(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6535162
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】電磁開閉弁及びこれを用いた潤滑ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20190617BHJP
F16K 27/02 20060101ALI20190617BHJP
【FI】
F16K31/06 305V
F16K31/06 305L
F16K31/06 305K
F16K27/02
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-218126(P2014-218126)
(22)【出願日】2014年10月27日
(65)【公開番号】特開2016-84873(P2016-84873A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】591231926
【氏名又は名称】リューベ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093148
【弁理士】
【氏名又は名称】丸岡 裕作
(72)【発明者】
【氏名】大関 昇
【審査官】
所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】
実開平02−050582(JP,U)
【文献】
特許第4605933(JP,B2)
【文献】
特開2000−055211(JP,A)
【文献】
実開昭59−025762(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06
F16K 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入する流入ポート及び流体が流出する流出ポートを有した流路を有した本体と、該本体に進退動可能に設けられ進出時に上記流路を閉にし後退時に該流路を開にする弁体と、該弁体を進退動させるためのソレノイドアクチュエータとを備えた電磁開閉弁において、
上記本体内であって上記流路の途中に空間を設け、上記流路を上記空間より流入ポート側の流入側流路と上記空間より流出ポート側の流出側流路とを備えて構成し、上記弁体を、上記空間内に収容され該弁体の進出時に上記流出側流路の空間に臨む流出開口の開口縁に外側面が当接して該流出開口を塞ぐ弁部と、先端に上記弁部を支持し上記弁体の進退動方向に沿う軸線を有したロッドとを備えて構成し、上記本体に上記空間に連通し上記弁体のロッドを摺動可能に支持する摺動孔を有した弁体支持部を設け、上記流出開口の開口縁で形成される開口面積をSaとし、上記摺動孔を摺動する上記ロッドの横断面積をSbとしたとき、Sa≒Sbにし、
上記本体をブロック状に形成し、上記弁体のロッドの後端部を上記本体に設けた弁体支持部から後側に突出させ、該ロッドの後端部に該ロッドより大径のリング状部を設け、上記弁体支持部とリング状部との間に上記ロッドを後退させるコイルスプリングを圧縮状態で介装し、上記ソレノイドアクチュエータを、進退動可能なプランジャと、該プランジャを通電時に進出させ非通電時に後退可能にする電磁駆動部とを備えて構成し、該ソレノイドアクチュエータを、そのプランジャを上記弁体のロッドと同軸上に位置させ、上記電磁駆動部への通電時に上記プランジャを進出させて上記コイルスプリングの付勢力に抗して上記ロッドを進出させ上記電磁駆動部への非通電時に上記コイルスプリングの付勢力により上記ロッド及びプランジャを後退させるように、上記本体に取付け部材を介して取付けたことを特徴とする電磁開閉弁。
【請求項2】
上記弁体の弁部を、上記ロッドの軸線と同軸の軸線を有した円錐形もしくは半球状に形成し、上記ロッドの横断面を円形に形成し、上記流出側流路の流出開口の開口縁を円形に形成したことを特徴とする請求項1記載の電磁開閉弁。
【請求項3】
