(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱可塑性合成樹脂40〜70重量%と硫酸バリウム30〜60重量%との混練用原料から作製してテープヤーンを織り上げた原反を裁断することにより胴部シート、底部シート及び蓋部シートより製作された外布と、前記外布に、熱可塑性合成樹脂40〜60重量%(分散剤・安定剤含む)と、硫酸バリウム30重量%と、平均粒径2.0μm以上20μm未満のタングステン粉を5〜10重量%含むタングステン化合物を10〜30重量%との混練用原料より製作したタングステンシートを積層した内布とを、前記外布の前記胴部シート、前記底部シート及び前記蓋部シートの大きさに合わせて内布を裁断し縫着して作製されたことを特徴とするフレキシブルコンテナバッグ用内袋。
請求項1に記載のフレキシブルコンテナバッグ用内袋において、前記タングステンシートは厚さ100〜300μmのフィルムシートを接着し更に圧着して複数枚が積層されていることを特徴とするフレキシブルコンテナバッグ用内袋。
請求項1又は2に記載のフレキシブルコンテナバッグ用内袋において、前記タングステンシートは厚さ3mm〜9mmであることを特徴とするフレキシブルコンテナバッグ用内袋。
【発明を実施するための形態】
【0014】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、
図1は本発明の一実施の形態に係るフレキシブルコンテナバッグ用内袋を示す説明図、
図2は同フレコンバッグ用内袋をフレコンバッグに収納した放射線遮蔽フレコンバッグを示す説明図、
図3(a)は同フレキシブルコンテナバッグ用内袋の外布の耐候性強度を示すグラフ、
図3(b)は同フレキシブルコンテナバッグ用内袋の外布の耐候性強度のデータ表である。なお、フレキシブルコンテナバッグは、フレコンバッグとも、クロス袋とも言う。基本的には、外袋を示す。
【0015】
図1、
図2に沿って、本発明の一実施の形態に係るフレコンバッグ用内袋10を説明する。(フレキシブルコンテナバッグ用内袋は、フレコンバッグ用内袋とも言う。)
フレコンバッグ用内袋10は、フレコンバッグ内袋10がフレコンバッグ(外袋)13の内部空間に装着されて使用されるが、
図1に示すように、外布11と内布12からなり外布11は、いわゆる原反と呼ばれ、テープヤーンを経糸及び緯糸に使用して製織したクロスでできている。
フレコンバッグ用内袋10の外観形状としては、例えば、
図2に示すフレコンバッグ13の形状に合わせて、平面視して円形の丸型、平面視して四角形の角型などを採用することができる。
【0016】
フレコンバッグ用内袋10の外布11に使用するテープヤーンは、熱可塑性合成樹脂(ここではポリプロピレン)40〜70重量%と、硫酸バリウム30〜60重量%との配合物(混練用原料)を用いて作製された強度が3.0cN/dt以上のテープヤーンを経糸(図示せず)及び緯糸(図示せず)とし、外布11は、これらの経糸及び緯糸から織り上げられたクロスである。なお、外布11の厚さは3〜4mm程度である。
【0017】
ポリプロピレンとしては、プロピレンの単独重合体、あるいはプロピレンを主成分とするもの、これにエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィン、アクリル酸、アクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸及びその誘導体、酢酸ビニルなどのビニルエステル、スチレン、メチルスチレンなどの不飽和芳香族化合物などとの、ランダム共重合体、ブロック共重合体、又はグラフト共重合体でよい。
【0018】
