(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の脂肪族ポリイソシアネートの製造方法は、塩化カルボニルと脂肪族ポリアミンとを反応させて、脂肪族ポリイソシアネートおよび加水分解性塩素を含む反応生成物を得る反応工程と、反応生成物を加熱処理する熱処理工程とを含んでいる。
【0013】
1.反応工程
この脂肪族ポリイソシアネートの製造方法では、まず、塩化カルボニルと、脂肪族ポリアミンとを反応させて、反応生成物を調製する。
【0014】
脂肪族ポリアミンは、1級のアミノ基を2つ以上有するアミノ基含有有機化合物であって、例えば、下記一般式(1)で示される。
【0015】
一般式(1):
R
1−(NH
2)n (1)
(式中、R
1は、総炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基、または、総炭素数3〜15の脂環含有炭化水素基を、nは、2〜6の整数を示す。)
R
1において、総炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基としては、例えば、1〜6価の、直鎖状または分岐状の総炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基などが挙げられる。
【0016】
上記式(1)において、R
1が総炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基である脂肪族ポリアミン(総炭素数1〜15の脂肪族ポリアミン)としては、例えば、総炭素数1〜15の脂肪族ジアミン(例えば、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,4−ジアミノペンタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンなど)、総炭素数1〜15の脂肪族トリアミン(例えば、1,2,3−トリアミノプロパン、トリアミノヘキサン、トリアミノノナン、トリアミノドデカン、1,8−ジアミノ−4−アミノメチルオクタン、1,3,6−トリアミノヘキサン、1,6,11−トリアミノウンデカン、3−アミノメチル−1,6−ジアミノヘキサンなど)などが挙げられる。
【0017】
R
1において、総炭素数3〜15の脂環含有炭化水素基としては、例えば、1〜6価の、総炭素数3〜15の脂環含有炭化水素基などが挙げられる。
【0018】
なお、脂環含有炭化水素基は、その炭化水素基中に1つ以上の脂環式炭化水素を含有していればよくその脂環式炭化水素に、例えば、脂肪族炭化水素基などが結合していてもよい。このような場合には、1級アミンにおけるアミノ基は、脂環式炭化水素に直接結合していてもよく、脂環式炭化水素に結合される脂肪族炭化水素基に結合していてもよく、その両方であってもよい。
【0019】
上記式(1)において、R
1が総炭素数3〜15の脂環含有炭化水素基である脂環族ポリアミン(総炭素数3〜15の脂環族ポリアミン)としては、例えば、総炭素数3〜15の脂環族ジアミン(例えば、ジアミノシクロブタン、イソホロンジアミン、1,2−ジアミノシクロへキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロへキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロへキシルアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、水添2,4−トリレンジアミン、水添2,6−トリレンジアミンなど)、総炭素数3〜15の脂環族トリアミン(例えば、トリアミノシクロヘキサンなど)などが挙げられる。
【0020】
上記式(1)中、R
1は、その炭化水素基中に、例えば、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合などの安定な結合を含んでいてもよく、また、安定な官能基で置換されていてもよい。
【0021】
上記式(1)において、R
1に置換していてもよい官能基としては、例えば、WO2010/110142号公報の[0041]段落に記載される官能基と同様のものが挙げられる。
【0022】
これらの官能基は、上記式(1)において、R
1に複数置換していてもよく、また、官能基がR
1に複数置換する場合には、各官能基は、互いに同一であっても、それぞれ異なっていてもよい。
【0023】
上記式(1)において、nは、例えば、2〜6の整数を示し、好ましくは、2を示す。
【0024】
このような脂肪族ポリアミンは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0025】
このような脂肪族ポリアミンの中では、好ましくは、工業的に用いられるポリアミン、具体的には、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、イソホロンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロへキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロへキシルアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、水添2,4−トリレンジアミン、水添2,6−トリレンジアミンが挙げられる。
【0026】
また、脂肪族ポリアミンとして、好ましくは、総炭素数1〜15の脂肪族ポリアミンが挙げられ、さらに好ましくは、総炭素数1〜15の脂肪族ジアミン、とりわけ好ましくは、1,5−ジアミノペンタンおよび1,6−ジアミノヘキサン、特に好ましくは、1,5−ジアミノペンタンが挙げられる。
【0027】
そして、反応工程では、例えば、塩化カルボニルと脂肪族ポリアミンとを、反応溶媒存在下で反応させる。
【0028】
反応溶媒は、塩化カルボニル、脂肪族ポリアミンおよびポリイソシアネートに対して、不活性な有機溶媒であって、例えば、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化芳香族炭化水素類(例えば、クロロトルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなど)、エステル類(例えば、酢酸ブチル、酢酸アミルなど)、ケトン類(例えば、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなど)などが挙げられる。
【0029】
このような反応溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0030】
また、このような反応溶媒の中では、好ましくは、ハロゲン化芳香族炭化水素類が挙げられ、さらに好ましくは、ジクロロベンゼンが挙げられる。
【0031】
塩化カルボニルと脂肪族ポリアミンとを反応させる方法としては、例えば、脂肪族ポリアミンを直接、塩化カルボニルと反応させる方法(以下、直接法とする。)や、脂肪族ポリアミンの塩酸塩を、上記反応溶媒中に懸濁させて、塩化カルボニルと反応させる方法(以下、塩酸塩法とする。)などが挙げられる。
【0032】
このような方法のなかでは、好ましくは、塩酸塩法が挙げられる。
【0033】
塩酸塩法により、脂肪族ポリアミンの塩酸塩と塩化カルボニルとを反応させるには、まず、撹拌可能であり、塩化水素導入管を備える反応容器に、反応溶媒に脂肪族ポリアミンが溶解されたポリアミン溶液を装入した後、反応容器に塩化水素を供給して撹拌する。これにより、脂肪族ポリアミンと塩化水素とが反応して、脂肪族ポリアミンの塩酸塩が生成し、反応容器の内容物がスラリー状液となる(塩酸塩化反応)。
