(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
音響信号に対するフィルタ処理に用いられるフィルタの周波数特性に基づいて、当該フィルタの周波数特性においてゲインが最も高い部分を水平直線によって近似的に示した天井部と、前記フィルタの周波数特性における立ち上がり状態あるいは立ち下がり状態を傾斜直線により近似的に示したスロープ部とによって形成される台形図形を作成する台形図形作成手段と、
該台形図形作成手段により作成された前記台形図形を表示させる表示手段と、
該表示手段に表示された前記台形図形に対するタップ操作およびドラッグ操作を検出するタッチ操作検出手段と、
前記台形図形作成手段によって作成された前記台形図形に基づいて、前記フィルタ処理に用いられる前記フィルタに関するフィルタ特性を決定するフィルタ特性決定手段と、
を有し、
前記タッチ操作検出手段により、前記台形図形の前記天井部と前記スロープ部とが連結された角部に対するタップ操作が検出され、その直後に、前記スロープ部に対するドラッグ操作が検出された場合に、
前記台形図形作成手段は、前記ドラッグ操作に連動させて、前記角部を基準として前記スロープ部の傾斜角度を変更させた台形図形を作成すると共に、前記表示手段は、変更された前記台形図形を表示し、
前記フィルタ特性決定手段は、前記ドラッグ操作に伴って変更された前記スロープ部の傾斜角度に基づいて、前記フィルタ処理に用いられる前記フィルタのフィルタ係数を決定する
ことを特徴とするフィルタ特性決定装置。
前記タッチ操作検出機能において、前記タッチ操作検出手段により、前記スロープ部に対するタップ操作が検出され、その直後に、当該スロープ部に対するドラッグ操作が検出された場合に、
前記フィルタ特性決定装置の前記コンピュータに対し、
前記台形図形作成機能において、前記天井部のゲインおよび前記スロープ部の傾斜角度を維持したまま、前記角部の周波数位置を前記スロープ部に対する前記ドラッグ操作に伴って変更させた台形図形を作成させると共に、前記台形図形表示機能において、変更された前記台形図形を前記表示手段に表示させ、
前記フィルタ特性決定機能において、前記ドラッグ操作に伴って変更された前記角部の周波数位置に基づいて、前記フィルタ処理に用いられる前記フィルタのカットオフ周波数を決定させる
ことが可能な請求項5に記載のフィルタ特性決定装置におけるフィルタ特性決定プログラム。
前記タッチ操作検出機能において、前記タッチ操作検出手段により、前記天井部に対するタップ操作が検出され、その直後に、当該天井部に対するドラッグ操作が検出された場合に、
前記フィルタ特性決定装置の前記コンピュータに対し、
前記台形図形作成機能において、前記天井部のゲインの高さを前記ドラッグ操作に伴って変更させた台形図形を作成させると共に、前記台形図形表示機能において、変更された前記台形図形を前記表示手段に表示させ、
前記フィルタ特性決定機能において、前記ドラッグ操作に伴って変更された前記天井部のゲインの高さに基づいて、前記フィルタ処理に用いられる前記フィルタのゲインを決定させる
ことが可能な請求項5又は請求項6に記載のフィルタ特性決定装置におけるフィルタ特性決定プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した音響装置では、タッチパネルの表示画面上に表示されるパラメータを、ピンチイン操作またはピンチアウト操作、ドラッグ操作またはフリック操作を、一度行うだけで簡単に変更させることを特徴としている。このため、一度の操作で簡単に変更することが可能なように、隣接する2つのスロープ等を一体に変更させる方法しか提案されていない。例えば、2つのスロープの傾斜を2つのスロープで一体に変更する場合や、2つのスロープの傾斜角度を変えることなく交差するポイントCPだけを一体に変更する場合などしか、提案されていない。
【0012】
このため、スピーカ毎に個別にスロープの傾きを変更したり、スピーカ毎に個別にスロープの傾きの始点(カットオフ周波数)を変更したりするように、スピーカ毎に異なるフィルタのフィルタ特性を決定・変更することができなかった。具体的には、フィルタにおけるゲインの設定、ハイパスフィルタのカットオフ周波数の設定、ローパスフィルタのカットオフ周波数の設定、ハイパスフィルタにおけるスロープ特性の設定、ローパスフィルタにおけるスロープ特性の設定などを、フィルタ毎に個別に決定することができないという問題があった。
【0013】
また、上述した音響装置では、タッチパネルへのピンチイン操作やピンチアウト操作によって、パラメータの大きさを変更させた後に、変更されたパラメータに応じた図形を表示させることを特徴としている。このため、図形そのものを変更させることによってパラメータを変更・決定するものでなかった。従って、パラメータが変更された後の状態を、図形によって確認することは可能であっても、ユーザが直感的に図形そのものを変更することによって、パラメータの変更・決定を行うことができなかった。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、各スピーカのフィルタ特性を変更・選択するために、表示手段に表示される図形をタッチ操作することによって、フィルタ毎のフィルタ特性を個別に決定することが可能なフィルタ特性決定装置およびフィルタ特性決定プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明に係るフィルタ特性決定装置は、音響信号に対するフィルタ処理に用いられるフィルタの周波数特性に基づいて、当該フィルタの周波数特性においてゲインが最も高い部分を水平直線によって近似的に示した天井部と、前記フィルタの周波数特性における立ち上がり状態あるいは立ち下がり状態を傾斜直線により近似的に示したスロープ部とによって形成される台形図形を作成する台形図形作成手段と、該台形図形作成手段により作成された前記台形図形を表示させる表示手段と、該表示手段に表示された前記台形図形に対するタップ操作およびドラッグ操作を検出するタッチ操作検出手段と、前記台形図形作成手段によって作成された前記台形図形に基づいて、前記フィルタ処理に用いられる前記フィルタに関するフィルタ特性を決定するフィルタ特性決定手段とを有し、前記タッチ操作検出手段により、前記台形図形の前記天井部と前記スロープ部とが連結された角部に対するタップ操作が検出され、その直後に、前記スロープ部に対するドラッグ操作が検出された場合に、前記台形図形作成手段は、前記ドラッグ操作に連動させて、前記角部を基準として前記スロープ部の傾斜角度を変更させた台形図形を作成すると共に、前記表示手段は、変更された前記台形図形を表示し、前記フィルタ特性決定手段は、前記ドラッグ操作に伴って変更された前記スロープ部の傾斜角度に基づいて、前記フィルタ処理に用いられる前記フィルタのフィルタ係数を決定することを特徴とする。
【0016】
