(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ケースには、前記切換部材が前記第2の位置から前記第1の位置へ移動したときに、前記第1の接触子の先端側が前記Y軸方向における他方へ変位することを制限することにより、前記第1の接点部を前記第2の接点部から引き剥がす変位制限部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のスイッチ。
前記カム溝部は、前記スライド部材が前記X軸方向に移動する間、前記切換部材を前記第1の位置に停止させる第1の位置保持溝部と、前記スライド部材が前記X軸方向に移動する間、前記切換部材を前記第1の位置と前記第2の位置との間において移動させる切換溝部と、前記スライド部材が前記X軸方向に移動する間、前記切換部材を前記第2の位置に停止させる第2の位置保持溝部とを有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のスイッチ。
前記カム溝部は、前記XY平面内において、前記スライド部材の他側に位置するA点から前記X軸方向に伸長して前記A点よりも前記X軸方向において一側に位置するB点に至り、前記B点から斜め方向に伸長して前記B点よりも前記X軸方向において一側であって、かつ前記B点よりも前記Y軸方向において一側または他側に位置するC点に至り、前記C点から前記X軸方向に伸長して前記C点よりも前記X軸方向において一側に位置するD点に至る軌跡を描くように伸長していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のスイッチ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1および
図2は本発明の実施形態によるスイッチを示している。
図3は
図2中の矢示III−III方向から見たスイッチ1の断面を示している。
図4は
図2中のスイッチ1においてスライド部材15を取り外した状態を示し、
図5は
図4中のスイッチ1においてカバー9を取り外した状態を示し、
図6は
図5中のスイッチ1において切換部材23を取り外した状態を示している。なお、本実施形態において、スイッチ1の各部材の位置関係や部材の移動方向等を説明するに当たり、説明の便宜上、前、後、左、右、上および下の方向を
図1中の矢示の方向に定めることとする。左右方向(Y軸方向)は前後方向(X軸方向)に直交し、上下方向(Z軸方向)は左右方向および前後方向の双方に直交する。
【0021】
(スイッチの構成)
図1において、本発明の実施形態によるスイッチ1は、前後方向の変位を入力として受けて閉開するスイッチである。スイッチ1は、
図2に示すように、スイッチ1の外殻を形成するケース2と、ケース2の上側に支持され、前後方向に移動するスライド部材15と、ケース2内に設けられ、左右方向に移動する切換部材23と、スライド部材15の前後方向の移動を切換部材23の左右方向の移動に変換するカム機構20と、スライド部材15および切換部材23の移動により閉開するスイッチ回路31とを備えている。スイッチ回路31は、
図6に示すように、ケース2内に設けられている。また、スイッチ回路31は、第1の接点部33を有する第1の接触子32と、第2の接点部35を有する第2の接触子34とを備え、第1の接点部33と第2の接点部35との接触により閉となり、第1の接点部33と第2の接点部35との離間により開となる。
【0022】
ケース2は、
図1に示すように、前後方向に長い直方体状であり、内部に空間を有する箱状に形成されている。ケース2はケース本体3とカバー9とを備えている。ケース本体3は、
図6に示すように、底板部3Aを備え、さらに底板部3Aの前、後、左および右のそれぞれの縁部から上方に伸長する前壁部3B、後壁部3C、左壁部3Dおよび右壁部3Eを備えている。
【0023】
ケース本体3の前後方向中間部には切換軌道形成部4が形成されている。切換軌道形成部4は切換部材23の移動方向を左右方向に規制する部分である。切換軌道形成部4は、底板部3Aから上方へ突出しているが、その上面はカバー9から離間している。切換軌道形成部4の上面とカバー9との間には、切換部材23を配置するための空間が確保されている。また、切換軌道形成部4は、左壁部3Dからケース本体3の左右方向中間部まで左右方向に伸長している。また、切換部材23が後述する第1の位置にある間、切換軌道形成部4の右端部には、第2の接触子34の先端側の左面が接触している。
【0024】
