特許第6535008号(P6535008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6535008ナノ粒子を含む医薬組成物、その調製及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6535008
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】ナノ粒子を含む医薬組成物、その調製及び使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/51 20060101AFI20190617BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20190617BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20190617BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20190617BHJP
   A61K 41/00 20060101ALI20190617BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20190617BHJP
   A61K 33/08 20060101ALI20190617BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20190617BHJP
【FI】
   A61K9/51
   A61K47/10
   A61K47/60
   A61K47/69
   A61K41/00
   A61P35/00
   A61K33/08
   A61K33/24
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-541402(P2016-541402)
(86)(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公表番号】特表2017-504603(P2017-504603A)
(43)【公表日】2017年2月9日
(86)【国際出願番号】EP2014078619
(87)【国際公開番号】WO2015091888
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2017年10月31日
(31)【優先権主張番号】13306799.1
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506377178
【氏名又は名称】ナノビオティックス
【氏名又は名称原語表記】NANOBIOTIX
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ポティエ,アニエス
(72)【発明者】
【氏名】レヴィ,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】ジェルマン,マチュー
【審査官】 佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−500652(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0177523(US,A1)
【文献】 特表2011−524866(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0112040(US,A1)
【文献】 特表2013−534459(JP,A)
【文献】 特表2011−509233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性のナノ粒子又はナノ粒子凝集体を含む医薬組成物であって、i)該生体適合性のナノ粒子又はナノ粒子凝集体が、それぞれ、少なくとも1種の生体適合性親水性ポリマーで被覆されており、ii)該生体適合性のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の各最長寸法が、50nm〜150nmであり、iii)pH6〜8の水性媒体中で測定したとき、該生体適合性のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の各表面電荷値が、−15mV〜+15mVであり、そして、iv)該生体適合性のナノ粒子又はナノ粒子凝集体が、それを必要としている被験体に投与されたとき、該被験体の標的組織において少なくとも260500の蓄積係数(Accu F)を有し、該Accu Fが、以下の等式:
【数7】

(式中、
− dは、表面1nm2当たりの分子数として表される、該ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の各表面を被覆している少なくとも1種の生体適合性親水性ポリマーの緻密度であり、
− Mwは、キロダルトン(kDa)で表される、少なくとも1種の生体適合性親水性ポリマーの分子量であり、
− Cは、g/Lで表される、該医薬組成物中の該ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の濃度である)
によって定義され、そして、該Accu Fが、体重1キログラム(kg)当たり該医薬組成物 少なくとも0.1gを該被験体に静脈内(IV)又は動脈内(IA)注射したとき、標的組織1グラム(g)当たり少なくとも4ミリグラム(mg)の、該医薬組成物の該生体適合性のナノ粒子又はナノ粒子凝集体を該被験体の標的組織に蓄積させることができ
前記生体適合性のナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、酸化ハフニウム(HfO)のナノ粒子又は酸化ハフニウム(HfO)のナノ粒子凝集体であり、
前記少なくとも1種の生体適合性親水性ポリマーが、アルコキシシラン官能化されたポリエチレングリコールである、医薬組成物
【請求項2】
生体適合性親水性ポリマーが、2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリエトキシシラン又は2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシランである、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
dが、0.5〜8である、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
Mwが5kDa〜20kDaであり、そして、Cが350〜450g/Lである、請求項1〜3のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記被験体の前記標的組織の細胞を電離放射線に曝露したとき、該細胞を変化させるか又は破壊するために使用する、請求項1〜4のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記生体適合性のナノ粒子又はナノ粒子凝集体が、それぞれ、少なくとも2種の生体適合性親水性ポリマーで被覆され、そして、d及びMwが、それぞれ、少なくとも2種の生体適合性親水性ポリマーのうちの最高分子量を示す生体適合性親水性ポリマーの緻密度及び分子量である、請求項1〜のいずれか一項記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、それを必要としている被験体における標的部位に生体適合性のナノ粒子又はナノ粒子凝集体を適切に送達することを可能にする、該生体適合性のナノ粒子又はナノ粒子凝集体を含む医薬組成物に関する。適切な送達とは、該被験体に対する該医薬組成物によって誘導される処置の許容し得るベネフィット/リスク比を保証する用量域で生じる該標的部位への系統的送達(systematic delivery)である。該組成物は、実際に、体重1キログラム(kg)当たり該医薬組成物 少なくとも0.1gを該被験体に静脈内(IV)又は動脈内(IA)注射したとき、標的組織1グラム(g)当たり少なくとも4ミリグラム(mg)の該生体適合性のナノ粒子又はナノ粒子凝集体を該被験体の標的組織に蓄積させることができる。
