特許第6534979号(P6534979)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6534979
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】低溶解性化合物の安定な複合体
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/32 20060101AFI20190617BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20190617BHJP
【FI】
   A61K47/32
   A61K9/00
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-169245(P2016-169245)
(22)【出願日】2016年8月31日
(62)【分割の表示】特願2015-141952(P2015-141952)の分割
【原出願日】1999年9月21日
(65)【公開番号】特開2016-196515(P2016-196515A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2016年9月30日
【審判番号】不服2017-16316(P2017-16316/J1)
【審判請求日】2017年11月2日
(31)【優先権主張番号】60/101336
(32)【優先日】1998年9月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/136531
(32)【優先日】1999年5月28日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ エー.アルバノ
(72)【発明者】
【氏名】ワンタニー フュアプラディト
(72)【発明者】
【氏名】ハープリート ケー.サンドフ
(72)【発明者】
【氏名】ナブニット ハーゴビンダス シャー
【合議体】
【審判長】 大熊 幸治
【審判官】 長谷川 茜
【審判官】 淺野 美奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−155263(JP,A)
【文献】 国際公開第97/08950(WO,A1)
【文献】 国際公開第98/00113(WO,A1)
【文献】 特開平1−233281(JP,A)
【文献】 特開平9−208459(JP,A)
【文献】 特開昭51−118816(JP,A)
【文献】 国際公開第97/04782(WO,A1)
【文献】 Chem Pharm Bull,1985, Vol.33, No.1,pages 388−391
【文献】 J Pharm Sci,1997, Vol.86, No.1,pages 1−12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAPlus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定なアモルファス治療活性化合物及び溶解度がpH依存性であり、80,000D超の分子量を有し、且つ50℃又はそれより高いガラス転移温度を有するイオン性ポリマーの複合体を含んで成る薬理製剤の調製のための方法であって:
(a)当該治療活性化合物及びイオン性ポリマーを適当な溶媒の中に溶解し;
(b)段階(a)の溶液を、当該イオン性ポリマーが低溶性となるpHの水性溶液と接触させ、これにより当該治療活性化合物及びイオン性ポリマーを化合物/ポリマー複合体としてマイクロ沈殿させ;
(c)段階(b)の前記化合物/ポリマー複合体を含む薬理製剤を調製する;
ことを含んで成る方法。
【請求項2】
前記段階(a)において、前記治療活性化合物及びイオン性ポリマーを、エチルアルコール、メチルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、Transcutol(登録商標)(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、グリコフラル、プロピレンカーボネート、テトラヒドロフラン、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールから成る群より選ばれる溶媒の中に溶解する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記段階(b)において、マイクロ沈殿を、前記溶媒をスプレードライ又は凍結乾燥することにより除去することにより実施する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記段階(a)において、前記治療活性化合物及びイオン性ポリマーをpHの調整により溶解する