(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本発明の1つの実施態様は、エチレン/環状オレフィン共重合体(A)を主成分として含む半導体製造工程用フィルムである。
【0012】
[エチレン/環状オレフィン共重合体(A)]
本発明に用いるエチレン/環状オレフィン共重合体(A)は、エチレン成分と環状オレフィン成分との共重合体である。またエチレン/環状オレフィン共重合体(A)は、一種類を単独で用いても良いし、二種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0013】
エチレン/環状オレフィン共重合体(A)を構成するエチレン成分としては、エチレン単独からなっていてもよく、また、エチレンと他のモノマー成分との組み合わせからなっていてもよい。エチレンと他のモノマー成分の組み合わせとしては、エチレンとα−オレフィンの組み合わせが好ましい。エチレンとα−オレフィンの組み合わせの具体例としては、エチレン/ブテン−1、エチレン/ヘキセン−1、エチレン/オクテン−1、エチレン/ブテン−1/ヘキセン−1、エチレン/ブテン−1/オクテン−1、エチレン/ヘキセン−1/オクテン−1、エチレン/ブテン−1/ヘキセン−1/オクテン−1等が挙げられる。
エチレン/環状オレフィン共重合体(A)はランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体でもよい。ブロック共重合体、グラフト共重合体の場合、好適には、エチレン成分からなる重合体(又は共重合体)ブロックと環状オレフィン成分からなる重合体ブロックから構成される。
【0014】
エチレン/環状オレフィン共重合体(A)に占める環状オレフィン成分の含有量は、1質量%以上、50質量%以下であり、2質量%以上、40質量%以下であることが好ましく、3質量%以上、30質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上、20質量%以下であることが更に好ましい(ただし、エチレン成分と環状オレフィン成分の合計を100質量%とする)。エチレン/環状オレフィン共重合体樹脂(A)に占める環状オレフィン成分の含有量がこの範囲にあれば、柔軟性や透明性、復元性に優れる半導体製造工程用フィルムを得ることができる。
【0015】
エチレン/環状オレフィン共重合体(A)を構成する環状オレフィン成分としては、ビシクロヘプト−2−エン(2−ノルボルネン)及びその誘導体、例えば、ノルボルネン、6−メチルノルボルネン、6−エチルノルボルネン、6−n−ブチルノルボルネン、5−プロピルノルボルネン、1−メチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、5−ベンジルノルボルネン等を挙げることができる。また、テトラシクロ−3−ドデセン及びその誘導体、例えば、8−メチルテトラシクロ−3−ドデセン、8−エチルテトラシクロ−3−ドデセン、8−ヘキシルテトラシクロ−3−ドデセン、10−ジメチルテトラシクロ−3−ドデセン、5,10−ジメチルテトラシクロ−3−ドデセンを挙げることができる。これらの中でも、透明性や機械物性、成形性に優れることから、環状オレフィン成分としてはノルボルネンを用いることが好ましい。
【0016】
エチレン/環状オレフィン共重合体(A)の弾性率は、引張弾性率が10MPa以上、500MPa以下であることが好ましく、30MPa以上、450MPa以下であることがより好ましく、50MPa以上、400MPa以下であることが更に好ましい。引張弾性率がかかる範囲であれば、前記半導体製造工程用フィルムは柔軟性や加工性、エキスパンド性に優れる。
【0017】
[ポリオレフィン系樹脂(B)]
本発明の半導体製造工程用フィルムは、エチレン/環状オレフィン共重合体(A)の他に、ポリオレフィン系樹脂(B)を更に含むことが好ましい。ポリオレフィン系樹脂(B)を更に含むことで、弾性率を向上することができ、透明性を維持したまま加工性やエキスパンド性に優れた半導体製造工程用フィルムを得ることができる。
【0018】
ポリオレフィン系樹脂(B)の種類は、特に限定することは無く、エチレン系樹脂であっても良く、プロピレン系樹脂であっても良いが、エチレン/環状オレフィン共重合体(A)とブレンドした際に、機械特性や透明性等の物性をより好ましくすることができるという点で、エチレン系樹脂を用いることが好ましい。
【0019】
