(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂中の前記芳香族ポリエステルポリオール(B1)に由来する構成単位を100モルとしたとき、前記活性水素基を有する3級アミン化合物(B2)に由来する構成単位の割合が0.1〜1000モルであり、前記カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B3)に由来する構成単位の割合が0.1〜1000モルである、請求項1に記載の強化繊維用サイジング剤。
前記芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂中の前記活性水素基を有する3級アミン化合物(B2)に由来する構成単位を100モルとしたとき、前記カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B3)に由来する構成単位の割合が0.5〜20000モルである、請求項1又は2に記載の強化繊維用サイジング剤。
前記活性水素基含有化合物(B)が、さらに、芳香族ポリエステルポリオール(B1)、活性水素基を有する3級アミン化合物(B2)及びカルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B3)を除く化合物であって、3官能以上の活性水素基含有化合物(B4)を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の強化繊維用サイジング剤。
前記活性水素基含有化合物(B)が、さらに数平均分子量100〜2000のポリアルキレングリコール(B5)を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の強化繊維用サイジング剤。
さらに、炭素数4〜20の1価アルコールのアルキレンオキサイド付加物であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)を含有する、請求項1〜6のいずれかに記載の強化繊維用サイジング剤。
原料強化繊維ストランドに対して、請求項1〜8のいずれかに記載の強化繊維用サイジング剤を付着させた強化繊維ストランドをカットした、強化繊維チョップドストランド。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、マトリックス樹脂を補強するために用いられる強化繊維用サイジング剤であって、特定の芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂を必須に含有するものである。以下、詳細に説明する。
【0021】
[芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂]
本発明のサイジング剤の必須成分である芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂は、有機ポリイソシアネート化合物(A)と活性水素基含有化合物(B)との反応物であり、これらを重付加反応等させて得られるポリマー成分である。前記活性水素基含有化合物(B)は、芳香族ポリエステルポリオール(B1)、活性水素基を有する3級アミン化合物(B2)及びカルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B3)を含むものである。このような特定の芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂を強化繊維用サイジング剤に用いることにより、強化繊維ストランドの集束性、強化繊維チョップドストランドの集束性及び強化繊維とマトリックス樹脂との接着性を飛躍的に向上させることができる。
【0022】
有機ポリイソシアネート化合物(A)は、芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂の必須構成成分であり、分子内に2個以上(好ましくは2〜6個、より好ましくは2〜3個、さらに好ましくは2個)のイソシネート基を含有するものである。有機ポリイソシアネート化合物(A)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0023】
有機ポリイソシアネート化合物(A)としては、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、2,6−ジイソシアナトエチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート及びビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート等のジイソシアネート;1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート及びリジンエステルトリイソシアネート(例えばリジンとアルカノールアミンとの反応生成物のホスゲン化物、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート及び2−又は3−イソシアナトプロピル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート)等の3官能以上のポリイソシアネート;等が挙げられる。
【0024】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレート及び2,5−又は2,6−ノルボルナンジイソシアネート等のジイソシアネート;ビシクロヘプタントリイソシアネート等の3官能以上のポリイソシアネート;等が挙げられる。
【0025】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ポリメリック4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0026】
これらの中でも、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートがさらに好ましい。
【0027】
活性水素基含有化合物(B)は、芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂の必須の構成成分であり、分子内に少なくとも1つの活性水素基を含有する化合物を意味する。活性水素基は、イソシアネート基と反応し得る、水素を含む活性基をいう。活性水素基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基等が挙げられる。
活性水素基含有化合物(B)は、次の芳香族ポリエステルポリオール(B1)、活性水素基を有する3級アミン化合物(B2)及びカルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B3)を必須に含むものである。また、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記以外の他の活性水素基含有化合物を含んでもよい。
【0028】
芳香族ポリエステルポリオール(B1)とは、ポリカルボン酸又はその無水物と、ポリオールとの共重合体であって、前記ポリカルボン酸又はその無水物とポリオールのうちの少なくとも1種が芳香族化合物を含むものである。また、芳香族ポリエステルポリオール(B1)は、その末端がポリオールで構成され、分子内に2個以上の活性水素基を有する。活性水素基の数は、2〜4が好ましく、2〜3がより好ましく、2がさらに好ましい。芳香族ポリエステルポリオール(B1)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
このように、芳香族ポリエステルポリオール(B1)及びその他の活性水素基含有化合物を芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂の必須の構成成分とすることにより、強化繊維ストランドの集束性と強化繊維チョップドストランドの集束性及び強化繊維とマトリックス樹脂との接着性を同時に向上させることができる。なお、芳香族ポリエステルポリオール(B1)の代わりに、分子内に芳香族化合物を有しない脂肪族ポリエステルポリオールを用いると、ストランド集束性が低く、接着性もほとんど向上せず、耐熱性も低いものである。
【0029】
上記ポリカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、スルホン酸基含有芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、3官能以上のポリカルボン酸等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、無水フタル酸等が挙げられる。
スルホン酸塩含有芳香族ジカルボン酸としては、スルホテレフタル酸塩、5−スルホイソフタル酸塩等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸又は脂環式ジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
3官能以上のポリカルボン酸としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
【0030】
上記ポリオールとしては、ジオール、3官能以上のポリオール等が挙げられる。
ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、レゾルシン、ハイドロキノン、ビスフェノールA又はそのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
3官能以上のポリオールとしては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0031】
上記の中でも、芳香族ポリエステルポリオール(B1)としては、芳香族ジカルボン酸とジオールの組み合わせが好ましく、芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ジオールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールの組み合わせがさらに好ましい。
【0032】
