特許第6535367号(P6535367)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6535367
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】ひずみゲージを用いた温度測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 5/52 20060101AFI20190617BHJP
【FI】
   G01K5/52
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-106219(P2017-106219)
(22)【出願日】2017年5月30日
(65)【公開番号】特開2018-200291(P2018-200291A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2019年3月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】小林 正輝
【審査官】 平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−103002(JP,A)
【文献】 特開平4−95737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00−19/00
G01B 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのひずみゲージを用いて金属対象物の温度を測定するための装置であって、
前記2つのひずみゲージは、前記金属対象物に貼り付けられ、
前記2つのひずみゲージを用いてホイートストンブリッジ回路が構成され、
前記2つのひずみゲージのうちの第1のひずみゲージの線膨張係数は、前記金属対象物の線膨張係数より大きく、
前記2つのひずみゲージのうちの第2のひずみゲージの線膨張係数は、前記金属対象物の線膨張係数より小さい
置。
【請求項2】
4つのひずみゲージを用いて金属対象物の温度を測定するための装置であって、
前記4つのひずみゲージは、前記金属対象物に貼り付けられ、
前記4つのひずみゲージを用いてホイートストンブリッジ回路が構成され、
前記4つのひずみゲージのうちの第1および第3のひずみゲージの線膨張係数は、前記金属対象物の線膨張係数より大きく、
前記4つのひずみゲージのうちの第2および第4のひずみゲージの線膨張係数は、前記金属対象物の線膨張係数より小さい
置。
【請求項3】
2つのひずみゲージを用いて金属対象物の温度を測定するための装置であって、
前記2つのひずみゲージは、前記金属対象物に貼り付けられ、
前記2つのひずみゲージのグリッド方向は、互いに一致しており、
前記2つのひずみゲージを用いてホイートストンブリッジ回路が構成され、
前記2つのひずみゲージのうちの第1のひずみゲージの線膨張係数は、前記金属対象物の線膨張係数より大きく、
前記2つのひずみゲージのうちの第2のひずみゲージの線膨張係数は、前記金属対象物の線膨張係数より小さい、
装置。
【請求項4】
4つのひずみゲージを用いて金属対象物の温度を測定するための装置であって、
前記4つのひずみゲージは、前記金属対象物に貼り付けられ、
前記4つのひずみゲージのグリッド方向は、互いに一致しており、
前記4つのひずみゲージを用いてホイートストンブリッジ回路が構成され、
前記4つのひずみゲージのうちの第1および第3のひずみゲージの線膨張係数は、前記金属対象物の線膨張係数より大きく、
前記4つのひずみゲージのうちの第2および第4のひずみゲージの線膨張係数は、前記金属対象物の線膨張係数より小さい、
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひずみゲージを用いて金属対象物の温度を測定するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、温度測定にはサーミスタ等の温度センサが用いられている。例えば、特許文献1には、測定対象物に装着されるサーミスタと、サーミスタにより測定対象物の温度を検出する測定温度検出回路と、サーミスタの基準熱時定数および基準熱抵抗を予め格納した記憶回路と、測定対象物の所定の発熱量に対し、測定温度と基準熱時定数および基準熱抵抗とに基づいてサーミスタの推定温度を算出する推定温度算出回路と、推定温度と測定温度との温度差の絶対値が所定の閾値以下か否かを判断する判断回路と、を備える温度測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−210282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サーミスタは、測定対象物の周囲の温度(環境温度)に影響を受けやすい。それゆえ、環境温度が急激に上昇した場合、測定対象物の温度は緩慢に上昇するにもかかわらず、サーミスタを用いると、その緩慢な温度上昇を正確に測定できない場合がある。
