特許第6535331号(P6535331)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6535331特に母指CM関節症の場合の母指をサポートするための手装具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6535331
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】特に母指CM関節症の場合の母指をサポートするための手装具
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/02 20060101AFI20190617BHJP
   A41D 13/08 20060101ALI20190617BHJP
   A61F 13/10 20060101ALI20190617BHJP
【FI】
   A61F5/02 N
   A41D13/08 107
   A61F13/10 A
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-537357(P2016-537357)
(86)(22)【出願日】2014年7月30日
(65)【公表番号】特表2016-533828(P2016-533828A)
(43)【公表日】2016年11月4日
(86)【国際出願番号】FR2014051980
(87)【国際公開番号】WO2015028734
(87)【国際公開日】20150305
【審査請求日】2017年6月29日
(31)【優先権主張番号】13/58389
(32)【優先日】2013年9月2日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515315576
【氏名又は名称】ミレー イノベーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】グランジ,オディール
【審査官】 松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3179565(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0249446(US,A1)
【文献】 特開2011−026749(JP,A)
【文献】 特開2007−151663(JP,A)
【文献】 特開2001−187083(JP,A)
【文献】 特開2003−113511(JP,A)
【文献】 米国特許第06702772(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/01−5/02,5/04,5/10
15/00−15/02
A41D 13/00−13/12
A61F 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
母指と手のひらとの間の手の折り曲げ領域に延びる母指の一部に適合するように構成されるスリーブの形態の第1の部分(2)と、
前記手の手首に適合するように構成されるスリーブの形態を有する第2の部分(4)と、
前記第1の部分(2)と前記第2の部分(4)を連結し、手の甲と手のひらとの間で母指中手骨に沿って延びる手の領域を包むように成形され、手のひらを通すことを可能にする開口部(6)を備える、第3の部分(3)と、
を備える主部(1)を備える、母指をサポートするための手装具であって、
前記第2の部分(4)がスリーブの形態をとるように縫い目線によって組み立てられ、前記主部(1)が、母指と手のひらとの間の前記手の折り曲げ領域を覆わないように成形され、前記第1の部分(2)の縦軸方向に0.5Mpaから1Mpaまでのヤング率を有する弾性材料から作製されることを特徴とする装具。
【請求項2】
前記第1の部分(2)が、母指の2つの指骨間の関節を覆うように成形される、請求項1に記載の装具。
【請求項3】
前記主部(1)が、接着によって組み立てられる弾性布の2つの層(1a、1b)を含む、請求項1又は2に記載の装具。
【請求項4】
前記2つの層(1a、1b)のそれぞれが、75から85重量%までのポリアミドと15から25重量%までのエラスタンを含む布から作製される、請求項3に記載の装具。
【請求項5】
前記2つの層(1a、1b)のそれぞれが、155g/m2の単位面積当たりの重量及び/又は0.5から0.7mmまでの厚さを有する、請求項3又は4に記載の装具。
【請求項6】
前記2つの層(1a、1b)のそれぞれが、縦糸の方向に85%〜115%伸長可能であり、かつ横糸の方向に65%〜95%伸長可能である、請求項3〜5のうちのいずれか一項に記載の装具。