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記段階(b)の後、残留溶媒を除去する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記残留溶媒を前記化合物/ポリマー複合体の洗浄により除去する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記残留溶媒をエバポレーション又は乾燥により除去する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記残留溶媒をスプレードライにより除去する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
安定なアモルファス状の治療活性化合物及び溶解度がpH依存性であり、80,000D超の分子量を有し、且つ50℃又はそれより高いガラス転移温度を有するイオン性ポリマーの複合体を含んで成る薬理製剤の調製のための方法であって:
(a)結晶状態にある当該治療活性化合物及びイオン性ポリマーを有機溶媒に溶解し;
(b)段階(a)の生成物を当該イオン性ポリマー及び治療活性化合物が化合物/ポリマー複合体として沈殿するpHの水性溶液と接触させ;
(c)当該化合物/ポリマー複合体を洗浄し;
(d)当該化合物/ポリマー複合体を乾燥し;そして
(e)段階(d)の洗浄且つ乾燥した化合物/ポリマー複合体を含む薬理製剤を調製する;
ことを含んで成る方法。
【請求項10】
前記化合物/ポリマー複合体の中に含まれている前記治療活性化合物が主にアモルファス状態にある、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記イオン性ポリマーがEudragit E100(登録商標),Eudragit L100(登録商標),Eudragit L100−55(登録商標)及びEudragit S100(登録商標)から成る群より選ばれる、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
安定なアモルファス治療活性化合物及び溶解度がpH依存性であり、80,000D超の分子量を有し、且つ50℃又はそれより高いガラス転移温度を有するイオン性ポリマーを含んで成る複合体を含んで成る薬理製剤を調製するための方法であって:
(a)当該治療活性化合物及びイオン性ポリマーを超臨界流体に溶解し;
(b)当該超臨界流体を除去して当該ポリマーの複合体中に当該治療活性化合物をマイクロ沈殿させ;そして
(c)段階(b)の生成物を含む薬理製剤を調製する;
ことを含んで成る方法。
【請求項13】
前記段階(a)において利用する超臨界流体が液体窒素及び液体二酸化炭素から成る群より選ばれる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記段階(b)における超臨界流体の除去をエバポレーションにより達成せしめる、請求項12又は13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明はイオン性ポリマーの中に分散されたアモルファス状の治療活性化合物(例えば薬剤)から成る安定な水不溶性複合体を含んで成る薬理組成物を提供する。本発明に係る複合体は低溶性を治療活性化合物の生物有用度の有意な向上を供する。
【0002】
治療活性化合物の生物有用度は一般に(i)当該化合物の溶解度/溶解速度及び(ii)被検体の胃腸膜を通じての当該化合物の分配係数/透過度により左右される。治療活性化合物の低い生物有用度の主たる原因はその化合物の低い溶解度/溶解速度にある。低い生物有用度には往々にして望ましくない程に高い率の患者間変動、及び患者による治療活性化合物(例えば薬剤)の異常吸収による予測できない投与/治療作用が付随する。
【0003】
低溶性の治療活性化合物の生物有用度を高めるためにいくつかの技術が利用されている。これらの技術を以下にまとめる。
【0004】
1.粒子サイズ(粒径)の縮小:低溶性治療活性化合物は往々にしてその化合物の粒径を小さくし、その結果表面積を増大させるために機械的に粉砕される。Lachman ら、The Theory and Practice of Industrial Pharmacy、第2章、p.45 (1986)を参照のこと。ミクロンサイズの粒子に至る粒子サイズの縮小はジェットミルを利用して達成される。ジェットミルにより得られる平均粒子サイズは典型的には1〜10μmの範囲にある。同様に、保護コロイド又はポリマーの存在下での治療活性化合物のウェットミリングは一般に約300〜800nmの範囲における化合物の粒子サイズを供する。この技術に従うと、治療活性化合物及びポリマーを水に分散し、そして粉砕媒体、例えば小ビーズ(0.2〜0.5mm)により粉砕する。米国特許第5,494,683号参照のこと。しかしながら、粒子サイズの縮小は治療活性化合物の溶解速度を改善することしかできず、溶液中の平衡状態にある化合物の総量を改善することはできない。
