特許第6535535号(P6535535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6535535フィルムのパターン転写装置およびフィルムのパターン転写方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6535535
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】フィルムのパターン転写装置およびフィルムのパターン転写方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/02 20060101AFI20190617BHJP
【FI】
   B29C59/02 Z
【請求項の数】7
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-149417(P2015-149417)
(22)【出願日】2015年7月29日
(65)【公開番号】特開2017-30160(P2017-30160A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】東芝機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 光明
(72)【発明者】
【氏名】小久保 光典
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/010516(WO,A1)
【文献】 特開2004−322408(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/090186(WO,A1)
【文献】 特開2010−275337(JP,A)
【文献】 特開平02−059072(JP,A)
【文献】 特開平01−042218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/00−59/18
B32B 1/00、27/00
B65D 1/00、 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルムの両面に液状の樹脂を塗布して樹脂層を形成する樹脂層形成部と、
前記ベースフィルムの樹脂層に賦形フィルムを押し付け、前記賦形フィルムの賦形面を前記樹脂層に転写することにより、前記樹脂層の表面にパターンを形成するパターン転写部と、
前記パターンが形成された樹脂層を硬化させ、前記ベースフィルムに固着させることにより転写フィルムを生成する樹脂層硬化部と、
前記転写フィルムから前記賦形フィルムを剥離させる賦形フィルム剥離部と、
前記ベースフィルムを繰り出し、前記樹脂層形成部と前記パターン転写部と前記樹脂層硬化部と前記賦形フィルム剥離部とを通過させ、生成された前記転写フィルムを巻き取るフィルム搬送部と、を備え、
前記フィルム搬送部は、前記樹脂層形成部の手前で前記ベースフィルムの搬送方向を重力方向に沿って上から下へ向けるガイドロールを有し、
前記樹脂層形成部は、前記ベースフィルムを隔てて両側に1つずつ、互いの樹脂吐出口の位置を上下にずらして配置される一対のダイを有し、
前記一対のダイのうち、上側に配置されるダイは、前記ベースフィルムの前記ガイドロールと接触しない面側に配置される
フィルムのパターン転写装置。
【請求項2】
前記一対のダイの一方と他方および前記ガイドロールを個別にもしくはまとめて、前記パターン転写部、前記樹脂層硬化部、および前記賦形フィルム剥離部に対して水平方向へ移動させる移動機構を備える
請求項1に記載のフィルムのパターン転写装置。
【請求項3】
前記パターン転写部と前記樹脂層硬化部とは、前記ベースフィルムおよび前記賦形フィルムを通す第1の通し孔が形成された第1の床材で隔てられており、
前記移動機構は、前記ベースフィルムおよび前記賦形フィルムが前記第1の通し孔の中で重力方向に沿うように、前記一対のダイの一方と他方および前記ガイドロールを移動させる
請求項2に記載のフィルムのパターン転写装置。
【請求項4】
前記樹脂層形成部と前記パターン転写部とは、前記ベースフィルムを通す第2の通し孔が形成された第2の床材で隔てられており、
前記移動機構は、前記ベースフィルムが前記第2の通し孔の中で重力方向に沿うように、前記一対のダイの一方と他方および前記ガイドロールを移動させる
請求項3に記載のフィルムのパターン転写装置。
【請求項5】
前記フィルム搬送部は、
前記樹脂層が形成される前のベースフィルムを繰り出す繰出軸と、
前記転写フィルムを巻き取る巻取軸と、
前記繰出軸と前記巻取軸との間で、前記ガイドロールとともに前記ベースフィルムもしくは前記転写フィルムの搬送方向を変更する複数の中継ロールと、を有し、
前記複数の中継ロールのうちの1つは、重力方向に沿って前記ガイドロールの下方に配置される
請求項1から4のいずれかに記載のフィルムのパターン転写装置。
【請求項6】
前記ガイドロールの下方に配置される中継ロールは、前記賦形フィルム剥離部の先で前記転写フィルムの搬送方向を重力方向から別方向へ向ける
請求項5に記載のフィルムのパターン転写装置。
【請求項7】
ベースフィルムの両面に液状の樹脂を塗布して樹脂層を形成することと、
前記ベースフィルムの樹脂層に賦形フィルムを押し付け、前記賦形フィルムの賦形面を前記樹脂層に転写することにより、前記樹脂層の表面にパターンを形成することと、
前記パターンが形成された樹脂層を硬化させ、前記ベースフィルムに固着させることにより転写フィルムを生成することと、
前記転写フィルムから前記賦形フィルムを剥離させることと、
前記ベースフィルムを繰り出し、繰り出した前記ベースフィルムへの前記樹脂層の形成と、前記樹脂層への前記賦形面の転写および前記パターンの形成と、前記樹脂層の硬化および前記ベースフィルムへの固着と、前記転写フィルムからの前記賦形フィルムの剥離とを経て、生成された前記転写フィルムを巻き取ることと、を含み、
前記ベースフィルムに前記樹脂層を形成する手前で、前記ベースフィルムをカーブさせて、前記ベースフィルムの搬送方向を重力方向に沿って上から下へ向けるように搬送し、
前記ベースフィルムに前記樹脂層を形成する際には、搬送方向の上側で前記ベースフィルムの表面となるカーブの外周側の面に前記樹脂層を形成し、搬送方向の下側で前記ベースフィルムの裏面となるカーブの内周側の面に前記樹脂層を形成する
フィルムにパターンを転写する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、パターン転写のベースとなるフィルム(ベースフィルム)の両面にフィルム状の型(賦形フィルムの賦形面)を同時に転写する装置、いわゆるロールツーロール式両面同時転写装置およびその転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ベースフィルムの両面に光反応性組成物を塗布して光反応性組成物層を形成し、形成した光反応性組成物層の上に光透過性フィルムを貼り合わせ、光を照射して該組成物層を硬化させた後、貼り合わせた光透過性フィルムを剥離する装置が開示されている。かかる装置は、光透過性フィルムの繰出機と巻取機を、ベースフィルムの一面側および他面側の双方にそれぞれ備えている。したがって、フィルム面に紫外線硬化性を持つ透明樹脂などで樹脂層が形成され、該樹脂層の表面が賦形面(凹凸部)として加工されている賦形フィルムを用いれば、ベースフィルムの光反応性組成物層に賦形面を転写し、ベースフィルムに所定のパターン(賦形面の凹凸を反転させた凹凸部)を両面同時に形成することが可能である。
【0003】
このように、特許文献1に記載の装置は、賦形面を転写したパターンをベースフィルムの両面に同時に形成する装置(両面同時転写式装置)として使用可能であり、この場合の動作について説明する。かかる装置において、ベースフィルムは、繰出ロールから水平方向(重力方向と直交する平面上の所定方向)に繰り出される。この場合例えば、繰り出されたベースフィルムの上側および下側から上下のフィルム面に対して紫外線硬化性樹脂を塗布し、紫外線硬化性樹脂の層(以下、単に樹脂層という)を形成する。なお、上下は重力方向を基準に定義し、以下の説明では便宜上、ベースフィルムの上側のフィルム面を表面、下側のフィルム面を裏面という。
【0004】
次いで、ベースフィルムの表面の樹脂層に表面用の賦形フィルムを貼り合わせる。その際、表面用の賦形フィルムは、賦形面をベースフィルムの表面に向ける。同時に、ベースフィルムの裏面の樹脂層に裏面用の賦形フィルムを貼り合わせる。その際、裏面用の賦形フィルムは、賦形面をベースフィルムの裏面に向ける。貼り合わせ部位には押圧ロールが配置されており、上下からベースフィルムに賦形フィルムを押し付けることで、賦形フィルムの賦形面がベースフィルムの表面および裏面の樹脂層にそれぞれ転写されるようになっている。これにより、ベースフィルムの樹脂層の表面にパターンが形成される。