また、上述したフィルタ特性決定装置は、前記タッチ操作検出手段により、前記スロープ部に対するタップ操作が検出され、その直後に、当該スロープ部に対するドラッグ操作が検出された場合に、前記台形図形作成手段は、前記天井部のゲインおよび前記スロープ部の傾斜角度を維持したまま、前記角部の周波数位置を前記スロープ部に対する前記ドラッグ操作に伴って変更させた台形図形を作成すると共に、前記表示手段は、変更された前記台形図形を表示し、前記フィルタ特性決定手段は、前記ドラッグ操作に伴って変更された前記角部の周波数位置に基づいて、前記フィルタ処理に用いられる前記フィルタのカットオフ周波数を決定するものであってもよい。
【0017】
また、上述したフィルタ特性決定装置は、前記タッチ操作検出手段により、前記天井部に対するタップ操作が検出され、その直後に、当該天井部に対するドラッグ操作が検出された場合に、前記台形図形作成手段は、前記天井部のゲインの高さを前記ドラッグ操作に伴って変更させた台形図形を作成すると共に、前記表示手段は、変更された前記台形図形を表示し、前記フィルタ特性決定手段は、前記ドラッグ操作に伴って変更された前記天井部のゲインの高さに基づいて、前記フィルタ処理に用いられる前記フィルタのゲインを決定するものであってもよい。
【0018】
また、本発明に係るフィルタ特性決定装置におけるフィルタ特性決定プログラムは、音響信号に対するフィルタ処理に用いられるフィルタのフィルタ特性を決定するためのフィルタ特性決定装置におけるフィルタ特性決定プログラムであって、前記フィルタ特性決定装置のコンピュータに、前記フィルタの周波数特性に基づいて、当該フィルタの周波数特性においてゲインが最も高い部分を水平直線によって近似的に示した天井部と、前記フィルタの周波数特性における立ち上がり状態あるいは立ち下がり状態を傾斜直線により近似的に示したスロープ部とによって形成される台形図形を作成させる台形図形作成機能と、該台形図形作成機能によって作成された前記台形図形を表示手段に表示させる台形図形表示機能と、該台形図形表示機能によって前記表示手段に表示された前記台形図形に対するタップ操作およびドラッグ操作を、タッチ操作検出手段を用いて検出させるタッチ操作検出機能と、前記台形図形作成機能によって作成された前記台形図形に基づいて、前記フィルタ処理に用いられる前記フィルタのフィルタ特性を決定させるフィルタ特性決定機能とを実現させることが可能であって、前記タッチ操作検出機能において、前記タッチ操作検出手段により、前記台形図形の前記天井部と前記スロープ部とが連結された角部に対するタップ操作が検出され、その直後に、前記スロープ部に対するドラッグ操作が検出された場合に、前記台形図形作成機能において、前記ドラッグ操作に連動させて、前記角部を基準として前記スロープ部の傾斜角度を変更させた台形図形を作成すると共に、前記台形図形表示機能において、変更された前記台形図形を前記表示手段に表示させ、前記フィルタ特性決定機能において、前記ドラッグ操作に伴って変更された前記スロープ部の傾斜角度に基づいて、前記フィルタ処理に用いられる前記フィルタのフィルタ係数を決定させることが可能なプログラムであることを特徴とする。
【0019】
また、上述したフィルタ特性決定装置におけるフィルタ特性決定プログラムは、前記タッチ操作検出機能において、前記タッチ操作検出手段により、前記スロープ部に対するタップ操作が検出され、その直後に、当該スロープ部に対するドラッグ操作が検出された場合に、前記フィルタ特性決定装置の前記コンピュータに対し、前記台形図形作成機能において、前記天井部のゲインおよび前記スロープ部の傾斜角度を維持したまま、前記角部の周波数位置を前記スロープ部に対する前記ドラッグ操作に伴って変更させた台形図形を作成させると共に、前記台形図形表示機能において、変更された前記台形図形を前記表示手段に表示させ、前記フィルタ特性決定機能において、前記ドラッグ操作に伴って変更された前記角部の周波数位置に基づいて、前記フィルタ処理に用いられる前記フィルタのカットオフ周波数を決定させることが可能なプログラムであってもよい。
【0020】
さらに、上述したフィルタ特性決定装置におけるフィルタ特性決定プログラムは、前記タッチ操作検出機能において、前記タッチ操作検出手段により、前記天井部に対するタップ操作が検出され、その直後に、当該天井部に対するドラッグ操作が検出された場合に、前記フィルタ特性決定装置の前記コンピュータに対し、前記台形図形作成機能において、前記天井部のゲインの高さを前記ドラッグ操作に伴って変更させた台形図形を作成させると共に、前記台形図形表示機能において、変更された前記台形図形を前記表示手段に表示させ、前記フィルタ特性決定機能において、前記ドラッグ操作に伴って変更された前記天井部のゲインの高さに基づいて、前記フィルタ処理に用いられる前記フィルタのゲインを決定させることが可能なプログラムであってもよい。
【0021】
ここで、フィルタ特性とは音響信号に対してフィルタ処理を行うために設定すべきパラメータを意味しており、例えば、ゲイン、カットオフ周波数、フィルタ係数等が該当する。また、上述した台形図形は、天井部と、立ち上がり状態あるいは立ち下がり状態を示した少なくとも1つのスロープ部とを有していればよい。
【0022】
本発明に係るフィルタ特性決定装置およびフィルタ特性決定プログラムでは、表示手段に表示される台形図形の天井部、スロープ部あるいは角部をタップ操作またはドラッグ操作することによって、フィルタ処理に用いられるフィルタで設定されるゲイン、カットオフ周波数またはフィルタ係数を簡単に決定・変更することができる。
【0023】
さらに、本発明に係るフィルタ特性決定装置およびフィルタ特性決定プログラムでは、ドラッグ操作に応じて台形図形を変更させると、変更に伴ってフィルタのゲイン、カットオフ周波数またはフィルタ係数を変更することができる。このため、表示手段に表示される台形図形を変更することにより、ユーザが直感的にフィルタ特性を変更できるだけでなく、フィルタ特性の変更を台形図形の変化により視覚的に確認できる。さらに、スピーカ等より出力される音響信号音によって聴覚的に確認することが可能になる。
【0024】
また、台形図形は、1つのフィルタのフィルタ特性を示しているため、台形図形の天井部やスロープ部等をタップ操作およびドラッグ操作によって変更することにより、該当する1つのフィルタにおける、ゲイン、フィルタのカットオフ周波数、フィルタにおけるスロープ特性を示すフィルタ係数等を個別に決定・変更することが可能になる。
【0025】
また、上述したフィルタ特性決定装置は、前記フィルタ処理に用いることが可能な複数のフィルタの周波数特性が記録されるフィルタ記録手段を有し、前記フィルタ特性決定手段は、前記フィルタ記録手段に記録される前記複数のフィルタの周波数特性の中から、前記台形図形作成手段により作成された前記台形図形の前記スロープ部における立ち上がり状態あるいは立ち下がり状態に近い周波数特性を備えたフィルタを検出することにより、前記フィルタ処理に用いられる前記フィルタのフィルタ係数を決定するものであってもよい。
【0026】
さらに、上述したフィルタ特性決定装置におけるフィルタ特性決定プログラムは、前記フィルタ特性決定装置の前記コンピュータに対し、前記フィルタ特性決定機能において、前記フィルタ処理に用いることが可能な複数のフィルタの周波数特性が記録されるフィルタ記録手段の中から、前記台形図形作成機能において作成された前記台形図形の前記スロープ部における立ち上がり状態あるいは立ち下がり状態に近い周波数特性を備えたフィルタを検出することにより、前記フィルタ処理に用いられる前記フィルタのフィルタ係数を決定させることが可能なプログラムであってもよい。
