特許第6535265号(P6535265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6535265
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】取付金具及び取付方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/32 20060101AFI20190617BHJP
【FI】
   E04G21/32 C
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-198472(P2015-198472)
(22)【出願日】2015年10月6日
(65)【公開番号】特開2017-71930(P2017-71930A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】佐野 勝之
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−105924(JP,A)
【文献】 特開平11−131491(JP,A)
【文献】 実開平05−047227(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0280788(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/32
E04G 21/10
E04G 21/12
E04G 21/18
E04G 17/00
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設された複数の鉄筋に取り付けられる取付金具であって、
ベース部と、
前記ベース部の一端で折り返されて第1鉄筋を挟み込む第1折り返し部と、
前記ベース部の他端で折り返されて第2鉄筋を挟み込む第2折り返し部と、を備え、
前記第1鉄筋と前記第2鉄筋との並設方向において、前記ベース部の前記一端から前記第1折り返し部の第1先端までの距離をL1、前記ベース部の前記他端から前記第2折り返し部の第2先端までの距離をL2、としたときに、
L1<L2、
を満たし、
前記第2折り返し部が前記第2鉄筋を挟み込んだ状態でスライド移動することにより、前記第1折り返し部に前記第1鉄筋を挟み込む、
取付金具。
【請求項2】
並設された複数の鉄筋に取り付けられる取付金具であって、
ベース部と、
前記ベース部の一端で折り返されて第1鉄筋を挟み込む第1折り返し部と、
前記ベース部の他端で折り返されて第2鉄筋を挟み込む第2折り返し部と、を備え、
前記第1鉄筋と前記第2鉄筋との並設方向において、前記ベース部の前記一端から前記第1折り返し部の第1先端までの距離をL1、前記ベース部の前記他端から前記第2折り返し部の第2先端までの距離をL2、としたときに、
L1<L2、
を満たし、
前記並設方向において、
前記第1鉄筋における前記第2鉄筋の反対側に位置する一端と、前記第2鉄筋における前記第1鉄筋の反対側に位置する他端と、の距離をY1、
前記ベース部の前記他端の内側面と前記第1先端との距離をX2、としたときに、
Y1<X2+L1、
を満たす取付金具。
【請求項3】
前記並設方向において、
前記第1鉄筋における前記第2鉄筋の反対側に位置する一端と、前記第2鉄筋における前記第1鉄筋の反対側に位置する他端と、の距離をY1、
前記第1先端と前記第2先端との距離をX1、
前記ベース部の前記他端の内側面と前記第1先端との距離をX2、としたときに、
X1<Y1、及びY1<X2、
を満たす請求項1又は2に記載の取付金具。
【請求項4】
前記第1鉄筋と前記第2鉄筋との間に第3鉄筋が設けられ、前記第1鉄筋及び前記第3鉄筋の間隔と、前記第3鉄筋及び前記第2鉄筋の間隔とは同一となっており、
前記並設方向において、前記第2鉄筋及び前記第3鉄筋の間隔をY2、としたときに、
L2<Y2、
を満たす請求項1〜3のいずれか一項に記載の取付金具。
【請求項5】
前記ベース部は、柵の支柱が取り付けられる支柱取付部を備える、
請求項1〜のいずれか一項に記載の取付金具。
【請求項6】
ベース部と、前記ベース部の一端で折り返されて第1鉄筋を挟み込む第1折り返し部と、前記ベース部の他端で折り返されて第2鉄筋を挟み込む第2折り返し部と、を有する取付金具を複数の鉄筋に取り付ける取付方法であって、
