(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6535600
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】負極の電位を制御するためのデバイスを有する金属空気電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/44 20060101AFI20190617BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20190617BHJP
H01M 12/08 20060101ALI20190617BHJP
【FI】
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H01M12/08 K
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-544512(P2015-544512)
(86)(22)【出願日】2013年11月25日
(65)【公表番号】特表2016-502739(P2016-502739A)
(43)【公表日】2016年1月28日
(86)【国際出願番号】FR2013052845
(87)【国際公開番号】WO2014083267
(87)【国際公開日】20140605
【審査請求日】2015年6月30日
【審判番号】不服2017-16450(P2017-16450/J1)
【審判請求日】2017年11月6日
(31)【優先権主張番号】1261397
(32)【優先日】2012年11月29日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】504462489
【氏名又は名称】エレクトリシテ・ドゥ・フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ステヴァン
(72)【発明者】
【氏名】グエナエル・トゥーサン
【合議体】
【審判長】
酒井 朋広
【審判官】
井上 信一
【審判官】
鈴木 圭一郎
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/156639(WO,A1)
【文献】
特公昭54−39565(JP,B2)
【文献】
国際公開第2011/077532(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/44
H01M 12/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
−負極端子(2)、
−正極端子(3)、
−前記負極端子に接続される負極(4)、
−空気正極(5)、及び、
−酸素発生正極(6)、
を有する金属空気電池を用いて電気エネルギーを貯蔵及び放出する方法であって、
(a)前記空気正極(5)が前記金属空気電池の正極端子(3)に接続され、前記酸素発生正極(6)が前記金属空気電池の正極端子(3)から接続を切られる放電段階と、
(b)前記酸素発生正極(6)が前記金属空気電池の正極端子(3)に接続され、前記空気正極(5)が前記金属空気電池の正極端子(3)から接続を切られ、前記負極(4)の電位が前記空気正極(5)と比較して測定される、充電段階と、
を含み、
前記負極(4)が亜鉛電極であり、前記空気正極(5)と比較して測定される前記負極(4)の電位の絶対値が、発泡体又はデンドライトの形態の亜鉛堆積物の形成を制限するために設定値を超えないように前記金属空気電池の再充電段階中に制御される、方法。
【請求項2】
再充電中に前記空気正極(5)と比較して測定される前記負極(4)の電位の値が、電子充電制御手段(9)によって自動的に制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記放電段階中に、前記金属空気電池の正極端子(3)に接続される前記空気正極(5)と比較して測定される負極(4)の電位の絶対値が、第2の設定値以下にならないように制御される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
放電中に前記空気正極(5)と比較して測定される前記負極(4)の電位の値が、電子放電制御手段によって自動的に制御される、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属空気タイプの電池を用いて電気エネルギーを貯蔵及び放出する方法、及びこの方法を実施するために特別に設計された電池に関する。
【背景技術】
【0002】
金属空気電池は、空気電極に結合される、亜鉛、鉄又はリチウム等の金属に基づく負極を使用する。最も頻繁に使用される電解質は、アルカリ水溶性電解質である。
【0003】
このような電池の放電中に、酸素は、正極において還元し、金属は、負極において酸化する。
