(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6535529
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】両面研磨装置の研磨布のドレッシング装置およびドレッシング方法
(51)【国際特許分類】
B24B 53/017 20120101AFI20190617BHJP
B24B 53/00 20060101ALI20190617BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20190617BHJP
【FI】
B24B53/017 Z
B24B53/00 Z
H01L21/304 622M
H01L21/304 621A
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-136682(P2015-136682)
(22)【出願日】2015年7月8日
(65)【公開番号】特開2017-19027(P2017-19027A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236687
【氏名又は名称】不二越機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 光広
(72)【発明者】
【氏名】依田 遼介
【審査官】
山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−000741(JP,A)
【文献】
特開平07−009340(JP,A)
【文献】
特開2002−280337(JP,A)
【文献】
特開2002−205257(JP,A)
【文献】
特開2006−272498(JP,A)
【文献】
特開2004−090142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/00−53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に研磨布が固定され、回転軸を中心に回転可能に設けられたリング状の下定盤と、下面に研磨布が固定され、前記下定盤の上方に上下動可能、かつ回転軸を中心に回転可能に設けられたリング状の上定盤と、前記下定盤の中央に配置された太陽ギアと、前記下定盤を囲んで配置されたインターナルギアと、前記下定盤および前記上定盤の間に配置され、ワークを保持する透孔を有し、前記太陽ギアおよび前記インターナルギアに噛合して、前記太陽ギアの回りを公転、かつ自転するキャリアと、前記研磨布にスラリーを供給するスラリー供給機構を具備する両面研磨装置における、前記上下定盤の前記両研磨布をドレッシングするドレッシング装置において、
前記上下定盤間に進入して、直進動もしくは回転軸を中心に円弧状に揺動可能に設けられたアーム部材と、
該アーム部材の先端部に設けられた支持部材と、
該支持部材の上面側および下面側にそれぞれ設けられ、前記アーム部材が前記直進動もしくは円弧状に揺動することによって、それぞれ対応する前記研磨布面に当接しながら前記上下定盤の径方向に移動して対応する前記研磨布を研削する第1および第2のドレッシング砥石を具備し、
該第1および第2のドレッシング砥石が、それぞれ、
前記上下定盤の内縁方向に移動した際該上下定盤の内縁側に位置し、前記上下定盤の径方向に所要長さで延びる内側領域部と、前記上下定盤の外縁方向に移動した際該上下定盤の外縁側に位置し、前記上下定盤の径方向に所要長さで延びる外側領域部と、前記内側領域部と前記外側領域部との間に位置し、前記上下定盤の径方向に所要長さで延びる中間領域部を有し、前記内側領域部および前記外側領域部の前記上下定盤の周方向に延びる長さが、前記中間領域部の前記上下定盤の周方向に延びる長さよりも長くなるように設定され、
前記第1および第2のドレッシング砥石の、前記内側領域部が前記上下定盤の内縁に沿う形状に形成されると共に、前記外側領域部が前記上下定盤の外縁に沿う形状に形成されていることを特徴とする両面研磨装置の研磨布のドレッシング装置。
【請求項2】
前記支持部材に、前記上下定盤の前記各研磨布に洗浄水を噴出するノズル装置が設けられていることを特徴とする請求項1記載の両面研磨装置の研磨布のドレッシング装置。
【請求項3】
前記第1および第2のドレッシング砥石が、前記内側領域部、前記中間領域部および前記外側領域部とで変形H形状をなすことを特徴とする請求項1または2記載の両面研磨装置の研磨布のドレッシング装置。
