(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76,39/26−39/36,41/38−41/44,43/36−43/42,43/50,45/00−45/84,49/48−49/56
【背景技術】
【0002】
連続的に成形する押出成形機の技術としては、特許文献1に掲載のように、最内層に配置された内面樹脂層の外側に中間ゴムチューブ層を施し、その外側に補強層を介して外面ゴム層を積層した加硫済みの長尺のホース本体を成形し、このホース本体の先端を密封してその後端から内面樹脂層内に所定の圧力を加え、この圧力を調整しながらホース本体の先端を引張ってホース本体を加熱装置内に順次挿入して所定の温度まで加熱し、このホース本体をその先端から所定の曲げ形状を備えた金型で挟み込んで型付けし、この状態で冷却手段に搬送し、順次冷却した後脱型し、ホース本体が全長にわたり脱型工程を終了した後、ホース本体から圧力を除去して、要求されるホースの長さに応じて切断し、所定の曲がり形状の成形ホースを連続して製造する技術がある。
【0003】
この特許文献1に掲載の技術は、ホース本体を加硫済みとして、加熱する前から内面樹脂層内を加圧し、ホース本体が全長にわたり脱型工程が終了するまで内面樹脂層内を常時加圧すると共に、所定の曲がり形状を備えた金型がホース本体を挟み込んで型付けし、ホース本体を型付けして挟持した状態で冷却手段に搬送するので、人手を介さずにホース本体を所定の曲げ形状に連続して自動成形することができ、それと共に、ホース本体の端部のみを無駄にするだけで、成形された樹脂複合ゴムホースの端部毎に生じる端部の無駄を省くことができ、作業効率を向上して曲がり形状の成形ホースの生産性を著しく高めることができる。また、圧力調整可能な加圧手段により、ホース本体の内面樹脂層内の圧力を調整しながら加熱することができ、常時内面樹脂層の内圧を一定に保持し、最内層の樹脂層に皺が発生することを防止し、成形ホースの品質向上を図ることができる。
【0004】
このように、押出成形機においては、連続自動形成を可能にし、作業性及び生産性を高めることができる。しかし、射出成型機では、製品毎に型締め、射出、冷却、脱型する工程が必要であり、これらの型締め、射出、冷却、脱型工程を順次経なければ樹脂成形できない。
そこで、特許文献2では、固定盤に取り付けられる共通金型と、冷却手段が配置され、型締めにより前記共通金型と組み合わされて金型キャビティを形成させる少なくとも2つの金型分割面を有する回転金型部と、可動盤に取り付けられ、前記回転金型部の金型分割面と対向する面に加熱手段が配置され、型締めにより前記回転金型部と組み合わされて密閉空間を形成させるダミープレートとから構成され、型締め時に、共通金型及び回転金型部間に射出成形を行う金型キャビティと、回転金型部及びダミープレート間に、加熱手段により金型(金型キャビティ面)を加熱する密閉空間とを同時に形成させることができる。これにより、金型の構成を複雑にすることなく、金型の加熱と冷却とを重複させることができる。故に、加熱及び冷却の各工程やそれぞれの工程切り替え時間の短縮を行うより、成形サイクルをより短縮することができる技術を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に、特許文献2では、型締め時に共通金型及び回転金型部間に射出成形を行う金型キャビティと、回転金型部及びダミープレート間に加熱手段により金型キャビティ面を加熱する密閉空間とを同時に形成させ、金型の加熱と冷却とを重複させることができ、加熱及び冷却工程や各工程切り替え時間の短縮を行うことにより、成型サイクルをより短縮することができる。
ここでは射出成形を行う金型キャビティと、金型キャビティ面を加熱する加熱時間とを同時とし、金型の加熱と冷却とを重複させている。このように金型の加熱と冷却とを重複させても、成型サイクルを短縮することができるものの、熱エネルギー的には損失が発生し、効率を良くすることができない。
一方、原理的には射出成形機においては、型締め、射出、冷却、脱型工程の全工程を順次経なければ成形できないから、例えば、射出と冷却のように全く逆動作が必要となり、金型キャビティに熔融樹脂が射出され、直後に冷却に転じることになり、熱エネルギーの無駄使いがある。また、型締め、射出、冷却、脱型工程はバッジシステムで行うことが必要であり、何れかを重複処理して処理時間を短くするということは、特許文献2では限られていた。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点を解消すべく、熱エネルギーの無駄使いを少なくし、過熱(射出)、冷却が同時に処理可能で成型サイクルを短縮することができる射出成型金型の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明の射出成型金型は、例えば、下金型と上金型の対向する金型を2個以上配設し、その複数配設した対向する金型間で個々に金型キャビティを形成する射出成型金型であって、対向する金型間で形成された金型キャビティに樹脂を充填する位置の射出成型部と、前記射出成型部で前記金型キャビティに樹脂を充填した状態で、対向する金型を冷却する熱媒体通路を配設し、対向する金型温度及び成型樹脂温度を降下させる高温側冷却部と、前記高温側冷却部で
