(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6535514
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】免震装置構造と免震装置取り付け方法
(51)【国際特許分類】
F16F 15/04 20060101AFI20190617BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20190617BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20190617BHJP
【FI】
F16F15/04 A
F16F15/04 E
F16F15/04 P
E04G23/02 D
E04H9/02 331A
E04H9/02 331E
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-110018(P2015-110018)
(22)【出願日】2015年5月29日
(65)【公開番号】特開2016-223521(P2016-223521A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 献一
(72)【発明者】
【氏名】杉村 義文
(72)【発明者】
【氏名】片山 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】清水 直樹
(72)【発明者】
【氏名】後藤 和弘
【審査官】
保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−144494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00−15/36
E04G 23/00−23/08
E04H 9/00− 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート基台の上に設置するすべり部材と、
前記すべり部材とその上部の構造物との間に設置して前記すべり部材に対して相対摺動可能な補強部材と、
前記補強部材における前記構造物の外側に延びた部分に設置された免震装置と、
を備え、前記免震装置は前記すべり部材を設置する前記コンクリート基台と同一平面上で前記補強部材との間に設置されていることを特徴とする免震装置構造。
【請求項2】
コンクリート基台の上に設置するすべり部材と、
前記すべり部材とその上部の構造物との間に設置して前記すべり部材に対して相対摺動可能な補強部材と、
前記補強部材における前記構造物の外側に延びた部分に設置された免震装置と、
前記コンクリート基台の側壁に固定された支持部材と、を備え、
前記免震装置は前記支持部材と補強部材との間に連結されていることを特徴とする免震装置構造。
【請求項3】
既設構造物をコンクリート基台から分離してジャッキアップする工程と、
前記コンクリート基台の上にすべり部材を固定する工程と、
前記既設構造物の外側に突出する補強部材を前記すべり部材の上に相対摺動可能に載置する工程と、
前記補強部材の上に前記既設構造物をジャッキダウンする工程と、
前記既設構造物の外側で前記補強部材とコンクリート基台の間に免震装置を固定する工程と、
を備えたことを特徴とする免震装置取り付け方法。
【請求項4】
既設構造物をコンクリート基台から分離してジャッキアップする工程と、
前記コンクリート基台の上にすべり部材を固定する工程と、
前記既設構造物の外側に突出する補強部材を前記すべり部材の上に相対摺動可能に載置する工程と、
前記補強部材の上に前記既設構造物をジャッキダウンする工程と、
前記既設構造物の外側で前記コンクリート基台の側壁に固定した支持部材と前記補強部材との間に免震装置を固定する工程と、
を備えたことを特徴とする免震装置取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば既設構造物とコンクリート基台との間に免震装置を組み込んで耐震性を向上させた免震装置構造と免震装置の取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免震構造物には、基礎や下部構造体等に免震装置を介して上部構造体を支承するものが知られている。この種の免震構造物では、地震発生時に地震動によって振動する下部構造体に対して免震装置が大きくゆっくりと変形し、地震動の揺れをかわすことで上部構造体に入力される地震動を低減するようになっている。