前記第2折り返し部を前記第2鉄筋に嵌め込む工程と、
前記第2折り返し部を前記第2鉄筋に嵌め込んだ状態で前記第2折り返し部の第2先端と前記第1折り返し部の第1先端との間に前記第1鉄筋を入れる工程と、
前記第2先端と前記第1先端との間に前記第1鉄筋を入れた状態で前記取付金具をスライド移動させ、前記第2折り返し部を前記第2鉄筋に嵌め込んだ状態を維持すると共に前記第1折り返し部を前記第1鉄筋に嵌め込む工程と、
を備える取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並設された複数の鉄筋に取り付けられる取付金具、及び取付金具の取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平8−82102号公報には、鉄筋コンクリート構造物の施工途中に一時的に設けられる開口周辺の高所に設置された安全柵と、この安全柵の支柱を鉄筋に取り付ける取付金具が記載されている。この取付金具は、鉄筋を抱え込む一対のC字状の仮固定板と、仮固定板に抱え込まれた鉄筋を上から押さえ付けて鉄筋の位置を固定させる押付部材と、仮固定板の上方に位置し、上から支柱が嵌め込まれて当該支柱をネジ止め固定させる差し込みパイプ連結具とを備えている。この取付金具は、仮固定板で鉄筋を抱え込み当該鉄筋を押付部材で押し付け、この状態でコンクリートに埋設される。そして、差し込みパイプ連結具に支柱が固定されることによって鉄筋上に安全柵が設置される。
【0003】
また、構造物の施工途中に一時的に設置する安全柵としては、例えば梁の側型枠が予め組まれている場合には、この型枠の横端太に支柱を緊結して手すりを設置することがある。更に、予め設置した足場又は支保工等に支柱を固定させて手すりを設置することもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−82102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した取付金具は、コンクリートに埋設されるため、一度埋設してしまうと、その後取り外すことが非常に難しい。従って、この取付金具は、鉄筋に対する着脱を容易に行うことができず、転用できないという問題がある。また、前述した各手すりは、スラブの型枠敷設時に撤去されるため、一時的に安全柵が無い状態が生じることになる。よって、安全性の確保を十分に行えていないという問題がある。
【0006】
本発明は、鉄筋に対する着脱を容易に行うことができると共に、安全性の確保を十分に行うことができる取付金具、及び取付金具の取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る取付金具は、並設された複数の鉄筋に取り付けられる取付金具であって、ベース部と、ベース部の一端で折り返されて第1鉄筋を挟み込む第1折り返し部と、ベース部の他端で折り返されて第2鉄筋を挟み込む第2折り返し部と、を備え、第1鉄筋と第2鉄筋との並設方向において、ベース部の一端から第1折り返し部の第1先端までの距離をL1、ベース部の他端から第2折り返し部の第2先端までの距離をL2、としたときに、L1<L2、を満たし、第2折り返し部が第2鉄筋を挟み込んだ状態でスライド移動することにより、第1折り返し部に第1鉄筋を挟み込む。
本発明の別の側面に係る取付金具は、並設された複数の鉄筋に取り付けられる取付金具であって、ベース部と、ベース部の一端で折り返されて第1鉄筋を挟み込む第1折り返し部と、ベース部の他端で折り返されて第2鉄筋を挟み込む第2折り返し部と、を備え、第1鉄筋と第2鉄筋との並設方向において、ベース部の一端から第1折り返し部の第1先端までの距離をL1、ベース部の他端から第2折り返し部の第2先端までの距離をL2、としたときに、L1<L2、を満たし、並設方向において、第1鉄筋における第2鉄筋の反対側に位置する一端と、第2鉄筋における第1鉄筋の反対側に位置する他端と、の距離をY1、ベース部の他端の内側面と第1先端との距離をX2、としたときに、Y1<X2+L1、を満たす。
【0008】