また、ケース本体3の左前部には第1の接触子固定部5が形成されている。第1の接触子固定部5は第1の接触子32を支持する部分である。第1の接触子固定部5は底板部3Aから上方に突出している。第1の接触子固定部5と左壁部3Dとの間には隙間が形成され、その隙間に第1の接触子32の基端部が圧入され、固定されている。
【0025】
また、ケース本体3の左後部には第2の接触子固定部6が形成されている。第2の接触子固定部6は第2の接触子34を支持する部分である。第2の接触子固定部6は底板部3Aから上方に突出している。第2の接触子固定部6と左壁部3Dとの間には隙間が形成され、その隙間に第2の接触子34の基端部が圧入され、固定されている。
【0026】
また、ケース本体3に前部であって第1の接触子固定部5よりも後方の位置(切換軌道形成部4と第1の接触子固定部5との間)には、変位制限部7が形成されている。変位制限部7は第1の接触子32の先端側の左方への変位を制限する部分である。変位制限部7は、底板部3Aから上方へ突出し、左壁部3Dからケース本体3の左右方向中間部まで左右方向に伸長している。また、変位制限部7の右端部は、切換軌道形成部4の右端部よりも右方に位置している。また、切換部材23が後述する第1の位置にある間、変位制限部7の右端部には、第1の接触子32の先端側の左面が接触している。
【0027】
また、
図2に示すように、ケース本体3の左壁部3Dの左面および右壁部3Eの右面には、スライド軌道形成部8がそれぞれ形成されている。各スライド軌道形成部8は、スライド部材15を前後方向に移動可能に支持する部分である。
図3に示すように、一方のスライド軌道形成部8はケース本体3の左壁部3Dの左面から左方に突出し、他方のスライド軌道形成部8はケース本体3の右壁部3Eの右面から右方に突出している。また、
図2に示すように、各スライド軌道形成部8はケース本体3の前端側から後端側にかけて前後方向に伸長している。
【0028】
カバー9は、
図1に示すように、平板状に形成され、ケース本体3の上側に設けられ、ケース本体3の上側の開口部を略閉塞している。また、カバー9は、カバー9の前部に一体形成された取付部10等を介してケース本体3に固定されている。また、
図4に示すように、カバー9の前後方向および左右方向の中間部には、切換部材23のカム突起部25を挿通させるための挿通孔11が形成されている。挿通孔11はカバー9を貫通している。また、挿通孔11は左右方向に長い形状を有している。これにより、カム突起部25は、カム溝部21に沿って相対的に移動する際に、挿通孔11内において左右方向に移動することができる。
【0029】
スライド部材15は、
図1に示すように、前後方向および左右方向に拡がる下面を有する平板部16を備えている。本実施形態において、平板部16の左右方向の長さは、ケース2の左右方向の長さとほぼ同一であり、平板部16の前後方向の長さは、ケース2の前後方向の長さのほぼ2分の1である。この結果、平板部16の下面は大きい面積を有している。平板部16の下面の面積を大きくすることにより、カム溝部21の形状を自由に設定することが可能になり、また、スライド部材15の移動距離が長い場合でも、スライド部材15の移動を切換部材23の移動に変換することが可能な大型のカム溝部21(特に前後方向に長いカム溝部21)を形成することができる。
【0030】
また、スライド部材15において、平板部16の左縁部および右縁部には、支持腕部17がそれぞれ形成されている。
図3に示すように、一方の支持腕部17は、ケース2の左上角部からケース本体3の左壁部3Dの左面にかけての部分に沿うように、平板部16の左縁部から左方に張り出してから下方に伸長している。また、他方の支持腕部17は、ケース2の右上角部からケース本体3の右壁部3Eの右面にかけての部分に沿うように、平板部16の右縁部から右方に張り出してから下方に伸長している。また、各支持腕部17は、
図2に示すように、前後方向に伸長している。また、
図3に示すように、左側の支持腕部17の右面(内面)には、当該支持腕部17の前後方向の全長に亘って伸長する溝が形成されている。また、右側の支持腕部17の左面(内面)にも、当該支持腕部17の前後方向の全長に亘って伸長する溝が形成されている。スライド部材15は、左右の支持腕部17にそれぞれ形成された溝に、ケース本体3の左壁部3Dおよび右壁部3Eにそれぞれ形成されたスライド軌道形成部8を係合することにより、ケース本体3に前後方向に移動可能に支持されている。
【0031】
また、