【0034】
ポリアミン溶液における脂肪族ポリアミンの含有割合は、特に制限されないが、例えば、3.0質量%以上、好ましくは、4.5質量%以上、例えば、20質量%以下、好ましくは、17質量%以下である。
【0035】
塩化水素の供給割合は、脂肪族ポリアミンのアミノ基1つに対して、例えば、1倍mol以上、例えば、10倍mol以下、好ましくは、6倍mol以下である。
【0036】
このとき、反応容器内の圧力は、例えば、常圧以上、例えば、1.0MPa以下、好ましくは、0.5MPa以下であり、反応容器内の温度は、例えば、0℃以上、例えば、180℃未満、好ましくは、160℃以下である。
【0037】
次いで、反応容器内を、上記の温度および圧力に維持するとともに、未反応塩化水素を、反応系外(反応容器外)に放出する。
【0038】
次いで、反応容器内の圧力を、例えば、常圧以上、例えば、1.0MPa以下、好ましくは、0.5MPa以下とし、反応容器内の温度を、例えば、80℃以上180℃以下に昇温する。そして、昇温後、塩化カルボニルを供給して、例えば、30分以上20時間以下、塩化カルボニルの供給を継続して、反応させる(イソシアネート化反応)。
【0039】
なお、イソシアネート化反応の進行は、発生する塩化水素ガスの量と、上記の反応溶媒中のスラリーが消失し、反応液(反応生成物)が澄明均一になることより推測できる。
【0040】
これによって、塩化カルボニルと脂肪族ポリアミン塩酸塩とが反応して、下記一般式(2)で示される脂肪族ポリイソシアネートが、主成分として生成する。
【0041】
一般式(2):
R
1−(NCO)n (2)
(式中、R
1は、上記一般式(1)のR
1と同意義を、nは、上記一般式(1)のnと同意義を示す。)
脂肪族ポリイソシアネートは、塩化カルボニルと、上記一般式(1)で示される脂肪族ポリアミンとの反応による主生成物であって、具体的には、脂肪族ジイソシアネート(例えば、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)など)、脂環族ジイソシアネート(例えば、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H
12MDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H
6XDI)、水添トリレンジイソシアネート(H
6TDI)など)などが挙げられる。
【0042】
このようなポリイソシアネートの中では、好ましくは、脂肪族ジイソシアネート、さらに好ましくは、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、および、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、とりわけ好ましくは、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0043】
以上によって、反応生成物(反応液)が調製される。
【0044】
また、好ましくは、このような反応生成物(反応液)から、反応工程において余剰な塩化カルボニルや、副生する塩化水素などのガスを除去する(脱ガス工程)。
【0045】
ガスを除去する方法としては、例えば、不活性ガスを供給して通気する方法や、公知のフラッシュタンクにより、上記ガスを反応生成物(反応液)から分離する方法が挙げられる。
【0046】
不活性ガスを供給して通気する方法により、反応生成物(反応液)からガスを除去するには、例えば、80〜160℃、好ましくは、100〜140℃の反応生成物に、不活性ガスを、例えば、60〜140L/h、好ましくは、80〜120L/hの供給速度で供給する。
【0047】
不活性ガスとしては、例えば、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウムなどが挙げられ、好ましくは、窒素が挙げられる。このような不活性ガスは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0048】
また、フラッシュタンクによりガスを反応生成物(反応液)から分離するには、例えば、ガスを含む反応生成物(反応液)を、フラッシュタンク内に流入させて急激に減圧し、ガスと、液状成分(例えば、脂肪族ポリイソシアネートや、反応溶媒など)とを分離する。
【0049】
また、本実施形態において、反応生成物(液状成分)は、上記一般式(2)で示される脂肪族ポリイソシアネートと、反応溶媒と、加水分解性塩素と、タール成分とを含有している。
【0050】
脂肪族ポリイソシアネートの含有割合は、反応生成物100質量%に対して、例えば、0.9質量%以上、好ましくは、5質量%以上、例えば、20質量%以下、好ましくは、15質量%以下である。
【0051】
反応溶媒の含有割合は、反応生成物100質量%に対して、例えば、80質量%以上、好ましくは、85質量%以上、例えば、99質量%以下、好ましくは、95質量%以下である。
【0052】
加水分解性塩素(Hydrolyzable Chloride)は、反応工程において副生する有機塩素化合物であって、加水分解により塩化水素を生成する化合物である。加水分解性塩素は、比較的沸点の低い軽沸分と、比較的沸点の高い(ペンタメチレンジイソシアネートに沸点が近い)高沸分(例えば、クロロ−ヒドロキシピリジン−カルバモイルクロリドなど)とを含んでいる。
【0053】
反応生成物中の加水分解性塩素の濃度(HC濃度)は、例えば、1000ppm以上、好ましくは、1500ppm以上、さらに好ましくは、2000ppm以上、例えば、10000ppm以下、好ましくは、5000ppm以下である。なお、加水分解性塩素の濃度(HC濃度)は、JIS K−1603−3(2007)に記載されている加水分解性塩素の求め方に準拠して測定される。
【0054】
タール成分は、反応工程において副生するポリイソシアネート残渣であって、高分子量化ポリイソシアネートを含んでいる。高分子量化ポリイソシアネートとしては、例えば、一般式(2)のポリイソシアネートの多量体(例えば、ポリイソシアネートのトリマーまたはそれ以上の多量体など)、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトンイミンなどが挙げられる。
【0055】
タール成分の含有割合は、反応生成物100質量%に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.2質量%以上、例えば、5質量%以下、好ましくは、3質量%以下である。
【0056】
このように反応生成物は、本実施形態において、ポリイソシアネート(上記一般式(2))および加水分解性塩素に加え、反応溶媒およびタール成分を含有している。
【0057】
そのため、脂肪族ポリイソシアネートの製造方法は、好ましくは、反応工程の後工程かつ、熱処理工程の前工程として、反応溶媒を除去する溶媒除去工程と、タール成分を除去するタール除去工程とを含んでいる。
【0058】
溶媒除去工程において反応溶媒を除去するには、例えば、蒸留により、反応生成物から反応溶媒を留去する。
【0059】
タール除去工程においてタール成分を除去するには、例えば、公知の薄膜蒸発器によって、反応生成物からタール成分を除去する。
【0060】
反応溶媒およびタール成分を除去した反応生成物中の加水分解性塩素の濃度(HC濃度)は、例えば、1000ppm以上、好ましくは、1500ppm以上、さらに好ましくは、2000ppm以上、例えば、10000ppm以下、好ましくは、5000ppm以下である。
【0061】
2.熱処理工程
次いで、反応生成物を加熱処理して、加水分解性塩素を除去する。
【0062】
