(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハイドロゲルシートA層とハイドロゲルシートB層との間に、半透膜、イオン交換膜、精密濾過膜、限外濾過膜及びナノ濾過膜からなる群より選択される膜がさらに配置される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性積層ハイドロゲルシート。
請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性積層ハイドロゲルシートと、導電性積層ハイドロゲルシートのハイドロゲルシートA層又はハイドロゲルシートB層に電気的に接続された電極とを有する、電極パッド。
請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性積層ハイドロゲルシートと、導電性積層ハイドロゲルシートのハイドロゲルシートA層又はハイドロゲルシートB層に電気的に接続された電極とを有し、導電性積層ハイドロゲルシートの電極に接続されていないハイドロゲルシートA層又はハイドロゲルシートB層が、生体への接触部として使用される、生体用電極パッド。
請求項8に記載の生体用電極パッドと、電極パッドの電極に電気的に接続された電源部とを有し、生体用電極パッドのハイドロゲルシートA層が正極側に、ハイドロゲルシートB層が負極側に、それぞれ配置される、生体用電気治療器。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
本発明の一態様は、少なくとも2層のハイドロゲルシート層を有する導電性積層ハイドロゲルシートに関する。本発明の一態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートの一実施形態を、
図1〜4に示す。
【0013】
図1に示すように、本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシート101は、ハイドロゲルシートA層11及びハイドロゲルシートB層12の少なくとも2層のハイドロゲルシート層を有する。本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシート101において、ハイドロゲルシートB層12の上面にハイドロゲルシートA層11が配置されることにより、ハイドロゲルシートA層11とハイドロゲルシートB層12とは、交互に積層されるように配置される。
【0014】
本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートにおいて、ハイドロゲルシートA層及びハイドロゲルシートB層がそれぞれ2層以上存在する場合、2層以上のハイドロゲルシートA層は、本明細書に開示される特徴の範囲内で、互いに同一の寸法及び/又は組成を有してもよく、互いに異なる寸法及び/又は組成を有してもよい。また、2層以上のハイドロゲルシートB層は、本明細書に開示される特徴の範囲内で、互いに同一の寸法及び/又は組成を有してもよく、互いに異なる寸法及び/又は組成を有してもよい。
【0015】
本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートにおいて、ハイドロゲルシートA層は、所定の含有量の少なくとも1種の無機塩を含有する。また、ハイドロゲルシートB層は、所定の含有量の少なくとも1種の無機塩を含有するか又は無機塩を含有しない。ハイドロゲルシートA層が所定の含有量の少なくとも1種の無機塩を含有することにより、本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートは、全体として導電性を有することができる。
【0016】
ハイドロゲルシートA層の総重量に対する、ハイドロゲルシートA層に含有される少なくとも1種の無機塩の総含有量をX重量%、ハイドロゲルシートB層の総重量に対する、ハイドロゲルシートB層に含有される少なくとも1種の無機塩の総含有量をY重量%とするとき、YはX未満である。すなわち、ハイドロゲルシートB層に含有される少なくとも1種の無機塩の総含有量Yは、ハイドロゲルシートA層に含有される少なくとも1種の無機塩の総含有量Xよりも少ない。本発明者らは、YがX未満である本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートにおいて、ハイドロゲルシートA層を正極側に配置し、以下において説明する少なくとも1種の酸を含有する導電性ハイドロゲルシートB層を負極側に配置し、直流電流を一定時間印加すると、pHの上昇及び導電性の低下が実質的に抑制されることを見出した。このような効果は、本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートにおいて、少量の無機塩を含有するか又は無機塩を含有しないハイドロゲルシートB層では、電気分解の進行が実質的に抑制され、pHの上昇及び気泡の発生が実質的に抑制される一方で、ハイドロゲルシートA層に多量の無機塩を含有させることによって、導電性が実質的に維持されることに起因すると考えられる。それ故、本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートを、例えば電極パッド及び該電極パッドを用いる各種機器に適用した場合、直流電流を一定時間印加しても、pHの上昇及び導電性の低下を実質的に回避して、該電極パッド及び機器を安定して使用することができる。
【0017】
本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートにおいて、X及びYは、下記数式(1):
0≦Y<X≦15 (1)
を満たすことが好ましい。ハイドロゲルシートB層に含有される少なくとも1種の無機塩の総含有量は、0以上であればよい。すなわち、ハイドロゲルシートB層は、無機塩を含有しなくてもよい。他方、ハイドロゲルシートA層に含有される少なくとも1種の無機塩の総含有量は、0を超える範囲であることから、本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートは、全体として導電性を有することができる。YがXを超える範囲の場合、本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートにおいて、ハイドロゲルシートA層を正極側に配置し、直流電流を一定時間印加すると、ハイドロゲルシートB層において電気分解が進行し、pHの上昇及び/又は気泡の発生が起きる可能性がある。Xは、2〜15重量%の範囲であることが好ましく、2〜8重量%の範囲であることがより好ましい。Yは、X未満であり、さらに、0以上且つ15重量%未満の範囲であることが好ましく、0以上且つ8重量%未満の範囲であることがより好ましい。Xが2重量%未満の場合、十分な導電性を発現できない可能性がある。また、Xが15重量%を超える場合、無機塩の含有量が増加しても十分な効果の上昇が得られない可能性がある。それ故、X及びYが数式(1)を満たす場合、本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートは、直流電流を一定時間印加しても、pHの上昇及び導電性の低下を実質的に抑制することができる。
【0018】
ハイドロゲルシートA層及びハイドロゲルシートB層に含有される少なくとも1種の無機塩としては、限定するものではないが、例えば、ハロゲン化ナトリウム(例えば塩化ナトリウム)、ハロゲン化リチウム及びハロゲン化カリウム等のハロゲン化アルカリ金属;ハロゲン化マグネシウム及びハロゲン化カルシウム等のハロゲン化アルカリ土類金属;並びにその他の金属ハロゲン化物等を挙げることができる。また、無機塩としては、各種金属の、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩又は燐酸塩も好適に用いることができる。或いは、無機塩として、アンモニウム塩若しくは各種錯塩等の無機塩類も好適に用いることができる。ハイドロゲルシートA層及びハイドロゲルシートB層に含有される少なくとも1種の無機塩としては、これらの無機塩をそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上の無機塩を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートにおいて、ハイドロゲルシートA層に含有される少なくとも1種の無機塩の種類及び総含有量、並びにハイドロゲルシートB層に含有される少なくとも1種の無機塩の種類及び総含有量は、限定するものではないが、例えば、所定の重量のハイドロゲルシートA層又はハイドロゲルシートB層の試料を取り出し、該試料中に含有される少なくとも1種の無機塩を、ICP発光分光分析、原子吸光分析又はイオンクロマトグラフ法等の分析手段を用いて定量することにより、決定することができる。
【0020】