上記流出側流路の流出開口の開口縁の直径をDaとし、上記ロッドの直径をDbとしたとき、Da=Db±0.2mmに設定したことを特徴とする請求項2記載の電磁開閉弁。
【請求項4】
上記流出側流路の流出開口の開口縁よりも上記空間側に、上記弁体の弁部の外側面に非接触で対峙し、テーパ状に拡開する拡開部を形成したことを特徴とする請求項2または3記載の電磁開閉弁。
【請求項5】
上記ロッドの後端と上記プランジャの先端とを離間させ、該ロッドの後端側と該プランジャの先端側との間に該プランジャの進出を上記ロッドに伝達し該ロッドの後退を上記プランジャに伝達する別のコイルスプリングを設けたことを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載の電磁開閉弁。
【請求項6】
潤滑油の加圧及び脱圧により作動させられて該潤滑油を吐出するバルブが配管される脱圧管路に潤滑油を送給する潤滑ポンプ装置であって、
潤滑油を貯留する潤滑油貯留部から潤滑油を吸引し逆止弁を通して送給口から送出するポンプと、該ポンプに一体に付設されて接続され該ポンプからの潤滑油を送給可能にするとともに上記脱圧管路を脱圧可能にする電磁開閉弁とを備え、
該電磁開閉弁を、上記逆止弁より送給口側に接続され潤滑油が流入する流入ポート及び上記逆止弁よりも後流側であって上記潤滑油貯留部に連通して接続され潤滑油が流出する流出ポートを有した流路を有した本体と、該本体に進退動可能に設けられ進出時に上記流路を閉にし後退時に該流路を開にする弁体と、該弁体を進退動させるためのソレノイドアクチュエータとを備えて構成した潤滑ポンプ装置において、
上記電磁開閉弁を、上記請求項1乃至5何れかに記載の電磁開閉弁で構成したことを特徴とする潤滑ポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流路を開閉する所謂ポペット型の電磁開閉弁及びこれを用いた流体としてのグリスやオイル等の潤滑油を送給する潤滑ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、
図6に示すように、流体としてのグリスやオイル等の潤滑油を送給する潤滑ポンプ装置Jaとしては、例えば、樹脂あるいは金属の射出成形機等の機械に設置されたグリス潤滑システムに用いられるものがある。この潤滑システムにおいては、潤滑油の加圧及び脱圧によって往復動させられて潤滑油を吐出する単一のピストン(図示せず)及びこのピストンに対応した1つの吐出口を備え1ショットの吐出量が0.03ml〜1.5ml(0.03cc〜1.5cc)程度の周知の単一定量バルブVtを用いて該当する複数カ所に配管している。この単一定量バルブVtは、潤滑油の加圧及び脱圧により作動させられて潤滑油を吐出する関係上、脱圧が必要なので、脱圧を行なう脱圧管路Ptに設けられている。この脱圧管路Ptに潤滑油を送給する潤滑ポンプ装置Jaは、例えば、潤滑油貯留部101に貯留された潤滑油を脱圧管路Ptに送給する電動のポンプ100と、このポンプ100に付設されポンプ100の停止時に脱圧管路Ptの脱圧を強制的に行なうスプール型の電磁開閉弁103とを備えて構成されている(例えば、特許第4605933号公報参照)。
【0003】
ところで、この電磁開閉弁103は、スプール型なので、スプールとスプールの摺動する摺動孔とのクリアランスを数ミクロンに設定しなければならないので、加工精度が要求され、それだけコスト高になっているという問題があった。そのため、この電磁開閉弁103が付設された潤滑ポンプ装置Jaもそれだけコスト高になる。
これを解消するために、それほど加工精度が要求されない所謂ポペット型の電磁開閉弁を用いることが考えられる。
