特許第6535476号(P6535476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6535476金属容器用しごき成形装置及びアイオニングダイ用支持体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6535476
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】金属容器用しごき成形装置及びアイオニングダイ用支持体
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/28 20060101AFI20190617BHJP
【FI】
   B21D22/28 K
   B21D22/28 C
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-24308(P2015-24308)
(22)【出願日】2015年2月10日
(65)【公開番号】特開2016-147275(P2016-147275A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2018年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】515038170
【氏名又は名称】山内 法夫
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】特許業務法人オーパス国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091694
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 守
(72)【発明者】
【氏名】山内 法夫
【審査官】 山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−019493(JP,A)
【文献】 特開2007−216302(JP,A)
【文献】 実開昭58−018160(JP,U)
【文献】 特開平06−087033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/00 − 26/14
B21D 51/26
F16F 1/00 − 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチスリーブの先端に組み付けた金属製の有底筒状体が挿通されることにより、前記有底筒状体の筒状部の外表面にしごき加工を施す環状のアイオニングダイを備えた金属容器用しごき成形装置であって、
前記アイオニングダイを支持する金属製のアイオニングダイ用支持体に、前記アイオニングダイを弾性的に支持する折り曲げ状の弾性片を形成し、該折り曲げ状の弾性片は、前記アイオニングダイの半径方向に撓むよう配設し
前記アイオニングダイ用支持体を環状に形成し、その周方向に前記弾性片を断続的に複数形成し、これら複数の弾性片により前記アイオニングダイの外周を支持したことを特徴とする金属容器用しごき成形装置。
【請求項2】
前記折り曲げ状の弾性片の折れ曲がり角度を鋭角に形成したことを特徴とする請求項1に記載の金属容器用しごき成形装置。
【請求項3】
前記折り曲げ状の弾性片は、前記アイオニングダイ用支持体の一端より延出された基端片とアイオニングダイを支持する先端片とからなり、
前記基端片は前記一端を支点として前記アイオニングダイの半径方向に撓むよう構成し、前記先端片は該先端片と前記基端片とを連結した連結部を支点として前記アイオニングダイの半径方向に撓むように構成し、
しごき加工中に前記アイオニングダイの半径方向に荷重が加わり、該アイオニングダイが偏芯するとき、荷重の小さい段階では、前記基端片と前記先端片とが同時に撓んで前記アイオニングダイを偏芯させ、前記荷重の大きい段階では、前記基端片がその近傍に設けた部材に接触されその動作が規制されることにより、前記アイオニングダイの偏芯量が増加しないよう制限するように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の金属容器用しごき成形装置。
【請求項4】
パンチスリーブの先端に組み付けた金属製の有底筒状体が挿通されることにより、前記有底筒状体の筒状部の外表面にしごき加工を施す環状のアイオニングダイを支持した金属製のアイオニングダイ用支持体であって、
