(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のロック通電手段は、前記ロック電流の大きさが所定の時間をかけて第1の所定値になるまで増加するように、前記制御を行う、請求項1に記載のモータ駆動制御装置。
前記ロック通電制御回路は、前記プリドライブ回路から前記複数相の駆動コイルのうちのいずれかの第1の相に設けられた前記ハイサイドスイッチング素子及び前記ローサイドスイッチング素子の一方又は両方に出力されるPWM信号のオンデューティを変更することにより、前記ロック電流の大きさを変更し、
前記第1のロック通電手段は、前記PWM信号のオンデューティを第1のオンデューティになるように変更することで前記制御を行い、
前記第2のロック通電手段は、前記PWM信号のオンデューティを前記第1のオンデューティよりも小さい第2のオンデューティとなるように変更することで前記制御を行う、請求項3に記載のモータ駆動制御装置。
前記第2のロック通電手段は、前記PWM信号のオンデューティが第1のオンデューティである状態を第2の所定期間維持し、その後、前記PWM信号のオンデューティが第2のオンデューティである状態を第3の所定期間維持する、請求項4又は5に記載のモータ駆動制御装置。
前記第2のロック通電手段は、前記第2の所定期間と前記第3の所定期間との間の期間において、前記PWM信号のオンデューティが時間の経過とともに変化するように前記制御を行う、請求項6又は7に記載のモータ駆動制御装置。
前記第2のロック通電手段は、前記PWM信号のオンデューティが前記第1のオンデューティから前記第2のオンデューティとなるまでの間の期間に、前記PWM信号のオンデューティが前記第1のオンデューティよりも小さく前記第2のオンデューティよりも大きい第3のオンデューティとなる状態を第4の所定期間維持する、請求項4から8のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置。
前記第2のロック通電手段は、前記第2の所定期間と前記第4の所定期間との間の期間と、前記第4の所定期間と前記第3の所定期間との間の期間との少なくとも一方において、前記PWM信号のオンデューティが時間の経過とともに変化するように前記制御を行う、請求項9に記載のモータ駆動制御装置。
モータの回転開始前のロック通電期間において、ロータを所定のロック位置に保持するためのロック電流を駆動コイルに流す制御を行い、前記ロータの位置を検出するためのセンサを用いずにモータの複数相の駆動コイルを選択的に通電して前記モータを駆動するモータの駆動制御方法であって、
前記ロック通電期間が始まってから第1の所定期間が経過した時に前記ロック電流の大きさが第1の所定値になるように制御する第1のロック通電ステップと、
前記第1の所定期間が経過した後で、前記ロック通電期間の終了時に前記ロック電流の大きさが前記第1の所定値よりも小さい第2の所定値になるように制御する第2のロック通電ステップとを備える、モータの駆動制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態におけるモータ駆動制御装置について説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるモータ駆動制御装置1の構成を示す図である。
【0024】
図1に示されるように、モータ駆動制御装置1は、インバータ回路2と、制御回路部3と、誘起電圧検出回路8とを備える。モータ駆動制御装置1は、同期モータ10に駆動電力を供給し、同期モータ10を駆動させる。なお、本実施の形態における同期モータ10は、U相、V相、W相の駆動コイルLu,Lv,Lwを有する3相モータである。同期モータ10は、ロータの位置を検出するためのセンサを持たないセンサレス同期モータである。すなわち、モータ駆動制御装置1は、ロータの位置を検出するためのセンサを用いない、位置センサレス方式のモータ駆動制御装置である。
【0025】
誘起電圧検出回路8は、インバータ回路2から同期モータ10のU相、V相、W相の駆動コイルLu,Lv,Lwのそれぞれへの電流供給ラインに接続されており、各相の駆動コイルについての誘起電圧を検出する。検出結果は制御回路部3に出力される。
【0026】
インバータ回路2は、制御回路部3のプリドライブ回路4とともに、同期モータ10の各相に電流を流すモータ駆動部9を構成する。インバータ回路2は、プリドライブ回路4から出力される駆動信号R1から駆動信号R6に基づいて同期モータ10の各相の駆動コイルを選択的に通電し、同期モータ10の回転を制御する。インバータ回路2は、制御回路部3による制御に基づいて、3相の駆動コイルLu,Lv,Lwに発生する逆起電圧に応じて各相の駆動コイルを選択的に通電する。
【0027】