【0027】
本発明に係るフィルタ特性決定装置およびフィルタ特性決定プログラムでは、フィルタ処理に用いることが可能な複数のフィルタの周波数特性が予めフィルタ記録手段に記録されており、フィルタ特性決定手段が、フィルタ記録手段に記録される複数の周波数特性の中から、作成された台形図形の形状から求められる周波数特性に近い周波数特性を検出して、フィルタ処理に用いられるフィルタのフィルタ係数を決定することができる。このため、ドラッグ操作に応じて台形図形が変更される場合であっても、該当するフィルタのフィルタ特性を迅速に検出してフィルタ係数の設定を決定・変更することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るフィルタ特性決定装置およびフィルタ特性決定プログラムでは、表示手段に表示される台形図形の天井部、スロープ部あるいは角部をタップ操作またはドラッグ操作することによって、フィルタ処理に用いられるフィルタで設定されるゲイン、カットオフ周波数またはフィルタ係数を簡単に決定・変更することができる。
【0029】
さらに、本発明に係るフィルタ特性決定装置およびフィルタ特性決定プログラムでは、ドラッグ操作に応じて台形図形を変更させると、変更に伴ってフィルタのゲイン、カットオフ周波数またはフィルタ係数を変更することができる。このため、表示手段に表示される台形図形を変更することにより、直感的にフィルタ特性を変更できるだけでなく、フィルタ特性の変更を台形図形の変化により視覚的に確認できる。さらに、スピーカ等より出力される音響信号音によって聴覚的に確認することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係るフィルタ特性決定装置に関し、音響処理装置を一例として示すと共に、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る音響処理装置の概略構成を示したブロック図である。
【0032】
音響処理装置(フィルタ特性決定装置)1は、フィルタ処理部10と、ツイータ14と、フルレンジスピーカ15と、サブウーハー16と、画像メモリ部(表示手段)31と、表示モニタ(表示手段)32と、タッチパネル部(タッチ操作検出手段)33と、記録部(フィルタ記録手段)34と、制御部(台形図形作成手段、フィルタ特性決定手段)35と、RAM(Random Access Memory)36と、ROM(Read Only Memory)37とを有している。
【0033】
ツイータ14は、高域の音響出力を行うためのスピーカである。フルレンジスピーカ15は、低域から高域までバランス良く音響出力を行うことが可能なスピーカである。サブウーハー16は、低域の音響出力を行うためのスピーカである。ツイータ14、フルレンジスピーカ15およびサブウーハー16では、出力に適した周波数帯域が異なっている。このため、フィルタ処理部10は、各スピーカ14〜16に最適な周波数帯域に、音源の音響信号を分割する役割を有している。
【0034】
フィルタ処理部10は、
図1に示すように、第1HPF部21と、第2HPF部22と、第3HPF部23と、第1LPF部24と、第2LPF部25と、第3LPF部26と、第1アンプ部11と、第2アンプ部12と、第3アンプ部13とにより概略構成される。音源からの音響信号は、第1HPF部21と、第2HPF部22と、第3HPF部23とに入力される。
【0035】
各HPF部21〜23は、カットオフ周波数を基準として高域側の信号出力を許容し、低域側の出力を制限するフィルタ(ハイパスフィルタ)である。
図2(a)は、第1HPF部21、第2HPF部22および第3HPF部23のフィルタ特性の一例を示した図である。第3HPF部23のカットオフ周波数SH3は、第2HPF部22のカットオフ周波数SH2よりも低い周波数の値に設定され、第2HPF部22のカットオフ周波数SH2は、第1HPF部21のカットオフ周波数SH1よりも低い周波数の値に設定されている。
【0036】
また、第1HPF部21〜第3HPF部23において設定されるカットオフ周波数およびフィルタ係数は、制御部35より受信するフィルタ係数および後述するカットオフ周波数情報に基づいて、決定・変更・設定される。第1HPF部21〜第3HPF部23によりハイパスフィルタ処理された音響信号は、それぞれ、第1LPF部24〜第3LPF部26へ出力される。
【0037】
各LPF部24〜26は、カットオフ周波数を基準として低域側の信号出力を許容し、高域側の出力を制限するフィルタ(ローパスフィルタ)である。
図2(b)は、第1LPF部24、第2LPF部25および第3LPF部26のフィルタ特性の一例を示した図である。第3LPF部26のカットオフ周波数SL3は、第2LPF部25のカットオフ周波数SL2よりも低い周波数の値に設定され、第2LPF部25のカットオフ周波数SL2は、第1LPF部24のカットオフ周波数SL1よりも低い周波数の値に設定されている。
【0038】
また、第1LPF部24〜第3LPF部26において設定されるカットオフ周波数およびフィルタ係数は、制御部35より受信するフィルタ係数および後述するカットオフ周波数情報に基づいて、決定・変更・設定される。第1LPF部24〜第3LPF部26によりローパスフィルタ処理された音響信号は、それぞれ、第1アンプ部11〜第3アンプ部13へ出力される。
【0039】
第1アンプ部11〜第3アンプ部13は、第1LPF部24〜第3LPF部26より出力された各音響信号のゲインを設定・調整する役割を行う。第1アンプ部11〜第3アンプ部13において設定・調整されるゲインは、制御部35より受信する後述のゲイン情報に基づいて、決定・変更・設定される。それぞれのアンプ部11〜13でゲイン調整された音響信号は、ツイータ14、フルレンジスピーカ15およびサブウーハー16へ出力される。
【0040】
画像メモリ部31は、表示モニタ32に表示するための画像データを一時的に格納する役割を有している。画像メモリ部31では、制御部35により作成される後述する台形図形の画像データを記録する。画像メモリ部31に記録された画像データは、順次、表示モニタ32に表示される。
【0041】
表示モニタ32は、制御部35で生成された画像データを、ユーザに視認可能に表示する役割を有している。表示モニタ32として、例えば、液晶モニタやCRTモニタなどを具体的に用いることができる。
【0042】
タッチパネル部33は、ユーザが指で表示モニタ32の画面上をタッチ操作したか否かを判断し、タッチ操作されたと判断した場合には、タッチ位置に基づいてユーザによる入力処理の内容を判断する役割を有している。タッチパネル部33は、タッチ検出部(タッチ操作検出手段)33aと、タッチコントロール部(タッチ操作検出手段)33bとを有している。
【0043】
タッチ検出部33aは、表示モニタ32の表面に積層される透明のタッチスイッチなどにより構成されている。タッチ検出部33aは、表示モニタ32の表示画面におけるタッチ操作の有無を、静電方式や感圧方式などの検出方式に基づいて検出する。タッチ検出部33aは、透明のタッチスイッチなどにより構成されるため、ユーザは、タッチ検出部33aを介して表示モニタ32に表示される画像を視認することが可能となっている。
