特許第6535306号(P6535306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6535306
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】撹拌装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 15/00 20060101AFI20190617BHJP
   B01F 11/00 20060101ALI20190617BHJP
【FI】
   B01F15/00 A
   B01F11/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-183390(P2016-183390)
(22)【出願日】2016年9月20日
(65)【公開番号】特開2018-47413(P2018-47413A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2018年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 智宏
【審査官】 増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−85218(JP,A)
【文献】 特開2013−81930(JP,A)
【文献】 特開昭48−27357(JP,A)
【文献】 特開2014−1836(JP,A)
【文献】 特開昭60−166024(JP,A)
【文献】 実開昭60−115532(JP,U)
【文献】 米国特許第4057226(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 15/00
B01F 11/00
B01F 7/02
F16J 15/52
F16C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸挿通口が形成された撹拌槽と、
前記軸挿通口と連通される中空空間を有し、一端部にて前記撹拌槽に固定される撓み保持部と、
基端部を前記撹拌槽および前記撓み保持部の外部に突出させるように前記軸挿通口および前記中空空間に挿通され、前記撓み保持部の他端部に固定される撹拌軸と、
前記撹拌軸を支持する軸受部材と、を備え、
前記撹拌軸は、支点よりも上方部位が前記支点を頂点として前記撹拌軸の軸線を母線とする逆円錐の側面を撫でるように運動し、前記支点よりも下方部位が前記支点を頂点として前記撹拌軸の軸線を母線とする円錐の側面を撫でるように運動する、首振り運動を行うように構成され、
前記首振り運動の前記支点が、前記撓み保持部の前記中空空間内に設定され、前記軸受部材が、第1軸受および第2軸受を含み、前記第1軸受および前記第2軸受が、前記撓み保持部の外部に配置されている、撹拌装置。
【請求項2】
前記首振り運動を行わせるための動力を前記撹拌軸に伝達する伝達部材を更に備え、
前記伝達部材は、自転駆動される伝達軸と、前記撹拌軸の前記基端部を保持して前記伝達軸と一体に回転するホルダとを含み、
前記第1軸受が、前記撹拌軸の前記基端部と前記ホルダとの間に介在し、前記第2軸受が前記伝達軸に装着されている、請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項3】
前記第1軸受および前記第2軸受のうち少なくともいずれか一方が、複数の転動体群を軸方向に並べた転がり軸受によって構成されている、請求項1または2に記載の撹拌装置。
【請求項4】
前記第1軸受および前記第2軸受のうち少なくともいずれか一方が、接触角を有する2つの転がり軸受を背面合わせで組み合わせることによって構成されている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の撹拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌軸に首振り運動を行わせる撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に示す撹拌装置90は、一端部で撹拌槽91に固定される筒状の撓み保持部92を備えており、撓み保持部92の中空空間は、撹拌槽91の上蓋91aに形成された軸挿通口91bと連通されている。撹拌軸93が、軸挿通口91bおよび撓み保持部92に挿通され、撓み保持部92の他端部に固定されている。撹拌軸93の軸線Bは、撹拌槽91の中心線Aに対して傾斜している。撹拌軸93の上端部は、撓み保持部92から上方に突出し、アクチュエータ94と連結されている。