芳香族ポリエステルポリオール(B1)の水酸基価は、10〜250mgKOH/gが好ましく、15〜150mgKOH/gがより好ましく、20〜120mgKOH/gがさらに好ましい。なお、水酸基価は、JIS K 1557−1970に準拠して測定した。
【0033】
芳香族ポリエステルポリオール(B1)の数平均分子量は、500〜10000が好ましく、700〜8000がより好ましく、1000〜4000がさらに好ましい。なお、本発明でいう数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定方法より算出した。
【0034】
芳香族ポリエステルポリオール(B1)は、上記のポリカルボン酸又はその無水物と、上記のポリオールとを脱水縮合させて、公知のポリエステル製造方法と同様の方法にて得ることができる。
【0035】
活性水素基を有する3級アミン化合物(B2)とは、分子内に、少なくとも一つの活性水素基を有する3級アミン化合物をいう。活性水素基を有する3級アミン化合物(B2)を必須の構成成分とすることにより、カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B3)によって導入されるカルボキシル基とのイオン性相互作用が発現し、芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂にチョップドストランドの集束性能を付与できる。活性水素基の数は1〜4が好ましく、1〜3がさらに好ましい。活性水素基を有する3級アミン化合物(B2)は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0036】
活性水素基を有する3級アミン化合物(B2)としては、本発明の効果をより発揮できる点から、上記一般式(1)で示される化合物及び上記一般式(2)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、上記一般式(1)で示される化合物がさらに好ましい。
一般式(1)において、R
1は炭素数1〜20の炭化水素基である。R
1は、直鎖状、分岐鎖状、環状(脂環式又は芳香脂肪族)のいずれでもよいが、チョップドストランド集束性が得られやすい観点から、直鎖状が好ましい。炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等が挙げられ、アルキル基が好ましい。R
1の炭素数は、1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4がさらに好ましく、1〜3が最も好ましい。
【0037】
一般式(1)において、A
1Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。従って、(A
1O)
aはポリオキシアルキレン基である(但しaは2以上)。A
1Oとしては、オキシエチレン基(EO)、オキシプロピレン基(PO)、オキシブチレン基(BO)が挙げられるが、チョップドストランド集束性が得られやすい観点から、オキシエチレン基とオキシプロピレン基が好ましい。(A
1O)
aを構成するA
1Oは、1種でもよく、2種以上であってもよい。2種以上の場合、ブロック付加体、交互付加体、ランダム付加体のいずれであってもよい。(A
1O)
a全体に占めるEOの割合は、60モル%以上が好ましく、70〜100モル%がより好ましく、80〜100モル%がさらに好ましく、90〜100モル%が最も好ましい。
一般式(1)において、aは1〜20の数であり、ウレタン樹脂の経時吸湿を抑える観点から、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3がさらに好ましく、1〜2が最も好ましい。
【0038】
一般式(1)において、mは0〜2の数であり、ウレタン樹脂の水分散性を向上させる点から、1〜2が好ましく、2がさらに好ましい。
分子内にR
1、(A
1O)
aが複数ある場合には、お互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0039】
一般式(2)において、R
2は炭素数1〜20の炭化水素基である。R
2の好ましい範囲は、R
1と同様である。
【0040】
一般式(2)において、A
2は炭素数1〜10の炭化水素基である。A
2は、直鎖状、分岐鎖状のどちらでもよいが、チョップドストランド集束性が得られやすい観点から、直鎖状が好ましい。炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられ、アルキル基が好ましい。A
2の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましく、1〜3がさらに好ましい。
【0041】
一般式(2)において、nは1〜2の数であり、ウレタン樹脂の水分散性を向上させる点から、2が好ましい。
分子内にR
2、A
2が複数ある場合には、お互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0042】
活性水素基を有する3級アミン化合物としては、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N−t−ブチルジエタノ−ルアミン、ジヒドロキシイソプロピルエチルアミン、ジヒドロキシイソプロピル−n−ブチルアミン、ジヒドロキシイソプロピル−t−ブチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アニリン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N,N−ジメチルイソプロパノールアミン、N,N−ジエチルイソプロパノールアミン、2、4、6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、デシルアミンのEO付加物(EO2〜20モル)、デシルアミンのPO付加物(PO2〜20モル)、ドデシルアミンのEO付加物(EO2〜20モル)、ドデシルアミンのPO付加物(PO2〜20モル)、オクタデシルアミンのEO付加物(EO2〜20モル)、オクタデシルアミンのPO付加物(PO2〜20モル)、N,N−ビス(2−アミノエチル)メチルアミン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン、N,N−ビス(アミノプロピル)エチルアミン、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン等があげられる。
【0043】
これらの中でも、カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B3)との併用により良好なチョップドストランド集束性が得られやすい観点から、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノ−ルアミン、N,N−ジエチルイソプロパノ−ルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミンが好ましい。
【0044】
カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B3)とは、分子内に、少なくとも一つのカルボキシル基と少なくとも1つの活性水素基を有する化合物をいう。カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B3)を必須の構成成分とすることにより、芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂に水分散能を付与できる。さらに、活性水素基を有する3級アミン化合物(B2)によって導入される3級アミン構造とのイオン性相互作用が発現し、芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂に強化繊維チョップドストランドの集束性能を付与できる。活性水素基の数は、1〜4が好ましく、2〜3がさらに好ましい。カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B3)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0045】
カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B3)としては、カルボキシル基を有するポリオール、カルボキシル基を有するモノオール等が挙げられる。
カルボキシル基を有するポリオールとしては、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸、ジオキシマレイン酸、2,6−ジオキシ安息香酸等があげられる。
カルボキシル基を有するモノオールとしては、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、サリチル酸、パラヒドロキシ安息香酸、クマル酸等が挙げられる。
これらの中でも、芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂の優れた水分散能の点から、カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B3)としては、カルボキシル基を有するポリオールが好ましく、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸がより好ましく、2,2−ジメチロールプロピオン酸がさらに好ましい。
【0046】
活性水素基含有化合物(B)は、さらに3官能以上の活性水素基含有化合物(B4)を含むことが好ましい。該3官能以上の活性水素基含有化合物(B4)を用いることにより、サイジング剤はより優れたチョップドストランド集束性を有する。3官能以上の活性水素基含有化合物(B4)とは、分子内に少なくとも3個の活性水素基を含有する化合物をいう。また、3官能以上の活性水素基含有化合物(B4)は、前記の芳香族ポリエステルポリオール(B1)、活性水素基を有する3級アミン化合物(B2)及びカルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B3)を除く化合物をいう。活性水素基の数は、3〜8が好ましく、3〜4がさらに好ましい。3官能以上の活性水素基含有化合物(B4)としては、活性水素基が3官能以上のポリオール、3官能以上のポリアミン等が挙げられる。