本実施の形態において、インバータ回路2は、同期モータ10の駆動コイルLu,Lv,Lwのそれぞれに駆動電流を供給するための6個のスイッチング素子Q1〜スイッチング素子Q6を備えている。スイッチング素子Q1,Q3,Q5は、直流電源Vccの正極側に配置されたPチャンネルのMOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field Effect Transistor)からなるハイサイドスイッチング素子である。スイッチング素子Q2,Q4,Q6は、直流電源Vccの負極側に配置されたNチャンネルのMOSFETからなるローサイドスイッチング素子である。スイッチング素子Q1,Q2の組み合わせ、スイッチング素子Q3,Q4の組み合わせ、及びスイッチング素子Q5,Q6の組み合わせのそれぞれにおいて、2つのスイッチング素子が直列に接続されている。そして、これらの3組の直列回路が並列に接続されて、ブリッジ回路が構成されている。スイッチング素子Q1,Q2の接続点がU相の駆動コイルLuに接続され、スイッチング素子Q3,Q4の接続点がV相の駆動コイルLvに接続され、スイッチング素子Q5,Q6の接続点がW相の駆動コイルLwに接続されている。
【0028】
制御回路部3は、プリドライブ回路4と、ロック通電制御回路5と、モータ駆動制御回路6と、回転位置推定部7とを有している。制御回路部3は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、マイクロコンピュータなどのプログラマブルデバイスを用いて構成することができる。
【0029】
回転位置推定部7は、誘起電圧検出回路8の検出結果に基づいて、同期モータ10のロータの回転位置を推定する。モータ駆動制御回路6は、回転位置推定部7により推定されたロータの回転位置に応じて、プリドライブ回路4の動作を制御する。モータ駆動制御回路6は、ロック通電後の強制転流からセンサレス駆動までの動作を制御する。
【0030】
ロック通電制御回路5は、同期モータ10の始動開始時にロータを所定の位置にロックするロック通電の動作を制御する。すなわち、ロック通電制御回路5は、同期モータ10の回転開始前のロック通電期間において、ロータを所定のロック位置に保持するためのロック電流を、モータ駆動部2から駆動コイルLu,Lv,Lwに流すように、モータ駆動部2を制御する。
【0031】
プリドライブ回路4は、インバータ回路2の6個のスイッチング素子Q1〜Q6のそれぞれのゲート端子に接続される複数の出力端子を備えている。各出力端子から駆動信号R1〜R6を出力して、スイッチング素子Q1〜Q6のオン/オフ動作を制御する。センサレス駆動時において、プリドライブ回路4は、モータ駆動制御回路6の制御に基づいて、各相の駆動コイルLu,Lv,Lwに発生する逆起電圧に応じて駆動信号R1〜R6を出力する。すなわち、インバータ回路2は、同期モータ10の各相の駆動コイルLu,Lv,Lwに発生する逆起電圧に基づいて各駆動コイルを選択的に通電する。
【0032】
ここで、モータ駆動制御装置1の基本動作について簡単に説明する。
【0033】
図2は、モータ駆動制御装置1の基本動作を示すフローチャートである。
【0034】
図2に示されるように、モータ駆動制御装置1は、大まかに、起動工程(ステップS1からステップS3)と、センサレス駆動工程(ステップS4からステップS5)との2つの動作を行う。
【0035】
モータ駆動制御装置1は、モータドライブ初期設定工程において、起動を開始するにあたり、同期モータ10の駆動条件に適合するように、マイクロコンピュータ等により構成される制御回路部3の各種仕様(ポート,タイマーなど)を設定する(ステップS1)。
【0036】
次に、ロック通電工程に移る。ロック通電制御回路5からロック通電制御信号がプリドライブ回路4に出力される。プリドライブ回路4は、ロック通電制御信号に従って、インバータ回路2のスイッチング素子Q1〜Q6のオン/オフ動作を行う。これにより、同期モータ10の各相(U相,V相,W相)の駆動コイルLu,Lv,Lwにはロック電流が流れ、同期モータ10のロータが所定の位置にロックされる(ステップS2)。このロック通電工程の動作の詳細は後述する。
【0037】
次に、強制転流工程に移る。モータ駆動制御回路6から駆動制御信号がプリドライブ回路4に出力される。プリドライブ回路4は、駆動制御信号に従って、インバータ回路2のスイッチング素子Q1〜Q6のオン/オフ動作を行う。これにより同期モータ10の各相(U相,V相,W相)の駆動コイルLu,Lv,Lwに順次駆動電流が流れ、ロータの回転速度が一定の速度まで徐々に速くなる(ステップS3)。
【0038】
その後、ロータが一定の回転速度に達すると、センサレス駆動工程の動作を行う。モータ駆動制御装置1は、通電タイミング推定工程において、定常のセンサレス駆動を開始する。制御回路部3の回転位置推定部7は、各相の誘起電圧の変化からゼロクロス点を検出し、通電タイミングを推定する(ステップS4)。
【0039】
