特許第6535013号(P6535013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6535013糖尿病または肝臓脂肪症を処置する方法および物質
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6535013
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】糖尿病または肝臓脂肪症を処置する方法および物質
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/81 20060101AFI20190617BHJP
   A61K 31/716 20060101ALI20190617BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20190617BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20190617BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20190617BHJP
【FI】
   A61K36/81
   A61K31/716
   A61K9/20
   A61K47/22
   A61P1/16
【請求項の数】14
【全頁数】49
(21)【出願番号】特願2016-544345(P2016-544345)
(86)(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公表番号】特表2016-535762(P2016-535762A)
(43)【公表日】2016年11月17日
(86)【国際出願番号】US2014053443
(87)【国際公開番号】WO2015041837
(87)【国際公開日】20150326
【審査請求日】2017年8月3日
(31)【優先権主張番号】61/879,992
(32)【優先日】2013年9月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503035992
【氏名又は名称】ザ・リサーチ・ファウンデーション・フォー・ザ・ステイト・ユニヴァーシティ・オブ・ニューヨーク
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ ジョージ ビー.
(72)【発明者】
【氏名】クリム リチャード
(72)【発明者】
【氏名】マンティオーネ カーク ジェイ.
【審査官】 金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6421112(JP,B2)
【文献】 特表2004−508399(JP,A)
【文献】 特開2009−007309(JP,A)
【文献】 特開2006−321784(JP,A)
【文献】 特開2007−024871(JP,A)
【文献】 特表2007−509178(JP,A)
【文献】 特表2001−511153(JP,A)
【文献】 日本栄養・食糧学会誌,1985年,38(5),363-370
【文献】 日本食品科学工学会 第60回記念大会講演集,2013年 8月29日,124
【文献】 日本家政学会誌,1989年,40(7),593-601
【文献】 日本家政学会誌,1991年,42(4),313-320
【文献】 日本家政学会誌,1991年,42(4),321-325
【文献】 Crit rev food sci nutr,2012年,52(10/11),899-935
【文献】 NAKAJIMA,S. et al.,"Potato Extract (Potein) Suppresses Food Intake in Rats through Inhibition of Luminal Trypsin Activi,J. Agric. Food Chem.,2011年 9月14日,Vol.59,No.17,P.9491-9496
【文献】 JU,J.H.,"Anti-Obesity and Antioxidative Effects of Purple Sweet Potato Extract in 3T3-L1 Adipocytes In Vitro,J. Med. Food,2011年10月,Vol.14,No.10,P.1097-1106
【文献】 KUSANO,S. et al.,"Antidiabetic Activity of White Skinned Sweet Potato (Ipomoea batatas L.) in Obese Zucker Fatty Rats,Biol. Pharm. Bull.,日本,2000年 1月,Vol.23,No.1,P.23-26
【文献】 LUDVIK,B. et al.,"Efficacy of Ipomoea batatas (Caiapo) on DiabetesControl in Type 2 Diabetic Subjects Treated With Di,Diabetes Care,2004年 2月,Vol.27,No.2,P.436-440
【文献】 SINGH,N. et al.,"Protective Effect of Potato Peel Powder in Ameliorating Oxidative Stress in Streptozotocin Diabetic,Plant Foods Hum. Nutr.,2005年 6月,Vol.60,No.2,P.49-54
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/81
A61K 31/716
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生のポテトから得たポテト多糖調製物を含む、哺乳動物において脂肪肝疾患を処置するための組成物であって、該ポテト多糖調製物が、誘導体化したときにガスクロマトグラフィー/質量分析を用いる評価で少なくとも以下のアシル化炭水化物を生じ、
(a)内部標準とするために1倍とする、ミオ-イノシトール、
(b)ミオ-イノシトール含有量の約40倍〜約60倍のグルコース、
(c)ミオ-イノシトール含有量の約10倍〜約20倍のキシロース、
(d)ミオ-イノシトール含有量の約5倍〜約15倍のマンノース、および
(e)ミオ-イノシトール含有量の約3倍〜約7倍のガラクトース、
該組成物の投与により該脂肪肝疾患の症状の重症度が低減する、組成物。
【請求項2】
前記哺乳動物に投与される前記ポテト多糖調製物のポテト多糖成分を該哺乳動物の体重1kgあたり0.05mg〜50mgでもたらす量の該ポテト多糖調製物を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
1mg〜100mgの前記ポテト多糖調製物を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
6mg〜20mgの前記ポテト多糖調製物を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記ポテト多糖調製物のポテト多糖成分を1mg〜100mg含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記ポテト多糖調製物のポテト多糖成分を6mg〜20mg含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
錠剤の形態である、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
αリポ酸を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
αトコフェロールを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
前記ポテト多糖調製物が、前記哺乳動物に投与される前記ポテト多糖調製物のポテト多糖成分を該哺乳動物の体重1kgあたり0.075mg〜0.5mgでもたらす量である、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
前記ポテト多糖調製物の少なくとも約80パーセントがポテト多糖である、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
前記ポテト多糖調製物の少なくとも約90パーセントがポテト多糖である、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
前記ポテト多糖調製物の少なくとも約95パーセントがポテト多糖である、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 技術分野
本文書は、糖尿病および/または肝臓脂肪症を処置するための方法および物質に関する。例えば、本文書は、糖尿病または肝臓脂肪症の1つまたは複数の症状を低減するための、ポテト多糖調製物を含む組成物の使用に関する。いくつかの場合に、本文書は、トリグリセリドレベルを低下させるため、血清グルコースレベルを低下させるため、水消費量を低下させるため、尿産生を低下させるため、腎重量を低下させるため、肝重量を低下させるため、および/または腹部脂肪を増加させるための、ポテト多糖調製物を含む組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
2. 背景情報
ポテトは、ポテトなる植物から得られるデンプン質で食用の塊茎であり、世界の食物供給の多くの不可欠な部分をなす。事実、ポテトは世界の4番目に多い食用作物である。世界中で主要なポテトの品種はジャガイモ(Solanum tuberosum)である。
【発明の概要】
【0003】
概要
本文書は、糖尿病および/または肝臓脂肪症を処置するための方法および物質を提供する。例えば、本文書は、糖尿病または肝臓脂肪症の1つまたは複数の症状を低減するための、ポテト多糖調製物を含む組成物の使用法を提供する。いくつかの場合に、本明細書において提供するポテト多糖調製物を含む組成物を用いて、トリグリセリドレベルを低下させる、血清グルコースレベルを低下させる、水消費量を低下させる、尿産生を低下させる、腎重量を低下させる、肝重量を低下させる、および/または腹部脂肪を増加させることができる。いくつかの場合に、本明細書において提供するポテト多糖調製物を含む組成物を用いて、脂肪肝疾患を処置することができる。
【0004】
本明細書に記載のポテト多糖調製物を含む組成物を糖尿病または肝臓脂肪症の1つまたは複数の症状の低減に使用できることは、医師および患者に、これらの状態に対する有効な処置法をもたらすことができる。
【0005】
本文書は、ポテト多糖調製物を含む組成物(例えば、栄養補助組成物)も提供する。例えば、本文書は、ポテト多糖調製物を含む栄養補助組成物、ポテト多糖調製物を得る方法、ポテト多糖調製物を含む栄養補助組成物を作製する方法、およびミトコンドリアの活性または機能に関与するポリペプチドの発現を増加または減少させる方法を提供する。
【0006】
いくつかの場合に、本明細書において提供する組成物(例えば、本明細書において提供する栄養補助組成物およびポテト多糖調製物)を用いて、ミトコンドリアの活性または機能に関与するポリペプチドの発現を増加または減少させることができる。例えば、本明細書において提供するポテト多糖調製物を含む組成物または本明細書において提供するポテト多糖調製物を用いて、転写因子A, ミトコンドリア(transcription factor A, mitochondrial)ポリペプチド(TFAMポリペプチド)、ATPシンターゼ, H+輸送, ミトコンドリアF1複合体, αサブユニット1(ATPsynthase, H+ transporting, mitochondrial F1 complex, alpha subunit 1)ポリペプチド(ATP5A1ポリペプチド)、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(リポアミド)α1(pyruvate dehydrogenase (lipoamide) alpha 1)ポリペプチド(PDHA1ポリペプチド)、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(リポアミド)α2ポリペプチド(PDHA2ポリペプチド)、チメットオリゴペプチダーゼ1(thimet oligopeptidase 1)ポリペプチド(THOP1ポリペプチド)、またはその組み合わせの発現を増加させることができる。いくつかの場合に、本明細書において提供するポテト多糖調製物を含む栄養補助組成物または本明細書において提供するポテト多糖調製物を用いて、フォークヘッドボックスO1(forkhead box O1)ポリペプチド(FOX01Aポリペプチド)、B細胞内κ軽鎖ポリペプチド遺伝子エンハンサーの核内因子1(nuclear factor of kappa light polypeptide gene enhancer in B-cells 1)ポリペプチド(NFKB1ポリペプチド)、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ, アイソザイム2(pyruvate dehydrogenase kinase, isozyme 2)ポリペプチド(PDK2ポリペプチド)、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ, アイソザイム4ポリペプチド(PDK4ポリペプチド)、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoAレダクターゼ(3-hydroxy-3-methylglutaryl-CoA reductase)ポリペプチド(HMGCRポリペプチド)、またはその組み合わせの発現を減少させることができる。いくつかの場合に、本明細書において提供するポテト多糖調製物を含む栄養補助組成物または本明細書において提供するポテト多糖調製物を用いて、1つまたは複数のポリペプチド(例えば、TFAMポリペプチド、ATP5A1ポリペプチド、PDHA1ポリペプチド、PDHA2ポリペプチド、またはTHOP1ポリペプチドの1つまたは複数)を増加させる、および1つまたは複数のポリペプチド(例えば、FOX01Aポリペプチド、NFKB1ポリペプチド、PDK2ポリペプチド、PDK4ポリペプチド、またはHMGCRポリペプチドの1つまたは複数)を減少させることができる。
【0007】