3官能以上のポリオールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン等が挙げられる。3官能以上のポリアミンとしては、例えば、メラミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリ(アミノメチル)プロパン等が挙げられる。これらの中でも、優れた水分散能の点から、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパンが好ましく、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールがさらに好ましい。
【0047】
活性水素基含有化合物(B)は、さらに数平均分子量が100〜2000のポリアルキレングリコール(B5)を含むことが好ましい。該ポリアルキレングリコール(B5)を用いることにより、サイジング剤は優れた均一付着性を有する。なお、本発明でいう数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定方法により、下記の測定条件で測定してポリスチレン換算した値をいう。
(GPC測定条件)
装置:装置名「HPLC LC−6A SYSTEM」(SHIMAZU社製)
カラム:「KF−800P(10mm×4.6mmφ)」、「KF−804(300mm×8mmφ)」、「KF−802.5(300mm×8mmφ)」、「KF−801(300mm×8mmφ)」(以上、SHODEX社製)
移動相:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0ml/min
サンプル量:100μl(100倍希釈)
カラム温度:50℃
検量線作成標準物質:ポリスチレン(PSt)
【0048】
ポリアルキレングリコール(B5)の数平均分子量は、100〜2000が好ましく、150〜1500がより好ましく、200〜1000がさらに好ましい。該分子量が100未満の場合、水分散能が不十分となる場合がある。一方、該分子量が2000超の場合、接着性が低下する場合がある。
【0049】
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロック共重合体、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールランダム共重合体等が挙げられる。あるいは、アルキル基、芳香族基等で封鎖し、片末端のみを水酸基にしたものも使用できる。
これらの中でも、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが好ましく、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールがさらに好ましい。
【0050】
活性水素基含有化合物(B)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記以外の活性水素基含有化合物を含んでもよい。その他の活性水素基含有化合物(B6)としては、ジオールやジアミン等が挙げられる。
ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、レゾルシン、ハイドロキノン、ビスフェノールA等が挙げられる。ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、イソホロンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン等の脂環式ジアミン等が挙げられる。
【0051】
また、上記の芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂は、有機ポリイソシアネート化合物(A)に由来する構成単位(a)と、活性水素基含有化合物(B)に由来する構成単位(b)とから構成されてなる芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂と言い表すことができる。構成単位(b)は、芳香族ポリエステルポリオール(B1)に由来する構成単位(b1)、活性水素基を有する3級アミン化合物(B2)に由来する構成単位(b2)及びカルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B3)に由来する構成単位(b3)を必須に含むものである。構成単位(b)は、前述の3官能以上の活性水素基含有化合物(B4)に由来する構成単位(b4)、前述のポリアルキレングリコール(B5)に由来する構成単位(b5)、前述のその他の活性水素基含有化合物(B6)に由来する構成単位(b6)を含んでもよい。
ここで有機ポリイソシアネート化合物(A)に由来する構成単位(a)とは、有機ポリイソシアネート化合物(A)を原料として構成された単位をいい、ウレタン結合のうちの「−NHC(=O)−」の構造までを含む。一方、活性水素基含有化合物(B)に由来する構成単位(b)とは、活性水素基含有化合物(B)を原料として構成された単位をいい、活性水素基含有化合物(B)から活性水素を除いた残部をいう。
【0052】
芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂中の芳香族ポリエステルポリオール(B1)に由来する構成単位を100モルとしたとき、活性水素基を有する3級アミン化合物(B2)に由来する構成単位の割合は0.1〜1000モルが好ましく、0.2〜800モルがより好ましく、0.5〜500モルがさらに好ましい。該割合が0.1モル未満の場合、強化繊維ストランドの集束性が不十分となることがある。一方、該割合が1000モル超の場合、耐熱性が不十分となることがある。
同様に、カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B3)に由来する構成単位の割合は0.1〜1000モルが好ましく、0.5〜800モルがより好ましく、1〜500モルがさらに好ましい。該割合が0.1モル未満の場合、水分散能が不十分となることがある。一方、該割合が1000モル超の場合、ウレタン樹脂の吸湿性によりサイジング剤の経時安定性が不十分となることがある。
【0053】
また、芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂中の活性水素基を有する3級アミン化合物(B2)に由来する構成単位を100モルとしたとき、カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B3)に由来する構成単位の割合は0.5〜20000モルが好ましく、1〜15000モルがより好ましく、2〜12000モルがさらに好ましい。該割合が0.5モル未満の場合及び該割合が20000モル超の場合、活性水素基を有する3級アミン化合物(B2)によって導入される3級アミン構造とカルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B3)によって導入されるカルボキシル基によるイオン性相互作用が不十分なため、強化繊維チョップドストランドの集束性が不十分となることがある。
【0054】
活性水素基含有化合物(B)が3官能以上の活性水素基含有化合物(B4)をさらに含む場合、芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂中の芳香族ポリエステルポリオール(B1)に由来する構成単位を100モルとしたとき、3官能以上の活性水素基含有化合物(B4)に由来する構成単位の割合は、1〜800モルが好ましく、2〜700モルがより好ましい。該割合が1000モル超の場合、耐熱性、水分散安定性ともに不十分となることがある。
【0055】
活性水素基含有化合物(B)がポリアルキレングリコール(B5)をさらに含む場合、芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂中の芳香族ポリエステルポリオール(B1)に由来する構成単位を100モルとしたとき、ポリアルキレングリコール(B5)に由来する構成単位の割合は、0〜1000モルが好ましく、1〜700モルがより好ましく、2〜500モルがさらに好ましい。該割合が1000モル超の場合、接着性、耐熱性ともに不十分となることがある。
【0056】
次に、活性水素基含有化合物(B)に由来する構成単位(b)全体を100モル%としたときの各構成単位の好ましい割合に関して説明する。
構成単位(b)全体に占める構成単位(b1)の割合は、5〜80モル%が好ましく、10〜70モル%がより好ましく、15〜60モル%がさらに好ましい。該割合が5モル%未満の場合、接着性、耐熱性ともに不十分となることがある。一方、該割合が80モル%超の場合、水溶化が困難となることがある。
構成単位(b)全体に占める構成単位(b2)の割合は、0.05〜60モル%が好ましく、0.1〜50モル%がより好ましく、0.15〜40モル%がさらに好ましい。該割合が0.05モル%未満の場合、チョップドストランド集束性が不十分となることがある。一方、該割合が60モル%超の場合、耐熱性が不十分となることがある。
構成単位(b)全体に占める構成単位(b3)の割合は、0.05〜65モル%が好ましく、0.1〜60モル%がより好ましく、0.2〜55モル%がさらに好ましい。該割合が0.05モル%未満の場合、チョップドストランド集束性が不十分となることがある。一方、該割合が65モル%超の場合、吸湿性が高くなったり、耐熱性が不十分となったりすることがある。
また、構成単位(b)全体に占める構成単位(b1)、構成単位(b2)及び構成単位(b3)の合計の割合は、35モル%以上が好ましく、45モル%以上がより好ましく、50モル%以上がさらに好ましい。該割合が35モル%未満の場合、良好なチョップドストランド集束性、接着性がともに得られないことがある。
【0057】
活性水素基含有化合物(B)が3官能以上の活性水素基含有化合物(B4)を含む場合、構成単位(b)全体に占める構成単位(b4)の割合は、1〜70モル%が好ましく、3〜60モル%がより好ましく、5〜50モル%がさらに好ましい。該割合が1モル%未満の場合、接着性が不十分となることがある。一方、該割合が70モル%超の場合、反応制御が困難になり、合成不可能となることがある。
その際の構成単位(b)全体に占める構成単位(b1)、構成単位(b2)、構成単位(b3)及び構成単位(b4)の合計の割合は、40モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、60モル%以上がさらに好ましい。