そして、通電切り替え工程に移る。モータ駆動制御回路6は、回転位置推定部7が推定した通電タイミングで各相への通電を切り替え、同期モータ10の定速回転を続ける(ステップS5)。
【0040】
上記のように、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1は、
図2の動作ステップを経て定常回転動作を行う。
【0041】
次に、ロック通電工程の具体的な動作方法について説明する。
【0042】
図3は、ロック通電工程の制御を示すフローチャートである。
【0043】
ロック通電制御回路は、以下に述べるように、ロック通電期間が始まってから第1の所定期間が経過した時にロック電流の大きさが第1の所定値になるようにモータ駆動部9を制御する第1のロック通電手段と、第1の所定期間が経過した後で、ロック通電期間の終了時にロック電流の大きさが第1の所定値よりも小さい第2の所定値になるようにモータ駆動部9を制御する第2のロック通電手段とを有する。すなわち、
図3に示されるように、本実施の形態において、ロック通電制御回路5は、第1のロック通電手段として、ロック通電期間が始まってから所定期間(第1の所定期間)が経過した時に、ロック電流の大きさが第1の所定値になるように、モータ駆動部9を制御する(ステップS11からステップS15;第1のロック通電ステップの一例)。そして、ロック通電制御回路5は、第2のロック通電手段として、第1の所定期間が経過した後で、ロック通電期間の終了時にロック電流の大きさが第2の所定値になるように、モータ駆動部9を制御する(ステップS16からステップ18;第2のロック通電ステップの一例)。第2の所定値は、第1の所定値よりも小さい。
【0044】
なお、ロック通電制御回路5は、プリドライブ回路4から駆動コイルのうちのいずれかの相(第1の相と呼ぶことがある)に設けられたハイサイドスイッチング素子及びローサイドスイッチング素子の一方又は両方に出力されるPWM信号(パルス信号)のオンデューティを変更することにより、ロック電流の大きさを変更する。すなわち、プリドライブ回路4は、ロック通電制御回路5による制御が行われることにより、第1の相のハイサイドスイッチング素子にPWM信号を出力する。また、第1の相のローサイドスイッチング素子と、第1の相を除く各相のハイサイドスイッチング素子にロー(Low)レベルの駆動信号を出力する。また、第1の相を除く各相のローサイドスイッチング素子にハイ(High)レベルの駆動信号を出力する。
【0045】
本実施の形態において、ロック通電制御回路5は、U相(第1の相の一例)に設けられたハイサイドスイッチング素子Q1に出力されるPWM信号のオンデューティを変更することにより、ロック電流の大きさを変更する。すなわち、プリドライブ回路4は、ロック通電制御回路5による制御が行われることにより、U相のハイサイドスイッチング素子Q1に、PWM信号である駆動信号R1を出力する。また、U相のローサイドスイッチング素子Q2と、V相及びW相のハイサイドスイッチング素子Q3,Q5にローレベルの駆動信号R2,R3,R5を出力する。また、V相及びW相のローサイドスイッチング素子Q4,Q6にハイレベルの駆動信号R4,R6を出力する。
【0046】
ステップS11において、所定の時刻にロータのロック通電が開始されると、ロック通電制御回路5は、ロック通電制御信号をプリドライブ回路4に出力する。プリドライブ回路4は、ロック通電制御信号に基づいたゲート駆動信号をインバータ回路2に出力する。このとき、インバータ回路2のスイッチング素子Q1〜Q6のうちの特定のスイッチング素子Q1に対して、ゲート駆動信号としてPWM信号が出力される。そのほかのスイッチング素子に対して、ハイレベルのゲート駆動信号あるいはローレベルのゲート駆動信号のいずれかが出力される。
【0047】
次に、ステップS12において、現在のゲート駆動信号の出力時間が所定の時間t0に達したか否かが判断される。すなわち、最初のゲート駆動信号は、その入力時間が所定の時間t0に達するまで入力され続ける。所定の時間t0に達した場合は、ステップS12にて“YES”となり、次のステップS13に進む。
【0048】
次に、ステップS13において、特定のスイッチング素子Q1に出力されるPWM信号のオンデューティがあらかじめ設定された最大値(第1のオンデューティ)であるかが判定される。最大値に達していない場合は“NO”となり、ステップS14に進む。
【0049】
ステップS14において、PWM信号のオンデューティが増大される。その後、ステップS11に戻り、オンデューティが増大したPWM信号が、特定のスイッチング素子Q1にゲート駆動信号として入力される。そして、ステップS12、ステップS13へ進み、ステップS13で再度“NO”となった場合は、ステップS14以降の動作を繰り返す。
【0050】