このような熱処理工程は、反応生成物を、連続撹拌槽型反応器にて加熱する第1工程と、第1工程後、反応生成物を、管型反応器にて加熱する第2工程とを含んでおり、好ましくは、第1工程と第2工程とからなり、第2工程が、第1工程に連続して実施される。
【0063】
(2−1)第1工程
第1工程では、反応生成物を、連続撹拌槽型反応器にて加熱する。
【0064】
第1工程において用いられる連続撹拌槽型反応器(Continuous Stirred Tank Reactor:CSTR)は、特に制限されず、熱処理容器および撹拌機を備える、公知の連続式の撹拌槽型反応器を用いることができる。
【0065】
連続撹拌槽型反応器では、好ましくは、反応生成物に不活性ガスを導入しながら加熱する。
【0066】
より具体的には、例えば、まず、反応生成物を連続撹拌槽型反応器に装入した後、連続撹拌槽型反応器に不活性ガスを導入(供給)し、不活性ガスを反応生成物に吹き込んで、連続撹拌槽型反応器内を不活性ガスでパージする。
【0067】
不活性ガスとしては、上記の不活性ガスが挙げられ、好ましくは、窒素が挙げられる。このような不活性ガスは、単独使用または2種類以上併用することができる。反応生成物100g/hに対する不活性ガスの単位時間当たりの流量は、例えば、3mL/min以上、好ましくは、6mL/min以上であり、例えば、300mL/min以下、好ましくは、150mL/min以下である。
【0068】
次いで、反応生成物に、不活性ガスを連続して導入しながら、必要により撹拌し、加熱処理する。これにより、反応生成物の一部が、連続撹拌槽型反応器内において気散されるとともに、反応生成物が加熱処理される。
【0069】
第1工程の熱処理温度は、例えば、140℃以上、好ましくは、160℃以上、さらに好ましくは、180℃以上、例えば、260℃以下、好ましくは、245℃以下、より好ましくは、240℃以下、さらに好ましくは、220℃以下である。
【0070】
第1工程の熱処理温度が、上記下限以上であれば、反応生成物中の加水分解性塩素を確実に低減でき、上記上限以下であれば、反応生成物中のポリイソシアネートが重合すること(ポリイソシアネートの重合ロス)を抑制できる。
【0071】
また、第1工程の熱処理温度は、ポリイソシアネートの重合ロスを抑制する観点から、好ましくは、第2工程(後述)における熱処理温度以下、より好ましくは、第2工程(後述)における熱処理温度未満である。
【0072】
第1工程の熱処理温度が、第2工程(後述)における熱処理温度未満である場合、第1工程の熱処理温度と第2工程(後述)における熱処理温度との差は、例えば、5℃以上、好ましくは、10℃以上であり、例えば、30℃以下、好ましくは、20℃以下である。
【0073】
第1工程の熱処理温度と、第2工程(後述)における熱処理温度との差が上記範囲であれば、とりわけ効率よく、ポリイソシアネートの重合ロスを抑制でき、また、加水分解性塩素の濃度を低減することができる。
【0074】
また、第1工程の熱処理時間(滞留時間)は、例えば、0.1時間以上、好ましくは、0.5時間以上、さらに好ましくは、1時間以上、例えば、6時間以下、好ましくは、5時間未満、さらに好ましくは、4時間以下である。
【0075】
第1工程の熱処理時間が、上記下限以上であれば、反応生成物中の加水分解性塩素を確実に低減でき、上記上限以下であれば、反応生成物中のポリイソシアネートが重合すること(ポリイソシアネートの重合ロス)を抑制できる。
【0076】
また、第1工程の熱処理時間(滞留時間)は、好ましくは、第2工程(後述)における熱処理時間(滞留時間)以下、より好ましくは、第2工程(後述)における熱処理時間(滞留時間)未満である。
【0077】
第1工程の熱処理時間(滞留時間)が、第2工程(後述)における熱処理時間(滞留時間)未満である場合、第1工程の熱処理時間(滞留時間)と第2工程(後述)における熱処理時間(滞留時間)との差は、例えば、0.1時間以上、好ましくは、0.5時間以上であり、例えば、3時間以下、好ましくは、2時間以下である。
【0078】
第1工程の熱処理時間(滞留時間)と、第2工程(後述)における熱処理時間(滞留時間)との差が上記範囲であれば、とりわけ効率よく、加水分解性塩素の濃度を低減することができる。
【0079】
また、第1工程の熱処理時間は、熱処理工程の総時間(第1工程の熱処理時間および第2工程の熱処理時間の総和)に対して、例えば、20%以上、好ましくは、25%以上、より好ましくは、30%以上、さらに好ましくは、35%以上であり、例えば、50%以下、好ましくは、45%以下、より好ましくは、43%以下であり、さらに好ましくは、40%以下である。
【0080】
第1工程の熱処理時間の割合が、上記下限以上であれば、反応生成物中の加水分解性塩素を確実に低減でき、上記上限以下であれば、反応生成物中のポリイソシアネートが重合すること(ポリイソシアネートの重合ロス)を抑制できる。
【0081】
また、第1工程における圧力は、例えば、1kPa以上、好ましくは、10kPa以上、例えば、1000kPa以下、好ましくは、500kPa以下、さらに好ましくは、常圧である。
【0082】
これにより、反応生成物中の加水分解性塩素、とりわけ、比較的熱分解速度の速い軽沸分が分解し、第1工程が完了する。
【0083】
第1工程終了時(第1工程後第2工程前)において、反応生成物中の加水分解性塩素の濃度(HC濃度)は、例えば、200ppm以上、好ましくは、300ppm以上、例えば、3000ppm以下、好ましくは、2500ppm以下である。
【0084】
また、第1工程後の反応生成物中のHC濃度は、第1工程前の反応生成物中のHC濃度に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、さらに好ましくは、30質量%以上、とりわけ好ましくは、35質量%以上、例えば、60質量%以下、好ましくは、55質量%以下である。
【0085】
つまり、第1工程では、反応生成物におけるHC濃度が、第1工程前の反応生成物におけるHC濃度に対して、上記上限以下となるまで、反応生成物を加熱処理している。
【0086】
第1工程後の反応生成物のHC濃度が上記範囲であれば、第2工程においてHC濃度を確実に低減できる。
【0087】
これによって、第1工程の加水分解性塩素の低減割合([第1工程前の反応生成物中のHC濃度−第1工程後の反応生成物中のHC濃度]/第1工程前の反応生成物中のHC濃度×100)は、例えば、40質量%以上、好ましくは、45質量%以上、さらに好ましくは、50質量%以上、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下、さらに好ましくは、70質量%以下である。
【0088】
(2−2)第2工程
次いで、第2工程では、第1工程後の反応生成物を、管型反応器にて加熱する。
【0089】
第2工程において用いられる管型反応器(Plug Flow Reactor:PFR)は、特に制限されず、公知の連続式の管型反応器を用いることができる。
【0090】
管型反応器では、反応生成物に不活性ガスを導入(パージ)するか、または、導入せずに、加熱する。好ましくは、反応生成物に不活性ガスを導入(パージ)しながら加熱する。
【0091】
不活性ガスとしては、例えば、上記の不活性ガスが挙げられ、好ましくは、第1工程で使用される不活性ガスと同一の不活性ガスが挙げられる。反応生成物100g/hに対する不活性ガスの単位時間当たりの流量は、例えば、3mL/min以上、好ましくは、6mL/min以上であり、例えば、300mL/min以下、好ましくは、150mL/min以下である。
【0092】