降下させた金型温度及び成型樹脂温度を、更に低い温度の熱媒体を通すことで冷却する低温側冷却部と、成型樹脂を脱型(離型)し、そして、型締めし、熱媒体を用いて対向する金型を予備加熱する予熱部とを具備するものである。
ここで、前記射出成型部は、対向する金型間が型締めされた状態で形成した金型キャビティに樹脂を充填する動作を行う。
また、前記高温側冷却部は、前記射出成型部の前記金型キャビティに樹脂を充填した状態で、対向する金型の熱媒体通路を介して冷却するもので、対向する金型温度及び成型樹脂温度を降下させる動作を行う。ここで熱媒体としては、金属加工油、エンジンオイルを含む潤滑油、水等の使用が可能である。
【0009】
そして、前記低温側冷却部は、前記高温側冷却部で降下させた対向する金型温度及び成型樹脂温度を、前記高温側冷却部よりも低い温度の熱媒体を用いて、それを熱媒体通路に通すことにより更に冷却する部位である。この低温側冷却部は、前記高温側冷却部で降下させる温度を熱エネルギーの回収効率を考慮して設定するものであるから、成型する樹脂の種類、金型の容積、金型キャビティの容積、熱媒体通路の容積等によって決定されるが、通常、熱媒体として水が使用される。
更に、前記予熱部は、成型樹脂を離型し、そして、再度、対向する金型を型締めし、前記高温側冷却部で使用した加熱された熱媒体を用いて対向する金型を予備加熱する。前記高温側冷却部で降下させた対向する金型温度及び成型樹脂温度を、対向する金型温度及び成型樹脂温度を前記高温側冷却部の温度の熱媒体を熱媒体通路に通すことにより予熱する。この予熱部は、前記高温側冷却部で不要になった熱媒体を熱エネルギーの回収効率を良くするものであるから、金型の容積、金型キャビティの容積、熱媒体通路の容積等によって変化するが、通常、前記高温側冷却部で使用していた熱媒体が前記加熱部に移送される。また、前記熱媒体が前記加熱部に移送される場合には、再予熱してから移送する場合もある。
例えば、前記高温側冷却部と予熱部は、前記高温側冷却部にある熱媒体を移動し、その熱媒体を予熱部に帰還することにより、繰り返し使用することもできる。特に、前記高温側冷却部の熱媒体を除去した状態で冷却すると熱容積が低下するから冷却速度を速くすることができる。
本発明を実施する場合には、例えば、下金型と上金型の対向する金型を2個以上配設し、その複数配設した対向する金型の間で個々に金型キャビティを形成する射出成型金型であって、前記予熱部、射出成型部、高温側冷却部、低温側冷却部の各々の処理時間を略同一としたことを特徴とするものである。また、前記予熱部、射出成型部、高温側冷却部、低温側冷却部は、必要に応じて任意の個数にも設定できる。前記予熱部、射出成型部、高温側冷却部、低温側冷却部の処理時間の同一とは、それ等の一致を意味するのではなく、前記予熱部、射出成型部、高温側冷却部、低温側冷却部の処理の終了判断があればよい。即ち、各々の処理時間の時間配分を均一化とは、前記予熱部、射出成型部、高温側冷却部、低温側冷却部の各々の処理時間を均一化させるべく目標を設定し、少なくとも処理時間の完了に至らない処理時間オーバーの状態をなくすことを意味し、何れかに処理完了後の待ち時間が存在してもよい。
この発明の射出成型金型の前記高温側冷却部で熱媒体通路を流された対向する金型を冷却する熱媒体は、前記高温側冷却部から取り出し、対向する金型を予備加熱する予熱部で対向する金型を予熱する熱媒体として使用するものである。
ここで、前記高温側冷却部の熱媒体通路にある熱媒体は、そのまま予熱部の加熱源として使用することができる。このとき、対向する金型に留まっている熱媒体は循環させて一時的に外部の保温容器に移すこともできる。
【0010】
請求項2の発明の射出成型金型は、例えば、下金型と上金型の対向する金型を2個以上配設し、その複数配設した対向する金型間で個々に金型キャビティを形成する射出成型金型であって、対向する金型間で形成された金型キャビティに樹脂を充填する位置の射出成型部と、前記射出成型部で前記金型キャビティに樹脂を充填した状態で、対向する金型を冷却する熱媒体通路を配設し、対向する金型温度及び成型樹脂温度を降下させる高温側冷却部と、前記高温側冷却部で降下させた金型温度及び成型樹脂温度を、更に低い温度の熱媒体を通すことで冷却する低温側冷却部と、成型樹脂を脱型(離型)し、そして、型締めし、熱媒体を用いて対向する金型を予備加熱する予熱部とを具備するものである。
ここで、前記射出成型部は、対向する金型間が型締めされた状態で形成した金型キャビティに樹脂を充填する動作を行う。
また、前記高温側冷却部は、前記射出成型部の前記金型キャビティに樹脂を充填した状態で、対向する金型の熱媒体通路を介して冷却するもので、対向する金型温度及び成型樹脂温度を降下させる動作を行う。ここで熱媒体としては、金属加工油、エンジンオイルを含む潤滑油、水等の使用が可能である。
【0011】
そして、前記低温側冷却部は、前記高温側冷却部で降下させた対向する金型温度及び成型樹脂温度を、前記高温側冷却部よりも低い温度の熱媒体を用いて、それを熱媒体通路に通すことにより更に冷却する部位である。この低温側冷却部は、前記高温側冷却部で降下させる温度を熱エネルギーの回収効率を考慮して設定するものであるから、成型する樹脂の種類、金型の容積、金型キャビティの容積、熱媒体通路の容積等によって決定されるが、通常、熱媒体として水が使用される。
