特許第6535515号(P6535515)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6535515
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】杭頭接合構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/12 20060101AFI20190617BHJP
【FI】
   E02D27/12 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-115590(P2015-115590)
(22)【出願日】2015年6月8日
(65)【公開番号】特開2017-2512(P2017-2512A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】藤井 嵩広
(72)【発明者】
【氏名】平川 恭章
(72)【発明者】
【氏名】佐分利 和宏
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−071949(JP,A)
【文献】 特開2011−038262(JP,A)
【文献】 特開2014−005703(JP,A)
【文献】 実開昭55−082317(JP,U)
【文献】 実開昭60−108625(JP,U)
【文献】 米国特許第06254314(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/12
E01D 19/02
E02D 27/01
E04C 5/03
E04C 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭頭部を形成する鋼管の外周面又は内周面に溶接された第1鉄筋と、
継手部材により前記第1鉄筋と繋がれた、前記第1鉄筋よりも単位面積当たりの引張強度の高い第2鉄筋と、
前記杭頭部、前記第1鉄筋、前記継手部材、及び前記第2鉄筋が埋設されて、前記杭頭部と接合される基礎部と、
を有する杭頭接合構造。
【請求項2】
前記第2鉄筋の断面積は、前記第1鉄筋の断面積より小さい、請求項1に記載の杭頭接合構造。
【請求項3】
前記第1鉄筋と前記継手部材、及び前記第2鉄筋と前記継手部材は、ねじ接合されている請求項1又は2に記載の杭頭接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭頭部と建物の基礎部とを接合する杭頭接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管コンクリート杭、SC杭(Steel Composite Concrete Piles;外殻鋼管付きコンクリート杭)等の基礎杭の杭頭部と、建物の基礎コンクリート部とを接合する杭頭接合構造としては、基礎杭の杭頭部の外周面に溶接によって杭頭補強筋を複数設け、これらの杭頭補強筋と杭頭部が埋め込まれるように基礎コンクリート部のコンクリートを打設するものが挙げられる。
【0003】
このような杭頭接合構造においては、杭頭補強筋、基礎梁の梁主筋、柱の柱主筋、せん断補強筋等の鉄筋が、基礎コンクリート部内に複雑に交差して配置されるので、施工手間が掛かってしまうことが懸念される。
【0004】
そこで、杭頭補強筋を引張強度の高い鉄筋にして、杭頭補強筋の本数を少なくしたり、杭頭補強筋の径を小さくしたりして、基礎コンクリート部内の鉄筋納まりを向上させることが考えられるが、引張強度の高い杭頭補強筋は、炭素量が多いため、杭頭部の外周面に溶接により直接接合するのは難しい。
【0005】
また、鉄筋継手として用いられているカプラーを杭頭部の外周面に溶接し、このカプラーに引張強度の高い杭頭補強筋を取り付けることが考えられるが、引張強度の高い杭頭補強筋と同等の引張強度を有するカプラーは、炭素量が多いため、杭頭部の外周面に溶接し難く、また、溶接可能な通常強度のカプラーは、所定の引張荷重に耐えられるように断面積を大きくしなければならない。
【0006】