図7に示すように、従来、このポペット型の電磁開閉弁110としては、例えば、流体が流入する流入ポート111及び流体が流出する流出ポート112を有した流路113を有した本体114と、本体114内に進退動可能に設けられ進出時に先端の弁部115aで流路113を閉にし後退時に流路113を開にする弁体115と、弁体115を進出させるコイルスプリング116と、コイルスプリング116の付勢力に抗して弁体115を後退させるソレノイドアクチュエータ117とを備えている。即ち、ソレノイドアクチュエータ117がオフのときは、スプリング116の付勢力により弁体115を押圧して流路113の流出側の流出開口118を閉じ、ソレノイドアクチュエータ116がオンのときは、スプリング116の付勢力に抗して弁体115を引っ張り、流路113の流出側の流出開口118を開くようにしている(例えば、実用新案登録第3076444号公報等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4605933号公報
【特許文献2】実用新案登録第3076444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のポペット型電磁開閉弁110において、弁体115は、その進出時に、スプリング116の付勢力により弁体115が押圧され、弁体115の弁部115aの外側面が流路の流出開口118の開口縁に当接してこの流出開口118を塞いでいるが、流出開口118の開口縁で形成される開口面積Saよりも、本体114内を摺動する弁体115のロッドの横断面積Sbが大きいので、弁体115に対しては流体による弁体115を押し戻す力が生じ、それだけ、スプリング116の付勢力を大きなものにしなければならないという問題があり、また、これにより、スプリング116の付勢力に抗して弁体115を引っ張るソレノイドアクチュエータ117の力も大きくしなければならないので、その分、コスト高になるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、ソレノイドアクチュエータの力を可能な限り最小限の力にして弁体を開閉できるようにし、コストダウンを図るようにした電磁開閉弁、及び、これを用いた潤滑ポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するため、本発明の電磁開閉弁は、流体が流入する流入ポート及び流体が流出する流出ポートを有した流路を有した本体と、該本体に進退動可能に設けられ進出時に上記流路を閉にし後退時に該流路を開にする弁体と、該弁体を進退動させるためのソレノイドアクチュエータとを備えた電磁開閉弁において、
上記本体内であって上記流路の途中に空間を設け、上記流路を上記空間より流入ポート側の流入側流路と上記空間より流出ポート側の流出側流路とを備えて構成し、上記弁体を、上記空間内に収容され該弁体の進出時に上記流出側流路の空間に臨む流出開口の開口縁に外側面が当接して該流出開口を塞ぐ弁部と、先端に上記弁部を支持し上記弁体の進退動方向に沿う軸線を有したロッドとを備えて構成し、上記本体に上記空間に連通し上記弁体のロッドを摺動可能に支持する摺動孔を有した弁体支持部を設け、上記流出開口の開口縁で形成される開口面積をSaとし、上記摺動孔を摺動する上記ロッドの横断面積をSbとしたとき、Sa≒Sbにした構成としている。Sa=Sbが望ましいが、製造誤差に起因する許容範囲(交差)を考慮し、Sa=Sb±1.0mm
2とすることができる。
また、本構成においては、ソレノイドアクチュエータに対し通電して弁体を進出させる一方、非通電にして弁体を後退させるようにしても良く、あるいは、ソレノイドアクチュエータに対し非通電にして弁体を進出させる一方、通電して弁体を後退させるようにしても良く、いずれの態様も含む。
【0008】
本電磁開閉弁は、ポペット型になるので、スプール弁に比較してそれほど加工精度が要求されないこともあり、この点で、コストダウンを図ることができる。そして、本電磁開閉弁によれば、流体の流れを停止するときは、ソレノイドアクチュエータの動作に基づいて弁体を進出させ流路の流出側の流出開口を閉じる。この場合、流出開口の開口縁で形成される開口面積Saと、摺動孔を摺動するロッドの横断面積Sbを、Sa≒Sbにしているので、弁体に対して流出開口を開く方向の流体の力がほとんど作用しなくなることから、ソレノイドアクチュエータの力を可能な限り最小限の力にして弁体を開閉できるようになり、より一層コストダウンを図ることができる。また、流体を流すときは、ソレノイドアクチュエータの動作に基づいて弁体を後退させ、流路を開にする。
