(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記突起、前記凹みまたは前記孔を、前記可撓部が前記底面板と接する範囲より小さく形成し、前記突起、前記凹みまたは前記孔を、前記可撓部が前記底面板と接する範囲より広く分布するように複数設けた、
請求項2に記載のバイオハザード対策用キャビネット。
前記突起、前記凹みまたは前記孔を、前記可撓部が前記底面板と接する範囲より小さく形成し、前記突起、前記凹みまたは前記孔を、前記可撓部が前記底面板と接する範囲より広く分布するように複数設けた、
請求項7に記載のクリーンベンチ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バイオハザード対策用キャビネットまたはクリーンベンチ(以下、『バイオハザード対策用キャビネット等』と言う)は、作業者が本体ケース内で作業を行う際に、本体ケース内の清浄度を確保するため、空調装置によって、本体ケース内を陰圧または陽圧に保つ必要がある。
【0006】
また、作業中以外は本体ケース内の清浄度を著しく低下させないため、作業の中断、終了時には前面シャッタを最下点まで下げる使い方が一般的である。
【0007】
その際、空調装置が動作中に前面開口部をすべて前面シャッタで覆い、作業手挿入部の空間を無くした場合、前面シャッタに陽圧または陰圧の圧力が加わり、前面シャッタが破損する虞があった。
【0008】
そのため、従来のバイオハザード対策用キャビネット等は、前面シャッタを最下点に下げた状態で、底面板と前面シャッタが接触しない構成になっていたので、使用していない状態において本体ケース内の清浄度を十分に保つことができず、バイオハザード対策用キャビネット等として信頼性を確保できない場合があった。
【0009】
そこで本発明は、バイオハザード対策用キャビネット等として使用していない状態においても、清浄度を保つと共に前面シャッタの負荷を軽減する事で、信頼性を確保することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、この目的を達成するために本発明は、前面に開口部を有する箱状の本体ケースと、前記本体ケース内の空調を行う空調装置と、前記開口部内に設けた底面板と、前記底面板において前記本体ケースの前面側に設けられた前面側気体排出部と、前記開口部を覆う上下方向に移動可能な前面シャッタと、前記前面シャッタの下端に設けた前面シャッタ保護具と、前記前面シャッタ保護具に設けられ、前記前面シャッタを最下点に移動した状態において、前記底面板と接触し、かつ前記開口部の幅と略同等に設け、前記前面側気体排出部より前面側において前記底面板に接触する可撓部と、前記可撓部と前記底面板との接触部に形成された隙間部と、を備える構成とし、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明は、前面に開口部を有する箱状の本体ケースと、前記本体ケース内の空調を行う空調装置と、前記開口部内に設けた底面板と、前記底面板において前記本体ケースの前面側に設けられた前面側気体排出部と、前記開口部を覆う上下方向に移動可能な前面シャッタと、前記前面シャッタの下端に設けた前面シャッタ保護具と、前記前面シャッタ保護具に設けられ、前記前面シャッタを最下点に移動した状態において、前記底面板と接触し、かつ前記開口部の幅と略同等に設け、前記前面側気体排出部より前面側において前記底面板に接触する可撓部と、前記可撓部と前記底面板との接触部に形成された隙間部と、を備える構成としたので、バイオハザード対策用キャビネット等として信頼性を確保することができる。すなわち、開口部は、空調装置により、本体ケース内に外気を吸い込むまたは本体ケース内の空気を吹き出す構成であり、バイオハザード対策用キャビネット等で使用していない状態において、清浄度を保つと共に前面シャッタの負荷を軽減することができる。
【0012】
また、空調装置が動作中において前面シャッタを最下点に移動し、前面シャッタ保護具の可撓部と底面板を接触させた状態を保つとともに、隙間部によって本体ケース内を外部とつなぐことができる。
【0013】
したがって、バイオハザード対策用キャビネット等で使用していない状態においても、清浄度を保つと共に前面シャッタの負荷を軽減することができ、その結果として、バイオハザード対策用キャビネット等として信頼性を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本実施形態におけるバイオハザード対策用キャビネットの概略断面図である。