【0005】
そして、上下から賦形フィルムに挟まれた状態でベースフィルムの表面および裏面の樹脂層に樹脂層硬化部の光源から紫外線を照射し、パターンが形成された樹脂層を硬化させてベースフィルムに固着させる。これにより、樹脂層の表面にパターンを有するベースフィルムとして、転写フィルムが生成される。その後、転写フィルムから賦形フィルムを剥離ロールで剥離する。このように、特許文献1に記載の装置によれば、賦形フィルムから転写されたパターンをベースフィルムの両面に同時に形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−322408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ベースフィルムの両面に同一のパターンを形成する場合、特許文献1に記載の装置においては次のような問題が生じる。
【0008】
特許文献1に記載の装置では、ベースフィルムが水平に搬送され、ベースフィルムに対する紫外線硬化性樹脂の塗布は上下から行われている。紫外線硬化性樹脂の塗液は、塗布された後も硬化するまでは流動性を持つため、平面的に広がっていく(レベリング)。レベリングにより、ベースフィルムに形成される樹脂層の均一性が高められる。ベースフィルムは連続的に搬送されているため、塗布された紫外線硬化性樹脂は搬送方向へは広がり易い。これに対し、ベースフィルムのフィルム面上で搬送方向と直交する方向(以下、幅方向という)には、塗布された紫外線硬化性樹脂が広がり難い。すなわち、ベースフィルムの上側(表面側)では、樹脂層の形成時に塗液が重力方向(下向き)に吐出されるので幅方向には比較的広がり易い。一方、ベースフィルムの下側(裏面側)では塗液が重力方向とは反対方向(上向き)に吐出されるので幅方向には広がり難い。したがって、ベースフィルムの表面と裏面とでレベリングの程度に差が生じ、表面と裏面の樹脂層の厚みなどに違いが生じる可能性がある。
【0009】
ベースフィルムに賦形フィルムを押し付けて樹脂層に賦形面を転写するパターン転写部(押圧ロールの配置部位)では、ベースフィルムの表面には上から、裏面には下から賦形フィルムが供給される。賦形フィルムの賦形面とベースフィルムの樹脂層とが合流する部分では、賦形フィルムの賦形面にベースフィルムの樹脂層をなす紫外線硬化性樹脂が接触するが、その際、賦形面と樹脂層の間のエア(空気)が紫外線硬化性樹脂に押し出されて賦形面の外へ抜けていく。したがって、賦形面と樹脂層の間でエアが抜け切らないうちに紫外線の照射により樹脂層が硬化されると、樹脂層に形成されるパターンの精度が残ったエアによって低下するおそれがある。特に、ベースフィルムの搬送速度が速い場合、賦形面と樹脂層の間のエアが抜け切る前に樹脂層が硬化されて、樹脂層のパターン精度がさらに低下し易い。賦形面と樹脂層の間のエアは浮力によって上昇するが、ベースフィルムの裏面側は、上部がベースフィルムで遮られている分だけ、表面側よりもエアが抜け難い。このため、ベースフィルムの裏面側で賦形面と樹脂層の間のエアを抜くために、ベースフィルムの搬送速度を抑制せざるを得ない場合がある。
【0010】
また、パターン転写部では、ベースフィルムの樹脂層に貼り合わされた上下の賦形フィルムを挟むように、押圧ロールが上下に並んで配置されている。押圧ロールは、自重により下方へ撓むように変形する。したがって、ベースフィルムおよび樹脂層は、表面側の幅方向の中央部が下に撓むとともに、その分だけ裏面側が下に出っ張るように変形する。この状態で樹脂層が硬化すると、ベースフィルムが下方へ湾曲した状態となるおそれがあり、結果的に表面および裏面のパターンの形態に相違が生じ易くなる。
【0011】
パターンが形成された樹脂層を硬化させ、ベースフィルムに固着させる樹脂層硬化部には、樹脂層に紫外線を照射する紫外線照射ランプが上下に配置されている。紫外線照射ランプは、紫外線以外の波長の光も発生させるため、また樹脂層が硬化する際には、重合熱が発生するため、樹脂層硬化部の雰囲気温度が上昇する。暖められた空気は上へ上がっていく。したがって、ベースフィルムの表面側では、紫外線照射ランプの方へ上昇気流が生じるが、裏面側は、ベースフィルムにより上昇気流が遮られて熱がこもり易い。このため、ベースフィルムの表面側と裏面側とで雰囲気温度に差が生じ、表面側の樹脂層と裏面側の樹脂層とで硬化性に相違が生じる場合がある。この場合、表面および裏面のパターンの形態に相違が生じるおそれがある。
【0012】
樹脂層硬化部では、ベースフィルムおよび賦形フィルムの張力が小さいと、これらのフィルムは自重により下方へたるむように変形する。このような自重による変形は、搬送方向および幅方向のいずれにも発生するが、幅方向は押圧ロールによって支持されているので、搬送方向のたるみが問題となる。特に、低張力でベースフィルムおよび賦形フィルムを搬送しなければならない場合、これらのフィルムが搬送方向に大きくたるんだ状態となるおそれがある。このような状態では、ベースフィルムの表面側には圧縮する力が作用し、裏面側には引っ張る力が作用する。したがって、この状態で樹脂層が硬化すると、ベースフィルムの表面側と裏面側に作用する力が異なるため、表面と裏面のパターンの形態に相違が生じるおそれがある。
【0013】
このように、特許文献1に記載の装置では、ベースフィルムの両面に賦形フィルムの賦形面を転写したパターンを形成する際、その形成環境の条件が表面側(上側)と裏面側(下側)で一致しない場合が多い。
【0014】
この場合、ベースフィルムに樹脂層を形成する樹脂層形成部から、パターン転写部、および樹脂層硬化部まで、ベースフィルムおよびベースフィルムにパターンを形成した樹脂層が設けられた転写フィルムを重力方向の上方から下方へ搬送することで、上述したような問題の解決を図ることが考えられる。
【0015】
このような装置構成とすれば、ベースフィルムの一面側と他面側における重力の影響を一致させることが可能となる。その一方で、樹脂層形成部、パターン転写部、および樹脂層硬化部を重力方向に沿って配置する必要があり、その分だけ装置の高さ(重力方向に沿った寸法)が大きくなる。したがって、装置の高さを大きくした場合であっても、ベースフィルムおよび転写フィルムの搬送経路(パスライン)を確実に重力方向に沿わせることが求められる。
【0016】
そこで、フィルムを重力方向に沿って上から下へ安定して搬送させるとともに、フィルムを確実に重力方向に沿わせた状態で、その両面に対して同時にパターンを形成することが可能なフィルムのパターン転写装置およびフィルムのパターン転写方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
実施形態のフィルムのパターン転写装置は、ベースフィルムの両面に液状の樹脂を塗布して樹脂層を形成する樹脂層形成部と、ベースフィルムの樹脂層に賦形フィルムを押し付け、賦形フィルムの賦形面を樹脂層に転写することにより、樹脂層の表面にパターンを形成するパターン転写部と、パターンが形成された樹脂層を硬化させ、ベースフィルムに固着させることにより転写フィルムを生成する樹脂層硬化部と、転写フィルムから賦形フィルムを剥離させる賦形フィルム剥離部と、ベースフィルムを繰り出し、樹脂層形成部とパターン転写部と樹脂層硬化部と賦形フィルム剥離部とを通過させ、生成された転写フィルムを巻き取るフィルム搬送部と、を備える。フィルム搬送部は、樹脂層形成部の手前でベースフィルムの搬送方向を重力方向に沿って上から下へ向けるガイドロールを有する。樹脂層形成部は、ベースフィルムを隔てて両側に1つずつ、互いの樹脂吐出口の位置を上下にずらして配置される一対のダイを有する。一対のダイのうち、上側に配置されるダイは、ベースフィルムのガイドロールと接触しない面側に配置する。
【発明の効果】
【0018】
実施形態のフィルムのパターン転写装置およびフィルムのパターン転写方法によれば、フィルムを重力方向に沿って上から下へ安定して搬送させることができる。また、フィルムを確実に重力方向に沿わせた状態で、その両面に対して同時にパターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態のフィルムのパターン転写方法を実施するためのフィルムのパターン転写装置を示す概略構成図。
図2】実施形態のフィルムのパターン転写装置において、ベースフィルムの樹脂層に賦形フィルムの賦形面を転写したパターンを持つ転写フィルムが生成され、転写フィルムから賦形フィルムが剥離されるまでの態様を示す概略構成図。