図2に示すように、スライド部材15において、平板部16の右縁部には、一対のレバー部18が形成されている。一方のレバー部18は平板部16の右縁部の前部に配置され、他方のレバー部18は平板部16の右縁部の後部に配置され、各レバー部18は平板部16の右縁部から右方に突出している。各レバー部18は、前後方向の変位である入力を受け、その入力をスライド部材15に伝達する部分である。本実施形態においては、スイッチ1の右方に、
図2中の移動軸51に沿って、スイッチ1に対して前後方向に移動する物体52が存在する。この物体52が前方へ移動するときには、物体52の一部が、前側のレバー部18に当接し、これにより、物体52と共にスライド部材15がケース2に対して前方に移動する。一方、物体52が後方へ移動するときには、物体52の他の部分が、後ろ側のレバー部18に当接し、これにより、物体52と共にスライド部材15がケース2に対して後方に移動する。
【0032】
また、スライド部材15において、平板部16の下面にはカム溝部21が形成されている。カム溝部21は、後述するカム突起部25と共にカム機構20を構成する部分である。カム溝部21は、
図2に示すように、平板部16の下面の略中央部分に形成されている。すなわち、平板部16の略中央部分が上方に盛り上がって肉厚となり、この肉厚の部分に、
図3に示すように、下方から溝を掘ることにより、カム溝部21が形成されている。このようにカム溝部21の深さ方向は上下方向に設定されており、すなわち、スライド部材15の移動方向および切換部材23の移動方向の双方と直交する方向に設定されている。
【0033】
また、カム溝部21は、前後方向および左右方向に拡がる平面内、すなわち、平板部16の下面内において所定の形状が設定されている。つまり、カム溝部21の形状は平板部16の下面が拡がる方向(下面と平行な方向)に設定されている。カム溝部21は、この形状に基づいてカム突起部25の移動を制御することにより、スライド部材15の前後方向の移動を切換部材23の左右方向の移動に変換する。ここで、
図7はカム溝部21の形状の詳細を示している。
図7に示すように、カム溝部21は概ねクランク状の形状を有している。具体的には、カム溝部21は、平板部16の下面内において、スライド部材15の後部に位置するA1点から前後方向に直線状に伸長してA1点よりも前方に位置するB1点に至り、B1点から斜め方向に直線状に伸長してB1点よりも前方であって、かつB1点よりも左方に位置するC1点に至り、C1点から前後方向に直線状に伸長してC1点よりも前方に位置するD1点に至る軌跡を描くように伸長している。
【0034】
また、カム溝部21は、第1の位置保持溝部21A、切換溝部21Bおよび第2の位置保持溝部21Cを有している。第1の位置保持溝部21Aは、カム溝部21においてC1点とD1点との間の部分であり、スライド部材15が前後方向に移動する間、切換部材23を第1の位置に停止させる部分である。切換溝部21Bは、カム溝部21においてB1点とC1点との間の部分であり、スライド部材15が前後方向に移動する間、切換部材23を第1の位置と第2の位置との間において移動させる部分である。第2の位置保持溝部21Cは、カム溝部21においてA1点とB1点との間の部分であり、スライド部材15が前後方向に移動する間、切換部材23を第2の位置に停止させる部分である。なお、切換部材23の第1の位置および第2の位置については後述する。
【0035】
切換部材23は、
図5に示すように、ケース2内に設けられ、ケース2の前後方向中間部に配置されている。ここで、
図8ないし
図10は、切換部材23の構成の詳細を示している。
図10に示すように、切換部材23は直方体状に形成され、切換部材23の下面側には移動規制部24が形成されている。移動規制部24は凹状に形成され、左右方向に伸長している。切換部材23は、ケース本体3に形成された切換軌道形成部4に移動規制部24を係合しつつ、ケース本体3の底板部3Aとカバー9との間に挟まれることにより、左右方向に移動可能となるようにケース2に支持されている。
【0036】
また、
図9に示すように、切換部材23の上面側にはカム突起部25が形成されている。カム突起部25は、円柱状に形成され、切換部材23の上面から上方に突出している。カム突起部25は、
図4に示すように、カバー9に形成された挿通孔11を貫通し、