【0002】
背景技術
ナノ医療の欧州技術プラットフォームによれば、ナノ医療は、「ナノテクノロジーの健康への適用。ナノ医療は、ナノメートル単位の材料の改善された、そして、多くの場合新規の、物理的特性、化学的特性、そして、生物学的特性を活用する。ナノ医療は、疾患の予防、早期かつ信頼性のある診断、及び治療に対して潜在的な影響を有する。」と定義されている。
【0003】
処置に使用する状況では、処置の許容し得るベネフィット/リスク比を保証するために、適切な用量域のナノ材料を標的部位に送達することが最も重要である。
【0004】
組成、サイズ、コアの特性、表面修飾(ペグ化及び表面電荷)、及び標的指向性リガンドの官能化等のナノ粒子の物理化学的パラメータは、ナノ粒子の生物学的障壁との相互作用に影響を与える。上記要因は全て、非特異的取り込みのレベルを低減し、オプソニン化を遅らせ、そして、組織特異的蓄積の程度を増大させることによって、循環ナノ粒子の体内分布及び血液循環半減期に実質的に影響を与えることが示されている。特に、ナノ粒子の表面の官能化は、血中滞留時間を延長し、そして、非特異的分布を低減するために用いられている。例えば、親水性ポリマー、最も顕著にはポリ(エチレングリコール)(PEG)をナノ粒子の表面にグラフト化、コンジュゲート化、又は吸着させてコロナを形成できることが十分に確立されており、コロナは、立体安定化をもたらし、そして、タンパク質吸収の防止等の「ステルス(stealth)」特性を付与する。一般的に、ペグ化されたナノ粒子は、非ペグ化ナノ粒子よりも循環時間が長く、そして、腫瘍蓄積のレベルが高いことが見出されている。更に、粒子表面におけるPEGの鎖長、形状、及び密度は、ナノ粒子表面の食作用に影響を与える主なパラメータであることが示されている。
【0005】
特に、Grefらによって、ナノ粒子の表面におけるタンパク質の吸着防止に対するPEG鎖長の効果が体系的に研究されている。その結果は、PLA−PEGナノ粒子の血漿タンパク質吸着を低減するために、最適な分子質量(Mw)域(2〜5kDa)が存在することを示した。タンパク質吸収の最も顕著な低減は、ペグ化粒子(5重量%)についてみられた。興味深いことに、タンパク質吸収を最小化するためのPEG鎖間の間隔の閾値は1〜2nmであると推定された。
【0006】
同様に、C. Fangらは、ステルスポリ(シアノアクリレート−コ−n−ヘキサデシル)シアノアクリレート(PHDCA)ナノ粒子の受動的標的指向化に対するPEGの分子質量の効果を示した。PEG10kDaは、タンパク質の吸収防止に対して、PEG2kDa及びPEG5kDaと比べてPEGの最も効率的なサイズであることが見出された。
【0007】
要約すると、血漿タンパク質の吸着、オプソニン化、及び非特異的取り込みを低減したナノ粒子におけるPEGの分子質量及びPEGの密度について多くのことが分かっている。次に、これによって、ナノ粒子の循環半減期が延長され、そして、ペグ化ナノキャリアを用いて送達される薬物の処置効果が改善されている。
【0008】
しかし、被験体に対する組成物によって誘導される処置の許容し得るベネフィット/リスク比を保証するために、適切な用量域で該組成物が含有するナノ粒子の標的部位への系統的送達を保証することができる組成物が依然として必要とされている。
【0009】
発明の概要
次に、本発明者らは、本明細書において、適切な用量域、すなわち、医師によって許容される、被験体に対する医薬組成物によって誘導される処置の許容し得るベネフィット/リスク比を保証する用量域で、標的部位、好ましくは、腫瘍部位にナノ粒子又はナノ粒子凝集体を系統的に送達することができる、該ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を含む医薬組成物について開示する。
【0010】
本発明に係る医薬組成物は、生体適合性のナノ粒子又はナノ粒子凝集体であって、i)該生体適合性のナノ粒子又はナノ粒子凝集体が、それぞれ、少なくとも1種の生体適合性親水性ポリマーで被覆されており、ii)該生体適合性のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の各最長寸法が、約50nm〜約150nm、好ましくは約60nm〜約100nm、更により好ましくは約60nm〜約90nmであり、iii)pH6〜8の水性媒体中で測定したとき、該生体適合性のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の各表面電荷値が、−15mV〜+15mVであり、そして、iv)該生体適合性のナノ粒子又はナノ粒子凝集体が、それを必要としている被験体に投与されたとき、該被験体の標的組織において少なくとも260500の蓄積係数(Accu F)を有し、該Accu Fが、以下の等式:
【数1】

(式中、
− dは、表面1nm2当たりの分子数として表される、該ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の各表面を被覆している少なくとも1種の生体適合性親水性ポリマーの緻密度であるか、又は少なくとも2種の異なるポリマーが該ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の各表面を被覆しているとき、dは、最高分子量を示す生体適合性親水性ポリマーの緻密度であり、
− Mwは、キロダルトン(kDa)で表される、少なくとも1種の生体適合性親水性ポリマーの分子量であり、
− Cは、g/Lで表される、該医薬組成物中の該ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の濃度である)
によって定義され、そして、該Accu Fが、体重1キログラム(kg)当たり該医薬組成物 少なくとも0.1gを該被験体に静脈内(IV)又は動脈内(IA)注射したとき、標的組織1グラム(g)当たりナノ粒子又はナノ粒子凝集体 少なくとも4ミリグラム(mg)の、該医薬組成物の該生体適合性のナノ粒子又はナノ粒子凝集体を該被験体の標的組織に蓄積させることができる生体適合性のナノ粒子又はナノ粒子凝集体を含む。
【0011】
典型的な実施態様では、被験体の標的組織の細胞を電離放射線に曝露したとき、該細胞を変化させるか又は破壊するために使用する医薬組成物について本明細書に記載する。
【0012】
特定の実施態様では、医薬組成物中に存在する生体適合性のナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、それぞれ、少なくとも2種の生体適合性親水性ポリマーで被覆されている。このような状況では、d及びMwは、それぞれ、少なくとも2種の生体適合性親水性ポリマーのうちの最高分子量を示す生体適合性親水性ポリマーの緻密度及び分子量である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書では、用語「ナノ粒子」、「ナノ粒子凝集体」、及び「粒子」は、同様に用いられる。
【0014】
本発明の状況では、用語「ナノ粒子」又は「ナノ粒子凝集体」は、ナノメートル範囲、典型的には、1nm〜500nmのサイズを有する生成物、特に、合成生成物を指す。
【0015】
用語「ナノ粒子の凝集体」又は「ナノ粒子凝集体」は、互いに強く結合、典型的には共有結合しているナノ粒子の集合体を指す。
【0016】
用語「ナノ粒子のサイズ」又は「ナノ粒子凝集体のサイズ」、及び「ナノ粒子の最大サイズ」又は「ナノ粒子凝集体の最大サイズ」は、本明細書では、「ナノ粒子の最大寸法」又は「ナノ粒子凝集体の最大寸法」又は「ナノ粒子の直径」又は「ナノ粒子凝集体の直径」を指す。
【0017】