エチレン系樹脂としては、エチレン単独重合体であってもよいし、エチレンとα−オレフィンの共重合体であってもよいし、また、これらの混合物を用いてもよい。エチレン/α−オレフィン共重合体の具体例としては、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/ヘキセン−1共重合体、エチレン/オクテン−1共重合体、エチレン/ブテン−1/ヘキセン−1共重合体、エチレン/ブテン−1/オクテン−1共重合体、エチレン/ヘキセン−1/オクテン−1共重合体、エチレン/ブテン−1/ヘキセン−1/オクテン−1共重合体等が挙げられる。
【0020】
エチレンとα−オレフィンの共重合体を用いる場合、ポリオレフィン系樹脂(B)中に占めるα−オレフィン成分の含有量は、0.1質量%以上、20質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上、15質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上、10質量%以下であることが更に好ましい(ただし、エチレンとα−オレフィン成分の合計を100質量%とする)。α−オレフィン成分の割合がかかる範囲内であれば、エチレン/環状オレフィン共重合体(A)と混合した際に、加工性やエキスパンド性、復元性に優れた半導体製造工程用フィルムを得ることができる。
【0021】
本発明のもう1つの実施態様は、エチレン/環状オレフィン共重合体(A)とポリオレフィン系樹脂(B)との組み合わせを主成分として含む半導体製造工程用フィルムである。
本発明の半導体製造工程用フィルムは、エチレン/環状オレフィン共重合体(A)単独からなるものでも良いが、ポリオレフィン系樹脂(B)を更に含むことで、加工性やエキスパンド性をより向上することができる。
【0022】
エチレン/環状オレフィン共重合体(A)とポリオレフィン系樹脂(B)の含有量としては、(A)及び(B)の合計質量に対して、エチレン/環状オレフィン共重合体(A)99〜50質量%、及び、ポリエチレン系樹脂(B)1〜50質量%が好ましい。すなわち、(A):(B)=99:1〜50:50(質量比)であることが好ましく、(A):(B)=97:3〜55:45(質量比)であることが更に好ましく、(A):(B)=95:5〜60:40(質量比)であることがより好ましく、90:10〜60:40(質量比)であることが特に好ましい。エチレン/環状オレフィン共重合体(A)とポリオレフィン系樹脂(B)の質量比がかかる範囲であれば、透明性や復元性を損なうことなく、より加工性やエキスパンド性に優れる半導体製造工程用フィルムを得ることができる。
【0023】
[スチレン系エラストマー(C)]
本発明の半導体製造工程用フィルムは、エチレン/環状オレフィン共重合体(A)の他に、スチレン系エラストマー(C)を更に含むことが好ましい。スチレン系エラストマー(C)を更に含むことで、弾性率を向上することができ、透明性を維持したまま加工性に優れた半導体製造工程用フィルムを得ることができる。
【0024】
スチレン系エラストマー(C)の種類は、ポリスチレンからなるハードセグメントと、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、またはこれらの水素添加物、及び/またはそれらの共重合体からなるソフトセグメントとから構成されるエラストマーであれば特に限定することは無く、スチレン−ブタジエン共重合体(SB)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン共重合体(SI)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−イソブチレン共重合体(SIB)、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(SIBS)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体(SBBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEEPS)共重合体等が挙げられる。これらは、一種類を単独で用いても良いし、二種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0025】
スチレン系エラストマー(C)のスチレン含有量は、20質量%以上、80質量%以下であることが好ましく、30質量%以上、75質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上、70質量%以下であることが更に好ましい(ただし、スチレン系エラストマーの全成分の合計を100質量%とする)。スチレン系エラストマー(C)のスチレン含有量がかかる範囲であれば、復元性、透明性を維持したまま加工性を向上することができる。
【0026】
本発明のもう1つの実施態様は、エチレン/環状オレフィン共重合体(A)とスチレン系エラストマー(C)との組み合わせを主成分として含む半導体製造工程用フィルムである。