図3に示すように、スライド部材15のカム溝部21内に挿入されている。また、カム突起部25の直径寸法は、カム溝部21における第1の位置保持溝部21A、切換溝部21Bおよび第2の位置保持溝部21Cのそれぞれの幅寸法よりも僅かに小さい寸法に設定されている。これにより、切換部材23は、スライド部材15が前後方向に移動したときに、カム溝部21の形状に忠実に沿って移動する。また、切換部材23の左右方向の位置は、ケース2に対するスライド部材15の前後方向の位置に応じて正確に定まり、スライド部材15が停止している間は変動しない(厳密には、スライド部材15が停止している間における切換部材23の左右方向の位置は、カム突起部25のカム溝部21に対する円滑な移動を許容するために僅かに変動するが、その変動量は最小限に抑えられている)。
【0037】
また、
図10に示すように、切換部材23の下面側には挿通凹部26および接触子支持部27が形成されている。挿通凹部26は凹状に形成され、前後方向に伸長している。
図8に示すように、挿通凹部26内には、第2の接触子34の先端側が配置される。また、切換部材23が左右方向に移動したときに、第2の接触子34が切換部材23において接触子支持部27以外の部分に当たって第2の接触子34の先端側の変位が妨げられることのないように、挿通凹部26の幅寸法(左右方向の長さ寸法)が設定されている。
【0038】
接触子支持部27は、挿通凹部26の一部に形成され、具体的には、挿通凹部26の左面および右面から互いに接近する方向にそれぞれ突出する一対の支持片27Aおよび27Bを備えている。支持片27Aおよび27B間には、第2の接触子34の先端側が挿入される。支持片27Aおよび27Bは、切換部材23の左方および右方のそれぞれの移動に伴って、第2の接触子34の先端側が左方および右方にそれぞれ変位するように第2の接触子34を挟持し、支持している。
【0039】
もっとも、支持片27Aおよび27Bは第2の接触子34の先端側を切換部材23に対して不動となるように固定しているのではない。支持片27Aと支持片27Bとの間の間隔は、第2の接触子34の厚さ寸法よりも若干大きく設定されており、切換部材23と共に第2の接触子34の先端側が左右方向に変位するときに、第2の接触子34が切換部材23に対して前後方向に位置ずれすることができる構成となっている。すなわち、第2の接触子34は、当該第2の接触子34においてケース本体3の第2の接触子固定部6に支持されている基端側の点を中心として、当該第2の接触子34の最先端側が略円弧状の軌跡を描くように弾性変形するため(
図13参照)、切換部材23の左右方向の移動に伴って第2の接触子34の先端側が左右方向に変位するとき、第2の接触子34が切換部材23に対して前後方向に位置ずれする。この位置ずれを許すように、支持片27Aと支持片27Bとの間の間隔は、第2の接触子34の厚さ寸法よりも若干大きく設定されている。ただし、支持片27Aと支持片27Bとの間の間隔と、第2の接触子34の厚さ寸法との間の相違は僅かであり、実質的に見て、切換部材23と第2の接触子34とは一体的に左右方向に変位する。
【0040】
また、接触子支持部27において、左側の支持片27Aの右端面は、支持片27Aをその上方または下方から見た場合に、右方に突出するように湾曲した曲面(R形状)となっている。同様に、右側の支持片27Bの左端面は、支持片27Bをその上方または下方から見た場合に、左方に突出するように湾曲した曲面(R形状)となっている。これにより、切換部材23の左右方向の移動に伴って第2の接触子34を左右方向に円滑に変位させることが可能になる。すなわち、第2の接触子34は、ケース本体3の第2の接触子固定部6に支持されている基端側の点を中心として、最先端側が略円弧状の軌跡を描くように弾性変形するため(
図13参照)、切換部材23の左右方向の移動に伴って第2の接触子34の先端側が左右方向に変位するとき、第2の接触子34の先端側は、その最先端部が右前方向に向かうように傾斜する。支持片27Aおよび27Bの端面をそれぞれ湾曲した形状とすることにより、このような第2の接触子34の傾斜する変位が支持片27Aまたは27Bによって阻害されることを防止することができる。それゆえ、切換部材23の左右方向の移動に伴って第2の接触子34を左右方向に円滑に変位させることが可能になる。
【0041】
スイッチ回路31は、
図6に示すように、第1の接点部33を有する第1の接触子32、第2の接点部35を有する第2の接触子34、一対の抵抗素子36、37、配線部38および一対の端子39を備えている。スイッチ回路31は、第1の接点部33と第2の接点部35とが互いに接触した閉の状態と、第1の接点部33と第2の接点部35とが互いに離間した開の状態とで端子39間の抵抗値が異なるように形成されている。