また、第2工程において、反応生成物に不活性ガスを導入する場合、加水分解性塩素濃度を低減する観点から、好ましくは、第2工程における不活性ガスの単位時間当たりの流量は、第1工程における不活性ガスの単位時間当たりの流量以下、より好ましくは、第1工程における不活性ガスの単位時間当たりの流量未満である。
【0093】
第2工程における不活性ガスの流量が、第1工程における不活性ガスの流量未満である場合、反応生成物100g/hに対する不活性ガスの単位時間当たりの流量の差は、例えば、0.5mL/min以上、好ましくは、5mL/min以上であり、例えば、100mL/min以下、好ましくは、50mL/min以下である。
【0094】
第2工程における不活性ガスの流量と、第1工程における不活性ガスの流量との差が上記範囲であれば、とりわけ効率よく、加水分解性塩素の濃度を低減することができる。
【0095】
また、第2工程の熱処理温度は、例えば、140℃以上、好ましくは、160℃以上、さらに好ましくは、180℃以上、例えば、260℃以下、好ましくは、245℃以下、より好ましくは、240℃以下、さらに好ましくは、220℃以下である。
【0096】
第2工程の熱処理温度が、上記下限以上であれば、反応生成物中の加水分解性塩素を確実に低減でき、上記上限以下であれば、反応生成物中のポリイソシアネートが重合すること(ポリイソシアネートの重合ロス)を抑制できる。
【0097】
また、第2工程の熱処理温度は、好ましくは、第1工程における熱処理温度以上、より好ましくは、第2工程(後述)における熱処理温度を超過する。
【0098】
第2工程の熱処理温度が、第1工程における熱処理温度を超過する場合、第1工程の熱処理温度と第2工程における熱処理温度との差は、上記した通り、例えば5℃以上、好ましくは、10℃以上であり、例えば、30℃以下、好ましくは、20℃以下である。
【0099】
第1工程の熱処理温度と、第2工程における熱処理温度との差が上記範囲であれば、とりわけ効率よく、加水分解性塩素の濃度を低減することができる。
【0100】
また、第2工程の熱処理時間(滞留時間)は、例えば、0.1時間以上、好ましくは、0.5時間以上、さらに好ましくは、1時間以上、例えば、6時間以下、好ましくは、5時間未満、さらに好ましくは、4時間以下である。
【0101】
第2工程の熱処理時間が、上記下限以上であれば、反応生成物中の加水分解性塩素を確実に低減でき、上記上限以下であれば、反応生成物中のポリイソシアネートが重合すること(ポリイソシアネートの重合ロス)を抑制できる。
【0102】
また、第2工程の熱処理時間(滞留時間)は、好ましくは、第1工程における熱処理時間(滞留時間)以上、より好ましくは、第1工程における熱処理時間(滞留時間)を超過する。
【0103】
第2工程の熱処理時間(滞留時間)が、第1工程における熱処理時間(滞留時間)を超過する場合、第1工程の熱処理時間(滞留時間)と第2工程における熱処理時間(滞留時間)との差は、上記した通り、例えば、0.1時間以上、好ましくは、0.5時間以上であり、例えば、3時間以下、好ましくは、2時間以下である。
【0104】
第1工程の熱処理時間(滞留時間)と、第2工程における熱処理時間(滞留時間)との差が上記範囲であれば、とりわけ効率よく、加水分解性塩素の濃度を低減することができる。
【0105】
また、第2工程の熱処理時間は、熱処理工程の総時間(第1工程の熱処理時間および第2工程の熱処理時間の総和)に対して、例えば、50%以上、好ましくは、55%以上、より好ましくは、57%以上、さらに好ましくは、60%以上であり、例えば、80%以下、好ましくは、75%以下であり、より好ましくは、70%以下、さらに好ましくは、65%以下である。
【0106】
第2工程の熱処理時間の割合が、上記下限以上であれば、反応生成物中の加水分解性塩素を確実に低減でき、上記上限以下であれば、反応生成物中のポリイソシアネートが重合すること(ポリイソシアネートの重合ロス)を抑制できる。
【0107】
これにより、反応生成物中の加水分解性塩素、とりわけ、比較的熱分解速度の遅い高沸分が分解および除去される。その後、必要により冷却する。
【0108】
以上によって、第2工程が完了し、熱処理後の反応生成物が調製される。 熱処理後の反応生成物は、脂肪族ポリイソシアネートと、微量の加水分解性塩素と、タール成分(熱処理工程において副生するポリイソシアネート残渣)とを含有している。
【0109】
脂肪族ポリイソシアネートの含有割合は、熱処理後の反応生成物100質量%に対して、例えば、80質量%以上、好ましくは、85質量%以上、例えば、99質量%以下、好ましくは、95質量%以下である。
【0110】
第2工程後(熱処理工程後)において、反応生成物中のHC濃度は、例えば、100ppm以上、好ましくは、200ppm以上、例えば、1600ppm以下、好ましくは、1500ppm以下、より好ましくは、1530ppm以下である。
【0111】
また、熱処理後の反応生成物中のHC濃度は、第1工程前の反応生成物中のHC濃度に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下である。
【0112】
つまり、熱処理工程の加水分解性塩素の低減割合([第1工程前の反応生成物中のHC濃度‐第2工程後の反応生成物中のHC濃度]/第1工程前の反応生成物中のHC濃度×100)は、例えば、55質量%以上、好ましくは、60質量%以上、例えば、99質量%以下、好ましくは、95質量%以下である。
【0113】
また、上記の熱処理工程(第1工程および/または第2工程)では、反応生成物に、触媒または添加物を添加することができる。
【0114】
添加物としては、例えば、鉄、銅、亜鉛などの金属が挙げられる。これら金属は、単独使用または2種類以上併用することができる。金属として、好ましくは、銅が挙げられる。
【0115】
金属の添加量は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定されるが、例えば、脂肪族ポリイソシアネート100質量部に対して、例えば、0.01質量%以上、好ましくは、0.1質量%以上、さらに好ましくは、0.15質量%以上、例えば、0.50質量%以下、好ましくは、0.40質量%以下、さらに好ましくは、0.30質量%以下である。
【0116】
また、金属の添加のタイミングは、特に制限されず、例えば、第1工程であってもよく、第2工程であってもよく、また、第1工程および第2工程の両方であってもよい。
【0117】
また、熱処理工程において金属を添加すると、金属と、加水分解性塩素の塩素原子とが反応することにより、金属塩化物(例えば、塩化銅、塩化鉄、塩化亜鉛)が生成する場合がある。
【0118】
金属塩化物の含有割合は、熱処理後の反応生成物100質量%に対して、例えば、0.015質量%以上、好ましくは、0.15質量%以上、例えば、1.0質量%以下、好ましくは、0.7質量%以下である。
【0119】
3.精製工程
また、脂肪族ポリイソシアネートの製造方法は、好ましくは、反応生成物を精製する精製工程を含んでいる。
【0120】
精製工程では、公知の方法により、反応生成物から、脂肪族ポリイソシアネートを分離するとともに、例えば、加水分解性塩素およびタール成分などを除去する。
【0121】
反応生成物の精製方法としては、特に制限されないが、例えば、濾過、蒸留などが挙げられ、好ましくは、蒸留が挙げられる。
【0122】
蒸留温度としては、例えば、100℃以上、好ましくは、120℃以上、例えば、160℃以下、好ましくは、140℃以下である。蒸留圧力としては、例えば、1.0kPa以上、好ましくは、1.7kPa以上、例えば、3.0kPa以下、好ましくは、2.4kPa以下である。
【0123】
また、蒸留時間(滞留時間)は、例えば、0.1時間以上、好ましくは、0.5時間以上、さらに好ましくは、1時間以上、例えば、12時間以下、好ましくは、10時間未満、さらに好ましくは、8時間以下である。