本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートにおいて、ハイドロゲルシートB層は、少なくとも1種の酸を含有する。少なくとも1種の酸としては、有機酸及び無機酸、並びにそれらの混合物を挙げることができる。少なくとも1種の酸は、有機酸を含むことが好ましく、有機酸であることがより好ましい。有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、フタル酸、シュウ酸、乳酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、グルタル酸、アジピン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、安息香酸、サリチル酸及びポリアクリル酸等を挙げることができる。ハイドロゲルシートB層に含有される少なくとも1種の酸は、ハイドロゲルシートB層の総重量に対して10重量%以下であることが好ましく、0.01〜10重量%の範囲であることがより好ましく、0.1〜2重量%の範囲であることがさらに好ましい。ハイドロゲルシートB層が少なくとも1種の酸を含有することにより、ハイドロゲルシートB層のpHを前記の好ましい範囲とすることができる。これにより、本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートは、直流電流を一定時間印加しても、pHの上昇を実質的に抑制することができる。
【0021】
ハイドロゲルシートA層は、pHの変動を抑制する目的で、キトサン、弱塩基性アミノ酸又はカチオン性ポリマー等の弱塩基性物質を含有してもよい。
【0022】
本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートにおいて、ハイドロゲルシートA層に含有される少なくとも1種の酸の種類及び含有量、並びにハイドロゲルシートB層に含有される少なくとも1種の酸の種類及び含有量は、限定するものではないが、例えば、所定の重量のハイドロゲルシートA層又はハイドロゲルシートB層の試料を取り出し、該試料中に含有される少なくとも1種の酸を、有機酸の場合は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)、イオンクロマトグラフィー/質量分析(IC/MS)又はガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)等の分析手段を、無機酸の場合はICP発光分光分析、原子吸光分析又はイオンクロマトグラフ法等の分析手段を用いて定量することにより、決定することができる。
【0023】
本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートにおいて、ハイドロゲルシートA層及びハイドロゲルシートB層を構成するハイドロゲルには、当該技術分野で公知の種々のハイドロゲルを適用することができる。本明細書において、「ハイドロゲル」は、三次元の網目構造を有する高分子マトリックスと、その網目構造中に存在する水分子とを含むゲル形態の膨潤体を意味する。ハイドロゲルは、通常は、高分子マトリックスと、水と、多価アルコールとを含む。
【0024】
ハイドロゲルを構成する高分子マトリックスは、限定するものではないが、例えば、1個のエチレン性不飽和基を有する単官能単量体と、架橋性単量体との共重合体から形成することができる。
【0025】
単官能単量体としては、(メタ)アクリルアミド系単量体又は(メタ)アクリル酸エステル等の水溶性モノマーが好ましい。本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0026】
(メタ)アクリルアミド系単量体の具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド及びN-プロピル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド及びN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ペントキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘプトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-オクトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシエチル(メタ)アクリルアミド及びN-ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド;ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有のカチオン性アクリルアミド系化合物;4-アクリロイルモルフォリン及びtert-ブチルアクリルアミドスルホン酸等のスルホン酸基含有アニオン性単官能単量体又はその塩;並びにこれらの誘導体等を挙げることができる。(メタ)アクリルアミド系単量体としては、限定するものではないが、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、4-アクリロイルモルフォリン及びtert-ブチルアクリルアミドスルホン酸、並びにそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0027】
(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、アルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル及び(メタ)アクリル酸n-ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル及び(メタ)アクリル酸1-アダマンチル等の脂環式(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエトキシエチル及び(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール等の(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール等のアルコキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル及び(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル等の(ヒドロキシアルキル基にエーテル結合を介してアリール基が結合していてもよい)(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;モノ(メタ)アクリル酸グリセリン;モノ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール及びポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体等のモノ(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコール;(メタ)アクリル酸ベンジル等の芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステル;並びに(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の複素環を有する(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができる。
【0028】
前記単官能単量体は、前記で例示した(メタ)アクリルアミド系単量体に加えて、必要に応じて、(メタ)アクリル酸又はその塩、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルピロリドン、ビニルアセトアミド若しくはビニルホルムアミド等のビニルアミド系単官能単量体;アリルアルコール等の非イオン性単官能単量体、又はスチレン系単量体等を使用することができる。これらの単官能単量体は、それぞれを単独で用いてもよく、2種以上の単量体を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
ハイドロゲルシートA層及びハイドロゲルシートB層を構成するハイドロゲルにおいて、前記単官能単量体に由来する構造単位の含有量は、限定するものではないが、ハイドロゲル100重量部に対して、10重量部〜50重量部の範囲であることが好ましく、10重量部〜35重量部の範囲であることがより好ましい。前記単官能単量体に由来する構造単位の含有量が前記下限値未満の場合、ハイドロゲルの保形性が不十分となり、柔らか過ぎたり、又はちぎれ易くなったりする可能性がある。また、前記単官能単量体に由来する構造単位の含有量が前記上限値を超える場合、ハイドロゲルが硬くなり、柔軟性が損なわれる可能性がある。それ故、前記単官能単量体に由来する構造単位の含有量が前記範囲内の場合、所定の形状を保持し、且つ所定の柔軟性を有することができる。