この取付金具は、並設された複数の鉄筋に取り付けられる取付金具であり、第1鉄筋を挟み込む第1折り返し部と、第2鉄筋を挟み込む第2折り返し部とを備える。そして、複数の鉄筋の並設方向において、ベース部の一端から第1折り返し部の第1先端までの距離は、ベース部の他端から第2折り返し部の第2先端までの距離よりも短くなっている。よって、最初に長い第2折り返し部で第2鉄筋を挟み込み、その後、取付金具を傾けて第1鉄筋を第1先端と第2先端の間に入れ込み、取付金具をスライド移動させて第1折り返し部で第1鉄筋を挟み込むことにより、取付金具を容易に鉄筋に取り付けることができる。また、複数の鉄筋から取付金具を外すときには、取付金具をスライド移動させて第1折り返し部による第1鉄筋の挟み込みを解除した後に、取付金具を傾けて第2鉄筋から第2折り返し部を外せばよいので、複数の鉄筋から容易に取付金具を外すことができる。このように、取付金具が着脱自在となっているので、取付金具の転用が可能となる。また、取付金具を第1鉄筋及び第2鉄筋に取り付けた状態では、第1折り返し部が第1鉄筋を挟み込むと共に第2折り返し部が第2鉄筋を挟み込んだ状態となっているので、第1鉄筋及び第2鉄筋に対する取付金具の回転が阻止される。従って、取付金具が回転して外れる事態が阻止されるので安全性を確保することができる。更に、第2折り返し部の長さが第1折り返し部の長さよりも長くなっているので、第1鉄筋から第2鉄筋への距離に自由度を持たせることができる。すなわち、第1鉄筋から第2鉄筋への距離が異なっていても各折り返し部による鉄筋の挟み込みが可能となり、ピッチが異なる複数の鉄筋への取り付けが可能となるので、種々の鉄筋に取付金具を取り付けることができる。
【0009】
上記作用効果を奏する具体的な形態として、前述の並設方向において、第1鉄筋における第2鉄筋の反対側に位置する一端と、第2鉄筋における第1鉄筋の反対側に位置する他端と、の距離をY1、第1先端と第2先端との距離をX1、ベース部の他端の内側面と第1先端との距離をX2、としたときに、X1<Y1、及びY1<X2、を満たすという構成が挙げられる。
【0010】
また、第1鉄筋と第2鉄筋との間に第3鉄筋が設けられ、第1鉄筋及び第3鉄筋の間隔と、第3鉄筋及び第2鉄筋の間隔とは同一となっており、前述の並設方向において、第2鉄筋及び第3鉄筋の間隔をY2、としたときに、L2<Y2、を満たしてもよい。この場合、第1鉄筋と第2鉄筋との間に第3鉄筋が配置されていても取付金具の取り付けを行うことができ、よりピッチが細かい複数の鉄筋に対しても取付金具を取り付けることができる。
【0011】
また、ベース部は、柵の支柱が取り付けられる支柱取付部を備えていてもよい。前述したように、取付金具が回転して外れる事態が阻止されるので、支柱取付部に柵の支柱を取り付けたときに支柱が鉄筋から外れる事態を回避することができる。従って、柵における安全性を高めることができる。
【0012】
本発明に係る取付方法は、ベース部と、ベース部の一端で折り返されて第1鉄筋を挟み込む第1折り返し部と、ベース部の他端で折り返されて第2鉄筋を挟み込む第2折り返し部と、を有する取付金具を複数の鉄筋に取り付ける取付方法であって、第2折り返し部を第2鉄筋に嵌め込む工程と、第2折り返し部を第2鉄筋に嵌め込んだ状態で第2折り返し部の第2先端と第1折り返し部の第1先端との間に第1鉄筋を入れる工程と、第2先端と第1先端との間に第1鉄筋を入れた状態で取付金具をスライド移動させ、第2折り返し部を第2鉄筋に嵌め込んだ状態を維持すると共に第1折り返し部を第1鉄筋に嵌め込む工程と、を備える。この取付方法では、取付金具を容易に複数の鉄筋に取り付けることができ、前述した取付金具と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、鉄筋に対する着脱を容易に行うことができると共に、安全性の確保を十分に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る取付金具が適用される手すりの一例を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る取付金具を示す斜視図である。
図3】(a)は、図2の取付金具を示す側面図である。(b)は、図2の取付金具を示す平面図である。
図4】(a)は、図2の取付金具のベース部、第1折り返し部及び第2折り返し部を示す断面図である。(b)は、図2の取付金具が取り付けられる複数の鉄筋を示す断面図である。
図5図2の取付金具の取付方法を示す断面図である。