【0124】
以上により、反応生成物から、純度の高い脂肪族ポリイソシアネート(精脂肪族ポリイソシアネート)が製造される。
【0125】
精脂肪族ポリイソシアネートの純度は、例えば、95質量%以上、好ましくは、98質量%以上、例えば、100質量%以下、好ましくは、99.999質量%以下である。
【0126】
また、精脂肪族ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネートと、少量の加水分解性塩素とを含有する組成物であり、精脂肪族ポリイソシアネート中の加水分解性塩素の濃度(HC濃度)は、例えば、10ppm以上、好ましくは、20ppm以上、例えば、350ppm以下、好ましくは、300ppm以下、より好ましくは、200ppm以下、さらに好ましくは、100ppm以下である。
【0127】
また、精脂肪族ポリイソシアネート中のHC濃度は、第1工程前の反応生成物中のHC濃度に対して、例えば、0.05質量%以上、好ましくは、0.1質量%以上、例えば、15質量%以下、好ましくは、3.5質量%以下、さらに好ましくは、3.0質量%以下、とりわけ好ましくは、2.0質量%以下である。
【0128】
つまり、精脂肪族ポリイソシアネートの加水分解性塩素の低減割合([第1工程前の反応生成物中のHC濃度‐精脂肪族ポリイソシアネート中のHC濃度]/第1工程前の反応生成物中のHC濃度×100)は、例えば、85質量%以上、好ましくは、96.5質量%以上、さらに好ましくは、97.0質量%以上、とりわけ好ましくは、98.0質量%以上、例えば、99.95質量%以下、好ましくは、99.9質量%以下である。
【0129】
4.プラント
このような脂肪族ポリイソシアネートの製造方法は、
図1に示すように、本発明の脂肪族ポリイソシアネートの製造装置の一実施形態としてのプラント1により、工業的に連続実施される。
【0130】
プラント1は、上記した方法で脂肪族ポリイソシアネートを製造する脂肪族ポリイソシアネートの製造装置であって、反応ユニット2と、ガス除去ユニット7と、溶媒除去ユニット3と、タール除去ユニット4と、熱処理ユニット5と、精製ユニット6とを備えている。
【0131】
反応ユニット2は、反応工程が実施されるように構成されている。反応ユニット2は、反応容器10と、塩化水素供給ライン13と、塩化カルボニル供給ライン11と、アミン供給ライン12と、反応生成物輸送ライン14とを備えている。
【0132】
反応容器10は、脂肪族ポリアミンと塩化水素、および、脂肪族ポリアミンの塩酸塩と塩化カルボニルを反応させるための反応槽であって、例えば、温度・圧力が制御可能な耐熱耐圧容器からなる。
【0133】
塩化水素供給ライン13は、反応容器10に塩化水素を供給するための配管であって、その下流端部が、反応容器10に接続されている。また、上流端部は、図示しないが、塩化水素を貯留する塩化水素タンクに接続されている。
【0134】
塩化カルボニル供給ライン11は、反応容器10に塩化カルボニルを供給するための配管であって、その下流端部が、反応容器10に接続されている。また、上流端部は、図示しないが、塩化カルボニルを貯留する塩化カルボニルタンクに接続されている。
【0135】
アミン供給ライン12は、反応容器10に脂肪族ポリアミン(上記一般式(1))を供給するための配管であって、その下流端部が、反応容器10に接続されている。また、上流端部は、図示しないが、脂肪族ポリアミン(ポリアミン溶液)を貯留するアミンタンクに接続されている。
【0136】
反応生成物輸送ライン14は、反応容器10内において生成される反応生成物を、ガス除去ユニット7に輸送するための配管であって、その上流端部が、反応容器10の下端部(底部)に接続されている。
【0137】
なお、反応ユニット2は、図示しないが、必要により、反応容器10内を攪拌するための攪拌装置などを備えることもできる。
【0138】
ガス除去ユニット7は、脱ガス工程を実施するように構成されており、フラッシュタンク40と、流出ライン41と、排気ライン42とを備えている。
【0139】
フラッシュタンク40は、公知のフラッシュタンクであって、例えば、特開2009−119346号公報に記載のフラッシュタンクなどが挙げられる。フラッシュタンク40の上下方向略中央部には、反応生成物輸送ライン14の下流端部が接続されている。
【0140】
流出ライン41は、ガスが除かれた反応生成物を溶媒除去ユニット3に輸送するための配管であって、その上流端部が、フラッシュタンク40の塔底部に接続されている。
【0141】
排気ライン42は、フラッシュタンク40により、反応生成物から分離されるガスを排出するための配管であって、その上流端部が、フラッシュタンク40の塔頂部に接続されている。なお、排気ライン42の下流端部は、図示しないガス捕集部に接続されるか、または、大気開放されている。
【0142】
溶媒除去ユニット3は、溶媒除去工程を実施するように構成されており、蒸留塔18と、缶出ライン19と、留出ライン20とを備えている。
【0143】
蒸留塔18は、例えば、温度・圧力制御可能な公知の蒸留塔からなり、好ましくは、連続式の蒸留塔である。蒸留塔18の上下方向略中央部には、流出ライン41の下流端部が接続されている。
【0144】
缶出ライン19は、蒸留塔18からの缶出液、つまり、反応溶媒が除かれた反応生成物をタール除去ユニット4に輸送するための配管であって、その上流端部が、蒸留塔18の塔底部に接続されている。
【0145】
留出ライン20は、蒸留塔18からの留出液、つまり、反応溶媒を留去するための配管であって、その上流端部が、蒸留塔18の塔頂部に接続されている。また、下流端部は、図示しないが、溶媒を回収する溶媒タンクに接続されているか、または、反応容器10に接続されており、反応溶媒を再使用可能としている。
【0146】
タール除去ユニット4は、タール除去工程を実施するように構成されており、薄膜蒸発器23と、第1抜出ライン24と、第2抜出ライン28とを備えている。
【0147】
薄膜蒸発器23は、公知の薄膜蒸発器であって、ケーシング25と、ワイパ26と、内部コンデンサ27とを備えている。
【0148】
ケーシング25は、鉛直方向に延びる略円筒形状を有しており、その上下両端部が閉鎖されている。ケーシング25の下側部分は、下方に向かうにつれて小径となる漏斗形状を有している。ケーシング25には、缶出ライン19の下流端部が接続されている。また、ケーシング25には、ケーシング25内を加熱するためのジャケットおよびケーシング25内を減圧するための吸引管(図示せず)が設けられている。
【0149】
ワイパ26は、ケーシング25内に配置されており、ケーシング25の内周面と僅かに間隔を空けて配置されている。ワイパ26は、図示しないモータにより回転可能である。
【0150】
内部コンデンサ27は、例えば、冷媒が循環される熱交換器からなり、ケーシング25内において、ケーシング25の底壁に配置されている。
【0151】
第1抜出ライン24は、ケーシング25から、タール成分が除かれた反応生成物を熱処理ユニット5に輸送するための配管であって、その上流端部が、内部コンデンサ27に接続されている。
【0152】
第2抜出ライン28は、ケーシング25からタール成分を抜き出すための配管であって、その上流端部が、ケーシング25の下側部分に接続されている。
【0153】
熱処理ユニット5は、熱処理工程を実施するように構成されており、第1熱処理ユニット51と、第2熱処理ユニット52とを備えている。
【0154】
第1熱処理ユニット51は、第1工程を実施するように、連続撹拌槽型反応器53から構成されている。
【0155】
連続撹拌槽型反応器53は、熱処理槽30と、第1ガス供給ライン32と、第1反応生成物輸送ライン33と、第1排気ライン34とを備えている。