【請求項4】
前記支持部材の上面側および下面側に球座部が設けられ、前記第1および第2のドレッシング砥石がそれぞれ前記球座部に傾動可能に支持されていることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の両面研磨装置の研磨布のドレッシング装置。
【請求項5】
前記第1および第2のドレッシング砥石と前記支持部材との間にそれぞれ第1および第2のエアバッグが設けられ、該第1および第2のエアバッグに圧縮エアが供給されることにより、前記第1および第2のドレッシング砥石にエアによる押圧力が付与されることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の両面研磨装置の研磨布のドレッシング装置。
【請求項6】
前記第1および第2のエアバッグにそれぞれ独立して圧縮エアを供給するエア供給部が設けられていることを特徴とする請求項5記載の両面研磨装置の研磨布のドレッシング装置。
【請求項7】
前記第1および第2のドレッシング砥石が、それぞれ、前記支持部材に挿通するガイドシャフトを介して、前記支持部材に対して接離する方向に案内されていることを特徴とする請求項6記載の両面研磨装置の研磨布のドレッシング装置。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか1項記載の両面研磨装置の研磨布のドレッシング装置を用い、前記両面研磨装置の前記上下定盤を回転させると共に、当該上下定盤間に前記アーム部材を進入させ、該アーム部材を直進動もしくは円弧状に揺動させて、前記第1および第2のドレッシング砥石を前記上下定盤の径方向に移動して、前記研磨布の内縁側および外縁側を含めて、前記研磨布をほぼ均一厚さとなるように研削して前記研磨布のドレッシングを行うことを特徴とする両面研磨装置の研磨布のドレッシング方法。
【請求項9】
前記研磨布のドレッシングと併行して、もしくは前記研磨布のドレッシング後、前記ノズル装置から洗浄水を前記研磨布に噴射して、前記研磨布の洗浄を行うことを特徴とする請求項8記載の両面研磨装置の研磨布のドレッシング方法。
【請求項10】
前記両面研磨装置に装着される複数の前記キャリアのうち1つのみを取り外して、露出した研磨布の領域内で前記第1および第2のドレッシング砥石を前記上下定盤の径方向に移動して前記研磨布のドレッシングを行うことを特徴とする請求項8または9記載の両面研磨装置の研磨布のドレッシング方法。
【請求項11】
前記第1および第2のドレッシング砥石が前記上下定盤の中心側に位置する際の前記上下定盤の回転速度を、前記第1および第2のドレッシング砥石が前記上下定盤の外周側に位置する際の前記上下定盤の回転速度よりも速くすることを特徴とする請求項8〜10いずれか1項記載の両面研磨装置の研磨布のドレッシング方法。
【請求項12】
前記第1および第2のドレッシング砥石が前記上下定盤の中心側に位置する際の前記第1および第2のドレッシング砥石の滞留時間を、前記第1および第2のドレッシング砥石が前記上下定盤の外周側に位置する際の前記第1および第2のドレッシング砥石の滞留時間よりも長くすることを特徴とする請求項8〜10いずれか1項記載の両面研磨装置の研磨布のドレッシング方法。
【請求項13】
前記第1および第2のドレッシング砥石が前記上下定盤の中心側に位置する際の前記第1および第2のドレッシング砥石による前記研磨布への押圧力を、前記第1および第2のドレッシング砥石が前記上下定盤の外周側に位置する際の前記第1および第2のドレッシング砥石による前記研磨布への押圧力よりも大きくすることを特徴とする請求項8〜10いずれか1項記載の両面研磨装置の研磨布のドレッシング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は両面研磨装置の研磨布のドレッシング装置およびドレッシング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等のワークの研磨は、研磨布を貼設した定盤の該研磨布表面にワークの被研磨面を押接して、研磨布上に研磨液を供給しつつ定盤を回転させることによって行っている。
そして研磨終了後、研磨布には研磨屑や研磨液が染み込んでいて研磨レートが劣化することから、通常研磨の1バッチごとに研磨布に高圧洗浄水を噴射して、染み込んだ研磨屑や研磨液を洗い流すようにしている(特許文献1)。また、研磨の1バッチごとに研磨布を洗浄しても、通常7バッチ程度も研磨すると研磨布が波打ち(凹凸面)、平坦度が低下して、研磨速度が低下する。