【0042】
なお、抵抗素子36および37を取り除き、抵抗素子37が接続されていた部分、すなわち、第1の接触子32と配線38との間をジャンパー線等で接続してもよい。この場合、スイッチ回路31は、第1の接点部33と第2の接点部35とが互いに接触したときに端子39間が閉となり、第1の接点部33と第2の接点部35とが互いに離間したときに端子39間が開となる開閉スイッチ回路となる。
【0043】
第1の接触子32および第2の接触子34は、例えば銅等の金属材料により細長い板状にそれぞれ形成されている。第1の接点部33は第1の接触子32の最先端部に配置され、第2の接点部35は第2の接触子34の最先端部に配置されている。
【0044】
第1の接触子32は基端側がケース本体3の左前部に形成された第1の接触子固定部5に支持されている。第1の接触子32は、その基端側から先端側に向かって、まずケース本体3の左前部から後方に伸長し、その後、右方へ曲がり、その後、右方へ伸長し、その後、後方へ曲がり、その後、後方へ伸長している。第1の接触子32において、前後方向に伸長している部分は左右方向に弾性変形することができ、左右方向に伸長している部分は前後方向に弾性変形することができる。また、第1の接触子32の先端側は自由端となっている。もっとも、上述したように、第1の接触子32の先端側の変位は変位制限部7により制限されている。
【0045】
第2の接触子34は基端側がケース本体3の左後部に形成された第2の接触子固定部6に支持されている。第2の接触子34は、その基端側から先端側に向かって、まずケース本体3の左後部から前方に伸長し、その後、右方へ曲がり、その後、右方へ伸長し、その後、前方へ曲がり、その後、前方へ伸長している。第2の接触子34の先端側において前後方向に伸長している部分は、第2の接触子34の基端側において前後方向に伸長している部分よりも長く、第2の接触子34の中間部において左右方向へ伸長している部分よりも長い。また、第2の接触子34において、前後方向に伸長している部分は左右方向に弾性変形することができ、左右方向に伸長している部分は前後方向に弾性変形することができる。また、第2の接触子34の最先端側は自由端となっている。もっとも、第2の接触子34の先端側において前方に伸長している部分の前後方向中間部は、切換部材23の接触子支持部27(支持片27A、27B)に支持されている。この結果、第2の接触子34の最先端側の変位は切換部材23の移動と連動するようになっている。
【0046】
このように、第1の接触子32および第2の接触子34を前後方向に伸長する部分と左右方向に伸長する部分とを有する折れ曲がった形状とすることにより、ケース本体3の限られた小さな空間内において、第1の接触子32および第2の接触子34を長くすることができ、第1の接触子32および第2の接触子34の弾性またはばね性の設定の自由度を高めることができる。これにより、後述するように、第1の接点部33と第2の接点部35との接触時にワイピング効果が発揮されるように、第1の接触子32および第2の接触子34の弾性またはばね性を容易に設定することが可能になる。
【0047】
なお、例えば、スイッチのケースの形状を前後方向に長くすることができる場合には、第1の接触子および第2の接触子をそれぞれ前後方向に単に直線状に伸長する形状とすることも可能である。
【0048】
また、第1の接触子32の最先端部は、第2の接触子34の最先端部の右方に位置し、第1の接触子32の最先端部と第2の接触子34の最先端部とは左右方向に互いに対向している。また、
図11に示すように、第1の接触子32の最先端部は上下方向に二股に分かれた分割部32Aが形成されている。また、第2の接触子34の最先端部には右方に突出した突出部34Aが形成されている。後述するように切換部材23が第2の位置に移動したときには、第2の接触子34の突出部34Aが第1の接触子32の分割部32Aに接触するので、第1の接触子32と第2の接触子34との間の接触箇所が2箇所となる。これにより、第1の接点部33と第2の接点部35との接触の確実性が高まる。
【0049】
なお、本実施形態では、第2の接触子34の最先端部を曲げることにより突出部34Aを形成し、この部分を第2の接点部35としたが、これに代え、第2の接触子34の最先端部に別部材を溶接またはリベットカシメ等の手段により取り付けることにより突出部を形成し、この部分を第2の接点部35としてもよい。また、第1の接触子32の分割部32Aに代え、第1の接触子32の最先端部に別部材を取り付けることにより、第1の接触子32の最先端部を左方に突出させ、この部分を第1の接点部33としてもよい。