そこで、本発明は、環境温度の影響を受けずに、金属対象物自体の温度を測定するための装置を提供することを目的とする。
【0005】
一般的に、ひずみゲージは、測定対象物の環境温度による熱膨張を考慮して、温度補償が行われている。
ひずみゲージが測定対象物に貼り付けられているとき、ひずみゲージの金属抵抗体の線膨張係数(λg)と測定対象物の線膨張係数(λa)との差により、以下の式で表される温度による見かけひずみεaが現れる。なお、αgはひずみゲージを形成する金属抵抗体の温度抵抗係数であり、Kはゲージ率である。
εa=αg/K+(λa−λg)
上式において、見かけひずみεa=0になるようにひずみゲージが選択される。
例えば、測定対象物が銅の場合、銅の線膨張係数に合わせて温度補償が行われた銅用のひずみゲージが使用され、鉄の線膨張係数に合わせて温度補償が行われた鉄用のひずみゲージが使用されることはない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、少なくとも1つのひずみゲージを用いて金属対象物の温度を測定するための装置であって、
前記少なくとも1つのひずみゲージは、前記金属対象物に貼り付けられ、
前記ひずみゲージの線膨張係数は、前記金属対象物の線膨張係数と異なる。
【0007】
第1の発明では、2つのひずみゲージを用いてホイートストンブリッジ回路が構成され、
前記2つのひずみゲージのうちの第1のひずみゲージの線膨張係数は、前記金属対象物の線膨張係数より大きく、
前記2つのひずみゲージのうちの第2のひずみゲージの線膨張係数は、前記金属対象物の線膨張係数より小さい、
ことが好ましい。
【0008】
第1の発明では、4つのひずみゲージを用いてホイートストンブリッジ回路が構成され、
前記4つのひずみゲージのうちの第1および第3のひずみゲージの線膨張係数は、前記金属対象物の線膨張係数より大きく、
前記4つのひずみゲージのうちの第2および第4のひずみゲージの線膨張係数は、前記金属対象物の線膨張係数より小さい、
ことが好ましい。
【0009】
第2の発明は、2つのひずみゲージを用いて金属対象物の温度を測定するための装置であって、
前記2つのひずみゲージは、前記金属対象物に貼り付けられ、
前記2つのひずみゲージのグリッド方向は、互いに一致しており、
前記2つのひずみゲージを用いてホイートストンブリッジ回路が構成され、
前記2つのひずみゲージのうちの第1のひずみゲージの線膨張係数は、前記金属対象物の線膨張係数より大きく、
前記2つのひずみゲージのうちの第2のひずみゲージの線膨張係数は、前記金属対象物の線膨張係数より小さい。
【0010】
第2の発明は、4つのひずみゲージを用いて金属対象物の温度を測定するための装置であって、
前記4つのひずみゲージは、前記金属対象物に貼り付けられ、
前記4つのひずみゲージのグリッド方向は、互いに一致しており、
前記4つのひずみゲージを用いてホイートストンブリッジ回路が構成され、
前記4つのひずみゲージのうちの第1および第3のひずみゲージの線膨張係数は、前記金属対象物の線膨張係数より大きく、
前記4つのひずみゲージのうちの第2および第4のひずみゲージの線膨張係数は、前記金属対象物の線膨張係数より小さい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の発明の第1実施形態に係る装置の回路図である。
図2】第1の発明の第2実施形態に係る装置の回路図である。
図3】第1の発明の第3実施形態に係る装置の回路図である。
図4】第2の発明の第1実施形態に係る装置の概略図である。
図5】第2の発明の第2実施形態に係る装置の概略図である。
図6】実施例を説明するための図である。
図7】実施例の結果のグラフである。
図8】実施例の温度−ひずみ(出力電圧)曲線のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の発明)
図1は、第1の発明の第1実施形態に係る装置の回路図である。
第1実施形態に係る装置10のひずみゲージR1は、金属対象物に貼り付けられ、固定抵抗R2〜R4とともにホイートストンブリッジ回路を構成する(1ゲージ法)。
上述したとおり、一般的なひずみゲージでは、ひずみゲージの線膨張係数が、測定対象物の線膨張係数に合わせられることにより、温度補償が行われている。
一方、第1の発明では、ひずみゲージの線膨張係数は、金属対象物の線膨張係数と異なる。例えば、金属対象物が銅の場合、鉄用のひずみゲージが用いられる。これにより、温度が変化した際に、ひずみゲージは、金属対象物と異なって変化(引張/圧縮)することから、金属対象物の温度変化を測定することができる。
代表的な金属の線膨張係数は、以下のとおりである。
鉄:11ppm/℃
銅:16.8ppm/℃
アルミニウム:23ppm/℃