いくつかの場合に、本明細書において提供する組成物(例えば、本明細書において提供する栄養補助組成物またはポテト多糖調製物)を用いて、糖尿病または肝臓脂肪症に関与するポリペプチドの発現を増加または減少させることができる。例えば、本明細書において提供する組成物(例えば、本明細書において提供するポテト多糖調製物を含む栄養補助組成物または本明細書において提供するポテト多糖調製物)を用いて、脂肪細胞におけるリパーゼ, ホルモン感受性(lipase, hormone-sensitive)ポリペプチド(LIPEポリペプチド)の発現を増加させる、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ2(ミトコンドリア)(phosphoenolpyruvate carboxykinase 2 (mitochondrial))ポリペプチド(PCK2ポリペプチド)の発現を増加させる、モノアシルグリセロールO-アシルトランスフェラーゼ1(monoacylglycerol O-acyltransferase 1)ポリペプチド(MOGAT1ポリペプチド)の発現を増加させる、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ, コアクチベーター1α(peroxisome proliferator-activated receptor gamma, coactivator 1 alpha)ポリペプチド(PPARGC1aポリペプチド)の発現を増加させる、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ, コアクチベーター1βポリペプチド(PPARGC1bポリペプチド)の発現を増加させる、スーパーオキシドジスムターゼ2, ミトコンドリア(superoxide dismutase 2, mitochondrial)ポリペプチド(SOD2ポリペプチド)の発現を増加させる、脂肪細胞における核内受容体サブファミリー4, グループA, メンバー1(nuclear receptor subfamily 4, group A, member 1)ポリペプチド(NR4A1ポリペプチド)の発現を増加させる、アセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ2(acetyl-CoA acetyltransferase 2)ポリペプチド(ACAT2ポリペプチド)の発現を増加させる、筋細胞における3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoAレダクターゼポリペプチド(HMGCRポリペプチド)の発現を増加させる、またはその組み合わせを行うことができる。いくつかの場合に、本明細書において提供する組成物(例えば、本明細書において提供するポテト多糖調製物を含む栄養補助組成物)を用いて、1-アシルグリセロール-3-リン酸O-アシルトランスフェラーゼ1(1-acylglycerol-3-phosphate O-acyltransferase 1)ポリペプチド(AGPAT1ポリペプチド)の発現を減少させる、酸化低密度リポタンパク質(レクチン様)受容体1(oxidized low density lipoprotein (lectin-like) receptor 1)ポリペプチド(OLR1ポリペプチド)の発現を減少させる、分枝鎖アミノ酸トランスアミナーゼ2, ミトコンドリア(branched chain amino-acid transaminase 2, mitochondrial)ポリペプチド(BCAT2ポリペプチド)の発現を減少させる、B細胞内κ軽鎖ポリペプチド遺伝子エンハンサーの核内因子1ポリペプチド(NFKB1ポリペプチド)の発現を減少させる、SH2Bアダプタータンパク質1(SH2B adaptor protein 1)ポリペプチド(SH2B1ポリペプチド)の発現を減少させる、リポタンパク質リパーゼ(lipoprotein lipase)ポリペプチド(LPLポリペプチド)の発現を減少させる、脂肪細胞における3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoAレダクターゼポリペプチド(HMGCRポリペプチド)の発現を減少させる、筋細胞におけるリパーゼ, ホルモン感受性ポリペプチド(LIPEポリペプチド)の発現を減少させる、筋細胞における核内受容体サブファミリー4, グループA, メンバー1ポリペプチド(NR4A1ポリペプチド)の発現を減少させる、ホスファターゼおよびテンシンホモログ(phosphatase and tensin homolog)ポリペプチド(PTENポリペプチド)の発現を減少させる、カスパーゼ8, アポトーシス関連システインペプチダーゼ(caspase 8, apoptosis-related cysteine peptidase)ポリペプチド(CASP8ポリペプチド)の発現を減少させる、またはその組み合わせを行うことができる。
【0008】
いくつかの場合に、本明細書において提供する組成物(例えば、本明細書において提供する栄養補助組成物またはポテト多糖調製物)を用いて、1つまたは複数のポリペプチド(例えば、LIPEポリペプチド(脂肪細胞内)、PCK2ポリペプチド、MOGAT1ポリペプチド、PPARGC1aポリペプチド、PPARGC1bポリペプチド、SOD2ポリペプチド、NR4A1ポリペプチド(脂肪細胞内)、ACAT2ポリペプチド、またはHMGCRポリペプチド(筋細胞内)の1つまたは複数)を増加させ、および1つまたは複数のポリペプチド(例えば、AGPAT1ポリペプチド、OLR1ポリペプチド、BCAT2ポリペプチド、NFKB1ポリペプチド、SH2B1ポリペプチド、LPLポリペプチド、HMGCRポリペプチド(脂肪細胞内)、LIPEポリペプチド(筋細胞内)、NR4A1ポリペプチド(筋細胞内)、PTENポリペプチド、またはCASP8ポリペプチドの1つまたは複数)を減少させることができる。
【0009】
概して、本文書の1つの局面は、糖尿病を処置するための方法を特徴とする。方法は、(a)糖尿病を有する哺乳動物を特定する段階、および(b)哺乳動物に生のポテトから得たポテト多糖調製物を含む組成物を投与する段階を含む、または本質的にこれらの段階からなり、ここで、糖尿病の症状の重症度が低減する。組成物は、哺乳動物に投与されるポテト多糖調製物のポテト多糖成分を哺乳動物の体重1kgあたり0.05mg〜50mgでもたらす量のポテト多糖調製物を含み得る。組成物は、1mg〜100mgのポテト多糖調製物を含み得る。組成物は、6mg〜20mgのポテト多糖調製物を含み得る。組成物は、ポテト多糖調製物のポテト多糖成分を1mg〜100mg含み得る。組成物は、ポテト多糖調製物のポテト多糖成分を6mg〜20mg含み得る。組成物は錠剤の形態であり得る。組成物はαリポ酸を含み得る。組成物はαトコフェロールを含み得る。ポテト多糖調製物は、哺乳動物に投与されるポテト多糖調製物のポテト多糖成分を哺乳動物の体重1kgあたり0.075mg〜0.5mgでもたらす量であり得る。ポテト多糖調製物の少なくとも約80パーセントはポテト多糖であり得る。ポテト多糖調製物の少なくとも約90パーセントはポテト多糖であり得る。ポテト多糖調製物の少なくとも約95パーセントはポテト多糖であり得る。哺乳動物はヒトであり得る。
【0010】
もう1つの局面において、本文書は、脂肪肝疾患を処置するための方法を特徴とする。方法は、(a)脂肪肝疾患を有する哺乳動物を特定する段階、および(b)哺乳動物に生のポテトから得たポテト多糖調製物を含む組成物を投与する段階を含む、または本質的にこれらの段階からなり、ここで脂肪肝疾患の症状の重症度が低減する。組成物は、哺乳動物に投与されるポテト多糖調製物のポテト多糖成分を哺乳動物の体重1kgあたり0.05mg〜50mgでもたらす量のポテト多糖調製物を含み得る。組成物は、1mg〜100mgのポテト多糖調製物を含み得る。組成物は、6mg〜20mgのポテト多糖調製物を含み得る。組成物は、ポテト多糖調製物のポテト多糖成分を1mg〜100mg含み得る。組成物は、ポテト多糖調製物のポテト多糖成分を6mg〜20mg含み得る。組成物は錠剤の形態であり得る。組成物はαリポ酸を含み得る。組成物はαトコフェロールを含み得る。ポテト多糖調製物は、哺乳動物に投与されるポテト多糖調製物のポテト多糖成分を哺乳動物の体重1kgあたり0.075mg〜0.5mgでもたらす量であり得る。ポテト多糖調製物の少なくとも約80パーセントはポテト多糖であり得る。ポテト多糖調製物の少なくとも約90パーセントはポテト多糖であり得る。ポテト多糖調製物の少なくとも約95パーセントはポテト多糖であり得る。哺乳動物はヒトであり得る。
【0011】
特に記載がないかぎり、本明細書において用いられるすべての技術科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。本発明の実施または試験において本明細書に記載のものと類似または等価の方法および物質を使用することができるが、適切な方法および物質を以下に記載する。本明細書において言及するすべての出版物、特許出願、特許、および他の参照文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。矛盾が生じる場合、定義を含む本明細書が優先される。加えて、物質、方法および実施例は例示にすぎず、限定を意図するものではない。
【0012】
[本発明1001]
(a)糖尿病を有する哺乳動物を特定する段階、および
(b)該哺乳動物に、生のポテトから得たポテト多糖調製物を含む組成物を投与する段階
を含む、糖尿病を処置するための方法であって、
該糖尿病の症状の重症度が低減する、方法。
[本発明1002]
前記組成物が、前記哺乳動物に投与される前記ポテト多糖調製物のポテト多糖成分を該哺乳動物の体重1kgあたり0.05mg〜50mgでもたらす量の該ポテト多糖調製物を含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記組成物が、1mg〜100mgの前記ポテト多糖調製物を含む、本発明1001の方法。
[本発明1004]
前記組成物が、6mg〜20mgの前記ポテト多糖調製物を含む、本発明1001の方法。
[本発明1005]
前記組成物が、前記ポテト多糖調製物のポテト多糖成分を1mg〜100mg含む、本発明1001の方法。
[本発明1006]
前記組成物が、前記ポテト多糖調製物のポテト多糖成分を6mg〜20mg含む、本発明1001の方法。
[本発明1007]
前記組成物が錠剤の形態である、本発明1001の方法。
[本発明1008]
前記組成物がαリポ酸を含む、本発明1001の方法。
[本発明1009]
前記組成物がαトコフェロールを含む、本発明1001の方法。
[本発明1010]
前記ポテト多糖調製物が、前記哺乳動物に投与される前記ポテト多糖調製物のポテト多糖成分を該哺乳動物の体重1kgあたり0.075mg〜0.5mgでもたらす量である、本発明1001の方法。
[本発明1011]
前記ポテト多糖調製物の少なくとも約80パーセントがポテト多糖である、本発明1001の方法。
[本発明1012]
前記ポテト多糖調製物の少なくとも約90パーセントがポテト多糖である、本発明1001の方法。
[本発明1013]
前記ポテト多糖調製物の少なくとも約95パーセントがポテト多糖である、本発明1001の方法。
[本発明1014]
前記哺乳動物がヒトである、本発明1001の方法。
[本発明1015]
(a)脂肪肝疾患を有する哺乳動物を特定する段階、および
(b)該哺乳動物に、生のポテトから得たポテト多糖調製物を含む組成物を投与する段階
を含む、脂肪肝疾患を処置するための方法であって、
該脂肪肝疾患の症状の重症度が低減する、方法。
[本発明1016]
前記組成物が、前記哺乳動物に投与される前記ポテト多糖調製物のポテト多糖成分を該哺乳動物の体重1kgあたり0.05mg〜50mgでもたらす量の該ポテト多糖調製物を含む、本発明1015の方法。
[本発明1017]
前記組成物が、1mg〜100mgの前記ポテト多糖調製物を含む、本発明1015の方法。
[本発明1018]
前記組成物が、6mg〜20mgの前記ポテト多糖調製物を含む、本発明1015の方法。
[本発明1019]
前記組成物が、前記ポテト多糖調製物のポテト多糖成分を1mg〜100mg含む、本発明1015の方法。
[本発明1020]
前記組成物が、前記ポテト多糖調製物のポテト多糖成分を6mg〜20mg含む、本発明1015の方法。
[本発明1021]
前記組成物が錠剤の形態である、本発明1015の方法。
[本発明1022]
前記組成物がαリポ酸を含む、本発明1015の方法。
[本発明1023]
前記組成物がαトコフェロールを含む、本発明1015の方法。
[本発明1024]
前記ポテト多糖調製物が、前記哺乳動物に投与される前記ポテト多糖調製物のポテト多糖成分を該哺乳動物の体重1kgあたり0.075mg〜0.5mgでもたらす量である、本発明1015の方法。
[本発明1025]
前記ポテト多糖調製物の少なくとも約80パーセントがポテト多糖である、本発明1015の方法。
[本発明1026]
前記ポテト多糖調製物の少なくとも約90パーセントがポテト多糖である、本発明1015の方法。
[本発明1027]
前記ポテト多糖調製物の少なくとも約95パーセントがポテト多糖である、本発明1015の方法。
[本発明1028]
前記哺乳動物がヒトである、本発明1015の方法。
本発明の他の特徴および利点は、下記の詳細な説明、および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】生のポテト(ラセット・バーバンク(Russet Burbank))の10%ACN抽出物のHPLCクロマトグラムである。
図2図1に示す生のポテトの10%ACN抽出物から回収し、再精製した、3.5分ピーク物質のHPLCクロマトグラムである。
図3】TFAM発現の代表的なリアルタイムPCR増幅プロットである。
図4】3.5分HPLCピーク物質のLC/MSトレースである。
図5】3.5分HPLCピーク物質の全NMRスペクトルである。
図6】3.5分HPLCピーク物質の拡大NMRスペクトルである。
図7】生のポテトのラセット・バーバンクから得た3.5分HPLCピーク物質の誘導体化炭水化物フラグメントのトータルイオンクロマトグラムである。
図8】ジアセトアミドのフラグメンテーションパターンである。ピークフラグメンテーションパターンを上図に、化合物ライブラリの対応フラグメンテーションを下図に、2つの重ね合わせを中央の図に示す。
図9】3-アセトキシピリジンのフラグメンテーションパターンである。ピークフラグメンテーションパターンを上図に、化合物ライブラリの対応フラグメンテーションを下図に、2つの重ね合わせを中央の図に示す。
図10】3,4-フランジメタノールジアセタートのフラグメンテーションパターンである。ピークフラグメンテーションパターンを上図に、化合物ライブラリの対応フラグメンテーションを下図に、2つの重ね合わせを中央の図に示している。
図11】1,2,3-プロパントリオールジアセタートのフラグメンテーションパターンである。ピークフラグメンテーションパターンを上図に、化合物ライブラリの対応フラグメンテーションを下図に、2つの重ね合わせを中央の図に示している。
図12】イミダゾール2-アセトアミノ-5-メチルのフラグメンテーションパターンである。ピークフラグメンテーションパターンを上図に、化合物ライブラリの対応フラグメンテーションを下図に、2つの重ね合わせを中央の図に示している。
図13】6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[2,1,c][1,2,4]トリアゾール-3-カルボン酸のフラグメンテーションパターンである。ピークフラグメンテーションパターンを上図に、化合物ライブラリの対応フラグメンテーションを下図に、2つの重ね合わせを中央の図に示している。
図14】酢酸1-(2-メチルテトラゾル-5-イル)エテニルエステルのフラグメンテーションパターンである。ピークフラグメンテーションパターンを上図に、化合物ライブラリの対応フラグメンテーションを下図に、2つの重ね合わせを中央の図に示している。