【0058】
活性水素基含有化合物(B)が、ポリアルキレングリコール(B5)を含む場合、構成単位(b)全体に占める構成単位(b5)の割合は、1〜40モル%が好ましく、3〜35モル%がより好ましく、5〜30モル%がさらに好ましい。該割合が40モル%超の場合、接着性、耐熱性ともに不十分となることがある。
その際の構成単位(b)全体に占める構成単位(b1)、構成単位(b2)、構成単位(b3)及び構成単位(b5)の合計の割合は、40モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、60モル%以上がさらに好ましい。
【0059】
活性水素基含有化合物(B)が、さらにその他の活性水素基含有化合物(B6)を含む場合、構成単位(b)全体に占める構成単位(b6)の割合は、1〜40モル%が好ましく、2〜35モル%がより好ましく、5〜30モル%がさらに好ましい。該割合が40モル%超の場合、良好な接着性が得られなくなることがある。
【0060】
構成単位(a)と構成単位(b)のモル比は、40/60〜60/40が好ましく、45/55〜55/45がより好ましく、47/53〜50/50がさらに好ましい。
【0061】
なお、芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂を水に乳化、分散させて使用する場合に、界面活性剤などの乳化剤成分の添加を不要とできる点から、カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B3)由来で導入されたカルボキシル基を、塩基性成分により一部又は全てを中和することが好ましい。
塩基性成分としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基類、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、モノエタノールアミン、モノシクロへキシルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類、アンモニア等が挙げられる。これらの中でも、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチレントリアミン、アンモニアがさらに好ましい。
【0062】
本発明で用いる芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂の数平均分子量は、樹脂物性及び耐熱性の観点から5000〜200000が好ましく、7000〜150000がより好ましく、8000〜130000がさらに好ましい。該分子量が5000未満の場合、耐熱性が不足し、サイジング剤に必要な樹脂物性が得られないことがある。一方、該分子量が200000超の場合、サイジング剤としての安定性が低下し強化繊維への均一付与が困難となることがある。
【0063】
本発明で用いる芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂を示差走査熱量計(DSC)で測定したときのガラス転移点は、120℃以下が好ましく、−25〜100℃がより好ましく、−15〜90℃がさらに好ましい。該ガラス転移点が120℃以下であることにより、該ポリウレタン樹脂の水分散性が向上しサイジング剤としての取扱性及び安定性が向上する。
なお、本発明でいうガラス転移点とは、JIS−K7121に準拠し、DSC測定により得られるDSC曲線の階段状変化を示す部分において、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、階段状変化部分の曲線とが交わる点(単位:℃)として定義される。
【0064】
芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂の製造方法としては、特に限定はなく、公知の方法を採用できる。例えば、全成分を同時に反応させるワンショット法、又は有機ポリイソシアネート化合物(A)に対して活性水素基含有化合物(B)を段階的に投入し反応させる多段法、あるいは有機ポリイソシアネート化合物(A)と活性水素基含有化合物(B)を反応させて末端にイソシアネートを有するプレポリマーを合成し、次いで鎖伸長剤を反応させるプレポリマー法等、いずれの方法で行ってもよい。
【0065】
本発明の芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂を調製する際、必要ならばウレタン化触媒を使用することができる。本発明で使用できるウレタン化触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、またはN−メチルモルホリン等の含窒素化合物、酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、またはオクチル酸錫等の金属塩、ジブチルラウレート等の有機金属化合物などである。
【0066】
[強化繊維用サイジング剤]
本発明のサイジング剤は、マトリックス樹脂を補強するために用いられる強化繊維用である。マトリックス樹脂は、本発明のサイジング剤による接着性向上効果がより高い点から、熱可塑性樹脂が好ましい。強化繊維としては、特に炭素繊維が好ましい。
本発明のサイジング剤は、前述の芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂を必須に含有するものである。サイジング剤の不揮発分に占める芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂の重量割合は、10重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、30重量%以上がさらに好ましく、50重量%以上が特に好ましい。該重量割合が10重量%未満では、本化合物の特徴である優れた接着性や優れたストランド集束性及び優れたチョップドストランド集束性が得られない。なお、本発明における不揮発分とは、サイジング剤を105℃で熱処理して溶媒等を除去し、恒量に達した時の絶乾成分をいう。
後述のポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)やその他樹脂成分(E)を含む場合、サイジング剤の不揮発分に占める芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂の重量割合は、10〜99.5重量%が好ましく、20〜98重量%がより好ましく、30〜95重量%がさらに好ましく、50〜90重量%が特に好ましい。
【0067】
本発明のサイジング剤は、水を添加してサイジング剤の不揮発分濃度を1重量%としたときの動的表面張力が、最大泡圧法(バブルプレッシャー法)により100ミリ秒で1個の泡を発生させた条件で測定したときに、40〜70mN/mの範囲にあることが好ましい。
この特性により、繊維へのサイジング剤付与段階において、サイジング剤が速やかに繊維ストランド内部、具体的には繊維−繊維間及び繊維上に均一に付着する。そしてコンポジット成形の際、繊維上に均一に付着したサイジング剤層が、マトリックス樹脂の繊維への濡れ性を向上させることにより、結果として複合材料としての物性を向上させる。
【0068】
該動的表面張力が70mN/m超の場合、サイジング剤の強化繊維に対する均一付着性が下がる場合がある。一方、該動的表面張力が40mN/m未満の場合、強化繊維に対するサイジング剤の付着量を制御することが困難となることがある。該動的表面張力は、40〜70mN/mが好ましく、45〜65mN/mがより好ましく45〜60mN/mが特に好ましい。
【0069】
また、その際のサイジング剤の不揮発分に占める芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂の重量割合は、20〜100重量%が好ましく、30〜95重量%がより好ましく、40〜90重量%がさらに好ましい。
【0070】
本発明のサイジング剤は、さらに、炭素数4〜20の1価アルコールのアルキレンオキサイド付加物であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)を含有することが好ましい。芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂に加え、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)を含有することにより、サイジング剤が速やかに繊維−繊維間及び繊維上に均一に付着し、優れた均一付着性を有する。そのため、強化繊維に対して、さらに優れた接着性を付与することができる。ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)は、1種又は2種以上を使用してもよい。ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)の製造方法としては、特に限定なく、公知の手法を採用できる。
【0071】
炭素数4〜20の1価アルコールとしては、直鎖、分岐、環状(脂環式又は芳香脂肪族)のいずれでもよく、飽和、不飽和、1級アルコール、2級アルコ−ル、3級アルコールのいずれでもよい。直鎖飽和アルコールとしては、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール等が挙げられる。分岐飽和アルコールとしては、2−エチルヘキシルアルコール、イソオクチルアルコール、イソトリデシルアルコール、イソヘキサデシルアルコール、イソオクタデシルアルコール等が挙げられる。環状アルコールとしてはシクロヘキシルアルコール及びベンジルアルコール等が挙げられる。これらの中でも均一付着性の観点から、炭素数6〜18の直鎖又は分岐の飽和アルコールが好ましく、ヘキシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコールがさらに好ましい。
【0072】
上記アルキレンオキサイドとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドが好ましい。具体的には、エチレンオキサイド(以下EOということがある)、プロピレンオキサイド(以下POということがある)、1,2−、1,3−、2,3−または1,4−ブチレンオキサイド(以下BOという)等が挙げられる。アルキレンオキサイドは2種以上を用いてもよい。これらの中でも、均一付着性の観点から、EO及び/又はPOが好ましい。2種以上用いる場合のアルキレンオキサイドの付加方法は、ランダム付加、ブロック付加、これらの併用などが挙げられるが、ブロック付加、ランダム付加後ブロック付加が好ましい。