図6図5で示される取付方法の続きを示す断面図である。
図7図5及び図6で示される取付方法で図2の取付金具を複数の鉄筋に取り付けた状態を示す断面図である。
図8】(a)は、第1変形例に係る取付金具を示す断面図である。(b)は、(a)の取付金具を示す平面図である。
図9】(a)は、第2変形例に係る取付金具を下方から見た状態を示す図である。(b)は、第3変形例に係る取付金具を下方から見た状態を示す図である。
図10】第4変形例に係る取付金具を下方から見た状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1に示されるように、本実施形態に係る取付金具1は、予め縦横に組まれた複数の鉄筋Fの鉛直方向上側に取り付けられる。取付金具1は、鉄筋Fの上に設置される手すりである柵Hの支柱Pと嵌合することによって支柱Pを鉄筋F上で支持する。支柱Pは例えば円筒状である。鉄筋Fの上には複数の取付金具1が取り付けられており、複数の取付金具1のそれぞれに複数の支柱Pのそれぞれが嵌め込まれることによって、鉄筋F上に柵Hが設置されている。なお、柵Hには複数の支柱Pに掛け渡される2本の横材Lが設けられているが、柵の形状及び大きさについては適宜変更可能である。
【0017】
図2及び図3に示されるように、取付金具1は、板状に形成されるベース部2と、ベース部2の一端E1から折り返された板状の第1折り返し部3と、ベース部2の他端E2から折り返された板状の第2折り返し部4とを備えている。ここで、ベース部2は方向Dに延びるように形成されており、この方向Dは取付金具1が取り付けられる複数の鉄筋Fの並設方向である。例えば、ベース部2、第1折り返し部3及び第2折り返し部4は、全て同一の幅となっており、一枚の鉄製の板状部材を折り曲げ加工してベース部2、第1折り返し部3及び第2折り返し部4が形成される。
【0018】
ベース部2は、その両端に、一端E1に向かって湾曲する湾曲部2aと、他端E2に向かって湾曲する湾曲部2bとを有する。湾曲部2a,2bは、例えば、円弧状となっており、この円弧部分の中心角は90度である。また、ベース部2は、湾曲部2a,2bの間に、方向Dに延びる延在部2cを有し、この延在部2cは直線状に延在している。
【0019】
第1折り返し部3は、一端E1から延びる湾曲部3aと、湾曲部3aから方向Dに延びる延在部3bとを有する。湾曲部3aは、例えば、円弧状となっており、この円弧部分の中心角は90度である。第1折り返し部3の湾曲部3aは一端E1を介してベース部2の湾曲部2aと連続しており、湾曲部3aと湾曲部2aとで180度に折り返されたU字部を形成している。延在部3bは、一端E1の反対側に位置する湾曲部3aの端部から方向Dに直線状に延在している。
【0020】
第2折り返し部4は、他端E2から延びる湾曲部4aと、湾曲部4aから方向Dに延在する延在部4bとを有する。湾曲部4aの形状は、例えば湾曲部3aの形状と同一であり、第2折り返し部4の湾曲部4aは他端E2を介してベース部2の湾曲部2bと連続している。湾曲部4aと湾曲部2bとで180度に折り返されたU字部を形成している。延在部4bは、他端E2の反対側に位置する湾曲部4aの端部から方向Dに直線状に延在している。
【0021】
第1折り返し部3の湾曲部3aとベース部2の湾曲部2aとで形成されたU字部と、第2折り返し部4の湾曲部4aとベース部2の湾曲部2bとで形成されたU字部とは、例えば互いに同一の曲率となっており、1本の鉄筋Fを抱え込める程度の曲率となっている。また、第2折り返し部4の延在部4bの長さは、第1折り返し部3の延在部3bの長さよりも長くなっている。すなわち、方向Dにおいて、ベース部2の一端E1から第1折り返し部3(延在部3b)の第1先端3cまでの距離は、ベース部2の他端E2から第2折り返し部4(延在部4b)の第2先端4cまでの距離よりも短い。第1折り返し部3及び第2折り返し部4の各部における具体的な距離等については後に詳述する。
【0022】
ベース部2は、柵Hの支柱Pが取り付けられる支柱取付部2dを備える。支柱取付部2dは、例えば、ベース部2の延在部2cの上側(外側、又は、第1折り返し部3及び第2折り返し部4の反対側)の面に固定されており、延在部2cから上側に延びる円筒状を呈している。支柱取付部2dは、延在部2cにおける方向Dの中央部分に設けられる。支柱取付部2dには、その上端2eから下方に延びて周方向に折り曲げられるようにL字状に形成された切り欠き2fが設けられており、2つの切り欠き2fは支柱取付部2dの中心軸線に対して互いに対称となる位置に配置されている。