【0017】
図1に示すごとく、本実施形態におけるバイオハザード対策用キャビネット(以下、キャビネットと記す)1は、例えば、実験環境機器に用いられる装置であって、作業者はこの装置を用いて、例えば細菌やウィルスなどを取り扱う作業を行う。
【0018】
キャビネット1は、本体ケース2と、空調装置3と、底面板4と、前面シャッタ5と、前面シャッタ保護具6と、を備えている。
【0019】
本体ケース2は、前面に開口部7を有する箱状の部材であって、キャビネット1を利用する作業者は、開口部7から手を本体ケース2の内部に挿入した状態で作業を行う。
【0020】
本体ケース2の開口部7は、前面シャッタ5によって覆われている。 前面シャッタ5は、キャビネット1に対して上下方向に移動させることが可能な構成としていて、この前面シャッタ5を移動させることによって本体ケース2の開口部7の開口領域を大きくしたり、小さくしたりさせる。
【0021】
具体的には、例えば、本体ケース2の内部に実験用の試料や設備を入れるときには前面シャッタ5を上方向に移動させることによって開口部7の開口領域を大きくして作業しやすくする。
【0022】
また、本体ケース2の内部に試料や設備を入れた後、実験などの作業を行う段階では、前面シャッタ5を下方向に移動させることによって開口部7の開口領域を小さくして本体ケース2の内部に実験に必要な作業環境を確保する。
【0023】
つまり、開口部7の開口領域は、作業者が開口部7から手を本体ケース2の内部に挿入した状態で作業を行うことができる程度に大きく、かつ、作業者が取り扱う細菌やウィルスなどを本体ケース2の内部に留めておくことができる程度に小さくしている。
【0024】
前面シャッタ5は、ガラス板などの透明部材で構成され、実験などの作業を行う状態において作業者は前面シャッタ5を介して、本体ケース2内の状態を目視しながら作業を行うことができる構成としている。
【0025】
本体ケース2内において下方向である底面側には底面板4が設けられている。
【0026】
底面板4は、例えば金属製の板状部材であって、プレス加工などによって形成され、背面板に略直交した状態で設けられている。
【0027】
底面板4は、実験などを行う作業台を有する。
【0028】
そして、本体ケース2内において前面シャッタ5と反対側には背面板8が設けられている。つまり、背面板8は本体ケース2内の奥方向である背面側に設けられている。
【0029】
背面板8は、例えば金属製の板状部材であって、プレス加工などによって形成されている本体ケース2は、左右方向において背面板に略直交する一対の側面板と、上方向において背面板に略直交する上面板とをさらに備える構成となっている。
【0030】
そして、本体ケース2の内部に箱状の作業空間を形成している。
【0031】
本体ケース2の上方向である天面側には空調装置3が設置されている。
【0032】
空調装置3は、本体ケース2の内部に空気を送る装置であって、HEPA(High−Efficiency Particulate Air filter)などのフィルタを有している。
【0033】
そして、このフィルタで雑菌などを取り除いた空気を本体ケース2内に送ることによって、本体ケース2内の環境を無菌状態に保つ構成としている。
【0034】
さらに、底面板4において本体ケース2の前面側に前面側気体排出部9と、背面板の下側には背面側気体排出部10が設けられている。
【0035】
空調装置3によって本体ケース2の内部に送られた空気は、前面側気体排出部9および背面側気体排出部10から本体ケース2の外に排出される。
【0036】
空調装置3の下方側には整流板11が設置されている。
【0037】
具体的には、例えば、本体ケース2において手前方向である開口部側、奥方向である背面側および開口部側と背面側の中央である中央部の3点において固定または支持することによって整流板11を設置している。
【0038】
ここで、本実施形態における前面シャッタ保護具6について
図2を用いてさらに詳細に説明する。
【0039】
図2は、
図1に記載のA部を拡大した詳細断面図である。
【0040】
図2に示すごとく、前面シャッタ保護具6は、硬質部12と、可撓部13によって構成されている。
【0041】
硬質部12は、前面シャッタ保護具6を前面シャッタ5に取り付けるための取付部12aを有している。
