【文献】
Cardiovasc. Toxicol.,2014年 1月,Vol. 14,pp. 74-82
【文献】
Biochem. Syst. Ecol.,2014年 1月,Vol. 54,pp. 19-22
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は上記従来の問題点を鑑みてなされ、配合医薬組成物を開示し、その有効成分は、ルテオリン、ケンペロール、ルテオリン-7-O-グルコシドを含む。薬効学の試験により、三つの成分を組み合わせ、協同的に心筋虚血再灌流傷害を治療することができる。
【0007】
試験結果により、ルテオリン、ケンペロール、ルテオリン-7-O-グルコシドの配合組成物は、モル比が0.4-2.8:1.5-4.7:0.2-3.1である時に、ラット初代の心筋低酸素症/再酸素化傷害のアポトーシス率を大幅に減少でき、心筋保護効果は平均的に70%以上に達する。また、三者のモル比が0.7-2.2:2.1-4.1:0.6-2.4であることは好ましく、この範囲内で心筋保護効果は平均的に80%以上に達することができる。三者のモル比が1.1-1.6:2.8-3.5:1.0-1.7であることはより好ましく、この範囲内で心筋保護効果は平均的に90%以上にも達することができる。
【0008】
本発明の配合医薬組成物は薬学分野における多種の製剤を調製することができ、例えば、錠剤、粒剤、注射薬、ドリッピング丸薬、カプセル、エアゾール剤、座薬、絆創膏などあり、また、経口用、又は静脈、筋肉、皮下又は他の方法の注射を経て、口、直腸、膣、皮膚で吸収し或いは鼻腔により吸入し、有効成分が含まれる医薬製剤の形で、薬学に許容される製剤の形で投与する。本発明の組成物において、医薬有効成分のほかに、薬学に許容されるキャリアとして1種又は多種の薬学的に通常使用される医薬製剤の補助剤、例えば、賦形剤、希釈剤、接着剤、安定剤等、及び化学添加物、例えば、色素、防腐剤、増味剤等を添加してもよい。
【0009】
本発明の一部の薬効試験及びその結果は以下通りである。
【0010】
薬品部分に被験薬の配合組成物溶液の調合方法は以下の通りである。ルテオリン、ケンペロール、ルテオリン-7-O-グルコシドはジメチルスルフォキシドを溶剤として、そのうちジメチルスルフォキシドの最終濃度が0.1%未満である。異なる組別の組成物に含まれる3種類の配合比は表1の通りである。
【表1】
【0011】
注:各配合組成物は、ルテオリン、ケンペロール、ルテオリン-7-O-グルコシドから構成され、総モル濃度はいずれも30μMであり、表1はモル濃度の比を示す。
【0012】
一、本医薬はラットH9c2の心筋細胞の活性力への影響
対数増殖期のH9c2ラット心筋細胞を消化した後、DMEM培地(含む10%FBS)で再懸濁し、96ウェルプレートに接種し、37℃にて5%CO
2のインキュベーターに正常に培養する。細胞が対数増殖期になってから、下記の組分けに従い実験が行われる。(1)正常培養組(Control組):実験中に、通常の培地に37℃にて5%CO
2のインキュベーターに正常に培養する。(2)N
2H/Rモデル組(モデル組):対数増殖期になった実験用の細胞を通常の培養液のかわりに、予めに95%N
2+5%CO
2の混合されたガスを1時間に無糖Earle’s液(イーグル液)に注入して飽和させたものを利用し、その後に37℃にて95%N
2+5%CO
2の定温インキュベーターに入れ、低酸素で6時間に培養し、酸欠された心筋細胞を予めに95%空気+5%CO
2の混合されたガスをDMEM高グルコース培地(10%FBSを含む)に注入して飽和させ、通常の培養条件に5時間にて酸素を回復する。(3)ルテオリン、ケンペロールおよびルテオリン7-O-グルコシド配合前処理組:H9c2ラット心筋細胞が異なるルテオリン、ケンペロールおよびルテオリン7-O-グルコシドの配合比率により予め12時間にて培養されてから、通常の培養液のかわりに、95%N
2+5%CO
2の混合されたガスを1時間に無糖Earle’s液に注入して飽和させたものを利用し、N