【0003】
アクチュエータ94が作動すると、撹拌軸93の上端部が、撹拌槽91の中心線Aに直交する平面上で円周を描くようにして円運動を行う。この円運動により、撹拌軸93は、軸線方向中間部を支点Cとして、いわゆる首振り運動を行う。つまり、撹拌軸93は、支点Cを頂点として自身の軸線Bを母線とする円錐の側面を撫でるように運動する(ただし、撹拌軸93は自転しない)。撓み保持部92は、撹拌軸93の首振り運動に応じて撓み変形可能になっている。
【0004】
撓み保持部92の撓み量(変形量)を抑制するため、支点Cは、撓み保持部92の中空空間内に位置付けられている。撹拌軸93の挙動を安定化するため、撹拌軸93は、軸受中心を支点Cと一致させるように配置された球面軸受95によって支持されている。球面軸受95は、撹拌軸93の外周面に固定された内輪95aと、内輪95aを受容する外輪95bとによって構成される。撹拌槽91の上蓋91aにはハウジング96が固定され、ハウジング96は、撓み保持部92よりも上方に配置された取付部材96aを有し、取付部材96aに、筒状の取付部材96bが固定されている。取付部材96bは、取付部材96aから下方に延び、撓み保持部92の中空空間に上から進入しており、この取付部材96bの下端部に外輪95bが設けられている。
【0005】
撓み保持部92の他端部は、撹拌槽91の内部を装置外と連通させないよう閉塞されている。この閉塞のため、撹拌軸93には筒部93aが設けられている。筒部93aは、撹拌軸93の外周面のうち内輪95aよりも下位置から上方に延び、撹拌軸93の本体および球面軸受95を外囲し、撓み保持部92の他端部に固定されている。これにより、球面軸受95を撓み保持部92の中空空間内に配置して軸受中心を支点Cと一致させつつ、球面軸受95を撹拌槽91の内部から隔絶された空間に配置できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−85218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来例では、撓み保持部92内に位置付けた支点Cを軸受中心と一致させつつ撓み保持部92の他端部を閉塞するために、撓み保持部92の内部に、複雑な構造が設けられている。具体的にいえば、撹拌軸93の本体、球面軸受95の内輪95a、球面軸受95の外輪95b(取付部材96b)、および撹拌軸93の筒部93bが、半径方向に四重に並べられている。
【0008】
このため、撹拌軸93の本体が、撓み保持部92のサイズに比して小径とならざるを得ない。撹拌軸93が細ければ、大容量の撹拌に使用することが難しくなる。撹拌軸93を太くすれば、撓み保持部92も大型化する。すると、撹拌装置90の稼働中の撓み保持部92の撓み量が大きくなるので、撓み保持部92の耐久性が悪化する。
【0009】
撓み量の抑制ひいては耐久性の良化を図ろうとして、取付部材96bを長尺化して球面軸受95を撓み保持部92のより奥深くに配置し、支点Cを撓み保持部92の中心に近付けることも考えられる。しかし、その場合は、取付部材96bの上端部周辺で撹拌軸93の運動半径が大きくなるので、取付部材96bの上端部の大径化を要する。撹拌軸93の本体は細いままであるのに、上記した四重構造は大型化し、撓み保持部92は益々大型化する。よって、球面軸受95をより奥深く配置しても、撓み保持部92の耐久性の良化は難しい。
【0010】