【0003】
そこで、7バッチ程度研磨したら、ワークのキャリアを研磨装置から取り外し、代わりにギア付きのリング状の修正砥石を装着して、このリング状の修正砥石により、上下定盤の研磨布を研削して研磨布を平坦にするドレッシングを行うようにしている。4つのリング状の修正砥石のうちの2つは下定盤の研磨布のドレッシング用に、他の2つのリング状の修正砥石は上定盤の研磨布のドレッシング用に用いられる。
【0004】
しかしながら、研磨の1バッチごとに高圧洗浄水を噴射して研磨布の洗浄を行っても、バッチごとに次第に研磨布に凹凸面が生じ、ワークの研磨速度が低下する。そして、7バッチ研磨後、修正砥石により研磨布を研削して平坦にすることにより、研磨速度が復活するが、研磨速度が一定せず、研磨時間により研磨度を調整することになり、制御が厄介であり、精度のよい研磨が行い難いという課題がある。また、7バッチ研磨後に、キャリアをリング状の修正砥石に交換してドレッシングを行うのにその都度15分〜20分程度の時間を要し、作業性も劣るという課題がある。さらには、7バッチ研磨後ごとに、研磨布を修正砥石で研削するドレッシングを行うので、研磨布の寿命も短いという課題がある。
【0005】
そこで、特許文献2では、大きなリング状の修正砥石ではなく、1バッチの研磨終了ごとに、直方体状の小さなドレッシング砥石を、上下定盤の径方向に移動させて、その都度ドレッシングを行うようにした。
この方法によれば、小さなドレッシング砥石を用いるので、隣接するキャリア間の隙間を利用してドレッシング砥石を径方向に移動でき、キャリアを装着したままでドレッシング作業が行え、また、1バッチの研磨終了ごとに、きめ細かくドレッシングを行うようにしたので、研磨布の平坦度が保て、精度のよい研磨を行えるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−9340
【特許文献2】特開2012−741
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、より高い研磨精度を維持したいという要求に対して、特許文献2に記載の方法でも不十分となってきた。
【0008】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたもので、その目的とするところは、特許文献2に示される装置および方法をさらに改良した両面研磨装置の研磨布のドレッシング装置およびドレッシング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は次の構成を備える。
すなわち、本発明に係るドレッシング装置は、上面に研磨布が固定され、回転軸を中心に回転可能に設けられたリング状の下定盤と、下面に研磨布が固定され、前記下定盤の上方に上下動可能、かつ回転軸を中心に回転可能に設けられたリング状の上定盤と、前記下定盤の中央に配置された太陽ギアと、前記下定盤を囲んで配置されたインターナルギアと、前記下定盤および前記上定盤の間に配置され、ワークを保持する透孔を有し、前記太陽ギアおよび前記インターナルギアに噛合して、前記太陽ギアの回りを公転、かつ自転するキャリアと、前記研磨布にスラリーを供給するスラリー供給機構を具備する両面研磨装置における、前記上下定盤の前記両研磨布をドレッシングするドレッシング装置において、前記上下定盤間に進入して、直進動もしくは回転軸を中心に円弧状に揺動可能に設けられたアーム部材と、該アーム部材の先端部に設けられた支持部材と、該支持部材の上面側および下面側にそれぞれ設けられ、前記アーム部材が前記直進動もしくは円弧状に揺動することによって、それぞれ対応する前記研磨布面に当接しながら前記上下定盤の径方向に移動して対応する前記研磨布を研削する第1および第2のドレッシング砥石を具備し、該第1および第2のドレッシング砥石が、それぞれ、前記上下定盤の内縁方向に移動した際該上下定盤の内縁側に位置し、前記上下定盤の径方向に所要長さで延びる内側領域部と、前記上下定盤の外縁方向に移動した際該上下定盤の外縁側に位置し、前記上下定盤の径方向に所要長さで延びる外側領域部と、前記内側領域部と前記外側領域部との間に位置し、前記上下定盤の径方向に所要長さで延びる中間領域部を有し、前記内側領域部および前記外側領域部の前記上下定盤の周方向に延びる長さが、前記中間領域部の前記上下定盤の周方向に延びる長さよりも長くなるように