図15】1,2,3,4-ブタントリオールテトラアセタート(異性体1)のフラグメンテーションパターンである。ピークフラグメンテーションパターンを上図に、化合物ライブラリの対応フラグメンテーションを下図に、2つの重ね合わせを中央の図に示している。
図16】1,2,3,4-ブタントリオールテトラアセタート(異性体2)のフラグメンテーションパターンである。ピークフラグメンテーションパターンを上図に、化合物ライブラリの対応フラグメンテーションを下図に、2つの重ね合わせを中央の図に示している。
図17】ペンタエリトリトールテトラアセタートのフラグメンテーションパターンである。ピークフラグメンテーションパターンを上図に、化合物ライブラリの対応フラグメンテーションを下図に、2つの重ね合わせを中央の図に示している。
図18】1,2,3,4,5-ペンタ-o-アセチル-D-キシリトール(異性体1)のフラグメンテーションパターンである。ピークフラグメンテーションパターンを上図に、化合物ライブラリの対応フラグメンテーションを下図に、2つの重ね合わせを中央の図に示している。
図19】1,2,3,4,5-ペンタ-o-アセチル-D-キシリトール(異性体2)のフラグメンテーションパターンである。ピークフラグメンテーションパターンを上図に、化合物ライブラリの対応フラグメンテーションを下図に、2つの重ね合わせを中央の図に示している。
図20】3,5-ジアセトキシベンジルアルコールのフラグメンテーションパターンである。ピークフラグメンテーションパターンを上図に、化合物ライブラリの対応フラグメンテーションを下図に、2つの重ね合わせを中央の図に示している。
図21】β-D-ガラクトピラノースペンタアセタートのフラグメンテーションパターンである。ピークフラグメンテーションパターンを上図に、化合物ライブラリの対応フラグメンテーションを下図に、2つの重ね合わせを中央の図に示している。
図22】D-マンニトールヘキサアセタートのフラグメンテーションパターンである。ピークフラグメンテーションパターンを上図に、化合物ライブラリの対応フラグメンテーションを下図に、2つの重ね合わせを中央の図に示している。
図23】ガラクチコール(galacticol)ヘキサアセタートのフラグメンテーションパターンである。ピークフラグメンテーションパターンを上図に、化合物ライブラリの対応フラグメンテーションを下図に、2つの重ね合わせを中央の図に示している。
図24】シクロヘキサンカルボン酸1,2,4,5-テトラキス(アセトキシ)(1α,3α,4α,5β)-(-)のフラグメンテーションパターンである。ピークフラグメンテーションパターンを上図に、化合物ライブラリの対応フラグメンテーションを下図に、2つの重ね合わせを中央の図に示している。
図25】ムコ-イノシトールヘキサアセタートのフラグメンテーションパターンである。ピークフラグメンテーションパターンを上図に、化合物ライブラリの対応フラグメンテーションを下図に、2つの重ね合わせを中央の図に示している。
図26】D-グルシトール-ヘキサアセタートのフラグメンテーションパターンである。ピークフラグメンテーションパターンを上図に、化合物ライブラリの対応フラグメンテーションを下図に、2つの重ね合わせを中央の図に示している。
図27】ミオ-イノシトールヘキサアセタートのフラグメンテーションパターンである。ピークフラグメンテーションパターンを上図に、化合物ライブラリの対応フラグメンテーションを下図に、2つの重ね合わせを中央の図に示している。
図28】生のオーガニック・イエロー(Organic Yellow)ポテトの10%ACN抽出物のHPLCクロマトグラムである。
図29】生のパープル(Purple)ポテトの10%ACN抽出物のHPLCクロマトグラムである。
図30】生のアイダホ・ラセット(Idaho Russet)ポテトの10%ACN抽出物のHPLCクロマトグラムである。
図31】生のユーコン・ゴールド(Yukon Gold)ポテトの10%ACN抽出物のHPLCクロマトグラムである。
図32】生のカンショの10%ACN抽出物のHPLCクロマトグラムである。
図33】ゆでたパープルポテトの10%ACN抽出物のHPLCクロマトグラムである。
図34】アイダホ・ラセットポテトからの2つのプールした分画回収物のHPLCクロマトグラムである。
図35】3gのパープルポテトからの分画回収物のHPLCクロマトグラムである。
図36】ポテト多糖調製物に4時間曝露した細胞から回収した培地のHPLCクロマトグラムである。
図37】生きている哺乳動物の糖尿病および肥満パラメーターを低下させるための、ポテト多糖調製物の使用を試験するために用いる試験デザインの概略図である。
図38】媒体またはポテト多糖調製物(SNY)で処置したZDFラット(Fa/Fa)および痩せ型ZDFラット(+/?)の平均体重をプロットしたグラフである。
図39】媒体またはポテト多糖調製物(SNY)で処置したZDFラット(Fa/Fa)および痩せ型ZDFラット(+/?)の平均トリグリセリドレベルをプロットしたグラフである。
図40】媒体またはポテト多糖調製物(SNY)で処置したZDFラット(Fa/Fa)および痩せ型ZDFラット(+/?)の平均LDLレベルをプロットしたグラフである。
図41】媒体またはポテト多糖調製物(SNY)で処置したZDFラット(Fa/Fa)および痩せ型ZDFラット(+/?)の平均血清グルコースレベルをプロットしたグラフである。
図42】媒体またはポテト多糖調製物(SNY)で処置したZDFラット(Fa/Fa)および痩せ型ZDFラット(+/?)の平均水消費レベルをプロットしたグラフである。
図43】媒体またはポテト多糖調製物(SNY)で処置したZDFラット(Fa/Fa)および痩せ型ZDFラット(+/?)の平均尿量をプロットしたグラフである。
図44】媒体またはポテト多糖調製物(SNY)で処置した絶食ZDFラット(Fa/Fa)および絶食痩せ型ZDFラット(+/?)の平均血糖値をプロットしたグラフである。
図45】媒体またはポテト多糖調製物(SNY)で処置したZDFラット(Fa/Fa)および痩せ型ZDFラット(+/?)の体重に対する腹部脂肪の平均比をプロットしたグラフである。
図46】媒体またはポテト多糖調製物(SNY)で処置したZDFラット(Fa/Fa)の体重に対する腎重量の平均比をプロットしたグラフである。
図47】媒体またはポテト多糖調製物(SNY)で処置したZDFラット(Fa/Fa)および痩せ型ZDFラット(+/?)の体重に対する肝重量の平均比をプロットしたグラフである。
図48】ポテト多糖調製物処置ZDFラットと未処置対照ZDFラットとの間のサイクル数閾値の差を示す、TFAMのリアルタイムPCR増幅プロットである。処置ラットのより低いサイクル数はより高い遺伝子発現に一致している。
図49】処置ラットと未処置ラットにおけるTFAMの発現の変化倍率をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
本文書は、糖尿病および/または肝臓脂肪症を処置するための方法および物質を提供する。例えば、本文書は、糖尿病または肝臓脂肪症の1つまたは複数の症状を低減するための、ポテト多糖調製物を含む組成物の使用法を提供する。いくつかの場合に、本明細書において提供するポテト多糖調製物を含む組成物を用いて、トリグリセリドレベルを低下させる、血清グルコースレベルを低下させる、水消費量を低下させる、尿産生を低下させる、腎重量を低下させる、肝重量を低下させる、および/または腹部脂肪を増加させることができる。いくつかの場合に、本明細書において提供するポテト多糖調製物を含む組成物を用いて、脂肪肝疾患を処置することができる。
【0015】
本明細書に記載するとおり、本明細書において提供するポテト多糖調製物を含む組成物(例えば、本明細書において提供する栄養補助組成物)を任意の適切な哺乳動物に投与して、糖尿病、肝臓脂肪症、および/または脂肪肝疾患の1つまたは複数の症状を低減することができる。例えば、本明細書において提供するポテト多糖調製物を含む組成物を、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、ニワトリ、アヒル、ウサギ、ヒツジ、サル、またはヒトに投与して、糖尿病および/または肝臓脂肪症の1つまたは複数の症状を低減することができる。糖尿病症状の例には、過度の水分摂取、頻尿、血糖上昇、尿糖上昇、ケトン症、および血管変性が含まれるが、それらに限定されるわけではない。肝臓脂肪症症状の例には、肝腫大(肝肥大)、脂肪性肝炎、および栄養不良が含まれるが、それらに限定されるわけではない。脂肪肝疾患症状の例には、硬変、黄疸、および食道出血が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0016】
任意の適切な投与経路(例えば、経口または非経口投与)を用いて、本明細書において提供するポテト多糖調製物を含む組成物(例えば、本明細書において提供する栄養補助組成物)を哺乳動物に投与することができる。例えば、本明細書において提供するポテト多糖調製物を含む組成物を経口投与することができる。
【0017】
本明細書において提供する組成物(例えば、栄養補助組成物)は、1つまたは複数のポテト多糖調製物を含み得る。ポテト多糖調製物は、ポテトの水抽出物から得られ、かつC18カートリッジ(例えば、Sep-Pak Plus C-18カートリッジ)から10%アセトニトリルで溶出される能力を有する多糖物質を含む調製物であり得る。いくつかの場合に、ポテト多糖調製物は、ポテトから得られ、かつ実施例1(図1、2および28〜34も参照されたい)に記載のとおり3.5分で溶出されるピークのもののHPLC特性を有する多糖物質を含む調製物であり得る。いくつかの場合に、本明細書において提供するポテト多糖調製物の多糖は、極性水溶性多糖であり得る。いくつかの場合に、本明細書において提供するポテト多糖調製物の多糖は、高置換型複合キシログルカン物質であり得る。
【0018】
いくつかの場合に、ポテト多糖調製物は、ポテトから得られ、かつ誘導体化したときにGC/MSを用いる評価で少なくとも以下のアシル化炭水化物を生じる多糖物質を含む調製物であり得る:(a)ミオ-イノシトール(内部標準とするために1倍とする)、(b)ミオ-イノシトール含有量の約40倍〜約60倍のグルコース(例えば、ミオ-イノシトール含有量の約50倍のグルコース)、(c)ミオ-イノシトール含有量の約10倍〜約20倍のキシロース(例えば、ミオ-イノシトール含有量の約15倍のキシロース)、(d)ミオ-イノシトール含有量の約5倍〜約15倍のマンノース(例えば、ミオ-イノシトール含有量の約10倍のマンノース)、および(e)ミオ-イノシトール含有量の約3倍〜約7倍のガラクトース(例えば、ミオ-イノシトール含有量の約5倍のガラクトース)。誘導体化手順は、多糖物質の乾燥残渣を生成し、次いでこれをトリフルオロ酢酸を用いて加水分解する段階を含み得る。得られる物質を、次いで、水素化ホウ素ナトリウムを用いて還元し、ホウ酸塩の除去後に、最終生成物を無水酢酸およびピリジンを用いてアシル化する。この反応の最終生成物を、次いで、アシル化炭水化物を同定するためにGC/MSに直接注入する。
【0019】
いくつかの場合に、ポテト多糖調製物は、ポテトから得られ、かつ誘導体化し、GC/MSを用いて評価したときに少なくとも4つの主要成分(3,4-フランジメタノールジアセタート;1,2,3,4,5-ペンタ-o-アセチル-D-キシリトール(異性体1);3,5-ジアセトキシ-ベンジルアルコール;およびD-グルシトール-ヘキサアセタート)を生じる多糖物質を含む調製物であり得る。例えば、実施例1を参照されたい。いくつかの場合に、ポテト多糖調製物は、ポテトから得られ、かつ誘導体化し、GC/MSを用いて評価したときに表3に列挙する化合物を生じる、または図7に示す特性をもたらす多糖物質を含む調製物であり得る。
【0020】
いくつかの場合に、本明細書において提供するポテト多糖調製物は、実質的に純粋なポテト多糖調製物であり得る。典型的に、実質的に純粋なポテト多糖調製物は、例えばHPLCを用いて評価したときに、単一ピークの物質(例えば、単一ピークの多糖物質)を含む調製物である(例えば、図2および34を参照されたい)。いくつかの場合に、本明細書において提供するポテト多糖調製物の60、70、75、80、85、90、95、または99パーセントよりも多くが、ポテトから得られた多糖物質であり得る。
【0021】
任意の適切なポテト種または変種を用いて、本明細書において提供するポテト多糖調製物を得ることができる。例えば、ジャガイモ、サツマイモ(Ipomoea batatas)、S.アカウレ(S. acaule)、S.ブカソビイ(S. bukasovii)、S.レプトフィエス(S. leptophyes)、S.メギスタクロロバム(S. megistacrolobum)、S.コマーソニイ(S. commersonii)、またはS.インフンジブリフォーメ(S. infundibuliforme)を用いて、本明細書において提供するポテト多糖調製物を得ることができる。いくつかの場合に、ジャガイモのポテト変種、例えばオーガニック・イエロー、パープルもしくはブルー変種、クリーム・オブ・ザ・クロップ(Cream of the Crop)、アディロンダック・ブルー(Adirondack Blue)、アディロンダック・レッド、アガタ(Agata)、アーモンド、アンデス・ゴールド(Andes Gold)、アンデス・サン(Andes Sun)、アプライン(Apline)、アルトゥラス(Alturas)、アマンディーヌ(Amandine)、アナベル(Annabelle)、アニヤ(Anya)、アラン・ビクトリー(Arran Victory)、アトランティック(Atlantic)、アバランチ(Avalanche)、バンベルグ(Bamberg)、バノック・ラセット(Bannock Russet)、ベル・ド・フォントネー(Belle de Fontenay)、BF-15、ビルトスター(Bildtstar)、ビンチェ(Bintje)、ブレイザー・ラセット(Blazer Russet)、ブルー・コンゴ(Blue Congo)、ボノット(Bonnotte)、ブリティッシュ・クイーンズ(British Queens)、カブリタス(Cabritas)、カモタ(Camota)、カネラ・ラセット(Canela Russet)、カーラ(Cara)、カローラ(Carola)、シェリナ(Chelina)、チロエ(Chiloe)、シエロ(Cielo)、クラベラ・ブランカ(Clavela Blanca)、デジレ(Desiree)、エスティマ(Estima)、フィアナ(Fianna)、フィンガーリング(Fingerling)、フラバ(Flava)、ジャーマン・バターボール(German Butterball)、ゴールデン・ワンダー(Golden Wonder)、ゴールドラッシュ(Goldrush)、ホーム・ガード(Home Guard)、イノベーター(Innovator)、アイリッシュ・コブラー(Irish Cobbler)、ジャージー・ロイヤル(Jersey Royal)、ケネベック(Kennebec)、ケールズ・ピンク(Kerr's Pink)、ケストレル(Kestrel)、ケウカ・ゴールド(Keuka Gold)、キング・エドワード(King Edward)、キプフラー(Kipfler)、レディ・バルフォア(Lady Balfour)、ラングレード(Langlade)、リンダ(Linda)、マーシー(Marcy)、マルフォナ(Marfona)、マリス・パイパー(Maris Piper)、マークイーズ(Marquis)、メガチップ(Megachip)、モナリザ(Monalisa)、ニコラ(Nicola)、パチャコナ(Pachacona)、パイク(Pike)、ピンク・アイ(Pink Eye)、ピンク・ファー・アップル(Pink Fir Apple)、プリムラ(Primura)、ランガー・ラセット(Ranger Russet)、ラーテ(Ratte)、レコード(Record)、レッド・ラソーダ(Red LaSoda)、レッド・ノーランド(Red Norland)、レッド・ポンティアック(Red Pontiac)、ルースター(Rooster)、ラセット・バーバンク、ラセット・ノーコター(Russet Norkotah)、セルマ(Selma)、シェポーディー(Shepody)、ジーグリンデ(Sieglinde)、シルバートン・ラセット(Silverton Russet)、シルコ(Sirco)、スノーデン(Snowden)、スプンタ(Spunta)、アップ・トゥ・デート(Up to date)、ストブラバ(Stobrawa)、スーペリア(Superior)、ビバルディ(Vivaldi)、ビテロッテ(Vitelotte)、イエロー・フィン(Yellow Finn)、またはユーコン・ゴールドを用いて、本明細書において提供するポテト多糖調製物を得ることができる。