硬質部12は、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC(Polyvinyl Chloride))、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA(Polymethyl Methaclylate))、AES(Acrylonitrile・Ethylene−Propylene−Diene・Styrene)、ASA(Acrylate Styrene Acrylonitrile)などの樹脂材料を成型するなどして形成されている。
【0042】
取付部12aは、例えば、上部が開口したクリップ状の形状であって、前面シャッタ5の下端面に対して、取付部12aを、その開口した上部から挿入する。そして、前面シャッタ5の下端面に対して、例えば圧入となる構成とすることによって、前面シャッタ5の下端面に対して、取付部12aを取り付ける。
【0043】
図3は前面シャッタ5を最下点に移動した状態で可撓部13が底面板4と接する詳細断面図である。
【0044】
図3に示すごとく、前面シャッタ5を最下点に移動した状態において、可撓部13は、硬質部12と底面板4との空間距離より長く、かつ
図1に示す開口部7の幅と略同等に設けられ、前記前面側気体排出部9より前面側において前記底面板4に接触している。
【0045】
可撓部13は、例えば、ゴム、硬度が略60度などの軟質のポリ塩化ビニル、または、軟質のポリメタクリル酸メチル樹脂などの可撓性を有する材料で形成されており、前面シャッタ5を最下点に移動した状態において撓んだ状態で、底面板4に接している。つまり、可撓部13は、撓められることによって底面板4を付勢した状態で接する構成としている。このようにすることで、可撓部13が底面板4に接する面において隙間が生じることを低減できる。
なお、可撓部13と底面板4が接している本体ケース2の開口部7(
図1を参照)の幅と略同等の範囲を接触部としている。
ここで、可撓部13の材料の硬度は、上述した硬質部12の材料の硬度よりも低い方が好ましい。
【0046】
そして、可撓部13は前面シャッタ5を最下点に移動した状態において底面板4に接する事で製品を使用していない状態において、本体ケース2内に外からの異物が入り込むのを防ぐことができる。
なお、本実施形態では、前面シャッタ保護具6は、硬質部12と、可撓部13によって構成されるものとして説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、硬質部12を用いることなく、可撓部13を前面シャッタ5に直接に形成する構成としてもよい。
具体的には、前面シャッタ5と可撓部13にそれぞれ結合部と被結合部を形成し、それらを嵌め合いなどにより組み合わせる構成とすればよい。また、前面シャッタ5と可撓部13の材質によっては、接着や溶着などの手段によって両者を結合する構成としてもよい。
【0047】
次に
図4および
図5を用いて、底面板4と可撓部13によって形成される隙間について詳細に説明する。
【0048】
図4および
図5は前面シャッタ5を最下点に移動した状態において、前面シャッタ保護具6の可撓部13が底面板4と接している状態を正面から見た時の詳細図である。
【0049】
図4(a)に示すごとく、底面板4には突起14を設けており、前面シャッタ5を最下点に移動した状態において、底面板4と可撓部13によって隙間15が形成される。つまり、前面シャッタ5を最下点に移動した状態において、可撓部13が接する高さを変えることによって隙間15を形成している。
【0050】
このようにすることで、空調装置3が稼動中においては、可撓部13と突起14が接することにより形成される隙間15から、本体ケース2内に外気を取り込む事が可能な構成としている。なお、
図4(a)では省略しているが、硬質部12の上方には、
図2に示すように前面シャッタ5がある。
【0051】
また、本体ケース2内に外気を取り込む隙間15は、底面板4に、
図4(b)に記載のように凹み16を設けたり、あるいは
図4(c)に記載のように孔17を設けたりすることによって形成されても良い。
【0052】
また、
図5に示すごとく、可撓部13に、
図5(a)に記載のようにスリット18を設けたり、あるいは
図5(b)に記載のように切り込み19を設けたり、または
図5(c)に記載のように孔20を設けたりする事によって隙間15を形成する構成としても良い。