負極における放電:M→M
n++ne
−
正極における放電:O
2+2H
2O+4e
−→4OH
−
【0004】
金属空気電池が電気的に再充電されなければならないとき、電流の方向は反転する。酸素は、正極において生成し、金属は、
負極における還元によって再堆積する。
負極における再充電:M
n++ne
−→M
正極における再充電:4OH
−→O
2+2H
2O+4e
−
【0005】
金属空気システムは、無限容量の正極を用いる利点を有する。従って、金属空気タイプの電気化学的発電デバイスは、数百Wh/kgに達し得るそれらの高い比エネルギーにおいて知られている。正極で消費される酸素は、電極に貯蔵される必要がなく、周囲空気から取り入れられ得る。空気電極はまた、アルカリ燃料電池において使用され、それは、電極のレベルにおいて高い反応速度論のおかげで、また白金等の貴金属がないおかげで他のシステムに比べて特に有利である。
【0006】
金属空気タイプの電池の再充電中における問題は、依然として解決されなければならない。特に、放電中における電池の正極である空気電極は、再充電方向に使用されるように設計されない。
【0007】
空気電極は、液体電解質と接触する多孔性固体構造体である。空気電極及び液体電解質の界面は、所謂“三重接触”界面であり、電極の固体活性材料、ガス状酸化剤、すなわち空気、及び液体電解質は、同時に存在する。亜鉛空気電池の種々のタイプの空気電極の詳細な説明は、例えば、非特許文献1に与えられる。
【0008】
空気電極は、通常、Cabor社によって市販されるVulcan(登録商標)XC72等の大きな表面積を有する炭素粒子で構成される。炭素の表面積は、空気電極における融合の前に、CO等の気体との反応によって増加され得る。次いで、多孔性の電極は、DuPont社によって市販されるFEP(フッ素化エチレンプロピレン)等のフッ素化疎水性ポリマーを用いた炭素粒子の凝集によって製造される。特許文献1には、金属空気電池用のこのような電極が開示されている。
【0009】
できるだけ高い電極の幾何学的表面積と比較した電流密度を有するために、できるだけ大きい空気電極の反応表面領域を有することが望ましい。大きな反応表面積はまた、気体状の酸素の密度が液体と比較して低いので、有用である。電極の大きな表面積は、反応部位が増加されることを可能にする。逆に、この大きな反応面積は、活性材料の濃度が非常に高いので、再充電中における酸化の逆反応にもはや必要ない。
【0010】
酸化反応及び酸素の生成を引き起こすための充電中における空気電極の使用は、多くの欠点を与える。空気電極の多孔性構造は脆い。それが液体電解質の酸化によって酸素を生成するために使用されたときに、気体の発生によってこの構造が機械的に破壊されたことが本発明者によって観察された。気体の生成によって電極内に生成された水圧は、空気電極を構成する炭素粒子の間の結合が破裂するのを引き起こすのに十分である。
【0011】
マンガン酸化物又はコバルト酸化物等の酸素の還元反応のエネルギー収量を改善するために空気電極に加えられた触媒が、逆酸化反応に必要とされる電位において安定しないことも本発明者によって観察された。炭素の酸化によって酸素の存在下における炭素の腐食はまた、より高い電位において加速される。
【0012】
特許文献2に記載されるように、場合によっては、2つの電気的に結合される層で構成される二機能の電極における酸素発生触媒に結合されるより抵抗性のある酸素還元触媒が使用される。しかしながら、この構成は、それにもかかわらず短い耐用寿命及び限られた数のサイクル数を有する電極を生成する。
【0013】
空気電極の劣化は、それが金属空気電池を再充電するために使用されるとき、電池の耐用寿命を非常に低下させる。これは、電気的に再充電可能な金属空気蓄電池の低レベルの商業的開発における主要な理由の1つである。
【0014】
これらの問題に直面し、劣化に対して空気電極を保護するために使用されている手段の1つは、酸素発生反応で使用される第2の正極を使用することからなる。次いで、空気電極は、酸素発生電極から切り離され、酸素発生電極のみが、充電段階中に使用される。例えば、Z.Starchurskiによる特許文献3には、充電段階中に使用される第2の補助的な電極を有する亜鉛空気電極が記載されている。従って、充電段階中に、空気電極は不活性である。本発明者が知る限りにおいては、この空気電極が電池の充電段階中に何のためにも使用され得ないだろうことが提案されていない。
【0015】
さらに、全ての電池に関して、放電又は再充電されている間、金属空気タイプの電池の端子における電圧を監視し制御することが重要である。電池の端子における電圧は、通常、電池の負極端子及び正極端子の間で困難性なしに直接的に測定される。電池の端子における電圧は、正極及び負極の電位差を表す。
【0016】