【0030】
架橋性単量体としては、分子内に重合性を有する二重結合を2個以上有する単量体が好ましい。架橋性単量体の具体例としては、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリルアミド又は(メタ)アクリレート、テトラアリロキシエタン、並びにジアリルアンモニウムクロライド等を挙げることができる。これらの架橋性単量体は、それぞれを単独で用いてもよく、2種以上の単量体を組み合わせて用いてもよい。或いは、分子内に重合性を有する二重結合を2個以上有する架橋性単量体として、特許第2803886号公報に記載された、2個以上の(メタ)アクリロイル基又はビニル基を有し且つ400以上の分子量を有する多官能化合物である、ポリグリセリン誘導体も使用することができる。
【0031】
ハイドロゲルシートA層及びハイドロゲルシートB層を構成するハイドロゲルにおいて、前記架橋性単量体量は、ハイドロゲル100重量部に対して0.0005〜0.5重量部の範囲であることが好ましく、0.001〜0.2重量部の範囲であることがより好ましく、0.001〜0.1重量部の範囲であることがさらに好ましい。前記架橋性単量体の添加量が前記下限値未満の場合、架橋密度が低くなり、形状安定性が乏しくなると同時に、凝集力が低下し、ハイドロゲル自体の保持力が低下して、粘着力が低くなる可能性がある。また、生体(例えば皮膚等)の被着体に接触させた後、被着体からの剥離時に、被着体にハイドロゲルの一部が残留する可能性がある。この場合、本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートの取り扱い性が悪化し得る。また、前記架橋性単量体の添加量が前記上限値を超える場合、粘着力が弱くなり、且つ硬く脆いゲルになる可能性がある。なお、前記定義における高分子マトリックスは、前記単官能単量体と架橋性単量体とを重合架橋することによって形成されるマトリックスを意味する。
【0032】
ハイドロゲルシートA層及びハイドロゲルシートB層を構成するハイドロゲルにおいて、水の含有量は、限定するものではないが、ハイドロゲル100重量部に対して、10〜60重量部の範囲であることが好ましく、15〜50重量部の範囲であることがより好ましく、15〜40重量部の範囲であることが特に好ましい。水の含有量が前記下限値未満の場合、ハイドロゲルの平衡水分量に対する含水量が少なくなり、ハイドロゲルの吸湿性が強くなり、且つハイドロゲルが経時的に変質(例えば、膨潤)する可能性がある。また、水の含有量が前記上限値を超える場合、ハイドロゲルの平衡水分量に対する含水量が多くなり、乾燥によるハイドロゲルの収縮又は物性変化を生じる可能性がある。それ故、水の含有量が前記範囲内の場合、ハイドロゲルの吸湿又は収縮のような物性変化を実質的に抑制することができる。
【0033】
本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートにおいて、ハイドロゲルシートB層の総重量に対するハイドロゲルシートB層の水の含有量をα重量%とするとき、Y及びαが、下記数式(2):
0≦Y/α≦0.03 (2)
を満たすことが好ましい。Y/αは、0.02以下であることが好ましく、0.01以下であることがより好ましい。Y/αが0.03を超える場合、本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートにおいて、ハイドロゲルシートA層を正極側に配置し、直流電流を一定時間印加すると、ハイドロゲルシートB層において電気分解が進行し、pHの上昇及び/又は気泡の発生が起きる可能性がある。それ故、Y及びαが前記数式(2)を満たす場合、本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートは、直流電流を一定時間印加しても、pHの上昇及び導電性の低下を実質的に抑制することができる。
【0034】
本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートにおいて、ハイドロゲルシートA層に含有される水の含有量、並びにハイドロゲルシートB層に含有される水の含有量は、限定するものではないが、例えば、所定の重量のハイドロゲルシートA層又はハイドロゲルシートB層の試料を取り出し、該試料を乾燥させて乾燥重量を測定して、初期重量と乾燥重量との差を算出することにより、或いは、カールフィッシャー水分測定装置を用いて容量滴定法又は電量滴定法で測定することにより、決定することができる。
【0035】
多価アルコールとしては、限定するものではないが、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、プロピレングリコール及びブタンジオール等のジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール及びソルビトール等の3価以上の多価アルコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリグリセリン等の多価アルコール縮合体;並びにポリオキシエチレングリセリン等の多価アルコール変成体等を挙げることができる。前記多価アルコールの中でも、ハイドロゲルの使用温度領域(例えば室内で使用する場合は20℃前後)で液状である多価アルコールを用いることが好ましい。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン又はグリセリン等が好ましい。
【0036】
ハイドロゲルシートA層及びハイドロゲルシートB層を構成するハイドロゲルにおいて、前記多価アルコールの含有量は、限定するものではないが、ハイドロゲル100重量部に対して、20〜70重量部の範囲内であることが好ましく、20〜65重量部の範囲内であることがより好ましい。前記多価アルコールの含有量が前記下限値未満の場合、得られるハイドロゲルの保湿力、可塑性が乏しく、水分の蒸散が著しくなり、ハイドロゲルの経時安定性に欠けるとともに、柔軟性にも欠けるため、十分な粘着性が得られない可能性がある。また、前記多価アルコールの含有量が前記上限値を超える場合、高分子マトリックスが保持できる多価アルコールの量を超えてしまい、ハイドロゲルの表面から多価アルコールがブリードアウトすることによる物性変動が生じて、十分な粘着性が得られない可能性がある。それ故、多価アルコールの含有量が前記範囲内の場合、ハイドロゲルの粘着性の低下のような物性変化、或いは多価アルコールのブリードアウトのような物性変動を実質的に抑制することができる。
【0037】
本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートにおいて、ハイドロゲルシートA層及びハイドロゲルシートB層のpHは、通常は弱酸性〜中性の範囲、例えば3〜8の範囲である。ハイドロゲルシートA層のpHは、3〜8の範囲であることが好ましく、4〜7の範囲であることがより好ましい。ハイドロゲルシートB層のpHは、3〜8の範囲であることが好ましく、4〜7の範囲であることがより好ましい。ハイドロゲルシートA層及びハイドロゲルシートB層、特にハイドロゲルシートB層のpHが前記範囲の場合、本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートは、直流電流を一定時間印加しても、pHの上昇を実質的に抑制することができる。
【0038】
本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートにおいて、ハイドロゲルシートA層及びハイドロゲルシートB層は、所望により、他の添加剤を含有していてもよい。他の添加剤としては、例えば、緩衝剤、防錆剤、防徴剤、酸化防止剤、消泡剤、安定剤、界面活性剤及び着色剤等を挙げることができる。他の添加剤は、有機電解質塩のような緩衝剤が好ましい。ハイドロゲルシートA層及び/又はハイドロゲルシートB層が緩衝剤を含有する場合、ハイドロゲルシートA層及び/又はハイドロゲルシートB層に緩衝能を付与することができる。ハイドロゲルシートA層及びハイドロゲルシートB層が他の添加剤を含有することにより、本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートに種々の特性を付与することができる。
【0039】
本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートにおいて、ハイドロゲルシートA層の膜厚をa mm、ハイドロゲルシートB層の膜厚をb mmとするとき、a及びbが、下記数式(3)及び(4):
b/a≧1 (3)
0.6≦a + b≦3.0 (4)