2低酸素タンクで6時間に低酸素処理してから、通常の培養液で通常の培養条件に5時間にて酸素を回復すると共に、各配合薬物を投入して培養する。各実験組の細胞を処理した後に、20μg/ mlのMTTを添加し4時間にて培養し、150μlのDMSOでMTTを溶解する。酵素免疫検知器によって波長が490nmである箇所に各ウェルのODを測定する。更に細胞の活性力を計算する。実験結果は表2に示す通りである。
【0014】
表2に示す配合組1〜11はルテオリン、ケンペロール、ルテオリン-7-O-グルコシドからなり、組番号12〜14はそれぞれ単体ルテオリン、ケンペロール、ルテオリン-7-O-グルコシドからなる。単体化合物組12〜14と比べて、配合組1〜11における細胞保護効果はより優れている。また、各配合組は低酸素症/再酸素化傷害の心筋細胞保護効果について差異が顕著であり、その中に、配合組1、4、5、7、9の保護効果はより優れている。
【0015】
二、三つの単体化合物の配合協同効果の分析
【0017】
表3において、Aはルテオリンを表し、Bはケンペロールを表し、Cはルテオリン-7-O-グルコシドを表わす。以下、表3における相互作用の予測係数を分析する。係数が大きいほど化合物の間に相互作用が強いことを表わす。上記表3からわかるように、低酸素症/再酸素化傷害の細胞活性保護効果は、ルテオリン、ケンペロール、ルテオリン-7-O-グルコシドの三者の間の相互作用が最も強く、二者の場合、又は単体の場合より強い。
【0018】
三、応答曲面分析法により配合比率の3D図と等高線図を計算する
【0019】
混合実験設計におけるD-最適実験方法を用い、応答曲面分析法を利用しDesign expert8.05bというソフトで計算する。MixtureオプションのD-optimalを選択し、配合組の配合比率を入力し表2の実験結果を分析し、実験結果に調整R
2と予測R
2における数値が最大のモデルを選択し実験結果をフィッティングし、フィッティングで得られたモデルにより、ルテオリン、ケンペロールとルテオリン-7-O-グルコシドの割合が異なる比率の状態における脂質滴の含有量減少効果を予測し、3D-応答面図と対応する等高線図が得られる。
図1を参照されたい。
【0020】
図1の3D図におけるドットは実験値であり、曲面はルテオリン、ケンペロールとルテオリン-7-O-グルコシドを、異なる割合での予測値により構成される。
図1に示す応答結果を分析する。F値が4.56であり、多元相関係数R
2が0.7673であり、モデルは実際の状況に良く合っていることが分かる。Signal-Noise比(Adeq Precision)は5.727であるため、信頼性が高く、応答値の予測に使用することができる。
【0021】
3D図の分析からわかるように、ルテオリン、ケンペロールとルテオリン-7-O-グルコシドのモル比が(1.1-1.6):(2.8-3.5):(1.0-1.7)である時に、細胞活性の保護率は90%以上であり、モル比が(0.7-2.2):(2.1-4.1):(0.6-2.4)である時に、細胞活性の保護率は80%以上に達する。
【0022】
そして、3D図からそれぞれ細胞活性の保護効果が良いから悪いまでの3つの配合比率1、3、11を選出し、この三つの点の配合比率を初代心筋細胞を利用して検証する。
【0023】
四、配合組成物は低酸素症/再酸素化傷害の初代ラット心筋細胞活性に与える影響
無菌状態で生まれた二日のWistarラット乳児の心室筋を取り出し、混合消化酵素(0.06%のトリプシンと0.1%のII型コラゲナーゼの均量混合液)で短時間に複数回に繰り返し消化する。差動付着法で心筋細胞を純化する。細胞の数をカウントし、生きている細胞数と細胞の生存率が得られ、1.0×10
6cell/mLで培地をプレートに滴下する。細胞を24時間に培養した後、上清液を捨て、PBSで三回洗い、細胞を比較組、低酸素/再酸素化傷害組、低酸素/再酸素化傷害モデル+配合組1(30uM)、低酸素/再酸素化傷害モデル+配合組3(30uM)、低酸素/再酸素化傷害モデル+配合組11(30uM)、低酸素/再酸素化傷害モデル+ルテオリン(30uM)、低酸素/再酸素化傷害モデル+ケンペロール(30uM)、低酸素/再酸素化傷害モデル+ルテオリン-7-O-グルコシド(30uM)に分ける。全ての低酸素/再酸素化傷害組に予めに薬剤を24時間に投与した後、予めに95%N
2+5%CO
2の混合されたガスを1時間に無糖Earle’s液に注入して飽和させた液体に入れた後に、37℃にて95%N