フレコンバッグ用内袋10は、上端が開口する蓋部10aと、筒状の胴部10bと、胴部10bの下端に縫着されてこれを塞ぐ底部10cとを有している。フレコンバッグ用内袋10は、フレコンバッグ13の内部空間に収納されるようになっている。そうして、収納されたものは、放射線遮蔽フレコンバッグ14となる。
【0019】
ここでいうフレコンバッグ用内袋10とは、例えば内容量1.0m
3の丸型のものである。ここで、外布11は、原反から外布蓋部11a、外布胴部11b及び外布底部11cを含む部品シートが形抜き又はレーザなどにより裁断される。
得られた外布蓋部11a、外布胴部11b及び外布底部11cを含む各部品シートは、電動ミシンを使用し、隣接するもの同士が縫着されることによって、コンバッグ用内袋10の外布11が製造される。
【0020】
また、フレコンバッグ用内袋10の内布12に用いられるタングステン(W)を含有するタングステンシートは、同様に、内布蓋部12a、内布胴部12b及び内布底部12cを含む各部品シートとして作成され、外布蓋部11a、外布胴部11b及び外布底部11cとそれぞれ、蓋部、胴部、底部として縫着され、フレコンバッグ用内袋10の蓋部10a、胴部10b及び底部10cとなる。
さらに、内布12のさらに内側(内周面側)に、アルミシート20を縫着してもよい。具体的には、アルミシート蓋部20a、アルミシート胴部20b及びアルミシート底部20cとそれぞれ、蓋部、胴部、底部としての内側に縫着し、収納した内容物からの水漏れ防止の効果を高めることができる。なお、アルミシートの厚さは300〜400μmである。
【0021】
図2に示すように、フレコンバッグ内袋10がフレコンバッグ13の内部空間に装着された放射線遮蔽フレコンバッグ14は、使用時はトラックなどで現場へ搬送される。現場では、例えば放射性物質(放射性セシウムなど)により汚染された汚染表土がユンボにより削り取られ、これが、開口された放射線遮蔽フレコンバッグ14のフレコンバッグ用内袋10に順次充填される。充填完了後は、作業者がフレコンバッグ用内袋10の開口部を閉口し、さらに結束紐によりフレコンバッグ13の投入部を縛る。その後、作業者はユンボのバケットに放射線遮蔽フレコンバッグ14の各吊りロープを引っ掛け、ユンボの運転者がアームを上方回転して放射線遮蔽フレコンバッグ14を吊り上げ、これをトラックの荷台に積み込む。その後、トラックを路上走行して所定の保管場所までこれを運搬し、そこで放射線遮蔽フレコンバッグ14を下ろして、所定期間保管する。
【0022】
このように、フレコンバッグ用内袋10の内布12に用いられるタングステンを含有するタングステンシートが、汚染表土に含まれた放射線の一部を遮蔽するため、フレコンバッグ用内袋10に充填された汚染表土から放射線遮蔽フレコンバッグ14の外に漏洩する放射線量を低減することができる。また、内布12に用いられるタングステンシートの厚さを増すことで、放射線遮蔽フレコンバッグ14の外に漏洩する放射線量をさらに低減させることができる。
【0023】
さらに、
図1及び
図2を参照して、本発明に係るフレコンバッグ用内袋をフレコンバッグに装着した放射線遮蔽フレコンバッグを説明する。
前に述べたように、フレコンバッグ用内袋10は、フレコンバッグ13の内部空間に収納されるようになっている。フレコンバッグ13は、フレコンバッグ用内袋10を収納して装着することにより、放射線遮蔽フレコンバッグ14となる。フレコンバッグ用内袋10を入れるフレコンバッグ13は、ポリプロピレンなどの各種の化学繊維からなる織布を袋状にしたフレコンバッグ13の底部に、2本1組、2組の隣接するものの上端部がそれぞれ連結された4本の吊りベルトの下端部をそれぞれ縫着し、胴部の上端(上周縁部)に、充填物を胴部に投入するための筒状の投入部の下端(下周縁部)を縫着したものである。