【0022】
任意の適切な方法を用いて、本明細書において提供するポテト多糖調製物を得ることができる。例えば、生のポテト物質を水中でホモジナイズ(例えば、Polytronホモジナイザーを用いてホモジナイズ)し、室温で一定期間(例えば、約1時間)、時々振盪しながら維持することができる。このホモジネートを遠心分離(例えば、4000gで10分間遠心分離)して、あらゆる大きな固形物を除去することができる。得られた上清を、固相抽出カートリッジ(例えば、C18カートリッジ、例えばSep-Pak Plus C-18カートリッジ)に充填し、多糖物質を10パーセントアセトニトリルで溶出することができる。溶出後、多糖物質を乾燥し、保存(例えば、約4℃で保存)することができる。
【0023】
本文書はまた、本明細書において提供する1つまたは複数のポテト多糖調製物を含む栄養補助組成物も提供する。例えば、アイダホ・ラセットポテトから得られた本明細書において提供するポテト多糖調製物を、栄養補助組成物に製剤化することができる。
【0024】
本明細書において提供するポテト多糖調製物の任意の適切な量を用いて、本明細書において提供する組成物(例えば、本明細書において提供する栄養補助組成物またはポテト多糖調製物)を製剤化することができる。例えば、本明細書において提供するポテト多糖調製物を用いて、組成物が約1mg〜約750mg(例えば、約1mg〜約500mg、約1mg〜約250mg、約5mg〜約40mg、約5mg〜約30mg、約5mg〜約20mg、約6mg〜約50mg、約6mg〜約20mg、約10mg〜約25mg、または約15mg〜約20mg)のポテト多糖調製物のポテト多糖成分を含むような、糖尿病および/または肝臓脂肪症を処置するための組成物を製剤化することができる。いくつかの場合に、組成物(例えば、栄養補助組成物)を、1日あたり哺乳動物(例えば、ヒト)に対して体重1kgあたり約0.05mgのポテト多糖成分〜体重1kgあたり約0.5mgのポテト多糖成分を送達するよう製剤化することができる。例えば、栄養補助組成物を、ヒトが1日に1回飲み込んで体重1kgあたり約0.05mgのポテト多糖成分〜体重1kgあたり約0.5mgのポテト多糖成分を提供することができる、単一の経口用組成物に製剤化することができる。
【0025】
任意の適切な方法を用いて、本明細書において提供する組成物(例えば、本明細書において提供する栄養補助組成物またはポテト多糖調製物)を製剤化することができる。例えば、一般的な製剤混合および調製技術を用いて、本明細書において記載する成分を有する組成物(例えば、栄養補助組成物)を作製することができる。加えて、本明細書において提供する組成物(例えば、本明細書において提供する栄養補助組成物またはポテト多糖調製物)は任意の形態であり得る。例えば、本明細書において提供する組成物(例えば、本明細書において提供する栄養補助組成物またはポテト多糖調製物)を、丸剤、カプセル剤、錠剤、ゲルキャップ、栄養シェイク飲料、栄養バー食品、直腸坐剤、舌下坐剤(sublingual suppository)、鼻用スプレー、吸入剤、または注射用アンプルに製剤化することができる。いくつかの場合に、本明細書において提供する組成物(例えば、栄養補助組成物)は、1つまたは複数の本明細書において提供するポテト多糖調製物を単独で、またはゼラチン、セルロース、デンプン、糖、ベントナイト、乳酸、マンニトール、αリポ酸、αトコフェロール、L-アスコルベート、またはその組み合わせを含むが、それらに限定されるわけではない、他の成分との組み合わせで含み得る。
【0026】
本文書はまた、ミトコンドリア活性または機能に関与するポリペプチドの発現を増加または減少させる方法も提供する。例えば、本明細書において提供するポテト多糖調製物または本明細書において提供する栄養補助組成物を用いて、ミトコンドリア活性または機能に関与するポリペプチドの発現を増加または減少させることができる。いくつかの場合に、本明細書において提供するポテト多糖調製物または本明細書において提供する栄養補助組成物を用いて、TFAMポリペプチド、ATP5A1ポリペプチド、PDHA1ポリペプチド、PDHA2ポリペプチド、THOP1ポリペプチド、またはその組み合わせの発現を増加させることができる。いくつかの場合に、本明細書において提供するポテト多糖調製物または本明細書において提供する栄養補助組成物を用いて、FOX01Aポリペプチド、NFKB1ポリペプチド、PDK2ポリペプチド、PDK4ポリペプチド、HMGCRポリペプチド、またはその組み合わせの発現を減少させることができる。いくつかの場合に、本明細書において提供するポテト多糖調製物または本明細書において提供する栄養補助組成物を用いて、1つまたは複数のポリペプチド(例えば、TFAMポリペプチド、ATP5A1ポリペプチド、PDHA1ポリペプチド、PDHA2ポリペプチド、またはTHOP1ポリペプチドの1つまたは複数)を増加させる、および1つまたは複数のポリペプチド(例えば、FOX01Aポリペプチド、NFKB1ポリペプチド、PDK2ポリペプチド、PDK4ポリペプチド、またはHMGCRポリペプチドの1つまたは複数)を減少させることができる。
【0027】
ヒトにおいて、本明細書において提供するポテト多糖調製物または本明細書において提供する栄養補助組成物を用いて、1つもしくは複数のヒトポリペプチド(例えば、ヒトTFAMポリペプチド、ヒトATP5A1ポリペプチド、ヒトPDHA1ポリペプチド、ヒトPDHA2ポリペプチド、ヒトTHOP1ポリペプチド、ヒトLIPEポリペプチド(脂肪細胞内)、ヒトPCK2ポリペプチド、ヒトMOGAT1ポリペプチド、ヒトPPARGC1aポリペプチド、vPPARGC1bポリペプチド、ヒトSOD2ポリペプチド、ヒトNR4A1ポリペプチド(脂肪細胞内)、ヒトACAT2ポリペプチド、またはヒトHMGCRポリペプチド(筋細胞内)の1つまたは複数)を増加させる、および/または1つもしくは複数のヒトポリペプチド(例えば、ヒトFOX01Aポリペプチド、ヒトNFKB1ポリペプチド、ヒトPDK2ポリペプチド、ヒトPDK4ポリペプチド、ヒトHMGCRポリペプチド(脂肪細胞内)、ヒトAGPAT1ポリペプチド、ヒトOLR1ポリペプチド、ヒトBCAT2ポリペプチド、ヒトSH2B1ポリペプチド、ヒトLPLポリペプチド、ヒトHMGCRポリペプチド(脂肪細胞内)、ヒトLIPEポリペプチド(筋細胞内)、ヒトNR4A1ポリペプチド(筋細胞内)、ヒトPTENポリペプチド、またはヒトCASP8ポリペプチドの1つまたは複数)を減少させることができる。
【0028】
ヒトTFAMポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号CAG28581.1(GI番号47115243)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_003201.1(GI番号4507400)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトATP5A1ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号AAH08028.2(GI番号34782901)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_001001937.1(GI番号50345983)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトPDHA1ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号ABQ58815.1(GI番号148300624)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_001173454.1(GI番号291084741)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトPDHA2ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号AAH94760.1(GI番号66267554)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_005390.4(GI番号134031963)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトTHOP1ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号AAH00583.2(GI番号38014202)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_003249.3(GI番号34222291)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトLIPEポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号AAH70041.1(GI番号47124456)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_005357.2(GI番号21328445)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトPCK2ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号CAG33194.1(GI番号48145943)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_004563.1(GI番号66346720)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトMOGAT1ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号NP_477513.2(GI番号148746191)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_058165.1(GI番号148746190)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトPPARGC1aポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号NP_037393.1(GI番号7019499)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_013261.2(GI番号116284374)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトPPARGC1bポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号AAI44252.1(GI番号219518198)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_133263.2(GI番号289577087)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトSOD2ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号AAH16934.1(GI番号16877367)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_000636.1(GI番号67782304)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトNR4A1ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号CAG32985.1(GI番号48145525)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_173158.1(GI番号320202954)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトACAT2ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号AAH00408.1(GI番号12653279)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_005891.1(GI番号148539871)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトFOX01Aポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号NP_002006.2(GI番号9257222)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_002015.3(GI番号133930787)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトNFKB1ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号CAB94757.1(GI番号8574070)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_001165412.1(GI番号25955301)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトPDK2ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号NP_002602.2(GI番号19923736)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