さらに、特許文献1に開示されている杭頭接合構造のように、杭頭鉄筋接合部材を用いて杭頭部に杭頭補強筋を取り付ける方法は、杭頭鉄筋接合部材を製作する手間が掛かってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−84573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は係る事実を考慮し、引張強度の高い杭頭補強筋を杭頭部に取り付けることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1態様の発明は、杭頭部を形成する鋼管の外周面又は内周面に溶接された第1鉄筋と、継手部材により前記第1鉄筋と繋がれた、前記第1鉄筋よりも引張強度の高い第2鉄筋と、前記杭頭部、前記第1鉄筋、前記継手部材、及び前記第2鉄筋が埋設されて、前記杭頭部と接合される基礎部と、を有する杭頭接合構造。
【0010】
第1態様の発明では、杭頭部を形成する鋼管の外周面又は内周面に第1鉄筋を溶接し、この第1鉄筋に継手部材により第2鉄筋を繋げることによって、鋼管の外周面又は内周面への溶接が困難な引張強度の高い第2鉄筋を、杭頭補強筋として杭頭部に取り付けることができる。
【0011】
これにより、杭頭部に取り付ける杭頭補強筋の本数を少なくしたり、杭頭補強筋の径を小さくしたりすることができ、基礎部内の鉄筋納まりを向上させることができる。
【0012】
第2態様の発明は、第1態様の杭頭接合構造において、前記第1鉄筋と前記継手部材、及び前記第2鉄筋と前記継手部材は、ねじ接合されている。
【0013】
第2態様の発明では、第1鉄筋と継手部材、及び第2鉄筋と継手部材を、ねじ接合することにより、第1鉄筋と継手部材、及び第2鉄筋と継手部材を確実に繋ぐ(第1鉄筋と継手部材、及び第2鉄筋と継手部材の間で引張力を確実に伝達する)ことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上記構成としたので、引張強度の高い杭頭補強筋を杭頭部に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る杭頭接合構造を示す正面断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る第1鉄筋、継手部材、及び第2鉄筋を示す正面図である。
図3】本発明の実施形態に係る第1鉄筋と継手部材、及び第2鉄筋と継手部材のねじ接合の緩み止め方法のバリエーションを示す正面図である。
図4】本発明の実施形態に係る杭頭部に第2鉄筋が取り付けられた状況を示す正面図である。
図5図4のA−A断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る杭頭部への第2鉄筋の取り付け方のバリエーションを示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の実施形態に係る杭頭接合構造について説明する。
【0017】
図1の正面断面図には、建物10の躯体柱12を支持する基礎部としてのフーチング14と、基礎杭16の杭頭部18とを接合する杭頭接合構造20が示されている。
【0018】
基礎杭16は、鋼管22内に無筋コンクリートVを打設して形成された鋼管コンクリート杭からなり、杭頭部18を地盤24上に突出させて、地盤24中に埋設されている。
【0019】
フーチング14の側面には、基礎梁26、28が接合されている。躯体柱12、フーチング14、及び基礎梁26、28は、鉄筋コンクリートによって形成されている。
【0020】
杭頭接合構造20は、杭頭部18、第1鉄筋30、第2鉄筋32、継手部材34、及びフーチング14を有して構成されている。
【0021】
図1、及び図2の正面図に示すように、第1鉄筋30は、鋼管22の外周面40に溶接可能な、引張強度の低い、鉄筋コンクリート用異形棒鋼のSD490からなり、第2鉄筋32は、第1鉄筋30よりも引張強度の高い、鉄筋コンクリート用異形棒鋼のSD685からなる。ここで、鉄筋(第1鉄筋30、第2鉄筋32)の引張強度とは、その鉄筋が耐えられる最大引張荷重を、引張荷重を負荷する前のその鉄筋の断面積(鉄筋の材軸方向に対して垂直な鉄筋の断面積)で除した値を意味する。
【0022】
継手部材34は、下部に、外周面にリブが設けられた第1鉄筋30の上端部がねじ込み可能な雌ネジ部36が形成され、上部に、外周面にリブが設けられた第2鉄筋32の下端部がねじ込み可能な雌ネジ部38が形成された機械式継手となっている。