そこで本発明は、首振り運動の支点を撓み保持部の中心に近付けることと、撓み保持部の小型化とを両立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係る撹拌装置は、軸挿通口が形成された撹拌槽と、前記軸挿通口と連通される中空空間を有し、一端部にて前記撹拌槽に固定される撓み保持部と、基端部を前記撹拌槽および前記撓み保持部の外部に突出させるように前記軸挿通口および前記中空空間に挿通され、前記撓み保持部の他端部に固定される撹拌軸と、前記撹拌軸を支持する軸受部材と、を備え、前記首振り運動の支点が、前記撓み保持部の前記中空空間内に設定され、前記軸受部材が、第1軸受および第2軸受を含み、前記第1軸受および前記第2軸受が、前記撓み保持部の外部に配置されている。
【0012】
前記構成によれば、従来例のような四重構造を要しない。従来例では、構造大型化回避の制約で、支点を撓み保持部の奥深くに位置付けることが困難であったが、前記構成にはそのような制約がない。よって、支点をより奥深く、例えば、撓み保持部の中心付近に配置することが容易であり、撹拌装置の稼働中における撓み保持部の撓み量を抑制できる。
【0013】
複雑な四重構造を要しないので、撓み保持部のサイズを従来例と同等に維持しつつ、撹拌軸の本体を従来例よりも太くすることができる。この場合、撹拌軸は大容量の撹拌にも耐えられるようになるので、撹拌槽を大型化可能となる。
【0014】
逆に、撹拌軸の本体の径を従来例と同等に維持しつつ、撓み保持部のサイズを従来例よりも小さくすることができる。この場合、撹拌装置の稼働中における撓み保持部の撓み量を抑制できる。また、撓み保持部の表面積減少および水平断面方向の直径減少に伴って耐圧性が向上し、撓み保持部は高圧下での撹拌処理にも耐えられるようになる。
【0015】
軸受部材は撓み保持部の外部に配置された第1および第2軸受を含んでいる。これら第1および第2軸受により、撹拌軸の基端部に作用する負荷を受け止めることができる。よって、軸受中心を支点と一致させた球面軸受が省略されても、首振り運動中の支点位置は安定する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、首振り運動の支点を撓み保持部の中心に近付けることと、撓み保持部の小型化とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る撹拌装置を正面から見た一部断面図である。
図2図1に示す撹拌装置の上部断面図である。
図3図3Aが第1軸受周辺を示す断面図、図3Bが第2軸受周辺を示す断面図である。
図4】第2実施形態に係る撹拌装置の上部断面図である。
図5】従来例に係る撹拌装置の上部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。なお、全図を通じて同一のまたは対応する要素には同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0019】
[第1実施形態]
(構成)
図1に示す撹拌装置1は、主に医薬または化学分野の生産プロセスにおいて、液またはスラリーの混合、溶解、晶析、濃縮、スラリー懸濁および気液接触などの撹拌処理に用いられる。
【0020】
撹拌装置1は、撹拌槽2を備えている。撹拌槽2は円筒状に形成され、撹拌槽2の中心線Aは上下方向に向けられている。軸挿通口3は、撹拌槽2の上蓋4(一例として、その中心部)に形成されている。上蓋4には、例えば原料投入、明かり窓、マンホールに利用されるノズル5が形成され、撹拌槽2の底壁には、撹拌処理によって得られた製品を撹拌槽2から排出するための排出口6が設けられている。上蓋4の外上面には、ハウジング7が取り付けられる。ハウジング7は、上蓋4から上方に突出するマウント部4aに締結されたベース7a、ベース7aから上方に延びる支柱7b、および支柱7bの上端に固定された上板7cを備えている。上板7cは、軸挿通口3よりも上方で略水平に配置される。
【0021】
撹拌装置1は、撹拌軸8を備えている。撹拌軸8は、軸挿通口3に挿通されている。基端部(上端部)は、撹拌槽2の外部(上方)に突出してハウジング7内に位置づけられる。先端部(下端部)は、撹拌槽2の内部に位置付けられる。撹拌軸8の先端部には撹拌翼9が設けられてもよく、撹拌翼9の形式は特に限定されない。撹拌軸8の軸線Bは、撹拌槽2の中心線Aに対して傾斜する。本実施形態では、一例として、軸線Bが中心線Aと交差しており、撹拌軸8は、線A,Bの交点を支点Cとして、いわゆる首振り運動を行い、それにより撹拌槽2内の物質を撹拌する。