設定され、前記第1および第2のドレッシング砥石の、前記内側領域部が前記上下定盤の内縁に沿う形状に形成されると共に、前記外側領域部が前記上下定盤の外縁に沿う形状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
前記支持部材に、前記上下定盤の前記各研磨布に洗浄水を噴出するノズル装置を設けるようにすると
好適である。
前記第1および第2のドレッシング砥石を、前記内側領域部、前記中間領域部および前記外側領域部とで変形H形状をなすように形成することができる。
【0011】
前記
支持部材の上面側および下面側に球座部を設け、前記第1および第2のドレッシング砥石をそれぞれ前記球座部に傾動可能に支持するようにすると好適である。
前記第1および第2のドレッシング砥石と前記
支持部材との間にそれぞれ第1および第2のエアバッグを設け、該第1および第2のエアバッグに圧縮エアを供給することにより、前記第1および第2のドレッシング砥石にエアによる押圧力を付与するようにすると好適である。
この場合に、前記第1および第2のエアバッグにそれぞれ独立して圧縮エアを供給するエア供給部を設けるようにすることができる。
前記第1および第2のドレッシング砥石を、それぞれ、前記
支持部材に挿通するガイドシャフトを介して、前記
支持部材に対して接離する方向に案内するようにすることもできる。
【0012】
また本発明に係るドレッシング方法は、上記いずれかの両面研磨装置の研磨布のドレッシング装置を用い、前記両面研磨装置の前記上下定盤を回転させると共に、当該上下定盤間に前記アーム部材を進入させ、該アーム部材を直進動もしくは円弧状に揺動させて、前記第1および第2のドレッシング砥石を前記上下定盤の径方向に移動して、前記研磨布の内縁側および外縁側を含めて、前記研磨布をほぼ均一厚さとなるように研削して前記研磨布のドレッシングを行うことを特徴とする。
【0013】
前記研磨布のドレッシングと併行して、もしくは前記研磨布のドレッシング後、前記ノズル装置から洗浄水を前記研磨布に噴射して、前記研磨布の洗浄を行うようにするとよい。
前記両面研磨装置に装着される複数の前記キャリアのうち1つのみを取り外して、露出した研磨布の領域内で前記第1および第2のドレッシング砥石を前記上下定盤の径方向に移動して前記研磨布のドレッシングを行うようにすると好適である。
【0014】
前記第1および第2のドレッシング砥石が前記上下定盤の中心側に位置する際の前記上下定盤の回転速度を、前記第1および第2のドレッシング砥石が前記上下定盤の外周側に位置する際の前記上下定盤の回転速度よりも速くして研削量を調整することができる。
また、前記第1および第2のドレッシング砥石が前記上下定盤の中心側に位置する際の前記第1および第2のドレッシング砥石の滞留時間を、前記第1および第2のドレッシング砥石が前記上下定盤の外周側に位置する際の前記第1および第2のドレッシング砥石の滞留時間よりも長くして研削量を調整するようにすることができる。
また、前記第1および第2のドレッシング砥石が前記上下定盤の中心側に位置する際の前記第1および第2のドレッシング砥石による前記研磨布への押圧力を、前記第1および第2のドレッシング砥石が前記上下定盤の外周側に位置する際の前記第1および第2のドレッシング砥石による前記研磨布への押圧力よりも大きくして研削量を調整することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、研磨布の内周部および外周部を含めて、全体を均一にドレッシングすることができるドレッシング装置およびドレッシング方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】ドレッシング装置のヘッド部の拡大断面図である。
【
図5】本実施の形態に係るドレッシング砥石の平面図である。
【
図7】ドレッシング砥石の研磨布内周側と外周側に位置する場合の説明図である。
【
図10】ドレッシング後の研磨布の平坦度(研磨布の定盤面からの厚さ)を示すグラフである。
【
図11】ドレッシング砥石による加圧力を調整した場合の、研磨布の平坦度を示すグラフである。
【
図12】円形のドレッシング砥石を用いた場合の、研磨布の平坦度を示すグラフである。
【
図13】円形のドレッシング砥石の説明図と、同ドレッシング砥石を用いた場合の
上下定盤の研磨布のドレッシング状況を示す模式図である。
【
図14】円形のドレッシング砥石を研磨布の内縁部、外縁部にオーバーラップさせてドレッシングした場合の研磨布の平坦度を示す模式図である。
【
図15】研磨布とドレッシング砥石の接触面積を計算したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