ステップS13において、特定のスイッチング素子に出力されるPWM信号のオンデューティがあらかじめ設定された最大値(第1のオンデューティ)に達した場合は“YES”となり、ステップS15に進む。
【0051】
ステップS15において、ロータのロック通電時間があらかじめ設定した所定時間T3に達したかどうかが判定され、達していない場合は“NO”となり、ステップS12へ戻ってそれ以降のステップを繰り返す。
【0052】
ステップS15において、ロータのロック通電時間があらかじめ設定した所定時間T3に達したと判定された場合は“YES”となり、ステップS16以降の処理に移行する。
【0053】
このように、第1のロック通電ステップにおいては、ロック電流の大きさが所定の時間をかけて第1の所定値になるまで増加するように、PWM信号(駆動信号R1)のオンデューティが時間の経過と共に大きくなるように制御が行われる。
【0054】
ステップS16において、ロック通電制御回路5は、ロック通電制御信号をプリドライブ回路4に出力し、PWM信号のオンデューティを低下させる。例えば、オンデューティが第1のオンデューティよりも小さい第2のオンデューティになるように(ロック電流の大きさが第1の所定値よりも小さい第2の所定値になるように)、ロック通電制御信号が出力される。
【0055】
ステップS17において、ゲート駆動信号の出力時間が所定の時間t0に達したか否かが判断される。所定の時間t0に達したら、ステップS18に進む。
【0056】
ステップS18において、時間がロック通電終了時間Teに達したか否かが判断される。ロック通電時間があらかじめ設定した所定時間T3に達したと判定された場合は“YES”となり、ロータのロック通電工程を終了する。
【0057】
図4は、ロック通電時のモータ駆動制御装置1の動作を示すタイミングチャートである。
【0058】
図4において、上段(a)は、インバータ回路2から各スイッチング素子Q1〜Q6に出力される駆動信号R1〜R6の波形の相関を示すタイミングチャートであり、下段(b)はU相のハイサイドスイッチング素子Q1のゲート駆動信号のオンデューティの、時間の経過に対する変化を示す図である。PWM信号に応じてインバータ回路2が駆動されるため、U相のコイルに流れる電流の大きさも、時間の経過に対して、オンデューティの変化と同様に変化する。
【0059】
図4(a)において、R1〜R6は、それぞれインバータ回路2のスイッチング素子Q1〜Q6のそれぞれのゲート端子に出力される駆動信号(ゲート駆動信号)の波形を示している。
【0060】
時間がT1の時点でロータのロック通電が開始されると、ロック通電制御回路5からロック通電制御信号がプリドライブ回路4に出力され、プリドライブ回路4は、ロック通電制御信号に基づいたゲート駆動信号をインバータ回路2に出力する。区間1では、インバータ回路2のスイッチング素子(U相のハイサイドスイッチング素子)Q1のゲート端子には、オンデューティd1のPWM信号が1パルス分出力される。そして、PWM信号の入力時間があらかじめ設定された所定の時間t0に達したかどうかが判定され(
図3のステップS12)、入力時間がt0に達成したと判定されると、次に、オンデューティがあらかじめ設定されたオンデューティの最大値に達したかどうかが判定される(
図3のステップS13)。オンデューティd1があらかじめ設定された最大値に達していないと判定されると、次の区間2に移り、オンデューティがd1より大きいd2のPWM信号が出力される。そして、PWM信号の入力時間がt0に達したかどうかが判定され(
図3のステップS12)、時間がt0に達成したと判定されると、オンデューティd2があらかじめ設定されたオンデューティの最大値に達したかどうかが判定される(
図3のステップS13)。オンデューティd2があらかじめ設定された最大値に達していないと判定されると、次の区間3ではオンデューティをさらに増大させたオンデューティd3のPWM信号が出力される(
図3のステップS14)。このように、PWM信号のオンデューティがあらかじめ設定された最大値に達するまで、所定の時間t0の間隔でオンデューティの増大したPWM信号がスイッチング素子Q1に出力される動作が繰り返される(
図3のステップS11〜ステップS14)。なお、各区間(所定の時間t0)のうちに、複数周期のPWM信号が含まれていてもよい。
【0061】
本実施の形態では、区間1〜区間4では、スイッチング素子Q1のPWM信号のオンデューティがあらかじめ設定された最大値d5(第1のオンデューティD2)に達していないと判定される。そのため、区間1が始まる時刻T1から区間4が終了する時刻T2までの期間(第1の所定期間の一例)は、
図4(b)に示すように、オンデューティが徐々に増大し、時刻T2においてオンデューティが第1のオンデューティD2になる。第1のオンデューティD2が出力されるとき、ロック電流の大きさは、第1の所定値になる。
【0062】
