特許第6534981号(P6534981)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6534981調節可能な初期粘度を有するポリメチルメタクリレート骨セメント、及び可変の初期粘度を有する骨セメント生地を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6534981
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】調節可能な初期粘度を有するポリメチルメタクリレート骨セメント、及び可変の初期粘度を有する骨セメント生地を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/16 20060101AFI20190617BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20190617BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20190617BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20190617BHJP
【FI】
   A61L27/16
   A61L27/50
   A61P19/08
   A61P19/10
【請求項の数】21
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-176340(P2016-176340)
(22)【出願日】2016年9月9日
(65)【公開番号】特開2017-60750(P2017-60750A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2016年11月10日
(31)【優先権主張番号】10 2015 217 315.1
(32)【優先日】2015年9月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510340506
【氏名又は名称】ヘレウス メディカル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】フォクト セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】クルゲ トーマス
【審査官】 磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−101161(JP,A)
【文献】 特開2009−101160(JP,A)
【文献】 特開2011−005255(JP,A)
【文献】 特開昭64−043261(JP,A)
【文献】 特開2004−008510(JP,A)
【文献】 特開2009−102640(JP,A)
【文献】 特開2004−236729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/16
A61L 27/50
A61P 19/08
A61P 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性骨セメントとして使用される組成物であって、
(i)メチルメタクリレート、
(ii)(i)に可溶である、少なくとも1種の粉末ポリメチルメタクリレートコポリマー、又はポリメチルメタクリレートコポリマーを含む粉末混合物、
(iii)過酸化ベンゾイル、
(iv)少なくとも1種の放射線不透過性物質、
を含み、
前記(ii)粉末ポリメチルメタクリレートコポリマー又は粉末混合物は、モル質量Mnが200,000g/mol以上から1,000,000g/mol以下である少なくとも1種の粒状ポリメチルメタクリレートコポリマーを含み、前記ポリメチルメタクリレートコポリマーは、メチルメタクリレート90.0重量%以上とアクリル酸メチル10.0重量%以下から1重量%以上の混合物の重合によって得ることができ、(ii)の全組成は前記メチルメタクリレート90.0重量%以上とアクリル酸メチル10.0重量%以下から1重量%以上の混合物に対して100重量%を占め、
前記組成物は2成分AとBの混合によって得ることができ、
成分Aは粉体として存在し、
(a.1)少なくとも1種の粉末ポリメチルメタクリレートコポリマー、又はポリメチルメタクリレートコポリマーを含む粉末混合物、
(a.2)少なくとも1種の粉末放射線不透過性物質、及び、
(a.3)過酸化ベンゾイル、
を含み、
成分Bは液体として存在し、
(b.1)メチルメタクリレート、
を含み、
前記粉末ポリメチルメタクリレートコポリマーを含む成分Aと前記メチルメタクリレートを含む成分Bの重量比は2.0から3.4:1.0の範囲であり、前記重量比は、
a)2.2:1.0未満、又は、
b)2.2:1.0から3.3:1.0未満、又は、
c)3.3:1.0以上、
から選択されることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
成分Aは、成分Aの全組成100重量%に対して、過酸化ベンゾイル1.0から2.5重量%を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、
a)低粘度骨セメント、又は、
b)中粘度骨セメント、又は、
c)高粘度骨セメント、
として存在することを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記粉末ポリメチルメタクリレートコポリマー粒子の粒径は100μm未満であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が2成分A及びBを含み、
成分Aは粉体として存在し、
(a.1)モル質量Mnが200,000g/mol以上から1,000,000g/molである粒状ポリメチルメタクリレートコポリマーから選択される少なくとも1種の粉末ポリメチルメタクリレートコポリマー75から85重量%、前記ポリメチルメタクリレートコポリマーは、メチルメタクリレート90.0重量%以上とメチルメタクリレートに対応しないアクリル酸メチル10.0重量%以下の混合物の重合によって得ることができ、全組成は前記混合物に対して100重量%を占める、
(a.2)少なくとも1種の粉末放射線不透過性物質10から20重量%、及び、
(a.3)過酸化ベンゾイル1.0から2.5重量%、
(a.4)少なくとも1種の薬学的活性物質及び/又は薬理学的に許容できるその塩0.0から10重量%、成分Aの全組成は100重量%を占める、
を含み、
成分Bは液体として存在し、
(b.1)メチルメタクリレート95から99.9重量%、
(b.2)少なくとも1種の重合促進剤0.1から5重量%、及び、
(b.3)少なくとも1種の安定剤0から2.0重量%、
成分Bの全組成は100重量%を占める、
を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
2成分AとBを混合することによって重合性骨セメントを製造する方法であって、
成分Aは粉体として存在し、
(a.1)少なくとも1種の粉末ポリメチルメタクリレートコポリマー、又はポリメチルメタクリレートコポリマーを含む粉末混合物、前記ポリメチルメタクリレートコポリマーは、モル質量Mnが200,000g/mol以上である少なくとも1種の粒状ポリメチルメタクリレートコポリマーを含み、前記ポリメチルメタクリレートコポリマーは、メチルメタクリレート90.0重量%以上とアクリル酸メチル10.0重量%以下から1重量%以上の混合物の重合によって得ることができ、前記ポリメチルメタクリレートコポリマーの全組成は前記メチルメタクリレート90.0重量%以上とアクリル酸メチル10.0重量%以下から1重量%以上の混合物に対して100重量%を占める、