まず両面研磨装置の一例について説明する。
図1はシリコンウェーハ等のワークを研磨する両面研磨装置10の断面図である。また
図2はその下定盤とキャリアとの関係を示す平面図である。
図1に示す装置では、互いに反対方向に回転する下定盤12と上定盤14との間に、インターナルギア15と太陽ギア16とにより駆動されるキャリア20が配設される。
下定盤12の上面および上定盤14の下面にはそれぞれ研磨布17、18が貼付されている。
【0018】
キャリア20には、研磨対象のワークを担持する透孔21が穿設されており、この透孔21に担持されたワークの両面は下定盤12と上定盤14とによって同時に研磨される。
図1に示す下定盤12は、定盤受22に載置されており、定盤受22の回転によって回転する。かかる定盤受22は、基台24にベアリング25を介して回転可能に載置されており、動力伝動ギア26及び筒状シャフト27を介して伝達される電動モータ28からの回転力によって回転される。
【0019】
また、上定盤14は、動力伝動ギア30およびシャフト31を介して電動モータ32の回転力によって回転する。
インターナルギア15は、動力伝動ギア34および筒状シャフト35を介して電動モータ36の回転力によって回転する。
さらに、太陽ギア16も、動力伝動ギア37および筒状シャフト38を介して電動モータ40からの回転力によって回転される。
なお、
図2では、各キャリア20が4つの透孔21を有し、その4つの透孔21にそれぞれワークが収まっているが、透孔21およびワークの数は、ワークのサイズを加味しながら自由に設定すればよい。
【0020】
次にドレッシング装置42について説明する。
図3はドレッシング装置42の正面断面図、
図4はその部分拡大図、
図5はドレッシング砥石の平面図、
図6はドレッシング装置42の平面図である。
44はアーム部材であり、中空に設けられ、定盤12、14外に位置する回転軸45を中心に水平面内で円弧状(扇状)に回動自在に設けられている。
アーム部材44の先端部にはヘッド部46が取り付けられている。
アーム部材44は、ドレッシング時以外は、上下定盤12、14外に回動位置されている。そして、ドレッシング時には、上下定盤12、14内に位置するよう回動され、ヘッド部46に有するドレッシング砥石により、上下定盤12、14の研磨布17、18のドレッシングを行うようになされる。なお、アーム部材44の回動は、図示しないサーボモータ等によって行える。
【0021】
ヘッド部46は、アーム部材44先端に直接固定されている支持部材47と、この支持部材47の上面および下面側に、それぞれ球座部48、49を介して、水平面内で傾動可能に支持された第1のドレッシング砥石51と第2のドレッシング砥石52を有する。
図4に示すように、球座部48は、支持板54上面に設けられており、また、支持板54には、支持部材47に設けた貫通孔55を挿通するガイドシャフト56が取り付けられている。そしてガイドシャフト56下端に設けたフランジ57と貫通孔55内壁の中途部に設けた突部58との間にコイルスプリング60が介挿されて、このコイルスプリング60の付勢力によって、第1のドレッシング砥石51は、
図4上、下方に付勢されている。
【0022】
他方、球座部49は、支持板62下面に設けられており、また、支持板62には、支持部材47に設けた貫通孔63を挿通するガイドシャフト64が取り付けられている。さらに、支持板62には、支持部材47を貫通する貫通孔65に進入する軸66が設けられている。そして貫通孔65下端に内方に突出して設けられた突部67と軸66上端に設けたフランジ68との間にコイルスプリング70が介挿されて、このコイルスプリング70の付勢力によって、第2のドレッシング砥石52は、
図4上、上方に付勢されている。
【0023】
71はゴム製の筒状部材であり、固定具72によって、第1のドレッシング砥石51下面と支持部材47上面との間に固定され、第1のドレッシング砥石51下面と支持部材47上面との間に第1のエア室73を形成している。筒状部材71、第1のエア室73等で第1のエアバッグを構成する。
また、74もゴム製の筒状部材であり、固定具75によって、第2のドレッシング砥石52上面と支持部材47下面との間に固定され、第2のドレッシング砥石52上面と支持部材47下面との間に第2のエア室76を形成している。筒状部材74、第2のエア室76等で第2のエアバッグを構成する。
【0024】