【0005】
2.固体分散体
2.1 融合法:この技術に従うと、治療活性化合物は非イオン性ポリマーの中に分散され、固体分散体を形成する。典型的には、この非イオン性ポリマー(例えばPluronic(登録商標)及びポリエチレングリコール)をその融点より高い温度に溶融させ、そしてこの治療活性化合物を撹拌しながら溶融ポリマーの中に溶解する。米国特許第5,281,420号を参照のこと。得られる溶融塊を次いで室温にまで冷却する。この工程の結果、この治療活性化合物はポリマーの中に融合し、そして冷却すると、アモルファス状態で沈降析出する。このアモルファス状態の化合物は一般に当初の結晶状態の化合物よりも速い溶解速度を有する。かくして、この化合物をアモルファス状態にすることにより、この方法は生物有用度を改善する。しかしながら、非イオン性ポリマーの一層高い水溶解度及び低融点に基づき、アモルファス状態の治療活性化合物はその安定性を維持できず、そして長期間の貯蔵の際に往々にして遭遇する高湿度及び高温への曝露を経て最終的にその結晶状態にもどり変換する。Yoshiokaら、J. Pharm. Sci. 83 : 1700-1705 (1994)。
従って、この技術は治療活性化合物のほとんどの剤型に適さず、そして低溶性を有する治療活性化合物には確実に適さない。
【0006】
2.2 共沈殿:低溶性治療活性化合物の生物有用度を改善するための別に存在している方法においては、その化合物と非イオン性親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドンを有機溶媒に溶解する。この溶媒をエバポレーションにより除去し、その間に治療活性化合物は親水性ポリマーマトリックスの中へと沈殿する。H. G. Britain, Physical Characterization of Pharmaceutical Solids, Drugs and Pharmaceutical Sciences, Vol.70 (Marcel Dekker, Inc., N. Y., 1995)を参照のこと。このポリマーの吸湿性及び水性溶解性に基づき、このタイプのポリマーはアモルファス状態の治療活性化合物を熱及び水分から守ることができない。かくして、親水性ポリマーマトリックス中の治療活性化合物はアモスファス状態のままでいることはなく、そして貯蔵の間に最終的に結晶状態へと変換する。従って、このアプローチは低溶性治療活性化合物の生物有用度を改善するのには実用的でない。
【0007】
3.自己乳化性ドラッグデリバリーシステム(SEDDS):このシステムにおいては、治療活性化合物は適当な油と乳化剤との混合物の中に溶解される。得られる脂質製剤は、胃腸内流体に対する曝露により、非常に微細なエマルション又はマイクロエマルションを形成する。油性小滴の大きな表面積により、かかる油の中に溶解した低溶性治療活性化合物の生物有用度は有意に上昇する。P. P. Constantinides, Pharm. Res. 12 (11) : 1561-1572 (1995)参照。このシステムの利用についての重要な要件はこの治療活性化合物が油の中で可溶性であり、そして油に一旦溶けたら、溶液中で安定な状態であり続けなくてはならないことにある。従って、SEDDSはほとんどの治療活性化合物の油性溶液内での限られた溶解度及び不満足なる安定性に基づきそれらの化合物にとって有用な代替物ではない。
【0008】
我々は低溶性治療活性化合物(一般には結晶状態にあるとき)が約80,000D超の分子量を有し且つ約50℃又はそれより高いガラス転移温度を有する水不溶性イオン性ポリマーの中に分子的に分散されると、その化合物(アモルファス状態となっている)の物理的安定性は高温及び高温保存条件下でさえも長期間維持されることを驚くべきことに見い出した。イオン性ポリマーの高分子量及び高ガラス転移温度、並びにそれらの水の中での相対的不溶性に基づき、このイオン性ポリマーはアモルファス状態における治療活性化合物を固定化し、それ故現状有用な方法により提供されるものに勝る優れた化合物安定性を供する。更に、この化合物/ポリマー複合体中のこの化合物の高まった溶解度に基づき、この治療活性化合物の生物有用度も有意に改善される。従って、本方法は低溶性治療活性化合物の生物有用度を改善するために極めて有用である。
【0009】
本発明は約80,000D超の分子量を有し、且つ約50℃以上のガラス転移温度を有する水不溶性イオン性ポリマーである担体巨大分子及びアモルファス状の治療活性化合物から成り、ここで当該治療活性化合物が当該イオン性ポリマーの中に安定なアモルファス状態で一体化又は分散して化合物/ポリマー複合体を供している、安定な水不溶性複合体を含んで成る薬理組成物を提供する。本発明の別の観点はこの水不溶性化合物/ポリマー複合体にある。本発明の複合体は当該治療活性化合物の当該担体内でのマイクロ沈殿により形成される。