更に、前記予熱部は、成型樹脂を離型し、そして、再度、対向する金型を型締めし、前記高温側冷却部で使用した加熱された熱媒体を用いて対向する金型を予備加熱する。前記高温側冷却部で降下させた対向する金型温度及び成型樹脂温度を、対向する金型温度及び成型樹脂温度を前記高温側冷却部の温度の熱媒体を熱媒体通路に通すことにより予熱する。この予熱部は、前記高温側冷却部で不要になった熱媒体を熱エネルギーの回収効率を良くするものであるから、金型の容積、金型キャビティの容積、熱媒体通路の容積等によって変化するが、通常、前記高温側冷却部で使用していた熱媒体が前記加熱部に移送される。また、前記熱媒体が前記加熱部に移送される場合には、再予熱してから移送する場合もある。
例えば、前記高温側冷却部と予熱部は、前記高温側冷却部にある熱媒体を移動し、その熱媒体を予熱部に帰還することにより、繰り返し使用することもできる。特に、前記高温側冷却部の熱媒体を除去した状態で冷却すると熱容積が低下するから冷却速度を速くすることができる。
【0012】
本発明を実施する場合には、例えば、下金型と上金型の対向する金型を2個以上配設し、その複数配設した対向する金型の間で個々に金型キャビティを形成する射出成型金型であって、前記予熱部、射出成型部、高温側冷却部、低温側冷却部の各々の処理時間を略同一としたことを特徴とするものである。また、前記予熱部、射出成型部、高温側冷却部、低温側冷却部は、必要に応じて任意の個数にも設定できる。前記予熱部、射出成型部、高温側冷却部、低温側冷却部の処理時間の同一とは、それ等の一致を意味するのではなく、前記予熱部、射出成型部、高温側冷却部、低温側冷却部の処理の終了判断があればよい。即ち、各々の処理時間の時間配分を均一化とは、前記予熱部、射出成型部、高温側冷却部、低温側冷却部の各々の処理時間を均一化させるべく目標を設定し、少なくとも処理時間の完了に至らない処理時間オーバーの状態をなくすことを意味し、何れかに処理完了後の待ち時間が存在してもよい。
この発明の射出成型金型の前記高温側冷却部で熱媒体通路を流された対向する金型を冷却する熱媒体は、前記高温側冷却部から取り出し、対向する金型を予備加熱する予熱部に供給するタイミングを遅らすために熱媒体を収容する予備加熱用の保温容器及びヒータを具備するものである。
ここで、射出成型金型の前記高温側冷却部で熱媒体通路を流された熱媒体は、前記高温側冷却部から取り出し、予熱部の対向する金型を予備加熱するタイミングを遅らすために保温容器及びヒータを具備するものである。
ここで、前記高温側冷却部から排出する熱媒体は、予熱部で使用するタイミングが遅れる確率が高いので、予熱部に供給するタイミングを遅らすための必要な容積の保温容器を設け、かつ、そこにある熱媒体を必要に応じてヒータで加熱自在とすることもできる。
【0013】
請求項3の発明の射出成型金型の複数配設した対向する金型は、一方の金型を一体とし、他方の金型を複数に分割したものである。
ここで、一方の金型を一体とし、他方の金型を複数に分割した金型とは、例えば、上金型、下金型の何れか一方を射出成型部、高温側冷却部、低温側冷却部、予熱部を具備する構成とするものである。前記射出成型部、高温側冷却部、低温側冷却部、予熱部の境界は、断熱効果を高めるように、スリットを形成するのが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の対向する金型を複数配設し、その複数配設した対向する金型間で複数の金型キャビティを形成する射出成型金型においては、射出成型部で金型キャビティに樹脂を充填し、高温側冷却部の前記金型キャビティに樹脂を充填した状態で、対向する金型を冷却すべく熱媒体通路の熱媒体を移動させ、対向する金型温度及び成型樹脂温度を降下させ、更に、低温側冷却部で前記高温側冷却部において降下させた金型温度及び成型樹脂温度を更に低い温度の熱媒体を通すことで冷却し、そして、予熱部で硬化した成型樹脂を離型し、次に、型締めし、加熱された熱媒体を用いて対向する金型を予備加熱するものである。
したがって、高温側冷却部で不要となった熱エネルギを一旦抜き取り、それを予備加熱の熱エネルギとして再使用できるから、省エネモードが可能となる。また、前記射出成型部で射出した後、高温側冷却部及び低温側冷却部で、金型温度及び成型樹脂温度を降下させるから、従来の射出成型技術を変化させる必要はなく、高温側冷却部で不要となった熱エネルギを予備加熱の熱エネルギとして使用する程度によって設定温度を選択できる。また、予熱部では、成型樹脂を離型し、次に、型締めするものであるが、低温側冷却部以降で成型樹脂を離型し、型締めしてもよい。
このように本発明は、射出により最高金型温度にあるとき、高温側冷却部で熱媒体を外部に導き、その熱媒体の温度を低温側冷却部で降下した温度を予熱部で再度上昇させるものであるから、その射出成型部、高温側冷却部、低温側冷却部、予熱部が重複して動作でき、型締め、射出、冷却、脱型工程はバッジ処理で行うことなく、各工程時間は均一であるが、順次、リアルタイム処理を行うことができ、全体の処理時間を短くすることができる。