【請求項7】
緩衝機能を果たすことができる材料から作製されたパッド(5)を備え、前記パッドが、母指の中手骨と手首との間の関節を覆う領域において前記第2の部分(4)及び前記第3の部分(3)の内側にセットされる、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の装具。
【請求項8】
前記パッド(5)が、ポリマーゲルから作製される、請求項7に記載の装具。
【請求項9】
前記パッド(5)が0.4から1mmまでの厚さを有する、請求項7又は8に記載の装具。
【請求項10】
前記パッド(5)が、縫い目(51)によって前記主部(1)と共に組み立てられる弾性布から作製された重なり部(52)に、前記パッドが前記主部と前記重なり部との間に挟まれるように接着される、請求項7〜9のうちのいずれか一項に記載の装具。
【請求項11】
前記パッド(5)が、前記重なり部(52)と共に前記主部(1)に縫い付けられる、請求項10に記載の装具。
【請求項12】
前記主部が、すべての手筋が弛緩され、母指の関節に外力が及ぼされない手構成で母指の関節をサポートするように手及び母指にはめられる、請求項1〜11のうちのいずれか一項に記載の装具。
【請求項13】
前記主部(1)が、1mmから1.4mmまでの厚さを有する材料から作製される、請求項1〜12のうちのいずれか一項に記載の装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、母指装具に関する。本発明は、特に、母指CM関節症の人々の苦痛を軽減することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
加齢に伴って、非常に多くの人々が、特に、母指と手首との間の関節における関節症に苦しんでいる。「母指CM関節症」と呼ばれるこの疾患は、特に女性がかかり、突然の鋭い痛みとなって現れる。夜に、母指の偶然の動きが睡眠を妨げるほどの痛みを引き起こす場合がある。この疾患は、母指の大菱形骨と中手骨との間の関節及び/又は舟状骨と大菱形骨と小菱形骨との間の関節に関係する場合がある。この疾患はまた、結果的に母指の大菱形骨と中手骨との間の関節の不安定さ又は亜脱臼をもたらす場合がある。
【0003】
母指CM関節症は、一般に、薬剤及び/又は整形外科用の装着品で治療される。これらの装着品のうちのいくつかは、問題の関節を全面的に固定化することを目的とする剛性装具の形態で入手できる。したがって、これらの装具は、主に夜に装着される。関節を固定化することによって、それらは関節に苦痛が生じているときの痛みを除去する。それらはまた、不随意の動きを防ぐことによって関節の特定の疲労を回避する。
【0004】
これらの装具の主な欠点は、母指の正常な使用、特に手の本質的な機能、すなわち握る機能を妨げるそれらの剛性にある。これらの装具は、例えば、それらを手に熱成形することによって個人に合わせて製作されなければならないという欠点も有する。
【0005】
弾性装具も存在し、これも関節を固定化することを目的とする。しかしながら、手の握る機能は、母指と手首との間の一連の関節鎖(articular chain)での応力を著しく増加させる。したがって、つかむことによって及ぼされる力は、手根中手骨関節上で12倍となる。その結果、これらの装具が、特に、関節の起こりうる亜脱臼に関係した動きを抑えるために、手首の付け根に高い圧縮値を適用しなければならない。したがって、これらの装具も個人に合わせて製作されなければならない。
【0006】
さらに、装具は、同じくそれらを手に熱成形することによって個人に合わせて製作されるガントレットグローブの形態でも存在する。前述のすべての装具は、個人に合わせて製作されなければならないだけでなく、母指と手のひらとの間の折り曲げ部を覆うという欠点を有する。これにより、母指の指骨間関節だけがブロックされるのではないことになるる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、手根中手骨関節を軽減することができるが手の握る機能を妨げない母指装具を生産することが望ましい。個人に合わせて製作される必要がないだけでなく、どのような最終調整も必要としないほんのいくつかの標準サイズで母指装具を生産することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