【0050】
(スイッチの動作)
図12はスイッチ1の4つの状態を示している。
図12において、最上段に示す状態S1は、スライド部材15がケース2の最前部に位置している状態である。上から2段目に示す状態S2は、スライド部材15がケース2に対して後方に移動した状態であり、上から3段目に示す状態S3は、スライド部材15がケース2に対してさらに後方に移動した状態である。そして、最下段に示す状態S4は、スライド部材15がケース2の最後部に位置している状態である。また、状態S3およびS4では、切換部材23がケース2の左部に位置している。切換部材23のこの位置を「第1の位置」という。一方、状態S1およびS2では、切換部材23がケース2の左右方向中間部に位置している。切換部材23のこの位置を「第2の位置」という。また、切換部材23が第2の位置にあるとき、第1の接点部33と第2の接点部35とが互いに接触し、スイッチ回路31が閉となる(
図13参照)。一方、切換部材23が第1の位置にあるとき、第1の接点部33と第2の接点部35とが互いに離間し、スイッチ回路31が開となる(
図14参照)。以下、スイッチ1の状態が
図12中の状態S1、S2、S3、S4の順序で変化した場合を例にあげ、スイッチ1の動作を説明する。
【0051】
まず、状態S1、すなわち、スライド部材15がケース2の最前部に位置している状態では、切換部材23のカム突起部25がカム溝部21の第2の位置保持溝部21Cの最後部に位置している。このとき、切換部材23は第2の位置にあり、第1の接点部33と第2の接点部35とが互いに接触し、スイッチ回路31は閉の状態である。
【0052】
次に、状態S2では、スライド部材15がケース2の後方へ移動し、切換部材23のカム突起部25がカム溝部21の第2の位置保持溝部21Cの最後部から最前部へ相対的に移動している。このとき、切換部材23は第2の位置にあり、第1の接点部33と第2の接点部35とが互いに接触し、スイッチ回路31は閉の状態である。すなわち、スライド部材15が移動しても、カム突起部25が第2の位置保持溝部21Cの範囲内を相対的に移動している間は、切換部材23は第2の位置に停止しており、第1の接点部33と第2の接点部35とが互いに接触した状態が維持され、スイッチ回路31の閉の状態が維持される。
【0053】
次に、状態S3では、スライド部材15がケース2のさらに後方へ移動し、切換部材23のカム突起部25がカム溝部21の第2の位置保持溝部21Cの最前部から、切換溝部21Bを通って、第1の位置保持溝部21Aの最後部へ相対的に移動している。このとき、切換部材23は第1の位置に移動しており、第1の接点部33と第2の接点部35とが互いに離間し、スイッチ回路31は開の状態である。このように、カム突起部25が切換溝部21Bを第2の位置保持溝部21Cから第1の位置保持溝部21Aへ向かって相対的に移動することにより、切換部材23が第2の位置から第1の位置へ移動し、これにより、第1の接点部33と第2の接点部35とが互いに離間し、スイッチ回路31が閉から開に切り換わる。
【0054】
次に、状態S4、すなわち、スライド部材15がさらに後方に移動し、ケース2の最後部の位置に到達した状態では、切換部材23のカム突起部25がカム溝部21の第1の位置保持溝部21Aの最後部から最前部へ相対的に移動している。このとき、切換部材23は第1の位置にあり、第1の接点部33と第2の接点部35とが互いに離間し、スイッチ回路31は開の状態である。すなわち、スライド部材15が移動しても、カム突起部25が第1の位置保持溝部21Aの範囲内を相対的に移動している間は、切換部材23は第1の位置に停止しており、第1の接点部33と第2の接点部35とが互いに離間した状態が維持され、スイッチ回路31の開の状態が維持される。
【0055】
このように、本発明の実施形態によるスイッチ1によれば、カム溝部21を第1の位置保持溝部21A、切換溝部21Bおよび第2の位置保持溝部21Cを有する形状としたことにより、スライド部材15がケース2の最前部と最後部との間の長い距離を有する移動範囲を移動する場合でも、スライド部材15がその長い移動範囲内の所定の箇所を通過したときに、切換部材23を第1の位置と第2の位置との間において瞬時に移動させ、スイッチ回路31の閉開を切り換えることができる。
【0056】