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のサイズを測定することができる。同様に、動的光散乱(DLS)を用いて、溶液中のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の流体力学直径を測定することができる。好ましい方法は、DLS(International Standard ISO22412 Particle Size Analysis -Dynamic Light Scattering, International Organisation for Standardisation (ISO) 2008を参照)。また、これら2つの方法を交互に用いてサイズの測定値を比較し、そして、該サイズを確認してもよい。ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のサイズは、典型的に、該ナノ粒子又はナノ粒子凝集体が少なくとも1種の生体適合性親水性ポリマーでコーティングされているときに測定される。
【0018】
本明細書で定義するとき、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の最大寸法は、典型的に、約5nm〜約250nm、好ましくは約10nm〜約200nm、又は約100nm、より好ましくは約20nm〜約150nm、更により好ましくは約50〜約150nm、又は約60nm〜約100nm、又は約60nm〜約90nmである。
【0019】
粒子の形状は、該粒子の「生体適合性」に影響を及ぼし得るので、かなり均質な形状を有する粒子が好ましい。薬物動態的理由のため、本質的に球形状、円形状、又は楕円形状であるナノ粒子又はナノ粒子凝集体が好ましい。また、このような形状は、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体が細胞と相互作用したり、細胞に取り込まれたりするのに有利に働く。球形状又は円形状が特に好ましい。典型的に、最大寸法は、円形状若しくは球形状のナノ粒子若しくはナノ粒子凝集体の寸法であるか、又は楕円形状若しくは卵形状のナノ粒子若しくはナノ粒子凝集体の最長長さである。
【0020】
本発明の状況において使用可能なナノ粒子は、有機であっても無機であってもよい。更に、有機ナノ粒子と無機ナノ粒子との混合物を用いてもよい。
【0021】
有機の場合、ナノ粒子は、脂質系ナノ粒子(グリセロ脂質、リン脂質、ステロール脂質等)、本明細書では「タンパク質ナノ粒子」としても同定されるタンパク質系ナノ粒子(例えば、アルブミン)、ポリマー系ナノ粒子(「高分子ナノ粒子」)、コポリマー系ナノ粒子(「共重合体ナノ粒子」)、炭素系ナノ粒子、ウイルス様ナノ粒子(例えば、ウイルスベクター)であってよい。
【0022】
有機ナノ粒子は、更に、リポソーム、ゲル、ヒドロゲル、ミセル、デンドリマー等のナノスフェア(単純(plain)ナノ粒子)又はナノカプセル(中空ナノ粒子)であってよい。本明細書に記載する有機ナノ粒子の混合物を用いてもよい。
【0023】
ポリマー又はコポリマーは、天然起源であっても合成起源であってもよい。有機ナノ粒子を調製するために本発明の状況において使用可能な合成(人工)及び天然のポリマー又はコポリマーの例は、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(ラクチド−コ−グリコール)酸(PLGA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリグラクチン、ポリラクチド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール、ポリソルバート、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリメチルメタクリラート、ポリアルキルシアノアクリラート、ポリラクタート−コ−グリコラート、ポリ(アミドアミン)、ポリ(エチレンイミン)、アルギナート、セルロース及びセルロース誘導体ポリマー、コラーゲン、ヒアルロン酸、ポリグルタミン酸(PGA)、アクチン、多糖、並びにゼラチンから選択してよい。有機ナノ粒子は、薬物担体ナノ粒子であってもよい。
【0024】
無機の場合、ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体は、任意の無機材料で作製してよい。無機材料は、例えば、ランタニドを含むメンデレーエフの周期律表の3、4、5、6族の金属元素を含んでよい。
【0025】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の無機材料は、少なくとも1種の金属元素、典型的には少なくとも25の原子番号Zを有する金属元素を用いて調製され、典型的には該金属元素を含む。また、無機材料は、数種の金属元素、典型的には、2種の金属元素を含んでいてもよい。特定の実施態様では、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、無機材料からなり、該無機材料は、単一の金属元素又は金属元素の混合物を含む。
【0026】
無機材料は、好ましくは、少なくとも25、好ましくは、少なくとも40又は41、より好ましくは、少なくとも50又は51、より好ましくは、少なくとも60、61、62、又は更には63の有効原子番号(Zeff)を有する材料である。
【0027】
有効原子番号は、原子番号に類似する用語であるが、原子ではなく、化合物(例えば、水)及び異なる材料の混合物(組織及び骨等)に対して用いられる。有効原子番号は、化合物又は材料の混合物についての平均原子番号を計算する。有効原子番号をZeffと略記する。
【0028】
有効原子番号は、化合物中の各原子の分率を求め、そして、それに原子の原子番号を乗じることによって計算される。有効原子番号Zeffの式は、以下の通りである:
【数2】

(式中、fnは、各元素に結合している電子の合計数の割合であり、そして、
Znは、各原子の原子番号である)。
【0029】
原子番号(陽子数としても知られている)は、原子の核にみられる陽子の数である。原子番号は、伝統的に、記号Zで表される(そして、本明細書でもZnと表す)。原子番号は、化学元素を一意的に同定する。中性電荷の原子では、原子番号は、電子の数に等しい。
【0030】
一例は、2つの水素原子(Z=1)及び1つの酸素原子(Z=8)で構成される水(HO)の原子番号である。電子の合計数は、1+1+8=10である。2つの水素に対応する電子の割合は、2/10であり、そして、唯一の酸素に対応する電子の割合は、(8/10)である。したがって、水のZeffは、
【数3】

である。
【0031】
Zeffは、ナノ粒子の入射放射線吸収能に関与する。
【0032】
ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を構成する無機材料は、典型的に、金属、酸化物、硫化物、及びこれらの任意の混合物から選択される。典型的に、この無機材料は、少なくとも25の原子番号Zを有する少なくとも1種の金属元素を含む。
【0033】
ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を構成する無機材料が酸化物である場合、この酸化物は、例えば、酸化鉄(Fe又はFe)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化セシウム(IV)(CeO)、酸化ネオジム(neodynium)(III)(Nd)、酸化サマリウム(III)(Sm)、酸化ユウロピウム(III)(Eu)、酸化ガドリニウム(III)(Gd)、酸化テルビウム(III)(Tb)、酸化ジスプロシウム(III)(Dy)、酸化ホルミウム(Ho)、酸化エルビウム(Er)、酸化ツリウム(thullium)(III)(Tm)、酸化イッテルビウム(Yb)、酸化ルテチウム(lu)、酸化ハフニウム(IV)(HfO)、酸化タンタル(V)(Ta)、酸化レニウム(IV)(ReO)、酸化ビスマス(III)(Bi)から選択してよい。好ましい実施態様では、ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を構成する無機材料は、HfOである。