いくつかの実施形態は、母指をサポートするための手装具であって、母指と手のひらとの間の折り曲げ領域に延びる母指の一部にはめられるスリーブの形態の第1の部分と、手首にはめられるスリーブの形態の第2の部分と、第1の部分と第2の部分とを連結し、手の甲と手のひらとの間で母指中手骨に沿って延びる手の領域を包むように成形され、手のひらを通すことを可能にする開口部を備える、第3の部分と、を備える主部を備える装具に関係する。一実施形態によれば、第2の部分は、スリーブの形態をとるように縫い目線によって組み立てられ、主部は、母指と手のひらとの間の折り曲げ領域を覆わないように成形され、第1の部分の縦軸に対応する方向に0.5Mpaから1Mpaまでのヤング率を有する弾性材料から作製される。
【0009】
一実施形態によれば、第1の部分は、母指の2つの指骨間の関節を覆うように成形される。
【0010】
一実施形態によれば、主部は、接着によって組み立てられる弾性布の2つの層を含む。
【0011】
一実施形態によれば、2つの層のそれぞれは、75から85重量%までのポリアミドと15から25重量%までのエラスタンを含む布から作製される。
【0012】
一実施形態によれば、2つの層のそれぞれは、155g/m2の単位面積当たりの重量及び/又は0.5から0.7mmまでの厚さを有する。
【0013】
一実施形態によれば、2つの層のそれぞれは、縦糸の方向に85%〜115%及び横糸の方向に65%〜95%の弾性を有する。
【0014】
一実施形態によれば、装具は、緩衝機能を果たすことができる材料から作製されたパッドを備え、パッドは、母指の中手骨と手首との間の関節を覆う領域において第2の部分及び第3の部分の内側にセットされる。
【0015】
一実施形態によれば、パッドは、架橋ポリマーゲルから作製される。
【0016】
一実施形態によれば、パッドは、0.4から1mmまでの厚さを有する。
【0017】
一実施形態によれば、パッドは、縫い目によって主部と共に組み立てられる弾性布から作製された重なり部に、パッドが主部と重なり部との間に挟まれるように接着される。
【0018】
一実施形態によれば、パッドは、重なり部と共に主部に縫い付けられる。
【0019】
一実施形態によれば、主部は、すべての手筋が弛緩され、母指の関節に外力が及ぼされない手構成で母指の関節をサポートするように手及び母指にはめられる。
【0020】
一実施形態によれば、主部は、1mmから1.4mmまでの厚さを有する材料から作製される。
【0021】
本発明の実施形態のいくつかの例が、限定はされないが添付図に関連して以下で説明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】本発明に係る装具によって軽減できる可能性がある異なる疾患を患う母指の手根中手骨関節を概略的に表す図である。
図1B】本発明に係る装具によって軽減できる可能性がある異なる疾患を患う母指の手根中手骨関節を概略的に表す図である。
図1C】本発明に係る装具によって軽減できる可能性がある異なる疾患を患う母指の手根中手骨関節を概略的に表す図である。
図2】一実施形態に係る装具をはめられた手の背面を表す図である。
図3】装具の外側面の一部を表す図である。
図4】内側を外にかえした構成にある装具の内側面の一部を表す図である。
図5】横に置かれ、筋が弛緩した構成にある手の内側面を表す図である。
図6図2〜4の装具をはめられた図5で提示される構成にある手の内側面を表す図である。
図7】一実施形態に係る装具の一部の断面図である。
図8】一実施形態に係る装具を作製することができる平らに広げられたピースの形状を表す図である。
図9A】装具の経時的な性能を示す曲線図表である。
図9B】装具の経時的な性能を示す曲線図表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1A図1B図1Cは、母指及び人差し指の手根中手骨関節を表す。母指の手根中手骨関節MSAは、中手骨MPと大菱形骨TZとの間の関節、及び一方では舟状骨SCと他方では大菱形骨TZ及び小菱形骨TDとの間の関節を含む。人差し指の手根中手骨関節は、人差し指の中手骨MIと小菱形骨TDとの間の関節、及び小菱形骨TDと舟状骨SCとの間の関節を含む。関節症は、図1A及び図1Bの網掛けで示される一方の及び/又は他方の関節MSAに影響を及ぼす場合がある。母指はまた、図1Cに示すように大菱形骨TZとの関連での中手骨MPの亜脱臼の影響を受けることがある。
【0024】
図2図4及び図6は、母指CM関節症又は母指の中手骨の亜脱臼の人々の苦痛を軽減することを目的とする一実施形態に係る母指装具を表す。図2及び図6は、手につけられた装具を表す。図3及び図4は、それぞれ、装具の外側面及び内側面の一部を表す。装具は、点線及び破線によって図2図4で境界を定められる遠位部2、近位部4、及び遠位部2と近位部4とを連結する中間部3を形成する主部1を備える。スリーブの形態の部分2は、母指と手のひらとの間の折り曲げ領域から母指の指骨間関節にかけて母指を覆い、サポートするように成形される。部分2は、例えば、母指の末節骨の中央付近に延びてもよい。同じくスリーブの形態の部分4は、前腕の一部、手首、母指の手根中手骨関節、及び指の中手骨の近位部を覆うように成形される。中間部3は、手のひらを通すことを可能にするべく部分2と部分3との間に延びる開口部6を有する。