【0009】
そして、必要に応じ、上記弁体の弁部を、上記ロッドの軸線と同軸の軸線を有した円錐形もしくは半球状に形成し、上記ロッドの横断面を円形に形成し、上記流出側流路の流出開口の開口縁を円形に形成した構成としている。円形に形成したので、設計が容易で製造も容易になる。
【0010】
この場合、上記流出側流路の流出開口の開口縁の直径をDaとし、上記ロッドの直径をDbとしたとき、Da=Db±0.2mmに設定した構成としている。これにより、設計が容易になり、本発明の作用,効果を確実に得ることができる。
【0011】
また、必要に応じ、上記流出側流路の流出開口の開口縁よりも上記空間側に、上記弁体の弁部の外側面に非接触で対峙し、テーパ状に拡開する拡開部を形成した構成としている。これにより、弁体を後退させ流出開口を開にした際、拡開部により流体を流出開口に導き易くすることができ、流体の流出を確実に行うことができる。一方、弁体を進出させ流路の流出側の流出開口を閉じる際には、弁体の多少のぐらつきがあっても拡開部により自己求心的に弁体をガイドできるので、閉塞を確実に行うことができる。
【0012】
更に、必要に応じ、上記本体をブロック状に形成し、上記弁体のロッドの後端部を上記本体に設けた弁体支持部から後側に突出させ、該ロッドの後端部に該ロッドより大径のリング状部を設け、上記弁体支持部とリング状部との間に上記ロッドを後退させるコイルスプリングを圧縮状態で介装し、上記ソレノイドアクチュエータを、進退動可能なプランジャと、該プランジャを通電時に進出させ非通電時に後退可能にする電磁駆動部とを備えて構成し、該ソレノイドアクチュエータを、そのプランジャを上記弁体のロッドと同軸上に位置させ、上記電磁駆動部への通電時に上記プランジャを進出させて上記コイルスプリングの付勢力に抗して上記ロッドを進出させ上記電磁駆動部への非通電時に上記コイルスプリングの付勢力により上記ロッド及びプランジャを後退させるように、上記本体に取付け部材を介して取付けた構成としている。
【0013】
この構成においては、流体の流れを停止するときは、ソレノイドアクチュエータの電磁駆動部に通電する。これにより、プランジャが進出し、コイルスプリングの付勢力に抗してロッドが進出させられ、弁部は流路の流出側の流出開口を閉にする。この場合、流出開口の開口縁で形成される開口面積Saと、摺動孔を摺動するロッドの横断面積Sbを、Sa≒Sbにしているので、弁体に対して流出開口を開く方向の流体の力がほとんど作用しなくなることから、コイルスプリング及びソレノイドアクチュエータの力を可能な限り最小限の力にして弁体を開閉できるようになる。また、流体を流すときは、ソレノイドアクチュエータの電磁駆動部を非通電にする。これにより、コイルスプリングの付勢力によりロッド及びプランジャが後退し、弁部は流路の流出側の流出開口を開にする。
【0014】
即ち、Sa<Sbのときは、弁体に流体による戻す力が作用するので、押す力の強いソレノイドアクチュエータが必要になり、一方、Sa>Sbのときは、弁体に流体による押す力が作用するので、戻す力の強いコイルスプリングが必要になるとともに、この付勢力に抗するソレノイドアクチュエータの力も強くしなければならない。しかしながら、本発明では、Sa≒Sbにしているので、弁体に対して流出開口を開く方向の流体の力がほとんど作用しなくなることから、コイルスプリング及びソレノイドアクチュエータの力を可能な限り最小限の力にして弁体を開閉できるようになるのである。
【0015】
更にまた、必要に応じ、上記ロッドの後端と上記プランジャの先端とを離間させ、該ロッドの後端側と該プランジャの先端側との間に該プランジャの進出を上記ロッドに伝達するとともに該ロッドの後退を上記プランジャに伝達する別のコイルスプリングを設けた構成としている。ロッドの後端とプランジャの先端とを離間させ別のコイルスプリングで連携させたので、プランジャの軸線とロッドの軸線が多少ずれていても、その誤差がコイルスプリングで吸収されることから、プランジャの進退動及びロッドの進退動を円滑に行わせることができる。