図3】賦形フィルムに賦形面を形成する装置(一般的なロールツーロール式片面UV転写装置)を示す概略構成図。
図4】賦形面およびパターンの態様例を示す図であって、(a)はラインアンドスペース(縦溝もしくは横溝)とした賦形面の平面図、(b)は(a)の矢印A41部分における賦形面の断面を矢印方向から示す図、(c)は(a)のラインアンドスペースに対応するパターンを(b)と同様の断面で示す図、(d)はクロス溝とした賦形面の平面図、(e)は(d)の矢印A42部分における賦形面の断面を矢印方向から示す図、(f)は(d)のクロス溝に対応するパターンを(e)と同様の断面で示す図、(g)はドットとした賦形面の平面図、(h)は(g)の矢印A43部分における賦形面の断面を矢印方向から示す図、(i)は(h)のドットに対応するパターンを(e)と同様の断面で示す図。
図5】ベースフィルムに形成されるアライメントマークの態様例を示す図であって、(a)は、ベースフィルムの表面および裏面のアライメントマークの形態を、裏面側から示す図、(b)は、ベースフィルムの表面と裏面とに生じるアライメントマークの搬送方向および幅方向の位置ずれの態様を示す図。
図6】ガイドロールに対するベースフィルムの抱き角(ラップ角)と、ベースフィルムの両面側におけるダイの位置との関係を示す図であって、(a)は、ベースフィルムの表面側のダイを裏面側のダイよりも上側に配置して抱き角を大きくした態様例を示す図、(b)は、ベースフィルムの裏面側のダイを表面側のダイよりも上側に配置して抱き角を小さくした態様例を示す図。
図7】移動機構によるダイおよびガイドロールの移動態様を示す図であって、(a)は、ベースフィルムおよび賦形フィルムが重力方向(パスライン)に対してベースフィルムの裏面側へ位置ずれしている状態を示す図、(b)は、(a)の矢印A7で示す方向へダイおよびガイドロールを移動させ、ベースフィルムおよび賦形フィルムをパスラインに沿わせた状態を示す図。
図8】移動機構によるダイおよびガイドロールの移動態様を示す図であって、(a)は、ベースフィルムおよび賦形フィルムが重力方向(パスライン)に対してベースフィルムの表面側へ位置ずれしている状態を示す図、(b)は、(a)の矢印A8で示す方向へダイおよびガイドロールを移動させ、ベースフィルムおよび賦形フィルムをパスラインに沿わせた状態を示す図。
図9図1の矢印A11部分における断面を矢印方向から示す図。
図10】樹脂層硬化部の押圧ロールの態様例を示す図。
図11】樹脂層硬化部の押圧ロールの態様の変形例を示す図。
図12図1の矢印A12部分における断面を矢印方向から示す図。
図13】表面用賦形フィルム繰出軸(表面用賦形フィルムのロール)の移動機構を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係るフィルムのパターン転写装置およびフィルムのパターン転写方法について、図1から図13を参照して説明する。
【0021】
図1は、本実施形態のフィルムのパターン転写方法を実施するためのフィルムのパターン転写装置1を示す概略構成図である。パターン転写装置1は、パターン転写のベースとなるフィルム(ベースフィルム)2の両面に、フィルム状の型(賦形フィルム)3を同時に転写してパターンを形成し、転写フィルム20を生成する装置(ロールツーロール式両面同時転写装置)である。
【0022】
図1に示すように、パターン転写装置1は、樹脂層形成部4、パターン転写部5、樹脂層硬化部6、賦形フィルム剥離部7、およびフィルム搬送部8を備えている。樹脂層形成部4、パターン転写部5、樹脂層硬化部6、および賦形フィルム剥離部7は、この順番に重力方向に沿って上から下へ配置されている。フィルム搬送部8は、樹脂層形成部4、パターン転写部5、および樹脂層硬化部6に順次ベースフィルム2を搬送するとともに、樹脂層硬化部6および賦形フィルム剥離部7に順次転写フィルム20を搬送している。
【0023】
図2は、ベースフィルム2の樹脂層22に賦形フィルム3の賦形面(凹凸部)31が転写され、パターン21(賦形面31の凹凸部を反転させた凹凸部)が形成された後、かかる樹脂層22を硬化、固着させたベースフィルム2から賦形フィルム3が剥離されるまでの態様を示す概略図である。なお、以下の説明では、パターン21が形成された樹脂層22を硬化、固着させたベースフィルム2を転写フィルム20と称し、適宜ベースフィルム2と区別する。
【0024】
図2に示すように、ベースフィルム2は、平面状のフィルム面が所定長さに亘って連続する樹脂フィルムである。本実施形態では、光透過性(透光性)、具体的には紫外線透過性を持つベースフィルム2を一例として適用するが、遮光性のフィルム(例えば、金属箔のような不透明フィルム)をベースフィルム2として適用することも可能である。なお、以下の説明では便宜上、ベースフィルム2のフィルム面のうち、後述するガイドロール83と接触しないベースフィルム2の片面側のフィルム面(カーブの外周側の面)を表面2a、その背面側のフィルム面(ガイドロール83と接触するカーブの内周側の面)を裏面2bという。後述する転写フィルム20についても、ベースフィルム2の表面側および裏面側に相当するフィルム面をそれぞれ表面および裏面という。
【0025】
賦形フィルム3は、フィルム面が所定長さに亘って連続する紫外線透過性を持つ透明樹脂フィルムである。賦形フィルム3は、樹脂モールドとして構成されており、片面に所定の賦形面31が形成されている。賦形フィルム3の片側のフィルム面には、ベースフィルム2にパターン21を形成する前に、予めパターン21に対応する賦形面31が形成される。すなわち、パターン21と賦形面31は、互いの凹凸部を反転させた凹凸部であり、賦形面31がパターン21の成形型に相当する。賦形フィルム3に対する賦形面31の形成については、後述する。
【0026】
樹脂層形成部4、パターン転写部5、樹脂層硬化部6、賦形フィルム剥離部7、およびフィルム搬送部8は、床材で隔てられて重力方向に沿って上下に並ぶ複数の空間に分けて配置されている。これらの各空間は、例えば2階建て以上の建物の各フロアであってもよいし、建物の1フロアや平屋の建屋の中を床面からの高さが異なる複数の階層に区切った配置エリアなどであってもよい。具体的には、角管を組み合わせたフレーム構造や板材をステーで繋ぐ構造などを適用して配置エリアを形成することができる。
【0027】
このように樹脂層形成部4、パターン転写部5、樹脂層硬化部6、賦形フィルム剥離部7、およびフィルム搬送部8を階層に分けて配置することで、ある程度の長さで個別の作業工程距離が必要な場合などであっても、樹脂層形成部4、パターン転写部5、樹脂層硬化部6、および賦形フィルム剥離部7を重力方向に沿って(端的には高さ方向に伸びる縦型に)配置し、これら各部4〜7にフィルム搬送部8でベースフィルム2もしくは転写フィルム20を搬送することができる。例えば、後述するように樹脂層硬化部6でベースフィルム2の紫外線硬化性樹脂層を硬化させる際、ある程度の搬送距離(時間)に亘って紫外線を照射する必要がある場合などであっても、パターン転写装置1を縦型に構成することができる。
【0028】
本実施形態では、図1に示すように、建屋の中を床材11〜13で区切って4つの配置エリアF1〜F4が形成されている。床材11〜13は、建屋の床面10に設けられた支柱14によって支持されている。この場合、第3の床材13は床面10を嵩上げし、さらに第1の床材11が第3の床材13を、第2の床材12が第1の床材11をそれぞれ嵩上げしている。パターン転写部5と樹脂層硬化部6とは、第1の床材11で隔てられ、樹脂層形成部4とパターン転写部5とは、第2の床材12で隔てられている。また、配置エリアF2には、樹脂層硬化部6と賦形フィルム剥離部7、配置エリアF3には、パターン転写部5、配置エリアF4には、樹脂層形成部4がそれぞれ配置されている。フィルム搬送部8は、配置エリアF1〜F4のすべてに亘って配置されている。
【0029】
床材11〜13には、重力方向に沿って一直線上に並ぶ通し孔11a〜13aがそれぞれ形成されている。通し孔11a〜13aには、ベースフィルム2(転写フィルム20)および賦形フィルム3が通されている。この場合、第1の通し孔11aにはベースフィルム2および賦形フィルム3の両方、第2の通し孔12aにはベースフィルム2、第3の通し孔13aには転写フィルム20がそれぞれ通されている。なお、通し孔11a〜13aを貫く重力方向の仮想直線は、ベースフィルム2(転写フィルム20)および賦形フィルム3の正常な搬送経路に相当しており、以下この仮想直線(搬送経路)をパスラインPLという。
【0030】
本実施形態のパターン転写装置1は、ベースフィルム2の両面に賦形フィルム3の賦形面31を同時に転写し、パターン21を形成する装置であるが、ここではまず、賦形フィルム3に対する賦形面31の形成について説明する。