時刻がT2になると、次の区間5の開始時点で、スイッチング素子Q1のPWM信号のオンデューティがあらかじめ設定された最大値d5になったと判定され(
図3のステップS14)、オンデューティが最大値d5に固定されたPWM信号が入力される。そして、時間がT3(時刻T3)に達したかどうかが判定される(
図3のステップS15)。時間がT3に達していると判定されるまで、オンデューティが最大値d5に固定されたPWM信号がスイッチング素子Q1に連続して出力される。すなわち、PWM信号のオンデューティが第1のオンデューティD2である状態が、時刻T2から時刻T3まで維持される。この期間は、所定の期間である(第2の所定期間)。
【0063】
本実施の形態では、
図4(a)に示すように、区間5から区間8では、第1のオンデューティD2のPWM信号が出力される。これに伴って、時刻T2からT3までの期間は、U相の駆動コイルLuに流れるロック電流は一定の電流値(第1の所定値)となる。
【0064】
時刻がT3になると、次の区間9において、スイッチング素子Q1のPWM信号のオンデューティがあらかじめ設定されたオンデューティd6(第1のオンデューティD2よりも小さい第2のオンデューティD1)に変更される(
図3のステップS16)。そして、時間がt0経過するかどうかが判定され(
図3のステップS17)、また、時間がTe(時刻Te)に達したかどうかが判定される(
図3のステップS18)。時間がTeに達していると判定されるまで、オンデューティがd6に固定されたPWM信号がスイッチング素子Q1に連続して出力される。すなわち、PWM信号のオンデューティが第2のオンデューティD1である状態が、時刻T3から時刻Teまで維持される。この期間は、所定の期間である(第3の所定期間)。本実施の形態において、第3の所定期間は、第2の所定期間よりも長く設定されている。
【0065】
本実施の形態では、
図4(a)に示すように、区間9から区間12では、第2のオンデューティD1のPWM信号が出力される。これに伴って、時刻T3からTeまでの期間は、U相の駆動コイルLuに流れるロック電流は一定の電流値(第1の所定値よりも小さい第2の所定値)となる。
【0066】
時刻Teが到来すると、ロック通電工程を終了する。
【0067】
なお、
図4(a)に示すように、時間T1からTeまでの期間では、スイッチング素子Q2(U相のローサイドスイッチング素子),Q3(V相のハイサイドスイッチング素子),Q5(W相のハイサイドスイッチング素子)のそれぞれのゲート端子にローレベルのゲート駆動信号R2,R3,R5が出力される。スイッチング素子Q4(V相のローサイドスイッチング素子),Q6(W相のローサイドスイッチング素子)のそれぞれのゲート端子にハイレベルのゲート駆動信号R4,R6が出力される。これによって、U相の駆動コイルLuに流れる電流は、駆動コイルLv,スイッチング素子Q4,抵抗素子を通ってGNDに流れるとともに、駆動コイルLw,スイッチング素子Q6,抵抗素子を通ってGNDに流れる。
【0068】
なお、上述の説明においては、時刻T1から所定のロック通電期間が経過した時刻Teまで、ロック通電工程が行われている。オンデューティの時間当たりの増大量やロック通電期間の開始後の変化タイミングは、予め設定されている。時刻T1から時刻T2までの時間T2が、第1の所定期間である。第1の所定期間が終了した時刻T2から、時刻T1から時間T3が経過した時刻T3までの間が、第2の所定期間である。入力時間t0の長さ及びオンデューティの増加比率はモータの仕様等に合わせて調整することにより、ロック電流が増大する傾斜の度合いや、ロック電流の大きさが第1の所定値に到達するまでの時間を適切に設定することが可能である。
【0069】
なお、各期間の長さや、第1のオンデューティD2や第2のオンデューティD1の大きさは、例えば以下のようにすればよい。例えば、第1の所定期間は1秒以下で、第2の所定期間は2秒程度で、第3の所定期間は2秒程度にすればよい。第2の所定期間は第3の所定期間よりも若干短くしてもよい。また、第1のオンデューティD2は、例えば、2%から60%の範囲、より好ましくは5%から20%の範囲で設定すればよく、具体的には、例えば6%に設定すればよい。第2のオンデューティD1は、例えば、1%から30%の範囲、より好ましくは2%から10%の範囲で、第1のオンデューティD2より小さくすればよい。第2のオンデューティD1は、第1のオンデューティD2との兼ね合いで決定されればよく、およそ、第1のオンデューティD2の半分程度が適当である。
【0070】
なお、ロック通電期間の長さや、第1の所定期間、第2の所定期間、第3の所定期間の長さに応じて、第1のオンデューティD2及び第2のオンデューティD1を設定すればよい。具体的には、これらの時間が比較的短い場合は、第1のオンデューティD2や第2のオンデューティD1は比較的大きくすればよい。また、同期モータ10で用いられる磁力の大きさが大きいほど、速やかにロータの位置決めを行うことができるため、第1のオンデューティD2や第2のオンデューティD1を小さくするようにしてもよい。