【0044】
タッチコントロール部33bは、タッチ検出部33aと表示モニタ32との間に介在されている。タッチコントロール部33bは、タッチ検出部33aにおいて検出した信号(タッチ操作による信号)に基づいて、表示モニタ32におけるタッチ位置を短い検出間隔で検出(サンプリング)し、制御部35へ出力する。タッチコントロール部33bでは、検出されたタッチ位置と、そのタッチ位置の時間変化などに基づいて、ユーザが、タップ操作を行ったのか、ドラッグ操作を行ったのかを判断することが可能となっている。
【0045】
ここで、タップ操作とは、表示モニタ32に表示されるアイコン等を指等で短時間だけタッチする(触れる)操作を意味する。また、ドラッグ操作とは、表示モニタ32に表示されるアイコン等を指等でタッチした(触った)まま、指等を滑らせるようにしてアイコン等を移動させる操作を意味する。つまり、タッチパネル部33では、タッチ操作として、タップ操作とドラッグ操作との2種類の操作を検出することが可能となる。
【0046】
記録部34は、フィルタ処理部10によるフィルタ処理に用いられる複数のフィルタの周波数特性(フィルタ特性、フィルタ係数)を記録する役割を有している。記録部34は、ハードディスク、SSD、SDカードなどの一般的な補助記憶装置により構成される。記録部34には、HPF部21〜23およびLPF部24〜26のそれぞれのフィルタ処理に対応可能な複数のフィルタが記録される。
【0047】
制御部35は、一般的なCPU(Central Processing Unit)等により構成される。制御部35は、HPF部21〜23およびLPF部24〜26に用いられるフィルタの周波数特性(フィルタ特性)を模式的に示した台形図形を作成すると共に、タッチパネル部33により検出されたタッチ操作に応じて、台形図形の形状を変更する役割を有している。
【0048】
具体的に、制御部35は、第1HPF部21および第2LPF部24において用いられるハイパスフィルタとローパスフィルタとのフィルタ特性と、第1アンプ部11において設定されるゲイン特性とが合わされたフィルタの周波数特性(フィルタ特性)に該当する台形図形を作成する。また、制御部35は、第2HPF部22および第2LPF部25において用いられるフィルタ特性と、第2アンプ部12において設定されるゲイン特性とが合わされたフィルタの周波数特性(フィルタ特性)に該当する台形図形を作成する。さらに、制御部35は、第3HPF部23および第3LPF部26において用いられるフィルタ特性と、第3アンプ部13において設定されるゲイン特性とが合わされたフィルタの周波数特性(フィルタ特性)に該当する台形図形を作成する。
【0049】
ここで、台形図形は、
図3(a)に示すように、フィルタの周波数特性におけるゲインの高さを水平直線によって近似的に示した天井部と、フィルタの周波数特性における立ち上がり状態あるいは立ち下がり状態を傾斜直線により近似的に示したスロープ部とにより形成されている。台形図形の低域側のスロープ部は、HPF部21〜23における立ち上がり状態のスロープに該当し、高域側のスロープ部は、LPF部24〜26における立ち下がり状態のスロープに該当する。また、低域側のスロープ部と天井部とが連結された左側の角部は、HPF部21〜23におけるカットオフ周波数の周波数値に対応し、高域側のスロープ部と天井部とが連結された右側の角部は、LPF部24〜26におけるカットオフ周波数の周波数値に対応している。
【0050】
RAM36は、制御部35の作業エリアとしての役割を有している。例えば、タッチパネル部33により検出されたタッチ操作に応じて、台形図形の形状を変更する場合に、検出されたタッチ操作の内容等を一時的に記録させたり、スロープ部の傾斜角度に関する情報などを記録するために利用される。
【0051】
また、ROM37は、制御部35において実行される各種のプログラム等が記録されている。制御部35は、ROM37よりプログラムを読み込んで実行することにより各種の制御処理を行うことが可能となる。例えば、ROM37には、次述する
図4に示すようなプログラムが記録される。
【0052】
図3(a)は、フィルタ処理部10におけるフィルタの周波数特性(フィルタ特性)を、上述した台形図形によって示した図である。
図3(a)では、3つの台形図形が示されている。
図3(a)に示す左側の台形図形は、サブウーハー16用のフィルタの周波数特性を示した図であり、真ん中の台形図形は、フルレンジスピーカ15用のフィルタの周波数特性を示した図であり、右側の台形図形は、ツイータ14用のフィルタの周波数特性を示した図である。
【0053】
左側の台形図形における左側半分(天井部および左側スロープ部)は、第3HPF部23において設定されるフィルタのフィルタ特性を模式的に示したものである。左側の台形図形における右側半分(天井部および右側スロープ部)は、第3LPF部26において設定されるフィルタのフィルタ特性を模式的に示したものである。また、左側の台形図形における天井部の高さは、第3アンプ部13で設定されるゲインの値を模式的に示したものである。
【0054】
真ん中の台形図形における左側半分(天井部および左側スロープ部)は、第2HPF部22において設定されるフィルタのフィルタ特性を模式的に示したものである。真ん中の台形図形における右側半分(天井部および右側スロープ部)は、第2LPF部25において設定されるフィルタのフィルタ特性を模式的に示したものである。また、真ん中の台形図形における天井部の高さは、第2アンプ部12で設定されるゲインの値を模式的に示したものである。
【0055】
右側の台形図形における左側半分(天井部および左側スロープ部)は、第1HPF部21において設定されるフィルタのフィルタ特性を模式的に示したものである。右側の台形図形における右側半分(天井部および右側スロープ部)は、第1LPF部24において設定されるフィルタのフィルタ特性を模式的に示したものである。また、右側の台形図形における天井部の高さは、第1アンプ部11で設定されるゲインの値を模式的に示したものである。
【0056】
ユーザは、タッチパネル部33を用いて、
図3(a)に示された3つの台形図形から1つの台形図形を選択することが可能となっている。ユーザによって、いずれかの台形図形が選択された場合、制御部35は、
図3(b)に示すように、選択された台形図形が拡大された画像データを作成する。また。制御部35は、拡大された台形図形の天井部にタッチアイコン41を表示させ、右側のスロープ部にタッチアイコン42を表示させ、左側のスロープ部にタッチアイコン43を表示させ、右側の角部にタッチアイコン44を表示させ、左側の角部にタッチアイコン45を表示させるようにして台形図形の画像データを作成する。
【0057】
制御部35は、作成した画像データを、画像メモリ部31へ出力する。画像メモリ部31に出力された画像データは、表示モニタ32に表示される。
図3(b)では、
図3(a)に示した3つの台形図形のうち、真ん中の台形図形が選択されて拡大表示された状態が示されている。
【0058】
次に、制御部35における処理について説明する。