特に、本発明を実施する場合には、例えば、下金型と上金型の対向する金型を2個以上配設し、その複数配設した金型の間で個々に前記予熱部、射出成型部、高温側冷却部、低温側冷却部の各々の処理時間を同一(各工程の開始から終了時間は同一)とし、同時に処理できるようにしたので、リアルタイム処理による高速処理が可能となる。
この発明の射出成型金型の前記高温側冷却部で熱媒体通路を流された熱媒体は、前記高温側冷却部から取り出し、対向する金型を予備加熱する予熱部で予熱する熱媒体として使用するもので
あるから、前記高温側冷却部の熱媒体通路にある熱媒体は、そのまま予熱部の加熱源として使用することができ、対向する金型に留まっている熱媒体は循環させて外部に設けた保温容器に移すこともできる。
この保温容器は、前記高温側冷却部使用された熱媒体の温度を降下させないためのものであり、所定以上の容積であれば、容器の外周に断熱構造を設けるだけでよい。
【0015】
請求項2の対向する金型を複数配設し、その複数配設した対向する金型間で複数の金型キャビティを形成する射出成型金型においては、射出成型部で金型キャビティに樹脂を充填し、高温側冷却部の前記金型キャビティに樹脂を充填した状態で、対向する金型を冷却すべく熱媒体通路の熱媒体を移動させ、対向する金型温度及び成型樹脂温度を降下させ、更に、低温側冷却部で前記高温側冷却部において降下させた金型温度及び成型樹脂温度を更に低い温度の熱媒体を通すことで冷却し、そして、予熱部で硬化した成型樹脂を離型し、次に、型締めし、加熱された熱媒体を用いて対向する金型を予備加熱するものである。
したがって、高温側冷却部で不要となった熱エネルギを一旦抜き取り、それを予備加熱の熱エネルギとして再使用できるから、省エネモードが可能となる。また、前記射出成型部で射出した後、高温側冷却部及び低温側冷却部で、金型温度及び成型樹脂温度を降下させるから、従来の射出成型技術を変化させる必要はなく、高温側冷却部で不要となった熱エネルギを予備加熱の熱エネルギとして使用する程度によって設定温度を選択できる。また、予熱部では、成型樹脂を離型し、次に、型締めするものであるが、低温側冷却部以降で成型樹脂を離型し、型締めしてもよい。
このように本発明は、射出により最高金型温度にあるとき、高温側冷却部で熱媒体を外部に導き、その熱媒体の温度を低温側冷却部で降下した温度を予熱部で再度上昇させるものであるから、その射出成型部、高温側冷却部、低温側冷却部、予熱部が重複して動作でき、型締め、射出、冷却、脱型工程はバッジ処理で行うことなく、各工程時間は均一であるが、順次、リアルタイム処理を行うことができ、全体の処理時間を短くすることができる。
特に、本発明を実施する場合には、例えば、下金型と上金型の対向する金型を2個以上配設し、その複数配設した金型の間で個々に前記予熱部、射出成型部、高温側冷却部、低温側冷却部の各々の処理時間を同一(各工程の開始から終了時間は同一)とし、同時に処理できるようにしたので、リアルタイム処理による高速処理が可能となる。
本発明を実施する場合の前記高温側冷却部で熱媒体通路を流された熱媒体は、前記高温側冷却部から取り出し、対向する金型を予備加熱する予熱部に供給するタイミングを遅らすために保温容器及びヒータを具備するものであるから、前記高温側冷却部で熱媒体通路を流された熱媒体は、更にヒータで温度上昇させ、対向する金型を予備加熱する予熱部で予備加熱して使用することができる。
【0016】
請求項3の複数配設した対向する金型は、一方の金型を一体とし、他方の金型を複数に分割したものであるから、
請求項1または請求項2の効果に加えて、一体とした金型は回転に伴い、各種制御バルブの開閉を自己の回転等の相対移動によって行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、実施の形態において、図示の同一記号及び同一符号は、同一または相当する機能部分であるから、ここではその重複する説明を省略する。
【0019】
[実施の形態]
まず、
図1及び
図5に示すように、本発明の実施の形態の射出成型金型10は、斜視図及び平面図で示す説明図に示したように、中心軸20、即ち、中心Gの周囲を回動する上金型1と下金型2及び下金型2が固定されている固定基盤3から構成されている。平面で見ると、予熱部4、射出成型部5、高温側冷却部6、低温側冷却部7で示すように、各領域は中心Gを軸に90度の角度で分割されている。この各領域を90度の角度で分割するか、30度または45度の角度で分割するかは、重要な要素ではなく、必要に応じて分割している。
重要なのは、各予熱部4、射出成型部5、高温側冷却部6、低温側冷却部7に要する時間である。この時間は、出来るだけ均一化するのが望ましい。したがって、本実施の形態の冷却においては、2分割以上の3分割で行っている。
即ち、本発明の実施の形態では上金型1と下金型2が4個に分割された事例で説明するが、本発明を実施する場合には、2個または3個以上に分割したものであればよい。
【0020】
なお、上金型1は、予熱部4、射出成型部5、高温側冷却部6、低温側冷却部7の境界で、スリット1a,1b,1c,1dが形成されている。このスリット1a,1b,1c,1dは、断熱効果を持たせるものであり、また、機械的に他の部分と異なる動きを行うものである。このスリット1a,1b,1c,1dは、同一の幅としたものであるが、更に、そこに断熱する長円のステンレス製の絶縁物を咬ませることもできる。