アルキレンオキサイドの付加モル数は、均一付着性の観点から、1〜12モルが好ましく、2〜10モルがより好ましく、3〜8モルがさらに好ましい。
【0073】
C成分の数平均分子量は、200〜2000が好ましく、250〜1800がより好ましく、280〜1500がさらに好ましい。
【0074】
本発明のサイジング剤がポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)を含有する場合、サイジング剤の不揮発分に占めるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)の重量割合は、0.5〜40重量%が好ましく、1〜35重量%がより好ましく、2〜30重量%がさらに好ましい。ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)の重量割合が40重量%超では、サイジング剤が強化繊維上で分離してしまい、接着性が下がることがある。
【0075】
本発明のサイジング剤は、上記の芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂以外のその他樹脂成分(E)をさらに含有してもよい。その他樹脂成分(E)としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂であれば特に限定は無いが、例えばエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂及びフェノール樹脂等が挙げられる。その他樹脂成分(E)は2種以上を併用してもよい。これらの樹脂成分は、マトリックス樹脂との親和性を考慮して、適宜選択される。
【0076】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等を挙げることができる。ここで、ビスフェノール型エポキシ樹脂とは、ビスフェノール化合物の2つのフェノール性水酸基がグリシジル化されたものであり、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型、もしくはこれらビスフェノールのハロゲン、アルキル置換体、水添品等を挙げることができる。また、単量体に限らず、複数の繰り返し単位を有する高分子量体も好適に使用することができる。
【0077】
不飽和ポリエステル樹脂や飽和ポリエステル樹脂としては、多価カルボン酸を含む酸成分と多価アルコールとを反応させて得られるポリエステル樹脂を挙げることができる。多価カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、フタル酸、トリメリット酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、5−スルホイソフタル酸Na等及びこれらの酸無水物等の誘導体等を挙げることができ、これらは2種以上を併用してもよい。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキシド(1〜100モル)付加物、ビスフェノールAプロピレンオキシド(1〜100モル)付加物、キシレングリコール等の芳香族ジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール等の多価アルコールを挙げることができ、これらの2種以上を併用してもよい。不飽和ポリエステル樹脂の具体例としては、例えば、フマル酸又はマレイン酸とビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物との縮合物、フマル酸又はマレイン酸とビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物との縮合物、フマル酸又はマレイン酸とビスフェノールAのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物(エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加は、ランダムでもブロックでもよい)との縮合物等を挙げることができる。飽和ポリエステルの具体例としては、例えば、イソフタル酸とジエチレングリコールとの縮合物、イソフタル酸と5−スルホイソフタル酸Naとジエチレングリコールとの縮合物、イソフタル酸とテレフタル酸と5−スルホイソフタル酸Naとエチレングリコールとジエチレングリコールとの縮合物等を挙げることができる。また、多価カルボン酸のメチルエステル等を用いてエステル交換反応を行い目的とするポリエステル樹脂を得てもよい。
【0078】
ビニルエステル樹脂としては、例えば、前記エポキシ樹脂とα,β−不飽和モノカルボン酸をエステル化させることで得られるエポキシ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。α,β−不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、チグリン酸及び桂皮酸等を挙げることができ、これらの2種以上を併用してもよい。ビニルエステル樹脂の具体例としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(メタ)アクリレート変性物(ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ基と(メタ)アクリル酸のカルボキシル基が反応して得られる末端(メタ)アクリレート変性樹脂等)等を挙げることができる。
【0079】
ポリアミド樹脂としては、アミド結合の繰り返しによって主鎖を形成する樹脂であれば特に限定されず、ポリアミド6(ε−カプロラクタムの開環重合による)、ポリアミド66(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮重合による)、その他主鎖に親水基を導入して水溶性としたポリアミド樹脂等を挙げることができる。
【0080】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンや、エチレン、プロピレン、ブテン、酢酸ビニル等のモノマー類数種から選ばれる共重合体や、その酸変性物等を挙げることができる。
【0081】
ポリウレタン樹脂としては、有機ポリイソシアネート化合物と、芳香族ポリエステルポリオール(B1)、活性水素基を有する3級アミン化合物(B2)及びカルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B3)を必須に含む活性水素基含有化合物と、の反応物である芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂以外であれば特に限定はない。
【0082】
フェノール樹脂としては、フェノール類(フェノール、クレゾール、キシレノール等)とアルデヒド(ホルムアルデヒド等)との縮合反応生成物を挙げることができる。
【0083】
本発明のサイジング剤がその他樹脂成分(E)を含有する場合、サイジング剤の不揮発分に占めるその他樹脂成分(E)の重量割合は、5〜89.5重量%が好ましく、10〜85重量%がより好ましく、15〜80重量%がさらに好ましい。89.5重量%超では、本発明の特徴である優れた接着性や優れたストランド集束性及び優れたチョップドストランド集束性が得られないことがある。
【0084】
本発明のサイジング剤において、サイジング剤の不揮発分を差動型示差熱天秤(TG−DTA)で測定したときの300℃における重量減少率は、15重量%以下が好ましく、10重量%以下がさらに好ましい。300℃における重量減少率が20重量%を超えると、サイジング剤が強化繊維上で熱分解することで、マトリックス樹脂と強化繊維との接着阻害が生じることがある。
【0085】
本発明のサイジング剤は、取扱い時の人体への安全性や、火災等の災害防止、自然環境の汚染防止等の観点から、水を含有してもよい。本発明の効果を損なわない範囲で、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸ブチル、シクロヘキサノン等の有機溶剤を用いてもよい。
【0086】
本発明のサイジング剤において、芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂は水に自己乳化及び/又は乳化分散してなるものである。芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂の平均粒子径は、特に限定はないが、10μm以下が好ましく、0.01〜1μmがより好ましく、0.01〜0.5μmがさらに好ましい。該平均粒子径が10μm超の場合、強化繊維へ均一付着できないばかりか、サイジング剤自体が数日で分離してしまうおそれがあり、保管安定性が悪く実用的でないとなることがある。
なお、本発明でいう平均粒子径とは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製LA−910)で測定された粒度分布より算出された平均値をいう。
【0087】
本発明のサイジング剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記で説明した芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、各種界面活性剤、各種平滑剤、酸化防止剤、難燃剤、抗菌剤、結晶核剤、消泡剤等を挙げることができ、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
界面活性剤は、芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂やその他サイジング剤中に水不溶性又は難溶性である樹脂を含有する場合、乳化剤として使用することによって、水系乳化を効率よく実施することができる。
界面活性剤としては、特に限定されず、非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤及び両性界面活性剤から、公知のものを適宜選択して使用することができる。界面活性剤は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0089】