【0023】
第1鉄筋30と継手部材34は、雌ネジ部36に第1鉄筋30の上端部をねじ込むことによって、ねじ接合され、第2鉄筋32と継手部材34は、雌ネジ部38に第2鉄筋32の下端部をねじ込むことによって、ねじ接合されている。また、これらのねじ接合の緩み止めとして、雌ネジ部36と第1鉄筋30の上端部との間、及び雌ネジ部38と第2鉄筋32の下端部との間にグラウト(不図示)を注入して、第1鉄筋30の上端部と第2鉄筋32の下端部を継手部材34に定着している。これにより、第1鉄筋30と第2鉄筋32が、継手部材34によって繋がれている。なお、第1鉄筋30と継手部材34、及び第2鉄筋32と継手部材34のねじ接合の緩み止めは、他の方法を用いてもよい。例えば、図3の正面図に示すように、第1鉄筋30にナット44を設けて継手部材34の下端面へ押し付けるようにしてナット44を締め付け、第2鉄筋32にナット46を設けて継手部材34の上端面へ押し付けるようにしてナット46を締め付けてもよい。
【0024】
第1鉄筋30と第2鉄筋32の径は、第1鉄筋30の引張強度P1に第1鉄筋30の断面積S1(第1鉄筋30の材軸方向に対して垂直な第1鉄筋30の断面積)を掛けた値(=P1×S1)と、第2鉄筋32の引張強度P2に第2鉄筋32の断面積S2(第2鉄筋32の材軸方向に対して垂直な第2鉄筋32の断面積)を掛けた値(=P2×S2)とが略等しくなるように設定する。すなわち、第1鉄筋30と第2鉄筋32の耐えられる最大引張荷重が等しくなるように、第1鉄筋30と第2鉄筋32の径を設定する。第2鉄筋32は、第1鉄筋30よりも引張強度が高いので、第1鉄筋30よりも小さな径になる。
【0025】
また、継手部材34は、耐えられる最大引張荷重が第1鉄筋30及び第2鉄筋32と略等しくなるように、材質や形状(断面積)を設定する。
【0026】
フーチング14が形成される前の状況を示した図4の正面図、及び図4のA−A断面図である図5に示すように、第1鉄筋30は、基礎杭16の杭頭部18を形成する鋼管22の外周面40に所定の間隔を置いて複数配置され、外周面40に溶接されている。これにより、基礎杭16の杭頭部18に第2鉄筋32が杭頭補強筋として取り付けられている。
【0027】
図1に示すように、フーチング14には、杭頭部18、第1鉄筋30、継手部材34、及び第2鉄筋32が埋設されており、これによって、杭頭部18とフーチング14とが接合されている。また、フーチング14には、躯体柱12の柱主筋(不図示)、基礎梁26、28の梁主筋(不図示)、せん断補強筋(不図示)等が埋設されている。
【0028】
次に、本発明の実施形態に係る杭頭接合構造の作用と効果について説明する。
【0029】
本実施形態の杭頭接合構造20では、図1に示すように、鋼管22の外周面40に第1鉄筋30を溶接し、この第1鉄筋30に継手部材34により第2鉄筋32を繋げることによって、鋼管22の外周面40への溶接が困難な引張強度の高い第2鉄筋32を、杭頭補強筋として杭頭部18に取り付けることができる。
【0030】
これにより、杭頭部18に取り付ける杭頭補強筋の本数を少なくしたり、杭頭補強筋の径を小さくしたりすることができ、フーチング14内の鉄筋納まりを向上させることができる。
【0031】
また、本実施形態の杭頭接合構造20では、図2に示すように、第1鉄筋30と継手部材34、及び第2鉄筋32と継手部材34を、ねじ接合することにより、第1鉄筋30と継手部材34、及び第2鉄筋32と継手部材34を確実に繋ぐ(第1鉄筋30と継手部材34、及び第2鉄筋32と継手部材34の間で引張力を確実に伝達する)ことができる。
【0032】
さらに、本実施形態の杭頭接合構造20では、図2に示すように、第1鉄筋30と第2鉄筋32の径を、第1鉄筋30の引張強度P1に第1鉄筋30の断面積S1を掛けた値と、第2鉄筋32の引張強度P2に第2鉄筋32の断面積S2を掛けた値とが略等しくなるように設定し、継手部材34の耐えられる最大引張荷重を第1鉄筋30及び第2鉄筋32と略等しくすることにより、第1鉄筋30、継手部材34、及び第2鉄筋32の耐えられる最大引張荷重を略等しくすることができる。すなわち、継手部材34により第1鉄筋30と第2鉄筋32を繋いだ状態において、第1鉄筋30の下端部から第2鉄筋32の上端部までの全長に渡って、耐えられる最大引張荷重を略同一にすることができる。