本実施の形態の4個に分割された上金型1と下金型2は、上金型1から図示しない4本のシャフトが配設され、同様に図示しない下金型2の4本の挿入孔にそれを挿入自在としている。上金型1と下金型2は4本のシャフトが4本の挿入孔に完全に挿入されたとき、型締め位置となる。この型締めは、図示しない油圧シリンダによって上金型1側が駆動される。また、上金型1と下金型2の4本のシャフトが4本の挿入孔から最大に離れると、脱型(離型)位置となり、成型樹脂を脱型する。同様に、射出成型部5、高温側冷却部6、低温側冷却部7では、図示しない油圧シリンダによって型締め状態となっている。
【0021】
図2は平面図で示す熱媒体通路R
4,R
5,R
6,R
7(なお、共通的事項はRで、個々の熱媒体通路を特定するときにはR
4,R
5,R
6,R
7で示す)の両端部R
4a,R
4b、両端部R
5a,R
5b、両端部R
6a,R
6b、両端部R
7a,R
7bを、固定基盤3の予熱部4、射出成型部5、高温側冷却部6、低温側冷却部7の位置毎に、例えば、予熱部4においては開口端3a、3bに対向できるように設定されている。
例えば、両端部R
4a,R
4bの位置は中心Gからの距離r
1,r
2とし、両端部R
5a,R
5bの位置は中心Gからの距離r
3,r
4とし、両端部R
6a,R
6bの位置は中心Gからの距離r
5,r
6、両端部R
7a,R
7bの位置は中心Gからの距離r
7,r
8としている。
【0022】
即ち、ここで使用している熱媒体通路Rは射出成型金型10の中心軸20の中心G位置からその両端部の位置がずれるように配設されている。例えば、予熱部4の熱媒体通路R
4の両端部R
4a,R
4bの位置は中心Gからの距離r
1,r
2としている。同様に、射出成型部5の熱媒体通路R
5の位置は中心Gからの距離r
3,r
4、高温側冷却部6の熱媒体通路R
6の位置は中心Gからの距離r
5,r
6、低温側冷却部7の熱媒体通路R
7の位置は中心Gからの距離r
7,r
8は、何れも中心Gから特定の距離になるように選択されている。即ち、中心Gからの距離r
1≠r
3≠r
5≠r
7は、r
2≠r
4≠r
6≠r
8と異なる設定に設定されている。
【0023】
中心軸20の中心Gからの距離r
1≠r
3≠r
5≠r
7がr
2≠r
4≠r
6≠r
8と異なることは、例えば、予熱部4においては開口する両端部R
4a,R
4bに対向できるように設定され、同様に、射出成型部5、高温側冷却部6、低温側冷却部7の4個所の位置毎に、図示しない開口端に対向できるようになる。
このとき、
図3に示す予熱部4においては開口する両端部R
4a,R
4b、固定基盤3に配設されている熱媒体通路端部34a、34b、Oリング34c,34dからなるバルブ機能が均一に働くようにしている。
【0024】
即ち、
図3に示すように、熱媒体通路R
4(R
5,R
6,R
7)の両端部R
4a,R
4b(両端部R
5a,R
5b、両端部R
6a,R
6b、両端部R
7a,R
7b)は、開口を面取りした形状になっており特定の位置のとき、固定基盤3に配設されているOリング34c,34dが密着され、例えば、熱媒体通路R
4の両端部R
4a,R
4bと熱媒体通路端部34a、34bが連通される。射出成型部5、高温側冷却部6、低温側冷却部7においても同様である。
しかし、下金型2の熱媒体通路R
4,(R
5,R
6,R
7)の両端部R
4a,R
4b(両端部R
5a,R
5b、両端部R
6a,R
6b、両端部R
7a,R
7b)が、固定基盤3に配設されているOリング34c,34dの位置にないとき、固定基盤3で封止され熱媒体の流れは生じ得ない。この意味で、熱媒体通路R
4(R
5,R
6,R
7)の両端部R
4a,R
4b(両端部R
5a,R
5b、両端部R
6a,R
6b、両端部R
7a,R
7b)は、固定基盤3で熱媒体通路端部34a、34bとの間を開閉されるバルブとして機能する。
【0025】
図4に示すように、予熱部4の金型キャビティ41,42,43、射出成型部5の金型キャビティ51,52,53、高温側冷却部6の金型キャビティ61,62,63、低温側冷却部7の金型キャビティ71,72,73は、予熱部4、射出成型部5、高温側冷却部6、低温側冷却部7によってその形状が特定されるものではない。
この金型キャビティ41,42,43、金型キャビティ51,52,53、金型キャビティ61,62,63、低温側冷却部7の金型キャビティ71,72,73は、本発明を実施する場合には、種類及び個数を幾つにしてもよい。また、その形についても同様に特定されるものではない。
【0026】
また、
図5に示すように、金型キャビティ41,42,43、射出成型部5の金型キャビティ51,52,53、高温側冷却部6の金型キャビティ61,62,63、低温側冷却部7の金型キャビティ71,72,73は、上金型1及び下金型2で形成され、また、金型キャビティ41,42,43、射出成型部5の金型キャビティ51,52,53、高温側冷却部6の金型キャビティ61,62,63、低温側冷却部7の金型キャビティ71,72,73の周囲には、断面で簡略化して表した熱媒体通路R