【0053】
以上のように、本実施形態では、開口部7は、空調装置3により、本体ケース2内に外気を吸い込むまたは本体ケース2内の空気を吹き出す構成であり、バイオハザード対策用キャビネット等で使用していない状態において、清浄度を保つと共に前面シャッタ5の負荷を軽減することができる。
【0054】
また、空調装置3が動作中において前面シャッタ5を最下点に移動し、前面シャッタ保護具6の可撓部13と底面板4を接触させた状態を保つとともに、隙間部15によって本体ケース2内を外部とつなぐことができる。つまり、隙間部15から、本体ケース2内に外気を取り込むことができる。
【0055】
したがって、バイオハザード対策用キャビネット等で使用していない状態においても、清浄度を保つと共に前面シャッタ5の負荷を軽減することができ、その結果として、バイオハザード対策用キャビネット等として信頼性を確保することができる。
【0056】
次に
図6および
図7を用いて、底面板4に設けた突起14の配置および形状について詳細に説明する。
【0057】
図6および
図7は底面板4を上から見た図であって、底面板4に設けた突起14の配置例または、形状の例を示した図である。
図6および
図7においても
図4および
図5と同様に前面シャッタ5は省略している。
【0058】
底面板4と前面シャッタ5の位置関係は、組立のばらつき等で多少前後する事が想定される。
図6に記載の斜線部はこれらのバラつきを考慮した、前面シャッタ保護具6の可撓部13が底面板4と接する仮想範囲21を示す。
【0059】
この仮想範囲21に対して、
図6に記載の斜線部は、前面シャッタ保護具6の可撓部13が底面板4と実際に接する実際の範囲22を示す。
【0060】
図6(a)は突起114aを、前面シャッタ保護具6の可撓部13が接する仮想範囲21よりも大きく形成したものの一例である。このように仮想範囲21より大きな突起114aを用いることで、前面シャッタ5を最下点に移動した状態において、底面板4と可撓部13によって形成される隙間15を確実に形成することが可能となる。
【0061】
ここでは、一例として略楕円形状の突起114aを示すが、形状はこれに限ったものでなく、長方形形状、円形形状、不定形形状など、その外形形状を制約するものではない。
【0062】
さらに、仮想範囲21より大きな突起114aが大きすぎ、存在が邪魔になる場合などは、
図6(b)に示すように、仮想範囲21よりも小さい突起114bをに仮想範囲21より広く分布するように複数設置するようにしてもよい。このようにすることでも前面シャッタ5を最下点に移動した状態において、底面板4と可撓部13によって形成される隙間15を確実に形成することが可能である。
【0063】
ここでは小さい円形の突起114bを2個並べる構成としたが、形状、個数はこれに限ったものではない。また、突起114aおよび突起114bは底面板4に対して混在しても良い。
【0064】
また、底面板4はキャビネット1の使用する作業者が腕を乗せて作業を行う場合がある部位である。そのため、
図7に示したように、突起114aおよび突起114bを左右方向に複数配置する場合は、斜線部で記した作業者の腕が当たらない範囲23に少なくとも1箇所に突起を形成すればよい。
【0065】
これにより、作業者の腕を避けて配置する事が可能となるため、作業者の腕が突起14に当たる事で感じる煩わしさを無くす事が可能となる。
図7には3箇所に5個の突起を記載して説明したが、形状、個数はこれに限ったものではない。
【0066】
図6および
図7で記載した突起の配置例、および形状例は、突起の代わりに凹みあるいは、孔であっても良く、同様の効果を得ることができる。
【0067】
また、本実施形態は、バイオハザード対策用キャビネットを例に説明したが、これに限定されるものではなく、クリーンベンチなどでもよい。つまり、クリーンベンチは、
図1に示すキャビネット1の開口部7から本体ケース2内の空気を吹き出す構造ではあるが、クリーンベンチにおいても本発明を実施する事によって同様の効果を得ることができる。
【0068】
すなわち、前面シャッタが最下点に移動した状態において、可撓部と底面板の接触部に形成される隙間部から本体ケース内の空気を吹き出すことにより、クリーンベンチ等で使用していない状態においても、清浄度を保つと共に前面シャッタの負荷を軽減することができ、その結果として、信頼性を確保することができる。