特許第6535500号(P6535500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6535500
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】渦流ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 5/00 20060101AFI20190617BHJP
【FI】
   F04D5/00 E
   F04D5/00 C
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-82757(P2015-82757)
(22)【出願日】2015年4月14日
(65)【公開番号】特開2016-200131(P2016-200131A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2018年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】坂谷 哲則
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 章太
(72)【発明者】
【氏名】早川 義則
【審査官】 井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−020322(JP,A)
【文献】 特開昭64−069796(JP,A)
【文献】 実開昭63−177693(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
一端が開口するケーシングと、
前記ケーシングの前記開口を覆うケーシングカバーと、
前記ケーシング内に設けられ前記ケーシングとともにポンプ室を形成する中間ケーシングと、
前記ポンプ室内に設けられ、円板状の基部、前記基部の中心に設けられ前記回転軸が挿入されるボス部、及び、前記基部の外周縁に設けられた複数の羽根を有し、前記ボス部の主面が他の前記ボス部と互いに当接する複数のインペラと、
前記ボス部に設けられ、前記ボス部の主面間を貫通する貫通孔と、
を備え
複数の前記インペラは、前記貫通孔が連通して前記回転軸に固定され、
前記インペラの前記ボス部は、隣り合う他の前記インペラの前記ボス部と対向する主面に、前記貫通孔が配置される円環状の溝部を備え、
前記貫通孔は、隣り合う前記ボス部の前記貫通孔と異なる位置に設けられ、前記溝部を介して連通することを特徴とする渦流ポンプ。
【請求項2】
前記インペラは、前記基部に形成された複数の孔を有することを特徴とする請求項1に記載の渦流ポンプ。
【請求項3】
前記回転軸に固定される回転子を有するモータと、
前記モータに設けられ、前記回転軸を支持する軸受と、
前記ケーシング内に設けられ、前記ケーシング内に位置する前記回転軸の端部を支持する軸受部材と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の渦流ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のインペラを有する渦流ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
水を増圧するポンプ装置として、インペラ及びケーシング間のギャップを狭くすることで、内部の漏れを少なくし、低出力のモータで高揚程を得ることが可能な渦流ポンプが知られている。このような渦流ポンプとして、一方の主面に複数の羽根が設けられたインペラを一枚(単段)で用いる技術が知られている。しかし、このようなインペラは、渦流ポンプの吐出圧力を増加させる場合においては、直径が大きくなるとともに、直径に対して厚さが薄くなり、機械的強度が低く、渦流ポンプ駆動時にインペラに加わる回転トルクに耐えられない虞がある。
【0003】
このため、当該インペラを複数用いた多段の渦流ポンプが知られている。また、インペラの両面に複数の羽根を設けたインペラを設けた多段渦流ポンプ(例えば、特許文献1乃至特許文献3参照)も知られている。
【0004】
しかし、多段渦流ポンプとした場合には、吐出圧力を高圧とすることが可能であるが、一段目のインペラのボス部、換言するとケーシングの中央部と、二段目のインペラボス部、換言するとモータと接続する接続部のメカニカルシール室との間に高い圧力差が発生する。このため、高いアキシャル荷重が加わることから、主軸を支持する軸受の寿命が低下する、という問題がある。
【0005】