第1の発明の装置10により、環境温度の影響を受けずに、金属対象物自体の温度を測定することができる。また、装置10のパターニングは任意の形状とすることができる。すなわち、装置10は形状の自由度が高く、任意の形状の金属対象物に直接貼り付けることができるため、金属対象物の形状を問わず温度を測定できる。また、大きい金属対象物に対して、複数の装置10を貼り付けることにより、金属対象物の全体の温度を測定することができる。
なお、第1の発明では、金属対象物の変化は、温度変化に起因するものであり、金属対象物に荷重等は与えられていないものとする。
【0013】
図2は、第1の発明の第2実施形態に係る装置の回路図である。
第2実施形態に係る装置20の第1のひずみゲージR1および第2のひずみゲージR2は、金属対象物に貼り付けられ、固定抵抗R3、R4とともに2ゲージ式(ホイートストンブリッジ)回路を構成する。
第1のひずみゲージR1の線膨張係数は、金属対象物の線膨張係数より大きく、第2のひずみゲージR2の線膨張係数は、金属対象物の線膨張係数より小さい。例えば、金属対象物が銅の場合、第1のひずみゲージR1にはアルミニウム用のひずみゲージが用いられ、第2のひずみゲージR2には鉄用のひずみゲージが用いられる。これにより、出力される熱ひずみが大きくなるため、第2実施形態に係る装置20では、第1実施形態に係る装置10と比較して、金属対象物の温度変化を高感度に測定することができる。
【0014】
図3は、第1の発明の第3実施形態に係る装置の回路図である。
第3実施形態に係る装置30の第1のひずみゲージR1、第2のひずみゲージR2、第3のひずみゲージR3および第4のひずみゲージR4は、金属対象物に貼り付けられ、4ゲージ式(ホイートストンブリッジ)回路を構成する。
第1および第3のひずみゲージR1、R3の線膨張係数は、金属対象物の線膨張係数より大きく、第2および第4のひずみゲージR2、R4の線膨張係数は、金属対象物の線膨張係数より小さい。例えば、金属対象物が銅の場合、第1および第3のひずみゲージR1、R3にはアルミニウム用のひずみゲージが用いられ、第2および第4のひずみゲージR2、R4には鉄用のひずみゲージが用いられる。これにより、出力される熱ひずみがさらに大きくなるため、第3実施形態に係る装置30では、第1実施形態に係る装置10および第2実施形態に係る装置20と比較して、金属対象物の温度変化を高感度に測定することができる。
なお、第1のひずみゲージR1と第3のひずみゲージR3とが異なっていてもよいし、第2のひずみゲージR2と第4のひずみゲージR4とが異なっていてもよいが、第1および第3のひずみゲージR1、R3の線膨張係数と金属対象物の線膨張係数との差が大きく、第2および第4のひずみゲージR2、R4の線膨張係数と金属対象物の線膨張係数との差が大きいことが好ましい。
【0015】
上述した第1の発明では、金属対象物に荷重等は与えられていないものと想定していたが、以下では、金属対象物に荷重等が与えられる場合を想定する。
【0016】
(第2の発明)
図4は、第2の発明の第1実施形態に係る装置の概略図である。
第1実施形態に係る装置40の第1のひずみゲージR1および第2のひずみゲージR2は、xy平面において、板状の金属対象物100に貼り付けられ、図示しない固定抵抗R3、R4とともに2ゲージ式(ホイートストンブリッジ)回路を構成する。第1および第2のひずみゲージR1、R2のグリッド方向は、x方向であり、互いに一致している。
第1および第2のひずみゲージR1、R2の検出するひずみ(総ひずみ=加重等によるひずみ+温度変化による熱ひずみ)をそれぞれε1、ε2とすると、2ゲージ式(ホイートストンブリッジ)回路により検出される総ひずみεは、以下の式1で表される。
ε=ε1−ε2 (式1)
ここで、金属対象物100に荷重等および温度変化が与えられると、第1および第2のひずみゲージR1、R2の検出する荷重等によるひずみがε1_s、ε2_sであり、温度変化による熱ひずみがε1_t、ε2_tであるとき、以下の式2が成立する。
ε=(ε1_s+ε1_t)−(ε2_s+ε2_t) (式2)
ここで、第1および第2のひずみゲージR1、R2のグリッド方向が一致しているため、ε1_s=ε2_sであるので、これを式2に代入すると、以下の式3が成立する。
ε=ε1_t−ε2_t (式3)
式3より明らかなように、金属対象物100に荷重等が与えられても相殺(キャンセル)され、金属対象物100の温度変化のみを検出することができる。
【0017】
また、第1および第2のひずみゲージR1、R2の線膨張係数は、金属対象物の線膨張係数と異なり、第1のひずみゲージR1の線膨張係数は、金属対象物の線膨張係数より大きく、第2のひずみゲージR2の線膨張係数が、金属対象物の線膨張係数より小さい。これにより、ε1_t>0、ε2_t<0となるので、式3において、総ひずみεが大きくなり、高感度な測定が可能になる。
【0018】