【0071】
第2のオンデューティD1の下限値は、同期モータ10のロータに取り付けられている羽根に逆回転の力が働いても位置を保持できる値にすればよい。第1のオンデューティD2の上限値は、仮にロック保護が機能して連続で動作できない状態に陥っても、回路部品の発熱がディレーティング(設計上の余裕度)に入る程度の値にすればよい。すなわち、使用する同期モータ10の巻線や電子回路によって発熱が異なり、それによって、第1のオンデューティD2が左右される。使用する羽根によって慣性モーメントの大きさが変わるため、それによって、第1のオンデューティD2と第2のオンデューティD1とが左右される。好ましい値は、例えば、実験やシミュレーション等を行うことにより決定することができる。
【0072】
ロック通電を行うとき、1つの一定のデューティでロック通電を行うと、被駆動体毎の慣性の大きさにばらつきがあることにより、完全にロックされない場合がある。大きなデューティだけで長時間ロックをかけた場合、発熱が問題になることがある。小さなデューティだけでは、完全なロックがかからない可能性が高まる。これに対し、本実施の形態では、ロック電流の大きさを第1の所定値とした後、第1の所定値よりも小さい第2の所定値に変更する制御が行われる。先に第1のオンデューティD2でロック通電を行い、その後に、それよりも小さい第2のオンデューティD1でロック通電を行うので、同期モータ10の起動時において、ロータに外部負荷が加わっていても確実にロータを所定位置に向けて回転させることでき、かつ、速やかに所定の位置でロータを停止させることができる。そのため、結果的に短時間で完全かつ安全なロックを行うことができる。短いロック通電期間で同期モータ10のロータのロックを完了させることができるので、速やかに同期モータ10を起動させることができる。
【0073】
ロック電流の大きさの調整は、PWM信号のオンデューティを可変することにより行うため、制御が容易である。
【0074】
本実施の形態において、第3の所定期間(時刻Te−時刻T3)は、第2の所定期間(時刻T3−時刻T2)以上に設定されている。したがって、ロータに取り付けられている羽根等の被駆動体のふらつきを防止し、速やかにロータを停止させることができる。発熱防止(大きいデューティが短いため)、揺れを抑制(小さいデューティを長くすることで)し、スムーズにロック状態にすることができる。
【0075】
第1の所定期間において、オンデューティは徐々に増加するように制御が行われる。したがって、同期モータ10の脱調を防止しつつ、確実にロータをロック位置に向けて動かすことができる。
【0076】
[PWM信号の出力態様に関する変形例の説明]
【0077】
なお、プリドライブ回路4から出力されるPWM信号のオンデューティの出力態様は、上述のものに限られず、以下のようなものに変更することができる。ロック通電制御回路5の制御に基づいて、各出力態様でPWM信号を出力させることができる。オンデューティを緩やかに下げるようにした場合には、ロック動作がなめらかに行われ、センサ付きと同様に同期モータ10の起動動作を行うことができる。
【0078】
図5は、本実施の形態に係るPWM信号の出力態様(a)を示すグラフである。
【0079】
図5においては、上述の実施の形態に係る出力態様(a)が示されている。以下の説明においても、出力態様(a)と同様に、時刻T1がロック通電開始時間であり、時刻Teがロック通電完了時間を示している。すなわち、時刻T1から時刻Teまでの期間が、ロック通電期間である。
【0080】
図6は、本実施の形態の変形例に係るPWM信号の出力態様(b)を示すグラフである。
【0081】
図6に示されるように、出力態様(b)において、時刻T1から時刻T4までが第1の所定期間である。時刻T4から時刻T5までが第1のオンデューティD2が維持される第2の所定期間である。時刻T6から時刻Teまでが第2のオンデューティD1が維持される第3の所定期間である。
【0082】
出力態様(b)では、第2の所定期間と第3の所定期間との間の期間(時刻T5から時刻T6までの期間)において、PWM信号のオンデューティが時間の経過とともに、D2からD1まで変化する。このようにすることによっても、上述と同様に、スムーズにロータをロック位置で停止させることができる。
【0083】
図7は、本実施の形態の変形例に係るPWM信号の出力態様(c)を示すグラフである。
【0084】
図7に示されるように、出力態様(c)において、時刻T1から時刻T7までが第1の所定期間である。時刻T7から時刻T8までが第1のオンデューティD2が維持される第2の所定期間である。
【0085】