また、高い圧力となることで、インペラを介して主軸には吐出側から吸込側に向かってラジアル荷重が加わる。渦流ポンプは、インペラ及びケーシング間のギャップが狭く設定されていることから、当該ラジアル荷重により主軸が撓み、インペラ及びケーシングが接触する虞もある。
【0006】
このため、軸受によって主軸を複数のインペラを介して両持ちとすることで、過大なラジアル荷重及びアキシャル荷重に対応する技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭58−156195号公報
【特許文献2】特開平09−209864号公報
【特許文献3】特開2014−20322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した渦流ポンプのように、主軸を両持ちとすると、主軸が長くなり、また、ケーシングも大型となるとともに、軸継手等が必要となることから、渦流ポンプが大型、且つ、複雑となり、製造コストも高くなる、という問題がある。
【0009】
そこで本発明は、駆動時に発生する荷重を低減することが可能な渦流ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様として、渦流ポンプは、回転軸と、一端が開口するケーシングと、前記ケーシングの前記開口を覆うケーシングカバーと、ケーシング内に設けられ前記ケーシングとともにポンプ室を形成する中間ケーシングと、前記ポンプ室内に設けられ、円板状の基部、前記基部の中心に設けられ前記回転軸が挿入されるボス部、及び、前記基部の外周縁に設けられた複数の羽根を有し、前記ボス部の主面が他の前記ボス部と互いに当接する複数のインペラと、前記ボス部に設けられ、前記ボス部の主面間を貫通する貫通孔と、を備え、複数の前記インペラは、前記貫通孔が連通して前記回転軸に固定され、前記インペラの前記ボス部は、隣り合う他の前記インペラの前記ボス部と対向する主面に、前記貫通孔が配置される円環状の溝部を備え、前記貫通孔は、隣り合う前記ボス部の前記貫通孔と異なる位置に設けられ、前記溝部を介して連通する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、駆動時に発生する荷重を低減することが可能な渦流ポンプを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る渦流ポンプの構成を示す断面図。
図2】同渦流ポンプのポンプ部の構成を示す断面図。
図3】同ポンプ部の構成を示す断面図。
図4】同ポンプ部に用いられるインペラの構成を示す断面図。
図5】同インペラの構成を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る渦流ポンプ1を、図1乃至図5を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る渦流ポンプ1の構成を示す断面図、図2は渦流ポンプ1のポンプ部12の構成を示す断面図、図3はポンプ部12の構成を示す断面図、図4はポンプ部12に用いられるインペラ33の構成を示す断面図、図5はインペラ33の構成を示す平面図である。
【0014】
図1に示すように、渦流ポンプ1は、モータ11と、ポンプ部12と、を備えている。渦流ポンプ1は、液体、例えば水を増圧して二次側に供給可能な、所謂カスケードポンプである。
【0015】
モータ11は、モータフレーム21と、モータフレーム21内に固定された固定子22と、固定子22により回転される回転子23と、回転子23に固定された回転軸24と、を備えている。モータ11は、回転子23を挟んで2箇所で回転軸24を支持する一対の軸受25を備えている。
【0016】
回転軸24は、モータフレーム21から突出して配置される。回転軸24は、突出する端部がポンプ部12内に配置される。回転軸24は、ポンプ部12内に配置される端部側にキー24aを備えている。
【0017】
図1乃至図3に示すように、ポンプ部12は、ケーシングカバー30と、ケーシング31と、ケーシング31内に設けられ、ポンプ室32aを構成する中間ケーシング32と、ケーシング31内に収容された複数、例えば2つのインペラ33と、ケーシング31内に回転軸24の端部を液密に配置するシール部材34と、ケーシング31内に配置された回転軸24の端部を軸支する軸受部材35と、インペラ33を固定する止め輪36と、を備えている。
【0018】
ケーシングカバー30は、回転軸24を挿入する開口部30aと、開口部30aの周囲に設けられたシール溝30bと、を備えている。ケーシングカバー30は、モータ11及びケーシング31が固定される。
【0019】