第1のエア室73内、および第2のエア室76内には、中空のアーム部材44内を伸びるエアホース(図示せず)によって圧縮エアが供給される。このエアホースは、回転軸45内のエア通路(図示せず)、さらにこのエア通路に通じるロータリー継手(図示せず)を介して図示しないエア供給源に接続されている。
第1のエア室73内に圧縮エアを供給することによって、コイルスプリング60の付勢力に抗して第1のドレッシング砥石51を上方に付勢することができる。
同様に、第2のエア室76内に圧縮エアを供給することによって、コイルスプリング70の付勢力に抗して第2のドレッシング砥石52を下方に付勢することができる。
なお、上記では、第1のエア室73と第2のエア室76内にそれぞれ独立して圧縮エアを供給するようにしたが、第1のエア室73と第2のエア室76とを連通して設け、1つのエア回路から両室に圧縮エアを供給するようにしてもよい。
【0025】
支持部材47の先端部にはノズル装置78が設けられている。
ノズル装置78には、上方に向けて洗浄水を噴出するノズル79と、下方に向けて洗浄水を噴出するノズル80とが設けられている。ノズル79、80には、ノズル本体内を伸びる流路(図示せず)、支持部材47内に設けられた流路(図示せず)、アーム部材44内を伸びる流路82、回転軸45内を伸びる流路83、ロータリー継手84を介して、図示しない水源に接続されている。
なお、アーム部材44の回転軸45を中心とする回転機構は公知のものでよいので、特に説明は省略する。
【0026】
図5は、第1のドレッシング砥石51および第2のドレッシング砥石52の平面図である。
図6は、ドレッシング装置42の平面図である。
図5〜
図7に示すように、第1および第2のドレッシング砥石51、52は、上下定盤12、14の内縁方向に移動した際(
図7のA位置)、該上下定盤12、14の内縁側に位置し、上下定盤の径方向に所要長さで延びる内側領域部Pと、上下定盤12、14の外縁方向に移動した際(
図7のB位置)、該上下定盤12、14の外縁側に位置し、上下定盤の径方向に所要長さで延びる外側領域部Qと、内側領域部Pと外側領域部Qとの間に位置し、上下定盤の径方向に所要長さで延びる中間領域部Rを有し、内側領域部Pおよび外側領域部Qの、上下定盤12、14の周方向に延びる長さが、中間領域部Rの上下定盤12、14の周方向に延びる長さよりも長くなるように設定されている。
【0027】
なお、
図6、
図7等に示されるように、第1および第2のドレッシング砥石51、52は、上下定盤12、14の直径に対して十分に小さい。第1および第2のドレッシング砥石51、52は、上下定盤12、14の径方向に移動することによって、また上下定盤12、14が回転されることによって、研磨布17、18の全面を研削してドレッシングすることができるのである。
【0028】
図5に示すように、具体的には、本実施の形態に係る第1および第2のドレッシング砥石51、52は、平面視、一方の側が窄まり、他方の側が開いた変形H形状をしている。
なお、第1および第2のドレッシング砥石51、52の、内側領域部Pを上下定盤12、14の内縁に沿う形状(例えば円弧状)に形成すると好適であり、また外側領域部Qも上下定盤12、14の外縁に沿う形状(例えば円弧状)に形成すると好適である。あるいは、
図5に示すように、内側領域部Pおよび外側領域部Q共に、所要幅で直線状に延びるものであってもよい。
また、内側領域部P、中間領域部R、外側領域部Qは、変形H形状でなく、全体として所要幅を有するコの字状であってもよい。
【0029】
本実施の形態に係るドレッシング装置42は上記のように構成されている。
次に、ワークの研磨終了後、このドレッシング装置42を用いて研磨布のドレッシングを行う方法について説明する。
図8はドレッシングを行う場合の動作フローである。
まず、ワークの研磨が終了したら、ワークの研磨を停止する(ステップ1:S1)。
次に、複数枚のキャリア20のうち、アーム部材44が進入する箇所のキャリア20を定盤上から取り外す(S2)。このキャリア20の取り外しは、
図9に示すような、吸着部87を有するチャック装置88によって行うことができる。キャリア20を1枚取り外すのは、アーム部材44の揺動を可能にするスペースを確保するためである。
次いで上定盤14を図示しないロック装置によってロックし、上定盤14が水平面内で上下方向に振れない(波打たない)ようにする(S3)。ロック装置としては、上定盤14の上面を押える機構のものを採用できる。
【0030】
次に、上下定盤12、14を所定速度、例えば20rpmで回転する(S4)。