出力態様(c)では、時刻T8から時刻Teまで、PWM信号のオンデューティが時間の経過とともに、第1のオンデューティD2から第2のオンデューティD1まで変化する。すなわち、ロック通電期間が終了する時刻Teにおいて、PWM信号が第2のオンデューティD1となり、ロック電流の大きさは、第2の所定値になる。このようにすることによっても、上述と同様に、スムーズにロータをロック位置で停止させることができる。
【0086】
図8は、本実施の形態の変形例に係るPWM信号の出力態様(d)を示すグラフである。
【0087】
図8に示されるように、出力態様(d)において、時刻T1から時刻T9までが第1の所定期間である。出力態様(d)では、時刻T9に第1のオンデューティD2に達した後、すぐに、時刻T9から時刻Teまで、PWM信号のオンデューティが時間の経過とともに、第1のオンデューティD2から第2のオンデューティD1まで変化する。このようにすることによっても、上述と同様に、スムーズにロータをロック位置で停止させることができる。
【0088】
図9は、本実施の形態の変形例に係るPWM信号の出力態様(e)を示すグラフである。
【0089】
図9に示されるように、出力態様(e)において、時刻T1から時刻T10までが第1の所定期間である。時刻T10から時刻T11までが第1のオンデューティD2が維持される第2の所定期間である。時刻T12から時刻Teまでが第2のオンデューティD1が維持される第3の所定期間である。
【0090】
出力態様(e)では、PWM信号のオンデューティが第1のオンデューティD2から第2のオンデューティD1となるまでの間の期間(時刻T11から時刻T12までの期間)に、PWM信号のオンデューティが第3のオンデューティD3に設定される。第3のオンデューティD3は、第1のオンデューティD2よりも小さく、第2のオンデューティD1よりも大きい。出力態様(e)において、オンデューティは、時刻T11において第3のオンデューティD3に切り替えられ、時刻T12において第2のオンデューティD1に切り替えられる。第3のオンデューティD3のPWM信号が出力される状態は、第4の所定期間(時刻T11から時刻T12まで)維持される。
【0091】
このように、第1のオンデューティD2から第2のオンデューティD1に小さくするまでに、第3のオンデューティD3での保持期間が挿入されることにより、より適切なロック制御が可能となる。例えば、ロータの回転に支障をきたしかねないさびやほこりがあった場合、徐々にデューティを下げていくことにより、さびやほこりを徐々に取り除くことができ、確実にロックできる。
【0092】
図10は、本実施の形態の変形例に係るPWM信号の出力態様(f)を示すグラフである。
【0093】
図10に示されるように、出力態様(f)において、時刻T1から時刻T13までが第1の所定期間である。時刻T13から時刻T14までが第1のオンデューティD2が維持される第2の所定期間である。時刻T15から時刻T16までが、第3のオンデューティD3が維持される第4の所定期間である。時刻T17から時刻Teまでが第2のオンデューティD1が維持される第3の所定期間である。
【0094】
出力態様(e)では、第2の所定期間と第4の所定期間との間の期間(時刻T14から時刻T15までの期間)と、第4の所定期間と第3の所定期間との間の期間(時刻T16から時刻T17までの期間)との両方において、PWM信号のオンデューティが時間の経過とともに変化する。すなわち、時刻T14から時刻T15まで、PWM信号のオンデューティが、時間の経過とともにD2からD3まで変化する。また、時刻T16から時刻T17まで、PWM信号のオンデューティが、時間の経過とともにD3からD1まで変化する。このようにすることによっても、上述と同様に、スムーズにロータをロック位置で停止させることができる。
【0095】
なお、第2の所定期間と第4の所定期間との間の期間と、第4の所定期間と第3の所定期間との間の期間との一方のみにおいてPWM信号のオンデューティが時間の経過とともに変化するように構成されていてもよい。
【0096】
図11は、本実施の形態の変形例に係るPWM信号の出力態様(g)を示すグラフである。
【0097】
図11に示されるように、出力態様(g)において、時刻T1から時刻T18までが第1の所定期間である。時刻T19から時刻T20までが第3のオンデューティD3が維持される第4の所定期間である。出力態様(g)においては、第1のオンデューティD2,第2のオンデューティD1は維持されない。すなわち、時刻T18から時刻T19にかけて、第1のオンデューティD2から第3のオンデューティD3まで、PWM信号のオンデューティが時間の経過とともに変化する。また、時刻T20から時刻Teにかけて、第3のオンデューティD3から第2のオンデューティD1まで、PWM信号のオンデューティが時間の経過とともに変化する。すなわち、ロック通電期間が終了する時刻Teにおいて、PWM信号が第2のオンデューティD1となり、ロック電流の大きさは、第2の所定値になる。このようにすることによっても、上述と同様に、スムーズにロータをロック位置で停止させることができる。