【0023】
支柱取付部2dの外径は、支柱Pの内径よりも若干小さくなっており、支柱取付部2dの外側に支柱Pを嵌め込むことによって支柱Pが取付金具1に取り付けられる。具体的には、円筒状の支柱Pの内側には、支柱Pの軸線の直交方向に貫通された孔に挿通された直線状のピンが固定されており、支柱取付部2dに支柱Pを上から嵌めると共に支柱Pのピンを上から切り欠き2fに入り込ませて支柱Pを周方向に回転させる。これにより、支柱取付部2dから支柱Pを引っ張り上げようとすると、支柱Pの内側のピンが切り欠き2fのL字の下辺部分(周方向に延びる部分)の上壁に当接するので、支柱取付部2dからの支柱Pの抜けが阻止される。
【0024】
以上のように支柱取付部2dに支柱Pを嵌め込むことが可能となっているが、支柱取付部の形状、具体的な取付構造、及び配置位置は上記の例に限定されない。例えば、支柱取付部に支柱Pを嵌め込んだ後に、ボルト締めで支柱Pを支柱取付部に固定させてもよい。
【0025】
更に、ベース部2は、鉄筋Fを固定させるボルトBが挿通される円形状の挿通孔2gを有する。ベース部2において、挿通孔2gは、支柱取付部2dよりも第1折り返し部3側に配置されており、挿通孔2gに挿通されるボルトBは第1折り返し部3に入り込んだ鉄筋F1(図7参照)に上からねじ込まれる。具体的には、挿通孔2gの上側にナットNが配置され、このナットNに上側からボルトBが螺合されてボルトBが挿通孔2gに挿通され、ボルトBの先端部で鉄筋F1を押し付けることによって鉄筋F1が保持される。
【0026】
次に、ベース部2、第1折り返し部3及び第2折り返し部4の各部位の距離と鉄筋Fにおける各距離について図4を参照しながら説明する。まず、複数の鉄筋Fの並設方向である方向Dにおいて、ベース部2の一端E1から第1折り返し部3の第1先端3cまでの距離をL1、ベース部2の他端E2から第2折り返し部4の第2先端4cまでの距離をL2、としたときに、L1<L2、を満たしている。ここで、より具体的には、L1は一端E1の内側面2kから第1先端3cまでの距離であり、L2は他端E2の内側面2hから第2先端4cまでの距離である。
【0027】
また、鉄筋Fは、前述したように予め縦横に組まれており、例えば所定の間隔(ピッチ)Y2で組まれている。ここで、取付金具1は、互いに隣り合う複数本(3本)の鉄筋Fのうち両端に位置する鉄筋F1,F2に取り付けられる。すなわち、取付金具1は、複数の鉄筋Fを跨ぐように複数本の鉄筋Fを架け渡した状態で鉄筋F上に取り付けられる。以下では、3本並ぶ鉄筋Fのうち、一端に位置する鉄筋Fを第1鉄筋F1、他端に位置する鉄筋Fを第2鉄筋F2、第1鉄筋F1と第2鉄筋F2の間に設けられる鉄筋Fを第3鉄筋F3、とする。なお、第1鉄筋F1及び第3鉄筋F3の間隔と、第3鉄筋F3及び第2鉄筋F2の間隔と、は互いに同一の間隔Y2となっている。
【0028】
まず、方向Dにおいて、第1鉄筋F1における第2鉄筋F2の反対側に位置する一端G1と、第2鉄筋F2における第1鉄筋F1の反対側に位置する他端G2と、の距離をY1、第1折り返し部3の第1先端3cと第2折り返し部4の第2先端4cとの距離をX1としたときに、X1<Y1、を満たしている。これにより、第1鉄筋F1が第1折り返し部3に入り込むと共に、第2鉄筋F2が第2折り返し部4に入り込んだ状態が実現される。
【0029】
また、方向Dにおいて、ベース部2の他端E2の内側面2hと、第1折り返し部3の第1先端3cとの距離をX2、としたときに、Y1<X2、を満たしている。ここで、ベース部2の他端E2の内側面2hは、ベース部2の内側面のうち最も他端E2側に位置する部位を示している。これにより、第1鉄筋F1及び第2鉄筋F2をベース部2、第1折り返し部3及び第2折り返し部4の内側(ベース部2、第1折り返し部3及び第2折り返し部4に囲まれた空間内)に入れることが可能となっている。更に、方向Dにおいて、ベース部2の他端E2から第2折り返し部4の第2先端4cまでの距離L2と、鉄筋のピッチである間隔Y2との関係は、L2<Y2、となっている。
【0030】