非イオン系界面活性剤としては、たとえば、アルキレンオキサイド付加非イオン系界面活性剤(高級アルコール、高級脂肪酸、アルキルフェノール、スチレン化フェノール、ベンジルフェノール、ソルビタン、ソルビタンエステル、ヒマシ油、硬化ヒマシ油等にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド(2種以上の併用可)を付加させたもの)、ポリアルキレングリコールに高級脂肪酸等を付加させたもの、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体等を挙げることができる。
アニオン系界面活性剤としては、たとえば、アルキルカルボン酸(塩)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸(塩)、アルキル硫酸エステル(塩)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの硫酸エステル(塩)、アルキルスルホン酸(塩)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルのスルホン酸(塩)、アルキル燐酸エステル(塩)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの燐酸エステル(塩)等を挙げることができる。
【0090】
カチオン系界面活性剤としては、たとえば、第4級アンモニウム塩型カチオン系界面活性剤(ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、オレイルメチルエチルアンモニウムエトサルフェート等)、アミン塩型カチオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルアミン乳酸塩等)等を挙げることができる。
両性界面活性剤としては、たとえば、アミノ酸型両性界面活性剤(ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等)、ベタイン型両性界面活性剤(ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等)等を挙げることができる。
【0091】
本発明のサイジング剤は、界面活性剤の使用を制限した上で、優れたストランド集束性及び均一付着性を発現させることができる。界面活性剤を多量に含むと、サイジング剤の耐熱性の低下を引き起こし、好ましくない。このような観点から、サイジング剤の不揮発分に占める界面活性剤の割合は30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましく、10重量%以下がさらに好ましく、5重量%以下が特に好ましい。
【0092】
本発明のサイジング剤の不揮発分の濃度については、特に限定はなく、水分散体としての安定性や、製品として取り扱いやすい粘度等を考慮して適宜選択されるものである。製品の輸送コスト等を考慮すれば、サイジング剤全体に占める不揮発分の重量割合は、10〜100重量%が好ましく、15〜100重量%がさらに好ましく、20〜100重量%が特に好ましい。
また、サイジング剤全体に占める水と不揮発分の合計の重量割合は、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましく、99重量%以上がさらに好ましく、100重量%が特に好ましい。90重量%未満の場合、すなわち、熱処理時に不揮発分として残存しない前述の有機溶剤やその他低沸点化合物を10重量%以上含有する場合、取扱い時の人体への安全性や、自然環境の汚染防止の観点で好ましくないことがある。
【0093】
なお、上記水分散体や水溶液には、前述の人体安全性や環境汚染防止の観点に加え、水分散体や水溶液の経時増粘・固化防止の観点から、有機溶剤等の水以外の溶媒を含有しないか、含有する場合であってもサイジング剤全体に対して10重量%以下であることが好ましく、8重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることがさらに好ましい。
【0094】
本発明のサイジング剤を水分散体として製造する方法については、特に限定はなく、公知の手法が採用できる。上述のように、芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂製造の際に水分散体とする方法、サイジング剤を構成する各成分を攪拌下の温水中に投入して乳化分散する方法、サイジング剤を構成する各成分を予め乳化分散した乳化分散液を混合する方法、サイジング剤を構成する各成分を混合し、得られた混合物を軟化点以上に加温後、ホモジナイザー、ホモミキサー、ボールミル等を用いて機械せん断力を加えつつ、水を徐々に投入して転相乳化する方法等が挙げられる。
【0095】
〔強化繊維ストランド、強化繊維チョップドストランド及びその製造方法〕
本発明の強化繊維ストランドは、原料強化繊維ストランドに対して、上記の強化繊維用サイジング剤を付着させたものであり、マトリックス樹脂を補強するための強化繊維である。本発明の強化繊維ストランドは、マトリックス樹脂との接着性に優れる。さらに、集束性に優れた強化繊維用サイジング剤が処理されているので、ストランドの取扱性が向上し、操業時に安定したストランド供給性を維持することができる。安定したストランド供給性により、供給量不足に起因する繊維強化複合材料の品質低下を抑制することができる。マトリックス樹脂は、本発明のサイジング剤による接着性向上効果がより高い点から熱可塑性樹脂が好ましい。
【0096】
本発明の強化繊維チョップドストランドは、原料強化繊維ストランドに対して、上記の強化繊維用サイジング剤を付着させた強化繊維ストランドを切断したものであり、マトリックス樹脂を補強するための強化繊維である。強化繊維ストランドの切断方法としては、ロータリー式カッターや、ギロチンカッター等の通常用いられているカッターを適宜用いることができる。強化繊維チョップドストランドの長さとしては、3〜25mmが好ましく、5〜20mmがより好ましく、6〜15mmがさらに好ましい。長さが3mm未満の場合はチョップドストランドの嵩密度が小さくなるため取扱性が低下する場合がある。一方、長さが25mm超の場合は射出成形機や押し出し機への供給安定性が不安定となり、安定した繊維強化複合材料を得ることが困難となる場合がある。
【0097】
本発明の強化繊維チョップドストランドは、マトリックス樹脂との接着性に優れる。さらに、優れた集束性を持つため、チョップドストランドを成形機に供給する際のフリーファイバーや目詰まりの発生を抑制し、マトリックス樹脂と強化繊維が均一に混合された繊維強化複合材料を得ることができる。マトリックス樹脂は、本発明のサイジング剤による接着性向上効果がより高い点から、熱可塑性樹脂が好ましい。
【0098】
原料強化繊維ストランドへのサイジング剤の不揮発分の付着量は適宜選択でき、強化繊維ストランドが所望の機能を有するための必要量とすればよいが、その付着量は原料強化繊維ストランドに対して0.1〜20重量%であることが好ましい。長繊維形態の強化繊維ストランドにおいては、その付着量は原料強化繊維ストランドに対して0.1〜10重量%であることがより好ましく、0.5〜5重量%がさらに好ましい。また、強化繊維チョップドストランドにおいては0.5〜20重量%であることがより好ましく、1〜10重量%がさらに好ましい。
サイジング剤の付着量が少ないと、耐熱性、樹脂含浸性、接着性に関する本発明の効果が得られにくく、また、強化繊維ストランドの集束性が不足し、取扱い性が悪くなることがある。また、サイジング剤の付着量が多過ぎると、強化繊維ストランドが剛直になり過ぎて、かえって取扱い性が悪くなったり、コンポジット成型の際に樹脂含浸性が悪くなったりすることがあり好ましくない。
【0099】
強化繊維ストランドの製造方法は、前述のサイジング剤を含み、不揮発分の重量割合が0.5〜10重量%であり、水と不揮発分の合計の重量割合が90重量%以上である処理液を調製する調製工程と、原料強化繊維ストランドに対して不揮発分の付着量が0.1〜20重量%となるよう、原料強化繊維ストランドに該処理液を付着させる付着工程とを含むものである。
調製工程において、処理液に占める不揮発分の重量割合は、0.5〜10重量%がより好ましく、1〜5重量%がさらに好ましい。水と不揮発分の合計の重量割合は、95重量%以上であることがより好ましく、99重量%以上であることがさらに好ましく、100重量%が特に好ましい。
付着工程において、好ましい不揮発分の付着量については、前段落の通りである。サイジング剤を原料強化繊維ストランドに付着させる方法については、特に限定はないが、サイジング剤をキスローラー法、ローラー浸漬法、スプレー法その他公知の方法で、原料強化繊維ストランドに付着させる方法であればよい。これらの方法のうちでも、ローラー浸漬法が、サイジング剤を原料強化繊維ストランドに均一付着できるので好ましい。
得られた付着物の乾燥方法については、特に限定はなく、例えば、加熱ローラー、熱風、熱板等で加熱乾燥することができる。
【0100】
なお、本発明のサイジング剤の原料強化繊維ストランドへの付着にあたっては、サイジング剤の構成成分全てを混合後に付着させてもよいし、構成成分を別々に二段階以上に分けて付着させてもよい。また、本発明の効果を阻害しない範囲で、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂及び/又は本発明のポリマー成分以外のポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、アクリル系樹脂などの熱可塑性樹脂を原料強化繊維ストランドに付着させてもよい。
【0101】
本発明のサイジング剤を適用し得る(原料)強化繊維ストランドとしては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維などの各種無機繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリアリレート繊維、ポリアセタール繊維、PBO繊維、ポリフェニレンサルフィド繊維、ポリケトン繊維などの各種有機繊維等のストランドが挙げられる。得られる繊維強化複合材料としての物性の観点から、(原料)強化繊維ストランドとしては、炭素繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリアリレート繊維、ポリアセタール繊維、PBO繊維、ポリフェニレンサルフィド繊維及びポリケトン繊維から選ばれる少なくとも1種のストランドが好ましく、炭素繊維ストランドがさらに好ましい。
【0102】
〔繊維強化複合材料〕
本発明の繊維強化複合材料は、マトリックス樹脂と前述の強化繊維ストランドを含むものである。強化繊維ストランドは本発明のサイジング剤により処理されて、サイジング剤が均一に付着しており、強化繊維ストランド及びマトリックス樹脂との親和性が良好となり、接着性に優れた繊維強化複合材料となる。さらに、高温処理時のサイジング剤の熱分解を抑制でき、熱分解に起因したマトリックス樹脂との接着阻害を抑制できる。ここで、マトリックス樹脂とは、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂からなるマトリックス樹脂をいい、1種又は2種以上含んでいてもよい。熱硬化性樹脂としては、特に制限はなく、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ABS樹脂、フェノキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリフェニレンサルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等が挙げられる。これらの中でも本発明のサイジング剤による接着性向上効果がより高い点から熱可塑性樹脂が好ましく、ポリアミド系樹脂がさらに好ましい。ここで、ポリアミド系樹脂とは、二塩基性脂肪酸とジアミン、ω−アミノ酸、ラクタムあるいはこれらの誘導体から合成される、主鎖に複数のアミド基を有する高分子化合物であり、ホモポリマーやコポリマー(共重合体)なども含まれる。また、主鎖や末端に置換基を導入した変性体でもよい。
これらマトリックス樹脂は、強化繊維ストランドとの接着性をさらに向上させるなどの目的で、その一部又は全部が変性したものであっても差し支えない。
【0103】
繊維強化複合材料の製造方法としては、特に限定はなく、チョップドファイバー、長繊維ペレットなどによるコンパウンド射出成型、UDシート、織物シートなどによるプレス成型、その他フィラメントワインディング成型など公知の方法を採用できる。
熱可塑性マトリックス樹脂と強化繊維を混練する際には、熱可塑性マトリックス樹脂が汎用エンジニアプラスチックやスーパーエンジニアプラスチックの様な高融点の場合、融点以上の温度200℃〜400℃で強化繊維と混練し、繊維強化複合材料を製造する。
繊維強化複合材料中の強化繊維ストランド、強化繊維チョップドストランドの含有量についても特に限定はなく、繊維の種類、形態、マトリックス樹脂の種類などにより適宜選択すればよいが、得られる繊維強化複合材料に対して、5〜70重量%が好ましく、20〜60重量%がより好ましい。
【実施例】
【0104】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、ここに記載した実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例に示されるパーセント(%)、部は特に限定しない限り、「重量%」、「重量部」を示す。各特性値の測定は以下に示す方法に基づいて行った。
【0105】
<動的表面張力>
サイジング剤を不揮発分濃度2重量%水溶液になるように水で希釈し、バブルプレッシャー型動的表面張力計(BP−2、KURSS製)を用いて、25℃、気泡発生間隔(バブルプレート)20〜1000msecの範囲で動的表面張力測定を行い、気泡発生間隔(バブルプレート)100msecにおける動的表面張力測定値を読み取った。
【0106】
<重量減少率>
サイジング剤を105℃で熱処理して溶媒等を除去、恒量に達しせしめサイジング剤の不揮発分を得る。得られた不揮発分を重量既知のアルミパンに約4mg採り、重量(W
1)を測定した。アルミパンに入った不揮発分を示差熱天秤TG−8120(株式会社リガク社製)にセットし、空気中25℃から500℃まで昇温速度20℃/分で昇温し、300℃時点における重量(W
2)を測定した。その後重量減少率を次式により算出した。
重量減少率(%)=( (W
1−W
2)/W
1)×100
【0107】
<接着性>
複合材料界面特性評価装置HM410(東栄産業株式会社製)を使用し、マイクロドロップレット法により接着性を評価した。
実施例及び比較例で製造した炭素繊維ストランドより、炭素繊維フィラメントを取り出し、複合材料界面特性評価装置にセッティングする。装置上で溶融したポリアミド樹脂T−663(東洋紡社製)のドロップを炭素繊維フィラメント上に形成させ、室温で十分に冷却し、測定用の試料を得た。再度測定試料を装置にセッティングし、ドロップを装置ブレードで挟み、炭素繊維フィラメントを装置上で0.06mm/分の速度で走行させ、炭素繊維フィラメントからドロップを引き抜く際の最大引き抜き荷重Fを測定した。
次式により界面剪断強度τを算出し、炭素繊維フィラメントとポリアミド系樹脂との接着性を評価した。
界面剪断強度τ(単位:MPa)=F/πdl
(F:最大引き抜き荷重 d:炭素繊維フィラメント直径 l:ドロップの引き抜き方向の粒子径)
【0108】
<風合試験(ストランド集束性)>
サイジング剤未処理炭素繊維ストランド(繊度700tex、フィラメント数12000本)に対して、サイジング剤の不揮発分の付着量が2.0重量%となるよう、サイジング剤を付着させた。得られた付着炭素繊維ストランド(長さ:約50cm)の集束性を、風合い試験機(HANDLE−O−METERHOM−2 大栄科学精器製作所(株)製、スリット幅20mm)で測定した。
なお、測定は10回行い、その平均値が大きいほど、炭素繊維ストランドの集束性が良好と判断した。
(判定基準)
◎:60g以上 炭素繊維ストランドが非常に硬く、炭素繊維ストランドの集束性が非常に良好。
○:60g未満、50g以上 炭素繊維ストランドが硬く、炭素繊維ストランドの集束性が良好。
×:50g未満 炭素繊維ストランドが柔らかく、炭素繊維ストランドの集束性が不良。
【0109】
<チョップドストランド集束性>
サイジング剤未処理炭素繊維ストランド(繊度700tex、フィラメント数12000本)に対して、サイジング剤の不揮発分の付着量が2.0重量%となるよう、サイジング剤を付着させた。得られた付着炭素繊維ストランドをロータリー式カッターによって約6mmの長さに裁断しチョップドストランドを作製した。作製したチョップドストランド50個についてフリーファイバーやほぐれ、割れの発生がないか目視で確認を行い、その発生が見られたチョップドストランドを不良とし、不良の数が少ないほど、チョップドストランドの集束性が良好と判断した。
(判断基準)
◎:不良の数が0個以上、2個以下 炭素繊維チョップドストランドの集束性が非常に良好。
○:不良の数が2個超、10個以下 炭素繊維チョップドストランドの集束性が良好。
×:不良の数が10個超 炭素繊維チョップドストランドの集束性が不良。
【0110】
[ポリエステルポリオールの合成]
(合成例1)
反応器中に窒素ガスを封入下、テレフタル酸605.6部、イソフタル酸600.6部、エチレングリコール256.0部、ネオペンチルグリコール437.4部および触媒としてジブチル錫オキサイド0.3部を仕込み、190〜240℃で10時間エステル化反応を行い、数平均分子量1800、水酸基価62mgKOH/gの芳香族ポリエステルポリオールB1−1を得た。
【0111】
(合成例2〜6)
原料およびその量を表1に示したものに変更した以外は、前記合成例1と同様の方法を用いて、芳香族ポリエステルポリオールB1−2〜B1−4、脂肪族ポリエステルポリオールX−1〜X−2をそれぞれ得た。
【0112】
【表1】
【0113】
[芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂の合成]
(製造例U1)
温度計、撹拌装置、還流冷却管を備えた4ツ口フラスコに、芳香族ポリエステルポリオール(B1)として上記で調製した芳香族ポリエステルポリオールB1−1を169.93部加え、減圧下120−130℃で脱水を行った。次いで50℃まで冷却して、ポリアルキレングリコール(B5)として37.76部のポリエチレングリコール(数平均分子量400)、3官能以上の活性水素基含有化合物(B4)として7.60部のトリメチロールプロパンおよび100部のメチルエチルケトンおよび触媒としてトリエチレンジアミン0.5部を加えた。十分撹拌混合した後、有機ポリイソシアネート化合物(A)として63.52部のヘキサメチレンジイソシアネートを加え、75℃に加温し、2時間反応させて末端イソシアネート基を有するプレポリマー溶液を得た。反応終了後、40℃まで冷却し、カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B3)として7.60部の2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、活性水素基を有する3級アミン化合物(B2)として11.25部のN−メチルジエタノールアミン、その他の活性水素基含有化合物(B6)として2.34部のエチレングリコールを加え、75℃で2時間反応させた。反応終了後、40℃まで冷却し、塩基性成分としてトリエチルアミン5.73部を加えて中和反応後、水1200部を加え水分散体とした。得られた水分散体を65℃で減圧処理してメチルエチルケトンを留去し、水分調整を行い、不揮発分20重量%の芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂U1の水分散体を得た。
【0114】
(製造例U2〜U22)
有機ポリイソシアネート化合物(A)、芳香族ポリエステルポリオール(B1)、活性水素基を有する3級アミン化合物(B2)、カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B3)、3官能以上の活性水素基含有化合物(B4)、ポリアルキレングリコール(B5)、その他の活性水素基含有化合物(B6)、塩基性成分(D)を表2に記載のもの及び重量部に変更した以外は、製造例U1と同様にして、不揮発分20重量%の芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂U2〜U22の水分散体を得た。
【0115】
[比較例用のウレタン樹脂の合成]
(製造例Z1〜Z12)