【0010】
本発明の化合物/ポリマー複合体は固体の形状であってよく(例えばペースト、顆粒又は粉末)、それはカプセルの中に充填できるか、又は錠剤へと圧縮できる。粉末形状の複合体は安定な液体懸濁物又は半固体分散体を形成するよう十分に微粉砕又はマイクロナイズ化してもよい。本発明の複合体は非経口投与のためのin vivo投与の前に例えばガンマ−照射又は電子線照射により滅菌してよい。
【0011】
本発明は約80,000D超の分子量を有し、且つ約50℃以上のガラス転移温度を有する水不溶性イオン性ポリマー担体と、安定なアモルファス状態における治療活性化合物とから成る安定な水不溶性複合体に関する。本発明は更にかかる複合体、及びかかる複合体を含む薬理製剤の作製方法にも関連する。本発明の複合体の利点には、相対的に不溶性な治療活性化合物の生物有用度を実質的に高める能力、及びかかる化合物を長期間にわたり搬送する能力(即ち、かかる化合物の血流への持続放出)が含まれる。
【0012】
本明細書において用いる下記の用語は下記の意味を有する:
「化合物/ポリマー複合体」又は「水不溶性複合体」とは本発明の方法に従って、治療活性化合物及び水不溶性イオン性ポリマーの同時沈殿(「マイクロ沈殿」)により形成される物理的に安定な生成物を意味する。
【0013】
「分散」とは、イオンポリマー全体への治療活性化合物のランダムな分布を意味する。
「溶解速度」とは特定の化合物が生理学的流体の中でin vitroで溶解する速さを意味する。
「イオン性ポリマー」又は「イオン性担体ポリマー」には陰イオン性(負に帯電)及び陽イオン性(正の帯電)ポリマーの双方が含まれる。
【0014】
「マイクロ沈殿」とは、化合物、特に治療活性化合物をポリマーの中で分子的に分散する任意の方法を意味する。
「分子的に分散」とは、治療活性化合物がポリマーの中で最終的な副分割状態で存在することを意味する。例えば、M. G. Vachonら、J. Microencapsulation 14 (3) : 281-301 (1997) ; M. A. and Vandelliら、J. Microencapsulation 10 (1) : 55-65 (1993) 参照のこと。
【0015】
「患者」とは、ヒト被検体を意味する。
【0016】
「低溶性治療活性化合物」とは、約1mg/ml未満、往々にして約100μg/ml未満の水性溶解度を有する治療活性化合物(例えば薬剤)を意味する。
【0017】
本発明の一の観点は、イオン性ポリマーである担体巨大分子と、アモルファス状態において安定である治療活性化合物とから成る安定な水不溶性複合体を含んで成る薬理組成物に関する。かかる化合物/ポリマー複合体の利用は、当該化合物が本来可溶性に劣り、当該化合物の所望な経口生物有用度を得るのが困難であるときに極めて好適である。
【0018】
本発明に従うと、低溶性結晶状治療活性化合物及び約80,000D超の分子量を有し、且つ約50℃以上のガラス転移温度を有する水不溶性イオン性ポリマーをマイクロ沈殿させると、この化合物はアモルファス状態でイオン性ポリマーの中に分子的に分散され、安定な水不溶性複合体を生み出す。マイクロ沈殿化は例えば下記の方法のいずれかにより達成することができ、それぞれは以下に更に説明する:
a)スプレードライ又は凍結乾燥法
b)溶媒コントロール化沈殿
c)pHコントロール化沈殿
d)ホットメルト押出工程
e)超臨界流体技術
【0019】
この治療活性化合物をイオン性ポリマーの中に分散させたら、それはたとえ長期間にわたる貯蔵でさえもそのアモルファス構造を維持し、即ち、「安定」である。更に、このイオン性ポリマーは当該化合物を有害な外部環境要因、例えば水分及び熱から守り、それ故高められた溶解度、その結果としての高められた生物有用度を保持する。
【0020】
本発明に係るアモルファス状態で複合体の中に含まれている治療活性化合物は結晶状態における当該化合物と比べて有意に高い生物有用度を有し、そして延長された期間にわたり高度に安定性である。更に、胃腸流体内のこの複合体のコントロールされた溶解速度により、この複合体は当該化合物/ポリマー複合体の中に分散されたこの治療活性化合物に持放特性を供する。
【0021】
本発明は任意の治療活性化合物に有用であるが、約1mg/ml未満の水性溶解度を有する治療活性化合物、そして特に100μg/ml未満のそれを有する化合物に極めて有用である。かかる低溶性治療活性化合物には、例えばレチノイド及びプロテアーゼインヒビターが挙げられる。特に、本発明は下記の治療用化合物に極めて有用である:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【0022】
結晶状態では、化合物Iは極めて劣った水性溶解度(<10μg/ml)及び生物有用度を有する。
【0023】