【0025】
主部1は、弾性材料から作製され、特に手根中手骨関節MSAの敏感な区域に痛みを引き起こしやすいどのような過度に強い引締め力も及ぼさずに手及びサポートされるべき母指の形状に合わせられる。装具は、特に、どのような拘束領域も存在しないので、指及び母指の端の方向に容易に除去することができる。
【0026】
一実施形態によれば、主部1を形成する材料は、装具の管状又は半管状の湾曲した断面形状によって与えられるビーム効果と相まって特定の剛性を有する。材料及びビーム効果から生じる剛性によって、装具が屈曲せずに母指の重量を支えることが可能になる。
【0027】
一実施形態によれば、主部1を形成する材料は、0.5Mpaから1Mpaまでの、例えば、実質的に0.7MPaに等しいヤング率を有する。得られるビーム効果は、断面二次モーメントによって特徴付けることができる。このモーメントは、母指スリーブ2に関しておよそ3,000mm4であり、中間部3に関してそのおよそ半分である。
【0028】
装具が母指の重量を支える能力が図5及び図6によって示される。図5及び図6は、水平面上に横に置かれ、手筋が弛緩した状態の手の内側面を表す。前腕の軸線、母指の中手骨の軸線、及び母指の基節骨の軸線が、それぞれ、セグメント[A、B]、[B、C]、及び[C、D]で識別される。母指の手根中手骨関節MSA及び中手指節関節は、点B及びCによって識別される。図5に示される手の構成では、関節B及びCが母指の重量の影響下で屈曲されていることが分かる。母指は、したがって、図5で手の人差し指の高さよりも実質的に下にある。図6では、手は、図5と同じ構成にあるが、装具をはめられている。図6では、母指が手の人差し指よりも上の高さにあることが分かる。図6の点線で再現される図5のセグメント[B、C]及び[C、D]の構成によれば、角度ABCは、図6では図5よりも僅かに小さく現れる。角度BCDは、図6では図5よりも実質的に(約20度だけ)大きく現れる。
【0029】
装具の剛性のおかげで、母指の関節B及びCは、例えば、重力に関係した又は運動学に関連した手の方向の変化によるどのような不随意の動きになることはない。この剛性はまた、反射などの不随意の動きの振幅及び持続時間を減少させることを可能にする。しかしながら、主部1を形成する材料の弾性は、装具が随意的な母指の動きを妨げず、したがって、こうした随意の動きの間に故障している関節に多大なさらなる力をかける必要性を回避することを意味する。ユーザは、したがって、装具の堅さに打ち勝つべく最小限のさらなる力をかけることによって自分の手で物体を保持することができる。図2及び図6では、装具は、母指と手のひらとの間の折り曲げ領域を覆わず、したがって、手の握る機能を妨げないことに注目されたい。装具によって与えられるサポート効果は、母指の中手指節関節Cも関節症を患っている場合には母指の中手指節関節Cに及ぶことにも注目されたい。
【0030】
一実施形態によれば、主部1が形成される材料は、おおよそ0.05mmの厚さのグルーの層によって互いに接着される弾性布の2つの層を用いて生産される。グルーの層は、布の2つの層間で一様に分布する又は一様に分布したドット状に配置することができる。布の2つの層は、2つの層のうちの1つをグルーでコーティングすることによって、及び1つ又は2つのローラによって2つの層を互いに押しつけることによって互いに接着することができる。
【0031】
二層を形成する布は、155g/m2の単位面積当たりの重量を有する、ポリアミド(およそ80重量%)とエラスタン(およそ20重量%)で作製された布であってもよい。使用されるグルーは、ポリウレタンベースのものであってもよい。布の2つの厚さとグルーの層によって形成される材料組立体は、355g/m2の単位面積当たりの重量を有してもよい。二層を形成する布は、0.5から0.7mmまでの厚さを有してもよい。結果的に、主部1を形成する材料は、1から1.4mmまでの厚さを有してもよい。この布は、縦糸の方向に85%から115%まで及び横糸の方向に65%から95%までの弾性を有してもよい。
【0032】
一実施形態によれば、装具は、同じく特定の固有の堅さを有する緩衝要素5を備える。緩衝要素5は、適切な形状を有し、母指の手根中手骨関節を覆うように主部1上に配置される。図2図4では、緩衝要素は、実質的に、先端が切り落とされたクロワッサンの形状を有する(図8)。