_00211.4(GI番号315630394)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトPDK4ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号AAH40239.1(GI番号25955471)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_002612.2(GI番号94421466)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトHMGCRポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号AAH33692.1(GI番号21707182)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_000859.2(GI番号196049378)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトAGPAT1ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号NP_116130.2(GI番号15100175)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_006411.3(GI番号301336168)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトOLR1ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号NP_002534.1(GI番号4505501)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_002543.2(GI番号119392084)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトBCAT2ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号AAH04243.2(GI番号48257075)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_001190.1(GI番号258614013)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトSH2B1ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号AAH10704.1(GI番号14715079)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_001145797.1(GI番号224926829)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトLPLポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号CAG33335.1(GI番号4814622)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_000237.1(GI番号145275217)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトHMGCRポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号AAH33692.1(GI番号21707182)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_001130996.1(GI番号196049379)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトPTENポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号AAD13528.1(GI番号4240387)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_000314.2(GI番号110224474)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトCASP8ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号AAH68050.1(GI番号45751586)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_001228.4(GI番号122056470)に示される核酸配列によってコードされ得る。
【0029】
加えて、本文書は、タンパク質および核酸生合成増強に関連するミトコンドリア生合成に関与するポリペプチドの発現を増加させる方法を提供する。例えば、本明細書において提供するポテト多糖調製物または本明細書において提供する栄養補助組成物を用いて、タンパク質および核酸生合成増強に関連するミトコンドリア生合成に関与するポリペプチドの発現を増加させることができる。いくつかの場合に、本明細書において提供するポテト多糖調製物または本明細書において提供する栄養補助組成物を用いて、Slc25a33ポリペプチド、Tomm40ポリペプチド、Mrpl3ポリペプチド、Mrps18bポリペプチド、Mrps9ポリペプチド、Fars2ポリペプチド、Mrpl15ポリペプチド、Mrps23ポリペプチド、Mrps2ポリペプチド、Mrpl17ポリペプチド、TFAMポリペプチド、またはその組み合わせの発現を増加させることができる。
【0030】
本文書はまた、ミトコンドリアエネルギー産生に関与するポリペプチドの発現を増加させる方法も提供する。例えば、本明細書において提供するポテト多糖調製物または本明細書において提供する栄養補助組成物を用いて、ミトコンドリアエネルギー産生に関与するポリペプチドの発現を増加させることができる。いくつかの場合に、本明細書において提供するポテト多糖調製物または本明細書において提供する栄養補助組成物を用いて、Prodhポリペプチド、Slc25a1ポリペプチド、Hmgclポリペプチド、Cps1ポリペプチド、Aldh4a1ポリペプチド、Mdh2ポリペプチド、Atp5bポリペプチド、Slc25a22ポリペプチド、Slc25a19ポリペプチド、Uqcrc2ポリペプチド、Abcf2ポリペプチド、またはその組み合わせの発現を増加させることができる。
【0031】
本文書はまた、脂質生成、トリグリセリド会合、およびミトコンドリア脂肪分解に関与するポリペプチドの発現を増加または減少させる方法も提供する。例えば、本明細書において提供するポテト多糖調製物または本明細書において提供する栄養補助組成物を用いて、脂質生成、トリグリセリド会合、およびミトコンドリア脂肪分解に関与するポリペプチドの発現を増加または減少させることができる。いくつかの場合に、本明細書において提供するポテト多糖調製物または本明細書において提供する栄養補助組成物を用いて、Acbd4ポリペプチド、Fads1ポリペプチド、Gnpatポリペプチド、Lypla1ポリペプチド、Cpt2ポリペプチド、またはその組み合わせの発現を増加させることができる。いくつかの場合に、本明細書において提供するポテト多糖調製物または本明細書において提供する栄養補助組成物を用いて、Pck2ポリペプチド、Agpat4ポリペプチド、Acacaポリペプチド、またはその組み合わせの発現を減少させることができる。いくつかの場合に、本明細書において提供するポテト多糖調製物または本明細書において提供する栄養補助組成物を用いて、1つまたは複数のポリペプチド(例えば、Acbd4ポリペプチド、Fads1ポリペプチド、Gnpatポリペプチド、Lypla1ポリペプチド、Cpt2ポリペプチドの1つまたは複数)を増加させる、および1つまたは複数のポリペプチド(例えば、Pck2ポリペプチド、Agpat4ポリペプチド、Acacaポリペプチドの1つまたは複数)を減少させることができる。
【0032】
ヒトにおいて、本明細書において提供するポテト多糖調製物または本明細書において提供する栄養補助組成物を用いて、1つもしくは複数のヒトポリペプチド(例えば、Slc25a33ポリペプチド、Tomm40ポリペプチド、Mrpl3ポリペプチド、Mrps18bポリペプチド、Mrps9ポリペプチド、Fars2ポリペプチド、Mrpl15ポリペプチド、Mrps23ポリペプチド、Mrps2ポリペプチド、Mrpl17ポリペプチド、TFAMポリペプチド、Prodhポリペプチド、Slc25a1ポリペプチド、Hmgclポリペプチド、Cps1ポリペプチド、Aldh4a1ポリペプチド、Mdh2ポリペプチド、Atp5bポリペプチド、Slc25a22ポリペプチド、Slc25a19ポリペプチド、Uqcrc2ポリペプチド、Abcf2ポリペプチド、Acbd4ポリペプチド、Fads1ポリペプチド、Gnpatポリペプチド、Lypla1ポリペプチド、およびCpt2ポリペプチド(肝細胞内)の1つまたは複数)を増加させる、および/または1つもしくは複数のヒトポリペプチド(例えば、Pck2ポリペプチド、Agpat4ポリペプチド、およびAcacaポリペプチド(肝細胞内)の1つまたは複数)を減少させることができる。
【0033】
ヒトSlc25a33ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号XP_005263560.1(GI番号530360655)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号XM_005263503.1(GI番号530360654)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトTomm40ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号AAH47528.1(GI番号28839408)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_001128916.1(GI番号193083119)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトMrpl3ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号CAG33001.1(GI番号48145557)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_007208.3(GI番号312147300)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトMrps18bポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号BAD13700.1(GI番号46091143)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_014046.3(GI番号186928836)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトMrps9ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号AAH47784.1(GI番号29126836)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_182640.2(GI番号186910309)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトFars2ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号NP_006558.1(GI番号5729820)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_006567.3(GI番号126513133)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトMrpl15ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号CAG38562.1(GI番号49065488)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_014175.3(GI番号169403971)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトMrps23ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号NP_057154.2(GI番号16554604)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_016070.3(GI番号312222785)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトMrps2ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号AAH04905.2(GI番号33872889)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_016034.4(GI番号389565494)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトMrpl17ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号CAG33458.1(GI番号48146471)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_022061.3(GI番号169403966)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトProdhポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号AAD24775.1(GI番号4581877)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_016335.4(GI番号304766735)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトSlc25a1ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号NP_005975.1(GI番号21389315)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_005984.3(GI番号374713106)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトHmgclポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号CAG33165.1(GI番号48145885)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_000191.2(GI番号62198231)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトCps1ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号AAH20695.1(GI番号116283350)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_001122633.2(GI番号327532712)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトAldh4a1ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号ACN89883.1(GI番号225421341)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号FJ462711.1(GI番号225421340)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトMdh2ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号CAG38785.1(GI番号49168580)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号CR536548.1(GI番号49168579)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトAtp5bポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号ABD77240.1(GI番号89574029)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_001686.3(GI番号50345985)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトSlc25a22ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号NP_001177990.1(GI番号300796991)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_001191060.1(GI番号300796969)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトSlc25a19ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号NP_001119594.1(GI番号186928860)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_001126121.1(GI番号186928857)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトUqcrc2ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号AAH00484.1(GI番号12653427)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_003366.2(GI番号50592987)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトAbcf2ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号NP_009120.1(GI番号27881506)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_007189.2(GI番号525345247)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトAcbd4ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号AAH41143.1(GI番号26996542)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_001135704.1(GI番号209364588)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトFads1ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号AFL91689.1(GI番号390432195)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号AK314199.1(GI番号164697148)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトGnpatポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号NP_055051.1(GI番号7657134)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_014236.3(GI番号170650722)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトLypla1ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号CAG33384.1(GI番号48146323)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号CR457103.1(GI番号48146322)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトCpt2ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号NP_000089.1(GI番号4503023)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_000098.2(GI番号169790951)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトAgpat4ポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号AAH13410.1(GI番号38196950)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号XM_005267052.1(GI番号530383869)に示される核酸配列によってコードされ得る。ヒトAcacaポリペプチドは、GenBank(登録商標)アクセッション番号AAH31485.1(GI番号32425437)に示されるアミノ酸配列を有し得、GenBank(登録商標)アクセッション番号XM_005257266.1(GI番号530412017)に示される核酸配列によってコードされ得る。
【0034】
本明細書において提供するポテト多糖調製物または本明細書において提供する栄養補助組成物を、任意の適切な哺乳動物(例えば、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、ニワトリ、アヒル、ウサギ、ヒツジ、サル、またはヒト)に投与することができる。加えて、任意の適切な投与経路(例えば、経口または非経口投与)を用いて、本明細書において提供するポテト多糖調製物または本明細書において提供する栄養補助組成物を哺乳動物に投与することができる。例えば、本明細書において提供するポテト多糖調製物または本明細書において提供する栄養補助組成物を経口投与することができる。
【0035】
本文書は、以下の実施例においてさらなる説明を提供するが、これは特許請求の範囲に記載する本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0036】
実施例1-ミトコンドリア活性および機能に関与するポリペプチドの発現を変化させる能力を有するポテト多糖調製物の同定
ジャガイモ種のラセットポテト変種6グラムを、50mL遠心チューブに入れた20mLの水中で、Polytronホモジナイザーを用いてホモジナイズし、室温で1時間維持した。ホモジネートを4000rpmで10分間遠心分離した。Sep-Pak Plus C-18カートリッジを10mLの100%アセトニトリル(ACN)で活性化し、10mLの0.05%トリフルオロ酢酸/水(TFA水)で洗浄した。10mLの上清をカートリッジに充填し、カートリッジを通過するすべてのH2Oを1.5mLエッペンドルフチューブに回収した。次に、10mLの2%ACN(0.05%TFA水中)をカラムに通し、溶出液を1.5mLエッペンドルフチューブに回収した。次に、10mLの5%ACN(0.05%TFA水中)を用いてカラムを洗浄し、溶出液を1.5mLエッペンドルフチューブに回収した。最後に、10mLの10%ACN(0.05%TFA水中)を、カラムを通した後に1.5mLエッペンドルフチューブに回収した。すべての分画を乾燥し、同じACN濃度の乾燥分画を、HPLCによるさらなる精製のために1本のチューブ中で1mLの0.05%TFA水により再構成するか、または細胞処置に使用するために1mLのリン酸緩衝食塩水で再構成した。
【0037】
発光ダイオードアレイ検出器を備えたWaters 2695分離モジュールを用いて10%ACN抽出物を精製した。XterraRP C18カラム(4.6×150mm)を、移動相として0.05%TFA水による分離に使用した。各HPLCの実施は、0〜2.5%ACNの範囲の20分間の勾配とした。注入量は100μL、流速は0.5mL/分とした。10%ACN抽出物のHPLC分画により、3つの大きなUV吸収ピークが3.5、3.9および12.1分で溶出された(図1)。3.5分分画の回収およびHPLC再精製により、198.3nmで最大吸収を示す対称性のピークを得た(図2)。
【0038】
3つのピークを、それらがミトコンドリア活性および機能に関与するポリペプチドの発現レベルを変化させる能力を有する物質を含んでいるかどうかを決定するために評価した。簡単に言うと、American Type Culture Collection(ATCC)から入手した5×105個の神経芽腫細胞を、2mLのRPMI培地を含む6ウェルプレートの各ウェルに播種し、異なるアリコートのHPLC精製物質の存在下または非存在下で4時間インキュベートした。インキュベーション後、RNeasyミニキット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて全RNAを単離および精製した。特に、ペレット状にした細胞を600μLのRLT溶解緩衝液(Qiagen)に再懸濁し、溶解物を1mLピペットの先端を20回通過させることによってホモジナイズした。次いで、試料を製造者の指示(Qiagen, Valencia, CA)に従って処理した。最終段階において、RNAを、40μLのRNaseを含まない水を用いて13,000gで1分間の遠心分離により溶出した。RNAを、全RNAナノチップを製造者のプロトコルに従い用いて、モデル2100バイオアナライザー(Agilent, Santa Clara, CA)で分析した。その後、2μgの全RNAを、Superscript III逆転写酵素およびランダムプライマーを用いて逆転写した。
【0039】
DNAマイクロアレイ分析もまた、Agilentにより提供されるシステムを用いて実施した。アレイは、チップ(Agilent 4X44Kチップ)あたり4つのアレイを含んでいた。全RNAを、T7プライマーを用いて逆転写(400ng)し、Cyanine-3色素を用いて標識および転写した。各アレイを、65℃で18時間、少なくとも1.65μgの標識cRNAとハイブリダイズさせた。アレイを、Agilentアレイスキャナを用いてスキャンした。両方のマイクロアレイプラットフォームを用いて、遺伝子発現の10%以上の変化を判定することができた。
【0040】
3.5分で溶出したHPLC精製分画と共に培養細胞をインキュベートすることで、ミトコンドリアおよび細胞の代謝遺伝子の発現の変化が生じた(表1)。3.5分で溶出した抽出ポテト物質は、以下に示すとおり多糖であると判定されたため、本明細書においてポテト多糖物質、ポテト多糖調製物、またはポテト多糖と呼ぶ。3.5分分画(ポテト多糖調製物)は、3つのうちで唯一、リアルタイムPCRを用いてTFAM、NFKB、およびHMGCR発現について試験した場合に有意な生物学的活性を有すると判定された分画であった。
【0041】
(表1)ポテト多糖調製物との4時間のインキュベーション後にマイクロアレイによって判定されたHTB-11細胞における遺伝子発現の変化
【0042】
リアルタイムPCRを、TFAM、HMGCR、およびNFKB1の検出セットを用いて、三つ組で行った。βアクチンまたはGAPDHを参照遺伝子として使用した。リアルタイムPCRマスターミックスは、25μLの2×ユニバーサルマスターミックス、2.5μLの20×検出セット(プライマーおよびプローブを含む)、および21.5μLの水を含んでいた。PCRは、Applied Biosystems 7500配列検出システムで行った。サーモサイクラーの条件は、95℃で15秒間の変性および60℃で60秒間のアニーリング/伸長を含んでいた。95℃で10分間の後に40サイクルのPCRを行った。反応は三つ組で行った。TFAMの相対量は、Applied Biosystems 7500ソフトウェアを用い、式2-ΔΔCtを用いて導き出した。リアルタイムPCRによるマイクロアレイ結果のいくつかの検証では、候補遺伝子としてTFAM、HMGCRおよびNKFB1を使用した。代表的なリアルタイムPCR増幅プロットは、TFAM mRNAが存在すること、およびこれが示差的に発現されることを示した(図3)。ポテト多糖調製物は、TFAM発現に対して強い効果を有し、それを57%アップレギュレートすることができた(表2)。HMGCRおよびNFKB1の両方の遺伝子発現が約20%減少し、これはDNAマイクロアレイデータと一致し、このデータを検証するものである(表2)。
【0043】
(表2)リアルタイムPCRによる遺伝子発現変化の検証。HTB-11細胞をポテト多糖調製物で4時間処置した。
【0044】
対称性の3.5分HPLCピーク物質のさらなる化学的特徴づけを行った。プールした3.5分HPLC分画を乾燥し、1mLのTFA水で再構成し、タンデムLC/MS/MS(図4)およびNMR化学分析(図5および6)に供した。NMR分析では、試料をさらに分析するために、溶媒として重水(D2O)を用いて試料の1H-NMRを行った。4.65PPMの水ピークを溶媒により抑制し、スペクトルを数時間獲得した。アセトアミドが3.2PPMで、1.9PPMのアセトニトリルと共に検出された。微量のピークが、1.05PPM、1.17PPM(幅広のピーク)、1.189PPM、および1.864PPMで検出された。プロトンNMRにおけるポリマー物質の1つの特徴は、1.17PPMのシフトなどのピークの幅広化であった。NMRにおけるこれらのシフトは、4.8PPMのピークを表し、多糖などの極性水溶性ポリマーを示唆するものであり得る。まとめると、これらの結果から、3.5分に溶出するHPLC精製分画に含まれる高分子量多糖物質の存在が確認された。