有機ポリイソシアネート化合物(A)、芳香族ポリエステルポリオール(B1)、活性水素基を有する3級アミン化合物(B2)、カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B3)、3官能以上の活性水素基含有化合物(B4)、ポリアルキレングリコール(B5)、その他の活性水素基含有化合物(B6)、塩基性成分(D)を表3に記載のもの及び重量部に変更する以外は、製造例U1と同様にして、不揮発分20重量%の芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂Z1〜Z5、Z11、Z12、脂肪族ポリエステル系ウレタン樹脂Z6〜Z10の水分散体を得た。なお、芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂Z11、Z12は、活性水素基を有する3級アミン化合物(B2)の代わりに活性水素基を有する1級又は2級アミン化合物を用いたものである。
【0116】
表2、3に、これらウレタン樹脂を構成する有機ポリイソシアネート化合物(A)と活性水素基含有化合物(B)、塩基性成分(D)の重量部を示す。また、以下に表2、3に記載の成分を示す。
【0117】
有機ポリイソシアネート化合物(A)
A−1:ヘキサメチレンジイソシアネート
A−2:イソホロンジイソシアネート
A−3:ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート
A−4:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
活性水素基を有する3級アミン化合物(B2)
B2−1:N−メチルジエタノールアミン
B2−2:N−エチルジエタノールアミン
B2−3:トリエタノールアミン
B2−4:N,N−ジメチルエタノールアミン
B2−5:N,N−ジエチルイソプロパノールアミン
カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B3)
B3−1:2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸
B3−2:2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸
3官能以上の活性水素基含有化合物(B4)
B4−1:トリメチロールプロパン
B4−2:ペンタエリスリトール
ポリアルキレングリコール(B5)
B5−1:ポリエチレングリコール 数平均分子量400
B5−2:ポリプロピレングリコール 数平均分子量600
B5−3:ポリテトラメチレングリコール 数平均分子量1000
その他の活性水素基含有化合物(B6)
B6−1:エチレングリコール
B6−2:1,4−ブタンジオール
塩基性成分(D)
D1:トリエチルアミン
D2:トリエタノールアミン
D3:25%アンモニア水
D4:N,N−ジメチルエタノールアミン
活性水素基を有する1級又は2級アミン化合物(Y)
Y−1:エタノールアミン
Y−2:N−ヒドロキシエチルラウリルアミン
【0118】
【表2】
【0119】
【表3】
【0120】
[その他樹脂成分(E)の水分散体(E1〜E5)の調整]
(エポキシ樹脂水分散体(E1))
JER1001(ジャパンエポキシレジン株式会社製、固状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量450〜500)/JER828(ジャパンエポキシレジン株式会社製、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:184〜194)/エチレンオキサイド150モル付加硬化ヒマシ油エーテル=45/35/20(重量比)よりなる組成物を乳化装置に仕込み、撹拌下水を序々に加え転相乳化させ、不揮発分30重量%のエポキシ樹脂水分散体(E1)を得た。
【0121】
(ビニルエステル樹脂水分散体(E2))
ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物/エチレンオキサイド150モル付加硬化ヒマシ油エーテル=75/25(重量比)よりなる組成物を乳化装置に仕込み、撹拌下水を序々に加え転相乳化させ、不揮発分25重量%の不飽和ポリエステル水分散体(E2)を得た。
【0122】
(飽和ポリエステル樹脂水分散体(E3))
反応器中に窒素ガスを封入下、イソフタル酸166部、ジエチレングリコール127部、5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム10部、酢酸亜鉛0.1部及び三酸化アンチモン0.5部を仕込み、140〜220℃で3時間反応を行った。その後、240〜270℃で減圧下10時間重縮合反応を行った。得られた飽和ポリエステル樹脂160部とエチレングリコールモノブチルエーテル40部を乳化装置に仕込み、150〜170℃で撹拌し、均一化した。続いて撹拌下水800部を徐々に加え、不揮発分20重量%のポリエステル系樹脂水分散体(E3)を得た。
【0123】
(不飽和ポリエステル樹脂水分散体(E4))
反応器中に窒素ガスを封入下、無水マレイン酸100部とビスフェノールAのエチレンオキサイド4モル付加物410部を140℃で5時間反応させて、酸価4の不飽和ポリエステルを得た。次に、得られた不飽和ポリエステル/エチレンオキサイド150モル付加硬化ヒマシ油エーテル=80/20(重量比)よりなる組成物を乳化装置に仕込み、撹拌下水を序々に加え転相乳化させ、不揮発分20重量%の不飽和ポリエステル樹脂水分散体(E4)を得た。
【0124】
(ポリアミド樹脂水分散体(E5))
反応器中に窒素ガスを封入下、ポリエーテルジアミン(分子量500)140部、アジピン酸31部、ε−カプロラクタム45部、及びp−トルエンスルホン酸0.5部を仕込み、撹拌下220℃で13時間重縮合を行い、ポリアミド樹脂を得た。得られたポリアミド樹脂150部を乳化装置に仕込み、攪拌下水850部を徐々に加え、不揮発分15%のポリアミド樹脂水分散体(E5)を得た。
【0125】
(実施例1〜42、比較例1〜20)
上記で調製した芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂U1〜U22、芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂Z1〜Z5、Z11、Z12、脂肪族ポリエステル系ウレタン樹脂Z6〜Z10及びその他樹脂成分(E)の水分散体並びに以下に示す成分を用いて、表4〜7に示す不揮発分組成になるよう混合撹拌し、水で希釈して不揮発分濃度が10重量%のサイジング剤を調整した。なお、表4〜7の数値はサイジング剤の不揮発分に占める各成分(水分散体の場合は、その不揮発分)の重量割合を示す。例えば、表4のU1の数値は、サイジング剤の不揮発分に占める芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂U1の水分散体の不揮発分の重量割合を示す。得られたサイジング剤を用いて、前述の方法により、風合試験、ストランド集束性、チョップドストランド集束性、重量減少率、動的表面張力を評価した。その結果を表4〜7に示す。
【0126】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)
C1:2−エチルヘキシルアルコールのEO4モル付加物
C2:2−エチルヘキシルアルコールのPO6モル付加物
C3:炭素数12〜14第2級アルコールのEO7モル付加物
C4:トリデシルアルコールのEO9モル付加物
【0127】
次いで、サイジング剤未処理炭素繊維ストランド(繊度700tex、フィラメント数12000本)を調製したサイジング剤に浸漬・含浸させた後、105℃で15分間熱風乾燥させて、サイジング剤の不揮発分の付着量が炭素繊維ストランドに対して5重量%であるサイジング剤処理炭素繊維ストランドを得た。本ストランドについて、前述の方法によりマトリックス樹脂接着性を評価した。これらの結果を表4、5に示した。
【0128】
【表4】
【0129】
【表5】
【0130】
表4、5から分かるように、実施例1〜35では、サイジング剤中のウレタン樹脂が芳香族ポリエステルポリオール(B1)に由来する構成単位と、活性水素基を有する3級アミン化合物(B2)に由来する構成単位と、カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B3)に由来する構成単位とを有しているので、優れたストランド集束性と優れたチョップドストランド集束性及びマトリックス樹脂との優れた接着性を有する。
一方、サイジング剤中のウレタン樹脂が、カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B3)に由来する構成単位を有しない場合(比較例1、2)、活性水素基を有する3級アミン化合物(B2)に由来する構成単位を有しない場合(比較例3、4)、活性水素基を有する3級アミン化合物(B2)に由来する構成単位とカルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B3)に由来する構成単位を共に有しない場合(比較例5〜7)、ウレタン樹脂が芳香族ポリエステルポリオール(B1)に由来する構成単位の代わりに脂肪族ポリエステルポリオール(X)に由来する構成単位を有する場合(比較例8〜12)、ウレタン樹脂が活性水素基を有する3級アミン化合物(B2)に由来する構成単位の代わりに活性水素基を有する1級又は2級アミン化合物(Y)に由来する構成単位を有する場合(比較例13〜15)には、本発明の課題のいずれかが解決できない。
【0131】
【表6】
【0132】
【表7】
【0133】
表6、7から分かるように、実施例36〜42では、サイジング剤が、上記の芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂とその他樹脂成分(E)の水分散体及び/又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルより構成されているので、優れたストランド集束性と優れたチョップドストランド集束性及びマトリックス樹脂との優れた接着性を有する。
一方、比較例16〜20ではサイジング剤がその他樹脂成分(E)の水分散体であり、上記の芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂を含まないため、本発明の課題のいずれかが解決できない。