取付金具1の各部位の距離と鉄筋F1,F2,F3の各距離とが前述のような関係となっていることにより、取付金具1を変形させることなく鉄筋F1,F2,F3に容易に取り付けられるようになっている。以下では、鉄筋F1,F2,F3に取付金具1を取り付ける本実施形態の取付方法について図5図7を参照しながら説明する。なお、図5図7では、図示を分かりやすくするため、支柱取付部2d、挿通孔2g、ボルトB及びナットNを省略して図示している。
【0031】
まず、図5に示されるように、取付金具1を方向Dに対して第1折り返し部3が上方に位置するように傾けて、鉄筋F2に第2折り返し部4を引っ掛ける。具体的には、第2折り返し部4の湾曲部4aとベース部2の湾曲部2bとで形成されたU字部に第2鉄筋F2を挿入させて鉄筋F2に第2折り返し部4を引っ掛ける(第2折り返し部4を第2鉄筋F2に嵌め込む工程)。
【0032】
次に、図6に示されるように、第2折り返し部4を第2鉄筋F2に嵌め込んだ状態で第2先端4cと第1先端3cとの間に第1鉄筋F1を入れる。すなわち、取付金具1を方向Dに沿うように寝かせて鉄筋F1,F3を第1先端3c及び第2先端4cの間に入れ込む(第2先端4cと第1先端3cとの間に第1鉄筋F1を入れる工程)。
【0033】
そして、図7に示されるように、取付金具1を鉄筋F2側にスライド移動させて第1折り返し部3を鉄筋F1に引っ掛ける(第1折り返し部3を第1鉄筋F1に嵌め込む工程)。図7に示される状態では、2本の鉄筋F1,F2に取付金具1が引っ掛かっており、鉄筋F1,F2に対する取付金具1の回転が阻止される。その後は、ボルトBをナットNに螺合させて挿通孔2gに挿通させていき、鉄筋F1を上からボルトBで押さえつけることによって鉄筋F1,F2,F3に対する取付金具1の取り付けが完了する。
【0034】
なお、鉄筋F1,F2,F3に対して複数の取付金具1の取り付けが完了した後には、各支柱取付部2dに支柱Pを取り付けて横材Lを支柱Pに取り付けることにより、柵Hが形成される。また、鉄筋F1,F2,F3から取付金具1を外す方法としては、取付金具1を第1折り返し部3側にスライド移動させて第1鉄筋F1から第1折り返し部3を外し、その後第1折り返し部3を持ち上げて、第2鉄筋F2から第2折り返し部4を外せば完了する。
【0035】
次に、取付金具1によって得られる作用効果について説明する。まず、取付金具1は、複数の鉄筋F1,F2,F3に取り付けられ、第1鉄筋F1を挟み込む第1折り返し部3と、第2鉄筋F2を挟み込む第2折り返し部4とを備える。そして、方向Dにおいて、ベース部2の一端E1から第1折り返し部3の第1先端3cまでの距離は、ベース部2の他端E2から第2折り返し部4の第2先端4cまでの距離よりも短くなっている。
【0036】
よって、最初に長い第2折り返し部4で第2鉄筋F2を挟み込み、その後、取付金具1を傾けて第1鉄筋F1及び第3鉄筋F3を第1先端3cと第2先端4cとの間に入れ込み、取付金具1をスライド移動させて第1折り返し部3で第1鉄筋F1を挟み込むことにより、取付金具1を容易に鉄筋F1,F2,F3に取り付けることができる。更に、ベース部2、第1折り返し部3及び第2折り返し部4はU字部を形成しているので、スムーズな鉄筋Fへの取り付けが可能となっている。また、本実施形態の取付金具1では、取付金具1を鉄筋F1,F2,F3に取り付けるときに、取付金具1自身を変形させる必要がない。すなわち、本実施形態では、取付金具1自身を変形させて鉄筋F1,F2,F3に取り付けることは想定していない。
【0037】
また、複数の鉄筋F1,F2,F3から取付金具1を外すときには、取付金具1をスライド移動させて第1折り返し部3による第1鉄筋F1の挟み込みを解除した後に、取付金具1を傾けて第2鉄筋F2から第2折り返し部4を外せばよいので、複数の鉄筋F1,F2,F3から容易に取付金具1を外すことができる。従って、取付金具1が着脱自在となっているので、取付金具1の転用が可能となる。
【0038】
また、取付金具1を第1鉄筋F1及び第2鉄筋F2に取り付けた状態では、第1折り返し部3が第1鉄筋F1を挟み込むと共に第2折り返し部4が第2鉄筋F2を挟み込んだ状態となっているので、第1鉄筋F1及び第2鉄筋F2に対する取付金具1の回転が阻止される。従って、取付金具1が回転して外れる事態が阻止されるので安全性を確保することができる。
【0039】