【0016】
また、上記目的を達成するため、本発明の潤滑ポンプ装置は、潤滑油の加圧及び脱圧により作動させられて該潤滑油を吐出するバルブが配管される脱圧管路に潤滑油を送給する潤滑ポンプ装置であって、潤滑油を貯留する潤滑油貯留部から潤滑油を吸引し逆止弁を通して送給口から送出するポンプと、該ポンプに一体に付設されて接続され該ポンプからの潤滑油を送給可能にするとともに上記脱圧管路を脱圧可能にする電磁開閉弁とを備え、
該電磁開閉弁を、上記逆止弁より送給口側に接続され潤滑油が流入する流入ポート及び上記逆止弁よりも後流側であって上記潤滑油貯留部に連通して接続され潤滑油が流出する流出ポートを有した流路を有した本体と、該本体に進退動可能に設けられ進出時に上記流路を閉にし後退時に該流路を開にする弁体と、該弁体を進退動させるソレノイドアクチュエータとを備えて構成した潤滑ポンプ装置において、これに用いる電磁開閉弁を、上記の電磁開閉弁で構成している。
【0017】
これにより、電磁開閉弁がポンプに一体に付設されるので、電磁開閉弁を別途設ける場合に比較して、コンパクトで取扱も容易になり、また、配管作業も簡単にでき、設置作業効率を向上させることができる。そして、脱圧管路で潤滑を行なう際には、電磁開閉弁を閉にし、ポンプを駆動する。これにより、ポンプからの潤滑油が脱圧管路に送給されて加圧されバルブから潤滑油が吐出される。その後、ポンプを停止するとともに電磁開閉弁を開にする。これにより、脱圧管路内の潤滑油が、電磁開閉弁を通って排出され、脱圧が行なわれ、バルブが元位置に復帰して次に備える。電磁開閉弁の作用,効果は上記と同様である。この結果、潤滑ポンプ装置においてもコストダウンを図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電磁開閉弁は、ポペット型になるので、スプール弁に比較してそれほど加工精度が要求されないこともあり、この点で、コストダウンを図ることができる。そして、電磁開閉弁によれば、流体の流れを停止するときは、ソレノイドアクチュエータの動作に基づいて弁体を進出させ流路の流出側の流出開口を閉じる。この場合、流出開口の開口縁で形成される開口面積Saと、摺動孔を摺動するロッドの横断面積Sbを、Sa≒Sbにしているので、弁体に対して流出開口を開く方向の流体の力がほとんど作用しなくなることから、ソレノイドアクチュエータの力を可能な限り最小限の力にして弁体を開閉できるようになり、より一層コストダウンを図ることができる。また、流体を流すときは、ソレノイドアクチュエータの動作に基づいて弁体を後退させ、流路を開にする。この結果、この電磁開閉弁を用いた潤滑ポンプ装置においても、コストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係る電磁開閉弁を用いた潤滑ポンプ装置を示す分解斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る電磁開閉弁を用いた潤滑ポンプ装置を示す部分側面断面である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る電磁開閉弁を示し、(a)は
図1中A−A線底面断面図、(b)は
図1中B−B線側面断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る電磁開閉弁を示し、(a)は弁体の閉時の状態を示す要部拡大断面図、(b)は弁体の開時の状態を示す要部拡大断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る電磁開閉弁において、流出開口の開口縁で形成される開口面積Saと弁体のロッドの横断面積Sbとの関係を示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る電磁開閉弁を用いた潤滑ポンプ装置が適用可能な潤滑システムを従来の潤滑ポンプ装置とともに示す図である。
【
図7】従来の電磁開閉弁の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係る電磁開閉弁及びこの電磁開閉弁が備えられグリスからなる潤滑油を送給する潤滑ポンプ装置について詳細に説明する。