前記アイオニングダイを弾性的に支持する折り曲げ状の弾性片を形成し、該折り曲げ状の弾性片は、前記アイオニングダイの半径方向に撓むよう配設し
前記アイオニングダイ用支持体を環状に形成し、その周方向に前記弾性片を断続的に複数形成し、これら複数の弾性片により前記アイオニングダイの外周を支持したことを特徴とするアイオニングダイ用支持体。
【請求項5】
前記折り曲げ状の弾性片の折れ曲がり角度を鋭角に形成したことを特徴とする請求項に記載のアイオニングダイ用支持体。
【請求項6】
前記折り曲げ状の弾性片は、前記アイオニングダイ用支持体の一端より延出された基端片とアイオニングダイを支持する先端片とからなり、
前記アイオニングダイ用支持体により前記アイオニングダイを支持した際、前記基端片は前記一端を支点として前記アイオニングダイの半径方向に撓むよう構成され、前記先端片は該先端片と前記基端片とを連結した連結部を支点として前記アイオニングダイの半径方向に撓むように構成され、
しごき加工中に前記アイオニングダイの半径方向に荷重が加わり、該アイオニングダイが偏芯するとき、荷重の小さい段階であっても、前記基端片と前記先端片とが同時に撓んで、前記アイオニングダイを偏芯させる偏芯量を確保できるように構成したことを特徴とする請求項4又は5に記載のアイオニングダイ用支持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の有底筒状体にしごき成形を施しDI缶等の金属容器を製造する金属容器用しごき成形装置、及びDI缶等の金属容器をしごき加工するときに用いられるアイオニングダイを支持するアイオニングダイ用支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸飲料やビール等を収容する周知のDI缶は、通常、平板状のコイル材を有底筒型に絞り加工し、その筒状部を段階的にしごき加工することにより缶胴が成形される。缶胴を成形するに際しては、パンチスリーブが有底筒状体の内部に挿入された状態で、複数備えたアイオニングダイ内に順次挿通され、それに伴って、各アイオニングダイの内側に筒状部の外表面が接触されることにより引き延ばされ、缶胴が所定形状に成形されることになるのだが、アイオニングダイが固定されている場合には、しごき加工中に、缶胴となり得る筒状部の厚さにばらつき(異常偏肉)が生じることがあり、こうしたばらつきにより筒状部に破断が起きた場合には、アイオニングダイとパンチスリーブとが接触し、損傷したり寿命についても短くなるという問題があった。
【0003】
そのため、こうした問題点を改善するため、アイオニングダイが固定された完全固定方式に代えて、アイオニングダイ自体やアイオニングダイに構成された筒状部と接触される部材をクッション性のある部材で支持し、しごき加工中において、筒状部の半径方向に急激な荷重(変位)が生じたときに、その荷重を軽減して損傷を防止しようという自動調芯式の技術が特許文献1及び非特許文献1には開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭55−19493号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】[平成26年12月4日検索]、インターネット<URL:http://www.pridecan.com/toolpack−detail.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の自動調芯式の技術においては、金属製のフィンガ23により調芯を行おうというものであるが、こうした形状のフィンガを適用した場合には、図6の発明を理解する上での参考図にて一点鎖線で示したように、偏芯量が小さいことから、しごき加工中に急激に大きな荷重が加わったとき、金属製のフィンガは比較的簡単に破損する虞がある。
【0007】