また、本発明の実施形態によるスイッチ1によれば、スライド部材15の前後方向の移動をカム機構20により切換部材23の左右方向の移動に変換すると共に、スライド部材15が移動する前後方向および切換部材23が移動する左右方向に拡がる平面内、すなわち、スライド部材15の平板部16の下面内に、カム突起部25の移動を制御するためのカム溝部21の形状を設定する構成としたから、第1の接点部33と第2の接点部35との間の接触、離間の確実性を高めることができ、スイッチ1の閉開動作の信頼性を向上させることができる。
【0057】
すなわち、例えば、スライド部材15のレバー部18に当接した物体52が左右方向にがたつくことがある。また、スイッチ1が設けられている土台となる部分が振動するためにスイッチ1全体が左右方向に振動することがある。このような場合でも、スイッチ1の上記カム構造によれば、カム突起部25の左右方向の位置がカム溝部21により正確に定まり、かつ安定し、スライド部材15が停止している間は、カム突起部25はカム溝部21に対して左右方向に位置ずれせず、それゆえ、切換部材23はスライド部材15に対して左右方向に位置ずれしない。さらに、スライド部材15は一対の支持腕部17によりケース2に左右方向に位置ずれしないように支持されているため、切換部材23はケース2に対して左右方向に位置ずれしない。この結果、ケース2に支持された第1の接触子32に設けられた第1の接点部33と、ケース2および切換部材23に支持された第2の接触子34に設けられた第2の接点部35との位置関係が正確に定まり、かつ安定する。したがって、上述した左右方向のがたつきや振動のために、第1の接点部33と第2の接点部35とが誤って接触すること、接触が不安定になること、または接触不良を起こす等を防止することができる。
【0058】
(接点間の接触・離間)
図13は、切換部材23が第2の位置に移動したときの第1の接触子32および第2の接触子34の状態を示している。
図14は、切換部材23が第1の位置に移動したときの第1の接触子32および第2の接触子34の状態を示している。
図15は、第1の接点部33と第2の接点部35とが互いに接触したときの動作を示している。
【0059】
図13に示すように、第1の接触子32は、その基端側がケース本体3の左前部に位置する第1の接触子固定部5に支持され、先端側が概ね後方に伸長して自由端となっている。また、第2の接触子34は、その基端側がケース本体3の左後部に位置する第2の接触子固定部6に支持され、先端側が概ね前方に伸長して自由端となっている。また、上述したように、第1の接触子32および第2の接触子34において前後方向に伸長している部分は左右方向に弾性変形し易く、左右方向に伸長している部分は前後方向に弾性変形し易い。このような構造により、第1の接触子32の最先端部に配置された第1の接点部33は、第1の接触子32が弾性変形したとき、前後方向および左右方向に拡がる平面内において、第1の接触子32がケース本体3に支持されている点Pを中心とした略円弧状の軌跡Lを描くように変位する。また、第2の接触子34の最先端部に配置された第2の接点部35は、第2の接触子34が弾性変形したとき、前後方向および左右方向に拡がる平面内において、第2の接触子34がケース本体3に支持されている点Qを中心とした略円弧状の軌跡Mを描くように変位する。
【0060】
切換部材23が第1の位置から第2位置へ移動したとき、
図13に示すように、切換部材23が第2の接触子34の先端側を右方に押し動かす。これにより、第2の接触子34が弾性変形し、第2の接点部35が、軌跡Mに沿って概ね右後の方向に移動し、第1の接点部33に接触し、さらに、第1の接点部33を右方に押し動かす。この結果、第1の接触子32が弾性変形し、第1の接点部33が軌跡Lに沿って概ね右前の方向に移動する。このように、第2の接点部35が第1の接点部33を押し動かすことにより、第2の接点部35と第1の接点部33とが互いに接触した状態を維持しながら、第2の接点部35が右後の方向に移動し、第1の接点部33が右前の方向に移動するので、
図15に示すように、第2の接点部35は、第1の接点部33上を
図15中の矢示方向にスライド移動する。このスライド移動により、第1の接点部33と第2の接点部35とが互いに擦り合い、いわゆるワイピング効果(接点同士が接触した状態で滑り動作をし、接点に付着した異物を取り除く効果)が発揮される。これにより、第1の接点部33または第2の接点部35に付着した塵埃を払い除け、または第1の接点部33または第2の接点部35に形成された塵埃の膜を削り取ることができる。したがって、切換部材23が第2の位置に移動したときに、第1の接点部33と第2の接点部35との間を十分にかつ確実に導通させることができ、導通不良によりスイッチ1が誤動作することを防止することができる。