本発明は化合物トルカポン(Roche Laboratories Inc. により商標名Tasmarで販売)、化合物1,3−cis−レチン酸(Roche Laboratories Inc. により商標名ACCUTANEで販売)、化合物サキナビル(Roche Laboratories Inc. によりFORTOVASE(商標)で販売)、及び下記の化合物に対しても有用である:
【化6】
【化7】
【化8】
【0024】
本発明に係る利用のために適当なイオン性ポリマーは陽イオン性又は陰イオン性ポリマーのいずれかであり、約80,000D超の分子量を有し、約50℃以上のガラス転移温度を有し、水に相対的に不溶性であり、そして好ましくはpH依存性溶解度を有する。かかるポリマーの例には、ポリアクリレート(例えばEudragit:Rohm America)、キトサン、Carbopol(登録商標)(BF Goodrich)、ポリビニルアセテートフタレート、セルロースアセテートフタレート、ポリシアノアクリレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテートテルフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセチルスクシネート、カルボキシメチルセルロース及び低置換化ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
本発明に係る水不溶性複合体は2種類以上の上記のイオン性ポリマーの混合物を含んで成ってもよい(例えば実施例9及び10参照のこと)。
【0025】
特に好適な陰イオン性ポリマーにはEudragit L100−55(メタクリル酸とエチルアクリレートとのコポリマー)及びEudragit L100又はEudragit S100(メタクリル酸とメチルメタクリレートとのコポリマー)が挙げられ、それらは全てRohm Americaから入手できる。Eudragit L100−55は5.5を超えるpHにおいて可溶性であり、そして5.5未満のpHでは事実上不溶性である。Eudragit L100−55の分子量は約250,000Dであり、そしてガラス転移温度は110℃である。Eudragit L100は6を超えるpHで可溶性であり、そして6未満のpHでは事実上不溶性である。Eudragit L100の分子量は約135,000Dであり、そしてガラス転移温度は約150℃である。Eudragit S100は7を超えるpHで可溶性であり、そして7未満のpHでは事実上不溶性である。Eudragit S100の分子量は約135,000Dであり、そしてガラス転移温度は約160℃である。
【0026】
特に好適な陽イオン性ポリマーにはEudragit E(Rohm America)が挙げられ、それはジメチルアミノエチルメタクリレートと中性メタクリル酸エステルとのコポリマーである。このポリマーはpH4までは可溶性であり、そして4を超えるpHでは事実上不溶性である。Eudragit Eの分子量は約150,000Dであり、そしてガラス転移温度は約50℃である。
【0027】
本発明の水不溶性複合体を含んで成る本発明の薬理組成物は当業界において公知の手法、例えば慣用の混合、ミリング、封入、溶解、圧縮、粉砕又は凍結乾燥工程により製造し得る。水不溶性複合体に加えて、これらの薬理組成物は当該イオン性ポリマー以外の治療的に不活性な無機又は有機系担体(「薬理学的に許容される担体」)及び/又は賦形剤も含みうる。錠剤、被覆錠剤、糖衣錠及びハードゼラチンカプセルのための薬理学的に許容される担体にはラクトース、トウモロコシデンプン又はそれらの誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩が挙げられる。ソフトゼラチンカプセルのための適当な担体には植物性油、蝋、脂肪及び半固体又は液体ポリオールが挙げられる。
【0028】
本発明の薬理組成物は保存剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色料、風味料、浸透圧を変えるための塩、緩衝剤、被覆剤又は酸化防止剤も含んでよい。これらの組成物は更に別の治療活性化合物又は複数種の治療活性化合物/ポリマー複合体を含みうる。
【0029】
調製方法
本発明の一態様において、本発明の水不溶性複合体は下記の方法のいずれかを利用して調製する:
【0030】
a)スプレードライ又は凍結乾燥方法:当該治療活性化合物及びイオン性ポリマーを低い沸点を有する汎用の溶媒、例えばエタノール、メタノール、アセトン等に溶解する。スプレードライ又は凍結乾燥により、溶媒は蒸発し、イオン性ポリマーマトリックス内にアモルファス状態でマイクロ沈殿した治療活性化合物が残る。この技術は好適な溶媒の中で適度な溶解度(>5%)を有しない治療活性化合物にとっては好適でない。
【0031】