【0031】
図3には、賦形フィルム3の片側のフィルム面に賦形面31を形成する装置(一般的なロールツーロール式片面UV転写装置)30の概略構成を示す。図3に示すように、賦形フィルム3は、賦形フィルム用ベースフィルム30aの片面に樹脂層30bを形成し、樹脂層30bに成型ロール305を押し付け、成型ロール305の成形型(賦形面31の型となる凹凸部)306を樹脂層30bに転写して形成されている。なお、以下の説明では便宜上、賦形フィルム用ベースフィルム30aの樹脂層30bの形成側、換言すれば賦形フィルム3の賦形面31の形成側のフィルム面を表面、その背面側のフィルム面を裏面という。
【0032】
賦形フィルム用ベースフィルム30aは、平面状のフィルム面が所定長さに亘って連続する紫外線透過性を持つ透明樹脂フィルムであり、繰出軸301から繰り出される。繰り出された賦形フィルム用ベースフィルム30aには、コーティングロール302で搬送される際、樹脂がダイ303から表面に吐出され、吐出された樹脂で樹脂層30bが形成される。樹脂としては、紫外線硬化性を持ち、常温で液体状の透明樹脂が用いられる。
【0033】
表面に樹脂層30bが形成された賦形フィルム用ベースフィルム30aは、押付ロール304によって成型ロール305に押し付けられ、成型ロール305の成形型306が樹脂層30bに転写される。これにより、成形型306の凹凸を反転させた凹凸部として樹脂層30bに賦形面31が形成される。賦形面31が形成された樹脂層30bは、紫外線照射ランプ307から紫外線が照射されて硬化する。
【0034】
賦形面31が形成された樹脂層30bが硬化し、表面に固着した賦形フィルム用ベースフィルム30a、つまり賦形フィルム3は、剥離ロール308によって成型ロール305から剥離され、巻取軸309で巻き取られる。なお、賦形フィルム用ベースフィルム30aおよび賦形フィルム3は、複数の中継ロール310で適宜中継して搬送される。
【0035】
賦形面31は、成形型306の凹凸を反転させた凹凸状の態様をなす。図4には、賦形面31の態様例を示す。図4(a),(b)はラインアンドスペースと呼ばれる縦溝(横溝)、同図(d),(e)はクロス溝、同図(g),(h)はドットの態様例であるが、賦形面31は任意の態様で構わない。本実施形態では、ベースフィルム2の表面2a用の賦形フィルム(以下適宜、表面用賦形フィルムという)3a、および裏面2b用の賦形フィルム(以下適宜、裏面用賦形フィルムという)3bをそれぞれ形成する。表面用賦形フィルム3aの賦形面31aと裏面用賦形フィルム3bの賦形面31bは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0036】
例えば、表面用賦形フィルム3aの賦形面31aと裏面用賦形フィルム3bの賦形面31bを同一とした場合、ベースフィルム2の表面2aおよび裏面2bには、これらの賦形面31a,31bの凹凸部を反転させた凹凸部で構成される同一のパターン21が形成される。図4(c)は、賦形面31a,31bがいずれも同図(a),(b)に示すラインアンドスペースである場合に形成されるパターン21の態様を示す。同様に、図4(f)は、同図(d),(e)に示すクロス溝、同図(i)は、同図(d),(e)に示すドットである場合にそれぞれ形成されるパターン21の態様をそれぞれ示す。
【0037】
ここで、賦形フィルム用ベースフィルム30aおよび樹脂層30bは、後述するようにベースフィルム2の樹脂層22に紫外線を透過させる必要があるため、いずれも紫外線透過性を持つ透明樹脂で形成する。また、樹脂層30bを形成する透明樹脂としては、樹脂層22から容易に剥離可能な樹脂を適用する。
【0038】
図3に示す装置30では、ロール面に成形型(凹凸部)306が直接刻まれた成型ロール305を用いて樹脂層30bにかかる成形型306を転写しているが、例えば、Ni電鋳などで製造したスタンパ(表面に凹凸部が形成された板状のベース材)を無垢のロールに巻き付けて転写を行ってもよい。
【0039】
また、本実施形態では、表面用賦形フィルム3aの賦形面31aには、表面用のアライメントマーク賦形部、裏面用賦形フィルム3bの賦形面31bには、裏面用のアライメントマーク賦形部をそれぞれ形成する。これらのアライメントマーク賦形部を転写して形成したベースフィルム2のアライメントマークの位置を監視することで、ベースフィルム2に対するパターン転写の精度(例えばパターン21の転写、形成位置のずれなど)を調整することが可能となっている。アライメントマーク賦形部用の成形型(凹部や凸部)は、成型ロール305のロール面の1箇所もしくは複数個所に形成する。これにより、表面用および裏面用の賦形フィルム3a,3bに対し、共通して1箇所もしくは複数個所にそれぞれアライメントマーク賦形部(成型ロール305のアライメントマーク賦形部用の成形型の凹凸部を反転させた凹凸部)が形成される。
【0040】
図5には、表面用および裏面用の賦形フィルム3により、ベースフィルム2に形成されたアライメントマーク(賦形フィルム3のアライメントマーク賦形部の凹凸部を反転させた凹凸部)23の態様例を示す。図5(a)は、ベースフィルム2の表面2aのアライメントマーク23a、および裏面2bのアライメントマーク23bの態様を、裏面2b側から示す図である。この場合、アライメントマーク23a,23bを円形としているが、その形状は任意の図形でよく、また文字や記号などであっても構わない。これらのアライメントマーク23a,23bを用いたパターン転写の精度調整については後述する。
【0041】
次に、本実施形態のパターン転写装置1について、ベースフィルム2および転写フィルム20の流れに沿って説明する。図1に示すように、ベースフィルム2は、フィルム搬送部8によって樹脂層形成部4から、パターン転写部5、樹脂層硬化部6まで重力方向に沿って上から下へ搬送されている。引き継いで、転写フィルム20は、フィルム搬送部8によって樹脂層硬化部6から賦形フィルム剥離部7まで重力方向に沿って上から下へ搬送されている。
【0042】
フィルム搬送部8は、ベースフィルム2を繰り出すフィルム繰出軸81と、繰り出したベースフィルム2から生成された転写フィルム20を巻き取るフィルム巻取軸82とを備えている。フィルム繰出軸81およびフィルム巻取軸82は、いずれもモータ(図示省略)により、所定方向(図1においては時計回り)に回転する回転軸であり、フィルム繰出軸81が樹脂層形成部4の手前(ベースフィルム2の搬送方向の上流側)に、フィルム巻取軸82が賦形フィルム剥離部7の先(同下流側)にそれぞれ配置されている。これにより、転写フィルム20の生成前後の態様を含め、ベースフィルム2は、樹脂層形成部4から、パターン転写部5、樹脂層硬化部6、賦形フィルム剥離部7まで所定の張力を保って搬送される。その際、フィルム繰出軸81およびフィルム巻取軸82は、ベースフィルム2および転写フィルム20が常に一定の速度(ラインスピード)で搬送されるように、制御部(図示省略)などにより回転制御されている。
【0043】
ベースフィルム2(転写フィルム20)を境に水平方向の同一側に配置される場合、フィルム繰出軸81とフィルム巻取軸82は同一方向へ回転し、水平方向の反対側に配置される場合、フィルム繰出軸81とフィルム巻取軸82は互いに逆方向へ回転する。図1では、フィルム繰出軸81を配置エリアF3、フィルム巻取軸82を配置エリアF2にそれぞれ配置しているが、これらを配置する階層は特に限定されない。
【0044】
また、フィルム搬送部8は、フィルム繰出軸81とフィルム巻取軸82との間の搬送経路上に配置されるガイドロール83と複数の中継ロール84を備えている。ガイドロール83および中継ロール84はいずれも、回転軸であるフィルム繰出軸81およびフィルム巻取軸82によって搬送されるベースフィルム2もしくは転写フィルム20に連れ立って回転するアイドルロールである。
【0045】
ガイドロール83は、樹脂層形成部4の手前(上流側)でベースフィルム2をカーブさせ、その搬送方向を重力方向に沿って上から下へ向けるように、配置エリアF4に配置されている。中継ロール84は、フィルム繰出軸81とフィルム巻取軸82との間で、ガイドロール83とともにベースフィルム2もしくは転写ロール20の搬送方向を変更する。中継ロール84のうちの1つ(図1に示す中継ロール84b)は、重力方向に沿ってガイドロール83の下方に配置される。中継ロール84bは、賦形フィルム剥離部7の先(下流側)で転写フィルム20の搬送方向を重力方向から別方向(本実施形態においては、水平方向)へ向けるように、配置エリアF1に配置されている。図1では、ガイドロール83および中継ロール84aを配置エリアF4、中継ロール84bおよび中継ロール84cを配置エリアF1にそれぞれ配置しているが、これらを配置する階層はこれに限定されない。