2+5%CO
2の定温インキュベーターに入れ、低酸素で6時間に培養し、酸欠された心筋細胞を予めに95%空気+5%CO
2の混合されたガスをDMEM高グルコース培地(10%FBSを含む)に注入して飽和させた培地により、通常の培養条件に5時間にて酸素を回復すると共に、各配合薬物を投入し培養する。各実験組の細胞を処理した後に、20μg/ mlのMTTを添加し4時間にて培養し、150μlのDMSOでMTTを溶解する。酵素免疫検知器によって波長が490nmである箇所に各ウェルのODを測定する。更に細胞の活性力を計算する。実験結果は表4に示す通りである。
【0024】
【表4】
比較組と比べると、
###P<0.001、モデル組と比べると、
*P<0.05、
***P<0.001
【0025】
分析:空白比較組と比べると、モデル組は、細胞活性が著しく上昇するため、初代ラット心筋細胞の低酸素/再酸素化傷害モデルが上手く構築されていることが分かる。モデル組と比べると、配合組1、配合組3、配合組11はそれぞれある程度で細胞活性を保護でき、且つ保護作用が三つの化合物の単体を利用する場合より優れている。
【0026】
五、配合組成物は窒素低酸素症/再酸素化傷害の初代ラット心筋細胞LDH漏れに与える影響
【0027】
実験方法:無菌状態で生まれた二日のWistarラット乳児の心室筋を取り出し、混合消化酵素(0.06%のトリプシンと0.1%のII型コラゲナーゼの均量混合液)で短時間に複数回に繰り返し消化する。差動付着法で心筋細胞を純化する。細胞の数をカウントし、生きている細胞数と細胞の生存率が得られ、1.0×10
6cell/mLで培地をプレートに滴下する。細胞を24時間に培養した後、上清液を捨て、PBSで三回洗い、細胞を比較組、低酸素/再酸素化傷害組、低酸素/再酸素化傷害モデル+配合組に分ける。全ての低酸素/再酸素化傷害組に予めに薬剤を24時間に投与した後、予めに95%N
2+5%CO
2の混合されたガスを1時間に無糖Earle’s液に注入して飽和させた液体に入れた後に、37℃にて95%N
2+5%CO
2の定温インキュベーターに入れ、低酸素で6時間に培養し、酸欠された心筋細胞を予めに95%空気+5%CO
2の混合されたガスをDMEM高グルコース培地(10%FBSを含む)に注入して飽和させた培地により、通常の培養条件に5時間にて酸素を回復すると共に、各配合薬物を投入し培養する。各実験組の細胞を処理した後に、上清液を取り出し、LDHキットステップに従い培地の上清液にLDH漏れの含有量を測定する。実験結果は表5に示す通りである。
【表5】
比較組と比べると、
###P<0.001、モデル組と比べると、
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001
【0028】
分析:空白比較組と比べると、モデル組は、細胞活性が著しく上昇するため、初代ラット心筋細胞の低酸素/再酸素化傷害モデルが上手く構築されていることが分かる。モデル組と比べると、配合組1、配合組3、配合組11はそれぞれある程度で細胞LDHの放出を低減でき、且つ保護作用が三つの化合物の単体を利用する場合より優れている。
【0029】
六、配合組成物は窒素低酸素症/再酸素化傷害の初代ラット心筋細胞上清液pHに与える影響
【0030】
実験方法:無菌状態で生まれた二日のWistarラット乳児の心室筋を取り出し、混合消化酵素(0.06%のトリプシンと0.1%のII型コラゲナーゼの均量混合液)で短時間に複数回に繰り返し消化する。差動付着法で心筋細胞を純化する。細胞の数をカウントし、生きている細胞数と細胞の生存率が得られ、1.0×10
6cell/mLで培地をプレートに滴下する。細胞を24時間に培養した後、上清液を捨て、PBSで三回洗い、細胞を比較組、低酸素/再酸素化傷害組、低酸素/再酸素化傷害モデル+配合組に分ける。全ての低酸素/再酸素化傷害組に予めに薬剤を24時間に投与した後、予めに95%N
2+5%CO
2の混合されたガスを1時間に無糖Earle’s液に注入して飽和させた液体に入れた後に、37℃にて95%N
2+5%CO
2の定温インキュベーターに入れ、低酸素で6時間に培養し、酸欠された心筋細胞を予めに95%空気+5%CO