【0022】
撹拌装置1は、アクチュエータ10および伝達部材11を備えている。アクチュエータ10は、撹拌軸8に首振り運動を行わせるための動力の発生源であり、例えば電気モータである。伝達部材11は、撹拌軸8に首振り運動を行わせるための動力(すなわち、アクチュエータ10で発生された動力)を撹拌軸8に伝達する部材であり、アクチュエータ10の出力軸と撹拌軸8の基端部との間に介在している。伝達部材11は、アクチュエータ10の出力軸から動力を伝達される伝達軸12、および伝達軸12に固定されて撹拌軸8の基端部を保持するホルダ13を備えている。アクチュエータ10が作動すると、伝達軸12は自身の軸線周り(中心線A周り)に自転駆動され、ホルダ13は伝達軸12と一体に回転する。
【0023】
配置の一例として、電気モータたるアクチュエータ10は、上板7cの上面に取り付けられ、アクチュエータ10の出力軸は、先端を下に向けて撹拌槽2の中心線Aと同軸上に配されている。伝達軸12は、アクチュエータ10の出力軸と直結され、撹拌軸2の中心線Aと同軸上に配されている。ホルダ13は、下に開放された筒状に形成されており、撹拌軸8の基端部はホルダ13に下から嵌め込まれている。
【0024】
撹拌装置1は、撓み保持部14を備えている。撓み保持部14は、両端を開放した筒状である。撓み保持部14は、撹拌槽2の外部に配置され、ハウジング7内に収容され、上下方向において上蓋4と伝達部材11との間に配置される。撓み保持部14は、一端部(下端部)にて撹拌槽2に固定される。撓み保持部14の中空空間15は、軸挿通口3ひいては撹拌槽2の内部と連通する。撹拌軸8は中空空間15にも挿通されている。撹拌軸8の基端部は、撓み保持部14の外部(上方)に突出し、伝達部材11のホルダ13に保持されている。撹拌軸8は、撓み保持部14の他端部(上端部)に固定され、撓み保持部14を介して撹拌槽2に弾性支持されている。撓み保持部14の一端開口は開放されて軸挿通口3と繋がる一方、他端開口は閉塞される(構造の詳細は後述)。これにより、撹拌槽2の内部は、ノズル5および排出口6を閉じている間(例えば、撹拌処理中)、外部から隔絶される。
【0025】
首振り運動の支点Cは、撓み保持部14の中空空間15内に設定されている。その一方で、本実施形態の撹拌装置1は、図5に示す従来例とは異なり、支点Cと軸受中心を一致させた球面軸受を備えておらず、また、撓み保持部14はそのような球面軸受を収容していない。代わりに、撹拌装置1は、撹拌軸8を支持する軸受部材16として、第1軸受17および第2軸受18を備えている。第1軸受17も第2軸受18も、撓み保持部14の外部(特に、撹拌槽2とは反対側の外部)に配置されている。第1軸受17は、撹拌軸8の基端部と伝達部材11のホルダ13との間に介在する。第2軸受18は、伝達軸12に装着されている。
【0026】
図2に示すように、撓み保持部14は、弾性体からなる筒状部21、筒状部21の一端部(下端部)に設けられた一端フランジ22、および筒状部21の他端部(上端部)に設けられた他端フランジ23を含む。筒状部21は、例えばエチレンプロピレンジエンゴムのような弾性材で製造され、フランジ22,23は、例えば一般構造用圧延鋼材のような剛性材で製造されている。筒状部21は、円筒状の基本形状を有し、中空空間15は筒状部21の内側に形成されている。フランジ22,23は、中心に円形孔を有したリング状に形成されている。筒状部21の一端部は、一端フランジ22の円形孔を下に抜け、一端フランジ22の端面に折り返され、当該端面に接合されている。筒状部21の他端部も、他端フランジ23の円形孔を上に抜け、他端フランジ23の端面に折り返され、当該端面に接合されている。撓み保持部14は、軸方向中間部において径方向に膨出した膨出部24を有している。膨出部24は、U状の断面を有している。本実施形態では、膨出部24は1段であるが、撓み保持部14が軸線方向に並ぶ複数段の膨出部を有していてもよい。
【0027】