b)溶媒コントロール沈殿:当該治療活性化合物及びイオン性ポリマーを汎用の溶媒、例えばジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等に溶解する。この治療活性化合物/ポリマー溶液を適当なpHに調整した冷(2〜5℃)水に加える。所望のpHは使用するポリマーに依存し、そして当業者により容易に決定される。これは治療活性化合物がポリマーマトリックスの中でマイクロ沈殿することを引き起こす。そのマイクロ沈殿物を水性媒体で数回、残留溶媒がその溶媒にとって許容される限界値を下まわるまで洗う。各溶媒について「許容される限界値」はICH(International Cot Conference on Harmonization)ガイドラインに従って決定される。
【0032】
c)pHコントロール化沈殿:この方法において、イオン性ポリマー内での治療活性化合物のマイクロ沈殿は溶液のpHの劇的な変化によりコントロールされる。この治療活性化合物及びイオン性ポリマーは、高いpH(例えばpH約9)で溶解し、そしてその溶液のpHを下げることにより(例えば約1まで)沈殿するか、又はその逆である。この方法はpH依存性溶解度を有する治療活性化合物に極めて適する。
d)ホットメルト押出方法:熱可塑特性を有するイオン性ポリマー内での治療活性化合物のマイクロ沈殿はホットメルト押出方法によって達成されうる。この結晶状治療活性化合物及びポリマーを適当なブレンダーの中で混合し、そして温度コントロール化押出機に連続供給し、治療活性化合物を溶融イオン性ポリマーの中に分子的に分散させる。得られる押出品を室温に冷やし、そして微粉末へとミリング(微粉砕)する。
【0033】
e)超臨界流体技術:治療活性化合物及びイオン性ポリマーを超臨界流体、例えば液体窒素又は液体二酸化炭素に溶解する。次いでこの超臨界流体をエバポレーションにより除去し、ポリマーマトリックス内にマイクロ沈殿した治療活性化合物が残る。別の方法においては、治療用化合物及びイオン性ポリマーを適当な溶媒に溶解する。マイクロ沈殿した粉末はその溶液を、抗溶媒剤(antisolvent)として働く超臨界流体の中にスプレーすることにより形成されうる。
【0034】
本発明の別の態様において、薬理製剤は、本発明の化合物/ポリマー複合体を当業界において周知の方法により処方する最終段階の追加により、上記の工程のいずれかに従って調製されうる。
【0035】
本発明の好適な態様において、この治療活性化合物及びイオン性ポリマーを有機溶媒に溶解する。しかる後、この化合物及びイオン性ポリマーは比較的同時に、好ましくは水性溶液の中で、そして好ましくは独立してその化合物又はポリマーのいずれもが可溶性でないpHにおいて共沈殿する。
【0036】
当該治療活性化合物及びイオン性ポリマーを溶解するのに用いる有機溶媒は使用する低溶性化合物及びポリマーの双方に良好な溶解性を供するべきである。このような溶媒には、エチルアルコール、メチルアルコール、アセトン、ジメチルスルホキッド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、Transcutol(登録商標)(ジエチレングリコールモノエチルエーテル:Gattefosse, Inc.)、グリコフラル、プロピレンカーボネート、テトラヒドロフラン、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールが挙げられる。
【0037】
治療活性化合物及びイオン性ポリマーを共沈殿させるために選定するpHは沈殿すべき特定のポリマー及び化合物の各々の溶解度に依存する。当業者はポリマー及び治療活性化合物の各組合せについての共沈殿のための好適なpHを容易に確認できうる。Eudragit L100−55,Eudragit L100及びEudragit S100から選ばれた陰イオン性ポリマーを利用する好適な態様においては、この溶液は約4未満のpHで沈殿する。陽イオン性ポリマーEudragit E100を使用する別の好適な態様においては、この溶液は4を超えるpHで好適に沈殿する。
【0038】
本発明の安定な水不溶性複合体を達成するために必要な治療活性化合物及びポリマーの量は使用する特定の化合物及びイオン性ポリマー、並びに溶媒及び沈殿パラメーターに依存して変更し得る。例えば、この化合物はこの複合体の中に約0.1〜約80重量で存在していてよい。似たように、このポリマーは一般にこの複合体の中に約20重量%以上の量で存在していてよい。好ましくは、この化合物はこの複合体の中に約30〜約70重量%、より好ましくは約40〜約60重量%で存在する。最も好ましくは、この化合物はこの複合体の中に約50重量%で存在する。化合物Iを含む複合体に関しては、この化合物はこの複合体の中に約30〜70重量%、最も好ましくは約50重量%で存在する。
【0039】