次いでドレッシングを開始する(S5)。すなわち、アーム部材44を回動して上下定盤12、14間に進入させ、ヘッド部46を上下定盤12、14の内縁部(内周端)に位置させる。
次に、ドレッシング砥石51、52を所定圧力で研磨布17、18に当接させる(S6)。すなわち、上定盤14を所要位置まで下降させると共に、第1のエア室73および第2のエア室76内に圧縮エアを供給して第1および第2のドレッシング砥石51、52を加圧する。
次いで、ノズル装置78から洗浄水を上下の研磨布に噴射(ジェット)する(S7)。
ドレッシング開始時、ヘッド部46を所要時間停止して滞留させ、研磨布の内周側を十分に研削するようにするとよい。
【0031】
次に、アーム部材44を回動して、ヘッド部46をドレッシング終了位置である外縁部(外周端)まで、上下定盤12、14の径方向に移動させる(S8)。この場合のアーム部材44の旋回速度はたとえば、0.2d/secとする。この外周端でヘッド部46を所要時間停止して滞留させ、研磨布の外周側を十分に研削するとよい(S9)。
このようにしてドレッシングを終了する。
【0032】
次に、ノズル装置78からの洗浄水の噴出を停止する(S10)。
また、アーム部材44を回動し、上下定盤12、14間から外方へ移動させる(S11)。
次いで、上下定盤12、14の回転を停止する(S12)。
次に、上定盤14のロックを解除する(S13)。
次いで、キャリア20をチャック装置88により吸着して元の位置に移動する(S14)。
そして、ワークの次のバッチの研磨を開始する(ドレッシングの終了)(S15)。
この研磨布のドレッシングは、研磨の1バッチ終了ごとに行うのが好適であるが、例えば、2バッチ終了ごととするなど、適宜状況に応じて選択すればよい。
また、例えば、20バッチ終了時に、従来の大きなリング状の修正砥石を用いて、研磨布を研削する修正ドレッシングを行うようにするとよい。
【0033】
本実施の形態では、第1および第2のドレッシング砥石51、52において、研削が不十分となりがちな、研磨布の内縁側、外縁側に対応する、内側領域部P、外側領域部Qの、定盤周方向への長さを中間領域部Rの長さよりも長くしたので、当該部位の接触面積を大きくでき、研磨布全体として、均一な研削が可能となるのである。
また上記のように、ドレッシング開始時は、ヘッド部46は周速の遅い内周側に位置するので、上記のようにヘッド部46の滞留時間を長くするか(例えば定盤2周分である6秒)、あるいは上下定盤12、14の回転速度を速くする。または、ドレッシング砥石51、52による研磨布への加圧力を強くするようにする。一方、ドレッシング終了時は、ヘッド部46は周速の早い外周側に位置するので、ヘッド部
46の滞留時間を短くするか(例えば定盤1周分3秒)、上下定盤12、14の回転速度を遅くするとよい。または、ドレッシング砥石51、52による研磨布への加圧力を弱くするようにするとよい。このように各種調整することで、さらに、研磨布の内縁側、外縁側を含めて、良好に、研削、ドレッシングを行うことができる。
【0034】
図10は、上記ドレッシング砥石51、52を用いてドレッシングしたドレッシング後の研磨布の平坦度(内周側から外周側までのドレス距離における、研磨布の定盤面からの厚さ)を示すグラフである。外周側(ドレス距離の100%側)が若干削れすぎているが、ほぼ平坦である。
図11は、エアバッグを用いて、ドレッシング砥石51、52による加圧力を調整した場合のグラフである。外周側(ドレス距離の100%側)の加圧力を少し減じる調整を行った結果、平坦度に優れるドレッシングが可能となった。
【0035】
なお、
図12は、参考例として、
図13(A)に示す円形のドレッシング砥石を用いてドレッシングを行った場合の研磨布の平坦度を示すグラフである。研磨布の外周側(ドレス距離の100%側)および内周側(ドレス距離の0%側)が厚く、外周側、内周側の研削量が不十分であることがわかる。
円形のドレッシング砥石を用いた場合の、上下定盤の研磨布のドレッシング状況を
図13(B)の模式図に示す。同図に示すように、円形のドレッシング砥石の場合には、研磨布の内周側および外周側のドレッシングが不十分である。これは、ドレッシング砥石が円形であるため、研磨布の内周側および外周側におけるドレッシング砥石の研磨布との接触面積が小さくなるためである。すなわち、円形のドレッシング砥石の場合、インターナルギア、太陽ギア付近の研磨布にドレッシング砥石が当たらず、削れていないという問題が生じてしまう。このように、ギア付近の研磨布が削れておらず、盛り上がった状態は、ワークの研磨の際、研磨精度を悪化させてしまうので好ましくない。