【0098】
図12は、本実施の形態の変形例に係るPWM信号の出力態様(h)を示すグラフである。
【0099】
図12に示されるように、出力態様(h)において、時刻T1から時刻T21までが第1の所定期間である。時刻T22から時刻T23までが第3のオンデューティD3が維持される第4の所定期間である。時刻T24から時刻Teまでが第2のオンデューティD1が維持される第3の所定期間である。出力態様(h)においては、第1のオンデューティD2は維持されず、時刻T21から時刻T22にかけて、第1のオンデューティD2から第3のオンデューティD3まで、PWM信号のオンデューティが時間の経過とともに変化する。また、時刻T23から時刻T24にかけて、第3のオンデューティD3から第2のオンデューティD1まで、PWM信号のオンデューティが時間の経過とともに変化する。時刻T24以降は、第2のオンデューティD1が維持される。このようにすることによっても、上述と同様に、スムーズにロータをロック位置で停止させることができる。
【0100】
なお、オンデューティは、
図9から
図12に示されるような3段階に変化するものに限られず、さらに多段階に変化するように制御されるようにしてもよい。すなわち、第1のオンデューティD2と第2のオンデューティD1との間の大きさのオンデューティで維持する場合、そのオンデューティは、1つに限定されず、複数段階のオンデューティであってもよい。各段階のオンデューティから次の段階のオンデューティに移行する場合、所定の時刻においてすぐに次の段階のオンデューティに変化するように制御されるようにしてもよいし、時間の経過と共に徐々にオンデューティが変化するように制御されるようにしてもよい。また、各段階のオンデューティを所定の期間維持するかどうかや、維持する期間の長さは、適宜設定することができる。
【0102】
モータ駆動制御装置は、上述の実施の形態やその変形例に示されるような回路構成に限定されない。本発明の目的に適合するように構成された、様々な回路構成が適用できる。
【0103】
例えば、デューティの制御に関するバリエーションは、上述に示されるものに限定されない。少なくとも、ロック通電開始から第1の所定時間経過時に、ロック電流の大きさが第1の所定値になり、ロック通電の終了時に、ロック電流の大きさが第1の所定値よりも小さい第2の所定値になるように制御が行われればよい。
【0104】
上記の実施形態においては、オンデューティが徐々に増加するパルス信号はインバータ回路2のスイッチング素子Q1(U相のハイサイドスイッチング素子)のゲート端子に出力されるものとして説明したが、ロック通電制御回路5による制御モードは
図4に示したタイミングチャートに限定されるものではなく、スイッチング素子Q1以外のスイッチング素子にオンデューティが徐々に増加するパルス信号を出力されるようにして他のスイッチング素子に出力されるゲート駆動信号を適切に選択するようにすれば同様な効果を得ることが可能である。
【0105】
また、3相のいずれかの相を駆動する2つのスイッチング素子の組に対して、そのうちの一方のスイッチング素子にオンデューティが徐々に増加するパルス信号を入力し、他方のスイッチング素子に一方のスイッチング素子とはオン/オフ動作が反対でオンデューティが徐々に減少するパルス信号を出力される方法でも同様な効果を奏することが可能である。
【0106】
また、上記実施形態では、インバータ回路2を構成するスイッチング素子はMOSFETとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、バイポーラトランジスタなどであってもよい。
【0107】
本実施の形態のモータ駆動制御装置により駆動されるモータは、3相のブラシレスモータに限定されず、2相以上の複数相の駆動コイルを備える種々のモータであってもよい。また、ロータの位置を検出するためのセンサを用いない、例えばFGセンサ等によりモータの回転数を検出するワンセンサ方式のモータなども、本実施の形態のモータ駆動制御装置の駆動制御対象とすることができる。
【0108】
上述のフローチャートなどは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではなく、例えば、各ステップの順番が変更されたり各ステップ間に他の処理が挿入されたりしてもよいし、処理を並列化してもよい。
【0109】
上述の実施の形態における処理の一部又は全部が、ソフトウエアによって行われるようにしても、ハードウエア回路を用いて行われるようにしてもよい。例えば、制御部は、マイコンに限定されない。制御部の内部の構成は、少なくとも一部がソフトウエアで処理されるようにしてもよい。
【0110】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。