当該化合物/ポリマー複合体が溶液から沈殿したら、得られる複合体は当業者に公知の手順、例えば濾過、遠心分離、洗浄等により溶液から回収できる。回収した塊を次に乾燥し(エアー、オーブン又は真空中)、そして得られる固体を当業界公知の手段によりミリング、微粉砕又はマイクロナイズ化して微粉末を得る。粉末状の複合体を担体に分散させて薬理調製品を形成できる。
【0040】
本発明に係る薬理調製品は所望の治療効果を達成するために適当な任意のルートにより被検体に投与してよい。好適な投与ルートには非経口及び経口投与が含まれる。
【0041】
本発明に係る薬理製剤は治療的に有効な量の治療活性化合物を含む。治療的に有効な量とは、かかる剤型及びかかる時間において所望の治療効果を達成するのに必要な量を意味する。更に、かかる量は総合的な治療的に有益な効果が毒性又は所望されない副作用に勝るものとするものでなくてはならない。化合物の治療的に有効な量は往々にして処置する被検体の疾患状態、年令及び体重に従って変動する。かくして、投与養生法は一般に特定の症例毎の個別の要件に合わせるものであり、そして当業者の知識の範囲内のものである。
【0042】
例えば、上記化合物Iに関して、体重約70kgの成人への適切な日常の用量は約10mg〜約10,000mg、好ましくは約200mg〜約1,000mgであるが、その上限は指示されたときは超えてもよい。
【0043】
日常剤型の治療活性化合物は単一投与として、分割投与として投与してよく、又は非経口投与に関し、それは皮下注射で与えてよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】バルク薬剤のみ(化合物そのもの)と対比させた、及び薬剤とポリマーとの物理的混合物と対比させた、例4の化合物/ポリマー複合体の結晶的性質を示す粉末X線回折パターン。
図2】ストレスのない(初期)化合物/ポリマー複合体と対比させた、加速ストレス条件に曝露させた例4の化合物/ポリマー複合体由来のサンプルの粉末X線回折パターン。
図3】例4の化合物/ポリマー複合体のイヌにおける血漿濃度プロフィール。
図4】化合物IIそのものの粉末X線回折パターン及び本発明に従うマイクロ沈殿を経た化合物/ポリマー複合体(例11)の粉末X線回折パターン。
図5】化合物III そのものの粉末X線回折パターン及び本発明に従うマイクロ沈殿を経た化合物/ポリマー複合体(例13)の粉末X線回折パターン。
図6】化合物IVそのものの粉末X線回折パターン及び本発明に従うマイクロ沈殿を経た化合物/ポリマー複合体(例15)の粉末X線回折パターン。
図7】化合物Vそのものの粉末X線回折パターン及び本発明に従うマイクロ沈殿を経た化合物/ポリマー複合体(例16)の粉末X線回折パターン。
【実施例】
【0045】
以下の実施例は本発明の水不溶性化合物/ポリマー複合体及びかかる複合体を含む薬理調製品を作製するための方法を例示する。
【0046】
本明細書において報告する実施例に関して、試験した治療活性化合物はその構造を前述した化合物I,II,III, IV 及びVとした。これらの化合物は胃腸内流体中で事実上不溶性である。本発明以前では、化合物Iの結晶状不溶性形態がこの化合物の得ることのできる唯一の安定な形態であった。
【0047】
一般手順
例1に適用可能な手順(マイクロナイズ化化合物)
化合物Iを流体エネルギーミルを利用してマイクロナイズ化し、平均粒子サイズ10ミクロンとした。この手順は化合物の結晶状態を変えなかった。
【0048】
例2に適用可能な手順(ナノサイズ化化合物)
化合物Iの10%の懸濁物を、凝集を防ぐための保護コロイドとして5%のKlucel EF(登録商標)(ヒドロキシプロピルセルロース:Aqualon Corp.)を含む水性媒体の中でウェットミリングに付した。ミリングはミリング媒体として0.25mmのガラスビーズを利用して24時間かけてDynomillの中でバッチ方式で実施した。得られる懸濁物の平均粒子サイズは700nmであり、そしてこの懸濁物の乾燥の後に得られる残渣はその化合物が結晶状態で存在することを実証した。
【0049】
例3に適用可能な手順(Pluronic F68分散体)
90%のPluronic F68(ポリマー)中の化合物Iの10%の分散体をホットメルト技術を利用して調製した。この化合物を溶融Pluronic F68の中に60℃で混合し、そしてその分散体を180℃まで加熱して化合物Iを溶解した。この溶液を室温にまで冷却して固形塊を得た。この溶融分散体の粉末X線回折(「XRD」)パターンはPluronic F68のそれと似かよっていた。このXRDは化合物Iが固体分散体の中でアモルファス状態で存在することを示した。この技術により得られる固体分散体を動物に投与するのに用いる前に水性媒体の中に更に分散させた。
【0050】
例4〜12及び15〜16に適用可能な手順(本発明に係る分子状分散体)