図2に示すように、このフレコンバッグ用内袋10は、外布11(外布蓋部11a、外布胴部11b及び外布底部11c)と、タングステン粉を含むタングステン化合物を混練され作製されたタングステンを含有するタングステンシートが積層された内布12(内布蓋部12a、内布胴部12b及び内布底部12c)とを縫着して作製される。そして、内袋蓋部10aは、内袋胴部10bの開口部に設けられた線ファスナ21を介して開閉される。
【0024】
このように、フレコンバッグ13の内部空間に、タングステンを含有するタングステンシートが積層されたフレコンバッグ用内袋10を装着して放射線遮蔽フレコンバッグ14として利用するため、放射線遮蔽フレコンバッグ14の放射線遮蔽効果をさらに高めることができるとともに、フレコンバッグ用内袋10の外布11に、耐候性の強い素材(硫酸バリウム添加)を使用することにより野外で使用される放射線遮蔽フレコンバッグとして必要な引張強度の低下を防ぐことができる。また、フレコンバッグ用内袋10自体は、フレコンバッグ13に収納されて使用されるために、多少、引張強度を落としても外布11に含有する硫酸バリウムの比率を上げることにより耐候性を向上させる実益がある。具体的には、内布12より外布11に含まれる硫酸バリウムの比率を上げると放射線遮蔽特性と耐候性のバランスが取れた性能が発揮できる。
【0025】
また、フレコンバッグ用内袋10は上面全体が開口した平面視して円形の丸型のもので、内袋蓋部10aはフレコンバッグ用内袋10の開口径と略同一径の平面視して円形のものであり、線ファスナ21は、フレコンバッグ用内袋10の上縁全周と内袋蓋部10aの外縁全周にわたって設けられる。これにより、充填物(汚染表土など)の袋投入が容易なようにフレコンバッグ用内袋10の上面での最大開口を確保しつつ、フレコンバッグ用内袋10の開口縁に沿って線ファスナ21をスライドさせるだけで、内袋蓋部10aを簡単かつ確実に開閉することができる。しかも、従来の紐を利用した内袋の締結に比べて、内袋蓋部10aの開閉作業性が高くなる。
【0026】
また、フレコンバッグ用内袋10の内布12は、射出成型したタングステン片(例えば100mm×100mm)を縦横に並べて接続したものでもよい。また、複数のタングステンフィルム(厚さ200μm)を互いに接着し圧接した積層構造のタングステンを含有するタングステンシートからなる。積層構造のタングステンシートのため、柔軟性に富み更にその積層フィルムの枚数を変えることにより自由に厚さも変えることができる。なお、ここでは、タングステンフィルムの厚さは150μm又は200μm程度であるが、100μm〜300μm程度であれば柔軟性を保持できる。
なお、タングステンフィルムは、押出機の先端にTダイと呼ばれる直線状のリップを持つ金型を設置し、平たく材料を押し出して連続的に成型することで製造することができる。
【0027】
さらに、フレコンバッグ用内袋10は、このようにヤーンから得られた外布11とタングステンフィルムが積層されたタングステンを含有するタングステンシートとを縫着して作製された内布12とで構成されるため、袋としての保形性が高く、袋用自立補助具がなくてもフレコンバッグ用内袋10を自立させて汚染表土の袋詰めを行うことができる。
線ファスナ21とは、多数のエレメントが一列に並んだ左右一対の基材テープの間でスライダを移動させることにより、左右のエレメントが順次噛合又は噛合解除し、自在にファスナが開閉となった線状の掛止具である。線ファスナ21としては、金属ファスナに比べて耐候性が高いプラスチックファスナを採用することができる。
【0028】
フレコンバッグ用内袋10の使用時、例えばユンボにより削り取られた汚染表土が、線ファスナ21を外して内袋蓋部10aが開いた放射線遮蔽フレコンバッグ14内のフレコンバッグ用内袋10に順次充填される。充填後は、作業者が線ファスナ21を閉じて、フレコンバッグ用内袋10の開口部を閉蓋し、さらに結束紐により投入部を縛る。
【0029】