【0156】
熱処理槽30は、例えば、水平はね式撹拌機39を備え、温度・圧力制御可能な耐熱耐圧容器からなる。熱処理槽30の上下方向略中央部には、第1抜出ライン24の下流端部が接続されている。
【0157】
第1ガス供給ライン32は、熱処理槽30に、上記不活性ガスを供給するための配管であって、その下流端部が、熱処理槽30に接続されている。
【0158】
第1反応生成物輸送ライン33は、熱処理槽30において熱処理された反応生成物を、第2熱処理ユニット52に輸送するための配管であって、その上流端部が、熱処理槽30の下端部(底部)に接続されている。
【0159】
第1排気ライン34は、第1ガス供給ライン32により供給される不活性ガスを、熱処理槽30から排出するための配管であって、その上流端部が、熱処理槽30の上端部(頂部)に接続されており、下流端部は、図示しないが、イソシアネート回収部に接続されるか、大気開放されている。
【0160】
第2熱処理ユニット52は、第2工程を実施するように、管型反応器54から構成されている。
【0161】
管型反応器54は、熱処理管35と、第2ガス供給ライン36と、第2反応生成物輸送ライン37と、第2排気ライン38とを備えている。
【0162】
熱処理管35は、例えば、充填塔などから構成され、温度・圧力制御可能な管型の耐熱耐圧容器からなる。熱処理管35の下端部(管底)には、第1反応生成物輸送ライン33の下流端部が接続されている。
【0163】
第2ガス供給ライン36は、熱処理管35に、上記不活性ガスを供給するための配管であって、その下流端部が、熱処理管35の下側面に接続されている。
【0164】
第2反応生成物輸送ライン37は、熱処理管35において熱処理された反応生成物を、精製ユニット6に輸送するための配管であって、その上流端部が、熱処理管35の上側面に接続されている。
【0165】
第2排気ライン38は、第2ガス供給ライン36により供給される不活性ガスを、熱処理管35から排出するための配管であって、その上流端部が、熱処理管35の上端部(管頂部)に接続されており、下流端部は、図示しないが、イソシアネート回収部に接続されるか、大気開放されている。
【0166】
精製ユニット6は、精製工程を実施するように構成されており、蒸留塔44と、缶出ライン45と、留出ライン46とを備えている。
【0167】
蒸留塔44は、例えば、温度・圧力制御可能な公知の蒸留塔からなり、好ましくは、連続式の蒸留塔である。蒸留塔44の上下方向略中央部には、第2反応生成物輸送ライン37の下流端部が接続されている。
【0168】
缶出ライン45は、蒸留塔44からの缶出液を排出するための配管であって、その上流端部が、蒸留塔44の塔底部に接続されている。
【0169】
留出ライン46は、蒸留塔44からの留出液、つまり、脂肪族ポリイソシアネート(上記一般式(2))を排出するための配管であって、その上流端部が、蒸留塔44の塔頂部に接続されている。
【0170】
なお、精製ユニット6は、熱処理後の反応生成物を、公知のろ過器により減圧濾過した後、その濾液を、公知の蒸留装置により蒸留するように構成することもできる。
【0171】
次に、プラント1の動作について説明する。
【0172】
プラント1では、まず、塩化水素が、塩化水素供給ライン13を介して、反応容器10に連続的に供給されるとともに、脂肪族ポリアミンが反応溶媒に溶解されたポリアミン溶液として、アミン供給ライン12を介して、反応容器10に連続的に供給される。さらに、塩化カルボニルが、塩化カルボニル供給ライン11を介して、反応容器10に連続的に供給される。
【0173】
そして、塩化カルボニルと脂肪族ポリアミン塩酸塩とが、反応容器10内において、上記反応条件下で反応し、脂肪族ポリイソシアネート(上記一般式(2))が生成するとともに、加水分解性塩素、塩化水素およびタール成分が副生する(反応工程)。
【0174】
以上によって、脂肪族ポリイソシアネートと、加水分解性塩素と、反応溶媒と、タール成分とを含有する反応生成物が調製される。
【0175】
その後、反応生成物は、反応生成物輸送ライン14を介して、フラッシュタンク40内に流入し、余剰の塩化カルボニルおよび塩化水素などのガスと、脂肪族ポリイソシアネートや反応溶媒などの液状成分とに分離される。
【0176】
そして、ガスは、排気ライン42を介して、フラッシュタンク40から排出され、ガスが除去された反応生成物は、流出ライン41を介して、フラッシュタンク40から流出し、蒸留塔18に圧力輸送される。
【0177】
次いで、反応生成物は、蒸留塔18において蒸留される(溶媒除去工程)。
【0178】
蒸留塔18の塔底温度は、例えば、120℃以上、好ましくは、130℃以上、例えば、160℃以下、好ましくは、150℃以下であり、塔頂温度は、例えば、60℃以上、好ましくは、70℃以上、例えば、100℃以下、好ましくは、90℃以下である。
【0179】
また、蒸留塔18内の圧力は、例えば、1kPa以上、好ましくは、2kPa以上、例えば、10kPa以下、好ましくは、5kPa以下である。
【0180】
そして、反応溶媒は、留出ライン20により、蒸留塔18から留去される。留去された反応溶媒は、溶媒を回収する溶媒タンクに回収されるか、または、反応容器10に直接輸送され、必要に応じて、再使用可能とされる。
【0181】
一方、反応溶媒が留去された反応生成物は、蒸留塔18の缶出液として、缶出ライン19を介して、蒸留塔18からタール除去ユニット4のケーシング25に圧力輸送される。
【0182】
そして、タール除去ユニット4のケーシング25に輸送された反応生成物は、所定の温度(例えば、100〜150℃)に加熱されるとともに、ワイパ26とケーシング25の内周面との隙間において液膜に形成される。
【0183】
ここで、タール成分は、液膜から蒸発することなく濃縮され、第2抜出ライン28から流出される。これにより、反応生成物から、タール成分が除去される(タール除去工程)。
【0184】
一方、タール成分を除く反応生成物(脂肪族ポリイソシアネートおよび加水分解性塩素)は、加熱により蒸発し、内部コンデンサ27で濃縮され、第1抜出ライン24から流出される。
【0185】
そして、タール成分が除かれた反応生成物は、第1抜出ライン24を介して、熱処理槽30に圧力輸送される。また、熱処理槽30には、第1ガス供給ライン32を介して、不活性ガスが供給され、不活性ガスは、熱処理槽30を通過した後、第1排気ライン34を介して、熱処理槽30から排出される。
【0186】
熱処理槽30に供給された反応生成物は、熱処理槽30内において、まず、不活性ガスを導入されながら、上記の第1工程の条件下で熱処理される(第1工程)。これにより、加水分解性塩素のうち、比較的熱分解速度の速い軽沸分が、除去される。
【0187】
次いで、熱処理された反応生成物は、第1反応生成物輸送ライン33を介して、熱処理管35に圧力輸送される。また、熱処理管35には、必要に応じて、第2ガス供給ライン36を介して、不活性ガスが供給され、不活性ガスは、熱処理管35を通過した後、第2排気ライン36を介して、熱処理管35から排出される。
【0188】
熱処理管35に供給された反応生成物は、熱処理管35内において、まず、不活性ガスを導入されながら、上記の第2工程の条件下で熱処理される(第2工程)。これにより、加水分解性塩素のうち、比較的熱分解速度の遅い高沸分が、除去される。
【0189】
その後、熱処理された反応生成物は、第2反応生成物輸送ライン37を介して、蒸留塔44に圧力輸送される。
【0190】
次いで、熱処理された反応生成物は、蒸留塔44において蒸留される(精製工程)。
【0191】
蒸留塔44の塔底温度は、例えば、120℃以上、好ましくは、130℃以上、例えば、160℃以下、好ましくは、150℃以下であり、塔頂温度は、例えば、80℃以上、好ましくは、90℃以上、例えば、150℃以下、好ましくは、140℃以下である。