【0046】
樹脂層形成部4は、ベースフィルム2の両面に液状の樹脂を塗布して樹脂層22を形成する。図1に示すように、樹脂層形成部4は、樹脂を貯留するタンク41と、タンク41から樹脂を送出するポンプ42と、ポンプ42から送出された樹脂をベースフィルム2の両面に吐出するダイ43とを備えている。樹脂層22を形成する樹脂としては、紫外線硬化性を持ち、常温で液状の透明樹脂が用いられる。タンク41、ポンプ42、およびダイ43は、配管で繋げられ、ベースフィルム2の表面2a用と裏面2b用にそれぞれ一式ずつ、配置エリアF4に配置されている。ただし、タンク41およびポンプ42は、1台ずつにまとめて表面2a用と裏面2b用とで共用とし、配管を分岐させるなどして、一対のダイ43にそれぞれ樹脂を供給するようにしてもよい。
【0047】
図1および図2に示すように、ダイ43は、ベースフィルム2を隔てて両側(表面2a側および裏面2b側)に1つずつ、互いの樹脂吐出口431の位置を上下にずらして配置されている。具体的には、一対のダイ43のうち、上側に配置されるダイ43aは、ガイドロール83と接触しないベースフィルム2の片面、つまりベースフィルム2の表面2aに樹脂層22aを形成するように、樹脂吐出口431を表面2aに向けて配置されている。これに対し、下側に配置されるダイ43bは、ベースフィルム2の裏面2bに樹脂層22bを形成するように、樹脂吐出口431を裏面2bに向けて配置されている。
【0048】
ダイ43の樹脂吐出口431から樹脂を吐出する際には、樹脂吐出口431でベースフィルム2を極僅かに(数ミリ程度)押し込む。したがって、図6に示すように、ベースフィルム2の表面2a側のダイ43aを、裏面2b側のダイ43bよりも上側に配置することで(同図(a)に示す態様)、ダイ43bをダイ43aよりも上側に配置した場合(同図(b)に示す態様)と比べて、ガイドロール83に対するベースフィルム2の抱き角(ラップ角)を大きくすることができる(α1>α2)。これにより、ガイドロール83をベースフィルム2に連れ立ってスムーズに回転させ、ベースフィルム2を重力方向に沿って上から下へ安定して搬送させることができる。この結果、例えばベースフィルム2がガイドロール83のロール面を滑るような事態を防ぎ、ベースフィルム2に生じる不具合などを抑制できる。
【0049】
なお、樹脂を吐出する際にダイ43でベースフィルム2を押し込むのは、形成される樹脂層22の表面状態が良好となるように調整するためである。これにより、スジなどがなく表面の滑らかな樹脂層22を形成することができる。
【0050】
ベースフィルム2の樹脂層22は、表面2a側と裏面2b側とで厚さが異なる。本実施形態では、図2に示すように、樹脂層22は、表面2a側よりも裏面2b側の方が厚くなっている(Da<Db)。したがって、表面2a側の樹脂層22aを形成するダイ43aよりも、裏面2b側の樹脂層22bを形成するダイ43bの方が、樹脂吐出口431からの単位時間当たりの吐出量が多くなるように、ダイ43a,43bに対するタンク41およびポンプ42からの樹脂の供給が調整されている。
【0051】
図1に示すように、パターン転写装置1は、一対のダイ43の一方と他方(ダイ43aとダイ43b)およびガイドロール83をまとめて、パターン転写部5、樹脂層硬化部6、および賦形フィルム剥離部7に対して水平方向へ移動させる移動機構9を備えている。
【0052】
図7および図8は、移動機構9によるダイ43a,43bおよびガイドロール83の移動態様を示す図である。図7および図8に示すように、移動機構9は、ベースフィルム2もしくはベースフィルム2と賦形フィルム3が床材11〜13の通し孔11a〜13aの中で重力方向のパスラインPLに沿うように、ダイ43a,43bおよびガイドロール83を移動させる。
【0053】
図1に示すように、移動機構9は、ダイ43a、ダイ43bおよびガイドロール83を1つにユニット化しており、これらをユニットごと移動させる。したがって、ダイ43a、ダイ43bおよびガイドロール83は、相互の位置関係を維持したまま移動機構9により移動される。
【0054】
ダイ43a,43bの樹脂吐出口431から樹脂を吐出する際には、樹脂吐出口431でベースフィルム2を極僅かに(数ミリ程度)押し込むので、その際にベースフィルム2をパスラインPLから位置ずれさせる場合がある。図7(a)には、ベースフィルム2および賦形フィルム3がパスラインPLに対して裏面2b側(同図(a)においては左側)へ位置ずれした状態、図8(a)には、ベースフィルム2および賦形フィルム3がパスラインPLに対して表面2a側(同図(a)においては右側)へ位置ずれした状態の一例をそれぞれ示す。
【0055】
図7(a)に示す状態となっている場合、水平方向に沿ってベースフィルム2の裏面2b側から表面2a側へ向かう方向(同図(a)に示す矢印A7の方向)に、ダイ43a,43bおよびガイドロール83を移動機構9で距離L7だけ移動させる。これにより、図7(b)に示すように、パターン転写部5、樹脂層硬化部6、賦形フィルム剥離部7において、ベースフィルム2および賦形フィルム3をパスラインPLに沿わせることができる。
【0056】
また、図8(a)に示す状態となっている場合、水平方向に沿ってベースフィルム2の表面2a側から裏面2b側へ向かう方向(同図(a)に示す矢印A8の方向)に、ダイ43a,43bおよびガイドロール83を移動機構9で距離L8だけ移動させる。これにより、図8(b)に示すように、パターン転写部5、樹脂層硬化部6、賦形フィルム剥離部7において、ベースフィルム2および賦形フィルム3をパスラインPLに沿わせることができる。
【0057】
移動機構9としては、モータとボールねじを用いた機構、エアシリンダとストッパを用いた機構、レールとスライダを用いた機構などのように、所定方向へ直線移動可能で、かつ所定位置で位置決め可能な機構を適用することができる。
【0058】
このように本実施形態によれば、ダイ43a,43bおよびガイドロール83を移動機構9で水平方向へ移動させることができる。すなわち、パターン転写装置1の初期設置時におけるベースフィルム2および賦形フィルム3のパスラインPLからのずれを容易に調整することができる。加えて、パターン転写装置1の稼働後にパスラインPLからのずれが生じた場合であっても、かかるずれを容易に再調整することができる。したがって、パターン転写部5での樹脂層22に対する賦形面31の転写およびパターン21の形成、樹脂層硬化部6での樹脂層22の硬化および固着(転写フィルム20の生成)、賦形フィルム剥離部7での転写フィルム20からの賦形フィルム3の剥離を、常にパスラインPLに沿って行うことができる。
【0059】
このため、樹脂層22に対する賦形面31の転写およびパターン21の形成の状態、パターン21が形成された樹脂層22の硬化および固着の状態、転写フィルム20からの賦形フィルム3の剥離状態を、表面2aと裏面2bとで一致させることができる。これにより、ベースフィルム2の表面2aと裏面2bに、パターン21を同時に精度よく形成することができる。
【0060】
なお、本実施形態の移動機構9では、ダイ43a、ダイ43bおよびガイドロール83をユニット化してまとめて移動させているが、ダイ43a、ダイ43bおよびガイドロール83を個別に、あるいはまとめてかつ個別にも移動させることが可能な移動機構としてもよい。例えば、ダイ43aとダイ43bとは、図2に示すように互いの樹脂吐出口431の位置を上下にずらして配置されているので、これらを個別に移動させた場合であっても、これらが互いにぶつかって損傷するような事態は回避できる。
【0061】
また、本実施形態においては、後述するようにパターン転写部5、樹脂層硬化部6、および賦形フィルム剥離部7もそれぞれ所定の移動機構により水平方向へ移動可能となっている。
【0062】
図1に示すように、パターン転写部5は、賦形フィルム3を繰り出す賦形フィルム繰出軸51と、賦形フィルム繰出軸51から繰り出された賦形フィルム3の流れを重力方向に沿って上から下へ向ける(端的にはパスラインPLに沿わせる)ロール52とを備えている。賦形フィルム繰出軸51およびロール52は、賦形フィルム3の裏面(賦形面31の背面側のフィルム面)と接触する。
【0063】
また、賦形フィルム繰出軸51およびロール52は、ベースフィルム2の表面2a用と裏面2b用にそれぞれ一式ずつ配置されている。ベースフィルム2の表面2a側には、表面用賦形フィルム3aを繰り出す表面用賦形フィルム繰出軸51aと、繰り出された表面用賦形フィルム3aの流れを下向きに変えるバックアップロール52aが配置されている。一方、ベースフィルム2の裏面2b側には、裏面用賦形フィルム3bを繰り出す裏面用賦形フィルム繰出軸51bと、繰り出された裏面用賦形フィルム3bの流れを下向きに変えるインフィードロール52bが配置されている。