一端フランジ22は、軸挿通口3の上端面に設置されたリング状の取付部材25に上下方向に挿し通されるボルトで結合される。取付部材25は、軸挿通口3に設置された取付フランジ26に上下方向に挿し通されるボルトで結合されており、撓み保持部14は取付部材25および取付フランジ26を介して撹拌槽2(上蓋4)に固定される。
【0028】
撹拌軸8には、外周面から径方向外側に突出する鍔部材27が取り付けられている。鍔部材27の外縁部は、他端フランジ23の外縁部と重ねられ、両外縁部は、クリップ28で挟持されている。これにより、撹拌軸8が撓み保持部14の他端部に固定される。
【0029】
ハット状のスペーサ29が、筒状部21の他端部に内嵌され、かつ、撹拌軸8の外周面に外嵌されている。スペーサ29のフランジ部位は、他端フランジ23と鍔部材27とで挟持されており、スペーサ29の円筒部位は、筒状部21の内周面と撹拌軸8の外周面との間に介在している。当該円筒部位の外周面には、筒状部21の内周面との間のクリアランスを封止するシールが設けられ、当該円筒部位の内周面には、撹拌軸8の外周面との間のクリアランスを封止するシールが設けられている。これにより、中空空間15ひいては撹拌槽2の内部が閉塞される。第1および第2軸受17,18は、鍔部材27よりも上方、すなわち、撹拌槽2の内部から隔絶された空間に配置されている。
【0030】
撹拌軸8は、長尺軸状の本体部31、および本体部31の基端部(上端部)に外嵌されるキャップ部32を含む。キャップ部32は、一端が開放された筒状に形成されている。キャップ部32に本体部31を嵌め込んだ状態で、キャップ部32は軸線Bの方向に挿し込まれたボルトで本体部31と結合される。キャップ部32の先端は本体部31に形成された段差、もしくは鍔部材27に突き当てられる。鍔部材27およびスペーサ29は本体部31に取り付けられている。
【0031】
ハウジング7の上板7cには軸受ホルダ33が固定されている。軸受ホルダ33は椀状に形成されている。伝達部材11の伝達軸12は、軸受ホルダ33に挿入され、軸受ホルダ33から下に突出する。伝達部材11のホルダ13は、伝達軸12の下端に設けられた天板部13a、および天板部13aから下方に延びる筒部13bを有する。本実施形態では、伝達軸12が天板部13aと一体に形成され、天板部13aが筒部13bとボルトで結合されているが、この構造は一例である。本構造例においては、筒部13bと撹拌軸8との組付けを終えた後に、伝達軸12と一体の天板部13aが、撹拌軸8付きの筒部13bと結合される。天板部13aは、伝達部材11に垂直に配され、水平に延びている。天板部13aは伝達軸12の軸方向(中心線Aの延在方向)に見て円形であるが、伝達軸12の軸線(中心線A)に対して偏心している。筒部13bの中心線は、伝達軸12の軸線(中心線A)に対して傾斜している。筒部13bの内周面は、筒部13bの中心線に垂直な断面をとると、円形である。撹拌軸8の基端部は、この筒部13bに下から嵌め込まれており、撹拌軸8の軸線Bは筒部13bの中心線と同軸上に配され、それにより軸線Bは中心線Aに対して傾斜する。
【0032】
第1軸受17は、撹拌軸8のキャップ部32の外周面に装着され、ホルダ13の筒部13bに保持されている。第2軸受18は、伝達軸12の外周面に装着され、軸受ホルダ33に保持されている。本実施形態では、第1軸受17も第2軸受18も、複数の転動体群を軸方向に並べた転がり軸受機構によって構成されている。
【0033】
図3Aに示すように、第1軸受17においては、転がり軸受機構が、2つの円錐ころ軸受41,42によって構成されている。本実施形態では、円錐ころ軸受41,42がどちらも単列式である。円錐ころ軸受41は、撹拌軸8(キャップ部32)の外周面に外嵌密着する内輪41aと、ホルダ13(筒部13b)の内周面に内嵌密着する外輪41bと、内輪41aおよび外輪41bの軌道面上で転動可能な転動体群41cとを有する。転動体群41cは、複数の円錐ころで構成される。円錐ころ軸受42も同様に、内輪42a、外輪42bおよび転動体群42cを有する。円錐ころ軸受41の接触角α41は、円錐ころ軸受42の接触角α42と同じである。
【0034】