【0192】
また、蒸留塔44内の圧力は、例えば、1kPa以上、好ましくは、2kPa以上、例えば、10kPa以下、好ましくは、5kPa以下である。
【0193】
そして、留出ライン46から留出する留出液が、脂肪族ポリイソシアネートとして採取される。なお、蒸留塔44の釜残分は、缶出液として、缶出ライン45を介して、蒸留塔44から除去される。
【0194】
以上により、脂肪族ポリイソシアネート(精脂肪族ポリイソシアネート)が、連続的に製造される。
【0195】
このような脂肪族ポリイソシアネートの製造方法および脂肪族ポリイソシアネートの製造装置(上記プラント1)によれば、第1工程において、反応生成物を、連続撹拌槽型反応器にて加熱するため、反応生成物から比較的熱分解速度の速い加水分解性塩素が効率よく除去される。そして、第2工程において、反応生成物を、管型反応器にて加熱するため、反応生成物から比較的熱分解速度の遅い加水分解性塩素が効率よく除去される。
【0196】
より具体的には、熱処理による加水分解性塩素の除去では、熱処理の前半(第1工程)において、比較的熱分解速度の速い加水分解性塩素が分解され、その塩素分がガス成分として除去される。そして、熱処理の後半(第2工程)では、加水分解性塩素の分解速度が低下し、一方、比較的熱分解速度の遅い加水分解性塩素が高分子量化され、次の精製工程にて容易に分離可能な高分子量物に変換される。
【0197】
このとき、熱処理の後半(第2工程)における熱処理時間が長ければ、高分子量化される加水分解性塩素を増加させることができ、加水分解性塩素の除去効率の向上を図ることができるが、単に熱処理時間を長くするのみでは、反応生成物中のポリイソシアネートが重合し、重合ロスが増加する不具合がある。
【0198】
しかし、上記のように、第1工程において、反応生成物を、連続撹拌槽型反応器にて加熱し、比較的熱分解速度の速い加水分解性塩素を除去した後、第2工程において、反応生成物を、管型反応器にて加熱すれば、熱処理時間が比較的短い場合にも、効率よく加水分解性塩素を除去し、かつ、ポリイソシアネートの重合ロスを抑制することができる。
【0199】
すなわち、反応生成物から、加水分解性塩素を効率よく除去することができる。
【0200】
よって、上記の脂肪族ポリイソシアネートの製造方法および脂肪族ポリイソシアネートの製造装置(上記プラント1)によれば、脂肪族ポリイソシアネートの製造効率の向上を図ることができながら、製造コストの低減を図ることができる。
【0201】
なお、上記のプラント1では、第2熱処理ユニット52(熱処理工程の第2工程)において、反応生成物に、不活性ガスを導入(パージ)しながら加熱するが、これに限定されず、第2熱処理ユニット52(熱処理工程の第2工程)において、不活性ガスを導入(パージ)せずに反応生成物を加熱することもできる。
【実施例】
【0202】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
【0203】
また、以下において記載される各種物性の測定法を下記する。
【0204】
<脂肪族ポリイソシアネートおよび反応生成物の加水分解性塩素の濃度(単位:ppm)>
加水分解性塩素の濃度(HC濃度)は、JIS K−1603−3(2007)に記載されている加水分解性塩素の求め方に準拠して測定した。
【0205】
<ポリイソシアネートの重合ロス>
熱処理前後のポリイソシアネートの濃度(質量%)を、ガスクロマトグラフィーにより測定し下記式により、ポリイソシアネートの重合ロスを算出した。
【0206】
重合ロス = 100−([熱処理後のポリイソシアネート濃度]/[熱処理前のポリイソシアネート濃度])×100
また、ガスクロマトグラフィーの測定条件を以下に示す。
【0207】
インジェクション温度;250℃
キャリアガス;N
2/Airガス
流速;40mL/min
カラム:DB−1(アジレント・テクノロジー社)0.53mm×30m×1.5μm
スプリット比率;10
温度:120〜280℃、昇温速度7℃/min
検出器:FID
実施例1
(1)反応生成物の調製(反応工程)
電磁誘導撹拌機、自動圧力調整弁、温度計、窒素導入ライン、塩化水素導入ライン、塩化カルボニル導入ライン、凝縮器、原料フィードポンプを備え付けたジャケット付き加圧反応器に、1,5−ペンタメチレンジアミン380質量部をo−ジクロロベンゼン5000質量部に溶解したポリアミン溶液を仕込んだ。次いで、撹拌を開始し、反応器ジャケットには蒸気を通し、内温を約130℃に保った。そこへ塩化水素400質量部を塩化水素導入ラインから加え、130℃以下、常圧下で塩酸塩化反応を開始した。フィード終了後、加圧反応器内は淡褐白色スラリー状液となった。
【0208】
次いで、反応器の内液を徐々に160℃まで昇温し、塩化カルボニル(ホスゲン)1350質量部を添加しながら、圧力0.25MPa、反応温度160℃で6時間ホスゲン化した。ホスゲン化の過程で、加圧反応器内液は、淡褐色澄明溶液となった。
【0209】
ホスゲン化終了後、100〜140℃において、窒素ガスを100L/時で通気し、余剰の塩化カルボニル、副生する塩化水素を除去した(脱ガス)。
【0210】
以上によって、反応生成物を得た。反応生成物は、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート(脂肪族ポリイソシアネート)と、加水分解性塩素と、オルトジクロロベンゼンと、タール成分とを含有していた。
【0211】
次いで、反応生成物を、減圧下で、オルトジクロロベンゼンを留去した(脱溶媒)。
【0212】
その後、公知の薄膜蒸発器によって、反応生成物から、タール成分を分離し除去した。
【0213】
この反応生成物において、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートの含有割合は、95質量%であり、加水分解性塩素の濃度(以下、HC濃度とする。)は、4052ppmであった。
【0214】
(2)加熱処理工程
(2−1)第1工程(熱処理前半)
次いで、反応生成物を、撹拌機、温度計および窒素導入管を備えた槽型の熱処理装置(CSTRに相当する装置)に、フィードポンプを用いて輸送し、また、窒素を20mL/minで導入するとともに、300rpmで撹拌しながら、常圧下、200℃で加熱処理を開始した。なお、フィードポンプによる輸送速度は、反応生成物の槽内における滞留時間が2時間となるように、調節した。
【0215】
そして、加熱処理開始から2時間後に、反応生成物を取り出し、HC濃度を測定した。HC濃度は、2067ppmであった。
【0216】
(2−2)第2工程(熱処理後半)
次いで、上記第1工程で取り出した反応生成物を、温度計、窒素導入管およびオイルヒーターを備えた管型の熱処理装置(PFRに相当する装置)の底部に、フィードポンプを用いて輸送し、また、窒素を20mL/minで導入しながら、常圧下、200℃で加熱処理した。
【0217】
なお、フィードポンプによる輸送速度は、反応生成物の管内における滞留時間が2時間となるように、調節した。
【0218】
そして、2時間滞留させた反応生成物を、管型の熱処理装置の上部から取り出し、HC濃度を測定した。HC濃度は、1323ppmであった。
【0219】
以上によって、反応生成物が熱処理された。その後、40℃以下に冷却して、熱処理後の反応生成物を得た。
【0220】
熱処理後の反応生成物は、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートと、加水分解性塩素とを含有していた。
【0221】
(3)精製工程