【0064】
表面用賦形フィルム繰出軸51aおよび裏面用賦形フィルム繰出軸51bは、いずれもモータ(図示省略)により、互いに逆方向へ回転する回転軸である。図1においては、表面用賦形フィルム繰出軸51aが反時計回りに、裏面用賦形フィルム繰出軸51bが時計回りに回転する。その際、表面用賦形フィルム繰出軸51aおよび裏面用賦形フィルム繰出軸51bは、ベースフィルム2のラインスピードと常に同一速度で表面用賦形フィルム3aおよび裏面用賦形フィルム3bを繰り出すように、制御部(図示省略)などにより回転制御されている。
【0065】
図1および図9に示すように、バックアップロール52aは、表面用賦形フィルム繰出軸51aによって繰り出された表面用賦形フィルム3aに連れ立って回転するゴム製のアイドルロールである。インフィードロール52bは、モータ53で回転する金属製の回転ロールであり、ロール面に例えばハードクロームなどによるメッキが施されている。バックアップロール52aとインフィードロール52bは、表面用賦形フィルム3aと裏面用賦形フィルム3bを上から下へ流すとともに、これらの賦形フィルム3a,3bを押し付けながらベースフィルム2を上から下へ送り出すように対向している。
【0066】
ベースフィルム2がバックアップロール52aとインフィードロール52bにより送り出されることで、表面用賦形フィルム3aの賦形面31aがベースフィルム2の樹脂層22aに接触して転写され、樹脂層22aの表面にパターン21aが形成される。また、裏面用賦形フィルム3bの賦形面31bがベースフィルム2の樹脂層22bに接触して転写され、樹脂層22bの表面にパターン21bが形成される。賦形フィルム3a,3bをベースフィルム2の樹脂層22a,22bに接触させるため、以降の樹脂層硬化部6において樹脂層22a,22bが酸素阻害により未硬化となることが抑止される。
【0067】
インフィードロール52bは、第1の床材11に固定されているのに対し、バックアップロール52aは、第1の床材11に対して移動可能となっている。図1に示すように、パターン転写装置1は、バックアップロール52aを移動させる移動機構54を備えている。移動機構54は、ベースフィルム2の樹脂層22a、別の捉え方をすればインフィードロール52bに対して進退可能に、バックアップロール52aを水平方向へ移動させる。
【0068】
これにより、インフィードロール52bに対するバックアップロール52aの押し込み量を適宜調整することができる。すなわち、賦形面31a,31bの樹脂層22a,22bに対する接触圧を加減することができるため、樹脂層22a,22bへの賦形面31a,31bの転写状態を調整することができる。
【0069】
移動機構54としては、モータとボールねじを用いた機構、エアシリンダとストッパを用いた機構、レールとスライダを用いた機構などのように、所定方向へ直線移動可能で、かつ所定位置で位置決め可能な機構を適用することができる。
【0070】
図1および図2に示すように、樹脂層硬化部6は、賦形フィルム3の賦形面31が転写され、パターン21が形成されたベースフィルム2の樹脂層22を硬化させる作用部61と、作用部61で硬化される樹脂層22をベースフィルム2へ向けて押圧する押圧ロール62とを備えている。樹脂層22が紫外線硬化性を持つ透明樹脂で形成されているため、本実施形態においては、樹脂層22に紫外線を照射する光源61aと、光源61aから照射された紫外線を遮る遮光板61bにより、作用部61が構成されている。また、樹脂層22、ベースフィルム2および賦形フィルム3がいずれも紫外線透過性を持つ樹脂であるため、ベースフィルム2を境にした一方側に光源61a、他方側に遮光板61bをそれぞれ配置している。このように光源61aの配置が一方側のみであっても、ベースフィルム2の表面2a側の樹脂層22aおよび裏面2b側の樹脂層22bをいずれも光源61aで硬化させ、樹脂層22a,22bをベースフィルム2に固着させることができる。本実施形態では、ベースフィルム2の表面2a側に光源61a、裏面2b側に遮光板61bがそれぞれ配置されている。
【0071】
光源61aとしては、例えば、高圧水銀ランプやLEDランプなどを適用することができる。光源61aをLEDランプとした場合、発熱量が極めて小さく、ベースフィルム2へ与える熱ダメージも少なく、ベースフィルム2を冷却する必要もない。また、ランプ自体も小さく、省電力化を図ることもできる。また、光源61aは、ベースフィルム2が賦形フィルム剥離部7に搬送されるまでの間に、樹脂層22を硬化させて、ベースフィルム2に固着させることが可能となるように、1つもしくは複数個を重力方向(パスラインPL)に沿って並べて配置すればよい。なお、ベースフィルム2を遮光性のフィルム(例えば、金属箔のような不透明フィルム)とした場合には、光源61aをベースフィルム2の表面2a側と裏面2b側の双方に配置する。
【0072】
押圧ロール62は、作用部61の光源61aと作用部61で硬化される薄い方の樹脂層22との間に配置され、かかる薄い方の樹脂層22をベースフィルム2へ向けて押圧する。本実施形態では、ベースフィルム2の表面2a側に押圧ロール62が配置され、樹脂層22aを押圧するように構成されている。この場合、押圧ロール62は、紫外線透過性材(例えば、紫外線透過性を持つ透明樹脂)で構成され、光源61aの照射方向の前方に配置されている。これにより、押圧ロール62によって遮られることなく、樹脂層22a、さらにはベースフィルム2を通して樹脂層22bへ紫外線を照射することができる。
【0073】
本実施形態においては、ベースフィルム2の裏面2b側の樹脂層22bを表面2a側の樹脂層22aよりも厚くしている。厚い方の樹脂層22bは、薄い方の樹脂層22aよりも硬化時の収縮が大きいため、光源61aから紫外線を照射して樹脂層22a,22bを硬化させた際、図10に示すように、裏面2b側(同図においては左側)が凹曲状となるようにベースフィルム2に反りが生ずるおそれがある(同図に示す破線の状態)。
【0074】
このため、押圧ロール62は、ベースフィルム2の表面2a側に配置され、裏面2b側への反りに抗するように表面2a側を押圧する。これにより、表面2bおよび裏面2bのいずれ側へもベースフィルム2に反りが生じないようにしている。すなわち、押圧ロール62でベースフィルム2の表面2a側を押圧することで、表面2a側が凹曲状となるようにベースフィルム2を反らせた状態で、樹脂層22a,22bに紫外線を照射することができる。
【0075】
これにより、樹脂層22a,22bの硬化および固着時にベースフィルム2の裏面2b側への反りを低減でき、ベースフィルム2を重力方向(パスラインPL)に沿った状態(図10に示す実線の状態)とすることができる。したがって、ベースフィルム2の裏面2b側の樹脂層22bが表面2a側の樹脂層22aよりも厚い場合であっても、ベースフィルム2の表面2aと裏面2bにパターン21を同時に精度よく形成することができる。すなわち、転写フォルム20の生成精度を高めることができる。
【0076】
樹脂層硬化部6は、押圧ロール62を単体で、もしくは光源61aとともに移動させる移動機構(図示省略)を備えている。かかる移動機構は、ベースフィルム2の樹脂層22aへ向けて進退可能に、押圧ロール62を水平方向へ移動させる。これにより、樹脂層22aに対する押圧ロール62の押圧量を適宜調整できるようになっている。移動機構としては、モータとボールねじを用いた機構、エアシリンダとストッパを用いた機構、レールとスライダを用いた機構などのように、所定方向へ直線移動可能で、かつ所定位置で位置決め可能な機構を適用することができる。
【0077】
なお、図11に示す変形例のように、2本の押圧ロール62を光源61aの照射方向(同図においては右から左へ向かう方向)から外れて配置する場合、押圧ロール62は、紫外線透過性材(例えば、紫外線透過性を持つ透明樹脂)で構成しなくともよく、紫外線遮光性材(例えば、紫外線遮光性を持つ不透明樹脂)で構成してもよい。図11に示すように、光源61aの照射方向の前方で、光源61aの上下に2本の押圧ロール62を配置すれば、押圧ロール62を紫外線遮光性材で構成した場合であっても、押圧ロール62によって遮られることなく、樹脂層22a、さらにはベースフィルム2を通して樹脂層22bへ紫外線を照射することができる。
【0078】
図1および図2に示すように、賦形フィルム剥離部7は、樹脂層硬化部6で生成された転写フィルム20(樹脂層22が硬化、固着されたベースフィルム2)から賦形フィルム3を剥離させるロール71と、ベースフィルム2から剥離された賦形フィルム3を巻き取る賦形フィルム巻取軸72とを備えている。ロール71および賦形フィルム巻取軸72は、賦形フィルム3の裏面(賦形面31の背面側のフィルム面)と接触する。