第1軸受17は、2つの円錐ころ軸受41,42を背面合わせで組み合わせることによって構成されている。なお、図示例では、単列式の円錐ころ軸受41,42が軸方向に直接的に密着しているが、軸受41,42間に間座を設けてもよい。背面合わせで組み合わせているため、円錐ころ軸受41の作用点P41と円錐ころ軸受42の作用点P42とが互いに離れ、作用点P41,P42間の距離が大きくなる。
【0035】
円錐ころ軸受41がキャップ部32に外嵌され、円錐ころ軸受42がその上からキャップ部32に外嵌される。キャップ部32は、円錐ころ軸受41の内輪41aが軸方向に突き当たる段差面32aを有し、それにより、第1軸受17が撹拌軸8に対して軸方向に位置決めされる。キャップ部32の外周面には、円錐ころ軸受41,42の内輪41a,42aと密着する部位よりも基端側にてネジが切られており、そこにナット43が螺合される。ナット43を締め付けることで、円錐ころ軸受41,42が撹拌軸8に固定され、また、円錐ころ軸受41,42に予圧を付与できる。次いで、第1軸受17を装着した状態で撹拌軸8をホルダ13に挿入する。ホルダ13の筒部13bは、取外し可能な底蓋13cを有しており、撹拌軸8の挿入時には底蓋13cは取り外されている。筒部13bには円錐ころ軸受42の外輪42bが軸方向に突き当たる段差面13dを有し、それにより、撹拌軸8および第1軸受17が伝達部材11に対して撹拌軸8の軸線Bの方向に位置決めされる。その後、底蓋13cを取り付けることで、円錐ころ軸受41,42の外輪41b,42bが底蓋13cと段差面13cとで挟持され、第1軸受17が伝達部材11(ホルダ13)に固定される。
【0036】
図3Bに示すように、第2軸受18においても、転がり軸受機構が、2つの円錐ころ軸受46,47によって構成されている。円錐ころ軸受46は、伝達軸12の外周面に外嵌密着する内輪46aと、軸受ホルダ33の内周面に密着する外輪46bと、内輪46aおよび外輪46bの軌道面上で転動可能な転動体群46cとを有し、転動体群46cは複数の円錐ころで構成される。円錐ころ軸受47も同様に、内輪47a、外輪47bおよび転動体群47cを有する。円錐ころ軸受46の接触角α46は、円錐ころ軸受47の接触角α47と同じであり、第2軸受18も、2つの円錐ころ軸受46,47を背面合わせで組み合わせることによって構成されている。参照符号P46,P47は、円錐ころ軸受46,47それぞれの作用点である。
【0037】
第2軸受18の組み方も第1軸受17のものと同様である。円錐ころ軸受46,47が伝達軸12の段差面12aに突き当てられ、伝達軸12の外周面に形成されたネジにナット48が螺合される。それにより、円錐ころ軸受46,47が伝達軸12に固定される。次いで、第2軸受18を装着した状態で伝達軸12を軸受ホルダ33に挿入する。円錐ころ軸受46,47の外輪46b,47bは、軸受ホルダ33の段差面33a,33bで軸方向に挟持される。それにより、伝達軸12および第2軸受18が、軸受ホルダ33に対して中心線Aの方向に位置決めされ、軸受ホルダ33に固定される。
【0038】
(作用)
アクチュエータ10が作動すると、伝達軸12が中心線A周りに自転駆動され、ホルダ13が伝達軸12と一体になって回転する。ホルダ13に保持された撹拌軸8は、中心線A周りに、自身の軸線Bと中心線Aとの交点を支点Cとして、首振り運動を行う。より詳細には、撹拌軸8は、中心線Aに直交する平面上で中心線Aを中心とした円周を描くように運動する。撹拌軸8の支点Cよりも上方部位は、支点Cを頂点として撹拌軸8の軸線Bを母線とする逆円錐の側面を撫でるように運動し、支点Cよりも下方部位は、支点Cを頂点として撹拌軸8の軸線Bを母線とする円錐の側面を撫でるように運動する。この撹拌軸8の運動と一体となって、撓み保持部14が繰返し撓み変形すると共に、撹拌翼9が撹拌槽2内で回される。この撹拌軸8および撹拌翼9の運動によって、撹拌槽2内の物質が撹拌される。この撹拌処理中、撹拌軸8には、主としてモーメント荷重、更にはラジアル荷重が作用する。この荷重支持のため、従来例のような球面軸受は省略され、撹拌装置1は、撓み保持部14の外部(上方)に配置された第1軸受17および第2軸受18を備えている。
【0039】