を満たすことが好ましい。b/aが1未満の場合、或いはa + bが0.6未満の場合、本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートにおいて、ハイドロゲルシートA層を正極側に配置し、直流電流を一定時間印加すると、ハイドロゲルシートB層において電気分解が進行し、pHの上昇及び/又は気泡の発生が起きる可能性がある。また、a+bが3.0を超える場合、膜厚に応じた顕著な効果が得られない可能性がある。さらに、例えば、本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートを電極パッドに適用する場合、作業性が低下する可能性がある。それ故、a及びbが前記数式(2)及び(3)を満たす場合、本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートは、直流電流を一定時間印加しても、pHの上昇及び導電性の低下を実質的に抑制することができる。なお、ハイドロゲルシートA層及びハイドロゲルシートB層の膜厚は、限定するものではないが、例えば、マイクロメーター等を用いて測定することにより、決定することができる。また、ハイドロゲルシートA層及びハイドロゲルシートB層の外表面に、以下において説明するトップフィルム及び/又はベースフィルムが配置されている場合、該トップフィルム及び/又はベースフィルムを取り除き、前記手段によってハイドロゲルシートA層及びハイドロゲルシートB層の膜厚を測定すればよい。
【0040】
本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートにおいて、ハイドロゲルシートA層及びハイドロゲルシートB層の数は、それぞれ1層以上であればよく、その上限は特に限定されない。ハイドロゲルシートA層及びハイドロゲルシートB層の数は、例えば、それぞれ1〜3層の範囲である。例えば、
図2に示すように、本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシート101は、3層のハイドロゲルシートA層11a, 11b, 11c及び3層のハイドロゲルシートB層12a, 12b, 12cの合計6層のハイドロゲルシート層を有することができる。本実施形態の場合、ハイドロゲルシートB層12aの上面にハイドロゲルシートA層11aが配置され、ハイドロゲルシートA層11aの上面にハイドロゲルシートB層12bが配置され、ハイドロゲルシートB層12bの上面にハイドロゲルシートA層11bが配置され、ハイドロゲルシートA層11bの上面にハイドロゲルシートB層12cが配置され、ハイドロゲルシートB層12cの上面にハイドロゲルシートA層11cが配置されることにより、ハイドロゲルシートA層11a, 11b, 11cとハイドロゲルシートB層12a, 12b, 12cとが交互に積層されるように配置されることができる。
【0041】
本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートの別の一実施形態を、
図3及び4に示す。
図3に示すように、本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシート101は、ハイドロゲルシートA層11とハイドロゲルシートB層12との間に、膜13がさらに配置されることが好ましい。本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートが2層以上のハイドロゲルシートA層及び2層以上のハイドロゲルシートB層を有する場合、膜は、それぞれのハイドロゲルシートA層及びハイドロゲルシートB層の間に配置されることが好ましい。例えば、
図4に示すように、本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシート101は、3層のハイドロゲルシートA層11a, 11b, 11c及び3層のハイドロゲルシートB層12a, 12b, 12cの合計6層のハイドロゲルシート層を有し、それぞれのハイドロゲルシートA層11a, 11b, 11c及び3層のハイドロゲルシートB層12a, 12b, 12cの間に、膜13a, 13b, 13c, 13ab, 13bcをさらに配置することができる。本実施形態の場合、ハイドロゲルシートB層12aの上面にハイドロゲルシートA層11aが配置され、ハイドロゲルシートA層11aの上面にハイドロゲルシートB層12bが配置され、ハイドロゲルシートB層12bの上面にハイドロゲルシートA層11bが配置され、ハイドロゲルシートA層11bの上面にハイドロゲルシートB層12cが配置され、ハイドロゲルシートB層12cの上面にハイドロゲルシートA層11cが配置されることにより、ハイドロゲルシートA層11a, 11b, 11cとハイドロゲルシートB層12a, 12b, 12cとが交互に積層され、さらに、ハイドロゲルシートA層11aとハイドロゲルシートB層12aとの間に膜13aが、ハイドロゲルシートA層11bとハイドロゲルシートB層12bとの間に膜13bが、ハイドロゲルシートA層11cとハイドロゲルシートB層12cとの間に膜13cが、ハイドロゲルシートA層11aとハイドロゲルシートB層12bとの間に膜13abが、ハイドロゲルシートA層11bとハイドロゲルシートB層12cとの間に膜13bcが、配置されることができる。
【0042】
膜は、通常は、半透膜、イオン交換膜、精密濾過膜、限外濾過膜及びナノ濾過膜からなる群より選択される。膜は、限定するものではないが、例えば、セロハン、及び酢酸セルロース等の半透膜、並びに陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜等のイオン交換膜からなる群より選択されることが好ましく、セロハン又は陰イオン交換膜等であることがより好ましく、セロハンであることがさらに好ましい。本実施形態の場合、膜によってハイドロゲルシートA層とハイドロゲルシートB層との間の物質移動が実質的に抑制される。それ故、本実施形態に係る導電性積層ハイドロゲルシートの場合、pHの上昇及び導電性の低下の抑制効果をより長期間に亘って発現することができる。
【0043】
膜の表面積は、膜が配置されるハイドロゲルシートA層及びハイドロゲルシートB層の積層面におけるハイドロゲルシートA層の表面積の80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、略100%であることがさらに好ましい。膜の表面積が前記範囲の場合、ハイドロゲルシートA層とハイドロゲルシートB層との間の物質移動が実質的に抑制される。それ故、本実施形態に係る導電性積層ハイドロゲルシートの場合、pHの上昇及び導電性の低下の抑制効果をより長期間に亘って発現することができる。
【0044】
本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートにおいて、ハイドロゲルシートA層及び/又はハイドロゲルシートB層は、所望により、中間基材を有してもよい。中間基材は、ハイドロゲルシートの補強及び/又は裁断時の保形性の改善等のために、当該技術分野で用いられる。中間基材は、例えば、不織布又は織布から構成することができる。中間基材の材質は、当該技術分野でハイドロゲルの中間基材として通常使用されるものから適宜選択することができる。中間基材として使用される不織布又は織布の材質としては、例えば、セルロース、絹及び麻等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリウレタン等の合成繊維、並びにそれらの混紡を挙げることができる。中間基材は、必要に応じてバインダーを含むことができる。また、中間基材は、必要に応じて着色することができる。ハイドロゲルシートA層及び/又はハイドロゲルシートB層が中間基材を有することにより、本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートの強度及び/又は裁断時の保形性を向上させることができる。
【0045】
本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートにおいて、ハイドロゲルシートA層の外表面には、所望により、トップフィルムを配置することができる。また、ハイドロゲルシートB層の外表面には、所望により、ベースフィルムを配置することができる。トップフィルム及びベースフィルムは、ハイドロゲルシートA層又はハイドロゲルシートB層の外表面を略全面に亘って被覆するように配置されることが好ましい。本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートにおいて、トップフィルム及びベースフィルムを配置することにより、ハイドロゲルシートA層及びハイドロゲルシートB層の外表面を、使用時まで汚染及び/又は乾燥等から保護することができる。
【0046】
ベースフィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン若しくはポリウレタン等の樹脂からなる樹脂フィルム、紙、又は前記樹脂フィルムをラミネートした紙等を使用することができる。ベースフィルムにおいて、ハイドロゲルシートB層の外表面と接触する側の表面は、離型処理がなされていることが好ましい。離型処理の方法としては、例えば、シリコーンコーティング等を挙げることができる。離型処理の方法としては、特に、熱又は紫外線で架橋及び硬化反応させる、焼き付け型のシリコーンコーティングが好ましい。離型処理がなされるベースフィルムとしては、二軸延伸したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又は延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム等が特に好ましい。
【0047】
トップフィルムとしては、前記で例示したベースフィルムと同様の材質を適用することができる。例えば、ハイドロゲルシートA層の外表面にトップフィルムを配置し、トップフィルムの上方から紫外線照射等を行って、ハイドロゲルシートを構成する単量体を重合させる場合、光を遮断しない材質のフィルムをトップフィルムとして選択することが好ましい。このような材質のトップフィルムを用いることにより、光重合を妨げることなく単量体の重合を完了することができる。
【0048】
本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートにおいて、単量体を重合する方法は特に限定されないが、例えば、レドックス重合、ラジカル重合及び放射線重合等を挙げることができる。ラジカル重合の場合、ハイドロゲルシートA層及びハイドロゲルシートB層は、単量体を含む前記の各材料と重合開始剤とを溶媒等の中に溶解又は均一分散させ、得られた単量体配合液に、加熱又は紫外線照射等を行うことによって単量体を含む材料を重合架橋して、得ることができる。重合開始剤は、光重合開始剤又は熱重合開始剤のいずれであってもよいが、例えば、膜厚が数ミリメートルから数マイクロメートルのシートの場合、光重合開始剤を用いた紫外線によるラジカル重合が好ましい。光重合開始剤としては、例えば、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、22-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、及びトリアリールスルフォニウム ヘキサフルオロフォスフェートを挙げることができる。熱重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル及び過酸化ベンゾイルを挙げることができる。また、重合開始剤の含有量は、限定するものではないが、例えば、重合前の単量体配合液から重合開始剤を除いたもの100重量部に対して、0.01重量部以上であることが好ましく、1重量部以下であることが好ましい。紫外線照射により重合させる場合、紫外線の積算照射量は、重合開始剤の含有量等によっても異なるが、例えば、1,000 mJ/cm
2〜10,000 mJ/cm
2の範囲内であることが好ましく、2,000 mJ/cm
2〜10,000 mJ/cm
2の範囲内であることがより好ましい。前記方法により、所望の性質を備えるハイドロゲルシートA層及びハイドロゲルシートB層を有する本態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートを得ることができる。
【0049】
本発明の別の一態様は、本発明の一態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートと、導電性積層ハイドロゲルシートのハイドロゲルシートA層又はハイドロゲルシートB層に電気的に接続された電極とを有する電極パッドに関する。本態様に係る電極パッドは、種々の機器、例えば生体用測定機器又は生体用電気治療器のような医療用機器、或いは地盤若しくは岩盤の表面検査用測定機器、廃棄物処理場等の漏水シートの破損検出用機器のような工業計測用機器の電極部に適用することができる。本態様に係る電極パッドにおいて、好ましい一実施形態は、生体用測定機器又は生体用電気治療器のような医療用機器に適用し得る、生体用電極パッドである。
【0050】
本態様に係る電極パッドは、直流電流の印加用であることが好ましい。すでに説明したように、本発明の一態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートは、直流電流を一定時間印加しても、pHの上昇及び導電性の低下を実質的に抑制することができる。それ故、本態様に係る電極パッドは、直流電流の印加用として長期間に亘って安定して使用することができる。
【0051】
本態様に係る電極パッドの一実施形態を
図5及び6に示す。
図5及び6に示すように、本態様に係る電極パッド301は、本発明の一態様に係る導電性積層ハイドロゲルシート101と、導電性積層ハイドロゲルシートのハイドロゲルシートA層11又はハイドロゲルシートB層12に電気的に接続された電極21とを有することができる。
図5A及び6Aは、本発明の一態様に係る導電性積層ハイドロゲルシート101と、導電性積層ハイドロゲルシートのハイドロゲルシートA層11に電気的に接続された電極21とを有する本態様に係る電極パッド301の一実施形態を、
図5B及び6Bは、本発明の一態様に係る導電性積層ハイドロゲルシート101と、導電性積層ハイドロゲルシートのハイドロゲルシートB層12に電気的に接続された電極21とを有する本態様に係る電極パッド301の一実施形態を、それぞれ示す。本態様に係る電極パッド301は、通常は、被着体の表面Sに密着するように配置される。本態様に係る電極パッド301において、導電性積層ハイドロゲルシート101の電極21に接続されていないハイドロゲルシートA層11又はハイドロゲルシートB層12は、被着体の表面Sへの接触部として使用される。ハイドロゲルシートA層11及びハイドロゲルシートB層12は、粘着性及び柔軟性を有することから、本態様に係る電極パッド301は、ハイドロゲルシートA層11又はハイドロゲルシートB層12の外表面を介して、被着体の表面Sの形状に沿って密着することができる。
【0052】
また、
図7及び8に示すように、本態様に係る電極パッド301は、以下において説明する支持基材14の表面に配置された電極21と、電極21の表面に積層するように配置された本発明の一態様に係る導電性積層ハイドロゲルシート101とを有してもよい。
【0053】
例えば、本態様に係る電極パッド301が生体用電極パッドの実施形態である場合、被着体の表面Sは、皮膚等の生体の一部分であることが好ましい。すでに説明したように、本発明の一態様に係る導電性積層ハイドロゲルシート101は、直流電流を一定時間印加しても、pHの上昇及び導電性の低下を実質的に抑制することができる。それ故、本態様に係る電極パッド301は、被着体の表面Sに実質的な影響を与えることなく、直流電流の印加用として長期間に亘って安定して使用することができる。
【0054】
本態様に係る電極パッド301は、所望により、ハイドロゲルシートA層11又はハイドロゲルシートB層12の外表面に、支持基材14をさらに配置することが好ましい。支持基材14は、ハイドロゲルシートA層11又はハイドロゲルシートB層12の外表面を略全面に亘って被覆するように配置されることが好ましい。本態様に係る電極パッド301において、支持基材14を配置することにより、ハイドロゲルシートA層11又はハイドロゲルシートB層12の外表面を絶縁するとともに、ハイドロゲルシートA層11又はハイドロゲルシートB層12の外表面を汚染及び/又は乾燥等から保護することができる。
【0055】
支持基材14としては、一般的な絶縁性樹脂を用いることができる。支持基材14は、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、PET、ポリウレタン若しくはシリコーン等を含有するフィルム、発泡体、不織布、又はゴム等であることが好ましい。
【0056】
例えば、
図5及び6に示す実施形態において、支持基材14は、前記の中でも、加工性及び/又は透湿性に優れ、且つ導電性積層ハイドロゲルシート101との貼着性も良好であることから、織布又は不織布であることが好ましい。本実施形態において、支持基材14は、これらの中でも、スパンボンド法により製造されたポリオレフィン製の不織布が特に好ましい。支持基材14の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.2〜1.2 mmの範囲である。支持基材14の厚さが0.2 mm未満の場合、支持基材14が軟弱となり、電極パッド301の保形性が損なわれる可能性がある。また、支持基材14の厚さが1.2 mmを超える場合、支持基材14が厚くなりすぎ、電極パッド301をコンパクトに形成できず、取り扱い性が損なわれる可能性がある。支持基材14の目付け量は、特に限定されないが、例えば、50〜110 g/m
2の範囲である。支持基材14の目付け量が50 g/m
2未満の場合、支持基材14が軟弱となり、電極パッド301の保形性が損なわれる可能性がある。また、支持基材14の目付け量が110 g/m
2を超える場合、支持基材14の可撓性が損なわれ、電極パッド301の取り扱い性が損なわれる可能性がある。
【0057】
例えば、