開口部30aは、ケーシングカバー30のモータ11と対向する面に設けられ、回転軸24を挿入可能に形成されている。シール溝30bは、開口部30aの周囲であってケーシングカバー30内に配置される。シール溝30bは、シール部材34を配置可能に形成されている。
【0020】
ケーシング31は、モータ11と対向する一端側が開口して略円筒状に形成され、当該開口がケーシングカバー30により覆われる。ケーシング31は、挿入される回転軸24の軸心方向に沿ってケーシングカバー30を着脱可能に形成されている。ケーシング31は、ポンプ室32aの一部と連通される吸込口31aと、ポンプ室32aの一部と連通される吐出口31bと、ケーシングカバー30のシール溝30bと対向する位置に設けられた軸受取付部31cと、を備えている。ケーシング31は、モータ11と対向する一端側が開口し、当該開口がケーシングカバー30により覆われる。
【0021】
吸込口31aは、渦流ポンプ1の一次側に配置される配管等に接続可能に形成されている。吐出口31bは、渦流ポンプ1の二次側に配置される配管等に接続可能に形成されている。
【0022】
軸受取付部31cは、回転軸24の端部を収容可能、且つ、軸受部材35を配置可能に形成されている。軸受取付部31cは、内径が回転軸24の外径よりも大径に形成されるとともに、軸受部材35と嵌合可能な内径に形成された、端部が閉塞する円柱状の窪み(溝)である。また、軸受取付部31cは、軸受部材35と対向する面に、ピン31dが設けられる。
【0023】
中間ケーシング32は、ケーシング31内に設けられ、ケーシングカバー30及びケーシング31とともに、複数のインペラ33を収容するポンプ室32aを形成する。具体的には、中間ケーシング32は、軸心方向に直交する方向に延設された隔壁32bによりポンプ室32aを二分し、一段目の第1ポンプ室32c及び二段面の第2ポンプ室32dを形成する。
【0024】
中間ケーシング32は、隔壁32bの中心が開口することで、その中心に回転軸24及びインペラ33の後述するボス部33bを配置可能に形成されている。中間ケーシング32は、その内面とインペラ33の外面との間隙を微小とすることで、第1ポンプ室32c及び第2ポンプ室32d間を遮断する。また、中間ケーシング32は、第1ポンプ室32c及び第2ポンプ室32dを連通させる連通孔32eを有している。
【0025】
第1ポンプ室32cは、隔壁32bで隔たれたポンプ室32aの一方の空間である。第1ポンプ室32cは、吸込口31aと接続される。第1ポンプ室32cは、吸込口31aから連通孔32eまでの流路を形成する。
【0026】
第2ポンプ室32dは、隔壁32bで隔たれたポンプ室32aの他方の空間であり、吐出口31bと接続される。第2ポンプ室32dは、第1ポンプ室32cの二次側に設けられる。第2ポンプ室32dは、連通孔32eから吐出口31bまでの流路を形成する。
【0027】
第1ポンプ室32c及び第2ポンプ室32dは、連通孔32eによって流体的に接続される。換言すると、第1ポンプ室32c、第2ポンプ室32d及び連通孔32eは、空間が二分に分割され、当該2つの空間が流体的に連続するポンプ室32aを形成する。
【0028】
連通孔32eは、第1ポンプ室32cに形成される流路の二次側、及び、第2ポンプ室32dに形成される流路の一次側に配置される。
【0029】
インペラ33は、平板状の基部33aと、基部33aの中心に設けられたボス部33bと、基部33aの一方の主面であって外周縁に複数設けられた羽根33cと、を備えている。
【0030】
ボス部33bは、その中心に形成された回転軸24を挿通する挿通孔33dと、ボス部33bの軸心方向の主面間に形成された貫通孔33eと、ボス部33bの一方側の主面に設けられた溝部33fと、を備えている。
【0031】
挿通孔33dは、その内周面にキー24aと係合するキー溝33gが形成される。貫通孔33eは、ボス部33bの主面間を貫通して設けられる。貫通孔33eは、貫通孔33eを通過する水が絞り流れとなる内径、換言するとオリフィス効果を有するとなる内径に形成されている。貫通孔33eは、例えば、0.8mm乃至1.5mmに形成されている。
【0032】
溝部33fは、ボス部33bの軸心を中心とした環状の溝である。溝部33fは、その一部に貫通孔33eが配置される径で形成される。換言すると、貫通孔33eは、ボス部33bの溝部33f上に配置される。溝部33fは、例えば、ボス部33bの主面からの深さが、貫通孔33eの半径と略同一の深さに形成されている。
【0033】