【0034】
特定の実施態様では、本発明のナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を調製するための無機材料として酸化物の混合物を用いてもよい。したがって、本発明のナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体は、酸化物の混合物を含み得るか又はからなり得る。
【0035】
ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を構成する無機材料が金属である場合、この金属は、例えば、金金属(Au)、銀金属(Ag)、白金金属(Pt)、パラジウム金属(Pd)、スズ金属(Sn)、タンタル金属(Ta)、イッテルビウム金属(Yb)、ジルコニウム金属(Zr)、ハフニウム金属(Hf)、テルビウム金属(Tb)、ツリウム金属(Tm)、セリウム金属(Ce)、ジスプロシウム金属(Dy)、エルビウム金属(Er)、ユウロピウム金属(Eu)、ホルミウム金属(Ho)、鉄金属(Fe)、ランタン金属(La)、ネオジム金属(Nd)、プラセオジム金属(Pr)、及びルテチウム金属(Lu)から選択してよい。好ましい実施態様では、金属は、金である。
【0036】
既に記載した通り、特定の実施態様では、本発明のナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を調製するための無機材料として金属の混合物を用いてもよい。
【0037】
したがって、本発明のナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体は、金属の混合物を含み得るか又はからなり得る。
【0038】
ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を構成する無機材料が硫化物である場合、この硫化物は、例えば、硫化銀(AgS)、硫化ビスマス(Bi)、硫化鉄(Fe)から選択してよい。特定の実施態様では、本発明のナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を調製するために硫化物の混合物を用いてもよい。
【0039】
したがって、本発明のナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体は、硫化物の混合物を含み得るか又はからなり得る。
【0040】
本発明のナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を調製するために酸化物、金属、及び/又は硫化物の混合物を用いてもよい。したがって、本発明のナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体は、酸化物、金属、及び/又は硫化物の混合物を含み得るか又はからなり得る。有利なことに、本発明の状況において用いることができるナノ粒子の例は、酸化ハフニウム材料で被覆されている金金属ナノ粒子である。
【0041】
特定の実施態様では、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、無機材料からなり、該ナノ粒子及びナノ粒子凝集体の密度は、少なくとも7g/cm3である(国際公開公報第2009/147214号)。
【0042】
特定の実施態様では、無機材料からなるナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、薬物担体ナノ粒子であってもよい。
【0043】
好ましい実施態様では、対象となる組成物を調製するために本発明の状況で用いられるナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を、生体適合性親水性ポリマーでコーティングしてもよい。実際に、本発明のナノ粒子を静脈内(IV)又は動脈内(IA)経路を介して被験体に投与する場合、生体適合性親水性ポリマーから選択される材料による生体適合性コーティングは、ナノ粒子の体内分布を最適化するために特に有利である。
【0044】
生体適合性親水性コーティングは、1種以上の生体適合性親水性ポリマーで構成されていてもよい。これらポリマーは、pH6〜8の水性媒体中で測定したとき、各生体適合性のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面電荷値が−15mV〜+15mVである限り、正に帯電していても負に帯電していてもよい。
【0045】
この電荷は、典型的には、濃度が0.2〜10g/Lで変動し、ナノ粒子がpH6〜8の水性媒体に懸濁しており、そして、水性媒体中の電解質濃度が0.001〜0.2M、例えば、0.01M又は0.15Mであるナノ粒子懸濁液に対して実施される、ゼータ電位測定によって決定することができる。
【0046】
これら生体適合性親水性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリグリセロール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール(例えば、ポリビニルピロリドン)、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド(例えば、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド))、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカルバミド、多糖類(例えば、デキストラン、硫酸デキストラン、キトサン、アルギン酸塩、キシラン、ヒアルロン酸、又はβ−グルカン)、タンパク質(例えば、コラーゲン、ポリグルタミン酸、ポリリジン、又はアルブミン)からなる群から選択してよい。好ましい実施態様では、生体適合性親水性ポリマーは、PEGである。
【0047】
また、これら生体適合性親水性ポリマーは、ポロキサマー、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)若しくはN−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド等のコポリマー、又は上記異なるポリマー若しくはコポリマーの組み合わせからなる群から選択してもよい。
【0048】
生体適合性コーティングは、特に、医薬投与に必要な、生理学的流体(血液、血漿、血清等)、任意の等張媒体又は生理学的媒体、例えば、グルコース(5%)及び/又はNaCl(0.9%)を含む媒体等の流体中におけるナノ粒子の安定性を可能にする。
【0049】
安定性は、乾燥オーブンを用いて乾燥抽出物定量によって確認してよく、そして、典型的に0.22又は0.45μmのフィルタで濾過する前後のナノ粒子懸濁液に対して測定してよい。
【0050】
有利なことに、コーティングは、インビボにおいて粒子の一体性を保持し、粒子の生体適合性を保証又は改善し、そして、粒子の最適な官能化(例えば、スペーサー分子、標的指向化剤、タンパク質等による)を促進する。
【0051】
親水性生体適合性ポリマーは、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面にグラフト化及び/若しくはコンジュゲート化(例えば、酸化物ナノ粒子におけるアルコキシシラン基を介して、又は金属ナノ粒子におけるチオール基を介して)並びに/又は吸着(例えば、静電相互作用又は水素相互作用を介して)してよい。
【0052】
特定の実施態様では、生体適合性親水性ポリマーは、アルコキシシラン基を介して酸化物ナノ粒子の表面にグラフト化及び/又はコンジュゲート化される。
【0053】
別の特定の実施態様では、生体適合性親水性ポリマーは、チオール基を介して金属ナノ粒子の表面にグラフト化及び/又はコンジュゲート化される。