【0045】
さらなる分析により、3.5分に溶出するHPLC精製分画が多糖物質(例えば、高置換型複合キシログルカン物質)を含むことが確認された。多糖物質をガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)によって分析可能にするため、これをその誘導体化炭水化物フラグメントに変換した。簡単に言うと、試料を濃縮して乾燥残渣とし、これをトリフルオロ酢酸を用いて加水分解した。次いでこれを、水素化ホウ素ナトリウムを用いて還元し、ホウ酸塩の除去後に、最終生成物を無水酢酸およびピリミジンを用いてアシル化した。任意のアシル化炭水化物を同定するために、この反応の最終生成物をGC/MSに直接注入した。この最終分析に基づき、より大きい炭水化物が試料中に存在していた。トータルイオンクロマトグラム(TIC)を添付の図7に示し、適切なピーク表示を以下の表3に示す。同定された主要成分を太字で示す(ピーク3、12、14、および21)。各化合物の対応するフラグメンテーションを図8〜27に提供する。各フラグメンテーションについて、ピークフラグメンテーションパターンを上図に、化合物ライブラリの対応フラグメンテーションを下図に、これら2つの重ね合わせを中央の図に示す。最後に、表示していないピークは、カラムブリードであるか、または化合物ライブラリとの十分な一致がみられなかったかのいずれかであった。
【0046】
(表3)GC/MS結果のまとめ
【0047】
これらの結果は、より大きい炭水化物の構成ブロックとして役立つ糖モノマーの存在を示している。これらの複数系統の分析から、ポテト多糖調製物は高置換型複合キシログルカンであると思われる。
【0048】
実施例2-カンショおよび複数のポテト変種がポテト多糖物質の存在を示す
ジャガイモの複数の変種(オーガニック・イエロー、パープル、アイダホ・ラセット、およびユーコン・ゴールド)からの6グラムのポテト物質およびカンショ(サツマイモ)からの6グラムの物質を、20mLの水中で抽出した。次いでこの水10mLをsep-pakカートリッジに充填し、次いでカートリッジを10mLの10%ACNで溶出した。次いでACNを乾燥し、残渣を1mLの水に溶解した。HPLCを用いて、この水100μLを注入して評価した。
【0049】
HPLCクロマトグラムは、第1のピーク(210nmで3.5分)の量は試験した5種のポテトすべてにおいて同じであることを示した(図28〜32)。
【0050】
別の実験において、ゆでたパープルポテトから物質を抽出し、分析した。3.5分のピークは、ゆでたポテトにおいて減少しなかった(図33)。
【0051】
アイダホ・ラセットポテトからの2つのプールした分画回収物から3.5分ピークを回収し、乾燥し、100μLの水で再構成した。次いでこの物質をHPLCに注入し、3.5分の単一ピークを得た(図34)。まとめると、これらの結果は、ジャガイモ種およびサツマイモ種のポテトはポテト多糖物質を含むことを示している。
【0052】
実施例3-ポテト物質由来の高置換型複合キシログルカンは糖尿病患者から得たヒト大網脂肪細胞におけるポリペプチドの発現を変化させる
健常者および糖尿病患者から得たヒト大網脂肪細胞を、Zen-Bio, Inc(Research Triangle Park, NC)から購入した。細胞を、処置しないか、またはパープルポテト由来の3.5分ピーク62.5μg/mLで4時間処置した。4時間のインキュベーション後、細胞を収集し、マイクロアレイ分析を行って遺伝子発現の変化を測定した。
【0053】
糖尿病患者由来のヒト大網脂肪細胞を3.5分で溶出したHPLC精製分画と共にインキュベートすると、肥満および/または糖尿病に関与する遺伝子の発現に変化が生じた(表4)。健常者由来のヒト大網脂肪細胞のインキュベーションは、表4に挙げる遺伝子の発現をわずかに変化させた(表5)。
【0054】
(表4)糖尿病患者由来のヒト大網脂肪細胞をポテト多糖調製物と共に4時間インキュベートした後にマイクロアレイによって判定した遺伝子発現の変化
【0055】
(表5)健常者由来のヒト大網脂肪細胞をポテト多糖調製物と共に4時間インキュベートした後にマイクロアレイによって判定した遺伝子発現の変化
【0056】
リアルタイムPCRを、AGPAT1、OLR1、BCAT2、NR4A1、およびACAT2の検出セットを用いて、三つ組で行った。βアクチンまたはGAPDHを参照遺伝子として使用した。リアルタイムPCRマスターミックスは、25μLの2×ユニバーサルマスターミックス、2.5μLの20×検出セット(プライマーおよびプローブを含む)、および21.5μLの水を含んでいた。PCRは、Applied Biosystems 7500配列検出システムで行った。サーモサイクラーの条件は、95℃で15秒間の変性および60℃で60秒間のアニーリング/伸長を含んでいた。95℃で10分間の後に40サイクルのPCRを行った。反応は三つ組で行った。リアルタイムPCRによるマイクロアレイ結果のいくつかの検証では、候補遺伝子としてAGPAT1、OLR1、BCAT2、NR4A1、およびACAT2を使用した。リアルタイムPCR増幅プロットは、AGPAT1、OLR1、BCAT2、NR4A1、およびACAT2 mRNAが存在すること、およびこれらが示差的に発現されることを示した(表6)。
【0057】
(表6)リアルタイムPCRによる遺伝子発現変化の検証。糖尿病患者由来のヒト大網脂肪細胞をポテト多糖調製物で4時間処置した。
【0058】
実施例4-ポテト物質由来の高置換型複合キシログルカンはマウス筋細胞におけるポリペプチドの発現を変化させる
マウス筋芽細胞を、2mLのアリコートで、2つの75cm2組織培養フラスコに播種した。細胞を、筋細胞に分化させるために、5%CO2、37℃で4日間放置した。
【0059】
筋細胞を、緩やかな撹拌を用いて、フラスコ壁から脱離した。懸濁した細胞を15mLコニカルチューブに移し、500gで3分間遠心分離した。対照および糖尿病モデル細胞の両方について、2mLのアリコートを75cm2組織培養フラスコに播種した。マウス細胞は、正常マウスおよび低用量アロキサン処置したマウスから得た。糖尿病マウスは、正常マウスと比較して高い血糖を有していた。ポテト多糖調製物(パープルポテト由来の3.5分ピーク62.5μg/mL)を1つの対照および1つの糖尿病フラスコに加え、細胞を24時間インキュベートした。
【0060】
24時間のインキュベーション後、細胞を収集し、マイクロアレイ分析を行って、遺伝子発現の変化を測定した。加えて、Optronicsデジタルカメラウェアに接続したNikon EclipseTE300(Morell)倒立顕微鏡を用いて、処置後の細胞の画像を20×で撮影した。画像を、細胞死亡率および線維サイズについて、ImageJソフトウェアで分析した。細胞死亡率は、活動細胞数に対する非活動細胞数の比を用いて計算した。線維サイズは、多角形なげなわトレーサーを用いて計算し、ピクセル面積で測定した。
【0061】
3.5分で溶出したHPLC精製分画と共に糖尿病モデル由来のマウス筋細胞をインキュベートすると、肥満および/または糖尿病に関与する遺伝子の発現に変化が生じた(表7)。正常マウス由来のマウス筋細胞のインキュベーションは、表7に挙げる遺伝子の発現をわずかに変化させた(表8)。
【0062】
(表7)糖尿病モデル由来のマウス筋細胞をポテト多糖調製物と共に24時間インキュベートした後にマイクロアレイによって判定した遺伝子発現の変化
【0063】
(表8)正常マウス由来のマウス筋細胞をポテト多糖調製物と共に24時間インキュベートした後にマイクロアレイによって判定した遺伝子発現の変化
【0064】
リアルタイムPCRを、PTENおよびCASP8の検出セットを用いて、三つ組で行った。βアクチンまたはGAPDHを参照遺伝子として使用した。リアルタイムPCRマスターミックスは、25μLの2×ユニバーサルマスターミックス、2.5μLの20×検出セット(プライマーおよびプローブを含む)、および21.5μLの水を含んでいた。PCRは、Applied Biosystems 7500配列検出システムで行った。サーモサイクラーの条件は、95℃で15秒間の変性および60℃で60秒間のアニーリング/伸長を含んでいた。95℃で10分間の後に40サイクルのPCRを行った。反応は、三つ組で行った。リアルタイムPCRによるマイクロアレイ結果のいくつかの検証では、候補遺伝子としてPTENおよびCASP8を使用した。リアルタイムPCR増幅プロットは、PTENおよびCASP8 mRNAが存在すること、およびこれらが示差的に発現されることを示した(表9)。
【0065】
(表9)リアルタイムPCRによる遺伝子発現変化の検証。糖尿病モデル由来のマウス筋細胞をポテト多糖調製物で24時間処置した。
【0066】
実施例5-ポテト多糖調製物の分析
ポテト多糖調製物を、HPLCを用いて、3gのパープルポテトから精製した。ポテト多糖のピークは、約5分で溶出した(図35)。このピークを、3.5分ピークを得るのに使用したカラムと異なるクロマトグラフィーカラム(10mm×150mm)を用いて得た。このカラムは大きい分取カラムであり、流速は1.5mL/分であったため、ポテト多糖の溶出時間は5分であった。
【0067】
得られたピークを回収し、乾燥し、60μLの水で再構成した。次いで、再構成したポテト多糖物質を培養フラスコ中のHTB-11細胞に4時間加えた。処置後培地を回収し、これを別フラスコのHTB-11細胞に加えた。各細胞群を、遺伝子発現の変化について分析した。最初に処置した細胞は、ミトコンドリア遺伝子の発現に関して予想された変化を示した。処置後培地に4時間曝露した細胞では変化は検出されなかった。
【0068】
別の実験において、処置後培地を、ポテト多糖の当初の精製に使用した技術を用いて抽出した。抽出した処置後培地のクロマトグラムは、5分のピークがないことを示した。
【0069】
実施例6-肥満の処置のためのポテト調製物の使用
クラスI〜III肥満のヒトを表10の基準に基づき特定する。
【0070】
(表10)BMI、腹囲、および関連疾患リスクによる、過体重および肥満の分類
【0071】
特定した後、クラスI〜III肥満患者を、以下のとおりに処置する。ポテト多糖を、αリポ酸もしくはαトコフェロールまたは両方の存在下で製剤化する。製剤化したポテト多糖を90重量%不活性結合物質に添加し、これを1日2回(bid)、錠剤、カプセル剤、または液剤の形態で経口非経口経路により投与する。1ヶ月の経過中に、最初に最大濃度のポテト多糖を1日2回投与する。良好な結果の尺度は下記を含む:(1)BMIの有意な減少、(2)血清LDL/HDL比の増大、(3)血清トリグリセリド濃度の低下、(4)収縮期および拡張期血圧の低下、ならびに(5)空腹時血糖の低下。
【0072】
実施例7-II型糖尿病の処置のためのポテト多糖調製物の使用
II型糖尿病患者を特定した後、患者を以下のとおりに処置する。ポテト多糖を、αリポ酸もしくはαトコフェロールまたは両方の存在下で製剤化する。製剤化したポテト多糖を90重量%の不活性結合物質に添加し、これを1日2回(bid)、錠剤、カプセル剤、または液剤の形態で経口非経口経路により投与する。1ヶ月の経過中に、最初に最大濃度のポテト多糖を1日2回投与する。良好な結果の尺度は下記を含む:(1)正常な空腹時血糖の回復、(2)有意な体重減少およびBMIの低下、(3)血清LDL/HDL比の増大、(4)血清トリグリセリド濃度の低下、(5)遊離脂肪酸の血清濃度の低下、(6)収縮期および拡張期血圧の低下、(7)インスリン感受性の増強、ならびに(8)II型糖尿病患者のインスリン必要性の低下。
【0073】
実施例8-多嚢胞性卵巣症候群の処置のためのポテト多糖調節物の使用
多嚢胞性卵巣症候群(POS)患者を特定した後、患者を以下のとおりに処置する。ポテト多糖を、αリポ酸もしくはαトコフェロールまたは両方の存在下で製剤化する。製剤化したポテト多糖を90重量%の不活性結合物質に添加し、これを1日2回(bid)、錠剤、カプセル剤、または液剤の形態で経口非経口経路により投与する。1ヶ月の経過中に、最初に最大濃度のポテト多糖を1日2回投与する。良好な結果の尺度は下記を含む:(1)正常な生殖機能の回復、(2)正常な卵胞成熟の回復、(3)正常な空腹時血糖レベルの回復、(4)有意な体重減少およびBMIの低下、(5)血清LDL/HDL比の増大、(6)血清トリグリセリド濃度の低下、(7)遊離脂肪酸の血清濃度の低下、(8)収縮期および拡張期血圧の低下、(9)インスリン感受性の増強、ならびに(10)II型糖尿病を併発しているPOS患者のインスリン必要性の低下。
【0074】
実施例9-生きている哺乳動物のインスリン感受性およびグルコース恒常性の維持および回復
インビボ動物モデル
ズッカー糖尿病肥満(ZDF)ラットモデルを用いた(Carley and Severson, Biochim. Biophys. Acta, 1734:112-26 (2005))。ZDFラットモデルにおける良好な結果は、ヒトII型糖尿病における良好な処置結果の可能性を示し得る。特に、循環血漿トリグリセリド濃度、循環血漿グルコース濃度、腹部脂肪、水利用、尿排出、および臓器重量を、ポテト多糖調製物または媒体で処置したZRFラットのコホートで試験した。
【0075】
投薬および群化
試験のために2種類のラットを用いた(ZDF/ZDFラット(n=20)およびヘテロ接合性痩せ型ラット(n=20))。次いで、群内のラットを無作為に選択し、10匹の群に分けた。第1群はZDF媒体給餌ラットを含み、第2群はZDFポテト多糖給餌ラットを含み、第3群は痩せ型媒体給餌ラットを含み、第4群は痩せ型ポテト多糖給餌ラットを含んでいた。媒体は蒸留水であり、ポテト多糖は毎朝経口栄養により1匹あたり0.05mgの用量で与えた。用量は通常は1mLの水中で与えた。ラットを群ごとにケージに入れ、12時間ずつの明暗(午前7時〜午後7時)で維持した。試験は28日間続けた。
【0076】
データ収集
体重を1週間毎に記録した。第0日に基準線分析のために全血、血清、および血漿を採取した。第14日に絶食ラットから血漿および血清を採取した。水消費量を、第24日に開始してモニターし、終了まで続けた。尿量およびタンパク質含有量の測定のために採尿を第27日に行った。第28日(終了時)に全血、血清、および血漿を採取した。第28日に空腹時血糖を測定し、肝臓および腹部脂肪を採取して、液体窒素中で急速凍結した。
【0077】
第0、14、および28日に総コレステロール(HDL、LDL、およびトリグリセリド)および血清グルコースを測定した。終了時に血清クレアチニンを測定した。可能性のある遺伝子発現分析のために、全血をPAX RNA血液チューブ中に保存した。腹部脂肪、肝臓、および腎臓を秤量し、体重に対する臓器重量の比を計算する際に使用した。第0、14、および28日に採取した血漿を将来行う可能性のある分析のために保存した。
【0078】
実験動物
