa細胞中では両方の型のHSV−1ウイルスを阻害すると考えられた。二元配置ANOVA;Bonferroni検定;−ATA対+ATA:
***p<0.001、ns:p>0.05;n=4独立実験。
【0124】
統計計算のために、10回の独立実験のセット(n=10)を用いるより大規模な試験を、感染工程(工程1)中にATAを添加して、または添加せずに6ウェルプレート中で行い、複製欠損d27−GFPおよびまた、ATAが同様にwtHSV−1株中で力価を増加させることができるかどうかを調査するためにwtHSV−1 McIntyre株と比較した(
図4B)。感染工程(工程1)中にATAを50mMで、d27−1についてはV27細胞またはwtHSV−1 McIntyreについては293細胞の集密な細胞単層に添加し、細胞をMOI=0.15のベクターに感染させたが、ATAを1h後に最終20mM濃度に希釈した。二元配置ANOVAおよびBonferroni検定により分析された通り、ATA添加後、d27−1力価は、5.4x10
7DRP/mlまたは1.1x10
8DRP/ml(
**P<0.01)から6.1倍有意に増加し、wtHSV−1 McIntyreは3.3x10
8DRP/mlまたは1.0x10
9DRP/ml(
***P<0.001)から9.1倍有意に増加した(
図4B)。
【実施例5】
【0125】
rAAVビリオンの産生に対するHSVストック中のATAの効果
HSV産生中のATAの存在がHSVベクターを用いて産生されたrAAVビリオンの収量に影響したかどうかを決定するために、rAAV力価が、293細胞中で産生されたrHSV−1ストックから存在するATA残留物により影響されたことを示す以下の実験を実施した(
図5A)。異なる濃度のATA濃度(12μMまたは20μM最終濃度)の下で製造されたATAを含有するrHSV−1ストックを用いて60mmプレート中の293細胞中でrHSV−rep2/cap2およびrHSV−EGFPベクターの同時感染により、rAAV−GFPベクターを産生した(材料および方法を参照されたい)。rAAV DRP/ml力価は、感染中に20μM ATAを添加して製造された(ATA工程1)rHSV−rep2/cap2ストックを用いた場合に、rAAV産生中のATA濃度がおよそ3μMであった「ATAなし」対照(
*p<0.05)に対してわずかに1.3倍増加した。有意なrAAV力価の増加は、12μM ATAを用いて製造されたrHSV−rep2/cap2ストックを用いた場合に検出された(
図5A)。一元配置ANOVA;Tukey検定:*p<0.05;20μM ATA対ATAなし;n=4独立実験。
【0126】
別の実験において、ATAは、10μMのATAを2hのrHSV−rep2/cap2およびrHSV−EGFP同時感染工程中に293細胞培地に直接加えた場合、rAAV力価を増加させることが示された。この効果は、ATA濃度が20μMよりも高い場合には観察されなかった(
図5B)。
【実施例6】
【0127】
ATAの作用機序
ヒトゲノムアレイによるATAの作用機序ならびにVeroとV27がサル由来細胞系であるという事実を明らかにするために、wtHSV−1増殖を、いくつかのヒト細胞系中で試験した(
図4A〜4B)。2つの野生型HSV−1(wtHSV−1)株、KOSおよびMcIntyreの増殖を、3つの細胞系:ヒト胚性腎293(293細胞)、ヒト子宮頸がんHeLa細胞およびアフリカミドリザル腎上皮Vero細胞において比較した。実験を、50μMのATAを感染工程中に追加し、20μM ATA濃度にさらに希釈するATA Iプロトコールスキームに従って10%FBS含有培地中で実行した(材料および方法を参照されたい)。ヒト由来293細胞においては、wtHSV−1 McIntyreウイルス力価のみが、1.4x10
8DRP/mlから1.2x10
9DRP/mlまで、ATAにより有意に増加した(
***p<0.001)。Vero細胞においては、ATAはwtHSV−1 KOS株においてのみ、1.7x10
8DRP/mlから9.1x10
8DRP/mlまで力価を有意に増加させた(