図7及び8に示す実施形態において、支持基材14は、前記の中でも、柔軟で伸縮性がなく且つ比較的腰強度の高い樹脂フィルムであることが好ましい。このような樹脂フィルムとしては、例えば、PET、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン及びポリプロピレン等の樹脂フィルムを挙げることができる。本実施形態において、支持基材14は、10〜500 μmの厚さを有する前記樹脂フィルムであることが好ましい。支持基材14は、特に、腰強度が高く、印刷が容易なPETフィルムであることが好ましい。
【0058】
電極21は、通常は、所定の導電性物質を用いて得ることができる。このような導電性物質としては、例えばニッケル、モリブデン、ステンレス、銀若しくは白金等の金属、銀若しくは銀−塩化銀のような金属混合物、又はカーボンブラック若しくはグラファイト等を、単独で又は2種以上の前記材料を混合して調製される導電性ペーストを挙げることができる。電極21は、例えば、前記で説明した支持基材14の表面に導電性ペーストを印刷して、電極の導電層を形成することにより、得ることができる。或いは、電極21は、前記で説明した支持基材14と、銀、アルミニウム若しくはスズ等の金属箔又は前記で説明した導電性物質を含有するフィルムとをラミネートすることよっても、得ることができる。
【0059】
本発明の別の一態様は、本発明の一態様に係る生体用電極パッドと、生体用電極パッドの電極に電気的に接続された電源部とを有する、生体用電気治療器に関する。本態様に係る生体用電気治療器において、通常は、生体用電極パッドのハイドロゲルシートA層が正極側に、ハイドロゲルシートB層が負極側に、それぞれ配置される。
【0060】
本態様に係る生体用電気治療器は、直流電流の印加用であることが好ましい。すでに説明したように、本発明の一態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートは、直流電流を一定時間印加しても、pHの上昇及び導電性の低下を実質的に抑制することができる。それ故、本態様に係る生体用電気治療器は、直流電流の印加用として長期間に亘って安定して使用することができる。
【0061】
以上、詳細に説明したように、本発明の一態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートは、直流電流を一定時間印加しても、pHの上昇及び導電性の低下を実質的に抑制することができる。それ故、本発明の一態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートを、種々の機器、例えば生体用測定機器又は生体用電気治療器のような医療用機器、或いは地盤若しくは岩盤の表面検査用測定機器、廃棄物処理場等の漏水シートの破損検出用機器のような工業計測用機器の電極部に使用される電極パッドの構成部材として適用することにより、これらの機器を、特に直流電流の印加用として長期間に亘って安定して使用することができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0063】
<I:導電性ハイドロゲルシートの製造>
[製造例1:多量の無機塩を含有するハイドロゲルシートの製造]
アクリルアミド20重量部、N,N-メチレンビスアクリルアミド0.03重量部、塩化ナトリウム5重量部、イオン交換水28重量部、クエン酸1重量部、クエン酸3ナトリウム2重量部を計量し、グリセリンを加えて全体を100重量部として混合液を得た。この混合液100重量部に対して、光重合開始剤として、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(商品名:イルガキュア1173)0.13重量部を加え、混合及び溶解して、単量体配合液を得た。次に、厚さ0.3 mmのシリコーンゴムシートを切り抜いて、120 mm×120 mmの空間を設けた型枠を作製した。150 mm角のガラス基板上に少量のイオン交換水を滴下し、150 mm角にカットした厚さ100 μmのシリコーンコーティングされたPETフィルムを貼付して密着させた。このPETフィルムの上面に、先に作製したシリコーンゴムシートの型枠を置いた。この枠内に、単量体配合液を滴下した。さらに、その上面を、150 mm角にカットした厚さ40 μmのシリコーンコーティングされたPETフィルムで覆った。PETフィルムの上面に、ガラス基板を載せて、クリップで固定した。これに、紫外線照射装置(JATEC社製、JU-C1500、メタルハライドランプ、コンベアスピード0.4 m/分、総照射エネルギー量3,000 mJ/cm
2)を用いて紫外線を照射した。紫外線照射によって単量体を重合させて、導電性ハイドロゲルシートの総重量に対して無機塩として5重量%の塩化ナトリウムを含有し、酸として1重量%のクエン酸を含有し、且つ28重量%の水を含有する膜厚0.3 mmの導電性ハイドロゲルシートを得た。
【0064】
[製造例2:無機塩を含有しないハイドロゲルシートの製造]
製造例1において、単量体配合液中の塩化ナトリウムの量を0重量部に、且つシリコーンゴムシートの型枠の厚さを0.6 mmに変更した他は、製造例1と同様の手順で、導電性ハイドロゲルシートの総重量に対して酸として1重量%のクエン酸を含有し、且つ28重量%の水を含有するが無機塩として塩化ナトリウムを含有しない膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートを得た。
【0065】
[製造例3:無機塩を含有しないハイドロゲルシートの製造]
製造例1において、単量体配合液中の塩化ナトリウムの量を0重量部に、且つシリコーンゴムシートの型枠の厚さを0.9 mmに変更した他は、製造例1と同様の手順で、導電性ハイドロゲルシートの総重量に対して酸として1重量%のクエン酸を含有し、且つ28重量%の水を含有するが無機塩として塩化ナトリウムを含有しない膜厚0.9 mmの導電性ハイドロゲルシートを得た。
【0066】
[製造例4:無機塩を含有しないハイドロゲルシートの製造]
製造例1において、単量体配合液中の塩化ナトリウムの量を0重量部に変更した他は、製造例1と同様の手順で、導電性ハイドロゲルシートの総重量に対して酸として1重量%のクエン酸を含有し、且つ28重量%の水を含有するが無機塩として塩化ナトリウムを含有しない膜厚0.3 mmの導電性ハイドロゲルシートを得た。
【0067】
[製造例5:多量の無機塩を含有するハイドロゲルシートの製造]
製造例1において、シリコーンゴムシートの型枠の厚さを0.6 mmに変更した他は、製造例1と同様の手順で、導電性ハイドロゲルシートの総重量に対して無機塩として5重量%の塩化ナトリウムを含有し、酸として1重量%のクエン酸を含有し、且つ28重量%の水を含有する膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートを得た。
【0068】
[製造例6:多量の無機塩を含有するハイドロゲルシートの製造]
製造例1において、シリコーンゴムシートの型枠の厚さを0.9 mmに変更した他は、製造例1と同様の手順で、導電性ハイドロゲルシートの総重量に対して無機塩として5重量%の塩化ナトリウムを含有し、酸として1重量%のクエン酸を含有し、且つ28重量%の水を含有する膜厚0.9 mmの導電性ハイドロゲルシートを得た。
【0069】
[製造例7:多量の無機塩を含有するハイドロゲルシートの製造]
製造例1において、単量体配合液中の塩化ナトリウムの量を2.5重量部に変更した他は、製造例1と同様の手順で、導電性ハイドロゲルシートの総重量に対して無機塩として2.5重量%の塩化ナトリウムを含有し、酸として1重量%のクエン酸を含有し、且つ28重量%の水を含有する膜厚0.3 mmの導電性ハイドロゲルシートを得た。
【0070】
[製造例8:多量の無機塩を含有するハイドロゲルシートの製造]
製造例1において、単量体配合液中の塩化ナトリウムの量を2.5重量部に、且つシリコーンゴムシートの型枠の厚さを0.6 mmに変更した他は、製造例1と同様の手順で、導電性ハイドロゲルシートの総重量に対して無機塩として2.5重量%の塩化ナトリウムを含有し、酸として1重量%のクエン酸を含有し、且つ28重量%の水を含有する膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートを得た。
【0071】
[製造例9:少量の無機塩を含有するハイドロゲルシートの製造]
製造例1において、単量体配合液中の塩化ナトリウムの量を0.1重量部に、且つシリコーンゴムシートの型枠の厚さを0.6 mmに変更した他は、製造例1と同様の手順で、導電性ハイドロゲルシートの総重量に対して無機塩として0.1重量%の塩化ナトリウムを含有し、酸として1重量%のクエン酸を含有し、且つ28重量%の水を含有する膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートを得た。
【0072】
[製造例10:少量の無機塩を含有するハイドロゲルシートの製造]