また、溝部33fは、基部33aの羽根33cが設けられる主面と同じ側のボス部33bの主面、又は、隣り合う他のインペラ33のボス部33bの主面と対向するボス部33bの主面に設けられる。羽根33cは、基部33aの一方の主面の周方向に沿って複数箇所で切削加工等により切欠されることで形成される。
【0034】
2つのインペラ33は、例えば、ボス部33bの貫通孔33eが対向するように、換言すると貫通孔33e同士が対向、例えば同軸上となるように、回転軸24に配置される。これにより、2つのインペラ33のボス部33bの互いに対向する主面が当接して、回転軸24にインペラ33が配置される。なお、インペラ33は、貫通孔33e同士が対向するように、キー溝33gが配置される。また、例えば、インペラ33の基部33aには、基部33aの両主面側の圧力を一定に調整可能な圧力バランス孔33hが複数設けられている。
【0035】
シール部材34は、回転軸24の外周面とケーシングカバー30の開口部30aとの間を密封可能に形成されている。シール部材34は、例えばメカニカルシールである。シール部材34は、回転軸24の外周面に設けられる回転環と、シール溝30bに固定される固定環と、を備え、回転環と固定環が摺動することで、回転軸24及びケーシングカバー30間を密封する。
【0036】
軸受部材35は、回転軸24に固定されるスリーブ35aと、軸受取付部31cに固定される水中軸受35bと、を備えている。スリーブ35aは、耐摩耗性に優れた材料、例えばセラミック材料により形成される。
【0037】
スリーブ35aは、円筒状に形成されている。スリーブ35aは、回転環である。スリーブ35aは、第1ポンプ室32cに設けられるインペラ33のボス部33bの主面の中心側及び止め輪36の間に配置される。スリーブ35aの外径は、ボス部33bの中心から貫通孔33eを通る円の直径よりも小径に形成される。
【0038】
水中軸受35bは、耐摩耗性に優れた材料、例えばセラミック材料により形成される。水中軸受35bは、円筒状に形成されている。水中軸受35bは、固定環である。水中軸受35bは、軸受取付部31cに嵌合して固定される。水中軸受35bは、内径がスリーブ34aの外径と略同一径に形成されている。水中軸受35bは、内周面がスリーブ34aの外周面と摺動可能に形成されている。また、水中軸受35bは、軸受取付部31cに設けられたピン等により、周方向に固定され、軸受取付部31cに対して回転が規制される。
【0039】
止め輪36は、回転軸24に挿入可能に形成されている。止め輪36は、例えば、所謂ホーローセットやイモネジと呼ばれる止めねじ36aにより回転軸24に固定される。止め輪36は、回転軸24に固定されることで、2つのインペラ33及びスリーブ35aを回転軸24に固定する。
【0040】
止め輪36は、回転軸24の端部に挿通し、所定の位置で止めねじ36aにより回転軸24に固定されることで、スリーブ35a及びインペラ33を回転軸24の所定の位置に固定可能に形成されている。なお、ここで、所定の位置とは、ケーシングカバー30、ケーシング31及び中間ケーシング32とインペラ33の間隙に応じて適宜設定又は調整される位置である。
【0041】
次に、このように構成された渦流ポンプ1による増圧給水について説明する。先ず、モータ11が駆動されることで、回転軸24を介して2つのインペラ33が回転する。この回転により、吸込口31aから吸い込まれた水が第1ポンプ室32c内で増圧されて連通孔32eを通って第2ポンプ室32dに移動する。また、第2ポンプ室32dに移動した水が第2ポンプ室32d内で増圧されて吐出口31bから吐出される。
【0042】
このとき、第2ポンプ室32d内の圧力は、第1ポンプ室32c内の圧力よりも増圧されることとなる。また、第1ポンプ室32cの内面とインペラ33の外面との間の隙間、換言するとケーシング31及び中間ケーシング32の内面とインペラ33の外面との隙間から第1ポンプ室32cで増圧された水の一部が漏洩し、軸受取付部31c内に浸入する。
【0043】
ここで、ケーシング31とインペラ33の基部33aの一方の主面との間隙の圧力、及び、中間ケーシング32とインペラ33の基部33aの他方の主面との間隙の圧力は、圧力バランス孔33hにより略一定となる。即ち、圧力バランス孔33hによって、インペラ33の基部33aの両主面とケーシング31及び中間ケーシング32との間隙の圧力差が略なくなる。
【0044】
また、第2ポンプ室32dの内面とインペラ33の外面との間の隙間、換言するとケーシングカバー30及び中間ケーシング32の内面とインペラ33の外面との隙間から第2ポンプ室32dで増圧された水の一部が漏洩し、シール溝30b内に浸入する。
【0045】