次いで、熱処理後の反応生成物を、減圧濾過(ろ紙:型式No.5A)した後、その濾液を、撹拌機、フラスコおよび冷却管を備える蒸留装置により、120〜140℃、1.7〜2.4kPaの条件で蒸留(精留)した。
【0222】
そして、初留分10質量%(10質量部)を留出させた後、主留分(本留分)70質量%(70質量部)を、精ペンタメチレンジイソシアネートとして採取した。なお、釜残分は、20質量%(20質量部)であった。
【0223】
精ペンタメチレンジイソシアネート中のHC濃度は、97ppmであり、精ペンタメチレンジイソシアネートのHC低減率は、加熱処理前の反応生成物のHC濃度に対して、97.6質量%であった。また、PDIの重合ロスは5.1質量%であった。
【0224】
比較例1
熱処理の前半および後半の両方で、CSTRに相当する装置を用いた。
【0225】
具体的には、第1工程において、CSTRに相当する装置による加熱時間を4時間とし、また、第2工程を実施しなかった以外は、実施例1と同じ操作で、精ペンタメチレンジイソシアネートを得た。
【0226】
精ペンタメチレンジイソシアネート中のHC濃度は、312ppmであり、精ペンタメチレンジイソシアネートのHC低減率は、加熱処理前の反応生成物のHC濃度に対して、92.3質量%であった。また、PDIの重合ロスは5.1質量%であった。
【0227】
比較例2
熱処理の前半および後半の両方で、PFRに相当する装置を用いた。
【0228】
具体的には、第1工程を実施せず、また、第2工程において、PFRに相当する装置による加熱時間を4時間とした以外は、実施例1と同じ操作で、精ペンタメチレンジイソシアネートを得た。
【0229】
精ペンタメチレンジイソシアネート中のHC濃度は、350ppmであり、精ペンタメチレンジイソシアネートのHC低減率は、加熱処理前の反応生成物のHC濃度に対して、91.4質量%であった。また、PDIの重合ロスは5.1質量%であった。
【0230】
比較例3
熱処理の前半と後半とで用いる装置を逆にした以外は、実施例1と同じ操作で、精ペンタメチレンジイソシアネートを得た。
【0231】
具体的には、反応工程において得られた反応生成物を、まず、実施例1の第2工程と同じ操作で、PFRに相当する装置によって2時間加熱し、次いで、実施例1の第1工程と同じ操作で、CSTRに相当する装置によって2時間加熱し、その後、実施例1の精製工程と同じ操作で、反応生成物を精製した。
【0232】
精ペンタメチレンジイソシアネート中のHC濃度は、330ppmであり、精ペンタメチレンジイソシアネートのHC低減率は、加熱処理前の反応生成物のHC濃度に対して、91.9質量%であった。また、PDIの重合ロスは5.1質量%であった。
【0233】
【表1】
【0234】
実施例2
第1工程における熱処理温度を190℃に変更した以外は、実施例1と同じ操作で、精ペンタメチレンジイソシアネートを得た。
【0235】
精ペンタメチレンジイソシアネート中のHC濃度は、117ppmであり、精ペンタメチレンジイソシアネートのHC低減率は、加熱処理前の反応生成物のHC濃度に対して、97.1質量%であった。また、PDIの重合ロスは4.6質量%であった。
【0236】
実施例3
第2工程における窒素の導入量を、10mL/minに変更した以外は、実施例1と同じ操作で、精ペンタメチレンジイソシアネートを得た。
【0237】
精ペンタメチレンジイソシアネート中のHC濃度は、99ppmであり、精ペンタメチレンジイソシアネートのHC低減率は、加熱処理前の反応生成物のHC濃度に対して、97.6質量%であった。また、PDIの重合ロスは5.1質量%であった。
【0238】
実施例4
第1工程における熱処理時間を1.5時間に変更し、また、第2工程における熱処理時間を2.5時間に変更した以外は、実施例1と同じ操作で、精ペンタメチレンジイソシアネートを得た。
【0239】
精ペンタメチレンジイソシアネート中のHC濃度は、89ppmであり、精ペンタメチレンジイソシアネートのHC低減率は、加熱処理前の反応生成物のHC濃度に対して、97.8質量%であった。また、PDIの重合ロスは5.1質量%であった。
【0240】
実施例5
第1工程における熱処理時間を3時間に変更し、また、第2工程における熱処理時間を1時間に変更した以外は、実施例1と同じ操作で、精ペンタメチレンジイソシアネートを得た。
【0241】
精ペンタメチレンジイソシアネート中のHC濃度は、291ppmであり、精ペンタメチレンジイソシアネートのHC低減率は、加熱処理前の反応生成物のHC濃度に対して、92.8質量%であった。また、PDIの重合ロスは5.1質量%であった。
【0242】
【表2】
【0243】
実施例6
反応工程において、1,5−ジアミノペンタンを、1,6−ジアミノヘキサンに変更した以外は、実施例1と同じ操作で、反応工程、第1工程、第2工程および精製工程を実施し、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(脂肪族ポリイソシアネート)と、加水分解性塩素とを含有する反応生成物を得た。
【0244】
この反応生成物において、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの含有割合は、95質量%であり、HC濃度は、1991ppmであった。
【0245】
そして、得られた反応生成物を用いた以外は、実施例1と同じ操作で加熱処理(第1工程および第2工程)し、その後、実施例1と同じ操作で精製することにより、精ヘキサメチレンジイソシアネートを得た。
【0246】
精ヘキサメチレンジイソシアネート中のHC濃度は、133ppmであり、精ヘキサメチレンジイソシアネートのHC低減率は、加熱処理前の反応生成物のHC濃度に対して、93.3質量%であった。また、HDIの重合ロスは9.2質量%であった。
【0247】
比較例4
熱処理の前半および後半の両方で、CSTRに相当する装置を用いた。
【0248】
具体的には、第1工程において、CSTRに相当する装置による加熱時間を4時間とし、また、第2工程を実施しなかった以外は、実施例6と同じ操作で、精ヘキサメチレンジイソシアネートを得た。
【0249】
精ヘキサメチレンジイソシアネート中のHC濃度は、333ppmであり、精ヘキサメチレンジイソシアネートのHC低減率は、加熱処理前の反応生成物のHC濃度に対して、83.3質量%であった。また、HDIの重合ロスは9.2質量%であった。
【0250】
比較例5
熱処理の前半および後半の両方で、PFRに相当する装置を用いた。
【0251】
具体的には、第1工程を実施せず、また、第2工程において、PFRに相当する装置による加熱時間を4時間とした以外は、実施例6と同じ操作で、精ヘキサメチレンジイソシアネートを得た。
【0252】
精ヘキサメチレンジイソシアネート中のHC濃度は、360ppmであり、精ヘキサメチレンジイソシアネートのHC低減率は、加熱処理前の反応生成物のHC濃度に対して、81.9質量%であった。また、HDIの重合ロスは9.2質量%であった。
【0253】
比較例6
熱処理の前半と後半とで用いる装置を逆にした以外は、実施例1と同じ操作で、精ヘキサメチレンジイソシアネートを得た。
【0254】
具体的には、反応工程において得られた反応生成物を、まず、実施例6の第2工程と同じ操作で、PFRに相当する装置によって2時間加熱し、次いで、実施例6の第1工程と同じ操作で、CSTRに相当する装置によって2時間加熱し、その後、実施例6の精製工程と同じ操作で、反応生成物を精製した。
【0255】
精ヘキサメチレンジイソシアネート中のHC濃度は、350ppmであり、精ヘキサメチレンジイソシアネートのHC低減率は、加熱処理前の反応生成物のHC濃度に対して、82.4質量%であった。また、HDIの重合ロスは9.2質量%であった。
【0256】
【表3】