【0079】
また、ロール71および賦形フィルム巻取軸72は、表面用賦形フィルム3a用と裏面用賦形フィルム3b用にそれぞれ一式ずつ配置されている。ベースフィルム2の表面2a側には、樹脂層22aから表面用賦形フィルム3aを剥離する剥離ロール71aと、剥離された表面用賦形フィルム3aを巻き取る表面用賦形フィルム巻取軸72aが配置されている。一方、ベースフィルム2の裏面2b側には、樹脂層22bから裏面用賦形フィルム3bを剥離するアウトフィードロール71bと、剥離された裏面用賦形フィルム3bを巻き取る裏面用賦形フィルム巻取軸72bが配置されている。
【0080】
表面用賦形フィルム巻取軸72aおよび裏面用賦形フィルム巻取軸72bは、いずれもモータ(図示省略)により、互いに逆方向へ回転する回転軸である。図1においては、表面用賦形フィルム巻取軸72aが反時計回りに、裏面用賦形フィルム巻取軸72bが時計回りに回転する。その際、表面用賦形フィルム巻取軸72aおよび裏面用賦形フィルム巻取軸72bは、転写フィルム20のラインスピードと常に同一速度で表面用賦形フィルム3aおよび裏面用賦形フィルム3bを巻き取るように、制御部(図示省略)などにより回転制御されている。なお、賦形フィルム巻取軸72a,72bで巻き取られた賦形フィルム3a,3bは、傷やごみの付着などの破損がない場合、賦形フィルム繰出軸51にセットして再利用することが可能である。
【0081】
図1および図12に示すように、剥離ロール71aは、樹脂層22aから剥離される表面用賦形フィルム3aに連れ立って回転するゴム製のアイドルロールである。アウトフィードロール71bは、モータ73で回転する金属製の回転ロールであり、ロール面に例えばハードクロームなどによるメッキが施されている。剥離ロール71aとアウトフィードロール71bは、転写フィルム20(ベースフィルム2の樹脂層22aと樹脂層22b)から表面用賦形フィルム3aと裏面用賦形フィルム3bを剥離させながら、これらの賦形フィルム3a,3bの流れを重力方向から水平方向へ向けて送り出すように対向している。これにより、表面用賦形フィルム3aが樹脂層22aから剥離されるとともに、裏面用賦形フィルム3bが樹脂層22bから剥離される。
【0082】
アウトフィードロール71bは、第3の床材13に固定されているのに対し、剥離ロール71aは、第3の床材13に対して移動可能となっている。図1に示すように、パターン転写装置1は、剥離ロール71aを移動させる移動機構74を備えている。移動機構74は、表面用賦形フィルム3a、別の捉え方をすればアウトフィードロール71bに対して進退可能に、剥離ロール71aを水平方向へ移動させる。
【0083】
これにより、アウトフィードロール71bに対する剥離ロール71aの押し込み量を適宜調整することができる。すなわち、賦形フィルム3a,3bの樹脂層22a,22bに対する接触圧を加減することができるため、樹脂層22a,22bからの賦形フィルム3a,3bの剥離状態を調整することができる。
【0084】
移動機構74としては、モータとボールねじを用いた機構、エアシリンダとストッパを用いた機構、レールとスライダを用いた機構などのように、所定方向へ直線移動可能で、かつ所定位置で位置決め可能な機構を適用することができる。
【0085】
賦形フィルム剥離部7で賦形フィルム3が剥離された転写フィルム20は、フィルム搬送部8のフィルム巻取軸82で巻き取られる。特に図示しないが、その際、例えば樹脂層22のパターン21を保護するために、表面2aおよび裏面2bにラミネートを施した状態で、あるいはスペーサで挟んだ状態で、転写フィルム20をフィルム巻取軸82で巻き取ってもよい。また、賦形フィルム剥離部7を省略し、賦形フィルム3を転写フィルム20から剥離せずに、そのままの状態でフィルム搬送部8のフィルム巻取軸82で巻き取り、後工程で別途、賦形フィルム3を剥離するようにしてもよい。
【0086】
図1に示すように、フィルム転写装置1は、フィルム巻取軸82で巻き取る前に、転写フィルム20(パターン21が形成された樹脂層22が固着したベースフィルム2)のアライメントマーク23を撮像するアライメントカメラ80を備えている。図1には、配置エリアF1に配置され、パターン21が形成されたベースフィルム2を裏面2b側から撮像するアライメントカメラ80の構成を一例として示す。
【0087】
本実施形態においては、パターン転写部5により、図5に示すように、パターン21とともにアライメントマーク23がベースフィルム2に形成されている。この場合、ベースフィルム2の表面2a側の樹脂層22aにはアライメントマーク23a、裏面2b側の樹脂層22bにはアライメントマーク23bがそれぞれ形成されている。ベースフィルム2および樹脂層22がいずれも透明樹脂であるため、ベースフィルム2の裏面2b側からアライメントカメラ80で撮像した場合であっても、裏面2bのアライメントマーク23bおよび表面2aのアライメントマーク23aの両方をまとめて撮像することができる。したがって、ベースフィルム2の表面2a側からアライメントカメラ80で撮像するようにしても構わない。
【0088】
なお、ベースフィルム2や樹脂層22が不透明樹脂で構成されている場合、アライメントカメラ80は、ベースフィルム2の表面2a側および裏面2b側の双方に配置する必要がある。ベースフィルム2の表面2a側および裏面2b側の双方にアライメントカメラ80を配置する場合、ベースフィルム2および樹脂層22は、透明樹脂もしくは不透明樹脂のいずれで構成されていても構わない。
【0089】
アライメントカメラ80で撮像したアライメントマーク23a,23bの位置を監視することで、ベースフィルム2に対するパターン転写の精度(例えば、パターン21の転写、形成位置のずれなど)を調整することができる。
【0090】
このようなアライメントマーク23を用いたベースフィルム2に対するパターン転写の精度の調整について説明する。精度調整にあたっては、まず、アライメントカメラ80で撮像したベースフィルム2の表面2aのアライメントマーク23aと裏面2bのアライメントマーク23bとのずれ量、具体的には重心位置のずれ量を測定する。本実施形態では、ベースフィルム2の裏面2bのパターン位置を基準とし、アライメントマーク23a,23bの重心位置のずれ量に基づいて表面2aのパターン位置を調整している。
【0091】
例えば、図5(b)に示すように、裏面2bのアライメントマーク23bを基準として、ベースフィルム2の搬送方向(同図(a)に示す矢印A51の方向)へ基準距離L50だけずれ、幅方向(同図(a)に示す矢印A52の方向)には同一の位置を、表面2aのアライメントマーク23aの正規位置とする。図5(b)に示す状態では、アライメントマーク23aは、正規位置からベースフィルム2の搬送方向に対して距離L51だけ遅れてずれているとともに、幅方向に対して距離L52だけ左方へずれている。
【0092】
搬送方向の位置ずれは、裏面2bのアライメントマーク23bに対して表面2aのアライメントマーク23aが遅れている場合(図5(b)に示す状態)、表面側賦形フィルム3aの繰出距離(フィルムパス)を短くして、アライメントマーク23aの形成タイミングを早める。逆に、アライメントマーク23bに対してアライメントマーク23aが先行している場合、表面用賦形フィルム3aのフィルムパスを長くして、アライメントマーク23aの形成タイミングを遅らせる。
【0093】
このような表面用賦形フィルム3aのフィルムパス調整のため、図1に示すように、パターン転写部5は、コンペンセイターロール55と、コンペンセイターロール55の上流側および下流側に配置される賦形フィルム中継ロール56とを備えている。コンペンセイターロール55は、表面用賦形フィルム繰出軸51aの下流側、かつバックアップロール52aの上流側に配置され、移動機構57により重力方向に沿って上下に移動可能となっている。コンペンセイターロール55を上下に移動させることで、その移動距離に応じて表面用賦形フィルム3aのフィルムパスの長短を調整できる。移動機構57としては、モータとボールねじを用いた機構を一例として適用するが、エアシリンダとストッパを用いた機構、レールとスライダを用いた機構などのように、所定方向へ直線移動可能で、かつ所定位置で位置決め可能な機構を適用することができる。
【0094】
幅方向の位置ずれは、裏面2bのアライメントマーク23bに対して表面2aのアライメントマーク23aが搬送方向へ向かって左方にずれている場合(図5(b)に示す状態)、表面側賦形フィルム3aの繰出位置を搬送方向へ向かって右方に移動させる。逆に、アライメントマーク23bに対してアライメントマーク23aが搬送方向へ向かって右方にずれている場合、表面側賦形フィルム3aの繰出位置を搬送方向へ向かって左方に移動させる。