このように、放射線遮蔽フレコンバッグ14は、放射性物質の遮蔽効果を有するフレコンバッグ用内袋10に、線ファスナ21を介して、放射性物質の遮蔽効果を有する内袋蓋部10aを開閉自在に設けたため、充填した放射性物質の放射線が袋外に漏洩する量を低減することができる。また、フレコンバッグ用内袋10として複層構造の内布12を外布11に縫着したものを採用し、かつ内袋蓋部10a、内袋胴部10b、内袋底部10cとして複層構造の内布12を外布11に縫着したものを採用したため、フレコンバッグ用内袋10の強度が増すとともに、フレコンバッグ用内袋10が適度に硬くなって、フレコンバッグ用内袋10の自立性、ひいては放射線遮蔽フレコンバッグ14の自立性を高めることができる。
【0030】
また、線ファスナ21を介してフレコンバッグ用内袋10の開口部に内袋蓋部10aを設けるようにしたため、フレコンバッグ用内袋10の開口部の開閉操作が容易であるとともに、内袋蓋部10aによるフレコンバッグ用内袋10の密封性を高めることができる。
さらに、線ファスナ21にも遮蔽効果を付与することにより有効となる。そのために、線ファスナ21をPOM(ポリアセタール樹脂)に硫酸バリウムやタングステン化合物などを添加し、更に熱可塑性ポリウレタン系および/またはコアシェルポリマー系耐衝撃性改良剤を加えることにより、線ファスナ21の衝撃強度を損なうことなく放射線遮蔽効果を上げることができる。
そして、放射線遮蔽フレコンバッグ14の性能を向上させるために、フレコンバッグ13にも硫酸バリウムやタングステン添加で耐候性を向上させることで、放射線遮蔽フレコンバッグ14を吊り上げる際の亀裂・破壊・漏洩などが抑制され安全性が上がることになる。
【0031】
次に、
図3(a)同フレキシブルコンテナバッグ用内袋の外布の耐候性強度を示すグラフ、
図3(b)同フレキシブルコンテナバッグ用内袋の外布の耐候性強度のデータ表を説明する。
耐候性(JIS−Z―1651カーボンアーク法)縦軸は、縦強度の比率である強度保持率と横軸は、経年時間(hr)を示しており、ここでは、フレキシブルコンテナバッグ用内袋の外布と同じ材質で作製したクロス袋(フレコンバッグ)と一般的なクロス袋(ポリプロピレン製)の強度保持率を比較している。また、フレコンバッグはクロス袋とも言う。あと、縦強度及び横強度を測定しているが、一般的に、クロス袋は、構成上、テープヤーン縦(緯糸)の方がテープヤーン横(経糸)より本数が多少多いので、縦強度は横強度より大きくなっている。そして、一般的な良否判断レベル=70%で比較すると、一般クロス袋はほぼ900hr程度であるが、外布と同じ材料のクロス袋はほぼ1500hrをクリヤしているので、十分な耐候性も有することが理解できる。なお、ここで使用した材料は、硫酸バリウムの添加量は40重量%である。
【0032】
図3(b)同フレキシブルコンテナバッグ用内袋の外布の耐候性強度のデータ表に示す通り、一般クロスにおいて、900時間経過後の縦強度は71.8%、横強度は62.1%であるのに対し、外布と同じ材料のクロス袋は、1500時間経過後、縦強度は77.3%、横強度は64.1%と非常に良好な結果となっている。
【0033】
次に、
図4の同フレキシブルコンテナバッグ用内袋の内布の硫酸バリウム添加量の増減と織物強振伸度試験のデータ表を説明する。このように、強度試験1〜4を、硫酸バリウム添加量を30%から60%と変化させて、テープヤーン強度(cN/dt)を測定している。どれも、試験基準値(ここでは、3cN/dt)を維持できている。ここで、硫酸バリウム添加量を増やせば耐候性は向上するが、強度的には弱くなる。次に、引張り強さ(N)においても、同様に硫酸バリウム添加量を増やせば、強度的には弱くなっている。さらに、伸度(%)においても、同様に硫酸バリウム添加量の増加(30%から60%)に伴い、経伸度は25%から15%に変化し、緯強度は18%から13%と柔軟性がなくなっている。