図4は、ユーザによって真ん中の台形図形が選択されて、
図3(b)に示すように真ん中の台形図形が表示モニタ32に拡大表示された状態において、制御部35で実行される処理内容を示したフローチャートである。
【0059】
制御部35は、タッチパネル部33によるタッチ操作の検出により、次の6種類のタッチ操作が行われたか否かの判断(ステップS.1〜ステップS.6)を、順番に行う。
【0060】
まず、制御部35は、
図5(a)に示すように、台形図形の天井部に示されたタッチアイコン41がタップ操作され、その直後に、タップされた天井部のタッチアイコン41が、
図5(c)に示すように、上下にドラッグ操作されたか否かを判断する(ステップS.1)。
【0061】
天井部のタッチアイコン41のタップ操作およびドラッグ操作が検出されなかった場合(ステップS.1においてNoの場合)、制御部35は、
図6(a)に示すように、台形図形の右側の角部のタッチアイコン44がタップ操作され、その直後に、
図6(c)に示すように、右側のスロープ部のバーアイコン47が円弧を描くようにしてドラッグ操作されたか否かを判断する(ステップS.2)。
【0062】
右側の角部のタップ操作および右側のスロープ部のドラッグ操作が検出されなかった場合(ステップS.2においてNoの場合)、制御部35は、台形図形の左側の角部のタッチアイコン45がタップ操作され、その直後に、円弧を描くようにして左側のスロープ部がドラッグ操作されたか否かを判断する(ステップS.3)。
【0063】
左側の角部のタップ操作および左側のスロープ部のドラッグ操作が検出されなかった場合(ステップS.3においてNoの場合)、制御部35は、
図9(a)に示すように、台形図形の右側のスロープ部のタッチアイコン42がタップ操作され、その直後に、
図9(c)に示すように、タップされた右側のスロープ部のタッチアイコン42が左右にドラッグ操作されたか否かを判断する(ステップS.4)。
【0064】
右側のスロープ部のタップ操作およびドラッグ操作が検出されなかった場合(ステップS.4においてNoの場合)、制御部35は、台形図形の左側のスロープ部のタッチアイコン43がタップ操作され、その直後にタップされた左側のスロープ部のタッチアイコン43が左右にドラッグ操作されたか否かを判断する(ステップS.5)。
【0065】
そして、左側のスロープ部のタップ操作およびドラッグ操作が検出されなかった場合(ステップS.5においてNoの場合)、制御部35は、タッチパネル部33によって、台形図形の天井部と、左右のスロープ部と、左右の角部に該当する位置に表示されるタッチアイコン41〜45以外の場所がタッチ操作されたか否かを判断する(ステップS.6)。
【0066】
タッチアイコン41〜45以外の場所がタッチ操作されなかった場合(ステップS.6においてNoの場合)、制御部35は、
図3(b)に示すように、台形図形の天井部と、左右のスロープ部と、左右の角部に該当する位置に、タッチ操作の目印となるタッチアイコン41〜45を表示し、真ん中の台形図形が拡大表示された画像データを作成して、画像メモリ部31へ出力する(ステップS.9)。画像メモリ部31へ出力された台形図形の画像データは、表示モニタ32に表示される。その後、制御部35は、処理を上述したステップS.1に移行して、繰り返しタッチパネル部33によるタッチ操作の検出処理を実行する。
【0067】
次に、上述したタッチ操作の判断内容(ステップS.1〜ステップS.6)に基づく、制御部35の処理について説明する。
【0068】
[天井部のタッチアイコンのタップ操作およびドラッグ操作が検出された場合]
天井部のタッチアイコン41のタップ操作およびドラッグ操作が検出された場合(ステップS.1においてYesの場合)、制御部35は、天井部のタッチアイコン41のタップ操作およびドラッグ操作に対応する台形図形を作成し、ゲイン情報をアンプ部に出力する処理を行う(ステップS.8)。
【0069】
より詳細には、
図5(a)に示すような天井部のタッチアイコン41のタップ操作に基づいて、
図5(b)に示すように、選択された台形図形のうち天井部以外のタッチアイコン42〜45の表示を消去して、天井部のタッチアイコン41だけを表示させると共に、天井部のタッチアイコン41に対して上下方向の矢印を重畳表示させた台形図形の画像データを作成して、画像メモリ部31へ出力する。そして、制御部35は、天井部のタッチアイコン41の上下方向へのドラッグ操作に応じて、
図5(c)に示すように、台形図形の天井部の高さ位置を変更させた台形図形の画像データを作成して、画像メモリ部31へ出力する。画像メモリ部31へ出力された各画像データは、順次、表示モニタ32に出力されて表示されることになる。
【0070】
天井部のタッチアイコン41の上下方向へのドラッグ操作に応じて、制御部35では、ドラッグ操作により変更されたゲインの値を求めて、決定されたゲインの値に関する情報(以下、ゲイン情報と称する)を、選択された台形図形に該当するアンプ部11〜13のいずれかのアンプ部に対して出力する。
【0071】
ゲインの値は、天井部のタッチアイコン41のドラッグ操作により変更された台形図形の高さの値によって決定される。具体的には、
図5(a)〜(c)に示す台形図形は、縦軸がゲインの値を示している。台形図形の天井部のタッチアイコン41を上下方向にドラッグすることにより、台形図形の高さが変わると共に、ゲインの値が上下に変化することになる。従って、制御部35は、天井部のタッチアイコン41のドラッグ操作に伴って変更された台形図形の高さの値に対応するゲインの値を繰り返し求めることにより、ドラッグ操作に伴って変更されるゲインの値を決定する。
【0072】
制御部35は、ゲインの値を決定する毎に、選択された台形図形に対応するアンプ部にゲイン情報を出力する。上述したように、
図3(b)では、真ん中の台形図形が選択されて拡大表示されている。この場合、制御部35は、真ん中の台形図形に該当するフルレンジスピーカ15用の第2アンプ部12を、対応するアンプ部と判断する。そして、制御部35は、ゲイン情報を第2アンプ部12へ出力する。第2アンプ部12では、制御部35より受信したゲイン情報に基づいて、第2アンプ部12におけるゲイン設定を変更する。この変更によって、フルレンジスピーカ15から出力される音のゲインを、天井部におけるタッチアイコン41のドラッグ操作に連動させて、リアルタイムに変更させることが可能となる。
【0073】
天井部におけるタッチアイコン41のドラッグ操作が終了すると(タッチパネル部33においてタッチ操作を検出しなくなった場合)、制御部35は、
図3(b)に示すように、台形図形の天井部と、左右のスロープ部と、左右の角部に該当する位置に、タッチ操作の目印となるタッチアイコン41〜45を表示し、真ん中の台形図形が拡大表示された画像データを作成して、画像メモリ部31へ出力する(ステップS.9)。画像メモリ部31へ出力された台形図形の画像データは、表示モニタ32に表示される。
【0074】
その後、制御部35は、処理を上述したステップS.1に移行して、繰り返しタッチパネル部33によるタッチ操作の検出処理を実行する。
【0075】
[右側の角部のタップ操作および右側のスロープ部のドラッグ操作が検出された場合]