例えば特許文献1に記載された免震装置では、構造物とコンクリート基礎との間に免震装置を配設させ、地震の際に地盤の振動が構造物に伝達することを低減させている。また、その構造物をコンクリート基礎に取り付けた減衰手段に連結して構造物の水平方向振動に制震力を及ぼさせ、減衰手段への入力が所定値を超えた場合には構造物と減衰手段との連結を解除するようにしている。
【0003】
ところで、既設の構造物に免震装置を設置する方法として、例えば基礎床と既存柱との間の免震装置を設置すべき部分を切断してジャッキアップし、その切断撤去した空間に免震装置と支持鋼材を設置して既設の構造物の既存柱をジャッキダウンする、免震レトロフィット工法が知られている。
既設構造物が例えば屋外に設置した通信放送用機器や中継機器等を収容した局舎である場合、通信や放送等は短時間の中断を除いてほぼ24時間行われることが多いため、地震等で通信用ケーブルや放送用ケーブル等が切断したりすることのないように免震装置を設置する工事が行われている。
【0004】
このような既存の局舎で免震レトロフィット工法を採用する場合、例えば
図6に示すように、通信放送用機器や中継機器等を収容した既設の局舎100の下部に固定されたチャンネル材101とコンクリート基盤102との間を切断してジャッキアップし、コンクリート基盤102の上に免震装置103を設置し、更にH鋼等の補強材104を設置する。その後、既設の局舎100をジャッキダウンしてチャンネル材101と補強材104をボルトとナット等で固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−268574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した既設の局舎100では、コンクリート基盤102との間に免震装置103や補強材104を挿入するためには、ジャッキによって局舎100を例えば200mm以上持ち上げる必要があった。一方、この局舎100内に敷設されている通信用や放送用等の既設のケーブルは下方から、あるいは側方から局舎100内に延びており、200mm以上のジャッキアップに耐え得る長さの余裕がなかった。そのため、このような通信用ケーブル等を敷設した既設の局舎100に免震装置103を後付で設置することは困難であった。
また、通信用ケーブル等を一時的に切断して局舎100をジャッキアップする場合でも、免震装置103と補強材104をコンクリート基盤102上に施工する間、ジャッキダウンできないので通信や放送を中断しなければならないため、長時間に亘るジャッキアップ状態での施工が困難であった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、構造物を高くジャッキアップすることなく、しかも短時間で免震装置を設置できるようにした免震装置構造と免震装置の取り付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による免震装置構造は、コンクリート基台の上に設置するすべり部材と、すべり部材とその上部の構造物との間に設置してすべり部材に対して相対摺動可能な補強部材と、補強部材における構造物の外側に延びた部分に設置された免震装置と、を備え
、前記免震装置は前記すべり部材を設置する前記コンクリート基台と同一平面上で前記補強部材との間に設置されていることを特徴とする。
本発明による免震装置構造によれば、すべり部材と補強部材のすべり摩擦機能によって平常時と地震時に安定した支承機能を発揮して構造物を支持しており、地震で水平方向に振動が生じた場合、互いに当接するすべり部材と補強部材との間に予め設定された摩擦抵抗より大きい地震力が働くと、補強部材は構造物と共にすべり部材を滑って相対移動し、補強部材の移動による荷重の伝達を受けた免震装置が変位して地震力を減衰させると共に元の位置に補強部材を復帰させる復元機能を発揮できる。
【0009】
また、免震装置はコンクリート基台と補強部材との間に連結され
ている。
この場合、コンクリート基台上に支持された免震装置は補強部材の振動を受けて変位すると共に減衰機能によって地震力を減衰させる。
【0010】
また、