球面軸受を省略したことで、従来例(図5を参照)のような多重構造を撓み保持部内に設ける必要性がなくなる。従来例では、この多重構造の大型化を回避する制約上、支点Cを撓み保持部の奥深くに位置付けることが困難であったが、本実施形態では、そのような制約がなくなる。よって、支点Cを従来例よりも奥深く、図示のとおり、撓み保持部14の中心付近に配置することが容易である。そのため、撹拌装置1の稼働中における撓み保持部14の撓み量を抑制できる。
【0040】
複雑な多重構造を要さず、撹拌軸8に本体部31を外囲する筒部を設ける必要がなくなる。したがって、図2に示すように、撓み保持部14のサイズを従来例と同等に維持しつつ、撹拌軸8の本体部31を従来例よりも太くすることができる。この場合、撹拌軸8は大容量の撹拌にも耐えられるようになるので、撹拌槽2を大型化可能となる。
【0041】
逆に、撹拌軸8の本体部31の径を従来例と同等に維持しつつ、撓み保持部14のサイズ(特に、径方向寸法)を従来例よりも小さくすることができる。この場合、撹拌装置1の稼働中における撓み保持部14の撓み量を抑制できる。また、高圧下での撹拌処理を実行中には、撹拌槽2内の高圧が撓み保持部14の筒状部21の内周面に付加される。撓み保持部14が小型化されると、撓み保持部14の表面積減少および水平断面方向の直径減少に伴って撓み保持部14の耐圧性が向上する。撓み保持部14は高圧下での撹拌処理にも耐えられるようになる。
【0042】
球面軸受を支持する取付部材96a(図5を参照)も省略できるので、撹拌軸8の軸長(特に、撓み保持部14から突出した部分の軸長)が短縮される。よって、撹拌装置1の軸方向小型化に資する。
【0043】
球面軸受を廃する代わりに、撹拌装置1は、撹拌軸8を支持する軸受部材16として、撓み保持部14の外部に配置された第1軸受17および第2軸受18を備えている。第1軸受17は、撹拌軸8とその基端部を保持するホルダ13との間に介在し、第2軸受18は、伝達軸12に装着されている。これら2つの軸受17,18を設けることで、軸受中心を支点と一致させた球面軸受が省略されても、首振り運動中の支点位置を安定させることができる。特に、第1軸受17および第2軸受18のどちらも、複数の転動体群を軸方向に並べた転がり軸受機構によって構成されているので、負荷容量が大きく、撹拌軸8を基端部で支持するのみであっても、撹拌軸8の挙動を安定化できる。
【0044】
撹拌処理中は、撹拌翼9が物質を押す際の反力で、撹拌軸8に大きなモーメント荷重が作用する。特に、支点Cから撹拌軸8の基端部(特に、ホルダ13に受容されている部分)までの距離は支点Cから撹拌翼9までの距離よりも短く、撹拌軸8の基端部には梃子原理によって大きなモーメント荷重が作用しやすい。第1軸受17は2つの円錐ころ軸受41,42を背面合わせで組み合わせることによって構成されており、第2軸受18も2つの円錐ころ軸受46,47を背面合わせで組み合わせることによって構成されている。そのため、第1軸受17において作用点P41,P42間の距離を大きくすることができ、第1軸受17で大きなモーメント荷重を支持できる。第2軸受18においても作用点P46,P47間の距離を大きくすることができ、第2軸受18においても大きなモーメント荷重を支持できる。また、第1軸受17および第2軸受18のどちらも、ラジアル荷重もアキシャル荷重も負荷できる。第1軸受17および第2軸受18にこのような構成を採用することで、撹拌軸8の挙動を安定化できる。
【0045】
[第2実施形態]
図4は第2実施形態に係る撹拌装置51の上部断面図である。第2実施形態は、撓み保持部64がベローズで実現、構成されている点、撓み保持部64が撹拌槽52の内部に配置されている点で第1実施形態と相違する。以下、この相違を中心にして、第2実施形態について説明する。
【0046】
図4に示すように、撓み保持部64は、一端部(上端部)および下端部(下端部)で下開口する筒状に形成されると共に、その周壁部位が繰返し凹凸している。撓み保持部64がこのようなベローズで実現される場合、撓み保持部64の材質には、PTFEやPP等の樹脂やゴム、金属などを用いることができる。
【0047】