図1及び
図2には、本発明の実施の形態に係る電磁開閉弁Sを用いた潤滑ポンプ装置Jを示している。潤滑ポンプ装置Jは、
図6でも示したように、潤滑油の加圧及び脱圧により作動させられて該潤滑油を吐出するバルブVtが配管される脱圧管路Ptに潤滑油を送給するものである。バルブVtは、潤滑油の加圧及び脱圧によって往復動させられて潤滑油を吐出する単一のピストン(図示せず)及びこのピストンに対応した1つの吐出口を備え1ショットの吐出量が0.03ml〜1.5ml程度の周知の単一定量バルブである。
【0021】
潤滑ポンプ装置Jは、
図1及び
図2に示すように、潤滑油を貯留する潤滑油貯留部2から潤滑油を吸引して送出するプランジャ型のポンプ1と、このポンプ1に一体に付設されて接続されポンプ1からの潤滑油を送給可能にするとともに脱圧管路を脱圧可能にする電磁開閉弁Sとを備えて構成されている。ポンプ1は、駆動モータ3によってカム機構4を介して往復駆動されるピストン5及びシリンダ6を備え、ピストン5によって吐出される潤滑油を逆止弁7を通して送給口8から送給する。送給口8は、ポンプ1の前面に設けられている。また、ポンプ1の上側に潤滑油貯留部2が設けられ、下側に電磁開閉弁Sの取付部10が形成されている。取付部10の下面には逆止弁7より送給口8側において下方に開放する開放口11が形成され、潤滑油貯留部2がわに連通して開放する戻り口(図示せず)が露出して設けられている。潤滑油貯留部2は、カップ状のカバーに覆われており内部にグリスからなる潤滑油のカートリッジ(図示せず)が収納され、ポンプ1のカートリッジ取付部12に取付けられている。
【0022】
電磁開閉弁Sは、
図1乃至
図5に示すように、矩形ブロック状の金属製の本体20を備えている。本体20は、ポンプ1の下側の取付部10に4つのボルト21で固定されている。本体20は、ポンプ1の逆止弁7より送給口8側の開放口11に接続され潤滑油が流入する流入ポート22及び逆止弁7よりも後流側であって潤滑油貯留部2に連通する戻り口に接続され潤滑油が潤滑油貯留部2に流出する流出ポート23を有した流路24を有している。また、電磁開閉弁Sは、本体20に進退動可能に設けられ進出時に流路24を閉にし後退時に流路24を開にする弁体30と、弁体30を進退動させるためのソレノイドアクチュエータ50とを備えて構成されている。
【0023】
詳しくは、本体20内において、流路24の途中には空間25が設けられ、流路24を空間25より流入ポート22側の流入側流路24aと空間25より流出ポート23側の流出側流路24bとを備えて構成している。弁体30は、金属製であり、空間25内に収容され弁体30の進出時に流出側流路24bの空間25に臨む流出開口26の開口縁に外側面が当接して流出開口26を塞ぐ弁部31と、先端に弁部31を支持し弁体30の進退動方向に沿う軸線を有したロッド32とを備えて構成されている。弁体30の弁部31は、ロッド32の軸線と同軸の軸線を有した円錐形もしくは半球状(実施の形態では円錐状)に形成されており、
図5に示すように、ロッド32はその横断面32aが円形に形成され、流出側流路24bの流出開口26の開口縁も円形に形成されている。円形に形成したので、設計が容易で製造も容易になる。また、流出側流路24bの流出開口26の開口縁よりも空間25側には、弁体30の弁部31の外側面に非接触で対峙し、テーパ状に拡開する拡開部27が形成されている。
【0024】
実施の形態では、
図5に示すように、流出側流路24bの流出開口26の開口縁の直径をDaとし、ロッド32の直径をDbとしたとき、Da=Db±0.2mmに設定されている。実施の形態では、Da=3.0mm±0.1mm、Db=3.0mm±0.1mmにしている。即ち、流出開口26の開口縁で形成される開口面積をSaとし、後述の弁体支持部40の摺動孔41を摺動するロッド32の横断面積をSbとしたとき、Sa≒Sbにしている。Sa=Sbが望ましいが、製造誤差に起因する許容範囲(交差)を考慮し、Sa=Sb±1.0mm