本発明による免震装置構造は、コンクリート基台の上に設置するすべり部材と、前記すべり部材とその上部の構造物との間に設置して前記すべり部材に対して相対摺動可能な補強部材と、前記補強部材における前記構造物の外側に延びた部分に設置された免震装置と、前記コンクリート基台の側壁に
固定された支持部材と、を備え、免震装置は支持部材と補強部材との間に連結されていることを特徴とする。
構造物を設置するコンクリート基台のスペースが比較的狭い場合でも、コンクリート基台の側壁から突出して延びる補強部材に対向する位置に支持部材を設置して補強部材との間に免震装置を取り付けることで、地震の際に免震機能を発揮できる。しかも、免震装置は構造物の鉛直荷重を直接負担しないので薄型化を実現できる。
【0011】
本発明による免震装置取り付け方法は、既設構造物をコンクリート基台から分離してジャッキアップする工程と、コンクリート基台の上にすべり部材を固定する工程と、
既設構造物の外側に突出する補強部材をすべり部材の上に相対摺動可能に載置する工程と、補強部材の上に既設構造物をジャッキダウンする工程と、既設構造物の外側で補強部材とコンクリート基台の間に免震装置を固定する工程と、を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、コンクリート基台と既設構造物の間に免震装置を設置せず、既設構造物の外側に設置したため、ジャッキアップの高さを従来よりも低く設定できてジャッキダウンまでの時間を短くできるので構造物にかかる負担や負荷を低減できる。また、ジャッキダウンした後に補強部材とコンクリート基台の間で免震装置を固定するため、この点でもジャッキダウンまでの時間を短縮できる。しかも、免震装置は既設構造物の鉛直荷重を直接受けないため薄型化できる。
【0012】
また、本発明による免震装置取り付け方法は、既設構造物をコンクリート基台から分離してジャッキアップする工程と、コンクリート基台の上にすべり部材を固定する工程と、
既設構造物の外側に突出する補強部材をすべり部材の上に相対摺動可能に載置する工程と、補強部材の上に既設構造物をジャッキダウンする工程と、既設構造物の外側でコンクリート基台の側壁に固定した支持部材と補強部材との間に免震装置を固定する工程と、を備えたことを特徴とする。
本発明においては、既設構造物を支持するコンクリート基台の側壁までの距離が短い場合でも、側壁に支持部材を固定することで、既設構造物の外側に突出した補強部材との間に免震装置を固定することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明による免震装置構造によれば、構造物の外側に延びた補強部材に免震装置を設置したため、免震装置はすべり部材と並列に設置でき、ジャッキアップの高さを小さくしてジャッキアップ時間を短くできて構造物にかかる負担や負荷を低減できて、免震装置構造の大型化を抑制できる。しかも、免震装置で構造物の荷重を直接負担しないため免震装置の薄型化を実現できる。
【0014】
また、本発明による免震装置取り付け方法は、既設構造物をジャッキアップした状態で既設構造物をすべり部材の上に設置すると共にその外側で補強部材に連結した免震装置をコンクリート基台上に設置することができる。
また、本発明による免震装置取り付け方法は、既設構造物をジャッキダウンした後に既設構造物の外側で補強部材に免震装置を設置することができる。
そのため、ジャッキアップの高さを小さくし且つジャッキアップ時間を短くできて既設構造物にかかる負担や負荷を低減できると共に、免震装置で構造物の荷重を直接負担しないため免震装置の薄型化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第一実施形態による局舎の免震装置構造を示す要部断面図である。
【
図2】
図1に示す局舎における免震装置構造を示す要部平面図である。
【
図3】
図2に示す浮き上がり防止具を示す要部断面図である。
【
図4】実施形態による局舎に免震装置を後付で設置する免震装置の取り付け方法の手順を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第二実施形態による局舎の免震装置構造を示す要部断面図である。
【
図6】従来の免震装置構造を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の各実施形態による局舎1の免震装置構造について添付図面により説明する。