【0036】
図14(A)、(B)は、同じく、円形のドレッシング砥石を用いた場合であるが、太陽ギア16およびインターナルギア15が邪魔にならないように、太陽ギア16およびインターナルギア15を下定盤12の上面よりも低くなるように引き下げ、円形ドレッシング砥石の一部が研磨布の内縁および外縁よりも外側に飛び出すようにして(オーバーラップするようにして)ドレッシングを行った結果を示す。その結果、円形のドレッシング砥石と研磨布の内縁部および外縁部との接触面積が大きくなり、平坦度の高い(良い)ドレッシングが可能となった。しかし、毎回、太陽ギア16およびインターナルギア15を下方に引き下げることは作業性において好ましくない。
この点、本実施の形態の場合には、上記のようにドレッシング砥石51、52の形態を工夫したことによって、インターナルギアや太陽ギアを引き下げることなく、ドレッシング砥石と研磨布の内縁部および外縁部との接触面積が大きくでき、平坦度の高いドレッシングが可能となったのである。
【0037】
図5(B)は、本実施の形態の上記変形H形状のドレッシング砥石を用いてドレッシングを行った場合の、研磨布のドレッシング状況を示す模式図である。同図から明らかなように、むしろ、研磨布の内周側および外周側の削れ量が大きくなる。しかし、このように、ギア付近の研磨布が余分に削れていて低く落ち込んだ状態になっていても、過剰でなければ、落ち込んだ部分がワーク研磨の際悪さをすることはほとんどなく、問題となることはほとんどない。また、この点は、前記のように、研磨布の内周側および外周側のドレッシングの際、定盤の回転速度を調整したり、ヘッド部(ドレッシング砥石)の滞留時間を調整したり、あるいはドレッシング砥石による加圧力を調整したりすることによって修正が可能となる。すなわち、
図13(B)を設計中心とするよりも、
図5(B)を設計中心とする方が、調整が容易となる。
【0038】
図15は、本実施の形態におけるドレッシング砥石が
図7のA位置にある場合と、B位置にある場合とにおける、研磨布とドレッシング砥石の接触面積を計算したグラフである。同図に示すように、A地点においては、内側領域部Pの接触面積が大きくなり、B地点においては外側領域部Qの接触面積が大きくなる。このように、ドレッシング砥石の形状を工夫することで、太陽ギア16、インターナルギア15を下げることなくそのままの状態で、ドレッシング砥石の研磨布の内周側と外周側との接触面積を大きくでき、これにより、研磨布の均一ドレッシングが可能となった。
【0039】
上記の実施の形態では、アーム部材44を回転軸45を中心に回動させて、ヘッド部46(ドレッシング砥石)を研磨布上で径方向に円弧移動させるようにしたので、回転軸45から延びるアーム部材44を下定盤12の隣に沿うように配置でき、省スペースになるという利点がある。なお、下定盤12付近のスペースに余裕がある場合には、径方向に直線状に移動するようにしてもよい。この場合には、ドレッシング砥石は変形H形状でなく、所要幅を有するH形状とすることができる。
また、高性能を確実化するために、球座部48、49や、エアバック構造を用いたが、第1のドレッシング砥石51および第2のドレッシング砥石52を直接支持部材に固定して設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 両面研磨装置、12 下定盤、14 上定盤、15 インターナルギア、16 太陽ギア、17 研磨布、18 研磨布、20 キャリア、21 透孔、22 定盤受、24 基台、25 ベアリング、26 動力伝動ギア、27 筒状シャフト、28 電動モータ、30 動力伝動ギア、31 シャフト、32 電動モータ、34 動力伝動ギア、35 筒状シャフト、36 電動モータ、37 動力伝動ギア、38 筒状シャフト、40 電動モータ、42 ドレッシング装置、44 アーム部材、46 ヘッド部、
47 支持部材、48 球座部、49 球座部、51 第1のドレッシング砥石、52 第2のドレッシング砥石、54 支持板、55 貫通孔、56 ガイドシャフト、57 フランジ、58 突部、60 コイルスプリング、62 支持板、63貫通孔、64 ガイドシャフト、65 貫通孔、66 軸、67 突部、68 フランジ、70 コイルスプリング、71 筒状部材、72 固定具、73 第1のエア室、74 筒状部材、75 固定具、76 第2のエア室、78 ノズル装置、79 ノズル、80 ノズル、82 流路、83 流路、84 ロータリー継手、87 吸着部、88 チャック装置