右側の角部のタップ操作および右側のスロープ部のドラッグ操作が検出された場合(ステップS.2においてYesの場合)、制御部35は、右側の角部のタップ操作および右側のスロープ部のドラッグ操作に対応する台形図形を作成して、フィルタ係数をLPF部に出力する処理を行う(ステップS.10)。
【0076】
より詳細には、
図6(a)に示すような右側の角部におけるタッチアイコン44のタップ操作に基づいて、
図6(b)に示すように、選択された台形図形のうち右側の角部以外のタッチアイコン41〜43,45の表示を消去して、右側の角部のタッチアイコン44だけを表示させ、さらに、右側のスロープ部の傾斜状態を強調するバーアイコン47を表示させるとともに、スロープ部のドラッグ方向を円弧で示した矢印をバーアイコン47に重畳させた台形図形の画像データを作成して、画像メモリ部31へ出力する。そして、制御部35は、バーアイコン47のドラッグ操作に応じて、
図6(c)に示すように、台形図形のバーアイコン47およびスロープ部の傾斜角度を変更させた台形図形の画像データを作成して、画像メモリ部31へ出力する。
【0077】
ここで、バーアイコン47のドラッグ操作に応じて、変更されるバーアイコン47およびスロープ部の傾斜角度は、予め決められている。
図7(b)は、予め決められた傾斜角度を示した図であり、0度と、−6dB/oct,−12dB/oct,−18dB/oct,−24dB/oct,−36dB/oct,−48dB/oct,−72dB/octに該当する角度との8パターンの傾斜角度が予め設定されている。
【0078】
従って、制御部35は、ドラッグ操作に基づいて変更されるバーアイコン47およびスロープ部の傾斜角度が、上述した8パターンのうちどの傾斜角度に近似する角度であるかを判断して、台形図形の右側のスロープ部の傾斜角度を変更した台形図形の画像データを作成し、画像メモリ部31へ出力する。画像メモリ部31へ出力された各画像データは、順次、表示モニタ32に出力されて表示される。
【0079】
そして、制御部35では、上述した0度以外の7パターンのうち該当する傾斜角度に対応する立ち下がり状態を示すフィルタを、記録部34に記録されるフィルタの周波数特性に基づいて決定する。制御部35は、決定されたフィルタのフィルタ係数を、選択された台形図形に該当するLPF部24〜26のいずれかに出力する。
【0080】
ここで、記録部34には、上述した0度以外の7パターンの傾斜角度に対応する立ち下がり状態を備えたフィルタが予め記録されている。具体的には、
図8(a)に示すように、−6dB/oct,−12dB/oct,−18dB/oct,−24dB/oct,−36dB/oct,−48dB/oct,−72dB/octに該当する角度に対応する立ち下がりの周波数特性(フィルタ特性)を備えるフィルタが予め記録されている。従って、制御部35では、ドラッグ操作に基づいて傾斜角度が0度以外の7パターンのうちどのパターンに変更された場合であっても、瞬時に該当するフィルタのフィルタ係数を求めることができる。
【0081】
制御部35は、フィルタ係数を決定する毎に、選択された台形図形に対応するLPF部にフィルタ係数を出力する。上述したように、
図3(b)では、真ん中の台形図形が選択されて拡大表示されている。この場合、制御部35は、真ん中の台形図形に該当するフルレンジスピーカ15用の第2LPF部25を、対応するLPF部と判断する。そして、制御部35は、フィルタ係数を第2LPF部25へ出力する。第2LPF部25では、制御部35より受信したフィルタ係数に基づいて、第2LPF部25におけるフィルタのフィルタ係数を変更する。この変更によって、フルレンジスピーカ15から出力される音の高域側の周波数範囲を、右側のスロープ部におけるバーアイコン47のドラッグ操作に連動させて変更させることが可能となる。
【0082】
なお、
図7(a)に示すように、ユーザが、右側のスロープ部のバーアイコン47を水平になるまでドラッグした場合、制御部35は、傾斜角度が0度であると判断する。傾斜角度が0度である場合には、ユーザが高域側の周波数制限を望んでいないと判断することができる。このため、バーアイコン47のドラッグ操作により、0度の傾斜角度が決定された場合、制御部35は、高域側の周波数を制限するようなフィルタ処理を行わない旨の情報を、第2LPF部25に出力する。第2LPF部25では、受信した情報に基づき、フィルタ処理を行わない。
【0083】
右側のスロープ部におけるバーアイコン47のドラッグ操作が終了すると、制御部35は、
図3(b)に示すように、台形図形の天井部と、左右のスロープ部と、左右の角部に該当する位置に、タッチアイコン41〜45を表示し、真ん中の台形図形が拡大表示された画像データを作成して、画像メモリ部31へ出力する(ステップS.9)。画像メモリ部31へ出力された台形図形の画像データは、表示モニタ32に表示される。
【0084】
その後、制御部35は、処理を上述したステップS.1に移行して、繰り返しタッチパネル部33によるタッチ操作の検出処理を実行する。
【0085】
[左側の角部のタップ操作および左側のスロープ部のドラッグ操作が検出された場合]
左側の角部のタップ操作および左側のスロープ部のドラッグ操作が検出された場合(ステップS.3においてYesの場合)、制御部35は、左側の角部のタップ操作および左側のスロープ部のドラッグ操作に対応する台形図形を作成して、フィルタ係数をHPF部に出力する処理を行う(ステップS.11)。左側の角部のタップ操作および左側のスロープ部のドラッグ操作に対応する台形図形を作成する処理は、右側の角部のタップ操作および右側のスロープ部のドラッグ操作に対応する台形図形を作成する処理に対して、左右が逆になるように台形図形を作成する点で異なるだけであって、実質的に同じ処理を行うことになる。
【0086】
なお、左側のバーアイコンのドラッグ操作に応じて変更される、左側のバーアイコンおよび左側スロープ部の傾斜角度は、ステップS.10で説明したパターンと符号の異なる8パターンに、予め決められている。具体的には、0度と、6dB/oct,12dB/oct,18dB/oct,24dB/oct,36dB/oct,48dB/oct,72dB/octに該当する角度との8パターンの傾斜角度が予め設定されている。
【0087】
従って、制御部35は、ドラッグ操作に基づいて変更されるバーアイコンおよびスロープ部の傾斜角度が、上述した8パターンのうちどの傾斜角度に近似する角度であるかを判断して、台形図形の左側のスロープ部の傾斜角度を変更した台形図形の画像データを作成し、画像メモリ部31へ出力する。画像メモリ部31へ出力された各画像データは、順次、表示モニタ32に出力されて表示される。
【0088】
そして、制御部35では、ステップS.10と逆の符号になる0度以外の7パターンのうち該当する傾斜角度に対応する立ち上がり状態を示すフィルタを、記録部34に記録されるフィルタの周波数特性に基づいて決定する。制御部35は、決定されたフィルタのフィルタ係数を、選択された台形図形に該当するHPF部21〜23のいずれかに出力する。
【0089】
ここでも、記録部34には、ステップS.10と逆の符号になる0度以外の7パターンの傾斜角度に対応する立ち上がり状態を備えたフィルタが予め記録されている。具体的に、記録部34には、