このように、硫酸バリウム添加量の30%から60%まで変化させても、十分な強度を持つことが分かった。さらに、硫酸バリウム添加量の40%で、ほぼ1500時間程度の耐候性を満足することがわかったので、多少の引張強度を落としても、硫酸バリウム添加量を60%程度まで上げても、十分な製品性能を維持することも想定できる。
【0034】
次に、この発明のフレコンバッグ用内袋10の内袋のタングステン化合物のタングステンシートについて、タングステン化合物の添加量の増減がどのように放射線遮蔽性能に影響を及ぼすかを確認するため、評価試験を行った。
【0035】
評価試験に行うタングステンシートのテストサンプルは、
図5のテストサンプル処方の表に示す通りである。ここに試料1〜3の成分を示す。ここでは、ポリプロピレン樹脂:PP、硫酸バリウム:BaSO
4、タングステン化合物、分散剤(12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム)、熱安定剤A(ペンタエリスリトールーテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])、熱安定剤B(亜りん酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル))が所定比率で配合されている。
【0036】
次の、
図6(a)同フレキシブルコンテナバッグ用内袋の内布の放射線(γ線)遮蔽性能のタングステン添加量・厚み・粒径の依存性を示すデータ表、
図6(b)同フレキシブルコンテナバッグ用内袋の内布の放射線遮蔽性能とタングステン含有量と関係を説明する。ここに、試料1〜3及び参考例1の成分を示す。ここでは、mmtとはmm(厚さ)の意である。ここで、試料1〜3のタングステン化合物は、タングステン(W)含有率が5%であり、タングステンの平均粒径は2.0μmである。また、参考例1においては、タングステン(W)含有率が20%であり、タングステンの平均粒径は20.0μmである。このようにタングステンの含有量に対し、粒径を考慮せず増やしても、同じ厚さの試料での放射線遮蔽率は、平均粒径を小さくしたタングステンの含有量の少ないものに劣ることが分かった。少なくても平均粒径20.0μm未満で2.0μmで、あとは、Tダイでの配合でシートの生産性を考慮して決めればよい。
また、タングステン化合物のタングステン含有量率を5%から10%に上げれば、試験片に含まれるタングステン含有量を倍にするために、放射線遮蔽率を上げることができ有効である。
【0037】
図6(a)のデータ表にも示すように、試料1、2、3において硫酸バリウム添加量が30%、ベースのタングステン含有率は5%であり、W化合添加量を10%、20%、30%と変化させて、その結果、W含有量率が0.5%、1.0%、1.5%と変化させている。その結果、試料の厚さが3mm以上9mm以下では、タングステン含有量率を上げれば、放射線遮蔽性能も向上するのがわかる。また、
図6(b)のデータ表にタングステン含有量と放射線(γ線)遮蔽性能を抜き出して表している。ここでは、試料の厚さが1mmでは、タングステン含有量率を上げても、放射線遮蔽性能は向上しないのも分かった。少なくても3mm以上望ましくは4.5mm以上あれば良い。しかし、フレコンバッグは、5〜6kgの重量で、薄くて軽量で取扱い易くなくてはならないため、厚くなってタングステンの重量が増加するようでは、袋としての製品性を損なってしまう。
なお、参考例1と試料1において、加工性を考慮したMFR(メルトマスフローレイト)であり、単位はg/10分で、JIS K7210:1999に規定されている。そして、それぞれの値は2.3と1.3であり、平均粒径を2μmにした方が、紡糸や製膜工程での加工性や加工条件自由度が高まる。MFR測定の詳細条件は、シリンダー温度230℃、測定荷重2.16kgにて行った。