撓み保持部64は、一端部(上端部)にて撹拌槽52に固定され、撓み保持部64の他端部(下端部)は撹拌槽52内に位置付けられている。撹拌軸58は撓み保持部64の中空空間65に挿通され、撹拌軸58の基端部は、撓み保持部64の外部(上方)に突出し、伝達部材11のホルダ13に保持されている。撹拌軸58は、撓み保持部64の他端部(下端部)に固定され、撓み保持部64を介して撹拌槽52に弾性支持されている。撓み保持部64の一端開口(上端開口)は開放されて軸挿通口53と繋がる一方、他端開口(下端開口)は閉塞されている。撓み保持部64の中空空間65は、撹拌槽52の軸挿通口53、ひいては撹拌槽52の外部(上方)と連通する。撓み保持部64の一端部はシールを介して撹拌槽52に密着し、撓み保持部64の他端部はシールを介して撹拌軸58に密着する。これにより、撓み保持部64の他端開口が閉塞され、撓み保持部64の中空空間64は撹拌槽52の内部と隔絶される。なお、シールは、例えばOリングやガスケットを適用できる。撓み保持部64の一端部を撹拌槽52に固定する方法、撓み保持部64の他端部を撹拌軸58に固定する方法は、特に限定されず、例えばねじ止めが用いられてもよい。また、詳細図示を省略するが、撹拌軸58の首振り運動時に撓み保持部64が撹拌軸64に対して回転するのを抑止する廻り止め機構が設けられ、これにより撓み保持部64の負担が軽減される。
【0048】
本実施形態においても、首振り運動の支点Cは、撓み保持部64内の中空空間65内に設定されている。撹拌装置51は、支点Cと軸受中心を一致させた球面軸受を備えず、代わりに、第1実施形態と同様にして撹拌軸58を支持する軸受部材16(第1軸受17および第2軸受18)を備えている。このため、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。なお、本実施形態では、支点Cが撹拌槽52内に位置付けられるので、支点Cから軸受部材16までの距離が長くなる。そのため、撹拌軸58の基端部に作用するモーメント荷重が低減され、軸受部材16およびこれを保持するホルダの小型化に資する。
【0049】
[変形例]
これまで実施形態について説明したが、上記構成は本発明の範囲内で追加、変更または削除可能である。
【0050】
例えば、第1軸受17は、背面合わせに組み合わせられた2つの円錐ころ軸受41,42によって構成されたが、正面合わせに組み合わされてもよく、円錐ころ軸受に代えてアンギュラ玉軸受によって構成されてもよい。第1軸受17において、円錐ころ軸受41の接触角α41と円錐ころ軸受42の接触角α42を同じにしているが、それぞれ異なる大きさの円錐ころ軸受を利用して接触角を変えてもよい。第1軸受17は、2つの転動体群41c,42cを軸方向に並べた円錐ころ軸受41,42によって構成されたが、軸方向に並ぶ転動体群数は3以上でもよい。第1軸受17は、単列式の2つの円錐ころ軸受41,42によって構成されたが、軸方向に2つの転動体群が並ぶ複列式の円錐ころ軸受、複列式のアンギュラ玉軸受、もしくは玉軸受によって構成されてもよい。以上の第1軸受17の変形は、第2軸受18でも同様に適用できる。第1軸受17および第2軸受18のうち一方のみが、複数の転動体を軸方向に並べた転がり軸受によって構成されてもよい。また、撹拌軸8の軸線Bは撹拌槽2の中心線Aと交差していなくてもよく、そのため、首振り運動の支点Cは、線A,Bの交点に限定されず、線B上に位置付けられていればよい。第1実施形態に係る形状を有した撓み保持部が、第2実施形態のように撹拌槽の内部に配置されていてもよく、第2実施形態に係る形状を有した撓み保持部が、第1実施形態のように撹拌槽の外部に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 撹拌装置
2 撹拌槽
3 軸挿通口
8 撹拌軸
11 伝達部材
12 伝達軸
13 ホルダ
14 撓み保持部
15 中空空間
16 軸受部材
17 第1軸受
18 第2軸受
41,42,46,47 円錐ころ軸受
41c,42c,46c,47c 転動体群
α41,α42,α46,α47 接触角
A 撹拌槽の中心線、伝達軸の軸線
B 撹拌軸の軸線
C 首振り運動の支点
図1
図2
図3
図4
図5