しかし、シール溝30b及び軸受取付部31cの間は、換言すると、各インペラ33に設けられた貫通孔33eにより流体的に連続することから、シール溝30b及び軸受取付部31cは、圧力が一定となる。このため、インペラ33は、回転軸24の軸心方向に釣り合った状態で回転する。
【0046】
このように構成された渦流ポンプ1によれば、インペラ33のボス部33bを貫通する貫通孔33eを設け、複数のインペラ33のボス部33bの相反する主面間を、これら貫通孔33eにより連続させる。換言すると、2つのインペラ33の貫通孔33e及び溝部33fによって、ボス部33b間を流体的に連通する流路を構成する。
【0047】
この構成により、ケーシングカバー30、ケーシング31及び中間ケーシング32とインペラ33との間隙から漏洩した水がインペラ33のシール部材34側及び軸受部材35側の空間に移動しても、当該空間の圧力を略一定とすることが可能となる。
【0048】
これにより、複数のインペラ33を設けるポンプ部12とすることで、第1ポンプ室32c内の圧力よりも第2ポンプ室32d内の圧力が高くなったとしても、漏洩した水は、シール部材34側及び軸受部材35側で略等圧となることから、インペラ33にスラスト荷重が発生することを防止できる。結果、インペラ33は、所定の位置から回転軸24の軸心方向に移動することがない。このため、当該スラスト荷重を起因とするケーシング31及び中間ケーシング32とインペラ33との間隙を微小に設計しても、ケーシング31及び中間ケーシング32とインペラ33とが接触することを防止できる。
【0049】
また、貫通孔33eは、絞り流れとなる内径に形成されていることから、貫通孔33eを流れる流量を低減することが可能となり、ケーシングカバー30、ケーシング31及び中間ケーシング32とインペラ33との間隙の漏れ量を規制することが可能となる。
【0050】
また、ボス部33b同士が対向する端面の溝部33fは、貫通孔33eを通過する環状の溝に形成されている。このため、ボス部33bに設けられる貫通孔33eの位置、さらに言えばキー溝33gに対するボス部33bに設けられる貫通孔33eの位置に、加工等の理由から精度にばらつきが生じても、貫通孔33e同士を、溝部33fを介して流体的に連続させることが可能となる。
【0051】
また、ポンプ部12は、ケーシング31内の回転軸24の端部を軸受部材35で軸支する構成とすることで、回転軸24を、モータ11内の軸受25及びケーシング31内の回転軸24の端部の軸受部材35により軸支可能となる。これにより、これら軸受25及び軸受部材35による両持ち構造で支持することとなり、ポンプ室32aの吐出側から吸込側への水平方向に回転軸24に発生する過大なラジアル荷重を支持可能となる。結果、回転軸24の変形を防止し、且つ、軸受25の寿命を延ばすことが可能となる。また、ラジアル方向での、ケーシングカバー30、ケーシング31及び中間ケーシング32とインペラ33との接触を防止することができる。
【0052】
さらに、回転軸24の端部は、ケーシング31内の軸受取付部31cに設けられた軸受部材35で支持する構成であることから、回転軸24の当該端部がケーシング31から突出することがなく、シール部材を別途設ける必要がない。このため、渦流ポンプ1は小型化が可能となる。
【0053】
上述したように一実施形態に係る渦流ポンプ1によれば、駆動時に発生するスラスト荷重を低減するとともに、吐出側から吸込側に向かって回転軸24に加わるラジアル荷重を軸受25及び軸受部材35で支持し、回転軸24に加わるラジアル荷重を低減することが可能となる。
【0054】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した例では、溝部33fは、通過する水が絞り流れとなる内径、換言するとオリフィス効果(絞り効果)を有する内径に形成される構成を説明したがこれに限定されない。例えば、溝部33fを、2つの溝部33fが対向することで絞り流れとなる深さに形成し、貫通孔33eが対向しない位置、例えば、インペラ33を回転軸24に配置させたときに、180°位相した位置に配置する構成であってもよい。この場合においては、各インペラ33の貫通孔33eが180°位相して配置されるように、キー溝33gに対する貫通孔33eの位置を設計すればよい。
【0055】
このような構成とすることで、オリフィス効果は2つの溝部33fにより得ることが可能となり、上述した渦流ポンプ1と同様の効果を得ることが可能となる。また、例えば、加工性が悪い貫通孔33eの内径を絞り効果が得られない内径とし、対向する2つの溝部33fにより絞り効果を得られるように、加工性の良い溝部33fの深さを管理する構成とすることが可能となる。