本発明の半導体製造工程用フィルムは、エチレン/環状オレフィン共重合体(A)単独からなるものでも良いが、スチレン系エラストマー(C)を更に含むことで、加工性をより向上することができる。
【0027】
エチレン/環状オレフィン共重合体(A)とスチレン系エラストマー(C)の含有量としては、(A)及び(B)の合計質量に対して、エチレン/環状オレフィン共重合体(A)99〜70質量%、及び、スチレン系エラストマー(C)1〜30質量%が好ましい。すなわち、(A):(B)=99:1〜70:30(質量比)であることが好ましく、(A):(B)=97:3〜73:27(質量比)であることが更に好ましく、(A):(B)=95:5〜75:25(質量比)であることがより好ましく、93:7〜77:23(質量比)であることが特に好ましい。エチレン/環状オレフィン共重合体(A)とスチレン系エラストマー(C)の質量比がかかる範囲であれば、透明性や復元性を損なうことなく、より加工性やエキスパンド性に優れる半導体製造工程用フィルムを得ることができる。
【0028】
[半導体製造工程用フィルム]
本発明の半導体製造工程用フィルムは、前記エチレン/環状オレフィン共重合体(A)単独、または、前記エチレン/環状オレフィン共重合体(A)と前記ポリオレフィン系樹脂(B)の組み合わせを主成分として含み、または、前記エチレン/環状オレフィン共重合体(A)と前記スチレン系エラストマー(C)の組み合わせを主成分として含むことで、柔軟性、加工性、エキスパンド性、透明性、復元性に優れ、特にウエハのダイシング工程、特にエキスパンド工程において好ましい性能を有する半導体製造工程用フィルムである。なお、本発明で言う「主成分である」とは、質量比率が50質量%以上であり、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上であり、とりわけ好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。
【0029】
前記半導体製造工程用フィルムは、引張弾性率が10MPa以上、500MPa以下であることが好ましく、30MPa以上、450MPa以下であることがより好ましく、50MPa以上、400MPa以下であることが更に好ましい。引張弾性率がかかる範囲であれば、前記半導体製造工程用フィルムは柔軟性や加工性、エキスパンド性に優れる。
【0030】
前記半導体製造工程用フィルムは、引張降伏伸度が30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、100%以上であることが更に好ましく、降伏点が存在しないことがとりわけ好ましい。ウエハのダイシング工程においては、基材フィルムを30〜50%延伸するのが一般的だが、引張降伏伸度が30%未満だと、延伸時に降伏してしまい、その後の復元性が発現しにくい。引張降伏伸度がかかる範囲であれば、前記半導体製造工程用フィルムが十分な復元性を発現することができる。
【0031】
なお、本発明で言う復元性とは、前記半導体製造工程用フィルムをエキスパンドした後に、どれだけ元の長さに戻ったかを表す指標であり、以下の式で表される復元率で評価される。
復元率(%)=(引張直後の長さ−復元後の長さ)÷(引張直後の長さ−引張前の長さ)×100
【0032】
前記半導体製造工程用フィルムの復元率は、70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましい。復元率がかかる範囲であれば、エキスパンド後の工程においても不具合を抑制することができる。
【0033】
前記半導体製造工程用フィルムは、全光線透過率が80%以上であることが好ましく、82%以上であることがより好ましく、85%以上であることが更に好ましい。前記半導体製造工程用フィルムの全光線透過率がかかる範囲であれば、ピックアップ時におけるCCDカメラでの視認性を十分に確保できるだけでなく、粘着剤の紫外線硬化の妨げになることもない。
【0034】
前記半導体製造工程用フィルムは、以下の式で算出されるヘーズが15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、6.5%以下であることが更に好ましく、5%以下であることが特に好ましい。前記半導体製造工程用フィルムのヘーズがかかる範囲であれば、ピックアップ時におけるCCDカメラでの視認性を十分に確保できるだけでなく、粘着剤の紫外線硬化の妨げになることもない。
[ヘーズ]=[拡散透過率]/[全光線透過率]×100
【0035】