更に、第2折り返し部4の長さが第1折り返し部3の長さよりも長くなっているので、第1鉄筋F1から第2鉄筋F2への距離に自由度を持たせることができる。すなわち、第2鉄筋F2が第2折り返し部4に入り込む範囲で第1鉄筋F1から第2鉄筋F2への距離を変更できる。このように、第1鉄筋F1から第2鉄筋F2への距離が異なっていても各折り返し部3,4による鉄筋F1,F2の挟み込みが可能となり、間隔(ピッチ)Y2が異なる複数の鉄筋への取り付けが可能となるので、種々の鉄筋に取付金具1を取り付けることができる。
【0040】
また、方向Dにおいて、ベース部2の他端E2から第2折り返し部4の第2先端4cまでの距離L2と、第2鉄筋F2及び第3鉄筋F3の間隔Y2との関係については、L2<Y2を満たしている。従って、第1鉄筋F1と第2鉄筋F2との間に第3鉄筋F3が配置されていても取付金具1の取り付けを行うことができるので、よりピッチが細かい複数の鉄筋に対しても取付金具1を取り付けることができる。
【0041】
また、ベース部2は、柵Hの支柱Pが取り付けられる支柱取付部2dを備えている。前述したように、取付金具1が回転して外れる事態が阻止されるので、支柱取付部2dに柵Hの支柱Pを取り付けたときに支柱Pが鉄筋Fから外れる事態を回避することができる。従って、柵Hにおける安全性を高めることができる。
【0042】
また、本実施形態の取付金具の取付方法は、取付金具1を複数の鉄筋に取り付ける取付方法であって、第2折り返し部4を第2鉄筋F2に嵌め込む工程と、第2折り返し部4を第2鉄筋F2に嵌め込んだ状態で第2先端4cと第1先端3cとの間に第1鉄筋F1を入れる工程と、第2先端4cと第1先端3cとの間に第1鉄筋F1を入れた状態で取付金具1をスライド移動させ、第2折り返し部4を第2鉄筋F2に嵌め込んだ状態を維持すると共に第1折り返し部3を第1鉄筋F1に嵌め込む工程と、を備える。この取付方法では、取付金具1を容易に鉄筋F1,F2,F3に取り付けることができ、前述と同様の効果が得られる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、本発明は、各請求項の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。
【0044】
例えば、前述の実施形態では、ベース部2の挿通孔2gが第1折り返し部3側に配置されており、ボルトBが第1折り返し部3に入り込んだ鉄筋F1にねじ込まれることによって取付金具1が取り付けられた。しかしながら、ボルト及び挿通孔の位置、形状及び大きさは適宜変更可能である。
【0045】
例えば、図8の第1変形例に係る取付金具11に示されるように、第1折り返し部3側に位置する挿通孔2gに代えて、第2折り返し部4側に位置する挿通孔2jが設けられていてもよい。この場合、ボルトBは第2折り返し部4に入り込んだ鉄筋F2にねじ込まれ、これにより取付金具11が取り付けられる。また、挿通孔2jは、方向Dに延びる長穴となっているため、種々のピッチの鉄筋に取付金具11を取り付けることができる。
【0046】
また、前述の実施形態では、図4(a)に示される断面を有する取付金具1について説明し、距離X1、距離X2、距離Y1及び間隔Y2の関係について説明した。図4(a)は、ベース部2、第1折り返し部3及び第2折り返し部4を上下方向且つ方向Dに延在する面で切断した断面を示しており、取付金具1は、当該面で切断した全ての部位において図4(a)に示される断面となっている。
【0047】
しかしながら、取付金具1は、当該面で切断した全ての部位において図4(a)に示される断面となっていなくてもよい。すなわち、取付金具1は、後述する第2〜第4変形例に示されるように、部分的に図4(a)とは異なる断面形状を有していてもよく、前述した距離X1、距離X2、距離Y1及び間隔Y2の関係を満たさない部位を有していてもよい。このように取付金具1の形状は前述した実施形態に限定されず適宜変更可能である。
【0048】
例えば、図9(a)の第2変形例の取付金具31は、第1折り返し部33と第2折り返し部34とを備えており、鉛直上下方向且つ方向Dに切断した断面は、鉄筋F1,F2の延在方向の位置に応じて異なっている。第1折り返し部33は鉄筋F1,F2に沿って延在する延在部33bと、延在部33bから内側に突出して鉄筋F1に引っ掛けられる引掛部33aとを有する。第2折り返し部34も同様の延在部34bと引掛部34aとを有しており、下から見たときに、第1折り返し部33及び第2折り返し部34は、共にL字状となっている。