【0054】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体が酸化物のナノ粒子又はナノ粒子凝集体である場合、親水性生体適合性ポリマーは、典型的に、0.4kDa〜30kDa、より好ましくは2kDa〜20kDa、又は5kDa〜20kDa、例えば、10kDaに等しい分子量(kDaで表す)を有する[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]アルコキシシラン等、アルコキシシラン官能化されたポリエチレングリコール又はポリエチレンオキシドであってよい。
【0055】
例えば、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体が、酸化ハフニウムのナノ粒子又はナノ粒子凝集体である場合、親水性生体適合性ポリマーは、分子量10kDa又は20kDaの2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリエトキシシラン(mPEGシラン)であってよい。
【0056】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体が酸化ハフニウムのナノ粒子又はナノ粒子凝集体である場合、かつ少なくとも2種の異なる親水性生体適合性ポリマーを用いる場合、これらポリマーは、典型的に、それぞれ分子量0.45kDa及び10kDa、又はそれぞれ分子量0.45kDa及び20kDaの2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリエトキシシランであってよい。
【0057】
本明細書に記載する別の特定の目的は、好ましくは、薬学的に許容し得る担体又はビヒクルと共に、上に定義したようなナノ粒子を含む医薬組成物に関する。該組成物は、典型的に、液体(懸濁液中の粒子)の形態である。
【0058】
使用される担体は、例えば、塩類の等張滅菌緩衝溶液、非水性ビヒクル溶液等、当業者にとって任意の伝統的な支持物(support)であってよい。
【0059】
また、該組成物は、安定剤、甘味剤、界面活性剤、ポリマー等を含んでもよい。
【0060】
該組成物は、当業者に公知の医薬製剤化技術を用いることによって、例えば、アンプル、瓶、又はプレフィルドシリンジとして製剤化することができる。
【0061】
一般的に、該組成物は、約0.05g/L〜約450g/L ナノ粒子、好ましくは、少なくとも約10g/L、20g/L、40g/L、45g/L、50g/L、55g/L、60g/L、80g/L、100g/L、150g/L、180g/L、200g/L、250g/L、300g/L、350g/L、360g/L、又は400g/L ナノ粒子を含む。
【0062】
該組成物中のナノ粒子の濃度は、乾燥抽出物によって測定することができる。該乾燥抽出物は、理想的には、乾燥オーブン内でナノ粒子を含む懸濁液を乾燥させる工程後に測定される。
【0063】
本発明のナノ粒子は、動脈内(IA)、皮下、静脈内(IV)、皮内、腹膜内、くも膜下腔内、眼球内、又は経口経路(口から)等の様々な可能な経路を用いて、好ましくはIV又はIAを用いて、被験体に投与してよい。
【0064】
ナノ粒子の反復注射又は投与を適宜実施してよい。
【0065】
本発明のナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、多くの分野、特に、ヒト又は動物の医療において用いることができる。本明細書に記載する通り、本発明に係るナノ粒子又はナノ粒子凝集体及び組成物は、好ましくは、動物、好ましくは、哺乳類(例えば、動物医療の状況において)、更により好ましくは、ヒトにおいて、処置剤として使用するためのものである。
【0066】
特定の実施態様では、本明細書に記載する通り、本発明に係るナノ粒子又はナノ粒子凝集体及び組成物は、特に腫瘍学において、好ましくは、ナノ粒子を電離放射線に曝露するときに使用するためのものである。
【0067】
本発明を用いて、任意の種類、特に、上皮、神経外胚葉、又は間葉起源の悪性固形腫瘍に加えて、リンパ腺癌を処置することができる。また、ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体は、外科的に除去することができない進行期の腫瘍に用いることもできる。
【0068】
本明細書に記載するナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体は、特に、放射線療法が伝統的な処置であるか若しくは特定の被験体にとって最も適切な処置である癌、又は放射線療法が適応であり得る癌を処置するために用いることを意図する。このような癌は、特に、AIDSに関連する悪性新生物、メラノーマを含む皮膚癌;扁平上皮癌;脳、小脳、下垂体、脊髄、脳幹、目、及び眼窩を含む中枢神経系腫瘍;頭頸部腫瘍;肺癌;乳癌;肝臓及び肝胆道の癌、結腸、直腸、及び肛門の癌、胃、膵臓、食道の癌等の消化器腫瘍;前立腺、精巣、陰茎、及び尿道の癌等の男性泌尿生殖器腫瘍;子宮頸部、子宮内膜、卵巣、卵管、膣、及び外陰部の癌等の婦人科腫瘍;副腎及び後腹膜の腫瘍;局在にかかわらず骨及び軟組織の肉腫;並びにウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、中枢神経系腫瘍、ユーイング肉腫等の小児科腫瘍からなる群から選択してよい。
【0069】
特定の実施態様では、本発明は、標的組織、より好ましくは腫瘍組織 1グラム当たりナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体 約4mg超、例えば、約5mg/g超、好ましくは、約6mg/g超 ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を、癌に罹患している被験体に蓄積させる方法に関する。この方法は、少なくとも0.1g/kg、少なくとも0.2g/kg、少なくとも0.3g/kg、少なくとも0.4g/kg、又は少なくとも0.5g/kg、例えば、少なくとも0.8g/kg、又は少なくとも1g/kg 医薬組成物をIA又はIV経路によって被験体に投与する工程を含み、該医薬組成物は、生体適合性のナノ粒子又はナノ粒子凝集体であって、i)該生体適合性のナノ粒子又はナノ粒子凝集体が、それぞれ、少なくとも1種の生体適合性親水性ポリマーで被覆されており、ii)該生体適合性のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の各最長寸法が、約50nm〜約150nm、好ましくは約60nm〜約100nm、更により好ましくは約60nm〜約90nmであり、iii)pH6〜8の水性媒体中で測定したとき、該生体適合性のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の各表面電荷値が、−15mV〜+15mVであり、そして、iv)該生体適合性のナノ粒子又はナノ粒子凝集体が、それを必要としている被験体に投与されたとき、該被験体の標的組織において少なくとも260500の蓄積係数(Accu F)を有し、該Accu Fが、以下の等式:
【数4】

(式中、
− dは、表面1nm2当たりの分子数として表される、該ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の各表面を被覆している少なくとも1種の生体適合性親水性ポリマーの緻密度であるか、又は少なくとも2種の異なるポリマーが該ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の各表面を被覆しているとき、dは、最高分子量を示す生体適合性親水性ポリマーの緻密度であり、
− Mwは、キロダルトン(kDa)で表される、少なくとも1種の生体適合性親水性ポリマーの分子量であり、
− Cは、g/Lで表される、該医薬組成物中の該ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の濃度である)
によって定義される生体適合性のナノ粒子又はナノ粒子凝集体を含む。
【0070】
既に説明した通り、被験体は、ヒトであってよく、該ヒトの体重は、50〜100Kg、典型的には50〜70Kg含まれる。
【0071】