また、非特許文献1の自動調芯式の技術においては、コイルスプリングの弾性力により調芯を行おうというものであり、図6の発明を理解する上での参考図にて二点鎖線で示したように、コイルスプリングの特性上、偏芯量を大きくとることが可能ではあるのだが、大きな荷重が加わることを考慮して、弾性係数の高いものを採用すると、加工開始直後の荷重が小さいときには、わずかに偏芯させることしかできずに、缶胴となり得る筒状部にばらつき(異常偏肉)が生じる虞がある。一方、弾性係数の小さいコイルスプリングを採用するとなると、しごき加工中に大きな荷重が加わったとき、偏芯量が大きくなり過ぎてしまい、缶胴となり得る筒状部に破損が生じる虞がある。しかも、非特許文献1のコイルスプリングは継続的な使用により比較的容易にへたりが発生することから耐久性の観点から適していると言えるものではない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、筒状部にしごき加工を行うに際し、アイオニングダイの半径方向に比較的小さな荷重しか加わらないときでも、筒状部に偏肉が生じることがないよう、アイオニングダイの偏芯量を十分に確保し、その一方で、アイオニングダイの半径方向に大きな荷重が加わるときには、この荷重に伴い過剰に偏芯量が大きくならないよう抑制して筒状部や装置に破損が生じてしまわぬよう防止し、高品質な金属容器を得ることが可能な金属容器用しごき成形装置及びアイオニングダイ用支持体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
金属容器用しごき成形装置に係る発明は、
パンチスリーブの先端に組み付けた金属製の有底筒状体が挿通されることにより、前記有底筒状体の筒状部の外表面にしごき加工を施す環状のアイオニングダイを備えた金属容器用しごき成形装置であって、
前記アイオニングダイを支持する金属製のアイオニングダイ用支持体に、前記アイオニングダイを弾性的に支持する折り曲げ状の弾性片を形成し、該折り曲げ状の弾性片は、前記アイオニングダイの半径方向に撓むよう配設し
前記アイオニングダイ用支持体を環状に形成し、その周方向に前記弾性片を断続的に複数形成し、これら複数の弾性片により前記アイオニングダイの外周を支持したことを特徴とする。
【0010】
金属容器用しごき成形装置に係る発明は、
前記折り曲げ状の弾性片の折れ曲がり角度を鋭角に形成したことを特徴とする。
【0012】
金属容器用しごき成形装置に係る発明は、
前記折り曲げ状の弾性片は、前記アイオニングダイ用支持体の一端より延出された基端片とアイオニングダイを支持する先端片とからなり、
前記基端片は前記一端を支点として前記アイオニングダイの半径方向に撓むよう構成し、前記先端片は該先端片と前記基端片とを連結した連結部を支点として前記アイオニングダイの半径方向に撓むように構成し、
しごき加工中に前記アイオニングダイの半径方向に荷重が加わり、該アイオニングダイが偏芯するとき、荷重の小さい段階では、前記基端片と前記先端片とが同時に撓んで前記アイオニングダイを偏芯させ、前記荷重の大きい段階では、前記基端片がその近傍に設けた部材に接触されその動作が規制されることにより、前記アイオニングダイの偏芯量が増加しないよう制限するように構成したことを特徴とする。
【0013】
アイオニングダイ用支持体に係る発明は、
パンチスリーブの先端に組み付けた金属製の有底筒状体が挿通されることにより、前記有底筒状体の筒状部の外表面にしごき加工を施す環状のアイオニングダイを支持した金属製のアイオニングダイ用支持体であって、
前記アイオニングダイを弾性的に支持する折り曲げ状の弾性片を形成し、該折り曲げ状の弾性片は、前記アイオニングダイの半径方向に撓むよう配設し
前記アイオニングダイ用支持体を環状に形成し、その周方向に前記弾性片を断続的に複数形成し、これら複数の弾性片により前記アイオニングダイの外周を支持したことを特徴とする。
【0014】
アイオニングダイ用支持体に係る発明は、
前記折り曲げ状の弾性片の折れ曲がり角度を鋭角に形成したことを特徴とする。
【0016】
アイオニングダイ用支持体に係る発明は、
前記折り曲げ状の弾性片は、前記アイオニングダイ用支持体の一端より延出された基端片とアイオニングダイを支持する先端片とからなり、
前記アイオニングダイ用支持体により前記アイオニングダイを支持した際、前記基端片は前記一端を支点として前記アイオニングダイの半径方向に撓むよう構成され、前記先端片は該先端片と前記基端片とを連結した連結部を支点として前記アイオニングダイの半径方向に撓むように構成され、