製造例1において、単量体配合液中の塩化ナトリウムの量を0.1重量部に、イオン交換水の量を38重量部に、且つシリコーンゴムシートの型枠の厚さを0.6 mmに変更した他は、製造例1と同様の手順で、導電性ハイドロゲルシートの総重量に対して無機塩として0.1重量%の塩化ナトリウムを含有し、酸として1重量%のクエン酸を含有し、且つ38重量%の水を含有する膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートを得た。
【0073】
[製造例11:少量の無機塩を含有するハイドロゲルシートの製造]
製造例1において、単量体配合液中の塩化ナトリウム5重量部を硫酸ナトリウム0.5重量部に、イオン交換水の量を50重量部に、且つシリコーンゴムシートの型枠の厚さを0.6 mmに変更した他は、製造例1と同様の手順で、導電性ハイドロゲルシートの総重量に対して無機塩として0.5重量%の硫酸ナトリウムを含有し、酸として1重量%のクエン酸を含有し、且つ50重量%の水を含有する膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートを得た。
【0074】
[製造例12:少量の無機塩を含有するハイドロゲルシートの製造]
製造例1において、単量体配合液中の塩化ナトリウムの量を0.1重量部に、且つシリコーンゴムシートの型枠の厚さを0.9 mmに変更した他は、製造例1と同様の手順で、導電性ハイドロゲルシートの総重量に対して無機塩として0.1重量%の塩化ナトリウムを含有し、酸として1重量%のクエン酸を含有し、且つ28重量%の水を含有する膜厚0.9 mmの導電性ハイドロゲルシートを得た。
【0075】
[製造例13:少量の無機塩を含有するハイドロゲルシートの製造]
製造例1において、単量体配合液中の塩化ナトリウムの量を0.1重量部に、且つクエン酸の量を0.2重量部に、且つシリコーンゴムシートの型枠の厚さを0.9 mmに変更した他は、製造例1と同様の手順で、導電性ハイドロゲルシートの総重量に対して無機塩として0.1重量%の塩化ナトリウムを含有し、酸として0.2重量%のクエン酸を含有し、且つ28重量%の水を含有する膜厚0.9 mmの導電性ハイドロゲルシートを得た。
【0076】
[製造例14:無機塩を含有しないハイドロゲルシートの製造]
製造例1において、単量体配合液中の塩化ナトリウムの量を0重量部に、且つシリコーンゴムシートの型枠の厚さを0.9 mmに変更した他は、製造例1と同様の手順で、導電性ハイドロゲルシートの総重量に対して酸として1重量%のクエン酸を含有し、且つ28重量%の水を含有するが無機塩として塩化ナトリウムを含有しない膜厚0.9 mmの導電性ハイドロゲルシートを得た。
【0077】
[製造例15:無機塩を含有しないハイドロゲルシートの製造]
製造例1において、単量体配合液中の塩化ナトリウムの量を0重量部に、ポリアクリル酸を1重量部に、且つシリコーンゴムシートの型枠の厚さを0.6 mmに変更した他は、製造例1と同様の手順で、導電性ハイドロゲルシートの総重量に対して酸として1重量%のクエン酸を含有し、且つ28重量%の水を含有するが無機塩として塩化ナトリウムを含有しない膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートを得た。
【0078】
[製造例16:無機塩を含有しないハイドロゲルシートの製造]
製造例1において、単量体配合液中の塩化ナトリウムの量を0重量部に、クエン酸を0重量部に、且つシリコーンゴムシートの型枠の厚さを0.6 mmに変更した他は、製造例1と同様の手順で、導電性ハイドロゲルシートの総重量に対して28重量%の水を含有するが無機塩として塩化ナトリウムを含有せず、且つ酸としてクエン酸を含有しない膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートを得た。
【0079】
<II:導電性積層ハイドロゲルシートの製造>
[実施例1]
製造例1で作製した多量の無機塩を含有する膜厚0.3 mmの導電性ハイドロゲルシートと、製造例2で作製した無機塩を含有しない膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートとを積層して、総膜厚0.9 mmの導電性積層ハイドロゲルシートを得た。得られた導電性積層ハイドロゲルシートにおいて、多量の無機塩を含有する導電性ハイドロゲルシート層がハイドロゲルシートA層に、無機塩を含有しない導電性ハイドロゲルシート層がハイドロゲルシートB層に、それぞれ対応する。本実施例の場合、ハイドロゲルシートB層の上面にハイドロゲルシートA層が配置される。
【0080】
[実施例2]
実施例1において、ハイドロゲルシートB層を、製造例3で作製した無機塩を含有しない膜厚0.9 mmの導電性ハイドロゲルシートに変更した他は、実施例1と同様の手順で、総膜厚1.2 mmの導電性積層ハイドロゲルシートを得た。
【0081】
[実施例3]
製造例1で作製した多量の無機塩を含有する膜厚0.3 mmの導電性ハイドロゲルシート2枚と、製造例2で作製した無機塩を含有しない膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシート2枚とを交互に積層して、総膜厚1.8 mmの導電性積層ハイドロゲルシートを得た。得られた導電性積層ハイドロゲルシートにおいて、2層の多量の無機塩を含有する導電性ハイドロゲルシート層がハイドロゲルシートA層(以下、「ハイドロゲルシートA層」及び「ハイドロゲルシートA’層」とも記載する)に、2層の無機塩を含有しない導電性ハイドロゲルシート層がハイドロゲルシートB層(以下、「ハイドロゲルシートB層」及び「ハイドロゲルシートB’層」とも記載する)に、それぞれ対応する。本実施例の場合、ハイドロゲルシートB層の上面にハイドロゲルシートA層が配置され、ハイドロゲルシートA層の上面にハイドロゲルシートB’層が配置され、ハイドロゲルシートB’層の上面にハイドロゲルシートA’層が配置される。
【0082】
[実施例4]
製造例1で作製した多量の無機塩を含有する膜厚0.3 mmの導電性ハイドロゲルシートと、製造例2で作製した無機塩を含有しない膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートとを積層し、さらにその間に、半透膜としてセロハン(二村化学社製、FP-300)を配置して、総膜厚0.9 mmの導電性積層ハイドロゲルシートを得た。
【0083】
[実施例5]
実施例1において、ハイドロゲルシートA層を、製造例5で作製した多量の無機塩を含有する膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートに、且つハイドロゲルシートB層を、製造例9で作製した少量の無機塩を含有する膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートに変更した他は、実施例1と同様の手順で、総膜厚1.2 mmの導電性積層ハイドロゲルシートを得た。
【0084】
[実施例6]
実施例3において、ハイドロゲルシートA層及びA’層を、製造例5で作製した多量の無機塩を含有する膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートに、且つハイドロゲルシートB層及びB’層を、製造例9で作製した少量の無機塩を含有する膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートに変更した他は、実施例3と同様の手順で、総膜厚2.4 mmの導電性積層ハイドロゲルシートを得た。
【0085】
[実施例7]
実施例1において、ハイドロゲルシートA層を、製造例5で作製した多量の無機塩を含有する膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートに、且つハイドロゲルシートB層を、製造例10で作製した少量の無機塩を含有する膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートに変更した他は、実施例1と同様の手順で、総膜厚1.2 mmの導電性積層ハイドロゲルシートを得た。
【0086】
[実施例8]
実施例1において、ハイドロゲルシートA層を、製造例5で作製した多量の無機塩を含有する膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートに、且つハイドロゲルシートB層を、製造例11で作製した少量の無機塩を含有する膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートに変更した他は、実施例1と同様の手順で、総膜厚1.2 mmの導電性積層ハイドロゲルシートを得た。
【0087】
[実施例9]
実施例1において、ハイドロゲルシートA層を、製造例5で作製した多量の無機塩を含有する膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートに、且つハイドロゲルシートB層を、製造例12で作製した少量の無機塩を含有する膜厚0.9 mmの導電性ハイドロゲルシートに変更した他は、実施例1と同様の手順で、総膜厚1.5 mmの導電性積層ハイドロゲルシートを得た。