2にしている。実施の形態では、Sa=7.07mm
2±0.48mm
2、Sb=7.07mm
2±0.48mm
2にしている。
【0025】
また、本体20には、空間25に連通し弁体30のロッド32を摺動可能に支持する摺動孔41を有した弁体支持部40が設けられている。弁体支持部40は、
図4に示すように、本体20の穴42に嵌挿されており、所定間隔離間して設けられロッド32のガイドもする摺動孔41が形成された一対のガイド部材43と、ガイド部材43間に装着され、ロッド32に弾接してシールするV型パッキン44とを備えている。45は弁体支持部40と本体20とをシールするO−リングである。弁体支持部40の外側には、リング状の突出部46が一体形成されており、突出部46より内側に後述の第1コイルスプリング48が遊嵌される凹所47が形成されている。
【0026】
更に、弁体30のロッド32の後端部33は、本体20に設けた弁体支持部40から後側に突出させられており、このロッド32の後端部33にはロッド32より大径のE−リングからなるリング状部34が設けられている。そして、弁体支持部40の凹所47の底部47aとリング状部34との間には、ロッド32を後退させる第1コイルスプリング48が圧縮状態で介装されている。
【0027】
また、ソレノイドアクチュエータ50は、進退動可能なプランジャ51と、プランジャ51を通電時に進出させ非通電時に後退可能にする電磁駆動部52とを備えて構成されている。このソレノイドアクチュエータ50は、そのプランジャ51が弁体30のロッド32と同軸上に位置させられ、電磁駆動部52への通電時にプランジャ51を進出させて第1コイルスプリング48の付勢力に抗してロッド32を進出させ電磁駆動部52への非通電時に第1コイルスプリング48の付勢力によりロッド32及びプランジャ51を後退させるように、本体20に取付け部材53を介して取付けられている。取付け部材53は、弁体支持部40の突出部46を押えており、弁体支持部40の抜け止めをしている。また、ロッド32の後端とプランジャ51の先端とは離間させられており、ロッド32の後端側とプランジャ51の先端側との間には、プランジャ51の進出をロッド32に伝達し、ロッド32の後退をプランジャ51に伝達する別の第2コイルスプリング54が設けられている。
【0028】
従って、この潤滑ポンプ装置Jにより、脱圧管路Ptで潤滑を行うときは、以下のようになる。
先ず、脱圧管路Ptに潤滑油を送給する際には、電磁開閉弁Sを閉にし、ポンプ1を駆動する。これにより、ポンプ1からの潤滑油が脱圧管路Ptに送給されて加圧されバルブVtから潤滑油が吐出される。詳しくは、電磁開閉弁Sにおいては、
図4(a)に示すように、ソレノイドアクチュエータ50の電磁駆動部52に通電する。これにより、プランジャ51が進出し、第1コイルスプリング48の付勢力に抗してロッド32が進出させられ、弁部31は流路24の流出側の流出開口26を閉にする。この場合、電磁開閉弁Sにおいては、流出開口26の開口縁よりも空間25側に、テーパ状に拡開する拡開部27が形成されているので、弁体30の多少のぐらつきがあっても拡開部27により自己求心的に弁体30をガイドできるので、閉塞を確実に行うことができる。そのため、ポンプ1からの潤滑油は電磁開閉弁S側に至ることなく、送給口8から送給される。この状態においては、流出開口26の開口縁で形成される開口面積Saと、摺動孔41を摺動するロッド32の横断面積Sbを、Sa≒Sbにしているので、弁体30に対して流出開口26を開く方向の流体の力がほとんど作用しなくなることから、第1コイルスプリング48及びソレノイドアクチュエータ50の力を可能な限り最小限の力にして弁体30を開閉できるようになる。
【0029】
その後、バルブVtからの潤滑油の吐出が終わった後、適宜のタイミングでポンプ1を停止するとともに電磁開閉弁Sを開にする。これにより、脱圧管路Pt内の潤滑油が、電磁開閉弁Sを通って排出され、脱圧が行なわれ、バルブVtが元位置に復帰して次に備える。詳しくは、電磁開閉弁Sにおいて、