【0038】
図7に同フレキシブルコンテナバッグ用内袋の内布の放射線遮蔽性能のタングステン添加量・厚み・粒径の依存性を示す。ここでは、試料1、2、3において硫酸バリウム添加量が30%、ベースのタングステン含有率は5%であり、平均粒径2μmでそれぞれ、厚さが9mm、6mm、4.5mm、3mmの場合、タングステン含有量率を0.5%から1.5%に増加させると、放射線遮蔽率も比例して増加していっているのが表されている。さらに、試料の厚さが1mmでは、タングステン含有量率を上げても、放射線遮蔽性能は向上しないのも示されている。現在、フレキシブルコンテナバッグでは放射線遮蔽率10%程度のものが求められているが、製品が袋であるので柔軟性が求められることを考慮すると、たとえば、余り厚くない厚さ4.5mmでは、
図7のグラフより、試験片タングステン含有量3.0%程度であれば、これを満足する放射線遮蔽性能を得ることができると考えられる。
【0039】
図8(a)同フレキシブルコンテナバッグ用内袋の内布の検体外観寸法とテスト条件のデータ表、
図8(b)同フレキシブルコンテナバッグ用内袋の内布の検体サンプルのγ線測定試験結果のデータ表を説明する。
【0040】
タングステンシートのテストサンプルの試料1、2、3、3A、3Bの外形寸法とテスト条件を、
図8(a)の検体外観寸法とテスト条件のデータ表に示す。
試料1、2、3、3A、3Bは射出成型片であり、射出成型片は、3mm、6mm、9mmと厚さを変えて遮蔽率の厚みの依存性を確認している。さらにフィルム片の積層品においても測定し、フィルム片を重ねて3mm厚にて射出成型片と同じ厚さにしている。
同じ厚さであれば、フィルム片の積層品の方が柔軟性に富み、扱い易くなるのでコンテナバッグ内袋にはなおよい。
【0041】
タングステンシートのテストサンプルの試料1、2、3、3A、3Bの放射線遮蔽試験方法とその試験結果を、
図8(b)の表に示す。
評価試験は、九州大学伊都キャンパスにて、2015年3月15日に行った。放射線遮蔽の評価方法の試験条件は、床から1mの高さで、検出器を放射線の線源から測定中心まで25cm離間し、その間に試料が存在する場合(試料有)と存在しない場合(試料無)とについて、正味の線量率(バックグラウンドの線量率を除去)を測定し、得られた測定値の平均値から遮蔽率を求めている。
線源:セシウム137、半減期:30年、γ線エネルギー:662keV、γ線強度:2208γ/s、テーブルとの距離:20mm、測定器:Ge検出器、測定時間:1000s、CsROIチャンネルである。
標準線源は、NET=13151、GR0SS=13974、BG=823、σ(NET)=122、σdirect(NET)=115で試料の測定を行った。
そして、試料3の厚さを変えた、試料3A(厚さ6mm)、試料3B(厚さ3mm)についても測定されている。
【0042】
ここで、GROSSは、実際に測定された値、BG(バックグラウンド)は、背景の値であり、NETとはGROSSからBGをひいた試料の値となる。つまり、NET+BG=GROSSで表されている。また、σ(NET)、σdirect(NET)は本測定の有する測定値の誤差の範囲を示している。
【0043】
テストサンプルの試料1、2、3、3A、3Bの試験結果を比に直した結果を、
図9の表に遮蔽材のγ線遮蔽性能のデータ表を示す。
図9の表は、試料1(厚さ9mm)、試料2(厚さ9mm)、試料3(厚さ9mm)、試料3A(厚さ6mm)、試料3B(厚さ3mm)強度比を示している。ここでは、念のため測定における誤差も表している。ここでは、試料の厚みが大きいほど、遮蔽特性が大きくなるが、厚みを6mmにしても、W化合物の添加量30%としたタングステン含有率を1.5%としても遮蔽性能を満足することが可能となる。