4(熱媒体通路R
41及び熱媒体通路R
42)が形成されている。
この熱媒体通路R
4(熱媒体通路R
41及び熱媒体通路R
42)は、上金型1と下金型2で形を変更してもよいし、熱媒体の種類を変更してもよい。また、配置においても、交互に径または熱媒体の種類を変更したものとすることができる。
【0027】
なお、本実施の形態の熱媒体通路R
4,R
5,R
6,R
7は、
図2に示したように、繰り返しの九十九折であり、同一太さの管路を用いているが、異なった形の管路としてもよいし、複数並列に設けてもよい。特に、高温側冷却部6の熱媒体通路R
6は、潤滑油、エンジンオイル等の熱媒体を用い、それらを全て抜いて、そこに熱媒体を移動させ、熱容積を減少させてから、低温側冷却部7では水等を熱媒体として別な通路で冷却してもよい。
勿論、熱媒体通路R
4,R
5,R
6,R
7の熱媒体は、比熱の大きい流体とすることが望ましいが、比熱の小さなものでも循環速度を速くすれば、必ずしも比熱の大きな物質に限定されるものではない。
【0028】
例えば、高温側冷却部6では、熱媒体通路R
6の全体を排出させることにより、熱容積を少なくし、更に、熱媒体を
図6に示す保温容器18に一時的に供給し、また、低温側冷却部7では熱媒体通路R
7の熱媒体を排出し、他の水で冷却する熱媒体を用いることで、効率の良い冷却を行うことができる。または、高温側冷却部6では、熱媒体通路R
6の熱媒体として水と分離しやすい材料を使用することにより、低温側冷却部7で高速冷却することもできる。
【0029】
図示しない熱媒体を一時的に供給する保温容器18とは、保温機能または必要に応じたヒータによる加熱機能を有し、高温側冷却部6で熱媒体通路R
6の熱媒体として抜き取ったものは、予熱部4で離型するタイミングを得ることから、若干遅れが生じる。それを無視して離型及び予熱することもできるが、このタイムラグを無視するか、昇温させて急速予熱を選択するかは使用者の選択の問題である。
できれば、保温機能及び加熱機能を有する熱媒体の保温容器18で、再過熱した熱媒体を使用するのが、タイミングが自由に得られるので、好適である。
【0030】
図6は射出成型機で使用する本実施の形態の射出成型金型10は、次のように制御される。まず、ハードウェアの構成から説明する。
制御ユニット100は、コンピュータ等のデジタル制御回路からなるもので、予熱部4、射出成型部5、高温側冷却部6、低温側冷却部7の制御部に接続されている。また、下金型2を回動させる金型回動モータ11に必要な図示しないドライバ回路を介して接続されている。また、予熱部4、射出成型部5、高温側冷却部6、低温側冷却部7に配設された各種センサ12にも接続されている。また、図示しない油圧によって上金型1を解放したり、型締めしたりする油圧シリンダ機構13に出力されている。
また、必要なドライバ回路を介して高温側冷却部6で熱媒体を移送する高温側ポンプ15、低温側冷却部7で熱媒体を移送する低温側ポンプ16、予熱部4に熱媒体を移送する予熱ポンプ17に電気信号を送出している。
【0031】
具体的な制御は、
図7に示すメインプログラムの実行により行われる。
ステップS1で各工程の動作ルーチンの終了を示すフラグF1乃至F4が立っている(“1”)か否かを判断する。立っているとき、以降の処理に入るが、各工程の終了を示すフラグF1乃至F4が立っていないときには、予熱部4、射出成型部5、高温側冷却部6、低温側冷却部7の処理中を意味するから、ここで待機する。各工程の終了を示すフラグF1乃至F4が立っている(“1”)とき、ステップS2の金型回動モータ11を駆動し、各種センサ12によってステップS3で所定の回動位置に到来したかを判断する。所定の回動位置にないとき、その回動を継続する。所定の回動位置になったとき、ステップS4で
図8乃至
図11に示す各動作ルーチンを同時に実行する。ステップS5で各ルーチンの処理が終了したことが判断されるまで、ステップS4及びステップS5のルーチンを継続する。ステップS5で特定の動作ルーチンが完了したことが判断されると、ステップS6で該当のフラグを立て(“1”)、ステップS7で全動作ルーチンの終了をフラグF1乃至F4判断し、終了していないとき、ステップS4からステップS7のルーチンを繰り返し実行する。
【0032】
なお、各種センサ12によってステップS3で所定の回動位置に到来したかを判断する動作は、金型回動モータ11の回転数制御によってもよいし、エンコーダを用いて位置検出してもよい。何れにせよ、
図3に示すように、熱媒体通路R
4,R
5,R
6,R
7の両端部R
4a,R
4b、両端部R
5a,R
5b、両端部R
6a,R
6b、両端部R
7a,R
7bは、固定基盤3に配設されているOリング34c,34dが密着され、特定の位置のみで接続され連通される。射出成型部5、高温側冷却部6、低温側冷却部7においても同様に接続され、下金型2の熱媒体通路R
4,R
5,R
6,R
7の両端部R
4a,R
4b、両端部R
5a,R
5b、両端部R
6a,R
6b、両端部R
7a,R
7bが、特定の位置で固定基盤3に設けられた熱媒体通路端部に連通される。連通されるまでは、熱媒体通路R
4,R
5,R
6,R
7の両端部R
4a,R
4b、両端部R