(a.2)少なくとも1種の粉末放射線不透過性物質、及び、
(a.3)過酸化ベンゾイル、
を含み、
成分Bは液体として存在し、
(b.1)メチルメタクリレート、
(b.2)少なくとも1種の重合促進剤、及び、
(b.3)少なくとも1種の安定剤、
を含み、
前記ポリメチルメタクリレートコポリマーを含む成分Aと前記ラジカル重合用モノマーを含む成分Bの重量比は2.0から3.4:1.0であり、成分AとBは、
a)2.2:1.0未満、又は、
b)2.2:1.0から3.3:1.0未満、又は、
c)3.3:1.0以上、
から選択される重量比で混合される、方法。
【請求項7】
成分Aは、成分Aの全組成100重量%に対して、過酸化ベンゾイル1.0から2.5重量%を含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
成分Aと成分Bは、
a)前記混合から3.0分を超えた後にISO5833による不粘着状態に達する低粘度骨セメントを製造するために2.2:1.0未満、
b)前記混合から1.5分以上から3.0分後にISO5833による不粘着状態に達する中粘度骨セメントを製造するために2.2:1.0から3.3:1.0未満、又は、
c)前記混合から1.0分以上1.5分未満後にISO5833による不粘着状態に達する高粘度骨セメントを製造するために3.3:1.0以上、
の重量比で混合されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
− 前記重量比a)、b)若しくはc)を達成するためのグラム単位の規定量の成分A、又は前記量に対応する体積の成分Aがカートリッジ(1)の内部空間(13)に供給され、前記カートリッジ(1)は、カートリッジ連結器をその端部の一方に備え、分注プランジャ(2)を他方の反対側端部に備え、混合ロッド(4)は、フィードスルーを介して、カートリッジの内部(9)の混合装置に取り付けることができ、又は該混合装置上に配置され、前記混合装置は、前記混合ロッド(4)を前記内部空間(13)の軸に沿って動かすことによって外部から操作することができ、
− 成分Bは使い捨てモノマー容器中に供給される、
ことを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
− 前記重量比a)、b)若しくはc)を達成するためのグラム単位の規定量の成分B又は対応する体積の成分Bを前記使い捨てモノマー容器から前記カートリッジ(1)に、特に接続導管(14)によって移送するステップ、及び、
− 成分AとBの混合ステップ、
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
成分Aと成分Bは、
a)前記混合から3.0分を超えた後にISO5833による不粘着状態に達する低粘度骨セメントを得るために2.2:1.0未満、
b)前記混合から1.5分以上から3.0分後にISO5833による不粘着状態に達する中粘度骨セメントを得るために2.2:1.0から3.3:1.0未満、又は、
c)前記混合から1.0分以上1.5分未満後にISO5833による不粘着状態に達する高粘度骨セメントを得るために3.3:1.0以上、
の重量比で混合される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記カートリッジ(1)の前記内部空間(13)に延び、回転することができ、長軸方向に移動することができる混合ロッド(4)を動かして前記混合装置(9)を作動させることによって、成分Aと成分Bを前記混合装置(9)によって前記内部空間(13)内で混合し、前記混合後に前記混合ロッド(4)を前記カートリッジ(1)の前記内部空間(13)からリミットストップまで引く、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
低粘度、中粘度又は高粘度重合性骨セメントを含む前記カートリッジ(1)を前記接続導管(14)から取り外し、分注プランジャ(2)を前進させることによって前記骨セメントを前記カートリッジ(1)の前記内部空間(13)から分注し、該分注プランジャ(2)は、前記カートリッジ(1)中で軸方向に移動可能であるように支持され、前記カートリッジ(1)の前記内部空間(13)の境界を片側に形成する、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
重合性骨セメントを製造するためのキットであって、成分Aを含み、
成分Aは粉体として存在し、
(a.1)少なくとも1種の粉末ポリメチルメタクリレートコポリマー、又はポリメチルメタクリレートコポリマーの混合物、前記粉末ポリメチルメタクリレートコポリマーは、モル質量Mnが200,000g/mol以上から1,000,000g/mol以下である少なくとも1種の粒状ポリメチルメタクリレートコポリマーを含み、前記ポリメチルメタクリレートコポリマーは、メチルメタクリレート90.0重量%以上とアクリル酸メチル10.0重量%以下から1重量%以上の混合物の重合によって得ることができ、全組成は前記メチルメタクリレート90.0重量%以上とアクリル酸メチル10.0重量%以下から1重量%以上の混合物に対して100重量%を占める、
(a.2)少なくとも1種の粉末放射線不透過性物質、及び、
(a.3)過酸化ベンゾイル、
を含み、
成分Aはカートリッジ(1)の内部空間(13)に存在し、カートリッジ(1)は、雌ネジ(8)を有するカートリッジ連結器をその端部の一方に備え、分注プランジャ(2)を他方の反対側端部に備え、混合ロッド(4)は、フィードスルーを介して、前記カートリッジの内部(9)の混合装置に取り付けることができ、又は該混合装置上に配置され、前記混合装置は、前記混合ロッド(4)を前記内部空間の軸に沿って動かすことによって外部から操作することができることを特徴とするキット。
【請求項15】
前記カートリッジ(1)は、2.0から3.4:1.0の前記ポリメチルメタクリレートコポリマー又はポリメチルメタクリレートコポリマーの混合物を含む成分Aとラジカル重合用モノマーを含む成分Bの重量比又は前記重量比に対応する体積比を達成するために添加すべき成分Bの量を標識の目盛りから読み取ることができる前記標識を含むことを特徴とする、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
請求項1から5のいずれか一項に記載の骨セメント若しくは請求項6から13のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる骨セメントを重合することによって、又は請求項14に記載のキットの成分AとBの混合によって得られる、重合硬化骨セメント。
【請求項17】
請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物の使用(但し、ヒトに対する医療行為を除く)、又は請求項6から13のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる組成物の使用(但し、ヒトに対する医療行為を除く)。
【請求項18】
a)成分Aと成分Bを2.2:1.0未満の重量比で混合することによる低粘度骨セメント、前記骨セメントは前記混合から3.0分以上後にISO5833による不粘着状態に達する、又は、
b)成分Aと成分Bを2.2:1.0から3.3:1.0未満の重量比で混合することによる中粘度骨セメント、前記骨セメントは前記混合から1.5分以上から3.0分後にISO5833による不粘着状態に達する、又は、
c)成分Aと成分Bを3.3:1.0を超える重量比で混合することによる高粘度骨セメント、前記骨セメントは前記混合から1.0分以上1.5分未満後にISO5833による不粘着状態に達する、
の製造のための請求項14に記載のキットの使用。
【請求項19】