【0061】
一方、切換部材23の接触子支持部27は、第2の接触子34の先端側が切換部材23と共に左方および右方にそれぞれ変位するように、第2の接触子34の先端側を支持している。この結果、切換部材23は、切換部材23が第1の位置から第2の位置へ移動したときに、
図13に示すように、第2の接触子34の先端側を右方へ押し動かすことにより第2の接点部35を第1の接点部33に押し付ける一方、切換部材23が第2の位置から第1の位置へ移動したときに、
図14に示すように、第2の接触子34の先端側を左方へ押し動かすことにより第2の接点部35を第1の接点部33から引き離す。さらに、ケース本体3には変位制限部7が設けられている。変位制限部7は、切換部材23が第2の位置から第1の位置へ移動したときに、変位先端部7の右端部に第1の接触子32の先端側を接触させることで、第1の接触子32の先端側が左方へ変位することを制限し、これにより、第1の接点部33を第2の接点部35から引き剥がす。したがって、切換部材23が第2の位置に移動して第1の接点部33と第2の接点部35とが接触している間に、例えば両接点部間に大きな電流が流れ、第1の接点部33と第2の接点部35とが互いに溶着した場合でも、切換部材23が第1の位置へ移動したときに、第1の接点部33と第2の接点部35とを互いに分離させることができる。これにより、スイッチ1の誤動作を防止することができる。
【0062】
(スイッチ開閉動作の反転)
本発明の実施形態によるスイッチ1は、スライド部材15に形成されたカム溝部21により、スライド部材15の移動を切換部材23の移動に変換し、切換部材23により、第1の接点部33と第2の接点部35との接触、離間を切り換えてスイッチ回路31を開閉させる。このような構成により、スイッチ1によれば、スライド部材15に形成するカム溝部21の形状を変えることで、外部(例えば
図2中の物体52)からスライド部材15に入力される変位の方向と、スイッチ回路31の開閉動作との関係を簡単に反転させることができる。これに加え、スライド部材15はケース2の外側に支持されており、かつ、切換部材23から分離した独立の部材であるため、スイッチ1を構成する部品のうち、スライド部材15以外の部品を全く変更せずに、スライド部材15だけを他のスライド部材15に簡単に交換することができる。したがって、スライド部材15に形成されているカム溝部21と異なる形状のカム溝部が形成された他のスライド部材を用意し、スライド部材15をこの他のスライド部材に交換するだけで、外部からスライド部材15に入力される変位の方向と、スイッチ回路31の開閉動作との関係を極めて簡単に反転させることができる。例えば、スライド部材の交換のみにより、ノーマルクローズタイプのスイッチをノーマルオープンタイプのスイッチに極めて簡単に変更することができる。
【0063】
ここで、
図16は、スライド部材15と交換可能な他のスライド部材を示している。
図16において、スライド部材45には、
図7に示すスライド部材15に形成されたカム溝部21と異なる形状のカム溝部47が形成されている。具体的には、スライド部材45のカム溝部47は、平板部46の下面内において、スライド部材45の後部に位置するA2点から前後方向に直線状に伸長してA2点よりも前方に位置するB2点に至り、B2点から斜め方向に直線状に伸長してB2点よりも前方であって、かつB2点よりも右方に位置するC2点に至り、C2点から前後方向に直線状に伸長してC2点よりも前方に位置するD2点に至る軌跡を描くように伸長している。この場合、第1の位置保持溝部47Aは、カム溝部47においてA2点とB2点との間の部分となり、切換溝部47Bは、カム溝部47においてB2点とC2点との間の部分となり、第2の位置保持溝部47Cは、カム溝部47においてC2点とD2点との間の部分となる。
【0064】
スライド部材45をケース2に取り付けた場合、
図7に示すスライド部材15をケース2に取り付けた場合と比較して、スライド部材の移動方向と切換部材23の移動方向との関係が逆になり、この結果、外部からスライド部材15に入力される変位の方向と、スイッチ回路31の開閉動作との関係が反転する。
【0065】
なお、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うスイッチもまた本発明の技術思想に含まれる。