前記半導体製造工程用フィルムは、必要に応じて上記以外の他の合成樹脂や、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、スリップ剤(滑剤)、アンチブロッキング剤、顔料、着色剤、充填剤、核剤、難燃剤等、通常ポリオレフィン系樹脂製フィルムに添加される添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。前記半導体製造工程用フィルムは単層でも多層でもよく、各層に前記添加剤を配合してもよい。
【0036】
前記半導体製造工程用フィルムを用いた粘着テープにおいて粘着剤として紫外線硬化型のアクリル系粘着剤を用いる場合は、基材フィルムは紫外線透過タイプとすることが好ましく、通常、紫外線吸収剤の添加は避けることが好ましい。
【0037】
前記半導体製造工程用フィルムは、Tダイ押出し成形法、インフレーション成形法及びカレンダー成形法等の一般的なポリオレフィン系樹脂フィルムの成形方法により製造することができ、多層の場合は前記の方法で製造した個々の層(フィルム)をラミネーターを用いて貼り合わせる方法やフィルム成形と同時に圧着ラミネートする方法により製造できるが、多層Tダイ押出し法によって成形と同時に積層フィルムを製造するのが工程数も減らすことができて特に好ましい。
【0038】
前記半導体製造工程用フィルムの厚みは、10μm以上、500μm以下であり、20μm以上、400μm以下であることが好ましく、30μm以上、300μm以下であることがより好ましく、50μm以上、200μm以下であることが更に好ましい。フィルム厚みがかかる範囲であれば、柔軟性、加工性、エキスパンド性、透明性、復元性に優れる前記半導体製造工程用フィルムが得られる。
【0039】
基材フィルムが多層である場合、各層の厚さは特に限定されないが、例えば基材フィルムが(A)層/(B)層/(C)層の少なくとも3層を有する場合には、各層の厚さの比は特に限定されるものではないが、(A)層の厚さ:(B)層の厚さ:(C)層の厚さ=1:1:1〜1:10:1であるのが好ましい。また各層の組成は同じであっても異なっていてもよい。
【0040】
前記半導体製造工程用フィルムの少なくとも片面側に粘着剤層を設けることにより、粘着テープが得られる。前記粘着剤層は、粘着剤を50〜100重量%含有するのが好ましい。前記粘着剤としては、アクリル系粘着剤が好ましい。前記アクリル系粘着剤としては、従来公知の粘着剤用のアクリル系樹脂を広く用いることができる。例えば、(メタ)アクリル酸アルキルの重合体、共重合性単量体との共重合体またはこれらの混合物が用いられる。更に、前記アクリル系粘着剤の接着性や凝集力を制御する目的でアクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリルまたは酢酸ビニル等の単量体を共重合させてもよい。これらの単量体を重合して得られるアクリル系(共)重合体の重量平均分子量は、5×10
4〜2×10
6であることが好ましく、4×10
5〜8×10
5であることが更に好ましい。
【0041】
更に、前記粘着剤層に架橋剤を配合することにより、接着力と凝集力とを任意の値に設定することができる。このような架橋剤としては、多価イソシアネート化合物、多価エポキシ化合物、多価アジリジン化合物及びキレート化合物等がある。多価イソシアネート化合物としては、具体的にはトルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びこれらのアダクトタイプのもの等が用いられる。多価エポキシ化合物としては、具体的にはエチレングリコールジグリシジルエーテル及びテレフタル酸ジグリシジルエステルアクリレート等が用いられる。多価アジリジン化合物としては、具体的にはトリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジン、トリス〔1−(2−メチル)−アジリジニル〕ホスフィンオキシド、ヘキサ〔1−(2−メチル)−アジリジニル〕トリホスファトリアジン等が用いられる。またキレート化合物としては、具体的にはエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート及びアルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が用いられる。
【0042】