骨粗鬆症骨組織の増強並びに、椎体形成術、椎骨形成術、及び骨粗鬆症骨組織における穿孔の増強における使用のための、骨空洞を充填するための、大腿骨形成術のための、スペーサの製造のための、関節の内部人工器官の機械的固定のための、頭蓋骨欠損を被覆するための、又は薬学的活性物質の局所放出用担体材料としての局所抗生物質療法用担体材料の製造のための、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
骨粗鬆症骨組織の増強並びに、椎体形成術、椎骨形成術、及び骨粗鬆症骨組織における穿孔の増強における使用のための、骨空洞を充填するための、大腿骨形成術のための、スペーサの製造のための、関節の内部人工器官の機械的固定のための、頭蓋骨欠損を被覆するための、又は薬学的活性物質の局所放出用担体材料としての局所抗生物質療法用担体材料の製造のための、請求項14に記載のキット。
【請求項21】
骨粗鬆症骨組織の増強並びに、椎体形成術、椎骨形成術、及び骨粗鬆症骨組織における穿孔の増強における使用のための、骨空洞を充填するための、大腿骨形成術のための、スペーサの製造のための、関節の内部人工器官の機械的固定のための、頭蓋骨欠損を被覆するための、又は薬学的活性物質の局所放出用担体材料としての局所抗生物質療法用担体材料の製造のための、請求項16に記載の骨セメントからなる外科移植片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、セメント生地の初期粘度を調節することができる重合性ポリメチルメタクリレート骨セメントである。重合性骨セメントは、ラジカル重合用モノマーと、以下ポリメチルメタクリレートコポリマーと記述する、モノマーに可溶である粉末ポリメチルメタクリレートコポリマー、又はモノマーに可溶であるポリメチルメタクリレートコポリマーを含む混合物と、重合開始剤と、放射線不透過性物質とを含む組成物に対応する。粉末ポリメチルメタクリレートコポリマーは、モル質量200,000g/mol以上の少なくとも1種の粒状ポリメチルメタクリレートコポリマーを含み、ポリメチルメタクリレートコポリマーは、メチルメタクリレート90.0重量%以上と1種以上のコモノマー10.0重量%以下の混合物の重合によって得ることができる。少なくとも1種のポリメチルメタクリレートコポリマー、1種の放射線不透過性物質及び1種の重合開始剤、特に過酸化ベンゾイルを含む成分Aと、ラジカル重合用モノマー、安定剤及び重合促進剤、特に芳香族アミンを含む成分Bの重量比は、上記成分AとBを混合することによって形成される骨セメント生地の初期粘度を調節するために、約2.0から3.4:1.0である。前記骨セメントを製造する方法、及び可変の初期粘度の調節のための使用、並びに前記方法に使用されるキットも本発明の一主題である。
【背景技術】
【0002】
ポリメチルメタクリレート(PMMA)骨セメントは、J.チャーンリー(Charnley)の先駆者的研究に基づく(非特許文献1)。PMMA骨セメントは、液体モノマー成分及び粉体成分からなる。モノマー成分は、一般に、モノマーのメチルメタクリレート及びその中に溶解した活性化剤を含む。粉体成分は、骨セメント粉体とも称し、メチルメタクリレートをベースに製造されるPMMAなどの1種以上のポリマー、放射線不透過性物質及び開始剤を含む。粉体成分とモノマー成分を混合し、粉体成分のポリマーをメチルメタクリレートに膨潤させると、可塑的に成形することができ実際の骨セメントである生地が生成する。メチルメタクリレートのラジカル重合は、混合プロセス中に形成されるラジカルによって開始される。メチルメタクリレートの重合を進めると、セメント生地が固化するまでセメント生地の粘度が増加する。
【0003】
骨セメントは、PMMA骨セメントの骨セメント生地が不粘着状態に達するまでの時間によって、特に、高粘度、中粘度及び低粘度骨セメントに細分される(非特許文献2)。高粘度骨セメントは1.0から1.5分後に不粘着状態に達するが、1.5分から3.0分後に不粘着状態に達するセメントを中粘度セメントと称する。低粘度セメントにおいては、セメント生地は、3.0分を超えた後に不粘着になる。「不粘着状態」という用語は、セメント粉体とモノマー液体の混合後に、手袋をはめた手でセメント生地表面に手袋がそれに粘着せずに触れることができる時点としてISO5833に定義されている。
【0004】
骨セメント生地は、不粘着状態に達したときにのみ塗布することができる。これは、不粘着状態に達した時点がポリメチルメタクリレート骨セメントの加工段階の始まりを示すことを意味する。高粘度及び中粘度ポリメチルメタクリレート骨セメントは、主に、大きい関節の内部人工器官、例えば、膝内部人工器官の大腿及び脛骨部品の機械的固定に使用される。低粘度ポリメチルメタクリレート骨セメントは、小さい関節の内部人工器官、例えば、肩部内部人工器官に使用される。
【0005】
すべての公知のセメントにおいては、初期粘度の調節は、本質的に、過酸化ベンゾイル含有量が極めて明確に定義された特別構成の相互に適合したセメント粉体によって成される。
【0006】
ポリメチルメタクリレート骨セメントの初期粘度は、極めて高度な分析作業によってのみ、技術的条件下で長期間再現することができる。現在まで、すべての工業生産されるポリメチルメタクリレート骨セメントでは、製造者が、ポリメチルメタクリレート骨セメントの初期粘度をセメント粉体の組成によって規定することが一般的である。これまで、医療使用者は、手術中に使用者の必要に応じてポリメチルメタクリレート骨セメントの粘度を調節する方法がなかった。この点で、公知の骨セメントの具体的組成は、モノマーと粉末PMMAポリマー成分の一定混合比に限られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】チャーンリー(Charnley),J.:Anchorage of the femoral head prosthesis of the shaft of the femur.ジャーナル・オブ・ボーン・ジョイント・サージャリ(J.Bone Joint Surg.)42(1960)28〜30
【非特許文献2】クーン(Kuehn),K.−D.:Knochenzemente fuer die Endoprothetik、シュプリンガー出版(Springer Verlag)、2001、18〜19
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、医療使用者が彼又は彼女の必要に応じて単一の汎用セメント粉体によって初期粘度を調節することができるポリメチルメタクリレートコポリマー骨セメントの組成物を開発する目的に基づく。別の一目的は、広く適用可能な骨セメントの塗布方法、並びに前記汎用セメント粉体及びモノマー成分を含み、それらを直接塗布することができるキットを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、請求項1に記載の組成物、並びに請求項8に記載の方法、及び請求項16に記載のキット、及び請求項に記載の使用によって達成された。更に好ましい実施形態は、従属請求項に記載されており、明細書に詳細に説明されている。
【0010】
本発明の中核は、特に、特定の含有量の重合開始剤と、放射線不透過性物質と、場合によっては、初期粘度が低粘度から中粘度、中粘度から高粘度の範囲の骨セメントを製造するためにラジカル重合用モノマーと一緒に調節することができる薬学的活性物質とを含む成分Aとしての、特定の広く適用可能な粉末ポリメチルメタクリレートコポリマーである。
【0011】
本発明は、驚くべきことに、本発明に従って構成される骨セメント粉体を用いて、セメント粉体(成分A)とモノマー液体(成分B)の重量比を変えると、セメント粉体及びモノマー液体から形成されるセメント生地の初期粘度を特定の様式で調節することができるという知見に基づく。したがって、各粘度に対して特別な組成を有する複数のセメント粉体を必要としない。したがって、本発明による組成物によって、現在は比粘度を調節する必要がある幾つかの製品の購入を使用者は省くことができる。というのは、使用者は、今後、単一の製品を用いた加工中に直ちに所望の骨セメント粘度の範囲全体を調節することができるからである。
