特許第6535185号(P6535185)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6535185
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】湿度センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/22 20060101AFI20190617BHJP
【FI】
   G01N27/22 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-42467(P2015-42467)
(22)【出願日】2015年3月4日
(65)【公開番号】特開2016-161486(P2016-161486A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2018年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】二木 俊郎
【審査官】 小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−192622(JP,A)
【文献】 特開2014−167445(JP,A)
【文献】 特開平02−010146(JP,A)
【文献】 特開平03−206667(JP,A)
【文献】 特開2011−165191(JP,A)
【文献】 米国特許第04429343(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
5/39−5/62
G01N 27/00−27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁膜の上に形成され、互いに前後左右四方向に隣接するように配置された、複数から成る第一の電極と複数から成る第二の電極と、
前記絶縁膜の中に形成され、前記第一の電極を他の第一の電極と電気的に接続する第一の金属配線と、
前記絶縁膜の中に形成され、前記第二の電極を他の第二の電極と電気的に接続する第二の金属配線と、
前記第一の電極と前記第二の電極の上に配置された感湿膜と、
を有し、
前記第一の電極と前記第二の電極の形状が略矩形であることを特徴とする湿度センサ。
【請求項2】
前記第一の電極と前記第二の電極の形状が正方形であることを特徴とする請求項に記載の湿度センサ。
【請求項3】
前記第一の電極と前記第二の電極の間隔よりも、前記第一の電極と前記第二の電極が大きいことを特徴とする請求項1に記載の湿度センサ。
【請求項4】
絶縁膜の上に形成され、互いに前後左右四方向に隣接するように配置された、複数から成る第一の電極と複数から成る第二の電極と、
前記絶縁膜の中に形成され、前記第一の電極を他の第一の電極と電気的に接続する第一の金属配線と、
前記絶縁膜の中に形成され、前記第二の電極を他の第二の電極と電気的に接続する第二の金属配線と、
前記第一の電極と前記第二の電極の上に配置された感湿膜と、
を有し、
前記第一の電極と前記第二の電極の形状が円形であることを特徴とする湿度センサ。
【請求項5】
前記前後左右四方向に対して、斜めの方向に前記第一の金属配線と前記第二の金属配線が配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の湿度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿度センサ、特に容量式湿度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の容量式湿度センサとしては、半導体基板上に容量測定用の電極が配置され、その上を感湿膜が覆っている構造が知られている。感湿膜は湿度によって誘電率が変化する特性を有しており、電極間の容量変化から湿度の変化を検出する。図9にその断面構造の一例を示す。基板1上に絶縁膜2が成膜され、その上に複数から成る容量測定用の電極3a、3bが設けられている。電極の信頼性を確保するため、電極表面は薄い保護膜4で覆われており、その上を厚い感湿膜5が覆った構造となっている。
【0003】
従来技術として知られている容量測定用電極3a、3bの配置パターンを図10に示す。(a)は二つの電極3a、3bを櫛歯状に配置したものである(例えば、特許文献1参照)。(b)は複数から成る電極3aをアイランド状に配列し、もう一方の電極3bはアイランド状の電極3aを取り囲むように形成したものである(例えば、特許文献2参照)。アイランド状電極3a同士は下層配線6aを介して電気的に接続される。(c)は複数から成る円柱状の電極3a、3bを正三角格子状に配列したものである(例えば、特許文献3参照)。円柱状の電極3a、3bは下層配線6a、6bを介して電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−516539号公報