なお、一般的に、2ゲージ式(ホイートストンブリッジ)回路を構成する場合、第1のひずみゲージR1のグリッド方向は、第2のひずみゲージR2のグリッド方向に垂直であり、一方のひずみゲージにより引張ひずみを検出し、他方のひずみゲージにより圧縮ひずみを検出する。
【0019】
図5は、第2の発明の第2実施形態に係る装置の概略図である。
第2実施形態に係る装置50の第1のひずみゲージR1、第2のひずみゲージR2、第3のひずみゲージR3および第4のひずみゲージR4は、円柱状の金属対象物200の側面に貼り付けられ、4ゲージ式(ホイートストンブリッジ)回路を構成する。第1〜第4のひずみゲージR1〜R4のグリッド方向は、x方向であり、互いに一致している。
第1〜第4のひずみゲージR1〜R4の検出するひずみ(総ひずみ=加重等によるひずみ+温度変化による熱ひずみ)をそれぞれε1〜ε4とすると、4ゲージ式(ホイートストンブリッジ)回路により検出される総ひずみεは、以下の式4で表される。
ε=ε1−ε2+ε3−ε4 (式4)
上述した2ゲージ式(ホイートストンブリッジ)回路の場合と同様に、金属対象物200に与えられる荷重は相殺されるので、第1〜第4のひずみゲージR1〜R4の検出する温度変化による熱ひずみがε1_t〜ε4_tであるとき、以下の式5が成立する。
ε=ε1_t−ε2_t+ε3_t−ε4_t (式5)
また、第1〜第4のひずみゲージR1〜R4の線膨張係数は、金属対象物の線膨張係数と異なり、第1および第3のひずみゲージR1、R3の線膨張係数は、金属対象物の線膨張係数より大きく、第2および第4のひずみゲージR2、R4の線膨張係数は、金属対象物の線膨張係数より小さい。これにより、ε1_t、ε3_t>0およびε2_t、ε4_t<0となるので、式5において、総ひずみεが大きくなる。
第2実施形態に係る装置50では、金属対象物200に荷重等が与えられても相殺され、金属対象物200の温度変化のみを、第1実施形態に係る装置40より高感度に検出することができる。
【0020】
なお、上述した実施形態では、ひずみゲージのグリッド方向は、x方向であるが、複数のひずみゲージのグリッド方向が一致していれば、どの方向でもよい。
【実施例】
【0021】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
図6に示すように、長さ100mm×幅100mm×厚み(t)5mmの銅板(線膨張係数:16.8ppm/℃)を用意し、任意の位置に、第1および第2のサンプルの合計6つのひずみゲージを貼り付けた。ひずみゲージは、グリッド長0.8mm×グリッド幅1.4mmであり、ベース長3.1mm×ベース幅2.5mmであった。
第1のサンプルは、3つのFe用のひずみゲージR_Fe1、R_Fe2、R_Fe3であり、線膨張係数が11ppm/℃に設定されていた。
第2のサンプルは、3つのAl用のひずみゲージR_Al1、R_Al2、R_Al3であり、線膨張係数が23ppm/℃に設定されていた。
図7に一点鎖線で示すように、30→60→90→120→90→60→30℃の温度サイクル(各温度ステップ3時間)にて熱ひずみを測定した。
【0022】
図7に、温度変化に伴う各ひずみゲージの熱ひずみの測定結果を併せて示す。
図7において、3つのFe用のひずみゲージR_Fe1、R_Fe2、R_Fe3の測定結果は重なって実線で示され、引張側のひずみが得られ、3つのAl用のひずみゲージR_Al1、R_Al2、R_Al3の測定結果は重なって破線で示され、圧縮側のひずみが得られた。いずれのひずみも温度変化に追従していることがわかる。
表1に、上述した測定結果と、2つのFe用のひずみゲージおよび2つのAl用のひずみゲージにより4ゲージ式(ホイートストンブリッジ)回路を構成した場合の計算出力と、を示す。
【0023】
【表1】
【0024】
図8には、横軸に温度を示し、左側の縦軸にひずみを示し、右側の縦軸に電圧出力を示した温度−ひずみ(出力電圧)曲線を示す。ひずみから電圧出力の換算は、2000μεを1mVとして行った。
120℃での値(温度差90℃)を定格(基準)としたとき、非直線性は、約4%R.O.であり、ヒステリシス・零戻りは、0.5%R.O.未満であった。
銅の線膨張係数に合わせて温度補償が行われた銅用のひずみゲージではなく、銅の線膨張係数より大きい線膨張係数を有するAl用のひずみゲージと、銅の線膨張係数より小さい線膨張係数を有するFe用のひずみゲージと、を組み合わせることにより、温度に対し測定可能といえるレベルの出力を得ることができた(225με/10℃=0.11mV/V/10℃)。
銅とアルミニウムとの線膨脹係数差を+6ppm/℃、銅と鉄との線膨脹係数差を−6ppm/℃とすると、フルブリッジ構成では、理論値は、240με/10℃であり、実測値(225με/10℃)と近い結果が得られた(差異が約7%)。
以上より実施例からも、ひずみゲージを用いて金属対象物の温度測定が可能であることがわかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8