【0012】
本発明の主題は、重合性骨セメントとして使用される組成物、特に、
(i)少なくとも1種のラジカル重合用モノマー、特に少なくともメチルメタクリレート、
(ii)(i)に可溶である、少なくとも1種の粉末ポリメチルメタクリレートコポリマー、又はポリメチルメタクリレートコポリマーを含む混合物、
(iii)少なくとも1種の重合開始剤、特に100重量%である全組成に対して0.6から2.5重量%、好ましくは0.8から2.5重量%、好ましくは0.8から2.0重量%、好ましくは全組成に対して0.6から0.8から1.4から1.95重量%の過酸化ベンゾイル、特に好ましくは全組成に対して0.65から1.92重量%、
(iv)少なくとも1種の放射線不透過性物質、
を含む重合性骨セメントである。(ii)粉末ポリメチルメタクリレートコポリマーは、モル質量Mnが200,000g/mol以上から1,000,000g/mol、特に500,000g/molまでの少なくとも1種の粒状ポリメチルメタクリレートコポリマーを含み、ポリメチルメタクリレートコポリマーは、メチルメタクリレート90.0重量%以上と特にメチルメタクリレートに対応しない1種以上のコモノマー10.0重量%以下の混合物の重合によって得ることができ、ポリメチルメタクリレートコポリマー又は少なくとも1種のコポリマーを含む混合物の全組成は、前記混合物に対して100重量%であり、組成物は2成分AとBを混合することによって得ることができる。
【0013】
成分Aは粉体として存在し、
(a.1)少なくとも1種の粉末ポリメチルメタクリレートコポリマー、又は少なくとも1種のポリメチルメタクリレートコポリマーを含む混合物、
(a.2)少なくとも1種の粉末放射線不透過性物質、及び、
(a.3)少なくとも1種の重合開始剤、特に過酸化ベンゾイル、
を含み、
成分Bは液体として存在し、
(b.1)少なくとも1種のラジカル重合用モノマー、
(b.2)場合によっては、少なくとも1種の重合促進剤、特に芳香族アミン、好ましくはN,N−ジメチル−p−トルイジン、及び、
(b.3)場合によっては、少なくとも1種の安定剤、
を含み、粉末ポリメチルメタクリレートコポリマーを含む成分Aとラジカル重合用モノマーを含む成分Bの重量比は約2.0から3.4:1.0の範囲であり、成分Aと成分Bの重量比は、
a)2.2:1.0未満、又は、
b)2.2:1.0から3.3:1.0未満、又は、
c)3.3:1.0以上、
から選択される。
【0014】
この状況においては、成分AとBがa)2.2:1.0未満、特に2.0:1.0から2.2:1.0未満、又はb)2.2:1.0から3.3:1.0未満、特に2.2:1.0を超えて3.2:1.0まで、又はc)3.3:1.0以上、特に3.3:1.0から3.4:1.0未満の重量比で存在することが特に好ましく、特に、成分Aは、100重量%である成分Aの全組成に対して少なくとも1種の重合開始剤、特に過酸化ベンゾイル1.0から2.5重量%を含む。
【0015】
好ましいコモノマーは、スチレン、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、又は前記コモノマーのうち少なくとも2種を含む混合物を含む。粉末ポリメチルメタクリレートコポリマーは、好ましくは、乳化重合で製造される。特に好ましくは、アルキル基中に1から5個のC原子を有する少なくとも1種のアクリル酸アルキル、特にアクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、8から20個のC原子を有するフェニルアルキレン、特にフェニルエテン(スチレン)、ジエン、特に1,3−ブタジエン又はイソプレンから選択される少なくとも1種のコモノマー、及び/又は前記コモノマーのうち少なくとも1種を含む混合物をメチルメタクリレートと重合させる。上記ポリメチルメタクリレートポリマーのモル質量は、当業者によく知られたGPC分析によって測定することができるモル質量Mの数平均に相当する。
【0016】
本発明によれば、以下、粉末ポリメチルメタクリレートコポリマー、又はポリメチルメタクリレートコポリマーを含む混合物を、簡潔に粉末ポリメチルメタクリレートコポリマーと称する。したがって、該コポリマーは、少なくとも1種のポリメチルメタクリレートコポリマーを含む混合物も含むと理解すべきである。
【0017】
本発明によれば、ポリアクリレート(ii)、放射線不透過性物質及び重合開始剤とラジカル重合用モノマー(i)及び場合によっては重合促進剤の重量比は約2.0から3.4:1.0であることが特に好ましい。重合性骨セメントを製造するための前記重量比の具体的な調節によって、得られる骨セメント生地の初期粘度の具体的な調節が可能になる。
【0018】
したがって、本発明の一主題は重合性骨セメントであり、該骨セメントは、a)特に混合から3.0分を超えた後にISO5833による不粘着状態に達する、低粘度骨セメント、又はb)特に混合から1.5分以上から3.0分後にISO5833による不粘着状態に達する、中粘度骨セメント、又はc)特に混合から1.0分以上1.5分未満後にISO5833による不粘着状態に達する、高粘度骨セメントとして存在する。
【0019】
骨セメントの初期粘度は、成分の混合と骨セメントによる不粘着状態の達成との間に経過する期間によって定義される。したがって、3.0分を超えた後にISO5833による不粘着状態にあるセメントの初期粘度は低粘度に分類され、混合から1.5分以上から3.0分後にISO5833による不粘着状態に達する場合は初期粘度は中粘度に分類され、1.0分以上1.5分未満後にISO5833による不粘着状態に達する場合は初期粘度は高粘度である。
【0020】
粉体成分をモノマー成分と混合しているときには、重合促進剤、特にN,N−ジメチル−p−トルイジンは、ラジカルを形成しながら重合開始剤の過酸化ベンゾイルと反応する。こうして形成されたラジカルは、メチルメタクリレートのラジカル重合を誘発する。メチルメタクリレートの重合を進めると、セメント生地が固化するまでセメント生地の粘度が増加する。
【0021】
驚くべきことに、本発明による骨セメントは、成分Aと成分Bの重量比が2.0から3.4:1.0で混合された十分重合した硬化骨セメントの曲げ強度[MPa]、曲げ弾性率[MPa]及び/又は圧縮強度[MPa]を、ISO5833に従って測定して、曲げ強度78から90MPa、特に79から88MPa、及び/又は曲げ弾性率3,100から3,700MPa、特に3,150から3,600MPa、及び/又は圧縮強度100から113MPa、特に105から114MPaに調節することができる。したがって、その品質がISO5833の要件を明らかに超える骨セメントを、本発明による組成物を用いて製造することができる。
【0022】
本発明によれば、成分A又は上記組成物における特定の含有量の重合開始剤を、広く使用可能な成分A、及び/又は成分(ii)、(iii)及び(iv)を含む組成物を製造するために調節する。この状況においては、重合開始剤の含有量は、成分(ii)、(iii)及び(iv)を含む組成物、又は成分Aにおいて、特に成分A又は成分(ii)、(iii)及び(iv)100重量%に対して、1.0から2.5重量%、特に過酸化ベンゾイル1.0から2.5重量%であることが特に好ましい。
【0023】
実施形態の更なる変形形態によれば、少なくともメチルメタクリレート及び少なくとも1種の更なるモノマーを含むラジカル重合用モノマーは、アルキル基中に1から20個のC原子を各々独立に有し、アリール基中に6から14個のC原子を各々独立に有し、アリールアルキル基中に6から14個のC原子を各々独立に有し、アルキルエステル基中に1から10個のC原子を各々独立に有する、アルキル−2−アクリル酸アルキルエステル、アリール−2−アクリル酸アルキルエステル、アリールアルキル−2−アクリル酸アルキルエステル、又は前記モノマーのうち少なくとも2種を含む混合物から選択することができる。