無機の場合、標的部位、好ましくは腫瘍部位における本発明のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の蓄積は、典型的に、コンピュータ断層撮影(CT)イメージング技術を用いて測定することができる。組成物を調製するために用いられる、本明細書に記載する通りの無機ナノ粒子は、標的組織とナノ粒子との間の電子密度の差に起因して、CT画像において顕著なコントラストを生じさせる。
【0072】
ハウンスフィールド値は、ハウンスフィールド単位(HU)で表される、コンピュータ断層撮影における画素(画像素子)の計算X線吸収係数の正規化値であり、ここで、空気のCT値は、−1000(HU=−1000)であり、そして、水のCT値は、ゼロ(HU=0)である。高電子密度の無機ナノ粒子では、組織とナノ粒子との間の分離は、典型的に、約120以上のHU値で生じる。典型的に120から200までのHU値を超えると、それ以上軟組織の密度を見出すことはできない。典型的に120又は200を超えるHU値の分布に対応するヒストグラムが確立される。該ヒストグラムは、特定の閾値、典型的に、120HU又は200HUを超える特定のHU値に関連するボクセルの発生を表す。ナノ粒子の分布についての平均HU値は、以下の等式を用いて得られる。
【数5】
【0073】
液体懸濁液中漸増濃度のナノ粒子に対してハウンスフィールド値(HU)をプロットした検量線を用いる。該検量線から、ナノ粒子の平均濃度を計算する(X平均(g/L))。
【0074】
無機の場合、標的部位、好ましくは腫瘍部位における本発明のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の蓄積は、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)又はICP-OES(誘導結合プラズマ発光分析)技術を用いて、ナノ粒子を構成する金属元素を定量することによって測定することもできる。
【0075】
有機の場合、標的部位、好ましくは腫瘍部位における本発明のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の蓄積は、典型的に、蛍光プローブを用いるイメージング技術によって測定することができる。
【0076】
ナノ粒子及びナノ粒子凝集体が無機のナノ粒子及びナノ粒子凝集体である場合、電離放射線は、典型的に、X線、ガンマ線、紫外線、電子線に加えて、例えば、中性子、炭素イオン、及びプロトンの粒子線を含む。
【0077】
電離放射線、特に、X線、ガンマ線、放射性同位体、及び/又は電子線の作用下で、ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体は、活性化し、そして、電子及び/又は高エネルギー光子を発生させる。イオン化後に放出されるこれら電子及び/又は高エネルギー光子は、恐らくフリーラジカルの発生を介して、直接及び/又は間接的に細胞傷害に関与し、そして、最終的に、細胞を破壊し、その結果、患者にとってより良好な予後が得られる。驚くべきことに、本発明者らは、標的組織、好ましくは標的部位におけるナノ粒子の蓄積(4mg/g以上)が、放射線療法のみと比べた、放射線療法の効率の顕著な増大に関与していることを見出した。
【0078】
粒子は、放射線の総線量の広い範囲内で励起することができる。量及びスケジュール(どの分割線量、分割送達スキーマ、総線量のみ、又は他の抗癌剤との併用等であろうと、照射の計画及び送達)は、任意の疾患/解剖学的部位/疾患段階患者の状態/患者の年齢(小児、成人、高齢患者)について規定され、そして、任意の特定の状況について注意義務の基準を構成する。
【0079】
照射は、ナノ粒子の投与後の任意の時点で、1回以上、放射線療法又はX線検査の任意の現在利用可能なシステムを用いることによって、適用可能である。既に示した通り、適切な放射線又は励起源は、好ましくは、電離放射線であり、そして、有利なことに、X線、ガンマ線、電子線、イオンビーム、及び放射性同位体又は放射性同位元素の放出からなる群から選択してよい。X線が特に好ましい励起源である。
【0080】
電離放射線は、典型的に、約2KeV〜約25000KeV、特に約2KeV〜30約6000KeV(すなわち、6MeV)(LINAC源)、又は約2KeV〜約1500KeV(例えば、コバルト60源)である。
【0081】
一般的に、そして、非限定的に、以下のX線を様々な症例に適用して粒子を励起することができる:
− 2〜50keVの超臨界X線:表面近傍のナノ粒子を励起(数ミリメートルの透過);
− 50〜150keVのX線:診断だけでなく治療にも;
− 6cmの厚さの組織を透過することができる200〜500keVのX線(正中電圧);
− 1000keV〜25,000keVのX線(超高圧)。
【0082】
あるいは、放射性同位体を電離放射線源として用いてもよい(キュリー療法又は近接照射療法と命名)。特に、ヨウ素125I(t1/2=60.1日間)、パラジウム103Pd(t1/2=17日間)、セシウム137Cs、ストロンチウム89Sr(t1/2=50,5日間)、サマリウム153Sm(t1/2=46.3時間)、及びイリジウム192Irを有利に用いることができる。
【0083】
陽子線、イオンビーム、例えば、炭素、特に、高エネルギーイオンビーム等の帯電粒子を電離放射線源及び/又は中性子線として用いてもよい。
【0084】
また、電子線を、4MeV〜25MeVのエネルギーが含まれる電離放射線源として用いてもよい。
【0085】
金属元素を構成する原子の所望のX線吸収端に近いか又は対応するエネルギーでX線を選択的に発生させるために、特定の単色放射線源を用いてよい。
【0086】
優先的に、電離放射線源は、直線加速器(LINAC)、コバルト60、及び近接照射療法源から選択してよい。
【図面の簡単な説明】
【0087】
図1】ヌードマウスに異種移植した腫瘍モデルのパネルにおけるナノ粒子又はナノ粒子凝集体の腫瘍生物学的利用能(1点当たりマウス3匹;表1を参照)。 腫瘍部位におけるナノ粒子の量は、腫瘍 1g当たりのナノ粒子のmg(mg/g(腫瘍))として表す。腫瘍部位におけるナノ粒子又はナノ粒子凝集体の量(蓄積)は、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)によってハフニウム元素を定量することによって測定し、そして、以下の蓄積係数値(Accu F)に対してプロットする。
【数6】

(式中、
− dは、表面1nm2当たりの分子数として表される、各ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面を被覆している少なくとも1種の生体適合性親水性ポリマーの緻密度であるか、又は少なくとも2種の異なるポリマーが各ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面を被覆しているとき、dは、最高分子量を示す生体適合性親水性ポリマーの緻密度であり、
− Mwは、キロダルトン(kDa)で表される、少なくとも1種の生体適合性親水性ポリマーの分子量(少なくとも2種の異なるポリマーが表面を被覆している場合、Mwは、最高分子量として選択される)であり、そして、
− Cは、g/Lで表される、医薬組成物中の該ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の濃度である)。
図2】ヌードマウスに異種移植されたNCI-H460-luc2腫瘍モデルにおける、実施例1の酸化ハフニウム(HfO)のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の生体適合性懸濁液の抗腫瘍効果。 実施例1のナノ粒子の懸濁液を尾静脈に単回注射(360g/Lに等しいナノ粒子又はナノ粒子凝集体の濃度及び10mL/kgに等しい注射体積)した24時間後、NCI-H460-luc2(ヒト非小細胞肺腺癌)腫瘍(1群当たりn=5)において放射線(200kVp X線源を用いて10Gy)を単回照射した。ナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、腫瘍 1g当たりナノ粒子又はナノ粒子凝集体 4.1mgの濃度に対応する289794に等しい蓄積係数を有する(図1の点1)。