通常の電池の場合において、電圧は、電子制御システム又はBMS(電池管理システム)によって制御され得る。これらのデバイスは、当業者に周知のものである。BMSの目的は、電池の種々の要素の状態を監視すると共に、例えば過電圧又は不足電圧である不適切な使用によって引き起こされ得る劣化から電池を保護することである。従って、BMSはまた、電池の耐用寿命を増加させる機能を有する。
【0017】
金属空気タイプの電池の端子における電圧を単に制御することが、金属空気電池の再充電中に負極側で起こる特定のタイプの劣化に対して電池の最適な保護のために不十分であり得ることが本発明者によって見出された。
【0018】
例えば、亜鉛空気電池において、充電中にZn
2+金属イオンが負極において
還元され、この電極のレベルにおける電位が十分に負であるとすれば、それらの金属形態Znで堆積する。電極における金属の均一で均質な堆積が、この電池の充電及び放電のサイクル中に良好な耐久性を保証するために望まれる。
【0019】
特定の条件において、金属が電極の表面にほとんど付着しない発泡体の形態で堆積され、次いで、この発泡体が、電極から取り外され、活性材料の損失及びそれに続く電池の比容量の損失を引き起こすことが見出された。他の場合には、この金属がデンドライトの形態で堆積され得ることも見出された。これらのデンドライトは、それらが、充電中に正極に達し、内部短絡回路を引き起こし、再充電を妨害するまで成長し得る。
【0020】
充電中に負極の電位を、それが大きくなり過ぎることを避けるために制御することが、発泡体又はデンドライトの形態の亜鉛堆積物の形成を制限することを可能にすることが本発明者によって観察された。
【0021】
しかしながら、金属空気電池の場合において、充電中に、正極の電位が負極の電位より非常に急速に増加することが知られている。このために、電池の端子における電圧の制御は、負極の電位の制御を与えるために十分に正確ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】国際公開第2000/036677号
【特許文献2】米国特許第5306579号明細書
【特許文献3】米国特許第3532548号明細書
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】V.Neburchilov et al., with the title “A review on air cathodes for zinc-air fuel cells”, Journal of Power Sources 195 (2010) pp.1271-1291
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
従って、充電される間に金属空気タイプの電池の負極の電位を測定し制御する正確な手段に対する必要性が現時点である。
【0025】
従って、本発明の目的の1つは、負極の電位の正確な制御が提供される金属空気タイプの電池を充電及び放電する方法を考案することである。この機能を行うことができる手段を有する電池はまた、望まれる。しかしながら、電池の重量がその比容量を低下させる効果を有するので、電池の重量を増加させないことが有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0026】
これらの視点において、本発明者は、放電段階中に不活性である空気電極の存在の利点を得るアイディアを得た。
【0027】
本発明の主題は、
−負極端子、
−正極端子、
−前記負極端子に接続される負極、
−第1空気正極、及び、
−第2酸素発生正極、
を備える金属空気電池を用いて電気エネルギーを貯蔵及び放出する方法であって、
(a)前記第1空気正極が前記電池の正極端子に接続され、前記第2酸素発生正極が前記電池の正極端子から接続を切られる放電段階と、
(b)前記第2酸素発生正極が前記電池の正極端子に接続され、前記第1空気正極が前記電池の正極端子から接続を切られ、前記負極の電位が前記第1空気正極と比較して測定される、充電段階と、
を含む、電気エネルギーを貯蔵及び放出する方法である。
【0028】
本発明の他の主題は、この方法を実施するために特別に設計されたデバイスであり、すなわち、
−負極端子、
−正極端子、
−前記負極端子に接続される負極、
−第1空気正極、
−第2酸素発生正極、
−前記第1空気正極又は前記第2酸素発生正極の何れかが前記正極端子に接続されることを可能にするスイッチング手段、及び、
−前記負極の電位を測定する手段であって、前記測定が前記第1空気正極と比較して行われる、手段、
を備える、金属空気電池である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、再充電形態における、本発明の主題をなす電池の一実施形態の概略代表図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本願において、「充電」及び「再充電」という用語は、類義語として使用され、互換性がある。