図1から
図4は本発明の第一実施形態による局舎1の免震装置構造を示すものである。
図1において、局舎1は放送通信用機器や中継器等を内部に設置した例えば箱形の建物であり、外部と通信用ケーブルや放送用ケーブル等で接続されている。そして、地盤に設置されたコンクリート基台2上に例えば鋼材からなる基板4が例えばアンカー部材によって固定され、基板4上にはすべり手段9として、例えば鋼材からなる支持台5とシート状からなるすべり部材3とが一体に設置されている。支持台5は例えば溶接等で基板4に固定されている。また、すべり部材3の上に補強枠材6が設置され、補強枠材6の下面にはすべり部材3に当接する例えばステンレス板からなる摩擦プレート7が固定されている。
【0017】
すべり部材3は低摩擦係数μを有していて、例えば四フッ化エチレン樹脂からなっている。すべり部材3の摩擦係数μを予め適切に設定することで、地震の際に一定規模の地震力未満では補強枠材6の下面に固定した摩擦プレート7がすべり部材3上に静止保持され、一定規模の地震力以上で摩擦プレート7に免震水平移動が相対的に生じるようになっている。すべり部材3は例えば2.4mm程度の厚さに設定されていて、すべり摩擦機構13の薄型化を実現している。なお、基板4はコンクリート基台2に直接または既設の無収縮モルタルの基部上に図示しないアンカーボルトとナットで固定されている。
また、補強枠材6は、例えば鋼材からなっていて、平板状の支持プレート6aと、その上面に例えば断面略L字状に形成された固定受け部6bと、固定受け部6b及び支持プレート6aを連結する支持ブラケット6cとを形成している。固定受け部6bの上部には既設のチャンネル枠8の下面8aが当接してボルト・ナットで固定され、チャンネル枠8の上面8bには同じく既設の局舎1が設置されて連結されている。また、支持プレート6aの下面にはすべり部材3に載置させる例えばステンレス板からなる摩擦プレート7が設置されている。
【0018】
また、補強枠材6において、支持プレート6aは局舎1の内側から外側に延びており、局舎1の真下にすべり部材3が設置され、外側には免震装置10が連結されている。免震装置10は例えばアクリル系粘弾性体や高減衰ゴム等から構成されてなり、その上部は支持プレート6aに連結され下部には基部プレート11が連結されている。基部プレート11はコンクリート基台2にアンカーボルト等で固定されている。免震装置10は例えば厚さ5mm程度の薄型で高耐久性を有しており、小体積で水平剛性(復元機能)と地震時における振動の超高減衰機能を確保している。
そのため、コンクリート基台2と補強枠材6の摩擦プレート7との間にすべり手段9と免震装置10を並列に挟んで設置しており、すべり部材3と補強枠材6の摩擦プレート7とですべり摩擦機構13を構成する。コンクリート基台2から摩擦プレート7までの厚さは例えば20mm程度の小さい高さに設定されている。また、コンクリート基台2からチャンネル枠8までの高さは例えば90mmに設定されている。
【0019】
補強枠材6は摩擦係数μのすべり部材3と摩擦プレート7との摩擦によって静止しており、地震の際に例えば震度5弱以下では地震力より摩擦力が勝って静止状態に保持され、震度5強以上の場合にはすべり部材3との摩擦力に打ち勝って補強枠材6は相対的に水平方向に滑り出して振動する。
そして、補強枠材6が振動した場合には免震装置10の免震効果によって振動の減衰機能と補強枠材6を元の位置に復帰させる復元機能を発揮させることができる。そのため、本実施形態では免震装置10による免震性能の発揮は震度5強以上の大地震時に限定される。しかしながら、すべり部材3の摩擦係数μと摩擦プレート7の材質を調整することによって摩擦プレート7が水平移動を開始する滑り出し機能を適宜の地震力の大きさに調整できる。
【0020】
次に
図2は局舎1を支持するチャンネル枠8と免震装置10の配置を示す要部平面図である。図において、チャンネル枠8は局舎1の平面形状に応じて例えば四角形枠状に形成されており、その各角部におけるチャンネル枠8に重なる位置及びその中間部にすべり摩擦機構13が設置され、チャンネル枠8の外側に免震装置10が設置されている。しかも免震装置10はチャンネル枠8の対向する二辺の両端部にそれぞれ対向して配設されている。
【0021】