5a,R
5b、両端部R
6a,R
6b、両端部R
7a,R
7bが、固定基盤3で封止されている。
【0033】
各動作ルーチンとしては、予熱部4で実行する『予熱部ルーチン』がコールされる。
ステップS11で金型の開放を行い、ステップS12で脱型(離型)が完了したか否かを判断し、脱型が終了するまで、ステップS11乃至ステップS12のルーチンに留まる。ステップS12で脱型が完了すると、ステップS13で金型の型締めを行い、ステップS14で加熱を開始し、ステップS15で加熱された金型の温度がT
1℃以上になっているかを判断し、ステップS14及びステップS15のルーチンを繰り返し実行する。金型の温度がT
1℃以上になったことがステップS15で確認されると、ステップS16で完了フラグF
1を立て(“1”)、このルーチンを終了する。
なお、ステップS14で加熱することを示しているが、流体からなる熱媒体の加熱であっても、ヒータ等の電熱加熱であってもよい。しかし、熱エネルギの損失を少なくするには、他の工程の同一の熱媒体の使用が好ましい。
【0034】
同時に実行する各動作ルーチンとして、射出成型部5で実行する『射出成型ルーチン』がコールされる。『射出成型ルーチン』では、ステップS21で射出成型を行い、ステップS22で射出成型の完了を検出されるまで、ステップS21及びステップS22のルーチンを繰り返し実行する。ステップS22で射出成型の完了が検出されると、ステップS23で完了フラグF
2を立て(“1”)、このルーチンを終了する。
【0035】
同時に、各動作ルーチンとして、高温側冷却部6で実行する『高温側冷却部ルーチン』がコールされる。『高温側冷却部ルーチン』では、ステップS31で熱媒体を移動させる高温側ポンプ15を駆動し、熱媒体を図示しない保温容器18に収容する。そして、ステップS32で対向する金型温度がT
2℃以下に低下したか否かを判断し、それが検出されるまでステップS31及びステップS32のルーチンを繰り返し実行する。ステップS32で対向する金型温度がT
2℃以下になったと判断されると、ステップS33で完了フラグF
3を立て(“1”)、このルーチンを終了する。
【0036】
また、各動作ルーチンとして、低温側冷却部7で実行する『低温側冷却部ルーチン』がコールされる。『低温側冷却部ルーチン』では、ステップS41で熱媒体を移動させる低温側ポンプ16を駆動し、高温側冷却部6で用いたものとは異なる熱媒体を図示しない保温容器に収容する。そして、冷却された熱媒体を、ステップS42で対向する金型温度がT
3℃以下になっているか判断し、それが検出されるまでステップS41及びステップS42のルーチンを繰り返し実行する。ステップS42で対向する金型温度がT
3℃以下になっていると判断されると、ステップS43で完了フラグF4を立て(“1”)、このルーチンを終了する。
【0037】
このように、上記実施の形態の対向する上金型1及び下金型2からなる金型を複数配設し、その複数配設した対向する上金型1及び下金型2間で複数の金型キャビティ41,42,43、51,52,53、61,62,63、71,72,73を形成する射出成型金型10においては、射出成型部5で金型キャビティ41,42,43、51,52,53、61,62,63、71,72,73に樹脂を充填し、高温側冷却部6で前記金型キャビティ41,42,43、51,52,53、61,62,63、71,72,73に樹脂を充填した状態で、対向する上金型1及び下金型2を冷却する熱媒体通路Rの熱媒体を移動させ、対向する上金型1及び下金型2の温度及び成型樹脂温度を降下させ、更に、低温側冷却部7で高温側冷却部6において降下させた対向する上金型1及び下金型2温度及び成型樹脂温度を更に低い温度の熱媒体を通すことで冷却し、そして、予熱部4で成型樹脂を離型し、次に、型締めし、加熱された熱媒体を用いて対向する金型キャビティ41,42,43、51,52,53、61,62,63、71,72,73を予備加熱するものである。
【0038】
したがって、高温側冷却部6で本来は熱媒体で冷却破棄される熱エネルギを一旦抜き取り、それを予備加熱の熱エネルギとして予熱部4で使用できるから、省エネモードでの使用が可能となる。また、射出成型部5で射出した後、高温側冷却部6及び低温側冷却部7で、上金型1及び下金型2の金型温度及び成型樹脂温度を降下させるから、従来の射出成型技術を変化させる必要はなく、高温側冷却部6で不要となった熱エネルギを予備加熱の熱エネルギとして使用する程度によって設定温度を選択できる。また、予熱部4では、成型樹脂を離型し、次に、型締めするものであるが、低温側冷却部7以降で成型樹脂を離型し、型締めしてもよい。
【0039】
このように本発明の実施の形態は、射出により上金型1及び下金型2が最高金型温度にあるとき、高温側冷却部6で熱媒体を外部に導き、その熱媒体の温度を予熱部4において、低温側冷却部7で降下した温度を再度上昇させるものであるから、その射出成型部5、高温側冷却部6、低温側冷却部7、予熱部4が重複して動作できるから、型締め、射出、冷却、脱型工程はバッジ処理で行うことなく、リアルタイム処理を行うことができ、処理時間を短くすることができる。特に、本発明を実施する場合には、例えば、下金型1と上金型2の対向する金型を2個以上配設し、その複数配設した上金型1及び下金型2の間で個々に予熱部4、射出成型部5、高温側冷却部6、低温側冷却部7の各々の処理時間を略同一とし、同時に処理できるようにしたので、リアルタイム処理による高速処理が可能となる。