【0024】
特に好ましい一実施形態によれば、特に薬学的活性物質を含む、重合性骨セメントとして使用される本発明による組成物、又は本発明による方法に使用される本発明による組成物は、2成分A及びBを含み、
成分Aは粉体として存在し、
(a.1)モル質量Mnが200,000g/mol以上、特に1,000,000g/molまで、好ましくは800,000g/mol、特に好ましくは300,000g/molである粒状ポリメチルメタクリレートコポリマーから選択される少なくとも1種の粉末ポリメチルメタクリレートコポリマー又は少なくとも1種のポリメチルメタクリレートコポリマーを含む混合物75から85重量%、ポリメチルメタクリレートコポリマーは、メチルメタクリレート90.0重量%以上とメチルメタクリレートに対応しない1種以上のコモノマー10.0重量%以下の混合物の重合によって得ることができ、全組成は前記混合物に対して100重量%を占める、
(a.2)少なくとも1種の粉末放射線不透過性物質、特に二酸化ジルコニウム10から20重量%、特に12から16重量%、及び
(a.3)少なくとも1種の重合開始剤、特に過酸化ベンゾイル1.0から2.5重量%、
(a.4)少なくとも1種の薬学的活性物質0.0から10重量%、特に0.5から5.0重量%、特に、薬学的活性物質は、アミノグリコシド系抗生物質などの少なくとも1種の抗生物質、好ましくは硫酸ゲンタマイシンなどのゲンタマイシンの薬学的に有効な塩、トブラマイシン、バンコマイシン、クリンダマイシン、エリスロマイシン、コリスチン及び/又は薬理学的に許容できるそれらの塩である、
を含み、
成分の全組成は合計100重量%になり、
成分Bは液体として存在し、
(b.1)少なくとも1種のラジカル重合用モノマー、特にメチルメタクリレート95から99重量%、特に97.5から99重量%、
(b.2)少なくとも1種の重合促進剤、特に芳香族アミン、好ましくはN,N−ジメチル−p−トルイジン0.1から5重量%、特に1.0から2.5重量%、及び、
(b.3)ヒドロキノンなどの少なくとも1種の安定剤0から2.0重量%、及び(b.4)場合によっては、ある含有量のクロロフィリンE141などの着色剤、特に0から100重量ppm、
を含み、成分Bの全組成は合計100重量%になり、特に、粉末ポリメチルメタクリレートコポリマー、又は少なくとも1種のポリメチルメタクリレートコポリマーを含む混合物、好ましくはポリメチルメタクリレートコポリマーの混合物を含む成分Aとラジカル重合用モノマーを含む成分Bの重量比は、約2.0から3.4:1.0、特に好ましくは重量比はa)、b)又はc)に対応する。
【0025】
成分Aは、薬学的活性物質として、少なくとも1種の抗生物質、抗真菌剤、防腐剤、消炎剤、少なくとも1種の成長因子、及び少なくとも1種のビスホスホナートを含むことができる。好ましい抗生物質は、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、バンコマイシン、テイコプラニン、ラモプラニン、ダルババシン、ダプトマイシン、ホスホマイシン、クリンダマイシン及び/又はリンコマイシンを含む。この状況においては、アムホテリシンB及びカスポファンギンが抗真菌剤として好ましい。
【0026】
更に好ましい一実施形態によれば、粉末ポリメチルメタクリレートコポリマー粒子の粒径は100μm以下とすることができ、特に、粒子の粒径d99は100μm以下、特に100μm未満から1μmである。
【0027】
更に好ましい一実施形態によれば、本発明による組成物は、吸着基を有する少なくとも1種のモノマーを含むことができる。吸着基は、例えば、アミド基とすることができる。したがって、吸着基を有するモノマーは、例えば、メタクリル酸アミドとすることができる。吸着基を有する少なくとも1種のモノマーを使用すると、骨セメントと関節の内部人工器官の結合に特に影響を及ぼすことができる。
【0028】
特に好ましい一代替形態によれば、本発明による組成物は、特に重合前に、粉末成分Aとして、少なくとも1種のポリメチルメタクリレートポリマー、1種の放射線不透過性物質、及び過酸化ベンゾイルを含み、別個に、液体成分B重合性モノマーとして、メチルメタクリレート、安定剤、及び少なくとも1種の芳香族アミンを含み、成分Aは、
a)モル質量Mnが200,000g/molを超え1,000,000g/molまでの少なくとも1種の粒状ポリメチルメタクリレートコポリマー、ポリメチルメタクリレートコポリマーは、メチルメタクリレート90.0重量%以上と1種以上のコモノマー10.0重量%以下の混合物の重合によって製造される、及び、
b)過酸化ベンゾイル1.0から2.5重量%、
を含み、成分Aと成分Bの重量比は、セメント粉体をモノマー液体と混合することによって形成されるセメント生地の初期粘度を調節するために、2.0から3.4:1.0まで変わる。
【0029】
本発明の別の一主題は、可変の初期粘度を有する骨セメント生地を製造する方法である。本発明による方法によれば、得られるポリメチルメタクリレート骨セメントの初期粘度を調節するために、成分A及び/又は成分(ii)、(iii)及び(iv)を成分B及び/又は成分(i)及び少なくとも1種の重合開始剤と重量比2.0から3.4:1.0で混合する。本発明による方法においては、混合プロセス中の重量比は、あるいは、重合性骨セメントの製造の場合、a)2.2:1.0以下、又はb)2.2:1.0から3.3:1.0未満、又はc)3.3:1.0以上である。
【0030】
モノマー液体の量の変更は、出願DE102015106899.0(優先日2015年5月4日、ドイツ特許庁、DPMA)に記載のように、例えば、自動ピペット、適切な完全充填済み(full−prepacked)混合システムなどの適切な投与装置によって行うことができる。前記完全充填済み混合システムは、セメント粉体とモノマー液体の重量比を変えることができる、モノマー液体の量の調節可能な投与のための装置を備える。
【0031】
本発明の別の一主題は、2成分AとBを混合することによって重合性骨セメントを製造する方法であり、成分Aは粉体として存在し、(a.1)少なくとも1種の粉末ポリメチルメタクリレートコポリマー、ポリメチルメタクリレートコポリマーは、モル質量Mnが200,000g/mol以上から1,000,000g/molである少なくとも1種の粒状ポリメチルメタクリレートコポリマーを含み、ポリメチルメタクリレートコポリマーは、メチルメタクリレート90.0重量%以上と1種以上のコモノマー10.0重量%以下の混合物の重合によって得ることができ、全組成は前記混合物に対して100重量%を占める、(a.2)少なくとも1種の粉末放射線不透過性物質、及び(a.3)少なくとも1種の重合開始剤を含み、
成分Bは液体として存在し、(b.1)少なくとも1種のラジカル重合用モノマー、特に少なくともメチルメタクリレート、(b.2)少なくとも1種の重合促進剤、及び(b.3)少なくとも1種の安定剤を含み、ポリメチルメタクリレートコポリマーを含む成分Aとラジカル重合用モノマーを含む成分Bの重量比は約2.0から3.4:1.0であり、特に、成分Aは、100重量%を占める成分Aの全組成に対して、少なくとも1種の重合開始剤、特に過酸化ベンゾイル1.0から2.5重量%を含む。成分A及びBは、常に、100重量%を占める対応する全組成として存在する。
【0032】
該方法の特に好ましい変形によれば、重合性骨セメントを製造するために、特に、重合性骨セメントの初期粘度を混合比によって調節するために、成分Aと成分Bを、a)2.2:1.0未満、又はb)2.2:1.0から3.3:1.0未満、特に2.2:1.0を超えて3.2:1.0まで、又はc)3.3:1.0以上、特に3.3:1.0から3.4:1.0の重量比で混合する。