【0095】
このような表面用賦形フィルム3aの繰出位置調整のため、図13に示すように、表面用賦形フィルム繰出軸51a、換言すれば表面用賦形フィルム繰出軸51aに巻き付けられた表面用賦形フィルム3aのロールは、表面用賦形フィルム3aの繰出方向へ向かって左右に、移動機構58によって移動可能となっている。図13は、表面用賦形フィルム繰出軸51aの近傍を図1の右方から示す側面図である。
【0096】
このように表面用賦形フィルム繰出軸51a(表面用賦形フィルム3aのロール)を左右に移動させることで、表面用賦形フィルム3aの水平方向(図13に示す矢印A13の方向)の繰出位置を調整することができる。移動機構58としては、モータとボールねじを用いた機構を一例として適用するが、エアシリンダとストッパを用いた機構、レールとスライダを用いた機構などのように、所定方向へ直線移動可能で、かつ所定位置で位置決め可能な機構を適用することができる。
【0097】
移動機構57によるコンペンセイターロール55の移動、および移動機構58による表面用賦形フィルム繰出軸51a(表面用賦形フィルム3aのロール)の移動は、アライメントカメラ80で撮像したアライメントマーク23a,23bの位置情報に基づいて、制御部(図示省略)などにより自動的に行われる。
【0098】
なお、ステアリングロールを取り付けて表面用賦形フィルム3aの繰出位置調整を行うことも可能であるが、この場合、ステアリングロールユニットやガイドロールを取り付けるためのスペースが別途必要となる。したがって、モータとボールねじなどの移動機構58で表面用賦形フィルム3aの繰出位置を調整する方が望ましい。
【0099】
また、パターン転写部5においては、ベースフィルム2の樹脂層22がまだ硬化されていないため、バックアップロール52aを移動機構(例えば、移動機構57と同様のモータとボールねじなど)により、表面用賦形フィルム3aの流れ方向へ向かって左右に移動させることで、表面用賦形フィルム3aによるベースフィルム2の送出位置を調整してもよい。
【0100】
このように、本実施形態のフィルムのパターン転写装置1、およびパターン転写装置1により実施されるフィルムのパターン転写方法によれば、ベースフィルム2および賦形フィルム3を重力方向(パスラインPL)に沿って上から下へ安定して搬送させることができる。また、ベースフィルム2および賦形フィルム3を確実に重力方向に沿わせた状態で、ベースフィルム2の両面に対して同時にパターン21を形成することができる。
【0101】
なお、本実施形態のパターン転写装置1は、ベースフィルム2および賦形フィルム3を重力方向(パスラインPL)に沿って上から下へ搬送させているため、上述した効果に加えて、パターン形成時の表面2a側と裏面2b側における環境条件を同等にする次のような効果も有する。
【0102】
樹脂層形成部4では、ベースフィルム2および賦形フィルム3を重力方向(パスラインPL)に沿って搬送させながら、表面2aおよび裏面2bに樹脂層22を形成するため、その際の重力の影響を両面で一致させることができる。したがって、表面2aと裏面2bの両方に樹脂層22を形成する際、樹脂のレベリングに差を生じさせずに済む。このため、ベースフィルム2の表面2aと裏面2bに形成される樹脂層22に、意図しない厚みの差が生じることを防ぐことができる。
【0103】
パターン転写部5では、賦形フィルム3を重力方向(パスラインPL)に沿って流すとともに、賦形フィルム3を押し付けながらベースフィルム2を上から下へ送り出す。このため、樹脂層22をなす樹脂で樹脂層22と賦形面31の間のエアを押し出すことができるので、賦形面31の外へエアを抜き易い。したがって、樹脂層22と賦形面31の間からエアを抜くためにベースフィルム2の搬送速度(ラインスピード)を抑制せずに済むから、ラインスピードを上げて処理効率の向上を図ることが可能となる。
【0104】
また、パターン転写部5においては、バックアップロール52aとインフィードロール52bが自重により下方へ撓むように変形する場合がある。しかしながら、これらのロール52a,52bは、水平方向に並んで配置されてベースフィルム2を上から下へ送り出すため、これらのロール52a,52bの変形によってベースフィルム2が変形することがない。したがって、ベースフィルム2の表面2aと裏面2bに形成されるパターン21a,21bの形態に、意図しない相違が生じることを防ぐことができる。
【0105】
樹脂層硬化部6では、ベースフィルム2および賦形フィルム3を重力方向(パスラインPL)に沿って搬送させながら、表面2aおよび裏面2bの樹脂層22を硬化させるため、その際に両面での雰囲気温度の差をほぼなくすことができる。また、樹脂層硬化部6では、ベースフィルム2の表面2aおよび裏面2bの樹脂層22を硬化させる際、ベースフィルム2の張力が小さくても、ベースフィルム2が自重により下方へたるむように変形することがない。したがって、ベースフィルム2の表面2aと裏面2bとで樹脂層22の硬化性をほぼ一致させることができるので、形成されるパターン21の形態に意図しない相違が生じることを防ぐことができる。
【0106】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、上述した新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0107】
例えば、本実施形態のパターン転写装置1は、ベースフィルム2の両面(表面2aおよび裏面2b)にパターン21を形成するが、片面のみにパターン21を形成することも可能である。
【0108】
また、本実施形態のパターン転写装置1は、樹脂層形成部4、パターン転写部5、樹脂層硬化部6、および賦形フィルム剥離部7において、転写フィルム20の生成前後の態様を含め、ベースフィルム2を重力方向(パスラインPL)に沿って上から下へ搬送させているが、これとは逆に下から上へ搬送させることも可能である。この場合、樹脂層形成部4、パターン転写部5、樹脂層硬化部6、および賦形フィルム剥離部7は、この順番に重力方向に沿って下から上へ配置する。ただし、本実施形態のようにベースフィルム2を上から下へ搬送させる場合には、下から上へ搬送させる場合と比較して、次のような利点がある。
【0109】
図1に示すように、本実施形態では、パターン転写部5の下方に樹脂層硬化部6が配置されている。このため、樹脂層硬化部6で発生した熱(例えば、光源61aによる発熱)が上昇気流によってパターン転写部5へ伝わり易い。パターン転写部5の雰囲気温度が上昇すると、ベースフィルム2の樹脂層22をなす樹脂の流動性が高まり、結果的に賦形面31の転写精度が向上することが期待できる。ベースフィルム2を下から上へ搬送させる場合、パターン転写部5の上方に樹脂層硬化部6が配置されるため、このような賦形面31の転写精度の向上は期待できない。
【0110】
また、本実施形態では、パターン転写部5の下方に樹脂層硬化部6が配置されているため、樹脂層硬化部6で発生した熱が上方へ逃げるので、樹脂層硬化部6の下方に配置される賦形フィルム剥離部7がかかる熱の影響を受けることが少ない。賦形フィルム剥離部7での賦形フィルム3の剥離性は、雰囲気温度が低いほどよくなる。ベースフィルム2を下から上へ搬送させる場合、樹脂層硬化部6の上方に賦形フィルム剥離部7が配置されるため、このような賦形フィルム3の剥離性の向上は期待できない。
【0111】
これらを考慮すれば、本実施形態のように、ベースフィルム2を重力方向(パスラインPL)に沿って上から下へ搬送させることが好ましい。
【符号の説明】
【0112】
1…パターン転写装置、2…ベースフィルム、2a…表面、2b…裏面、3…賦形フィルム、4…樹脂層形成部、5…パターン転写部、6…樹脂層硬化部、7…賦形フィルム剥離部、8…フィルム搬送部、9…移動機構、10…床面、11…第1の床材、11a…第1の通し孔、12…第2の床材、12a…第2の通し孔、13…第3の床材、13a…第3の通し孔、20…転写フィルム、21…パターン、22…樹脂層、31…賦形面、41…タンク、42…ポンプ、43…ダイ、51…賦形フィルム繰出軸、52a…バックアップロール、52b…インフィードロール、61…作用部、61a…光源、61b…遮光板、62…押圧ロール、71a…剥離ロール、71b…アウトフィードロール、72…賦形フィルム巻取軸、81…フィルム繰出軸、82…フィルム巻取軸、83…ガイドロール、431…樹脂吐出口、F1,F2,F3,F4…配置エリア、PL…パスライン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13