しごき加工中に前記アイオニングダイの半径方向に荷重が加わり、該アイオニングダイが偏芯するとき、荷重の小さい段階であっても、前記基端片と前記先端片とが同時に撓んで、前記アイオニングダイを偏芯させる偏芯量を確保できるように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アイオニングダイ用支持体に構成された、基端片と先端片とからなる弾性片が折り曲げ状に形成されていることから、しごき加工の初期における荷重が小さい段階であっても、筒状部に偏肉が生じることがないようアイオニングダイを十分に偏芯させることができる。その一方で、しごき加工中に比較的大きな荷重が生じたときには、基端片がその近傍に設けた部材に接触されその動作が規制されるよう構成されていることから、比較的大きな荷重が発生しても、それに伴い、アイオニングダイの偏芯量が過剰に大きくならないよう抑制することができる。よって、必要以上にアイオニングダイの偏芯量が大きくなってしまい、金属容器、アイオニングダイ、或いは、パンチスリーブに破損が発生してしまうことを防止することができる。
【0018】
また、アイオニングダイを弾性的に支持する部材は、基端片と先端片とからなる金属製の弾性片であることから、コイルスプリングのように比較的容易にへたりが発生することはなく耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1の金属容器用しごき成形装置たるツールパックの概略構成を示す断面図である。
図2】実施例1のアイオニングダイ用支持体たるセンタリングリングを示す斜視図である。
図3】実施例1のアイオニングダイ用支持体たるセンタリングリングを示す正面図である。
図4】実施例1のアイオニングダイ用支持体たるセンタリングリングを示す断面図である。
図5】実施例1のアイオニングダイ用支持体たるセンタリングリングの要部を示す拡大断面図である。
図6】発明を理解する上での参考図を示し、実線は実施例1のセンタリングリングによりアイオニングダイを弾性的に支持したときの荷重と偏芯量との関係を示すグラフであり、一点鎖線は特許文献1のフィンガによりアイオニングダイに相当するケーシングを弾性的に支持したときの荷重と偏芯量との関係を示すグラフであり、二点鎖線は非特許文献1のコイルスプリングを適用してアイオニングダイを弾性的に支持したときの荷重と偏芯量との関係を示すグラフである。
図7】実施例2のアイオニングダイ用支持体たるセンタリングリングを示す斜視図である。
図8】実施例2のアイオニングダイ用支持体たるセンタリングリングを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施例を以下に説明する。もちろん、本発明は、その発明の趣旨に反しない範囲で、実施例において説明した以外の構成のものに対しても容易に適用可能なことは説明を要するまでもない。
【実施例1】
【0021】
本実施例1における金属容器用しごき成形装置としてのツールパック1は、金属容器となり得るアルミニウム等からなる金属製の有底筒状体Wに圧延加工を施し、DI缶を製造するときに用いられる。
【0022】
図1に示すように、ツールパック1には、パンチスリーブ2の進退方向(図1に示す水平方向)に複数のダイ(リドローダイ3及び第1〜第3のアイオニングダイ4a,4b,4c)が離間して配設されている。本実施例1のアイオニングダイは、第1のアイオニングダイ4a、第2のアイオニングダイ4b、第3のアイオニングダイ4cの3つからなり、第1のアイオニングダイ4aの上流側にはリドローダイ3が配設され、当該リドローダイ3はクランプリング5によりリドローダイホルダ6に固定されている。
【0023】
第1のセンタリングリングリテイナー7aには、第1のアイオニングダイ4aを支持する第1のセンタリングリング8aが組み付けられている。そしてこれと同様に、第2のセンタリングリングリテイナー7bには、第2のアイオニングダイ4bを支持する第2のセンタリングリング8bが、第2のセンタリングリングリテイナー7bに隣接した第3のセンタリングリングリテイナー7cには、第3のアイオニングダイ4cを支持する第3のセンタリングリング8c組み付けられている。
【0024】
また、第3のセンタリングリングリテイナー7cの内側にはルブリケーダーリング9が組み付けられていて、ルブリケーダーリング9、第1,第3のセンタリングリングリテイナー7a,7c、及びリドローダイホルダ6には、クーラント液を供給するためのクーラント供給孔10が形成されている。
【0025】
リドローダイホルダ6と第1のアイオニングダイ4aとの間に所定間隔の空間部を形成するため、これらの間には第1のスペーサ11aが設けられ、第1のセンタリングリングリテイナー7aと第2のアイオニングダイ4bとの間に所定間隔の空間部を形成するため、これらの間には第2のスペーサ11bが設けられている。