【0033】
更なる特に好ましい一変形によれば、成分Aと成分Bを、a)混合から3.0分を超えた後にISO5833による不粘着状態に達する低粘度骨セメントを製造するために、2.2:1.0未満、特に2.0:1.0から2.2:1.0未満、又はb)混合から1.5分以上から3.0分後にISO5833による不粘着状態に達する中粘度骨セメントを製造するために、2.2:1.0から3.3:1.0未満、特に2.2:1.0を超えて3.2:1.0まで、又はc)混合から1.0分以上1.5分未満後にISO5833による不粘着状態に達する高粘度骨セメントを製造するために、3.3:1.0以上、特に3.3から3.4:1.0の重量比で混合することができる。
【0034】
本発明によれば、該方法は、例えばミリリットル又はリットル単位で、重量比から計算される成分A及びBの対応する体積を投与することによって、a)、b)又はc)に対応する重量比で成分A及び成分Bの投与を行うことを含むことが好ましい。
【0035】
更に好ましい一代替によれば、該方法がクレームされ、重量比a)、b)若しくはc)を達成するためのグラム単位の規定量の成分A、又は前記量に対応する体積の成分Aがカートリッジの内部空間に供給され、カートリッジは、カートリッジ連結器をその端部の一方に備え、分注プランジャを他方の反対側端部に備え、混合ロッドは、フィードスルーを介して、カートリッジの内部の混合装置に取り付けることができ、又は該混合装置上に配置され、混合装置は、混合ロッドを内部空間の軸に沿って動かすことによって外部から操作することができ、場合によっては、接続導管をカートリッジに配置し、成分Bは使い捨てモノマー容器中に供給される。接続導管は、カートリッジ連結器に間接的又は直接的に配置することができる。
【0036】
さらに、該方法は、好ましくは、重量比a)、b)若しくはc)を達成するためのグラム単位の規定量の成分B又は対応する体積の成分Bを使い捨てモノマー容器からカートリッジに、特に投与装置及び場合によっては接続導管によって移送するステップ、及び成分AとBの混合ステップを含む。
【0037】
さらに、本発明によれば、成分Aと成分Bをa)2.2:1.0未満の重量比で混合すると、混合から3.0分を超えた後にISO5833による不粘着状態に達する低粘度骨セメントが得られ、又はb)2.2:1.0から3.3:1.0未満の重量比で混合すると、混合から1.5分以上から3.0分後にISO5833による不粘着状態に達する中粘度骨セメントが得られ、又はc)3.3:1.0以上の重量比で混合すると、混合から1.0分以上1.5分未満後にISO5833による不粘着状態に達する高粘度骨セメントが得られる。
【0038】
該方法の更なる特に好ましい一変形によれば、カートリッジの内部空間に延び、回転することができ、長軸方向に移動することができる混合ロッドを動かして混合装置を作動させることによって、成分Aと成分Bを混合装置によって内部空間内で混合し、混合後に混合ロッドをカートリッジの内部空間からリミットストップまで引くことが好ましく、混合ロッドをリミットストップに引き出した後にそれを所定の破断部位において破断することが特に好ましい。
【0039】
該方法の更なる特に好ましい一変形によれば、低粘度、中粘度又は高粘度重合性骨セメントを含むカートリッジを接続導管及び場合によってはカートリッジブラケットから取り外し、分注プランジャを前進させることによって骨セメントをカートリッジの内部空間から分注する。分注プランジャは、カートリッジ中で軸方向に移動可能であるように支持され、カートリッジの内部空間の境界を片側に形成する。
【0040】
さらに、本発明の一主題は、成分A及び場合によっては成分Bを含む重合性骨セメントを製造するためのキットであり、成分Aは粉体として存在し、
(a.1)少なくとも1種の粉末ポリメチルメタクリレートコポリマー、粉末ポリメチルメタクリレートコポリマーは、モル質量Mnが200,000g/mol以上から1,000,000g/molである少なくとも1種の粒状ポリメチルメタクリレートコポリマーを含み、ポリメチルメタクリレートコポリマーは、メチルメタクリレート90.0重量%以上と1種以上のコモノマー10.0重量%以下から1重量%以上の混合物の重合によって得ることができ、全組成は前記混合物に対して100重量%を占める、
(a.2)少なくとも1種の粉末放射線不透過性物質、及び、
(a.3)少なくとも1種の重合開始剤、
を含み、成分Bは液体として存在し、
(b.1)少なくとも1種のラジカル重合用モノマー、
(b.2)場合によっては、少なくとも1種の重合促進剤、及び、
(b.3)場合によっては、少なくとも1種の安定剤、
を含み、成分Aはカートリッジの内部空間に存在し、カートリッジ1は、雌ネジ8を有するカートリッジ連結器をその端部の一方に備え、分注プランジャ2を他方の反対側端部に備え、混合ロッド4は、フィードスルーを介して、カートリッジの内部13の混合装置に取り付けることができ、又は該混合装置上に配置され、混合装置は、混合ロッド4を内部空間の軸に沿って動かすことによって外部から操作することができ、成分Bは使い捨て又は再利用可能なモノマー容器(バイアル)に含まれ、特に成分Bは、アンプル頭部を破断することができるガラスアンプル中に存在する。
【0041】
一代替によれば、モノマー容器とカートリッジの間に配置されたガラスアンプル、カートリッジ及び/又は投与装置は、標識を含む。あるいは、混合ロッド又はカートリッジの窓も標識を含むことができる。標識によって、ポリメチルメタクリレートコポリマーを含む成分Aとラジカル重合用モノマーを含む成分Bの重量比又は重量比に対応する体積比が約2.0から3.4:1.0に達するように添加される成分Bの量を標識の目盛りから読むことができる。その代わりに、又はそれに加えて、標識は、好ましくは、例えばカートリッジの内部及び/又は投与装置に、対応する標識を配置するはめ込み部品(snap−in elements)として、例えば、カートリッジの外側に、例えば、重量比、体積比又は調節粘度に関する情報を明記したラベルの形で、存在することができる。
【0042】
特に好ましくは、投与装置は、モノマー容器を出たモノマーを所望の混合比に従って投与装置に移送することができ、そこからカートリッジに移送することができるように、モノマー容器及びカートリッジの接続導管に配置される。投与装置は、好ましくは、軸方向に移動可能なプランジャを有する中空円筒体を含む。モノマーは、中空円筒に流入することができ、中空円筒によって吸入することができる。カートリッジへのモノマーの移送及びモノマーの投与は、中空円筒中及び/又は軸移動可能なプランジャ上のはめ込み部品によって行うことができる。
【0043】
ポリメチルメタクリレートコポリマーを含む成分Aと成分Bの重量比を達成する成分Bの重量比としての添加を示す投与装置のはめ込み部品及び/又はカートリッジ窓の標識を設けることが特に好ましい。本発明によれば、カートリッジは混合室を含む。
【0044】
更なる特に好ましい一代替によれば、成分Aの分注プランジャ2は不透過性であり、好ましくはガス透過性であって成分B不透過性であるポアフィルタを分注プランジャ2に配置する。
【0045】
本発明の別の一主題は、本発明による方法によって成分AとBを混合し、重合することによって、又はキットの成分AとBを混合することによって、又は成分(i)、(ii)、(iii)、(iv)及び場合によっては重合促進剤を混合することによって、得ることができる重合性骨セメントである。
【0046】
特に好ましい一実施形態によれば、本発明の一主題は、特に低、中、高粘度の骨セメント、特にa)成分Aと成分Bを2.2:1.0未満の重量比で混合することによる低粘度骨セメント、骨セメントは混合から3.0分を超えた後にISO5833による不粘着状態に達する、又は