22匹の7週齢、雄のズッカー糖尿病肥満ラット(ZDF、コード:370)および22匹の7〜8週齢、雄のZDF痩せ型ラット(コード:371)をCharles Rivers Laboratories(Wilmington, MA)から購入した。試験動物を4日間馴化させた後、基準線の採血を行い、この時点で各系統から2匹の余分の動物が基準線体重に基づいて試験から脱落した。ラット到着後、1つのケージに2匹ずつ収容し、Innoviveケージングシステム(San Diego, CA)中で維持した。ケージを毎日モニターして、Innoviveシステムが確実に1時間あたり80回の換気および陽圧を維持するようにした。ラット部屋を66〜75°Fの温度および30%〜70%の相対湿度に維持した。部屋を毎日12時間(午前7:00〜午後7:00)人工照明により明るくした。動物は、絶食実験中を除く試験期間中、水およびPurina 5008齧歯類用飼料(Waldschimdt's, Madison, WI)を自由に摂らせた。
【0079】
薬物の製剤化
動物試験用のポテト多糖調製物を以下のとおりに調製した。生のポテト物質10グラム分を10倍量の蒸留水中でPolytronホモジナイザーを用いてホモジナイズし、室温で時々振盪しながら1時間維持した。生のポテトのホモジネートを続いて4000gで10分間遠心分離して、不溶性物質を除去した。得られた上清をSep-Pak Plus C-18カートリッジを用いて固相抽出により精製した。10%アセトニトリルおよび0.05%トリフルオロ酢酸中に含まれる半精製した多糖物質を乾燥し、逆相HPLCにより均質になるまで精製した。
【0080】
溶出した3.5分の純粋なポテト多糖調製物を含むHPLC分画を乾燥し、動物試験で使用した。
【0081】
精製したポテト多糖調製物(5mg/mL濃度の保存溶液10mL)を4℃で保存した。試験用の媒体は滅菌水(カタログ番号002488、Butler Schein)であった。週ごとに、保存溶液を滅菌水で1:100希釈し(0.05mg/mL)、1日分のアリコートに分配した。すべての媒体および薬物溶液を4℃で保存し、1mL/動物(推定体重350gに基づく0.15mg/kg用量)の量で経口栄養(PO)により1日1回室温で投与した。
【0082】
体重
動物を較正したデジタル秤で毎週秤量し、動物の健康をモニターした。体重は、最終の体重測定を除いて、給餌状態で測定した。
【0083】
採血
血液を、基準線として第0日、第2週として第14日、および第4週として終了中の第28日に採取した。動物を、各採血前に11.5時間(午後10:00〜午前9:30)絶食させ、該当する場合は採血の1時間前に投与した。基準線のプールした血液分析(各動物から血液1mL)および最終血液分析(各動物から血液2.5mL)のために、全血を採血チューブに採取した。基準線ならびに第14および28日のために、850μLの全血を、DPP4i(1:100 P8340、Sigma Aldrich)を加え、あらかじめ冷却したK2EDTAチューブに採取し、処理して血漿とした。基準線ならびに第14および28日のために、250μLの全血をSSTチューブに採取し、処理して血清とした。
【0084】
血液分析
血液チューブに採取した全血を-20℃で凍結し、分析のためにアイスパック上で輸送した。DPP4iを加えた血漿を-20℃で凍結し、分析のためにドライアイス上で輸送した。血清を-20℃で凍結し、分析のために輸送した。基準線および第14日の血清は、標準の脂質パネル(コレステロール、トリグリセリド、HDL、およびLDL)ならびにグルコースについて分析した。最終血清試料は、標準の脂質パネル、グルコース、およびクレアチニン含有量について分析した。
【0085】
水消費量
第23日から、水消費量モニタリングを開始し、試験の残り期間継続した。水重量の差(開始時の水重量(g)マイナス最終の水重量(g))をケージごとの動物の数で割り、1日あたり1匹の動物が消費した水の平均重量(g)を求めた。加えた水は測定において明らかにし、計算値をmL/動物/日に変換した。第26日に、動物を個々の代謝ケージに入れ;したがって、水消費量をケージごとの代わりに動物ごとにモニターした。
【0086】
採尿
第26日〜第27日まで、尿を室温で24時間採取した。手順の間中、動物は飼料および水を自由に摂らせた。尿量を測定し、尿タンパク質およびクレアチニンを分析した。
【0087】
空腹時グルコース
11.5時間絶食させ、投与の約1時間後、第28日の午前9:30に、空腹時血糖を測定した。血糖はBayer Contour血糖計により測定した。血糖測定後、ただちに終了した。
【0088】
剖検
試験第28日に、空腹時血糖データを収集した後、全ての動物をイソフルランの過量投与および開胸により安楽死させた。血液を下行大静脈から採取した。肝臓および腹部脂肪を採取して秤量し、左側肝葉の一部および腹部脂肪を個々の組織検査カセットに入れ、液体窒素中で急速凍結した。一般病理所見を記録した。
【0089】
試験デザイン
動物を、第-1日に収集した体重に基づき、処置群に割り付けた。動物を11.5時間(午後10:00〜午前9:30)絶食させた後、基準線パラメーター分析のために第0日に採血した。各動物をイソフルラン吸入薬麻酔を用いて麻酔し、続いて眼窩後採血技術と、その後の皮下補液を行った。試験動物に媒体(滅菌水)またはポテト多糖を、第1日に開始して実験期間中、経口栄養により投与した。動物に0.05mg/mL溶液1.0mLを投与して、0.15mg/kg/日の標的用量を達成した。
【0090】
第2週の終わりに、動物を絶食させ、投与した後、中間試験パラメーター分析のために第14日に採血した。各動物をイソフルラン吸入薬麻酔を用いて麻酔し、続いて眼窩後採血技術を行った。水消費量モニタリングを第23日に開始し、試験期間中継続した。第26日に、尿量の24時間採取のために、試験動物を個々の代謝ケージに入れた。尿量を測定し、2つの清浄な、処理したアリコートを分析用に保持した。
【0091】
第4週の終わりに、動物を絶食させ、投与した後、第28日に血糖を測定した。空腹時血糖をテイルクリップ採血により測定し、その後すぐに終了を開始した。動物をイソフルラン吸入薬麻酔と、続く開胸を用いて安楽死させた。血液を下行大静脈から採取し、適切なチューブに分配した。肝臓および腹部脂肪を採取して秤量し、部分を液体窒素中で急速凍結した。ラットの群における試験デザインおよび処置を図37および表11に示す。
【0092】
(表11)処置群
+/?は、正常レプチン受容体対立遺伝子とヘテロ接合性であり、異常な代謝症状を示さない、ZDF痩せ型ラットを意味する。
【0093】
統計分析
データは平均+SEMで報告した。統計分析をGraphPad SoftwareによりPrism 5.0dプログラムを用いて実施した。体重、脂質パネルパラメーター(コレステロール、トリグリセリド、HDL、およびLDL)、血清グルコース、および水消費量の変動の分析を二元配置ANOVAにより実施した。ボンフェローニ事後検定を用いて、繰り返し平均値を行ごとに比較した。血糖、尿パラメーター(尿量、タンパク尿、およびクレアチニンクリアランス)、肝臓-体重比、および腹部脂肪-体重比の変動の分析を一元配置ANOVAにより実施し、ボンフェローニ事後検定を用いて、列の全ての対を比較した。p値が0.05の有意水準未満である場合に、95%信頼区間で有意性を決定した。前記時点について平均値の標準誤差(SEM)に対する群の平均値を検定することにより、アウトライアーをスクリーニングした。平均値に対するSEMの相関が10%を超えた場合、その時点のその群のデータ点についてアウトライアー試験を実施した。zスコアの変動が3.0を超えるデータ点をアウトライアーとして挙げ、群の平均値またはSEMに含めなかった。第6日の体重について第1群で、1匹の動物の値がアウトライアーと考えられ、グラフおよび統計分析から除去した。
【0094】
結果
4群の間の平均体重は変わらなかった(図38)。第1群と第2群とを比べると、ポテト多糖調製物で処置したラットは第14日のトリグリセリドレベルにおいて有意な減少を示した(P<0.05;図39)。第0日に、平均LDLは第3群に比べて第4群で低かった(図40)。平均血清グルコースは第28日にポテト多糖調製物で処置した第2群のラットで統計学的に低かった(図41)。ポテト多糖調製物で処置した第2群のラットは、第1群のラットに比べて、水消費量および尿産生量で統計学的有意な減少を示した(図42および43)。第2群のラットは、第1群のラットで観察されたレベルよりも統計学的に低い平均空腹時グルコースレベルを示した(図44)。ポテト多糖調製物処置群の腹部脂肪は、統計学的に上昇した(図45)。加えて、体重に対する腎臓重量の比は、第1群のラットのものに比べて第2群のラットで低かった(図46)。
【0095】
これらの結果は、ポテト多糖調製物の投与が、媒体処置ZDF対照群で観察されたインスリン脱感受性(desensitivity)の重大な発生期間中に脂肪細胞の代謝的完全性を維持しうることを示している。媒体処置コホートにおいて、顕著に増加した血漿トリグリセリド濃度によって強調される発生期間は、インスリン脱感作の一時的発生および血漿グルコースの糖尿病レベルに機能的に関連している。ポテト多糖調製物で処置したコホートにおいて、血漿トリグリセリド濃度の統計学的有意な減少が第14日の時点で観察され、これは空腹時および非空腹時の「真の」グルコースの有意に低いレベルに決定的に関連している。血漿グルコースの低いレベルは有意に減少した水摂取量および尿排出量と関連し、複数のII型糖尿病症状の発生の顕著な阻害を示している。
【0096】
これらの良好な結果は、ヒトにおけるII型糖尿病発生の阻害に直接置き換えることができる。興味深いことに、早期の時点では、媒体処置ZDF対照群における真のグルコースのレベルは、処置ZDFラットで観察されたレベルよりも低かった。これは、前糖尿病性の低下した血漿グルコースレベルの提示を介してのヒトのインスリン非感受性の一時的発生に一致していた。ポテト多糖調製物の投与は、前糖尿病性の低下した血漿グルコースレベルの一時的発生を阻害することが観察された。実際に、ポテト多糖調製物の投与は、インスリン感受性の維持を介して血漿グルコースの正常なレベルを維持した。血漿グルコースの正常なレベルの維持は、第14日の時点の循環血漿トリグリセリドの減少に統計学的に関連し、これは肥満の非糖尿病のヒトで通常観察される、処置動物における腹部脂肪の高いレベルに機能的に関連していた。まとめると、本明細書に記載のポテト多糖調製物の投与は、インスリン非感受性の一時的発生に関連する腹部脂肪保存の代謝的完全性を維持した。これは、ポテト多糖調製物を用いて、肥満ヒト集団における代謝過程を安定化することができ、それにより肥満障害と効果的に戦うためのプログラムされた食事療法を可能にすることも示している。
【0097】
実施例10-脂肪肝疾患を処置するためのポテト多糖調製物の使用
脂肪肝疾患を処置するためのポテト多糖調製物の能力を評価するために、実施例9の4群のラットからの肝臓を収集し、秤量し、本実施例において記載するとおりに試験した。
【0098】
DNAマイクロアレイ
肝臓試料から抽出した全RNAを単離し、RNeasyミニキット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて精製した。特に、100mgの組織を1.8mLのRLT溶解緩衝液(Qiagen)に再懸濁し、polytronホモジナイザーで30秒間ホモジナイズした。次いで、試料を製造者の指示(Qiagen, Valencia, Ca)に従って処理した。最終段階において、RNAを、50μLのRNaseを含まない水を用いて13,000gで1分間の遠心分離により溶出した。RNAを、全RNAナノチップを製造者のプロトコルに従い用いて、モデル2100バイオアナライザー(Agilent, Santa Clara, CA)で分析した。
【0099】
DNAマイクロアレイ分析を、Agilentにより提供されるシステムを用いて実施した。アレイは、チップ(Agilentラット遺伝子発現4X44Kバージョン3チップ)あたり4つのアレイを含んでいた。全RNAを、T7プライマーを用いて逆転写(700ng)し、Cyanine-3色素を用いて標識および転写した。各アレイを2μgの標識cRNAと、65℃で18時間ハイブリダイズさせた。アレイを、Agilentアレイスキャナを用いてスキャンした。
【0100】
結果
28日間の時間経過におよぶポテト多糖調製物の経口投与は、媒体を投与した対照ズッカーZDFラットに比べて、ズッカーZDFラットの体重に対する肝臓重量の比の統計学的に有意な減少(約40%)を生じた(p=0.01、N=9)。
【0101】
加えて、ポテト多糖調製物の1日1回経口投与は、タンパク質および核酸生合成の増強に機能的に関連する肝臓組織における遺伝子発現の協調的増強を引き起こした(表12)。
【0102】
(表12)タンパク質および核酸生合成の増強に関連するミトコンドリア生合成を駆動する遺伝子の発現増強
【0103】
ポテト多糖調製物の1日1回経口投与は、TCAサイクル活性およびATP産生の増強に機能的に関連する肝臓組織における遺伝子発現の協調的増強も引き起こした(表13)。
【0104】
(表13)ミトコンドリアエネルギー産生を駆動する遺伝子の発現増強
【0105】
ポテト多糖調製物の1日1回経口投与は、脂質生成、トリグリセリド会合、およびミトコンドリア脂肪分解に機能的に関与する遺伝子の示差的発現を引き起こした(表14)。
【0106】
(表14)脂質生成、トリグリセリド会合、およびミトコンドリア脂肪分解に関与する遺伝子の示差的発現
【0107】
ポテト多糖調製物の1日1回経口投与は、肝臓の3つの参照またはハウスキーピング遺伝子の発現においていかなる有意な変化も引き起こさなかった(Congiu et al., Liver Int., 31:386-90 (2011); 表15)。
【0108】
(表15)肝臓の参照またはハウスキーピング遺伝子の発現
【0109】
DNAマイクロアレイデータセットを検証するために、TFAM発現のリアルタイムPCR分析を実施した。ラットにポテト多糖調製物を28日間投与した後、リアルタイムPCRを実施して、ZDFラット肝臓におけるTFAM遺伝子発現の変化を測定した。GAPDHを参照遺伝子として用いた。リアルタイムPCRマスターミックスは、25μLの2×ユニバーサルマスターミックス、2.5μLの20×検出セット(プライマーおよびプローブを含む)、および21.5μLの水を含んでいた。PCRは、Applied Biosystems 7500配列検出システムで行った。サーモサイクラーの条件は、95℃で15秒間の変性および60℃で60秒間のアニーリング/伸長を含んでいた。95℃で10分間の後に40サイクルのPCRを行った。反応は三つ組で行った。TFAMの相対量は、Applied Biosystems 7500ソフトウェアを用い、式2-ΔΔCtを用いて導き出した。未処置ラットに比べて3.4±0.5倍の変化増大が見られた(図48および49)。
【0110】
まとめると、これらの結果は、ポテト多糖調製物は脂肪肝疾患を処置するための抗脂肪症薬として使用し得ることを示している。
【0111】
他の態様
本発明をその詳細な説明と共に記載してきたが、前述の説明は例示を意図したものであり、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって規定されることが理解されるべきである。他の局面、利点、および改変は、添付の特許請求の範囲に包含される。
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