また、前記粘着剤層中に光重合性化合物を配合することによって、前記粘着剤層に光線、好ましくは紫外線を照射することにより、初期の接着力を大きく低下させ、容易に被着体から該粘着フィルムを剥離することができる。このような光重合性化合物としては、たとえば特開昭60−196956号公報及び特開昭60−223139号公報に開示されているような光照射によって三次元網状化しうる、分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上有する低分子量化合物が広く用いられる。具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート及び市販のオリゴエステルアクリレート等が用いられる。なお、前記の粘着剤層中に、光重合開始剤を混入することにより、光照射による重合硬化時間及び光照射量を少なくすることができる。このような光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル及びβ−クロールアンスラキノン等が挙げられる。光重合開始剤は、通常光重合性化合物100重量部に対し0.1〜10重量部の量が用いられる。
【0043】
前記粘着剤層の厚みは、通常1〜50μmである。粘着剤層の厚みをかかる範囲とすることで、接着力とコストのバランスに優れる。
【0044】
粘着剤層の形成は、基材フィルム上に、粘着剤を樹脂等の成分が可溶な溶剤に溶解した後、グラビアコート法、リバースロールコート法、コンマコート法、バーコート法、ナイフコート法及びキスコート法等従来公知のコーティング方式により基材フィルム上に塗布し、溶剤を揮発、乾燥させる方法を用いればよい。
【0045】
前記半導体工程用フィルムの少なくとも片面側は、プラズマ処理やコロナ処理、オゾン処理及び火炎処理等の方法により表面処理されていてもよい。また、基材フィルムと粘着剤層の間には、必要によりプライマー層を設けてもよい。また、本発明の目的を損なわない限り、粘着テープの粘着剤層が設けられた側と反対面及び/または基材フィルムと粘着剤層の間に更に樹脂層を設けても良い。
【0046】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0047】
[評価方法]
(1)復元率
JIS K7127に基づいて、得られたフィルムから採取した試験片(1号ダンベル)を23℃・60%RHの雰囲気下、島津製作所製オートグラフ(引張速度:50mm/分)にて50%延伸し1分間保持した後、試験機から外して5分間放置して復元させ、下記の計算式により復元率を測定した。
復元率(%)=(引張直後の長さ−復元後の長さ)÷(引張直後の長さ−引張前の長さ)×100
ここで、引張直後の長さとは、島津製作所製オートグラフで50%延伸した状態の長さを言う。
【0048】
(2)引張弾性率
JIS K7127に基づいて、得られたフィルムから採取した試験片(1号ダンベル)を23℃・60%RHの雰囲気下、島津製作所製オートグラフ(引張速度:50mm/分)を用いて引張弾性率を測定した。
【0049】
(3)引張降伏伸度
JIS K7127に基づいて、得られたフィルムから採取した試験片(1号ダンベル)を23℃・60%RHの雰囲気下、島津製作所製オートグラフ(引張速度:50mm/分)を用いて引張降伏伸度を測定した。
【0050】
(4)全光線透過率
JIS K7105に基づいて、得られたフィルムの波長555nmにおける全光線透過率を測定した。
【0051】
(5)ヘーズ
JIS K7105に基づいて、得られたフィルムの全光線透過率および拡散透過率を測定し、ヘーズを以下の式で算出した。
[ヘーズ]=[拡散透過率]/[全光線透過率]×100
【0052】
本実施例において用いた材料は以下の通りである。
【0053】
[エチレン/環状オレフィン共重合体(A)]
(A)−1:TOPAS E−140(ポリプラスチックス(株)製、エチレン/ノルボルネン共重合体(エチレン:ノルボルネン=81:19(質量比))
(A)−2:TOPAS 8007F−04(ポリプラスチックス(株)製、エチレン/ノルボルネン共重合体(エチレン:ノルボルネン=35:65(質量比))
(A)−3:TOPAS 9906D−10(ポリプラスチックス(株)製、エチレン/ノルボルネン共重合体(エチレン:ノルボルネン=51:49(質量比))
【0054】
[エチレン系樹脂(B)]
(B)−1:ノバテックLD LF240(日本ポリエチレン(株)製、低密度ポリエチレン(エチレン=100質量%))
(B)−2:クレオレックス K4750(旭化成(株)製、高密度ポリエチレン(エチレン:ブテン−1:オクテン−1=97.9:0.8:1.3質量比)
(B)−3:スミカセン L705(住友化学(株)製、直鎖状低密度ポリエチレン(エチレン:ブテン−1=93:7質量比))
(C)−1:タフテック H1051(旭化成(株)製、スチレン系エラストマー、スチレン:エチレン:1−ブテン=42:37:21質量比)
(C)−2:タフテック H1043(旭化成(株)製、スチレン系エラストマー、スチレン:エチレン:1−ブテン=65:19:16質量比)
(D):ゼラス 5053(三菱化学(株)製、ポリプロピレン系エラストマー、プロピレン:エチレン=79:21質量比)
【0055】
[実施例1]