【特許文献2】特開2007−192622号公報
【特許文献3】特開2014−167445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図10(a)の櫛歯配線構造は、面積当りの容量が大きく、且つ一層配線で形成できるという利点を有するが、特定方向に偏ったレイアウトであるため、特定方向のストレスに対して感湿膜が剥がれやすくなることが懸念される。また、限られた面積内で所望の容量を確保するためには、容量測定用電極3a、3bを厚くし且つ電極間隔を狭めることが望ましいが、そのような状況では、感湿膜を埋め込む際にボイドが発生しやすいという埋め込み性の弱点がある。
【0006】
図10(b)の構造は、4回対称性を有する電極配置となっているため、特定方向に対する感湿膜の剥がれの懸念は改善されるが、ボイドの発生しやすさは櫛歯配線構造と同程度である。また(a)の櫛歯配線構造に比べ、面積当りの容量は小さくなってしまう。
【0007】
図10(c)の構造は、電極の配置が6回対称性を有するため、特定方向に対する剥がれの懸念は改善される。また(a)、(b)に比べ、電極3a、3bによる感湿膜の挟まれ方が緩和されているので、感湿膜の埋め込み性も改善される。しかし(c)は円柱状の電極を最密充填で配置しているにもかかわらず、後述するように櫛歯配線に比べ面積当りの容量が大きくなるわけではない。また円柱状の電極3a、3bの製造方法(例えば、特許文献3参照)が、通常の半導体製造工程と整合しない専用工程になってしまうと、製造コストが増加してしまう。同一の半導体チップ上に信号処理回路と湿度センサを構築する場合、製造コストの増加を抑えるためには、信号処理回路の配線製造工程で、湿度センサの電極3a、3bも形成されることが望ましい。
【0008】
そこで、本発明では、通常の半導体製造工程と整合性を保ちながら、面積当たりの容量を大きくし、且つ感湿膜の密着性や埋め込み性が改善された湿度センサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題の対策として、本発明は湿度センサの容量測定用電極3a、3bをアイランド状とし、一方の電極3a(あるいは3b)の前後左右四方向に他方の電極3b(あるいは3a)が隣接するように配置した。電極3a同士(あるいは電極3b同士)は、ビア及び下層配線を介して電気的に接続する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、通常の半導体製造工程で湿度センサの容量測定用電極を形成することができ、容量測定用電極による感湿膜の挟まれ方が従来技術の櫛歯配線構造などに比べ緩和されるため、感湿膜の埋め込み性も改善される。また特定方向に偏ったレイアウトではないため感湿膜の剥がれの懸念も改善される。さらに面積当たりの容量は、従来技術の円柱状電極を正三角格子状に配列したものに比べても大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の湿度センサにおける容量測定用電極の配置図
図2】本発明の電極配置における電気力線と等電位線の数値計算結果
図3】本発明の第一の実施例。(a)は平面図、(b)は断面図
図4】本発明の第二の実施例の平面図
図5】本発明の第三の実施例の平面図
図6】本発明の第四の実施例の平面図
図7】本発明の第五の実施例の平面図
図8】本発明の第六の実施例の平面図
図9】従来の湿度センサの容量測定部の断面図
図10】従来の湿度センサの容量測定用電極の配置パターン
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の湿度センサでは容量測定用電極をアイランド状とし、図1のように、外周部を除いて、一方の電極3a(あるいは3b)の前後左右四方向に他方の電極3b(あるいは3a)が隣接するように配置する。以下、この電極配置を用いた本発明の実施例を具体的に詳述する。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例1を図2に示す。図2(a)は平面図で、容量測定用電極3a、3bは上から見ると一辺の長さがdの正方形をしており、図1のように、隣り合う容量測定用電極3aと3bの間隔もdとなるように配置されている。各電極はビア8を介して下層配線6a、6bに繋がっており、全ての電極3aと全ての電極3bの間に生じる容量を測定することにより湿度が検知できる。下層配線6a、6bは隣り合う容量測定用電極3aと3bの下に、平行して配置され、容量測定用電極3aと3bでは異なった位置にビア8が配置されている。
【0014】