図4(b)に示すように、ソレノイドアクチュエータ50の電磁駆動部52を非通電にする。これにより、第1コイルスプリング48の付勢力によりロッド32及びプランジャ51が後退し、弁部31は流路24の流出側の流出開口26を開にする。そのため、ポンプ1の逆止弁7により、脱圧管路Ptに封じ込められていた潤滑油が、管内圧力の分、流入側流路24a,空間25及び流出側流路24bを通って、潤滑油貯留部2に戻され、脱圧される。この場合、電磁開閉弁Sにおいては、流出開口26の開口縁よりも空間25側に、テーパ状に拡開する拡開部27が形成されているので、拡開部27により流体を流出開口26に導き易くすることができ、流体の流出を確実に行うことができる。
【0030】
即ち、Sa<Sbのときは、弁体30に流体による戻す力が作用するので、押す力の強いソレノイドアクチュエータ50が必要になり、一方、Sa>Sbのときは、弁体30に流体による押す力が作用するので、戻す力の強い第1コイルスプリング48が必要になるとともに、この付勢力に抗するソレノイドアクチュエータ50の力も強くしなければならない。しかしながら、実施の形態では、Sa≒Sbにしているので、弁体30に対して流出開口26を開く方向の流体の力がほとんど作用しなくなることから、第1コイルスプリング48及びソレノイドアクチュエータ50の力を可能な限り最小限の力にして弁体30を開閉できるようになるのである。
【0031】
また、電磁開閉弁Sにおいて、ロッド32の後端とプランジャ51の先端とを離間させ、ロッド32の後端側とプランジャ51の先端側との間に、プランジャ51の進出をロッド32に伝達するとともにロッド32の後退をプランジャ51に伝達する別の第2コイルスプリング54を設けたので、プランジャ51の軸線とロッド32の軸線が多少ずれていても、その誤差が第2コイルスプリング54で吸収されることから、プランジャ51の進退動及びロッド32の進退動を円滑に行わせることができる。
【0032】
尚、上記実施の形態において、電磁開閉弁Sの弁体30の駆動において、ソレノイドアクチュエータ50を通電により進出させ、非通電時に第1コイルスプリング48で後退させるようにしたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、コイルスプリングで進出させソレノイドアクチュエータで後退させるように構成しても良く、また、プランジャを強制的に進退動させるソレノイドアクチュエータを用いて弁体30を進退動させるようにしても良く、適宜変更して差支えない。また、第2コイルスプリング54を挿入したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、これを用いることなくロッド32とプランジャ51を連携させるようにし、あるいは、ロッド32自体をプランジャ51で構成するようにしても良く、適宜変更して差支えない。更に、本実施の形態においては、電磁開閉弁Sを、潤滑ポンプ装置Jに用いた例で説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、単独で用いるように構成してもよいことは勿論である。また、取り扱う流体もグリスのような潤滑油に限らず、どのような流体にも適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0033】
S 電磁開閉弁
J 潤滑ポンプ装置
Vt バルブ
Pt 脱圧管路
1 ポンプ
2 潤滑油貯留部
7 逆止弁
8 送給口
10 取付部
11 開放口
20 本体
22 流入ポート
23 流出ポート
24 流路
24a 流入側流路
24b 流出側流路
25 空間
26 流出開口
27 拡開部
30 弁体
31 弁部
32 ロッド
33 後端部
34 リング状部
Da 流出開口26の開口縁の直径
Db ロッド32の直径
Sa 流出開口26の開口縁で形成される開口面積
Sb ロッド32の横断面積
40 弁体支持部
41 摺動孔
46 突出部
47 凹所
48 第1コイルスプリング
50 ソレノイドアクチュエータ
51 プランジャ
52 電磁駆動部
53 取付け部材
54 第2コイルスプリング