【0031】
本発明によって電気エネルギーを貯蔵し放出する方法は、金属空気タイプの電池を用いて行われる。この金属空気電池は、通常、負極端子及び正極端子を備える。これらの2つの端子は、電池にエネルギーを供給する充電手段に電池が接続される充電回路、又は、電池がエネルギーを供給する何らかのデバイスに接続される放電回路の何れかである電力回路を形成するように電池が接続されることを可能にする。
【0032】
電池の端子は、電池内で電極に接続される。
【0033】
本発明による金属空気電池は、少なくとも3つの電極を備える:
−負極
−第1空気正極、及び、
−第2酸素発生正極。
【0034】
負極は、永久的に、すなわち充電中及び放電中に、電池の負極端子に接続される。負極は、原則的に、金属空気セルで通常使用されるあらゆる金属電極であり得る。例えば、それは、鉄電極、リチウム電極又は亜鉛電極であり得、好ましくは、リチウム電極(Li/Li
+)又は亜鉛電極(Zn/Zn
2+)である。
【0035】
本発明による電池の第1正極は、空気電極である。このタイプの電極は、一般に上述されている。あらゆるタイプの空気電極は、本発明による電池に使用され得る。特に、電池の第1空気正極は、国際公開第2000/036677号に記載されるような、大きな比表面積を有するカーボン粒子によって構成されるカーボン粉末の凝集体によって得られる電極であり得る。カーボン粒子に基づく空気電極は、少なくとも1つの酸素還元触媒をさらに含有する。この酸素還元触媒は、好ましくは、マンガン酸化物及びコバルト酸化物によって構成される群から選択される。
【0036】
本発明による電池の第2の正極は、酸素発生電極である。当業者に周知のこの機能を発揮するあらゆるタイプの電極は、本発明による電池で使用され得る。第2酸素発生正極は、例えば、銀、ニッケル又はステンレススチールで作られる電極等の、電池の電解質で安定な金属電極であり得る。
【0037】
本発明による電気エネルギーを貯蔵し放出する方法は、少なくとも1つの放電段階及び少なくとも1つの充電段階を含む。
【0038】
放電段階中、第1空気正極は、電池の正極端子に接続され、第2酸素発生正極は、電池の正極から接続を切られる。第1空気正極は、電池の放電中に作動電極、すなわち、電池の放電中に電気化学反応が起こる活性正極として使用されるものである。
【0039】
再充電段階(b)中に、第2酸素発生電極は、電池の正極端子に接続され、第1空気正極は、電池の正極端子から接続を切られる。第2酸素発生正極は、電池の再充電中に作動電極、すなわち、電池の再充電中に電気化学反応が起こる活性正極として使用されるものである。
【0040】
このため、この方法を実施するために特別に設計された電池がまた、第1空気正極又は第2酸素発生正極が正極端子に接続されることを可能にするスイッチング手段を備える。
【0041】
一実施形態によれば、第1及び第2正極の間の正極端子の接続のスイッチングは、手動的に行うことができる。しかしながら、有利には、スイッチング手段は、スイッチング制御手段に接続され得る。この手段は、電子的であり得、それは、有利には、電子制御システム又はBMSの要素であり得る。スイッチング制御手段は、スイッチング手段を操作することができ、それが、電池が放電される際に電池の正極端子に接続される第1空気正極であり、それが、電池が再充電される際に電池の正極端子に接続される第2酸素発生正極であるようなものである。
【0042】
スイッチング制御手段は、有利には、電池の正極端子及び負極端子の間の電圧を測定するために適合され得る。これは、2つの作動電極の間、すなわち、放電中には負極及び第1空気正極の間、並びに、再充電中には負極及び第2酸素発生正極の間の電位差を測定することを含む。
【0043】
しかしながら、電池の端子における電圧のこの測定は、正極の電位が負極の電位より急速に変化するので、充電中における負極の電位の正確な制御を提供することを可能にしない。従って、電池の正極端子及び負極端子の間で測定される電位差は、即時に負極端子の電位を正確に反映するものではない。
【0044】
負極の電位の測定が第2酸素発生正極の電位に依存しないので、本発明者は、負極及び参照電極の間で測定が行われることを提案する。参照電極は、その電位が測定中に固定される電極である。差動電極、すなわち電気化学反応中に活性である電極は、その電位が電流の通路により変化するので、参照電極にはなり得ない。
【0045】
このため、本発明による方法の再充電段階(d)が有利には第1空気正極と比較して負極の電位を測定することからなる段階を含む。電池の再充電中に、第1空気電極は、電池の正極から接続が切られる。それは、もはや作動電極ではなく、電流はそれを通って流れない。従って、それは、有利には電池の再充電中に負極の電位を測定するために参照電極として使用され得る。
【0046】
この方法を実施するために特別に設計される本発明による電池は、有利には、負極の電位を測定するための手段を備え、この測定は、第1空気正極と比較して行われる。