***p<0.001;両統計値:二元配置ANOVA、Bonferroni検定;n=4)。驚くべきことに、HeLa細胞においては、ATAはKOSとMcIntyre HSV−1株の両方の増殖を阻害すると考えられた。
【0128】
wtHSV−1 McIntyre感染に対する細胞応答遺伝子特性を同定するために、24hにわたってモック処理された、ATA処理された(ATA)、wtHSV−1 McIntyre感染した(HSV)か、またはATA処理され、wtHSV−1 McIntyre感染した(HSV&ATA)293細胞と共にAffymetrix Human U133 Plus2.0 Arrayを用いて転写プロファイリングを行った。感染またはATA処理により誘導された遺伝子発現の変化を、未感染の細胞試料中で一致するものに対して各プローブの遺伝子発現レベルを参照することにより同定した。HSV−1感染のみが、未処理の細胞遺伝子プロファイルと比較した場合、293細胞の遺伝子発現プロファイルに対する強い影響を有していた。
【0129】
第1に、フィルタリング工程を適用して、低い発現を濾過除去したところ、54,675の全Affy U133 Plus2プローブのうち、41,569(76%)のプローブがカットオフ後に残った。主成分分析により、2つの異なる集団、HSVで処理した試料およびHSVで処理しない試料が示された。ANOVAを行って、HSVとビヒクルの間、ATAとビヒクルの間、HSV+AVAとビヒクルの間、およびHSV+ATAとHSVのみの間の転写の有意差を見出した。0.01未満のp値を有意な遺伝子と考えた。自立性マップを用いて、ビヒクル、HSV1、およびHSV1+ATAの間の発現パターンを検査した。異なる遺伝子クラスター、クラスターAおよびB(表1および表2)が見出され、HSV−1により引き起こされた転写プロファイルの変化およびATAによるその補正を示し、これらの遺伝子をビヒクルベースラインまで戻した。
【0130】
これらのクラスターの生物学的機能を、GeneGoにおいて分析した。クラスターA(表2)は、58のプローブであり、HSV−1における上方調節およびATAの添加後の抑制を示した。これらの遺伝子は主に、炎症性IgEおよびIFNシグナリング、ならびに一般的な免疫応答に関与していた。クラスターB(表1)は152のプローブであり、HSV−1による下方調節およびそれらをビヒクルベースラインまで戻すことによりその後のATA上方調節を示した。このクラスター中の遺伝子は、細胞周期G1/S、PTENにおけるシグナル伝達、およびWNT発生に主に関与していた。例えば、HSV−1の存在下でのATAは、細胞周期進行経路に由来するCDC25A、CDKN1A、CDKN1C、CCNK、CNNM2遺伝子およびFOXC1、FOXD3、FOXO3のようなRas/Raf/MEK経路に由来する遺伝子を上方調節した(表1を参照されたい)。
【0131】
表3Aおよび3Bは、Affymetrix Gen Arrayにより分析された場合、HSV ATA試料におけるnNOS、iNOSおよびeNOS発現の低下を示し、Qiagene SAB Jak−Stat RT−PCR Microarrayにより分析された場合、HSV+ATA試料におけるiNOS発現の低下を示す。
【実施例7】
【0132】
HSV収量に対するデキサメタゾンの効果
iNOS阻害剤であるデキサメタゾンもまた培養物中でのrHSV収量を増加させたかどうかを決定するために、以下の実験を行った。
図6は、d27−1/GFP HSV−1ウイルス力価に対するデキサメタゾンの効果を示す。最終的な力価d27−1/GFP HSV−1は、一般に、未処理対照と比較してdex予備処理または処理の後にわずかに上昇した。
【0133】
V27細胞を、6x10
5細胞/ウェルでの感染の前日に6ウェルプレート中に播種し、次の日、異なる濃度のデキサメタゾン(dex)を、HSV−1感染の前(予備処理)または感染中(処理)に、2/5volのDMEM−10%FBS培地中、ウェルに添加した。37℃で1〜2時間インキュベートした後、3/5volのDMEM−10%FBSを添加した。培養物をインキュベータに戻し、上清を70〜74時間後に収穫した。データを、力価の平均値±S.D.としてpfu/ml(n=2)で示す。
【実施例8】
【0134】
HSV収量に対するバルプロ酸の効果