【0026】
また、リドローダイ3、リドローダイホルダ6、第1〜第3のアイオニングダイ4a〜4c、第1,第2のセンタリングリングリテイナー7a,7b、及びルブリケーダーリング9の各々には、パンチスリーブ2が挿通される環状の孔部12が形成されている。そして、これらの孔部12はパンチスリーブ2の進退方向に同心状設けられていて、パンチスリーブ2に組み付けられた被加工体である金属製の有底筒状体Wがリドローダイ3の孔部12を通過することによりしぼり加工がなされ、しぼり加工のなされた有底筒状体Wは、次に、パンチスリーブ3の前進に従い、第1、第2、第3のアイオニングダイ4a,4b,4cの孔部12を段階的に通過することにより、有底筒状体Wの筒状部W1のしごき加工がなされる。
【0027】
ここで、第1〜第3のアイオニングダイ4a〜4cを弾性的に支持する第1〜第3のセンタリングリング8a〜8cについて説明する。なお、図1に示すように、第1〜第3のアイオニングダイ4a〜4cは同形状であり、また、第1〜第3のアイオニングダイ4a〜4cを弾性的に支持する第1〜第3のセンタリングリング8a〜8cについても同形状であるため、第2,第3のセンタリングリング8b,8cについては省略し、第1のセンタリングリング8aについてのみ図1〜6に基づき以下に説明する。
【0028】
第1のアイオニングダイ4aを弾性的に支持する第1のセンタリングリング8aは、図1に示すように、第1のアイオニングダイ4aの外周面を複数の弾性片14により支持するものである。弾性片14は、図2図4に示すように、第1のセンタリングリング4aの周方向に断続的に多数(40個)設けられ、弾性片14を備えた第1のセンタリングリング8aは、金属製であり切削加工に形成されたものである。
【0029】
また、図5に示すように、弾性片14は鋭角な「く」の字型の折り曲げ状に形成され、第1のセンタリングリング8aの一端より延出された基端片14aと、第1のアイオニングダイ8aの外周面を支持する先端片14b、及び、基端片14aと先端片14bとを連結する湾曲状の連結部14cから構成される。図1に示すように、ツールパック1に第1のセンタリングリング8aを組み付けたときには、基端片14aの背面側には間隙Cが形成される。そして、基端片14a、先端片14b、及び連結部14cが、第1のアイオニングダイ4aの半径方向に撓むように構成されていることで、しごき加工中に第1のアイオニングダイ4aの半径方向に荷重が加わったときに、第1のアイオニングダイ4aをその半径方向に偏芯させる。
【0030】
ここで、図6により、第1のアイオニングダイ4aを用いて有底筒状体Wをしごき加工したときの、荷重と偏芯量との関係について説明する。なお、図6では、縦軸に荷重を表し、横軸には偏芯量を表している。同図に示すように、本実施例1のツールパック1を適用してしごき加工を行うと、図6で実線にて示したように、荷重の小さい初期段階であっても比較的偏芯量を大きくとることができる。そして、荷重が増加していくと、ある地点(変曲点A)からは、初期段階よりも実線の傾きが大きくなることがわかる。このような、初期段階では傾斜がなだらかで、あるところから弾性係数が変位(傾斜が大きくなる)する弾性特性線から明らかなように、本実施例1の弾性片14は、荷重が大きいときには、偏芯量が大きくならないよう規制することがわかる。これは、荷重の小さい初期段階では、弾性片全体(基端片14a、先端片14b、及び連結部14c)が撓むことで偏芯量を大きく確保できる一方で、荷重の大きい段階では、基端片14aがその背面側に設けた部材である第1のスペーサ11aに接触され、偏芯量が規制されることにより、第1のアイオニングダイ4aの偏芯量が過剰に増加しないよう規制する。
【0031】