【0049】
また、図9(b)の第3変形例の取付金具41において、第1折り返し部43は、その端部側から中央側に向かうにつれて湾曲して突出する突出部43aを備えており、この突出部43aに鉄筋F1が引っ掛けられる。一方、取付金具41の第2折り返し部44は、その一端から他端に向かって鉄筋F1,F2の斜め方向に直線状に延びており、第2折り返し部44の内側に突出する部位に鉄筋F2が引っ掛けられる。
【0050】
更に、図10の第4変形例の取付金具21は、鉄筋F1,F2に対して斜めに延びるベース部22と、ベース部22の一端に位置する第1折り返し部23と、ベース部22の他端に位置する第2折り返し部24とを備えている。ベース部22、第1折り返し部23及び第2折り返し部24を、鉛直上下方向且つ方向Dに切断した断面は、鉄筋F1,F2の延在方向の位置に応じて異なっている。
【0051】
以上のように、本発明に係る取付金具は、第2折り返し部の長さが第1折り返し部の長さよりも長く、最初に第2折り返し部を嵌め込むことができ、第2折り返し部を鉄筋F2に嵌め込んだ状態で各折り返し部の2つの先端の間に鉄筋F1を入れることができ、且つ、2つの先端の間に鉄筋F1を入れた状態で取付金具をスライド移動させ第1折り返し部を鉄筋F1に嵌め込むと共に第2折り返し部を鉄筋F2に嵌め込んだ状態を維持することが可能であれば、形状を適宜変更することが可能である。
【0052】
また、前述の実施形態では、ボルトBが鉄筋Fにねじ込まれることによって鉄筋に取り付けられる取付金具1について説明したが、ボルトB以外の手段で鉄筋に取り付けられてもよい。例えば、第2折り返し部4で第2鉄筋F2を挟み込み第1折り返し部3で第1鉄筋F1を挟み込んだ状態とした後に、番線で鉄筋に縛り付けられることで取付金具が取り付けられてもよい。
【0053】
また、前述の実施形態では、第1鉄筋F1と第3鉄筋F3との距離、及び第3鉄筋F3と第2鉄筋F2との距離、が互いに同一である例について説明した。しかしながら、第1鉄筋F1と第3鉄筋F3との距離、及び第3鉄筋F3と第2鉄筋F2との距離、が互いに異なっていてもよい。
【0054】
また、前述の実施形態では、図4に示されるように、第1鉄筋F1、第2鉄筋F2及び第3鉄筋F3の断面形状が円形である例について説明した。ここで、各鉄筋F1,F2,F3の断面の径は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。更に、各鉄筋F1,F2,F3の断面が円形以外の形状であってもよい。各鉄筋F1,F2,F3の断面の形状及び大きさにかかわらず、第2鉄筋F2及び第3鉄筋F3の間隔Y2は、第2鉄筋F2における第3鉄筋F3の反対側の端部(他端G2)と、第3鉄筋F3における第2鉄筋F2側の端部との距離に相当する。
【0055】
また、ベース部2、第1折り返し部3及び第2折り返し部4の形状は適宜変更可能であり、例えば、ベース部2.第1折り返し部3及び第2折り返し部4は全て同一の幅となっていなくてもよい。また、ベース部2は支柱取付部2dを有していなくてもよい。すなわち、前述の実施形態では、支柱Pを鉄筋F上で支持する取付金具1について説明したが、取付金具の支持対象は、支柱Pでなくてもよく、柵の支柱以外の部材を支持してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1,11,21,31,41…取付金具、2,22…ベース部、2a,2b…湾曲部、2c…延在部、2d…支柱取付部、2e…上端、2f…切り欠き、2g…挿通孔、2h,2k…内側面、2j…挿通孔、3,23,33,43…第1折り返し部、3a…湾曲部、3b…延在部、3c…第1先端、4…第2折り返し部、4a…湾曲部、4b…延在部、4c…第2先端、33a,34a…引掛部、33b,34b…延在部、43a…突出部、B…ボルト、D…方向、E1…一端、E2…他端、F…鉄筋、F1…第1鉄筋、F2…第2鉄筋、F3…第3鉄筋、G1…一端、G2…他端、H…柵、L…横材、N…ナット、P…支柱。
図1
図2
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図8
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図10