そして、チャンネル枠8の各角部及びその中間部にすべり部材3の基板4がすべり材固定用鉄板としてコンクリート基台2に固定されている。また、チャンネル枠8の各辺の中間部には浮き上がり防止部材15がそれぞれ設置されている。
図3に示すように、浮き上がり防止部材15は例えば長板状に形成されており、一端部側の面は補強枠材6の支持プレート6aの上に重なって摺動可能に当接しており、他端部は支持プレート6aから外側に突出して略U字状に湾曲してコンクリート基台2にアンカーボルト16で固定されている。
これによって、想定以上の大地震が発生して補強枠材6が大きく振動して免震装置10に過大な荷重がかかった場合に、浮き上がり防止部材15はフェイルセーフ機構として補強枠材6を強制的にストップさせるストッパー用鋼材を構成する。
【0022】
本実施形態による局舎1の免震装置構造は上述の構成を備えており、次に免震装置10の取り付け方法を
図1に示す免震装置構造と
図4に示すフローチャートに沿って説明する。
既設の局舎1において、既設のチャンネル枠8はアンカーボルトによってコンクリート基台2上に直接(または無収縮モルタル上)に固定されているとして、局舎1のチャンネル枠8とコンクリート基台2とを連結するアンカーボルトのナットを外して分離させ、局舎1とチャンネル枠8をジャッキアップする(ステップ1)。このとき、チャンネル枠8のジャッキアップ高さは100mm程度と、従来のジャッキアップ高さの1/2程度に低く設定する。そしてコンクリート基台2上に突出するアンカーボルトの先端等のチャンネル枠8の取り付け部を切除する(ステップ2)。
【0023】
そして、予めすべり部材3及び支持台5を固定した基板4をコンクリート基台2に固定し(ステップ3)、すべり部材3の上に、摩擦プレート7を予め下面に固定した補強枠材6を設置する(ステップ4)。補強枠材6はその一部がチャンネル枠8の外側に突出しており、支持プレート6aの外側部分には予め免震装置10と基部プレート11が下側に連結されている。この状態で補強枠材6の上端は例えば90mmの高さに設定されている。
次いで、局舎1とチャンネル枠8をジャッキダウンし(ステップ5)、補強枠材6の固定受け部6bとチャンネル枠8の下面8aとをボルト・ナット等で固定する。そして、コンクリート基台2に設置した免震装置10の基部プレート11をコンクリート基台2にアンカーボルト等で固定する(ステップ6)。こうして
図1に示すように既設の局舎1に免震装置構造を施工できる。
【0024】
次に、本実施形態による局舎1の免震装置構造の作用について説明する。
図1及び
図2に示すように局舎1の免震装置構造を採用した状態で地震が発生した場合、地震の震度が5弱以下の場合には、地震力よりもすべり部材3と補強枠材6の摩擦プレート7とのすべり摩擦抵抗の方が大きいため、相対移動せず一体に水平方向に振動し、チャンネル枠8を介して局舎1も一体に振動する。
【0025】
そして、地震の震度が5強以上の場合には、地震力はすべり部材3と補強枠材6の摩擦プレート7とのすべり摩擦抵抗を超えるため、補強枠材6の支持プレート6aはすべり部材3に対して相対移動して水平方向に振動し、チャンネル枠8を介して局舎1も一体に振動する。すると、免震装置10は補強枠材6の振動を受けて変位し、補強枠材6とチャンネル枠8及び局舎1との振動を減衰させると共に、元の位置に復帰させる復元機能を発揮させる。
そのため、免震装置10はすべり部材3の摩擦プレート7との間の摩擦係数μを適切に設定することで一定規模以上の地震力に対して局舎1に相対水平移動を生じさせると共に免震装置10による高減衰機能と復元性能によって免震性能を発揮できる。
【0026】
上述のように本実施形態による局舎1の免震装置構造とその取り付け方法によれば、局舎1の外側に延びた補強枠材6の支持プレート6aに小型で薄型の免震装置10をすべり手段9と並列に設置したため、ジャッキアップの高さを小さくしてジャッキアップ時間を短くできて短時間で免震装置構造を施工できる。
そのため、施工に際してジャッキアップによる局舎1や通信用や放送用ケーブルに係る負担や負荷を低減することができるため、局舎1の通信や放送等の中断を最小限の短時間に抑制できて、敷設された通信用や放送用ケーブル等の切断等を抑制できる。
【0027】
しかも、免震装置10は局舎1を支持するすべり部材3の外側に設置したため、局舎1の鉛直荷重負担を無くして、すべり摩擦機構13と共に免震装置10を薄型化できる上に免震装置構造も薄型化できる。更に、局舎1の外側でジャッキダウン後に免震装置10を固定できるため施工も容易で短時間で行え、この点でもジャッキアップ時間を短くできる。