【0033】
また、本実施形態の杭頭接合構造20では、図4に示すように、基礎杭16の鋼管22の外周面40に第1鉄筋30を溶接することにより、基礎杭16の杭頭部18に第2鉄筋32が取り付けられるので、現場で杭頭部18に第2鉄筋32を取り付けることができる。これにより、杭頭補強筋となる第2鉄筋32の取り付け位置を現場にて調整することができる。
【0034】
さらに、例えば、工場等にて、基礎杭16の鋼管22に予め第1鉄筋30を溶接しておいて、現場にて、継手部材34により第1鉄筋30に第2鉄筋32を繋ぐようにする等、施工手順を実況に応じて調整することができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明した。
【0036】
なお、本実施形態では、図2に示すように、第1鉄筋30を鉄筋コンクリート用異形棒鋼のSD490とし、第2鉄筋32を鉄筋コンクリート用異形棒鋼のSD685とした例を示したが、第1鉄筋30及び第2鉄筋32は、丸鋼等の他の種類の鉄筋や、他の引張強度の鉄筋であってもよい。
【0037】
また、本実施形態では、継手部材34をねじ式継手とした例を示したが、継手部材34は、第1鉄筋30と第2鉄筋32を繋ぐことができるものであればよい。例えば、第1鉄筋30及び第2鉄筋32をねじ込まずに挿入し、グラウトの注入により第1鉄筋30及び第2鉄筋32を定着させるタイプの継手であってもよい。
【0038】
さらに、本実施形態では、第1鉄筋30と第2鉄筋32の径を、第1鉄筋30の引張強度P1に第1鉄筋30の断面積S1を掛けた値と、第2鉄筋32の引張強度P2に第2鉄筋32の断面積S2を掛けた値とが略等しくなるように設定した例を示したが、第1鉄筋30の引張強度P1に第1鉄筋30の断面積S1を掛けた値が、第2鉄筋32の引張強度P2に第2鉄筋32の断面積S2を掛けた値よりも大きく又は小さくなるように、第1鉄筋30と第2鉄筋32の径を設定してもよい。
【0039】
第1鉄筋30、継手部材34、及び第2鉄筋32の耐えられる最大引張荷重の内の最も小さい値が、これらの部材全体としての耐えられる最大引張荷重となる。よって、第1鉄筋30の引張強度P1に第1鉄筋30の断面積S1を掛けた値と、第2鉄筋32の引張強度P2に第2鉄筋32の断面積S2を掛けた値とが略等しくなるように、第1鉄筋30と第2鉄筋32の径を設定し、継手部材34の耐えられる最大引張荷重を第1鉄筋30及び第2鉄筋32と略等しくすれば、これらの部材全体としての耐えられる最大引張荷重が第2鉄筋32の耐えられる最大引張荷重となり、第2鉄筋32を杭頭補強筋として効率よく使用できるので好ましい。
【0040】
また、本実施形態では、図1に示すように、基礎杭16を、鋼管22内に無筋コンクリートVを打設して形成された鋼管コンクリート杭とした例を示したが、杭頭部の外周面が鋼管により形成されている杭であればよい。例えば、基礎杭は、鋼管内に鉄筋コンクリートが設けられた鋼管コンクリート杭であってもよいし、SC杭(Steel Composite Concrete Piles;外殻鋼管付きコンクリート杭)であってもよいし、鋼管杭であってもよい。
【0041】
さらに、本実施形態では、図1に示すように、基礎部をフーチング14とした例を示したが、基礎杭の杭頭部と接合されるものであればよい。例えば、基礎部は、基礎スラブであってもよい。
【0042】
また、本実施形態では、図5に示すように、基礎杭16の杭頭部18を形成する鋼管22の外周面40に第1鉄筋30を溶接することにより、基礎杭16の杭頭部18に第2鉄筋32を取り付けた例を示したが、図6の平面断面図に示すように、基礎杭16の杭頭部18を形成する鋼管22の内周面42に第1鉄筋30を溶接し、この第1鉄筋30に継手部材34により第2鉄筋32を繋げることによって、基礎杭16の杭頭部18に第2鉄筋32を取り付けるようにしてもよい。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
14 フーチング(基礎部)
18 杭頭部
20 杭頭接合構造
22 鋼管
30 第1鉄筋
32 第2鉄筋
34 継手部材
40 外周面
42 内周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6