以上のような本実施例1の発明によれば、金属製の第1〜第3のセンタリングリング8a〜8cに、第1〜第3のアイオニングダイ4a〜4cを弾性的に支持する、鋭角な折り曲げ状の弾性片14を形成し、該折り曲げ状の弾性片14は、第1〜第3のセンタリングリング8a〜8cの一端より延出された基端片14aと第1〜第3のアイオニングダイ4a〜4cを支持する先端片14bとを少なくとも構成し、基端片14aは、第1〜第3のセンタリングリング8a〜8cの一端を支点として第1〜第3のアイオニングダイ4a〜4cの半径方向に撓むよう構成しており、先端片14bは、該先端片14bと基端片14aとを連結した湾曲状の連結部14cを支点として第1〜第3のアイオニングダイ4a〜4cの半径方向に撓むように構成し、しごき加工中に第1〜第3のアイオニングダイ4a〜4cの半径方向に荷重が加わり、該第1〜第3のアイオニングダイ4a〜4cが偏芯するとき、荷重の小さい段階では、薄板状の基端片14a、薄板状の先端片14b、及び薄板状であって湾曲状の連結部14cが同時に撓んで第1〜第3のアイオニングダイ4a〜4cを偏芯させ、衝撃の強い荷重の大きい段階では、基端片14aがその近傍に設けた部材である第1〜第3のスペーサ11a〜11cに接触されその動作が規制され、第1〜第3のアイオニングダイ4a〜4cの偏芯量が過剰に増加しないよう制限するように構成されている。これにより、しごき加工の初期における荷重が小さい段階であっても、有底筒状体Wの筒状部W1に偏肉が生じることがないよう第1〜第3のアイオニングダイ4a〜4cを十分に偏芯させることができる一方で、しごき加工中に比較的大きな荷重が生じたときには、基端片14aがその近傍に設けた第1〜第3のスペーサ11a〜11cに接触されその動作が規制されることから、比較的大きな荷重が発生しても、それに伴い、第1〜第3のアイオニングダイ4a〜4cの偏芯量が過剰に大きくならないよう抑制することができる。よって、しごき加工中に必要以上に第1〜第3のアイオニングダイ4a〜4cの偏芯量が大きくなってしまい、有底筒状体Wである金属容器、第1〜第3のアイオニングダイ4a〜4c、或いは、パンチスリーブ2に破損が発生してしまうことを防止することができる。
【0032】
さらに、第1〜第3のアイオニングダイ4a〜4cを弾性的に支持する部材は、基端片14a、先端片14b、連結部14cとからなる金属製で薄板状の弾性片であることから、コイルスプリングのように比較的容易にへたりが発生することはなく耐久性を向上することが可能である。
【0033】
さらに、折り曲げ状の弾性片14は、鈍角ではなく鋭角に形成されていることから、弾性片14を設けるための専有スペースを小さくすることができ、ひいてはツールパック1の小型化を図ることが可能となる。
【実施例2】
【0034】
次に、実施例2について説明する。実施例2におけるセンタリングリング(アイオニングダイ用支持体)20についても、実施例1の第1〜第3のセンタリングリング(アイオニングダイ用支持体)8a,8b,8cに相当するものとして適用されるものである。すなわち、アイオニングダイを弾性的に支持するものであり、図7及び図8に示すように、センタリングリング20の内側にはその周方向に多数の波形の弾性片21が断続的に形成されている。そして、しごき加工中に、荷重が加わったときには、弾性片21は半径方向外側へ撓みアイオニングダイを偏芯させるのだが、大きな荷重が加わったときには、波形の弾性片21の外側がセンタリングリングの内周壁面に接触され偏芯量が制限されるようになっている。すなわち、本実施例2に記載のセンタリングリング(アイオニングダイ用支持体)20についても、図6の実線で示したような変曲点Aを有する弾性特性線を有するものであり、比較的大きな荷重が加わったとき、アイオニングダイの偏芯量が必要以上に大きくならないよう防止することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 ツールパック(金属容器用しごき加工装置)
2 パンチスリーブ
3 リドローダイ
4a 第1のアイオニングダイ
4b 第2のアイオニングダイ
4c 第3のアイオニングダイ
5 クランプリング
6 リドローダイホルダ
7a 第1のセンタリングリングリテイナー
7b 第2のセンタリングリングリテイナー
7c 第3のセンタリングリングリテイナー
8a 第1のセンタリングリング(アイオニングダイ用支持体)
8b 第2のセンタリングリング(アイオニングダイ用支持体)
8c 第3のセンタリングリング(アイオニングダイ用支持体)
9 ルブリケーダーリング
10 クーラント供給孔
11a 第1のスペーサ
11b 第2のスペーサ
11c 第3のスペーサ
12 孔部
14 弾性片
14a 基端片
14b 先端片
14c 連結部
20 センタリングリング(アイオニングダイ用支持体)
21 弾性片
A 変曲点
C 間隙
W 有底筒状体
W1 筒状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8