b)成分Aと成分Bを2.2:1.0から3.3:1.0未満の重量比で混合することによる中粘度骨セメント、骨セメントは混合から1.5分以上から3.0分後にISO5833による不粘着状態に達する、又は
c)成分Aと成分Bを3.3を超える重量比で混合することによる高粘度骨セメント、骨セメントは混合から1.0分以上1.5分未満後にISO5833による不粘着状態に達する
の初期粘度の可変調節のための、成分A及びBを含む組成物の使用、又は本発明による方法によって得ることができる組成物の使用、又はその製造用キットである。
【0047】
別の一実施形態によれば、本発明の主題は、特に3次元成形体、好ましくは外科移植片又はその一部の形の、重合硬化骨セメントである。本発明の別の一主題は、外科移植片若しくは移植片の一部、修正移植片(revision implant)、ネジ、爪、外科プレートとして使用される移植片、一次全関節内部人工器官(primary total articular endoprostheses)の機械的固定のための移植片、修正全関節内部人工器官(revision total articular endoprostheses)の機械的固定のための移植片、骨粗鬆症骨組織の増強のための移植片、特に好ましくは、椎体形成術、椎骨形成術、及び骨粗鬆症骨組織における穿孔の増強のための移植片、骨空洞を充填するための移植片、大腿骨形成術のための移植片、スペーサの製造のための移植片、関節の内部人工器官の機械的固定のための移植片、頭蓋骨欠損を被覆するための移植片、又は局所抗生物質療法用担体材料の製造のための移植片、膝内部人工器官の大腿及び脛骨部品としての移植片、肩部内部人工器官としての移植片、又は薬学的活性物質の局所放出用担体材料としての移植片である。移植片又は上記製品も本発明の一主題である。一代替によれば、本発明の一主題は、骨粗鬆症骨組織の増強並びに、特に好ましくは、椎体形成術、椎骨形成術、及び骨粗鬆症骨組織における穿孔の増強における使用のための、骨空洞を充填するための、大腿骨形成術のための、スペーサの製造のための、関節の内部人工器官の機械的固定のための、頭蓋骨欠損を被覆するための、又は薬学的活性物質の局所放出用担体材料としての局所抗生物質療法用担体材料の製造のための、組成物、本発明に従って硬化した骨セメントからなる外科移植片用のキットである。
【0048】
特に好ましい一実施形態によれば、着色剤は、E101、E104、E132、E141(クロロフィリン)、E142、リボフラビン及びリサミングリーンからなる群から選択される。本発明によれば、着色剤という用語は、例えば、着色ワニスグリーンなどの着色ワニス、E104とE132の混合物のアルミニウム塩も含むものとする。
【0049】
放射線不透過性物質は、好ましくは、金属酸化物、特に二酸化ジルコニウム、硫酸バリウムなど、毒物学的に許容される重金属粒子、例えば、タンタル、フェライト、マグネタイト(該当する場合には超常磁性マグネタイトも)、生体適合性カルシウム塩などからなる群から選択することができる。前記放射線不透過性物質は、好ましくは、平均粒径が10nmから500μmの範囲である。さらに、考えられる放射線不透過性物質としては、3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨード安息香酸のエステル、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)のエステルを含むガドリニウムキレートなどのガドリニウム化合物も挙げられる。成分Aの放射線不透過性物質含有量、特に二酸化ジルコニウム濃度は、各々互いに無関係に、例えば、対応する全組成に対して3から30重量%の範囲とすることができる。
【0050】
重合開始剤として考えられるのは、特に、過酸化物及びバルビツール酸誘導体であり、好ましくは少なくとも1g/l、より好ましくは少なくとも3g/l、更により好ましくは少なくとも5g/l、特に好ましくは少なくとも10g/lの過酸化物及びバルビツール酸誘導体が重合性モノマーに25℃の温度で溶解することができる。
【0051】
本発明によれば、過酸化物は、少なくとも1個のペルオキソ基(−O−O−)を含む化合物を意味すると理解される。過酸化物は、好ましくは遊離酸基を含まない。過酸化物は、無機過酸化物又は有機過酸化物、例えば、毒物学的に許容されるヒドロペルオキシドとすることができる。
【0052】
バルビツール酸誘導体は、好ましくは、1−モノ−置換バルビツール酸塩、5−モノ−置換バルビツール酸塩、1,5−ジ−置換バルビツール酸塩及び1,3,5−トリ−置換バルビツール酸塩からなる群から選択されるバルビツール酸誘導体である。本発明の特別な一改良によれば、バルビツール酸誘導体は、1,5−ジ−置換バルビツール酸塩及び1,3,5−トリ−置換バルビツール酸塩からなる群から選択される。
【0053】
バルビツール酸の置換基のタイプに関して制限はない。置換基は、例えば、脂肪族又は芳香族置換基とすることができる。この状況においては、アルキル、シクロアルキル、アリル又はアリール置換基が好ましい可能性がある。置換基はヘテロ原子を含むこともできる。特に、置換基をチオール置換基とすることができる。したがって、1,5−二置換チオバルビツール酸塩又は1,3,5−三置換チオバルビツール酸塩が好ましい可能性がある。好ましい一実施形態によれば、置換基は各々、1から10個の炭素原子の長さ、より好ましくは1から8個の炭素原子の長さ、特に好ましくは2から7個の炭素原子の範囲の長さである。本発明によれば、1位及び5位に各々1個の置換基を有するバルビツール酸塩、又は1、3及び5位に各々1個の置換基を有するバルビツール酸塩が好ましい。別の好ましい一実施形態によれば、バルビツール酸誘導体は、1,5−二置換バルビツール酸塩又は1,3,5−三置換バルビツール酸塩である。特に好ましい一実施形態によれば、バルビツール酸誘導体は、1−シクロヘキシル−5−エチル−バルビツール酸、1−フェニル−5−エチル−バルビツール酸及び1,3,5−トリメチル−バルビツール酸からなる群から選択される。
【0054】
重金属塩及び重金属錯体からなる群から選択される重金属化合物は、重合促進剤として好ましい。本発明によれば好ましい重金属化合物は、水酸化銅(II)、メタクリル酸銅(II)、銅(II)アセチルアセトナート、銅(II)−2−エチル−ヘキサノアート、水酸化コバルト(II)、コバルト(II)−2−エチル−ヘキサノアート、塩基性炭酸銅(II)、鉄(II)−2−エチル−ヘキサノアート、鉄(III)−2−エチル−ヘキサノアート、及びそれらのうち少なくとも2種の混合物からなる群から選択される。
【0055】
本発明による組成物の別の一実施形態によれば、重合促進剤は、芳香族アミン、特に、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス−ヒドロキシエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−アニリン、フタルイミド、スクシンイミド、ピロメリット酸ジイミド、及びそれらのうち少なくとも2種の混合物などからなる群から選択される。
【0056】
本発明の別の有利な一改良は、重金属塩とN,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス−ヒドロキシエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−アニリンを含む群の少なくとも1員との組合せの重合促進剤としての使用を含む。この状況においては、2種の重合促進剤の組合せ、及び3種の重合促進剤の組合せが本発明の範囲において開示される。
【0057】