【0033】
一実施形態によれば、緩衝要素は、主部1の内側面上に固定される、架橋ポリマーゲル、例えば、非粘着性架橋シリコーンゲルなどの粘弾性材料で作製されたパッド5を備える。
【0034】
図7は、パッド5が固定される装具の一部を表す。図7に表されるように、パッド5は、縫い目51によって装具の主部1の内側面上に固定される一枚布52に接着することができ、パッド5は、主部1と一枚布52との間に挟まれる。図7はまた、主部1を形成する2つの層1a、1bを示す。
【0035】
一実施形態によれば、主部1は、装具を形成するべくある縁が組み立てられる単一のピース10として作製することができる。図8は、部分2、3、4を備える平らに広げられたピース10を表す。部分2及び部分4は、実質的に、各端に縫い目線21、41を備える僅かに湾曲したストラップの形状を有する。線21は、母指スリーブ2を形成するべく一方が他方に固定されるように提供される。同様に、線41は、手のひらスリーブ4を形成するべく相互に固定される。部分3は、どのような縫い目線もない台形の形状を有する。図8はまた、縫い目21、41を作製する前にその最も広い部分が部分4上に固定され、残りの部分が部分3上に固定される、パッド5を表す。
【0036】
ピース10は、右手装具及び左手装具を生産するのに区別なく用いることができる。装具用の手は、パッド5が固定される面によって決まる。したがって、図8に表されるピース10は、左手装具を生産するためのものである。縫い目21及び41は、スリーブ2を形成するべく線21が重ね合わされ、スリーブ4を形成するべく線41が重ね合わされるように、ピース10を装具の外側面の方に折り畳むことによって作製される。
【0037】
図9A及び図9Bは、装具の性能を示す曲線C1、C2、C3、C4を表す。曲線C1〜C4は、手が水平面上へ下降し、筋が弛緩されたときの母指の手根中手骨関節がなす角度ABCの経時変化を示す。曲線C1及びC3は5cmの下降に対応し、曲線C2及びC4は10cmの下降に対応する。図9Aの曲線C1及びC2は、手がどのような装具も装着していない場合を示し、図9Bの曲線C3及びC4は、手が図2図4及び図6で表される装具を装着している場合を示す。曲線C1によれば、角度ABCは、時間0.22秒での衝撃後におよそ167度でピークに達し、次いで、緩衝された様態で154度から161度まで変化する。曲線C2によれば、角度ABCは、時間0.25秒での衝撃後におよそ173度でピークに達し、次いで、緩衝された様態で150度から162度まで変化する。曲線C3によれば、角度ABCによって到達されるピークは、時間0.21秒での衝撃後に(163度ではなく)およそ157度に制限され、次いで、緩衝された様態で148度から152度まで変化する。曲線C4によれば、角度ABCによって到達されるピークは、時間0.22秒での衝撃後に(173度ではなく)およそ158度に制限され、次いで、緩衝された様態で146度から152度まで変化する。曲線C1〜C4は、衝撃から生じる関節MSAの周りの母指の動きが、装具のおかげで減衰した振幅を有することを示す。衝撃から生じる振動は、装具ありのときに、より短いことも分かる。
【0038】
これらのサポート効果及び緩衝効果は、装具が特に手首と手との間の接合部にどのような保持力も及ぼす必要なしに得られることに注目されたい。したがって、装具は、軽減されるべき各個人の手に正確に合わされる必要はない。装具は、したがって、いくつかの標準サイズに製造することができる。したがって、事例の80%を3つだけの標準サイズで対処することができるならば、3〜5つの標準サイズを考えることができる。
【0039】
本発明は種々の代替的な実施形態及び種々の用途が可能であることが当業者によって理解されるであろう。特に、本発明は、緩衝パッドを備える装具に限定されない。実際には、パッドを備えない装具が、問題の関節の母指の手根中手骨関節を完璧にサポートする。加えて、図9Bで観測される振動は図9Aよりも低い振幅を有するが、これらの振動はまた、より短いことが分かる。
【0040】
互いに接着される弾性布の2つの層を用いて主部1を形成することも必要ではない。装具の主部1に十分な剛性を与える他の材料を容易に見つけ出すことができる。
【0041】
母指のスリーブが母指の遠位関節を覆うことも必要ではない。実際には、手根中手骨関節は、装具が母指を基節骨の中央まで覆うだけでも十分にサポートされる。さらに、装具が、ほんのいくつかの標準サイズのみで生産され、個人に合わせて製作されないので、装具によって覆われる母指の部分は、各個人の形態学に依存する。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9b