図3】ヌードマウスに異種移植されたNCI-H460-luc2腫瘍モデルにおける、実施例4の酸化ハフニウム(HfO)ナノ粒子の生体適合性懸濁液の抗腫瘍効果。 実施例4の酸化ハフニウムのナノ粒子の生体適合性懸濁液を尾静脈に単回注射(360g/Lに等しいナノ粒子又はナノ粒子凝集体の濃度及び10mL/kgに等しい注射体積)した後、4Gy 放射線を3回(200kVp X線源を用いて3×4Gy)、NCI-H460-luc2腫瘍(1群当たりn=5)に送達し、最初の線量は、酸化ハフニウム懸濁液の投与の24時間後に送達した。ナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、腫瘍 1g当たりナノ粒子又はナノ粒子凝集体 5.6mgの濃度に対応する409831に等しい蓄積係数を有する(図1の点2)。
図4】ヌードマウスに異種移植されたNCI-H460-luc2腫瘍モデルにおける、実施例3の酸化ハフニウム(HfO)ナノ粒子の生体適合性懸濁液の抗腫瘍効果。 実施例3の酸化ハフニウムナノ粒子の生体適合性懸濁液を尾静脈に単回注射(360g/Lに等しいナノ粒子又はナノ粒子凝集体濃度及び10mL/kgに等しい注射体積)した後、4Gy 放射線を3回(200kVp X線源を用いて3×4Gy)、NCI-H460-luc2腫瘍(1群当たりn=5)に送達し、最初の線量は、酸化ハフニウム懸濁液の投与の24時間後に送達した。ナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、腫瘍 1g当たりナノ粒子又はナノ粒子凝集体 2.4mgの濃度に対応する231836に等しい蓄積係数を有する(図1の点3)。
【0088】
実施例
実施例1:コーティング剤として2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリエトキシシラン(mPEGシラン)10kDaを用いる、酸化ハフニウム(HfO)のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の生体適合性懸濁液。
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAOH)溶液を塩化ハフニウム(HfCl)溶液 40gに添加する。最終的な懸濁液のpHがpH7〜13に達するまで、TMAOH溶液の添加を実施する。白色の沈殿が得られる。沈殿を更にオートクレーブに移し、そして、120℃〜300℃の温度で加熱して、結晶化を実施する。冷却後、懸濁液を脱イオン水で洗浄する。
【0089】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の安定な懸濁液を得るために、解膠工程を実施する。
【0090】
次いで、mPEGシラン10kDaの水懸濁液を解膠した溶液に添加する。添加するmPEGシラン10kDaの量は、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面 1nm2当たりmPEGシラン10kDa 0.5のコーティング緻密度に相当する。15時間〜24時間反応を実施し、次いで、懸濁液のpHをpH6〜8に調整する。
【0091】
インビボ実験用に、5% グルコース又は150mM NaClを用いて懸濁液を調製する。
【0092】
実施例2:コーティング剤として2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリエトキシシラン(mPEGシラン)20kDaを用いる、酸化ハフニウム(HfO)のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の生体適合性懸濁液。
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAOH)溶液をHfCl溶液 40gに添加する。最終的な懸濁液のpHがpH7〜13に達するまで、TMAOH溶液の添加を実施する。白色の沈殿が得られる。沈殿を更にオートクレーブに移し、そして、120℃〜300℃の温度で加熱して、結晶化を実施する。冷却後、懸濁液を脱イオン水で洗浄する。
【0093】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の安定な懸濁液を得るために、解膠工程を実施する。
【0094】
次いで、mPEGシラン20kDaの水懸濁液を解膠した溶液に添加する。添加するmPEGシラン20kDaの量は、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面 1nm2当たりmPEGシラン20kDa 0.5のコーティング緻密度に相当する。15時間〜24時間反応を実施し、次いで、懸濁液のpHをpH6〜8に調整する。
【0095】
インビボ実験用に、5% グルコース又は150mM NaClを用いて懸濁液を調製する。
【0096】
実施例3:コーティング剤として2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシラン(mPEGシラン)0.45kDaを用いる、酸化ハフニウム(HfO)のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の生体適合性懸濁液。
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAOH)溶液をHfCl溶液 40gに添加する。最終的な懸濁液のpHがpH7〜13に達するまで、TMAOH溶液の添加を実施する。白色の沈殿が得られる。沈殿を更にオートクレーブに移し、そして、120℃〜300℃の温度で加熱して、結晶化を実施する。冷却後、懸濁液を脱イオン水で洗浄する。
【0097】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の安定な懸濁液を得るために、解膠工程を実施する。
【0098】
次いで、mPEGシラン0.45kDaの懸濁液を解膠した溶液に添加する。添加するmPEGシラン0.45kDaの量は、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面 1nm2当たりmPEGシラン0.45kDa 8のコーティング緻密度に相当する。15時間〜24時間反応を実施し、次いで、懸濁液のpHをpH6〜8に調整する。
【0099】
インビボ実験用に、5% グルコース又は150mM NaClを用いて懸濁液を調製する。
【0100】
実施例4:コーティング剤として2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシラン(mPEGシラン)0.45kDa及び2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリエトキシシラン(mPEGシラン)20kDaの混合物を用いる、酸化ハフニウム(HfO)のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の生体適合性懸濁液。
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAOH)溶液をHfCl溶液 40gに添加する。最終的な懸濁液のpHがpH7〜13に達するまで、TMAOH溶液の添加を実施する。白色の沈殿が得られる。沈殿を更にオートクレーブに移し、そして、120℃〜300℃の温度で加熱して、結晶化を実施する。冷却後、懸濁液を脱イオン水で洗浄する。
【0101】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の安定な懸濁液を得るために、解膠工程を実施する。
【0102】