iNOS阻害剤であるバルプロ酸もまた培養物中でのrHSV収量を増加させたかどうかを決定するために、以下の実験を行った。
図7は、d27−1/GFP HSV−1ウイルス力価に対するバルプロ酸(VA)による予備処理の効果を示す。5mM濃度のVAは、d27−1/GFP HSV−1の力価をわずかに上昇させたが、5mM未満およびそれを超える濃度は、未処理の対照と比較した場合、d27−1/GFP HSV−1力価に対する阻害効果を有すると考えられた。
【0135】
V27細胞を、6x10
5細胞/ウェルでの感染の前日に6ウェルプレート中に播種し、次の日、異なる濃度のVAを、ウェルに添加した。プレートを6hインキュベートし、吸引し、感染性HSV−1 d27−1ストックを含有する2/5volの培地を添加し、37℃で1〜2時間インキュベートした後、3/5volのDMEM 10%FBS培地を添加した。培養物をインキュベータに戻し、上清を70〜74時間後に収穫した。
【0136】
前記実施例に示された通り、マイクロモル濃度のATAは、HSV−1ベクター収量を増加させる。この知見は、大規模HSV産生、ならびにrHSVおよびrAAVベクター産生の両方にとって重要である。さらに、および驚くべきことに、rHSV−1ストック中のATAの存在は、rAAV収量に負の影響を及ぼさなかった。ミリモル量およびそれより高い濃度のATAは抗ウイルス剤であることが知られているため、この結果は驚くべきものである(Cushmanら、J.Med.Chem.(1991)34:329〜337頁;Zhangら、Antiviral Res.(1999)43:23〜35頁;Yapら、Computational Biol.and Chem.(2005)29:212〜219頁;De Clercq、Advents, Advances, and Adventures Med.Res.Rev.(2011)31:118〜160頁)。無血清培地中では、本発明者らは、マイクロモル濃度でのATAの可能性がある抗ウイルス効果も観察したが、血清(10%FBS)の存在下では観察しなかった。
【0137】
本明細書に示されるように、ATA処理は、V27細胞単層中でのHSV−1プラーク形成および細胞溶解ならびに細胞変性効果(CPE)を遅延させ、抗アポトーシス性質を示している。HSV−1収量の増加におけるATAの作用機序は、HSV−1産生およびウイルスクリアランスを担う細胞自然抗ウイルス免疫応答の低下にとって必要とされる因子の変化を含むと考えられる。上記のヒトゲノムアレイ分析から、HSV−1感染単独で293細胞の遺伝子発現プロファイルに強く影響し、ATAの効果はHSV−1とATAの両方で処理された細胞において多く観察されることが発見された。細胞周期G1/S、PTENにおけるシグナル伝達、およびWNT発生に関与する遺伝子は、HSV−1により有意に下方調節され、ATAの添加後に上方調節された。
【0138】
炎症性IgEおよびIFNシグナリング、ならびに一般的な免疫応答に主に関与する遺伝子は、HSV−1によって上方調節され、ATAの添加後に抑制された。HSV−1の存在下では、ATAは細胞周期進行経路に由来するCDC25A、CDKN1A、CDKN1C、CCNK、CNNM2遺伝子およびFOXC1、FOXD3、FOXO3などのRas/Raf/MEK経路に由来する遺伝子を上方調節した。
【0139】
遺伝子療法および他の適用のための大規模生産のためには、より高いHSV−1ベクター収量が必要であるため、ATAがHSV−1収量を増加させることができるという知見は重要である。
【0140】
かくして、iNOS阻害剤を用いてウイルス収量を増加させるための方法が記載される。対象となる発明の好ましい実施形態がいくらか詳細に記載されたが、本明細書に定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、明らかな変更を加えることができることが理解される。
【0141】
【表1】
【0142】
【表2】
【0143】
【表3】
【0144】
【表4】
【0145】
【表5】
【0146】
【表6】
【0147】
【表7】
【0148】
【表8】
【0149】
【表9】
【0150】
【表10】
【0151】
【表11】