図8(b)に示すように、6dB/oct,12dB/oct,18dB/oct,24dB/oct,36dB/oct,48dB/oct,72dB/octに該当する角度に対応する立ち上がりの周波数特性(フィルタ特性)を備えるフィルタが予め記録されている。従って、制御部35では、ドラッグ操作に基づいて傾斜角度が0度以外の7パターンのうちどのパターンに変更された場合であっても、瞬時に該当するフィルタのフィルタ係数を求めることができる。
【0090】
制御部35は、フィルタ係数を決定する毎に、選択された台形図形に対応するHPF部にフィルタ係数を出力する。上述したように、
図3(b)では、真ん中の台形図形が選択されて台形図形が拡大表示されている。この場合、制御部35は、真ん中の台形図形に該当するフルレンジスピーカ15用の第2HPF部22を、対応するHPF部と判断する。そして、制御部35は、フィルタ係数を第2HPF部22へ出力する。第2HPF部22では、制御部35より受信したフィルタ係数に基づいて、第2HPF部22におけるフィルタのフィルタ係数を変更する。この変更によって、フルレンジスピーカ15から出力される音の低域側の周波数範囲を、左側のスロープ部におけるバーアイコンのドラッグ操作に連動させて変更させることが可能となる。
【0091】
なお、ステップS.10と同様に、傾斜角度が0度である場合には、ユーザが低域側の周波数制限を望んでいないと判断することができる。このため、バーアイコンのドラッグ操作により、0度の傾斜角度が決定された場合、制御部35は、低域側の周波数を制限するようなフィルタ処理を行わない旨の情報を、第2HPF部22に出力する。第2HPF部22では、受信した情報に基づき、フィルタ処理を行わない。
【0092】
左側のスロープ部におけるバーアイコンのドラッグ操作が終了すると、制御部35は、
図3(b)に示すように、台形図形の天井部と、左右のスロープ部と、左右の角部に該当する位置に、タッチ操作の目安となるタッチアイコン41〜45を表示し、真ん中の台形図形が拡大表示された画像データを作成して、画像メモリ部31へ出力する(ステップS.9)。画像メモリ部31へ出力された台形図形の画像データは、表示モニタ32に表示される。
【0093】
その後、制御部35は、処理を上述したステップS.1に移行して、繰り返しタッチパネル部33によるタッチ操作の検出処理を実行する。
【0094】
[右側のスロープ部のタップ操作およびドラッグ操作が検出された場合]
右側のスロープ部のタップ操作およびドラッグ操作が検出された場合(ステップS.4においてYesの場合)、制御部35は、右側のスロープ部のタップ操作およびドラッグ操作に対応する台形図形を作成し、カットオフ周波数情報をLPF部に出力する処理を行う(ステップS.12)。
【0095】
より詳細には、
図9(a)に示すような右側のスロープ部におけるタッチアイコン42のタップ操作に基づいて、
図9(b)に示すように、選択された台形図形のうち右側のスロープ以外のタッチアイコン41,43〜45の表示を消去して、右側のスロープ部のタッチアイコン42だけを表示させると共に、右側のスロープ部のタッチアイコン42に対して左右方向の矢印を重畳表示させた台形図形の画像データを作成して、画像メモリ部31へ出力する。そして、制御部35は、右側のスロープ部におけるタッチアイコン42の左右方向へのドラッグ操作に応じて、
図9(c)に示すように、台形図形の天井部の高さ(ゲイン)と右側のスロープ部の傾斜角度とを維持したままの状態で、右側のスロープ部を左右にスライド(移動)させた台形図形の画像データを作成して、画像メモリ部31へ出力する。画像メモリ部31へ出力された各画像データは、順次、表示モニタ32に出力されて表示される。
【0096】
右側のスロープ部におけるタッチアイコン42の左右方向へのドラッグ操作に応じて、制御部35では、ドラッグ操作により変更されたカットオフ周波数の値を求める。さらに、制御部35は、求められたカットオフ周波数の値に関する情報(以下、カットオフ周波数情報と称する)を、選択された台形図形に該当するLPF部24〜26のいずれかのLPF部に対して出力する処理を行う。
【0097】
カットオフ周波数の値は、右側のスロープ部のタッチアイコン42のドラッグ操作により変更された台形図形の右側の角部の左右位置(周波数位置)によって決定される。具体的には、
図9(a)〜(c)に示す台形図形は、横軸が周波数の値を示しており、台形図形の右側のスロープ部のタッチアイコン42を左右方向にドラッグすることにより、スロープ部の傾斜角度を維持したままスロープ部が左右にスライド(移動)されることになる、このため、右側のスロープ部の左右移動に伴って、右側の角部の周波数が左右に移動されて、右側の角部で示されるLPF部24〜26のカットオフ周波数の値が変化することになる。従って、制御部35は、右側のスロープ部のタッチアイコン42のドラッグ操作により変更された右側の角部の移動位置(周波数位置)に対応するカットオフ周波数の値を繰り返し求めることにより、ドラッグ操作に伴って変更されるカットオフ周波数の値を決定する。
【0098】
制御部35は、カットオフ周波数の値を決定する毎に、選択された台形図形に対応するLPF部にカットオフ周波数情報を出力する。上述したように、
図3(b)では、真ん中の台形図形が選択されて台形図形が拡大表示されている。この場合、制御部35は、真ん中の台形図形に該当するフルレンジスピーカ15用の第2LPF部25を、対応するLPF部と判断する。そして、制御部35は、カットオフ周波数情報を第2LPF部25へ出力する。第2LPF部25では、制御部35より受信したカットオフ周波数に基づいて、第2LPF部25におけるカットオフ周波数を変更する。この変更によって、フルレンジスピーカ15から出力される音の高域側の周波数を、右側のスロープ部におけるタッチアイコン42のドラッグ操作に連動させて変更させることが可能となる。
【0099】
右側のスロープ部におけるタッチアイコンのドラッグ操作が終了すると、制御部35は、
図3(a)に示すように、台形図形の天井部と、左右のスロープ部と、左右の角部に該当する位置に、タッチ操作の目安となるタッチアイコン41〜45を表示し、真ん中の台形図形が拡大表示された画像データを作成して、画像メモリ部31へ出力する(ステップS.9)。画像メモリ部31へ出力された台形図形の画像データは、表示モニタ32に表示される。
【0100】
その後、制御部35は、処理を上述したステップS.1に移行して、繰り返しタッチパネル部33によるタッチ操作の検出処理を実行する。
【0101】
[左側のスロープ部のタップ操作およびドラッグ操作が検出された場合]
左側のスロープ部のタップ操作およびドラッグ操作が検出された場合(ステップS.5においてYesの場合)、制御部35は、左側のスロープ部のタップ操作およびドラッグ操作に対応する台形図形を作成して、カットオフ周波数情報をHPF部に出力する処理を行う(ステップS.13)。
【0102】
左側のスロープ部のタップ操作およびドラッグ操作に対応する台形図形を作成する処理は、右側のスロープ部のタップ操作およびドラッグ操作に対応する台形図形を作成する処理に対して、左右が逆になるように台形図形を作成する点で異なるだけであって、実質的に同じ処理を行うことになる。