本発明の方法に従うと、化合物I,II,IV又はV及び個別に表示した特定のポリマー(即ち、Eudragit L100−55,Eudragit L100又はEudragit S100)をジメチルアセトアミドの中に溶解した。次いで得られる溶液をpH2の低温(2〜10℃)水性溶液にゆっくりと加え、この化合物とポリマーとを不溶性マトリックスとして共沈殿させた。ここでこの化合物はポリマーの中に分子的に分散された。
各ケース毎に、沈殿物をpH2の低温(2〜10℃)水性溶液で数回、残留ジメチルアセトアミドが0.2%未満となるまで洗った。その沈殿物を送風オーブンの中で40℃で24時間かけて水分レベルが2%未満となるまで乾燥し、そしてFitz Mill(登録商標)(Fitzpatrick)を用い、フォワードナイフ及びサイズ0スクリーンを利用して低速で所望の粒子サイズへとミリングした。所望の平均粒子サイズは50〜400μmのサイズ幅において90%の粒子とした。
【0051】
例13〜14に適用可能な手順(化合物III)
上記の方法に従うと、化合物III 及び個別に表示した特定のポリマー(即ち、Eudragit L100−55,Eudragit L100、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HP−50)又はEudragit S100)をエタノールに溶解した。得られる溶液を真空オーブンの中で24時間かけて乾燥による重量損失が2%未満となるまで乾燥するか、又はその溶液をスプレードライした。この工程の結果、この化合物及びポリマーは不溶性複合体として共沈殿し、ここでこの化合物はポリマーの中に分子的に分散した。得られる乾燥フィルムを乳鉢で粉砕し、そして60メッシュスクリーンでスクリーニングした。
【0052】
データー
表1は例1〜16の結果をまとめる。表1には個々の治療活性化合物、並びに適宜、調製した化合物/ポリマー複合体、化合物/ポリマー複合体を調製する方法、及び各例から得られる生成物の物理特性を表示する。
【0053】
【表1】
【0054】
図1及び表1に示す通り、例4である複合体(表1)、即ち、化合物Iが本発明の方法に従ってイオン性ポリマーに含まれている複合体の粉末X線回折(XRD)はそれがアモルファス状態であることを示す。
【0055】
表1及び図4〜7も本発明の方法が化合物II, III, IV 及びVをアモルファス状態にするのに有用であることを示す。
【0056】
イオン性ポリマーの中に化合物Iを含ませることはその化合物を外的環境効果、例えば水分及び熱から守った。この結果を図2に示し、それにおいては、粉末X線回折により、ポリマーの中に埋設した化合物Iが加速貯蔵条件下でさえもそのアモルファス特性を維持することが示されている。この複合体が加速ストレス条件下での貯蔵の後でさえも化合物Iをそのアモルファス状態に維持する能力はポリマーの高分子量(>80,000)、高ガラス転移温度(>50℃)及び水不溶性に基づく。
【0057】
更に、以下の表2に示す通り、化合物Iのイヌにおける生物有用度は、本発明に従ってイオン性ポリマーの中に分子的に分散されたとき、その化合物をその動物に慣用の形態(例えばマイクロナイズ化及びウェットミリング化)で投与したときよりも驚くべきほど高かった。更に表2に示すのは、Pluronic F68(ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレン鎖を含む非イオン性水溶性ポリマー:BASF)によるホットメルト法により調製した化合物Iの固体分散体から得た生物有用度結果である。この固体分散体中の化合物の生物有用度はその化合物がマイクロナイズ化されたとき又はウェットミル懸濁物の中にあるときよりも良好であったが、この固体分散体の物理的安定性は、化合物が周囲条件下での1ヶ月以内の貯蔵で結晶状態にもどることにより明白な通り、薬理製品のためには満足たるものではない。上記の結果は非イオン性水溶性ポリマーにおける固体分散技術の薬理製品の調製のための不適切さを実証する。
【0058】
【表2】
【0059】
図3は例4に従って製造した化合物/ポリマー複合体の様々なバッチの血漿濃度−時間プロフィールを示す。これらの試験の結果は(図3にまとめる)、バッチ間の再現性及び一貫性を示す。バッチ間の再現性及び一貫性はヒト患者への投与を目的とするあらゆる製剤の重要な観点である。
【0060】
図4〜7は化合物II, III, IV 及びVも本発明を利用してアモルファス状態へと変換されうることを示す。
【0061】
まとめると、上記表1及び2のデーター並びに図1,2及び4〜7のデーターにより示される通り、例4〜16で得られる化合物/ポリマー複合体の粉末X線回折パターンは、本発明に従ってイオン性ポリマー内に低溶性化合物を分子的に分散させることが当該化合物をアモルファス状態へと変換せしめ、そして長期保存でのこのアモルファス化合物の優れた安定性を維持することを示した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7