【0088】
[実施例10]
実施例1において、ハイドロゲルシートA層を、製造例5で作製した多量の無機塩を含有する膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートに、且つハイドロゲルシートB層を、製造例13で作製した少量の無機塩を含有する膜厚0.9 mmの導電性ハイドロゲルシートに変更した他は、実施例1と同様の手順で、総膜厚1.5 mmの導電性積層ハイドロゲルシートを得た。
【0089】
[実施例11]
製造例6で作製した多量の無機塩を含有する膜厚0.9 mmの導電性ハイドロゲルシートと、製造例14で作製した無機塩を含有しない膜厚0.9 mmの導電性ハイドロゲルシートとを積層し、さらにその間に、イオン交換膜として陰イオン交換膜(アストム社製、ASE)を配置して、総膜厚1.8 mmの導電性積層ハイドロゲルシートを得た。
【0090】
[実施例12]
実施例1において、ハイドロゲルシートB層を、製造例4で作製した無機塩を含有しない膜厚0.3 mmの導電性ハイドロゲルシートに変更した他は、実施例1と同様の手順で、総膜厚0.6 mmの導電性積層ハイドロゲルシートを得た。
【0091】
[実施例13]
実施例1において、ハイドロゲルシートB層を、製造例15で作製した無機塩を含有しない膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートに変更した他は、実施例1と同様の手順で、総膜厚0.9 mmの導電性積層ハイドロゲルシートを得た。
【0092】
[比較例1]
実施例1において、ハイドロゲルシートB層を、製造例5で作製した多量の無機塩を含有する膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートに変更した他は、実施例1と同様の手順で、総膜厚0.9 mmの導電性積層ハイドロゲルシートを得た。
【0093】
[比較例2]
実施例1において、ハイドロゲルシートB層を、製造例6で作製した多量の無機塩を含有する膜厚0.9 mmの導電性ハイドロゲルシートに変更した他は、実施例1と同様の手順で、総膜厚1.2 mmの導電性積層ハイドロゲルシートを得た。
【0094】
[比較例3]
実施例1において、ハイドロゲルシートA層を、製造例5で作製した多量の無機塩を含有する膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートに、ハイドロゲルシートB層を、製造例6で作製した多量の無機塩を含有する膜厚0.9 mmの導電性ハイドロゲルシートに、それぞれ変更した他は、実施例1と同様の手順で、総膜厚1.5 mmの導電性積層ハイドロゲルシートを得た。
【0095】
[比較例4]
実施例1において、ハイドロゲルシートA層を、製造例4で作製した無機塩を含有しない膜厚0.3 mmの導電性ハイドロゲルシートに、ハイドロゲルシートB層を、製造例2で作製した無機塩を含有しない膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートに、それぞれ変更した他は、実施例1と同様の手順で、総膜厚0.9 mmの導電性積層ハイドロゲルシートを得た。
【0096】
[比較例5]
実施例1において、ハイドロゲルシートA層を、製造例4で作製した無機塩を含有しない膜厚0.3 mmの導電性ハイドロゲルシートに、ハイドロゲルシートB層を、製造例3で作製した無機塩を含有しない膜厚0.9 mmの導電性ハイドロゲルシートに、それぞれ変更した他は、実施例1と同様の手順で、総膜厚1.2 mmの導電性積層ハイドロゲルシートを得た。
【0097】
[比較例6]
実施例1において、ハイドロゲルシートA層を、製造例2で作製した無機塩を含有しない膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートに、ハイドロゲルシートB層を、製造例3で作製した無機塩を含有しない膜厚0.9 mmの導電性ハイドロゲルシートに、それぞれ変更した他は、実施例1と同様の手順で、総膜厚1.5 mmの導電性積層ハイドロゲルシートを得た。
【0098】
[比較例7]
実施例1において、ハイドロゲルシートB層を、製造例16で作製した無機塩を含有しない膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートに変更した他は、実施例1と同様の手順で、総膜厚0.9 mmの導電性積層ハイドロゲルシートを得た。
【0099】
[比較例8]
実施例1において、ハイドロゲルシートA層を、製造例7で作製した多量の無機塩を含有する膜厚0.3 mmの導電性ハイドロゲルシートに、ハイドロゲルシートB層を、製造例8で作製した多量の無機塩を含有する膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートに、それぞれ変更した他は、実施例1と同様の手順で、総膜厚0.9 mmの導電性積層ハイドロゲルシートを得た。
【0100】
[比較例9]
実施例1において、ハイドロゲルシートA層を、製造例2で作製した無機塩を含有しない膜厚0.6 mmの導電性ハイドロゲルシートに、ハイドロゲルシートB層を、製造例1で作製した多量の無機塩を含有する膜厚0.3 mmの導電性ハイドロゲルシートに、それぞれ変更した他は、実施例1と同様の手順で、総膜厚0.9 mmの導電性積層ハイドロゲルシートを得た。
【0101】
<III:導電性積層ハイドロゲルシートの評価>
[III-1:直流印加時の抵抗値の変化]
2枚のSUS板の間に、25 mm角に切断した実施例又は比較例の導電性積層ハイドロゲルシートを挟持した試験材料を、それぞれ2組準備した。2組のうち、一方の試験材料のハイドロゲルシートA層(実施例1、2、4、5及び7〜12、並びに比較例1〜9)又はハイドロゲルシートA’層(実施例3及び6)側のSUS板に、安定化直流電源(PAR18-6A、TEXIO製)の正極を、他方の試験材料のハイドロゲルシートB層(実施例1、2、4、5及び7〜12、並びに比較例1〜9)又はハイドロゲルシートB’層(実施例3及び6)側のSUS板に負極を、それぞれ接続した。2組の試験材料において、正極又は負極と接続されていない、一方のハイドロゲルシートB層側のSUS板と他方のハイドロゲルシートA層側のSUS板との間に、1 kΩの抵抗を接続した。前記回路において、抵抗は、被着体の表面、例えば生体の皮膚を模擬している。前記回路に、3 Vの印加直流電圧、及び10分間の印加時間の条件で、直流電流を印加した。回路の抵抗を測定し、抵抗が変化しなかった場合を○、増加した場合を×と判定した。
【0102】
[III-2:直流印加時のpHの変化]
III-1に記載の手順で、実施例又は比較例の導電性積層ハイドロゲルシートの試験材料を接続した回路に直流電流を印加した。印加後、試験材料から導電性積層ハイドロゲルシートを取り外した。実施例及び比較例の導電性積層ハイドロゲルシートのハイドロゲルシートB層の表面に、pH試験紙を置いた。導電性積層ハイドロゲルシートの両表面を、PETフィルムで挟持して、1分間保持した。その後、pH試験紙を取り出し、pH値を確認した。同様の手順で、直流印加前の実施例及び比較例の導電性積層ハイドロゲルシートにおけるハイドロゲルシートB層のpH値を測定したところ、いずれの実施例及び比較例の導電性積層ハイドロゲルシートの場合も、pH 5であった。直流印加前のpHに基づき、印加後のpH値が3〜8の範囲であった場合を○、2以下又は9以上であった場合を×と判定した。
【0103】
[III-3:評価結果]
実施例及び比較例の導電性積層ハイドロゲルシートにおける各ハイドロゲルシート層の寸法及び無機塩量、並びに該導電性積層ハイドロゲルシートに直流を印加した時の評価結果を表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
表1に示すように、実施例1〜13の導電性積層ハイドロゲルシートでは、前記条件で直流電流を印加した後、抵抗値は変化せず、またハイドロゲルシートB層のpH値は変化しなかったか又は5〜8の範囲であった。これに対し、比較例1〜3及び7〜9の導電性積層ハイドロゲルシートでは、前記条件で直流電流を印加した後、抵抗値は変化しなかったものの、ハイドロゲルシートB層のpH値が9に上昇した。また、比較例4〜6の導電性積層ハイドロゲルシートでは、前記条件で直流電流を印加した後、ハイドロゲルシートB層のpH値は変化しなかったものの、抵抗値が増加した。
【0106】
実施例3の導電性積層ハイドロゲルシートについて、導電性積層ハイドロゲルシートの作製から7日間経過後に、前記と同様の手順でpHの変化を評価したところ、pH 5を維持していた。この結果から、本発明の一態様に係る導電性積層ハイドロゲルシートにおいて、ハイドロゲルシートA層とハイドロゲルシートB層との間に膜を配置することにより、本発明の効果をより長期間に亘って発現することができることが明らかとなった。