【0103】
そして、左側のスロープ部におけるタッチアイコン43の左右方向へのドラッグ操作に応じて、制御部35では、ドラッグ操作により変更されたカットオフ周波数の値を求めて、求められたカットオフ周波数情報を、選択された台形図形に該当するHPF部21〜23のいずれかのHPF部に対して出力する処理を行う。
【0104】
制御部35は、右側のスロープ部のタップ操作およびドラッグ操作が検出された場合と同様にして、左側のスロープ部のタッチアイコン43のドラッグ操作により変更された左側の角部の移動位置(周波数位置)に対応するカットオフ周波数の値を繰り返し求めることにより、ドラッグ操作に伴って変更されるカットオフ周波数の値を決定する。
【0105】
制御部35は、カットオフ周波数の値を決定する毎に、選択された台形図形に対応するHPF部にカットオフ周波数情報を出力する。上述したように、
図3(a)では、真ん中の台形図形が選択されて台形図形が拡大表示されている。この場合、制御部35は、真ん中の台形図形に該当するフルレンジスピーカ15用の第2HPF部22を、対応するHPF部と判断する。そして、制御部35は、カットオフ周波数情報を第2HPF部22へ出力する。第2HPF部22では、制御部35より受信したカットオフ周波数に基づいて、第2HPF部22におけるカットオフ周波数を変更する。この変更によって、フルレンジスピーカ15から出力される音の低域側の周波数を、左側のスロープ部におけるタッチアイコン43のドラッグ操作に連動させて変更させることが可能となる。
【0106】
左側のスロープ部におけるタッチアイコン43のドラッグ操作が終了すると、制御部35は、
図3(b)に示すように、台形図形の天井部と、左右のスロープ部と、左右の角部に該当する位置に、タッチ操作の目安となるタッチアイコン41〜45を表示し、真ん中の台形図形が拡大表示された画像データを作成して、画像メモリ部31へ出力する(ステップS.9)。画像メモリ部31へ出力された台形図形の画像データは、表示モニタ32に表示される。
【0107】
その後、制御部35は、処理を上述したステップS.1に移行して、繰り返しタッチパネル部33によるタッチ操作の検出処理を実行する。
【0108】
[タッチアイコン以外の場所がタッチ操作された場合]
タッチアイコン41〜45以外の場所がタッチ操作された場合(ステップS.6においてYesの場合)、制御部35は、
図3(a)に示す3つの台形図形から1つの台形図形を選択することが可能な画面表示データを作成して、画像メモリ部31に出力し(ステップS.7)、選択された台形図形に基づくフィルタ係数の調整処理を終了する。
【0109】
以上、説明したように、本実施の形態に係る音響処理装置1では、表示モニタ32に表示された台形図形の天井部のタッチアイコン41、左右のスロープ部のタッチアイコン等42,43,47、あるいは左右の角部のタッチアイコン44,45を、タップ操作およびドラッグ操作することによって、フィルタ処理部10において設定されるゲイン、カットオフ周波数、フィルタ係数を視覚的に確認しながら設定・変更・決定することができる。
【0110】
特に、タッチアイコン等41〜45,47をドラッグ操作して直感的に台形形状を変更することによって、台形図形の変更に対応してゲイン、カットオフ周波数またはフィルタ係数がリアルタイムに変更される。このため、台形図形そのものを変更させることによって、フィルタのフィルタ特性を直接的に変更・設定することが可能である。
【0111】
また、音響処理装置1では、タッチアイコン等41〜45,47のドラッグ操作に応じて、リアルタイムに台形図形が変更・表示されると共に、台形図形の変更に伴って、ゲイン、カットオフ周波数またはフィルタ係数がリアルタイムに変更されて、スピーカ14〜16より、フィルタ処理された音が出力される。このため、ユーザは表示モニタ32に表示される台形図形をタッチ操作することによって、直感的に台形形状を変更することができるだけでなく、現状のフィルタ特性および変更しようとするフィルタ特性を台形図形で視覚的に確認することができる。さらに、スピーカ14〜16より出力される音によって聴覚的に確認することが可能になる。
【0112】
さらに、スピーカ14〜16毎に個別に台形図形を選択表示させて、フィルタ特性の設定・変更を行うことができる。このため、他の台形図形と関係なく、選択された台形図形の天井部やスロープ部等のタッチアイコン等41〜45,47のタップ操作およびドラッグ操作によって、スピーカ14〜16毎に個別に、フィルタ処理部10におけるゲイン、ハイパスフィルタのカットオフ周波数、ローパスフィルタのカットオフ周波数、ハイパスフィルタにおけるスロープ特性、ローパスフィルタにおけるスロープ特性を、簡単に設定・変更・決定することが可能になる。
【0113】
以上、本発明に係るフィルタ特性決定装置およびフィルタ特性決定プログラムについて説明を行ったが、本発明に係るフィルタ特性決定装置およびフィルタ特性決定プログラムは、実施の形態に示した例には限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても実施の形態において示した音響処理装置1と同様の効果を奏することが可能である。
【0114】
例えば、実施の形態に係る音響処理装置1では、フィルタ処理部10、ツイータ14、フルレンジスピーカ15、サブウーハー16が構成として含まれる場合について説明した。しかしながら、本発明に係るフィルタ特性決定装置およびフィルタ特性決定プログラムでは、必ずしも、フィルタ処理部10、ツイータ14、フルレンジスピーカ15、サブウーハー16を構成として含んでいる必要はない。
【0115】
近時では、スマートフォンやタブレット端末等を用いて音響処理を行う方法も提案されている。例えば、フィルタ処理部10およびスピーカ14〜16が設けられるオーディオ出力装置に対して、Bluetooth(登録商標)等の無線技術等を用いて、データを送受信可能に接続し、スマートフォン等の表示画面上に、実施の形態に示した台形図形等を表示させ、タップ操作およびドラッグ操作によって台形図形を変更させると同時に、オーディオ出力装置に対してゲイン、フィルタ係数およびカットオフ周波数を出力する構成にすることも可能である。オーディオ出力装置では、受信したゲイン、フィルタ係数およびカットオフ周波数に基づいてフィルタ処理部10におけるフィルタ特性を変更して、スピーカ14〜16より音響信号を出力することにより、音響処理を行うことができる。
【0116】
このような構成の場合には、スマートフォンあるいはタブレット端末等が備えるハードウェアによって、実質的に、制御部35、RAM36、ROM37、記録部34、画像メモリ部31、表示モニタ32およびタッチパネル部33に該当する機能を実行させることができる。このため、本発明に係るフィルタ特性決定プログラムをスマートフォンあるいはタブレット端末等のアプリケーションソフトとして提供することにより、スマートフォンあるいはタブレット端末等を、本発明に係るフィルタ特性決定装置およびフィルタ特性決定プログラムとして機能させることが可能となる。