本発明の有利な一改良は、該当する場合には、本発明による組成物、又は少なくとも1種の重合共促進剤(polymerisation co−accelerator)を含む成分A若しくはBのどちらかからなり、第三級アミン及びアミジンが重合共促進剤として好ましく、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス−ヒドロキシエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−アニリンが共促進剤として好ましい。
【0058】
本発明によるポリメチルメタクリレート骨セメントは、一次関節内部人工器官の機械的固定、及び修正関節内部人工器官の固定に使用することができる。ポリメチルメタクリレート骨セメントは、スペーサ及び局所活性物質担体の製造のために使用することもできる。頭蓋骨の骨欠損を本発明によるポリメチルメタクリレート骨セメントで覆うこともできる。
【0059】
本発明を以下に示す実施例によって説明するが、本発明の範囲は前記実施例に限定されない。
【実施例】
【0060】
懸濁重合によって製造された数平均モル質量が200,000g/mlを超えるポリメチルメタクリレートコ−メチルメタクリレートを実施例(a〜j)のセメントに使用した。これらのコポリマーをメチルメタクリレートとアクリル酸メチルの混合物から製造した。メチルメタクリレート含有量は90重量%を超え、アクリル酸メチル含有量は10重量%未満であった。ポリメチルメタクリレートコ−メチルメタクリレートのポリマービーズの100μm未満の篩分級物を使用した。水で減感された市販過酸化ベンゾイルを開始剤として使用した。市販二酸化ジルコニウムを放射線不透過性物質として使用した。
【0061】
セメント粉体1としての成分Aの組成:
二酸化ジルコニウム15.0重量%
過酸化ベンゾイル2.0重量%
ポリメチルメタクリレートコ−メチルメタクリレート83.0重量%
モノマー液体と同義である成分Bの組成は以下の通りであった:ヒドロキノン約40ppmで安定化された、メチルメタクリレート98重量%、N,N−ジメチル−p−トルイジン2.0重量%、微量のクロロフィリンE141。
【0062】
セメント(a〜e)の加工性の試験をISO5833に従って行った。
【0063】
【表1】
【0064】
セメント(a)は低粘度セメントである。セメント(b)、(c)及び(d)は中粘度セメントである。セメント(e)は高粘度セメントである。
【0065】
ISO5833に従ってセメント(a〜e)の曲げ強度及び曲げ弾性率の測定のための大きさ3.3mm×10.0mm×75mmの帯状試験体を作製した。直径6mm及び高さ10mmの円筒状試験体を圧縮強度の測定のために作製した。ISO5833に従った曲げ強度、曲げ弾性率及び圧縮強度の測定にZwick Z010汎用試験装置を使用した。
【0066】
【表2】
【0067】
ISO5833は、50MPaを超える曲げ強度、1,800MPaを超える曲げ弾性率、及び70MPaを超える圧縮強度を必要とする。実施例(a〜e)のセメントは、曲げ強度、曲げ弾性率及び圧縮強度に関してISO5833の要件を満たす。
【0068】
さらに、ゲンタマイシン含有成分A2をセメント粉体2として製造した。
【0069】
添加硫酸ゲンタマイシンを含むセメント粉体2の組成:
二酸化ジルコニウム14.4重量%
過酸化ベンゾイル1.8重量%
ポリメチルメタクリレートコ−メチルメタクリレート79.7重量%
硫酸ゲンタマイシン4.1重量%(ゲンタマイシン主成分2.5重量%に相当)
モノマー液体の組成は以下の通りであった:ヒドロキノン約100ppmで安定化された、メチルメタクリレート98重量%、N,N−ジメチル−p−トルイジン2.0重量%、微量のクロロフィリンE141。
【0070】
セメントf〜jの加工性の試験をISO5833に従って行った。
【0071】
【表3】
【0072】
セメント(f)は低粘度セメントである。セメント(g)、(h)及び(i)は中粘度セメントである。セメント(j)は低粘度セメントである。
【0073】
ISO5833に従ってセメント(f〜j)の曲げ強度及び曲げ弾性率の測定のための大きさ3.3mm×10.0mm×75mmの帯状試験体を作製した。直径6mm及び高さ10mmの円筒状試験体を圧縮強度の測定のために作製した。ISO5833に従った曲げ強度、曲げ弾性率及び圧縮強度の測定にZwick Z010汎用試験装置を使用した。
【0074】
【表4】
【0075】
ISO5833は、50MPaを超える曲げ強度、1,800MPaを超える曲げ弾性率、及び70MPaを超える圧縮強度を必要とする。実施例(f〜j)のセメントは、曲げ強度、曲げ弾性率及び圧縮強度に関してISO5833の要件を満たす。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1a図1aは、本発明によるキットの一実施形態の要部を示す断面図である。
図1b図1bは、図1aに示すキットの要部の斜視図である。
【0077】
図1a及び図1bは、カートリッジ1及び、特に、使い捨てモノマー容器(バイアル、図示せず)を含む本発明によるキットを示す。カートリッジの設計の更なる詳細は、図1a及び図1bから明らかである。カートリッジ1の内側は、セメント粉体を含む円筒状内部空間13によって形成される。さらに、カートリッジ1の内部空間13は、その中に配置された複数の混合翼9からなる混合装置9を含む。混合装置9は、混合ロッド4に取り付けられ、混合ロッド4によって内部空間13を移動することができる。混合ロッド4を動かすことによって、成分AとBを混合室5中で混合することができる。分注プランジャ2は、二部設計であり、滅菌プランジャ7(図1aの分注プランジャの上部)、及びシール12によって内部空間13の内壁に対して封止された封止プランジャ11(図1aの分注プランジャの下部)からなる。封止プランジャ11は、ガス透過性であるが粉体不透過性である細孔円板を備え、それによって内部空間13を排気することができる。分注プランジャ2は、円筒状外周を有し、内部空間13の壁に対してしっかりと閉まる。カートリッジ1、特にカートリッジ連結器8は、それに配置された接続導管14を備え、混合プロセス前にそれを通してモノマーをカートリッジ1に導入することができる。
【0078】
モノマー容器を出たモノマーが移送される投与装置をモノマー容器(バイアル)と接続導管14の間に配置することができる。投与装置は、好ましくは、軸方向に移動可能なプランジャが配置される中空円筒体を備える。モノマーは、投与装置の中空円筒に流入することができ、中空円筒によって吸入することができる。軸方向に移動可能なプランジャをモノマーを含む中空円筒に規定通りに挿入すると、本発明による混合比に対して適量のモノマーが、カートリッジ中に移送されることによって、カートリッジ中で調節される。混合比の調節は、中空円筒及び/又は軸移動可能なプランジャのはめ込み部品によって行うことができる。
【0079】
分注プランジャ2は、カートリッジ1の内部空間13の分注プランジャ2とは反対側に配置された分注口の方向に内部空間13内を前進させることができる。続いて、分注プランジャ2を内向きに押すことによって、混合骨セメントをカートリッジの内部空間から分注口及び分注管を通って排出させることができ、混合骨セメントを塗布することができる。排出及び塗布の前に、カートリッジ1を接続導管14及び場合によってはカートリッジブラケット15から取り外す。
【0080】
上記記述及び特許請求の範囲、図、並びに例示的実施形態に開示された本発明の特徴は、単独又はその幾つかでも任意の組合せでも、本発明の様々な実施形態の実施に不可欠であり得る。
【符号の説明】
【0081】
1 カートリッジ
2 分注プランジャ
3 減圧連結器
4 混合ロッド
5 混合室
6 ハンドル部
7 滅菌プランジャ
8 雌ネジを有するカートリッジ連結器
9 混合翼/混合装置
10 粉体不透過性及び液体透過性フィルタ
11 封止プランジャ
12 シール
13 内部空間
14 接続導管
15 カートリッジブラケット

図1a
図1b