【0056】
即ち、貫通孔33e及び溝部33fを設けるインペラ33としても、加工性低下及び製造コストの増加を極力防止することが可能となる。特に、貫通孔33eをドリル加工する場合には、微小な径の孔を形成する場合にはドリルが破損する虞が高いが、溝部33fで絞り効果を得る構成とすることで、量産性を高めることが可能となる。
【0057】
また、貫通孔33e及び溝部33fは、いずれか一方により、通過する水が絞り流れとなる構成であればよく、例えば、貫通孔33e及び溝部33fの一方が当該オリフィス効果を有する寸法形状に形成されていてもよい。即ち、貫通孔33e及び溝部33fは、いずれか一方を水が流れるときに絞り効果を得られれば良い。
【0058】
また、上述した例では、2つのインペラ33の貫通孔33eは同一数及び同一内径に限定されない。即ち、第1ポンプ室32c内の圧力及び第2ポンプ室32d内の圧力に応じて、適宜貫通孔33eの数及び内径を設定することで、ポンプ室32dから漏れた水のケーシングカバー30のシール部材34側の圧力及び軸受部材35側の圧力の差圧を制御することが可能となる。例えば、インペラ33のボス部33bが止め輪36と当接したときに、最もケーシング31及び中間ケーシング32との間隙が微小となる設定としたときには、ケーシングカバー30のシール部材34側の圧力を、軸受部材35側の圧力よりも高くなる差圧となるように設定すればよい。
【0059】
また、上述した例では2つのインペラ33を用いる構成を説明したがこれに限定されず、3枚以上のインペラ33を有する構成であってもよい。このような構成の場合には、複数のインペラ33の貫通孔33eが流体的に連通する構成とすることで、上述の実施形態と同様の効果を有する。
【0060】
また、上述した例では、インペラ33の溝部33fは、ボス部33bの一方の主面にのみ設ける構成を説明したがこれに限定されず、ボス部33bの両主面に設ける構成であってもよい。また、インペラ33は、基部33aの両面に複数の羽根33cを有する構成であってもよい。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明と同等の記載を付記する。
[1] 回転軸と、
一端が開口するケーシングと、
前記ケーシングの前記開口を覆うケーシングカバーと、
ケーシング内に設けられ前記ケーシングとともにポンプ室を形成する中間ケーシングと、
前記ポンプ室内に設けられ、円板状の基部、前記基部の中心に設けられ前記回転軸が挿入されるボス部、及び、前記基部の外周縁に設けられた複数の羽根を有し、前記ボス部の主面が他の前記ボス部と互いに当接する複数のインペラと、
前記ボス部に設けられ、前記ボス部の主面間を貫通する貫通孔と、
を備えることを特徴とする渦流ポンプ。
[2] 複数の前記インペラは、前記貫通孔が連通して前記回転軸に固定されることを特徴とする[1]に記載の渦流ポンプ。
[3] 前記インペラの前記ボス部は、隣り合う他の前記インペラの前記ボス部と対向する主面に、前記貫通孔が配置される円環状の溝部を備えていることを特徴とする[2]に記載の渦流ポンプ。
[4] 複数の前記インペラの前記貫通孔は、対向して配置されることを特徴とする[3]に記載の渦流ポンプ。
[5] 前記貫通孔は、隣り合う前記ボス部の前記貫通孔と異なる位置に設けられ、前記溝部を介して連通することを特徴とする[4]に記載の渦流ポンプ。
[6] 前記インペラは、前記基部に形成された複数の孔を有することを特徴とする[1]に記載の渦流ポンプ。
[7] 前記回転軸に固定される回転子を有するモータと、
前記モータに設けられ、前記回転軸を支持する軸受と、
前記ケーシング内に設けられ、前記ケーシング内に位置する前記回転軸の端部を支持する軸受部材と、
を備えることを特徴とする[1]に記載の渦流ポンプ。
【符号の説明】
【0061】
1…渦流ポンプ、11…モータ、12…ポンプ部、21…モータフレーム、22…固定子、23…回転子、24…回転軸、24a…キー、25…軸受、30…ケーシングカバー30、30a…開口部、30b…シール溝、31…ケーシング、31a…吸込口、31b…吐出口、31c…軸受取付部、31d…ピン、32…中間ケーシング、32a…ポンプ室、32b…隔壁、32c…第1ポンプ室、32d…第2ポンプ室、32e…連通孔、33…インペラ、33a…基部、33b…ボス部、33c…羽根、33d…挿通孔、33e…貫通孔、33f…溝部、33g…キー溝、33h…圧力バランス孔、34…シール部材、34a…スリーブ、35…軸受部材、35a…スリーブ、35b…水中軸受、36…止め輪。
図1
図2
図3
図4
図5