2の混合されたガスをDMEM高グルコース培地(10%FBSを含む)に注入して飽和させた培地により、通常の培養条件に5時間にて酸素を回復すると共に、各配合薬物を投入し培養する。各実験組の細胞を処理した後に、上清液を取り出し、PHメーターを利用して培地の上清液のpHを直接に測定する。実験結果は表6に示す通りである。
【0031】
【表6】
比較組と比べると、
###P<0.001、モデル組と比べると、
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001
【0032】
分析:空白比較組と比べると、モデル組は、細胞培養液の上清液pHが著しく下がるため、初代ラット心筋細胞の低酸素/再酸素化傷害において、低酸素心筋が無糖発酵され、乳酸が大量に生成されることにより、培地の上清液のpHを減少させる。モデル組と比べると、配合組1、配合組3、配合組11はそれぞれある程度で細胞培地の上清液のpHを低減し、薬剤が細胞の無糖発酵を改善し、細胞エネルギーの代謝障害を改善でき、且つ保護作用が三つの化合物の単体を利用する場合より優れている。
【0033】
七、配合組成物は窒素低酸素症/再酸素化傷害の初代ラット心筋細胞ATP、ADP、AMPに与える影響
【0034】
実験方法:無菌状態で生まれた二日のWistarラット乳児の心室筋を取り出し、混合消化酵素(0.06%のトリプシンと0.1%のII型コラゲナーゼの均量混合液)で短時間に複数回に繰り返し消化する。差動付着法で心筋細胞を純化する。細胞の数をカウントし、生きている細胞数と細胞の生存率が得られ、1.0×10
6cell/mLで培地をプレートに滴下する。細胞を24時間に培養した後、上清液を捨て、PBSで三回洗い、細胞を比較組、低酸素/再酸素化傷害組、低酸素/再酸素化傷害モデル+配合組に分ける。全ての低酸素/再酸素化傷害組に予めに薬剤を24時間に投与した後、予めに95%N2+5%CO2の混合されたガスを1時間に無糖Earle’s液に注入して飽和させた液体に入れた後に、37℃にて95%N
2+5%CO
2の定温インキュベーターに入れ、低酸素で6時間に培養し、酸欠された心筋細胞を予めに95%空気+5%CO
2の混合されたガスをDMEM高グルコース培地(10%FBSを含む)に注入して飽和させた培地により、通常の培養条件に5時間にて酸素を回復すると共に、各配合薬物を投入し培養する。各実験組の細胞を処理した後に、培養液を吸い取って捨てる。予め冷やしたPBSで細胞を洗い、各ウェルに予めに冷やした50%過塩素酸溶液500μlを入れ、アイスの上に細胞を5分間に分解し、細胞を取り出し、2.5mol/L Na
2CO
3の液体600μlを添加し、pHを6.5に調整し、遠心分離管における混合分解液を収集し、4℃にて遠心し、上清液に対しHPLC測定が行われる。
【0035】
それぞれに0.5 mgの ATP、ADP、AMPを精密に測量し、リン酸緩衝液で溶解し、更に0.625、1.25、2.5、5、10、20、40μg/mLの濃度レベルに希薄化する。
【0036】
HPLCによって測定する。測定機器はLC-2010C四元ポンプ高性能液体クロマトグラフィーであり、分析カラムはDiamonsil C18カラム(250ミリメートル×4.6ミリメートル、5μM)であり、測定波長は260mm、移動相は0.05Mのリン酸緩衝液(pH6.5)、測定機器はUV可視検出器である。カラム速度は0.8mL/分、注入量は20μL、分析時間は12分間、データ処理はLCsolutionクロマトグラフィー(島津製作所、日本)を利用している。結果を表7に示す。
【0037】
【表7】
比較組と比べると、
###P<0.001、モデル組と比べると、
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001
【0038】
分析:空白比較組と比べると、モデル組は、ATPの含有量が著しく下がり、ADP、AMPの含有量が著しく上がる。モデル組と比べると、配合組1、配合組3、配合組11はそれぞれある程度でATPの含有量を増加させ、ADP、AMPの含有量を減少させることができることにより、薬剤が細胞エネルギーの代謝障害を改善でき、且つ保護作用が三つの化合物の単体を利用する場合より優れている。