更にすべり摩擦機構13におけるすべり部材3の摩擦係数μの設定値によって一定規模以上の大地震において水平すべり移動を生じさせて、高減衰機能と復元性能による免震性能を発揮できる。
【0028】
なお、本発明は上述の第一実施形態による局舎1の免震装置構造に限定されることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜の変更や置換等が可能であり、これらはいずれも本発明に含まれる。以下に、本発明の他の実施形態や変形例について説明するが、上述した第一実施形態と同一または同様な部分、部材には同一の符号を用いて説明を省略する。
【0029】
次に本発明の第二実施形態による局舎1の免震装置構造について
図5に基づいて説明する。
図5において、局舎1の基礎となるコンクリート基台2が狭く、局舎1の外側に免震装置10を設置するための十分な敷地を確保できない場合、コンクリート基台2の垂直な側壁2aから補強枠材6の支持プレート6aを突出させてその下面に予め固定した免震装置10を吊り下げる。そして、コンクリート基台2の側壁2aに例えば側面視三角形枠状のブラケット20を支持部材として設置して垂直の枠部20aを当接させて、アンカーボルト21を打ち込んで固定する。
これによって、ブラケット20の上面20bはコンクリート基台2の上面と面一に設定されることが好ましい。しかも、免震装置10の基部プレート11はブラケット20の上面20bに当接して支持される。この状態で、基部プレート11とブラケット20の上面20bとをボルト・ナット等で固定すればよい。
【0030】
本第二実施形態においても、免震装置構造の取り付け方法において、ジャッキアップしてコンクリート基台2上に基板4、支持台5及びすべり部材3と摩擦プレート7を下面に固定した補強枠材6を設置した後にジャッキダウンすることができる。そして、この状態で補強枠材6の免震装置10を吊り下げた外側部分を側壁2aから突出させた状態でブラケット20を取り付けて免震装置10の基部プレート11を連結すればよい。
【0031】
また、上述した第二実施形態による局舎1の免震装置構造において、コンクリート基台2の側壁2aに固定するブラケット20の上面20bは、コンクリート基台2の上面と面一である必要はなく、これより低い位置または高い位置に設置してもよい。
また、上述の免震装置構造の取り付け方法では、局舎1とチャンネル枠8をジャッキダウンした後にコンクリート基台2の側壁2aにブラケット20を固定して、補強枠材6の下面に固定した免震装置10の基部プレート11とブラケット20の上面20bを連結する方法に代えて、ブラケット20は補強枠材6をすべり部材3上に載置する前にコンクリート基台2の側壁2aに固定しておいてもよい。
【0032】
なお、本発明において摩擦プレート7を含む補強枠材6は補強部材に含まれる。
また、上述した各実施形態において、補強枠材6の下面に摩擦プレート7を固定したが、摩擦プレート7を設置しなくてもよい。その場合には、補強枠材6の支持プレート6aが摩擦プレートを構成する。また、すべり手段9において、すべり部材3を省略して支持台5によってすべり部材3の機能を発揮させてもよい。また、すべり部材3及び支持台5を省略して基板4によってすべり部材3の機能を発揮させてもよい。この場合には基板4がすべり手段9を構成する。
また、本発明において、通信用ケーブルや放送用ケーブル等を内外に敷設した局舎1にすべり摩擦機構13と免震装置10を設置する免震装置構造について説明したが、本発明は局舎1に限定されるものではなく、他の適宜の建物等を含む構造物または既設構造物に適用できる。本発明において構造物や既設構造物は上述したチャンネル枠8を含むものとする。
また、本発明による免震装置構造とその取り付け方法は既設構造物に免震装置10を設置する構造について説明したが、新設構造物に免震装置10を設置する構造にも適用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0033】
1 局舎
2 コンクリート基台
2a 側壁
3 すべり部材
4 基板
5 支持台
6 補強枠材
6a 支持プレート
7 摩擦プレート
8 チャンネル枠
9 すべり手段
10 免震装置
11 基部プレート
20 ブラケット