次いで、mPEGシラン0.45kDaの懸濁液を解膠した溶液に添加する。添加するmPEGシラン0.45kDaの量は、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面 1nm2当たりmPEGシラン0.45kDa 5のコーティング緻密度に相当する。15時間〜24時間反応を実施する。次いで、mPEGシラン20kDaの懸濁液を溶液に添加する。添加するmPEGシラン20kDaの量は、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面 1nm2当たりmPEGシラン20kDa 0.5のコーティング緻密度に相当する。15時間〜24時間反応を実施する。懸濁液のpHをpH6〜8に調整する。
【0103】
インビボ実験用に、5% グルコース又は150mM NaClを用いて懸濁液を調製する。
【0104】
実施例2のナノ粒子及びナノ粒子凝集体、並びに実施例4のナノ粒子及びナノ粒子凝集体は、腫瘍部位において類似の蓄積プロファイルを示すことに留意すべきである(表1を参照)。腫瘍部位における蓄積は、以下に依存する:
− ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面1nm2当たりの分子数として表される、生体適合性親水性ポリマーの緻密度、又は少なくとも2種の異なるポリマーが各ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面を被覆しているとき、最高分子量を示す生体適合性親水性ポリマーの緻密度;
− 生体適合性親水性ポリマーの分子量、又は少なくとも2種の異なるポリマーが表面を被覆している場合、最高分子量、及び
− g/Lで表される、医薬組成物中のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の濃度。
【0105】
実施例5:腫瘍モデルを異種移植したヌードマウスの尾静脈に生体適合性懸濁液を単回静脈内注射した後の、腫瘍部位における酸化ハフニウムのナノ粒子及びナノ粒子凝集体の蓄積(表1及び図1を参照)。
生体適合性親水性ポリマー(mPEGシラン:2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリエトキシシラン)で被覆されている酸化ハフニウム(HfO)のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の蓄積を、ヌードマウスにおける以下のヒト異種移植腫瘍モデルを用いて評価した:NCI-H460-luc2(ヒト非小細胞肺腺癌)、HT1080(ヒト線維肉腫)、MDA-MB-231(ヒト乳腺癌)、U87(ヒト多形性グリア芽細胞腫)、及びLPS80T3(脂肪肉腫患者の断片)。腫瘍異種移植ヌードマウスの尾静脈に10mL/kg ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の生体適合性懸濁液を単回静脈内注射した。
【0106】
注射の少なくとも24時間後、マウスを殺処分し、そして、腫瘍を切除した。腫瘍部位におけるナノ粒子又はナノ粒子凝集体の量(蓄積)を、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)によってハフニウム元素を定量することによって測定した。
【0107】
表1:生体適合性mPEGシラン親水性ポリマーでコーティングされた生体適合性の酸化ハフニウムのナノ粒子又はナノ粒子凝集体の懸濁液を注射した後のヌードマウスに異種移植した様々な腫瘍モデルについての腫瘍部位における酸化ハフニウムのナノ粒子及びナノ粒子凝集体の蓄積。
様々な値のmREGシランの緻密度(d)、分子量(Mw)、及び濃度(C)を試験した。ICP-MSを用いて腫瘍内のハフニウム元素を定量することによって、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の懸濁液を静脈内注射した少なくとも24時間後のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の腫瘍蓄積を評価した。少なくとも2つの異なるmPEGシランが各ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面を被覆していた場合、dは、最高分子量を示す生体適合性親水性ポリマーの緻密度であり、そして、Mwは、最高分子量である。
【0108】
【表1】
【0109】
実施例6:ヌードマウスに異種移植されたNCI-H460-luc2腫瘍モデルにおける、実施例1の酸化ハフニウム(HfO)のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の生体適合性懸濁液の抗腫瘍効果(図2を参照)。
実施例1のナノ粒子の懸濁液を尾静脈に単回注射(360g/Lに等しいナノ粒子又はナノ粒子凝集体濃度及び10mL/kgに等しい注射体積)した24時間後、NCI-H460-luc2(ヒト非小細胞肺腺癌)腫瘍(1群当たりn=5)において放射線(200kVp X線源を用いて10Gy)を単回照射した。腫瘍成長遅延曲線は、放射線療法のみ、すなわち、実施例1のHfOのナノ粒子又はナノ粒子凝集体の生体適合性懸濁液の非存在下(対照群)で得られた効果と比べたとき、放射線療法で活性化されたNBTX-IVナノ粒子の顕著な抗腫瘍効果を示す(図2を参照)。副作用は観察されなかった。ナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、腫瘍 1g当たりナノ粒子又はナノ粒子凝集体 4.1mgの濃度に対応する289794に等しい蓄積係数を有する(図1の点1)。
【0110】
実施例7:ヌードマウスに異種移植されたNCI-H460-luc2腫瘍モデルにおける、実施例4の酸化ハフニウム(HfO)のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の生体適合性懸濁液の抗腫瘍効果(図3を参照)。
実施例4の酸化ハフニウムナノ粒子の生体適合性懸濁液を尾静脈に単回注射(360g/Lに等しいナノ粒子又はナノ粒子凝集体濃度及び10mL/kgに等しい注射体積)した後、4Gy 放射線を3回(200kVp X線源を用いて3×4Gy)、NCI-H460-luc2腫瘍(1群当たりn=5)に送達し、最初の線量は、酸化ハフニウム懸濁液の投与の24時間後に送達した。副作用は観察されなかった。放射線療法のみ、すなわち、実施例4のHfOのナノ粒子又はナノ粒子凝集体の生体適合性懸濁液の非存在下(対照群)で得られた効果と比べたとき、放射線療法で活性化されたNBTX-IVナノ粒子の生存率では有意な差がみられた(P<0.005)(図3を参照)。ナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、腫瘍 1g当たりナノ粒子又はナノ粒子凝集体 5.6mgの濃度に対応する409831に等しい蓄積係数を有する(図1の点2)。
【0111】
実施例8:ヌードマウスに異種移植されたNCI-H460-luc2腫瘍モデルにおける、実施例3の酸化ハフニウム(HfO)のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の生体適合性懸濁液の抗腫瘍効果(図4を参照)。
実施例3の酸化ハフニウムナノ粒子の生体適合性懸濁液を尾静脈に単回注射(360g/Lに等しいナノ粒子又はナノ粒子凝集体濃度及び10mL/kgに等しい注射体積)した後、4Gy 放射線を3回(200kVp X線源を用いて3×4Gy)、NCI-H460-luc2腫瘍(1群当たりn=5)に送達し、最初の線量は、酸化ハフニウム懸濁液の投与の24時間後に送達した。副作用は観察されなかった。放射線療法のみ、すなわち、実施例3のHfOのナノ粒子又はナノ粒子凝集体の生体適合性懸濁液の非存在下(対照群)で得られた効果と比べたとき、放射線療法で活性化されたNBTX-IVナノ粒子の生存率に差はみられなかった(図4を参照)。ナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、腫瘍 1g当たりナノ粒子又はナノ粒子凝集体 2.4mgの濃度に対応する231836に等しい蓄積係数を有する(図1の点3)。
図1
図2
図3
図4