【0047】
電池の放電段階中における負極の電位を測定するための参照電極としての空気正極の使用は、それが、この機能に単独に捧げられるだろう電極をそのデバイスに加えることが必要とされないので、特に有利である。従って、本発明は、それが、実施されるために既存の電池に対する重要な構造的な修正を要求しないので、単純であり高価ではないという利点を有する。さらに、本発明による方法を実施するために特別に設計される金属空気電池は、追加の電極を備えないので、それらの重量及びそれらの全体寸法は、影響を受けない。
【0048】
負極の電位の値を正確に測定することは、それが電池の良好な管理を可能にするので、当業者に関心がある。例えば、亜鉛空気タイプの電池の充電中に負極の電位が高くなり過ぎることを避けるために負極の電位を制御することは、発泡体又はデンドライトの形態の亜鉛堆積物の形成を制限することを可能にする。
【0049】
有利な実施形態において、負極の電位の絶対値は、それが設定値を超えないように、電池の再充電段階中に制御され得る。再充電中における負極の電位の値は、好ましくは、電子充電制御手段によって自動的に制御され得る。この電子制御手段は、電子制御手段又はBMSの要素であり得る。電子制御手段は、再充電中に、本発明によって測定された負極の電位の値を設定値と連続的に比較し、測定された電位の絶対値が設定値以下のままであるように電池の充電手段に制御信号を送るように適合され得る。
【0050】
他の有利な実施形態において、第1の空気正極と比較して測定された負極の電位の絶対値はまた、それが第2の設定値以下でないように電池の放電段階中に制御され得る。放電段階中に、第1の空気正極は、電池の正極端子に接続される。従って、この第1の空気正極と比較して負極の電位は、電池の正極端子及び負極端子の間の電圧を測定するのに等しい。好ましくは、従って、電池の放電段階は、測定される電圧の絶対値が第2の固定された設定値以下になる前に停止される。再充電中における負極の電位の値は、電子放電制御手段によって自動的に制御され得る。この手段は、電子充電制御手段と組み合わされ得、それは、電子充電システム又はBMSの要素であり得る。放電制御手段は、放電中に、本発明によって測定された負極の電位を第2の設定値と連続的に比較し、測定された電位の絶対値が設定値以下に低下した場合に電池の放電を停止するように適合され得る。
【0051】
これらの好ましい実施形態を実施することを可能にするように、本発明による金属空気電池は、電池の充電中に負極及び第1の空気正極の間で測定される電圧の絶対値を設定値以下に維持するように適合される充電制御手段を備え得る。あるいは、又は追加的に、本発明による金属空気電池は、電池の放電中に負極及び第1の空気正極の間で測定される電圧の絶対値を第2の設定値を超えて維持するように適合される放電制御手段を備え得る。充電制御手段及び放電制御手段は、任意に、これらの機能の両方を行う単一及び同一の手段であり得る。
【0052】
本発明による電池は、さらに、BMSとも称される電子電池制御システムを備え得る。充電制御手段及び/又は放電制御手段は、前記電子制御システムの一部を形成し得る。
【0053】
本発明は、ここで、再充電構成において、本発明の主題を形成する電池の実施形態を概略的に示す添付の
図1を参照して詳細に記載される。
【0054】
電池1は、負極端子2、正極端子3、負極端子2に接続された負極4、第1の空気正極5及び第2の酸素発生正極6を備える。電池が充電段階中であると見なされ得る構成である
図1に示される構成において、それは、セルの正極端子3に接続される第2の酸素発生正極6である。しかしながら、電池1はまた、放電段階中にスイッチング手段7に第1の空気正極5を接続するために、第2の酸素発生電極6が正極端子3から接続を切られることを可能にするスイッチング手段7を備える。電池1が充電段階中に示されるので、電池の正極端子2及び負極端子3に接続される充電手段11は、
図1に示されている。しかしながら、それは、電池1の一部を形成しない。
【0055】
電池1は、さらに、負極8の電位を測定するための手段を備える。この電位は、負極4及び第1の空気正極5の間の電圧Vを測定することによって測定される。示される電池の再充電段階中に、第1の空気電極5は、電池の正極端子3に接続されないので、参照電極としての役割を果たす。
【0056】
電池1は、さらに、充電制御手段9を備える。この充電制御手段9は、再充電中に測定手段8によって測定される値Vを設定値Vcと連続的に比較し、測定された電位の絶対値が設定値以下のままであるように、充電制御手段9は、制御信号10を電池の充電手段11に送る。
【符号の説明】
【0057】
1 金属空気電池
2 負極端子
3 正極端子
4 負極
5 第1空気正極
6 第2酸素発生正極
7 スイッチング手段
8 電位
9 充電制御手段
10 制御信号
11 充電手段