(A)−1を40mmφ同方向二軸押出機を用いて200℃で混練した後、Tダイより押出し、次いで約30℃のキャスティングロールにて急冷し、厚み80μmのシートを作製した。得られたシートについて、復元率、引張弾性率、引張降伏伸度、全光線透過率、ヘーズの評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】
[実施例2]
原料として(A)−1と(B)−1を混合質量比80:20(質量比)の割合でドライブレンドして使用した以外は、実施例1と同様の手順によりフィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0057】
[実施例3]
原料として(A)−1と(B)−1を混合質量比60:40(質量比)の割合でドライブレンドして使用した以外は、実施例1と同様の手順によりフィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0058】
[実施例4]
原料として(A)−1と(B)−2を混合質量比80:20(質量比)の割合でドライブレンドして使用した以外は、実施例1と同様の手順によりフィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0059】
[実施例5]
原料として(A)−1と(A)−3を混合質量比90:10(質量比)の割合でドライブレンドして使用した以外は、実施例1と同様の手順によりフィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0060】
[実施例6]
原料として(A)−1と(A)−3を混合質量比80:20(質量比)の割合でドライブレンドして使用した以外は、実施例1と同様の手順によりフィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0061】
[実施例7]
原料として(A)−1と(C)−1を混合質量比90:10(質量比)の割合でドライブレンドして使用した以外は、実施例1と同様の手順によりフィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0062】
[実施例8]
原料として(A)−1と(C)−1を混合質量比80:20(質量比)の割合でドライブレンドして使用した以外は、実施例1と同様の手順によりフィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
[実施例9]
原料として(A)−1と(C)−2を混合質量比90:10(質量比)の割合でドライブレンドして使用した以外は、実施例1と同様の手順によりフィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
[実施例10]
原料として(A)−1と(C)−2を混合質量比80:20(質量比)の割合でドライブレンドして使用した以外は、実施例1と同様の手順によりフィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0065】
[比較例1]
原料として(A)−2を使用した以外は、実施例1と同様の手順によりフィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
[比較例2]
原料として(A)−2と(B)−3を混合質量比80:20(質量比)の割合でドライブレンドして使用した以外は、実施例1と同様の手順によりフィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
[比較例3]
原料として(A)−2と(B)−3を混合質量比60:40(質量比)の割合でドライブレンドして使用した以外は、実施例1と同様の手順によりフィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
[比較例4]
原料として(A)−2と(B)−3を混合質量比30:70(質量比)の割合でドライブレンドして使用した以外は、実施例1と同様の手順によりフィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
[参考例1]
原料として(D)を使用した以外は、実施例1と同様の手順によりフィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1より、実施例1〜10は、復元性や透明性等に優れ、エキスパンド工程においても好ましい性能を有していることがわかる。一方、比較例1〜4は、復元率が悪い結果であった。よって、本発明の半導体工程用フィルムは 柔軟性及びカット性に優れ、特にエキスパンド工程において優れる性能を有し、好適に用いることができることがわかる。