図2(b)は、図2(a)の領域A1−A2の断面図である。半導体基板1上に絶縁膜2を形成し、その上に容量用電極3a、3bを設けている。絶縁膜中には下層配線6a、6bがあり、電極3a(あるいは3b)は配線6a(あるいは6b)にビア8を介して接続される。下層配線6a、6b、ビア8、電極3a、3bは、通常の半導体製造プロセスで作製される。通常、信号処理回路部は多層配線を用いて作製されるため、電極3a、3bの形成までは製造工程の追加は必要ない。電極3a、3bの上は薄い保護膜で覆われ、さらにその上は厚い感湿膜で覆われている。保護膜には例えば厚さ100nmのSiN膜などが用いられる。感湿膜には、例えば湿度に対して誘電率が変化する有機材料などが用いられる。保護膜と感湿膜の形成工程は、湿度センサのための追加工程となる。
【0015】
図1図2の電極配置で面積当りの容量が大きくなることを確認するため、二次元モデルを用いた数値計算により容量を算出した。図3はこの電極配置で電圧を印加したときの電気力線と等電位線の数値計算結果である。様々な電極配置において同様の数値計算を実施し容量を算出して比較した結果を表1に示す。
【0016】
【表1】
【0017】
計算では各構造の図中に示してある寸法dを同一の値として面積当りの容量を求めた。表1では各構造と櫛歯配線構造の容量の比を示した。本発明の面積当りの容量は櫛歯配線(図10a)に比べ1.28倍となる。正三角格子配列(図10c)の容量は0.99倍であり、最密充填構造であるにも関わらず櫛歯配線と容量は変わらない。このことから、電極形状をできるだけ矩形にして、一方の電極の前後左右四方向に他方の電極が隣接するように配置することが、面積当りの容量を大きくする上で効果があることが分かる。
【実施例2】
【0018】
本発明の実施例2を図4に示す。容量測定用電極3a、3bの配列は実施例1と同じであるが、下層配線6a、6bのレイアウトが実施例1と異なる。実施例1では容量測定用電極の直下に下層配線が二本レイアウトされているが、半導体製造工程を用いて湿度センサを製作する場合、レイアウトルールの制約により、下層配線の線幅や間隔を十分に小さくすることができず、実施例1のようなレイアウトができない場合がある。そのようなときに、実施例2のように下層配線6a、6bを45度傾けることで、配線幅と配線間隔を広くでき、レイアウトルールの制約を免れることが可能になる場合がある。
【実施例3】
【0019】
本発明の実施例3を図5に示す。容量測定用電極3a、3bの配列は実施例1、2と同じであるが、下層配線のレイアウトが実施例1、2と異なり、二層の下層配線を用いている。電極3aはビア8を介して下層配線6aに電気的に接続される。電極3bは、ビア8、下層配線6b(電極3bの直下にあるため図示せず)、6bの下のビア(図示せず)を介して第二の下層配線7に電気的に接続される。信号処理回路が三層以上の配線を使用する場合は、追加工程なしに実施例3の構造を作製することができる。
【実施例4】
【0020】
本発明の実施例4を図6に示す。実施例1〜3では、容量測定用電極3a、3bの一辺の長さと電極間の距離が同じであった。このとき、全面積に対する電極が占める面積の割合(メタル占有率)は25%となる。半導体製造プロセスでは電極の加工を適正に行うためにある程度のメタル占有率が必要であり、25%ではメタル占有率が不十分な場合もありうる。実施例4はメタル占有率を上げるために容量測定用電極の一辺の長さを電極間の距離の2倍にしたものである。このときメタル占有率は44%であり、このメタル占有率だと電極加工において問題になることはない。本実施例では面積当りの容量は低下してしまうが、表1に示すように櫛歯配線と同程度の容量を確保することができる。
【実施例5】
【0021】
本発明の実施例5を図7に示す。容量測定用電極3a、3bの形状が正方形ではなく長方形となっている。このようなレイアウトでも面積当りの容量を低下させることなく、感湿膜の剥がれの懸念や埋め込み性を改善することができる。
【実施例6】
【0022】
本発明の実施例6を図8に示す。容量測定用電極3a、3bの上から見た形状が円となっている。大きな容量を得るためには電極形状を矩形にし、その四辺にもう一方の矩形形状電極が隣接する配置が望ましいが、面積あたりの容量を大きくするためには、電極サイズと電極間隔を小さくすることも望ましい。本実施例は、微細化を進めたことにより、形状が四角形ではなく円に近づいてしまった場合を示している。表1に示すとおり、本実施例の容量は正三角格子の容量よりわずかだが大きい。このように電極形状が円形になってしまった場合でも、一方の電極の前後左右四方向に他方の電極が隣接するような配置が、容量を確保する上で有利であることが分かる。
【符号の説明】
【0023】
1 半導体基板
2 絶縁膜
3 容量測定用電極
4 保護膜
5 感湿膜
6、7 下層配線
8 ビア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10