【0040】
また、本実施の形態では、上金型1及び下金型2を円形として形成したものであるが、3角柱または4角柱、5角柱として、その面に金型キャビティを形成する金型としても使用できる。
即ち、本発明を実施する場合の、対向する金型を複数配設し、その複数配設した対向する金型間で複数の金型キャビティを形成する射出成型金型10としては、本実施の形態のように上金型1及び下金型2からなる上下配置に限定されるものではなく、垂直配置とすることもできる。
【0041】
上記実施の形態の射出成型部5は、対向する上金型1及び下金型2間が型締めされた状態で形成した金型キャビティ41,42,43、51,52,53、61,62,63、71,72,73に樹脂を充填する公知の射出成型機のノズルに接続される。
また、高温側冷却部6は、射出成型部5の金型キャビティ41,42,43、51,52,53、61,62,63、71,72,73に樹脂を充填した状態で、対向する上金型1及び下金型2の熱媒体通路(34a,34b)を介して冷却するもので、対向する金型温度及び成型樹脂温度を降下させる能力があればよい。
【0042】
そして、低温側冷却部7は、高温側冷却部6で降下させた対向する上金型1及び下金型2の温度及び成型樹脂温度を、対向する金型温度及び成型樹脂温度を高温側冷却部6よりも低い温度の熱媒体を用いて、それを熱媒体通路(34a,34b)に通すことにより更に冷却する部位である。この低温側冷却部7は、高温側冷却部6で降下させる温度を熱エネルギーの回収効率を考慮して冷却するものであるから、樹脂の種類、上金型1及び下金型2等の金型の容積、金型キャビティ41,42,43、51,52,53、61,62,63、71,72,73の容積、熱媒体通路(34a,34b)の容積等によって決定されるが、通常、熱媒体として水が使用される。
【0043】
更に、予熱部4は、成型樹脂を離型し、そして、再度、型締めし、高温側冷却部6で使用した加熱された熱媒体を用いて対向する上金型1及び下金型2を予備加熱する。高温側冷却部6で降下させた対向する上金型1及び下金型2の金型温度及び成型樹脂温度を、対向する金型温度及び成型樹脂温度を高温側冷却部6の温度の熱媒体を熱媒体通路(34a,34b)に通すことにより予熱する。この予熱部4は、高温側冷却部6で不要になった熱媒体を熱エネルギーの回収効率を良くするものであるから、金型の容積、金型キャビティの容積、熱媒体通路の容積等によって変化するが、通常、高温側冷却部6で使用していた熱媒体がヒータ等の加熱部に移送される。また、前記熱媒体が前記加熱部に移送される場合には、再予熱してから移送する場合もある。
例えば、高温側冷却部6と予熱部4は、高温側冷却部7にある熱媒体を移動し、その熱媒体を予熱部4に帰還することにより、繰り返し使用することもできる。特に、高温側冷却部6の熱媒体を除去すると熱容積が低下するから冷却速度を速くすることができる。
【0044】
上記実施の形態の射出成型金型10においては、高温側冷却部6で熱媒体通路(34a,34b)を流された対向する上金型1及び下金型2を冷却する熱媒体は、高温側冷却部6から取り出し、対向する金型を予備加熱する予熱部4で対向する上金型1及び下金型2からなる金型を予熱する熱媒体として使用するものである。
ここで、高温側冷却部6の熱媒体通路(34a,34b)にある熱媒体は、そのまま予熱部4の加熱源として使用することができる。このとき、対向する金型に留まっている熱媒体は循環させて外部容器、例えば、保温容器18に移すことができる。
【0045】
上記実施の形態の射出成型金型10においては、高温側冷却部6で熱媒体通路(34a,34b)を流された対向する上金型1及び下金型2を冷却する熱媒体は、高温側冷却部6から取り出し、対向する上金型1及び下金型2を予備加熱する予熱部4に供給するタイミングを遅らすために熱媒体を収容する保温容器18及びヒータを具備するものである。
ここで、射出成型金型10の高温側冷却部6で熱媒体通路(34a,34b)を流された対向する金型を冷却する熱媒体は、高温側冷却部6から取り出し、対向する上金型1及び下金型2を予備加熱する予熱部4に供給するタイミングを遅らすために保温容器18及びヒータを具備するものである。
ここで、高温側冷却部6から排出する熱媒体は、予熱部4で使用するタイミングが遅れる確率が高いので、予熱部4に供給するタイミングを遅らすための保温容器18を設け、かつ、そこにある熱媒体を必要に応じて加熱自在とすることもできる。
【0046】
上記実施の形態の射出成型金型10の複数配設した対向する上金型1及び下金型2は、一方の金型を一体とし、他方の金型を複数に分割したものである。
ここで、一方の金型を一体とし、他方の金型を複数に分割した金型とは、例えば、上金型1または下金型2または可動型、固定型の何れか一方を射出成型部5、高温側冷却部6、低温側冷却部7、予熱部4とを具備する構成とするものである。射出成型部5、高温側冷却部6、低温側冷却部7、予熱部4の境界は、断熱効果を高めるように、スリットを形成するのが望ましい。